説明

多層成形体および多層成形体の製造方法

【課題】
材料選択の幅が広く、低コストで、かつ環境への影響も少ない、金属特有の質感や光沢を持つ多層成形体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
最外層となる透明樹脂シート2と、その透明樹脂シート2より内部に配置される金属装飾層4を少なくとも含む多層成形体1であって、透明樹脂シート2の外表面に、金属調の加工溝6を有する多層成形体1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明樹脂シートから内部の金属装飾層が見える多層成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等に代表される通信機器あるいはオーディオ製品には、高級感を出すために金属特有の質感や光沢を持つような装飾が要求される場合がある。このため、めっき、金属製品への研削加工が多用されている。めっきの例としては、例えば、金属製品と同形状の成形品を射出成形してその表面にめっきを施す技術が、特許文献1に開示されている。また、金属製品への研削加工の例としては、例えば、研削加工により、アルミ等の金属製品に溝をつくる技術が特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2003−183880号公報(特許請求の範囲、要約書等)
【特許文献2】特開2004−042142号公報(特許請求の範囲、要約書等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の従来技術には、次のような問題がある。成形品にめっきを施す方法では、めっき可能な樹脂がABS樹脂等の一部樹脂に制限されるので、材料選択の幅が狭くなるという問題がある。加えて、樹脂にめっきしても、すぐ傷がつくという問題もある。一方、金属製品自体に研削加工を施す方法の場合には、加工の手間がかかると共にコストも高くなるという問題がある。さらに湿式めっきを採用した場合には、廃液処理をしなければならないという問題も生じる。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、材料選択の幅が広く、低コストで、かつ環境への影響も少ない、金属特有の質感や光沢を持つ多層成形体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、最外層となる透明樹脂シートと、その透明樹脂シートより内部に配置される金属装飾層とを少なくとも含む多層成形体であって、透明樹脂シートの外表面に、金属調の加工溝を有する多層成形体としている。このため、樹脂成形体でありながら、金属特有の質感や光沢を持たせることができる。
【0006】
また、別の本発明は、先の発明に加えて、金属装飾層の上、下若しくは上下両方に、加色層を有する多層成形体としている。このため、同一の金属材料を用いて金属装飾層を形成しても、加色層の形成に用いるインク等の色を変えることにより、いろいろな色彩を持つ金属装飾を実現できる。
【0007】
また、別の本発明は、さらに、金属装飾層の透明樹脂シートと反対側に樹脂シートを配設する多層成形体としている。このため、フィルム以外の形態を持つ成形体においても、金属調の模様を実現できる。
【0008】
また、別の本発明は、透明樹脂シートの裏側に金属装飾層を設ける工程と、透明樹脂シートの金属装飾層と反対の面に、レーザを用いて金属調の加工溝を形成する工程とを含む多層成形体の製造方法としている。このため、樹脂成形体でありながら、金属特有の質感や光沢を持たせることができる。
【0009】
また、別の本発明は、先の発明に加えて、金属装飾層を設ける工程の前、後、前後両方若しくは同時に、加色層を設ける工程を有する多層成形体の製造方法としている。このため、同一の金属材料を用いて金属装飾層を形成しても、加色層の形成に用いるインク等の色を変えることにより、いろいろな色彩を持つ金属装飾を実現できる。
【0010】
また、別の本発明は、先の発明に加えて、金属装飾層を設ける工程の後に、金属装飾層の透明樹脂シートと反対の面に樹脂シートを形成する工程を有する多層成形体の製造方法としている。このため、フィルム以外の形態を持つ成形体においても、金属調の模様を実現できる。
【0011】
また、別の本発明は、先の発明に加えて、金属調の加工溝が炭酸ガスを含むガスを用いたレーザにより加工される多層成形体の製造方法としている。このため、樹脂などの非金属に対して効率の良い加工が可能となり、金属により近い質感や光沢を実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、材料選択の幅が広く、低コストで、かつ環境への影響も少なく、多層成形体に対して、金属特有の質感や光沢を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態にかかる多層成形体の構造を示す図である。
【0015】
図1に示すように、多層成形体1は、最表面から(すなわち、図1の上方から)、透明樹脂シート2、加色層3、金属装飾層4、樹脂シート5の順に積層される構造を有している。ここで、加色層3は、金属装飾層4より下方(すなわち、樹脂シート5の方向)、さらには上方と下方の両方に設けても良い。金属装飾層4が極めて薄い層である場合には、金属装飾層4の下方に形成される加色層3も視認でき、ユーザに色の付いた金属装飾感を持たせることができる。また、金属装飾層4より下方に白色若しくは黒色の加色層3を設け、金属装飾層4の上方にCMY系の加色層3を設けることにより、金属装飾層4の上方に形成したCMY系による加色層3を一層引き立たせることができる。なお、加色層3および樹脂シート5は必須の層ではなく、両方あるいはいずれか一方を設けない多層成形体1としても良い。
【0016】
用いられる透明樹脂シート2および樹脂シート5には、市販の熱可塑性樹脂シートが使用出来るが、特に限定されるものではない。例えば、アクリル系、ポリカーボネート系、ポリカーボネート系とポリエステル系樹脂からなるアロイ、ABS系、AS系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、塩化ビニル系、およびPET系等を透明樹脂シート2あるいは樹脂シート5として採用可能である。透明樹脂シート2の外表面には、金属調の加工溝6が施される。
【0017】
加色層3は、例えば、帝国インキ製造(株)製のグロスタイプのNANシリーズ、CGシリーズ、VARシリーズ、あるいはパールインキVGシリーズをスクリーン印刷、オフセット印刷あるいはグラビア印刷等を用いて形成される。また、より複雑で意匠性豊かな印刷を簡易に施すために、電子式印刷機である溶融型熱転写プリンター、昇華型熱転写プリンター、インクジェット方式プリンター、トナー転写型プリンターなどを用いても良い。すなわち、昇華型熱転写方式、トナー電子方式、静電画像方式、レーザー露光熱現像転写方式、インクジェット方式、熱転写方式、加熱発色方式のいずれか少なくとも1種類のプリンタを用いて、例えばシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の3種類等の複数色の微小ドットで光透過性の色彩、図柄、記号からなる表示部を形成することができる。また、インクは、染料系、顔料系を問わない。また、加色層3の形成にあたり、転写箔に対して、上述の印刷方法によってシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の3種類等の複数色の微小ドットから構成される印刷を施し、ホットスタンプ、ロール転写などによって透明樹脂シート2に転写するようにしても良い。
【0018】
この実施の形態では、金属装飾層4は、好適には、加色層3に接するように形成される。ただし、加色層3を設けない場合には、金属装飾層4は、透明樹脂シート2に接するように形成される。金属装飾層4の材質としては、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、インジウム、スズ、亜鉛等が挙げられる。金属装飾層4の製法には、物理蒸着法である真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等があるが、特に限定されるものではない。蒸着によって形成される金属装飾層4を、特に、金属蒸着層という。また、ホットスタンプ、熱ロール転写あるいは溶融型熱転写プリンタなどによって、金属転写箔を用いて金属装飾層4を形成するようにしても良い。
【0019】
なお、蒸着法以外の方法で金属装飾層4を形成しても良い。ここで、スッパタリング法とは、真空に近い低圧のアルゴンガス中でグロー放電で生成されたアルゴン(Ar)イオンをターゲットに加速衝突させて原料を飛散させて品物に付着させる方法である。また、イオンプレーティング法とは、真空に近い低圧のArガス中で蒸着させた蒸着原料の分子・原子をグロー放電領域を通過させてイオン化および励起させ、中性状態の粒子と共にマイナスの高電圧をかけて品物に折出さる方法である。
【0020】
図2は、多層成形体1の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【0021】
まず、透明樹脂シート2の裏面に、加色層3を形成する(ステップS1)。次に、加色層3の上に金属装飾層4を形成する(ステップS2)。次に、金属装飾層4の上に樹脂シート5を形成する(ステップS3)。次に、透明樹脂シート2の表面に、金属調の加工溝6を形成する(ステップS4)。
【0022】
なお、上記ステップS1と上記ステップS2とを逆順とし、上記ステップS3において加色層3の上に樹脂シート5を形成しても良い。さらに、ステップS1、ステップS2に続いて、ステップS1と同じ工程を行ったり、ステップS1とステップS2とを一つのステップとして同時に行っても良い。一つのステップとして同時に行う例としては、転写箔に、加色層3と金属装飾層4を形成し、当該転写箔を透明樹脂シート2に転写する方法が挙げられる。また、上記ステップS4は、上記ステップS1の前または後、上記ステップS3の前に行っても良い。例えば、上記ステップの順序を、次のように変更することもできる。まず、透明樹脂シート2の表面に金属調の加工溝6を形成する。次に、透明樹脂シート2の裏面に加色層3を形成する。次に、加色層3の上に金属装飾層4を形成し、多層フィルムとする。次に、多層フィルムに粘着剤あるいは接着剤をつけ、樹脂シート5をラミネートする。なお、粘着剤あるいは接着剤は、金属装飾層4と樹脂シート5との間に必要に応じて用いるに過ぎず、ドライラミネート、ウェットラミネート、熱圧着等により樹脂シート5をラミネートしても良い。
【0023】
先に述べたように、樹脂シート5は必須の構成ではなく、本発明の多層成形体1は、ステップS3を除いた多層フィルムの形態であっても良い。すなわち、本発明の多層成形体は、上記多層フィルムの形態をも含めるように広義に解釈される。ここで、樹脂シート5を設ける理由は、次の理由からである。多層成形体1を3次元形状に成形して、これをインサートして射出成形を行い、成形体を製造したい場合、加色層3あるいは金属装飾層4を、射出した樹脂の熱および圧力から守る必要がある。かかる場合に、金属装飾層4の上に樹脂シート5を形成する。また、用途に応じて、透明樹脂シート2の外表面に、ハードコート層を設けても良い。ハードコート層を設けることによって、金属調の加工溝6を保護することができる。
【0024】
次に、金属調の加工溝6を形成する好適な方法について説明する。
【0025】
多層成形体1への金属調の加工溝6の形成には、レーザ加工装置が用いられる。レーザ加工装置には、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等の多種類の装置がある。ここでは、その一例として、炭酸ガスレーザ加工装置を用いた例を説明する。
【0026】
図3は、炭酸ガスを用いたレーザ加工装置10により金属調の加工を行う方法の一例を模式的に示す図である。
【0027】
炭酸ガスを用いたレーザ加工装置10は、管11に枝管12,13をジョイントした構造を有している。管11の内部には、炭酸ガスと窒素ガスとヘリウムガスの混合気体が導入される。枝管12および枝管13の各内部には、それぞれ冷陰極14および電極15が配置されている。冷陰極14および電極15には、電源16が接続されている。一方、管11の両端には、全反射ミラー17および反射ミラー18が配置されている。さらに、反射ミラー18の外側には、出力窓19があけられている。
【0028】
冷陰極14から電子が放出されると、当該電子は、陽極である電極15に引かれて管11の内部に入る。すると、電子は、管11に予め導入されていた混合ガスに衝突する。混合ガス中の炭酸ガス分子は、1個の炭素と2個の炭素から構成されている。各元素同士の結合は、安定点を中心に3つのモードで振動しており、そのレベル間でレーザ発振を起こす。すなわち、炭酸ガスレーザの場合には、原子自体は基底状態のままで結合エネルギーのレベル差を利用して振動励起され、レーザが発振される。したがって、エネルギー差は小さく、発振波長10.6ミクロンを主とする遠赤外線が発振される。
【0029】
なお、窒素の励起レベルは炭酸ガスのレーザを発振する上位レベルよりわずかに高く、効率の良いエネルギー交換が行われる。また、ヘリウムは、炭酸ガスの010準位をこわし、下位レベルを減らす作用がある。このため、窒素ガスとヘリウムガスは、共に、レーザの変換効率を上げる作用がある。
【0030】
発振されたレーザは、図3の両矢印で示すように、管11の両端に配置された全反射ミラー17と反射ミラー18との間で往復し増幅される。そして、その一部が反射ミラー18側に開けられた出力窓19から出力される。出力窓19の外方向には、レーザを反射する反射鏡20が配置されている。反射鏡20は、その角度を可変に構成されている。このため、出力窓19から出力された赤外線レーザは、反射鏡20で反射されて、多層成形体1に照射される。
【0031】
反射鏡20は、所定の立体角の範囲で動作可能であるため、赤外線レーザは多層成形体1の表面でX−Y方向自在に焦点を合わせることができる。レーザ加工装置10とパーソナルコンピュータを接続することによって、CADデータに基づいて反射鏡20の傾斜を制御しながら、多種多様の加工模様を形成することができる。
【0032】
図4は、多層成形体1の一形態である携帯電話の操作パネル30を示す図である。
【0033】
操作パネル30は、最外面に透明樹脂シート2、その直下に加色層3、その直下に金属装飾層4を有している。キー31の部分には、拡大して示すように、多重円からなる金属調の加工溝6が形成されている。このような金属調の模様は、操作パネル30のキー31の部分だけを、図3に示すようなレーザ加工装置10を用いて、反射鏡20の角度をコンピュータ制御しながら加工することによって得ることができる。下地の金属装飾層4自体は加工されず、透明樹脂シート2の表面だけが、金属調に加工されるので、加工が容易である。例えば、キー31の部分の透明樹脂シート2の加工は、赤外線レーザの線径0.08〜0.20mm、レーザ出力0.9〜4.0W、スキャンスピード200〜1000mm/secの条件で行うと良い。
【0034】
このように、金属自体ではなく、透明樹脂シート2に加工を施すことで、安価かつ簡便に加工可能となる。また、多層成形体1は、透明樹脂シート2を最外表面とする構造であるため、金属装飾層4が剥がれることはない。さらに、レーザで加工するので、予め金型に金属調の加工溝6を形成するための転写模様を形成しておく場合と比べて、より簡単で、かつより微細な加工が可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は当該実施の形態に限定されることなく、次のように変形実施可能である。例えば、キー31の部分における金属調の加工溝6は、同心円状のみならず、渦巻き、ヘアライン、スピン等の多種多様の模様とすることができる。また、レーザ加工装置として、炭酸ガス以外のレーザ加工装置、例えば、YAGレーザ加工装置あるいはエキシマレーザ加工装置を用いても良い。
【0036】
また、多層成形体1を3次元形状に成形して、これをインサートして射出成形を行い、成形体とする場合、上述の実施の形態で採用している、いわゆる射出成形同時加飾方法のみならず、真空成形、圧空成形、圧空真空成形等を採用することもできる。真空成形は、成形品等の立体形状品の表面に多層フィルムを、間に必要に応じ適宜接着剤を介して対向または載置し、立体形状品の真空吸引による圧力差により多層フィルムの転写層を立体形状物品の表面に転写する、いわゆる真空成形積層法を利用した転写法である。圧空成形とは、多層フィルムを一度、加熱軟化させて、圧縮空気により金型に密着させて、所定の形状を得る方法である。圧空真空成形とは、上述の真空と圧空を併用して多層フィルムを金型に沿わせて成形する方法である。
【0037】
また、上述の実施の形態における炭酸ガスを用いたレーザ加工装置10の反射鏡20を用いずに、多層成形体1あるいはレーザ加工装置10自体をX−Y平面上を動かして、金属調の加工溝6を形成するようにしても良い。
【実施例】
【0038】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0039】
[実施例1]
透明樹脂シート2にポリカーボネート系樹脂を用い、当該樹脂に溶融型熱転写プリンタを用いて、スズからなる金属装飾層4を形成した。次に、この金属装飾層4を形成した面と反対の面に、SUNX社製の炭酸ガスレーザーマーカーLP430(30W)を用いて、レーザパワー3%(0.9W相当)、スキャンスピード220mm/secの条件で同心円状の加工を施した。この結果、0.3mmピッチの同心円状の金属調の加工溝6を形成することができた。
【0040】
[実施例2]
透明樹脂シート2にポリカーボネート系樹脂を用い、当該樹脂に昇華型熱転写プリンタを用いて、CMYにより加色層3を形成し、さらにその上にスズからなる金属装飾層4を形成した。この金属装飾層4を形成した面と反対の面に、上記実施例1と同じ装置を用いてかつ同じ条件で、渦巻き状の加工を施した。この結果、0.3mmピッチの渦巻き状の金属調の加工溝6を形成することができた。
【0041】
[実施例3]
透明樹脂シート2にアクリル系樹脂を用い、当該樹脂に溶融型熱転写プリンタを用いて、アルミニウムからなる金属装飾層4を形成した。この金属装飾層4を形成した面と反対の面に、上記実施例1と同じ装置を用いて、レーザパワー15%(4.5W相当)、スキャンスピード450mm/secの条件で同心円状の加工を施した。この結果、0.3mmピッチの同心円状の金属調の加工溝6を形成することができた。
【0042】
[実施例4]
透明樹脂シート2にポリエステル系樹脂を用い、当該樹脂に溶融型熱転写プリンタを用いて、CMYにより加色層3を形成し、さらにその上にアルミニウムからなる金属装飾層4を形成した。この金属装飾層4を形成した面と反対の面に、上記実施例1と同じ装置を用いてかつ同じ条件で、渦巻き状の加工を施した。この結果、0.3mmピッチの渦巻き状の金属調の加工溝6を形成することができた。
【0043】
[実施例5]
透明樹脂シート2にポリカーボネート系樹脂を用い、当該樹脂に上記実施例1と同じ装置を用いてかつ同じ条件で、同心円状の加工を施した。次に、その加工面と反対の面にスズからなる金属装飾層4を形成した。次に、転写箔に、昇華型熱転写プリンタを用いて、CMYにより加色層3を形成し、ホットスタンプにより当該転写箔を金属装飾層4の上に転写した。この結果、ポリカーボネート系樹脂に、0.3mmピッチの同心円状の金属調の加工溝6を形成することができた。
【0044】
[実施例6]
透明樹脂シート2にポリカーボネート系樹脂を用い、当該樹脂に昇華型熱転写プリンタを用いて、CMYにより加色層3を形成し、さらにその上にスズからなる金属装飾層4を形成した。この金属装飾層4を形成した面と反対の面に、上記実施例1と同じ装置を用いて、レーザーパワー3%(0.9W相当)でレーザーを点照射し、周速220mm/secとなるように透明樹脂シート2を回転させた。この結果、ポリカーボネート系樹脂に、0.3mmピッチの渦巻き状の金属調の加工溝6を形成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、携帯電話、オーディオ機器等の樹脂製の外装を持つ機器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態にかかる多層成形体の構造を示す図である。
【図2】図1に示す多層成形体の製造工程の一例を示すフローチャートである
【図3】本発明に係る多層成形体の製造において、炭酸ガスを用いたレーザ加工装置により金属調の加工を行う方法の一例を模式的に示す図である。
【図4】図1に示す多層成形体の一形態である携帯電話の操作パネルを示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 多層成形体
2 透明樹脂シート
3 加色層
4 金属装飾層
5 樹脂シート
6 金属調の加工溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層となる透明樹脂シートと、その透明樹脂シートより内部に配置される金属装飾層と、を少なくとも含む多層成形体であって、
上記透明樹脂シートの外表面に、金属調の加工溝を有することを特徴とする多層成形体。
【請求項2】
前記金属装飾層の上、下若しくは上下両方に、加色層を有することを特徴とする請求項1に記載の多層成形体。
【請求項3】
前記金属装飾層の前記透明樹脂シートと反対側に、樹脂シートを配設することを特徴とする請求項1または2に記載の多層成形体。
【請求項4】
透明樹脂シートの裏側に金属装飾層を設ける工程と、
上記透明樹脂シートの上記金属装飾層と反対の面に、レーザを用いて金属調の加工溝を形成する工程と、
を含むことを特徴とする多層成形体の製造方法。
【請求項5】
前記金属装飾層を設ける工程の前、後、前後両方若しくは同時に、加色層を設ける工程を有することを特徴とする請求項4に記載の多層成形体の製造方法。
【請求項6】
前記金属装飾層を設ける工程の後に、前記金属装飾層の前記透明樹脂シートと反対の面に樹脂シートを形成する工程を有することを特徴とする請求項4または5に記載の多層成形体の製造方法。
【請求項7】
前記金属調の加工溝は、炭酸ガスを含むガスを用いたレーザにより加工されることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の多層成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−256032(P2006−256032A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75220(P2005−75220)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】