説明

多層水蒸気バリア性シート

【課題】
ピンホール等の問題が無く、高い水蒸気バリア性を有し、且つ実用上十分な柔軟性を有するシートを提供する。
【解決手段】
偶数番目の層(A層)と奇数番目の層(B層)が交互に積層され、全層数が9層以上の奇数の層で構成され、前記A層が下記の(1)〜(2)のすべての要件を有し、前記B層が熱可塑性樹脂Bからなる熱可塑性樹脂多層シートである。
(1)A層が、熱可塑性樹脂Aが70〜20質量%、鱗片状無機物が30〜80質量%の混合物からなる。
(2)複数のA層の厚みの合計がシートの総厚みに対して5%以上、50%未満である。
熱可塑性樹脂AおよびBとしては、各種の樹脂を用いることができるが、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。A層に添加する鱗片状無機物は、アスペクト比が5以上の鱗片状であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層構成を用いた水蒸気バリア性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に水蒸気バリア性を有したフィルム又はシートには、無機物の蒸着やラミネートが使用されている。しかし、無機物の蒸着では、水蒸気バリア層の積層数を多くすることができないため、ピンホールによる水蒸気バリア性が低下することがある。さらに、アルミ箔などをラミネートする方法では、ラミネートを行うための大掛かりな製造装置などが必要となり,製造プロセスが複雑になってしまうなどの問題がある。
【0003】
特許文献1には、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂での積層構成により、酸素ガスや水蒸気に対するバリア性 や耐ピンホール性に優れた積層フィルムが提案されている。しかしながら、樹脂成分だけでは十分な水蒸気バリア性を発現することは難しく、高い水蒸気バリア性を実現するためには、無機物の利用が必要となる。
【0004】
一方、蒸着やラミネート以外のバリア性付与の方法として、層状珪酸塩などに代表される層状化合物を均一に分散させた熱可塑性樹脂(ナノコンポジット)があり、これらの層状化合物は酸素や水蒸気バリア性の改善、機械的強度の向上などが期待されフィルム又はシートへの適用が検討されてきた。即ちシート等を製膜する際に、これらの層状化合物をシートの面に対して面配向させることによって、前記のバリア性の向上を図るものである。しかし、単にフィルム又はシートを製膜するだけでは、層状化合物の面配向は小さいので、十分な水蒸気バリア性を得るためには、多量の層状化合物を添加する必要がある。しかしながらその添加量が多くなると、シートの柔軟性が低下してしまう。そのために、十分な水蒸気バリア性を有し、かつ実用上十分な柔軟性を有するフィルム又はシートを得ることはできなかった。
【0005】
一方で層状化合物を面配向させる手段としてシート又はフィルムを延伸する手法が提案されている(特許文献2および3)。しかしながら、このような方法で層状化合物の配向を高めることができるのは、層状化合物の添加量が15質量%以下と少量のときであって、そのために延伸した際に層状化合物間に隙間が生じ、水蒸気バリア性の向上を高める効果には限度があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−114337号公報
【特許文献2】特開2010−155455号公報
【特許文献3】特開2010−131810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い水蒸気バリア性を有しピンホール等の問題が無く、且つ実用上十分な柔軟性を有するシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討した結果、特定の比率で鱗片状無機物を含有する層と、実質的に熱可塑性樹脂からなる層を交互に9層以上積層した多層シートで、前記の課題を達成できることを見出し本発明に至った。即ち、本発明は、
偶数番目の層(A層)と奇数番目の層(B層)が交互に積層され、全層数が9層以上の奇数の層で構成され、前記A層が下記の(1)〜(2)のすべての要件を有し、前記B層が熱可塑性樹脂Bからなる熱可塑性樹脂多層シートである。
(1)A層が、熱可塑性樹脂Aが70〜20質量%、鱗片状無機物が30〜80質量%の混合物からなる。
(2)複数のA層の厚みの合計がシートの総厚みに対して5%以上、50%未満である。
熱可塑性樹脂Aとしては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、およびポリビニリデンクロライド樹脂から選択したいずれか1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。更に熱可塑性樹脂Aがポリオレフィン系樹脂であることがより好ましい。また、熱可塑性樹脂Bは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリビニリデンクロライド樹脂からから選択したいずれか1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。A層に添加する鱗片状無機物は、アスペクト比が5以上の鱗片状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、高い水蒸気バリア性を有し、ピンホール等の問題が無く、且つ実用上十分な柔軟性を有する多層シートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の多層構成では、無機物高充填層Aと熱可塑性樹脂層Bが交互に積層した構造をとることで、高い水蒸気バリア性とシートとしての柔軟性を併せ持つことが可能となる。つまり、無機高充填層Aが水蒸気バリア性発現を担い、熱可塑性樹脂層Bがシートとしての柔軟性発現を担う。
【0011】
上記多層シートの積層数は9層以上の奇数層で構成され、好ましくは9層以上50層未満である。9層未満では、水蒸気バリア性を積層させることのメリット、例えば水蒸気バリア層積層による耐ピンホール性の付与などの効果が得られず、十分な水蒸気バリア性を発現できない。また層数があまりに大きくなると、シートを製膜する際の問題が生じる可能性があり、さらに一層あたりの厚みが薄くなり、結果として熱可塑性樹脂層B層が薄くなりシートとしての柔軟性を保持できないため、通常は50層未満の構成とするのが一般的である。全体の層数が偶数層では、一方の最表層が無機物高充填層Bであり、シートを折り曲げた際などに、無機物高充填層Bを起点にしてクラックの発生を生じ易く、一方でシートとしての柔軟性を得ることが困難である。
【0012】
前記多層シートの総厚みは特に限定されるものではないが、100〜1000μmの範囲が一般的である。本発明においてA層およびB層の一層当たりの平均厚みは、多層シートの切片を切り出し、層構成を判断できるように端面を平滑にして顕微鏡観察することによって測定することができる。厚み測定は、全層数の各層の厚みを測定し、A層およびB層の1層あたりの平均厚みを求めることができる。A層とB層の一層当たりの厚みは、要求される特性に合わせてそれぞれ別個に調整することができる。またA層またはB層のうちでの一層当たりの厚みは一般的には同一であり、従ってA層およびB層の合計厚みは、それぞれ各層についての一層当たりの平均厚みに層数を掛けて求めることができる。
【0013】
本発明で使用される熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bとしては、一般的な熱可塑性樹脂が使用可能である。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン(PS)系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、およびポリビニリデンクロライド樹脂などがあり、その他の成分が共重合されたものや他の樹脂をブレンドしたものも使用可能である。
【0014】
本発明でいうポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン系樹脂、ポリ‐1‐ブテン樹脂等の脂肪族オレフィン化合物の単独重合体、およびこれらの共重合体である。共重合体としては、エチレン‐プロピレン共重合樹脂、エチレン‐1‐ブテン共重合体、エチレン‐メチルペンテン共重合樹脂等が挙げられる。尚、ポリプロピレン系樹脂とは、ポリプロピレンのホモポリマー及びプロピレンユニットを50モル%以上含有するポリオレフィン共重合体を含む。
【0015】
ポリエステル系樹脂としては、芳香族および脂肪族多官能カルボン酸と多官能グリコールより得られるポリエステル樹脂以外に、ヒドロキシカルボン酸系のポリエステル樹脂も使用可能である。前者については、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートおよびこれらのその他の共重合体が挙げられる。共重合体としては、ポリアルキレングリコール、ポリカプロラクトンなどを共重合したポリエステル樹脂などが挙げられる。後者としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトンなどが挙げられる。前者と後者の共重合体も使用可能である。
【0016】
ポリスチレン(PS)系樹脂としては、PS樹脂及びゴム変性スチレン樹脂(ゴム−g−スチレン系樹脂又は耐衝撃性スチレン系樹脂)が含まれる。PS系樹脂を形成するための芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、ビニルトルエン、ビニルキシレン、p−エチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等)、ハロゲン置換スチレン(例えば、クロロスチレン、ブロモスチレン等)、α位にアルキル基が置換したα−アルキル置換スチレン(例えば、α−メチルスチレンなど)等が例示できる。これらの芳香族ビニル単量体は、単独で、又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの単量体のうち、通常は、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等、特にスチレンが使用される。
【0017】
ポリカーボネート系樹脂としては、ジヒドロキシ化合物から誘導されたものであり、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましく、特には2つの芳香族ジヒドロキシ化合物がある種の結合基を介して結合した芳香族ジヒドロキシ化合物(ビスフェノール)が好ましい。これらは公知の製法により製造されたものを使用でき、その製法に限定されるものではなく、市販の樹脂を使用することができる。
【0018】
エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物で、公知のものを使用できる。酢酸ビニルの鹸化度が高い方が、ガスバリア性や水蒸気バリア性が向上し好ましい。
【0019】
前記の樹脂の中でも無機物を高充填するA層に用いる熱可塑性樹脂Aとしては、柔軟性を確保した上で、高い水蒸気バリア性が容易に得られるという観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、更に好ましくはポリプロピレン系樹脂である。また、A層の熱可塑性樹脂AとB層の熱可塑性樹脂Bは、必ずしも同種の樹脂に限定されるものではないが、異種の樹脂で行う場合は、当然の事ながら各層間の接着が十分である樹脂の組み合わせを選択する必要がある。
【0020】
本発明でいう「鱗片状無機物」とは、アスペクト比を持ち平板状の形状をしている無機物である。本発明で使用される鱗片状無機物としてはマイカ、タルク、モンモリロナイト、スメクタイト、ベンナイトなどの無機物があり、特に限定されるものではないが、好ましくはこれら鱗片状無機物の表面に有機処理を施し、樹脂との分散性を向上させた鱗片状無機物を用いることができる。
【0021】
鱗片状無機物の形状は、特に限定されるものではないが、アスペクト比が5〜5000、好ましくは10〜1000であるものを用いることができる。アスペクト比が5未満では、鱗片状無機物の異方性が不十分であり、シート化する際のせん断応力等による鱗片状無機物の配向が期待できず、水蒸気バリア性発現が難しくなる。また、5000を超えると鱗片状無機物が大きくなりすぎ、鱗片状無機物間に隙間が生じ、密集した配列が期待できず水蒸気バリア性発現が難しくなる。鱗片状無機物の長径の平均長さは、0.01〜200μm、好ましくは、0.05〜100μm、特に好ましくは0.1〜50μmのものを用いることができる。
【0022】
上記の無機物高充填層A内の熱可塑性樹脂Aに対する鱗片状無機物の添加量は30〜80質量%が好ましい。鱗片状無機物の添加量が30質量%未満では、熱可塑性樹脂に対して鱗片状無機物の添加量が少なく、鱗片状無機物間に隙間が生じ水蒸気バリア性発現効果が得られない。また、鱗片状無機物の添加量が80質量%を超えると、無機物高充填層A内の熱可塑性樹脂量が少なくなり、折り曲げた際にクラックが発生するなどシートとしての柔軟性が得られない。
【0023】
上記の無機物高充填層Aのシート全体に対する総厚みは5%以上、50%未満である。5%未満では、無機物高充填層Aの厚みが薄すぎ、十分な水蒸気バリア性が発現できない。また、50%以上では、無機物高充填層Aが熱可塑性樹脂層Bに対して多くなり、シートとしての柔軟性を保持できない。
【0024】
本発明の多層シートを製造する方法について述べる。基本的には、多層構成を形成する樹脂を押出機に供給して溶融混練し、フィードブロックに供給して積層し、多層シートを押出成形する。例えば特開2007−307893号公報に記載されているように2台の押出機から樹脂が供給され、それぞれの流路からの溶融樹脂を、公知の積層装置であるマルチマニホールドタイプのフィードブロックとスクエアミキサーを用いる方法、もしくは、コームタイプのフィードブロックのみを用いることにより9層以上に多層化することができる。スクエアミキサーとは、ポリマー流路を断面積が四角状の流路に2分割し、さらに、分岐されたポリマーを、再度、厚み方向上下に積層されるように合わさる合流部を備えた公知の筒体である。
【0025】
本願発明の奇数層構成の多層シートを製造する方法には、前記方法により多層構成を形成した後、2層用マルチマニホールドダイを用いて、多層シートの片側にさらに1層積層させる方法などがある。
【実施例】
【0026】
<シート特性の評価方法>
各実施例および比較例で製膜したシートについて、以下の特性の評価を行った。
(A層およびB層の1層の平均厚み)
A層およびB層の1層あたりの平均厚みは、多層シート切片を切り出し、層構成を判断できるように端面を平滑にした後、レーザー顕微鏡(KEYENCE社製:VK‐8510)にてシート端面の観察を行い、厚みを測定した。厚み測定は、全層数の各層の厚みを測定し、A層およびB層の1層あたりの平均厚みを求めた。さらに、シート幅方向に5回実施し、その平均値を多層シートの1層あたりの平均厚みとした。
(水蒸気バリア性)
水蒸気透過度計(Lyssy:L80-5000)を用いて40℃、90%RHの条件で測定を行った。得られた結果は厚み100μmでの値に換算した値を水蒸気透過率(g/m2・dAy)とした。100μm厚みでの値への変換は、
100μm換算値=実測値×100/フィルム厚み
として求めた。
尚、本発明の実施例の多層シートは、A層が少なくとも4層以上の多層構成となっていることにより、ピンホールによって水蒸気バリア性が喪失するということは全く無かった。
(シート柔軟性)
JIS K5600に記載されているマンドレル試験を行いシートとしての柔軟性を確認した。150×50片状にサンプルを切り出し、心棒に沿わせて折り曲げた。折り曲げた際にクラックが生じた時の心棒の径によりシート柔軟性を評価した。
φ5mmの心棒にシートを巻きつけ、クラック(白化)が入らなければ○、φ5mmの心棒ではクラックが入ったが、φ8mmの心棒にシートを巻きつけクラックが入らなければ△、φ8mmの心棒にシートを巻きつけクラックが入れば×と3段階でシートの柔軟性を評価した。
【0027】
(実施例1)
A層としてポリプロピレン樹脂(SUN−ALLOMER社製 :PL400A)52質量%と、マイカ(ヤマグチマイカ社製:21P5(330)平均粒子径:22μm、アスペクト比70)48質量%をφ30mmの2軸押出機で溶融混練しペレット化したものを、φ40mmの単軸押出機で溶融混練し(マイカ添加量48質量%)、B層としてポリプロピレン樹脂(SUN−ALLOMER社製 :PL400A)をφ40mmの単軸押出機で溶融混練し、これらの溶融樹脂をフィードブロックを用いて合流積層させた後、2層用マルチマニホールドダイを用いてA層側の最表層にB層を積層させ、60℃に温調したロールで冷却固化させることで17層構成シートを製膜した。得られたシートの平均の総厚みは172μm(計算により求められる各層の平均厚み:A層:8μm、B層:12μm)であった。
【0028】
(実施例2,3、比較例3,4)
A層に添加するマイカの添加量を、それぞれ表1又は表2に記載したように10〜90質量%の範囲で変更した以外は、実施例1と同様にして多層シートを製膜した。
(実施例4,5)
多層シートの総厚みに対するA層の合計厚みの比率が、表1に示したようにそれぞれ45%および9%となるようにA層とB層の厚み比率を調整した以外は、実施例1と同様にして多層シートを製膜した。
(実施例6、7)
全層数をそれぞれ33層および11層とし、多層シートの総厚みに対するA層の合計厚みの比率が39%および37%になるように、各層の厚みを表1に示したように調整した以外は、実施例1と同様にして多層シートを製膜した。尚、得られた多層シートの総厚みは、それぞれ199μmおよび224μmであった。
(実施例8,比較例7)
A層として、それぞれマイカを48質量%および10質量%添加したHIPS樹脂(東洋スチレン社製:H850)を用い、B層としてABS樹脂(電気化学工業社製:SE−10)を用いた以外は、実施例1と同様にして多層シートを製膜した。
【0029】
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂(SUN−ALLOMER社製 :PL400A)をφ65mmの短軸押出機で溶融混練し、Tダイスを用いてシート化し、60℃に温調したロールで冷却固化させることでポリプロピレン単層シートを製膜した。
(比較例2)
ポリプロピレン樹脂(SUN−ALLOMER社製 :PL400A)74質量%と、マイカ(ヤマグチマイカ社製:21P5(330)平均粒子径:22μm、アスペクト比70)26質量%をφ30mmの2軸押出機で溶融混練しペレット化したものを、φ65mmの短軸押出機で溶融混練し、Tダイスを用いてシート化し、60℃に温調したロールで冷却固化させることで単層シートを製膜した。(マイカ添加量26質量%)
(比較例5)
多層シートの総厚みに対するA層の合計厚みの比率が2.8%となるようにA層とB層の厚み比率を表2に示したように調整し、多層シートの総厚みを359μmとした以外は、実施例1と同様にして多層シートを製膜した。
(比較例6)
多層シートの総厚みに対するA層の合計厚みの比率が67%となるようにA層とB層の厚み比率表2に示したように調整した以外は、実施例1と同様にして多層シートを製膜した。
【0030】
各実施例および比較例の評価結果を表1および表2に纏めて示した。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
偶数番目の層(A層)と奇数番目の層(B層)が交互に積層され、全層数が9層以上の奇数の層で構成され、前記A層が下記の(1)〜(2)のすべての要件を有し、前記B層が熱可塑性樹脂Bからなる熱可塑性樹脂多層シート。
(1)A層が、熱可塑性樹脂Aが70〜20質量%、鱗片状無機物が30〜80質量%の混合物からなる。
(2)複数のA層の厚みの合計がシートの総厚みに対して5%以上、50%未満である。
【請求項2】
熱可塑性樹脂Aが、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、およびポリビニリデンクロライド樹脂から選択したいずれか1種又は2種以上の混合物である請求項1に記載の熱可塑性樹脂多層シート。
【請求項3】
熱可塑性樹脂Aが、ポリオレフィン系樹脂である請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性多層シート。
【請求項4】
熱可塑性樹脂Bが、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリビニリデンクロライド樹脂からから選択したいずれか1種又は2種以上の混合物である請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性樹脂多層シート。
【請求項5】
鱗片状無機物が、アスペクト比が5以上の鱗片状である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂多層シート。

【公開番号】特開2012−158107(P2012−158107A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19592(P2011−19592)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】