説明

多層燃料チューブ

【課題】アルコール/ガソリン燃料の壁面透過量を大幅に防止することができ、しかも、低温での耐衝撃性、曲げこわさ等のチューブ性能が優れた多層燃料チューブを提供する。
【解決手段】3層以上の熱可塑性樹脂からなる層から構成される多層チューブであって、前記層が少なくとも、(A)ポリアミド11樹脂および/またはポリアミド12樹脂からなる層、(B)ポリアミド6樹脂からなる層及び(C)均一に分散された層状珪酸塩0.05〜30重量%を含むポリアミド樹脂からなる層であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール/ガソリン混合燃料等の壁面透過量が少なく、かつ低温での耐衝撃性等の特性に優れた多層燃料チューブに関する。特に自動車用に使用される多層燃料チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用の燃料チューブとしては、金属製や樹脂製のものが知られている。しかし、最近では道路の凍結防止剤による発錆の問題や、燃費向上を目的とする車重軽減の要請から、金属製チューブから樹脂製チューブに代替されつつある。
【0003】
ところで、樹脂製チューブは、金属製チューブに比較して燃料の壁面透過量が多い。特に、従来から用いられているポリアミド11樹脂またはポリアミド12樹脂製チューブでは、アルコール透過量が多いという欠点があった。したがって、アルコール/ガソリン混合燃料にも使用できる燃料チューブにするためには、肉厚を増加させる必要があり、この為に、配管の柔軟性が低下したり、重くなるという欠点、さらに材料面や生産性の面でコスト高になるという問題があった。また、使用条件が過酷な自動車用燃料チューブとしては、低温での耐衝撃性、曲げこわさ等のチューブ性能が不十分であった。
【0004】
この解決策として特許文献1(特開平5−293916号公報)には、均一に分散された層状珪酸塩1.5〜10重量%を含むポリアミド樹脂を使用した燃料用多層チューブが提案されているが、この樹脂を使用した燃料チューブにおいてもアルコール/ガソリンの壁面透過量を防止するには充分とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−293916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点を解決することである。即ち、アルコール/ガソリン燃料の壁面透過量を大幅に防止することができ、しかも、低温での耐衝撃性、曲げこわさ等のチューブ性能が優れた多層燃料チューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、3層以上の熱可塑性樹脂からなる層から構成される多層チューブであって、前記層が少なくとも、(A)ポリアミド11樹脂および/またはポリアミド12樹脂からなる層、(B)ポリアミド6樹脂からなる層及び(C)均一に分散された層状珪酸塩0.05〜30重量%を含むポリアミド樹脂からなる層であることを特徴とする多層燃料チューブに関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多層燃料チューブは、燃料の壁面透過を大幅に防止することができ、また、低温での耐衝撃性、曲げこわさ等のチューブ性能が優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は本発明の多層燃料チューブの一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明に用いる(A)成分のポリアミド11樹脂としては、酸アミド結合(−CONH−)を有する次式:(−CO−(CH210−NH−)nで示されるポリアミドが代表的なものであり、11−アミノウンデカン酸またはウンデカンラクタムを重合させて得ることができる。
【0011】
(A)成分のポリアミド12樹脂としては、酸アミド結合(−CONH−)を有する次式:(−CO−(CH211−NH−)nで示されるポリアミドが代表的なものであり、12−アミノドデカン酸またはドデカンラクタムを重合させて得ることができる。
【0012】
ポリアミド11樹脂及びポリアミド12樹脂は、前記モノマーを主成分(50%以上)とする共重合体であってもよい。
【0013】
共重合体の場合に用いる他のモノマーとしては、ε−カプロラクタム、6−アミノカプロン酸、ε−エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、α−ピロリドン、α−ピペリドン並びにヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等のジアミン及びテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸などを挙げることができる。またポリアミド11樹脂及びポリアミド12樹脂のモノマー同士の共重合体であってもよい。
【0014】
また本発明に用いる(A)成分は、ポリアミド11樹脂やポリアミド12樹脂を主成分とする他のポリアミド樹脂またはその他のポリマーとの混合物であってもよい。混合物中のポリアミド11樹脂及び/またはポリアミド12樹脂の含有率は、40重量%以上が好ましい。
【0015】
混合する他のポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6・10、ポリアミド6・12、ポリアミド12・12、ポリアミド6/66共重合、ポリアミド6/12共重合等を挙げることができる。また、その他のポリマーとしては、ポリプロピレン、アクリロニトリル・ブダジエン・スチレン共重合樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネ−ト、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を挙げることができる。
【0016】
また、本発明に用いる(A)成分には可塑剤を配合することもできる。可塑剤としては、例えば、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、p−ヒドロキシ安息香酸と炭素数6〜21の直鎖または分岐鎖アルコールとのエステル(例えば、2−エチルヘキシルp−ヒドロキシベンゾエート)等を挙げることができる。
【0017】
可塑剤の配合量はポリアミド樹脂成分100重量部に対して、0〜30重量部、好ましくは0〜15%重量部である。可塑剤の配合量が30重量部を超える場合には、チューブの破壊圧力が低下し、またブリードアウトの問題が発生するので好ましくない。
【0018】
本発明に用いる(A)成分には衝撃剤を配合することもできる。衝撃剤としては、例えば、アイオノマー、エチレンプロピレン共重合体、エチレンプロピレンターポリマー、ポリスチレン・ポリエチレンブチレンブロック共重合体、ポリスチレン・水添ポリイソプレンブロック共重合体、エチレンオクテンゴム等のゴム、エラストマー、もしくはそれらの変性物、さらにこれらの混合物等が使用できる。
【0019】
衝撃剤の配合量はポリアミド樹脂成分100重量部に対して、0〜20重量部、好ましくは0〜10重量部である。衝撃剤の配合量が20重量部を超える場合には、チューブの破壊圧力が低下し、また耐候性の問題が発生するので好ましくない。
【0020】
本発明の(A)成分として使用するポリアミド11樹脂および/またはポリアミド12樹脂からなる樹脂は、多層燃料チューブのなかで少なくとも1層は使用される。好ましくは、本発明の多層燃料チューブの最外層に使用される。(A)成分の樹脂を使用しないと道路の凍結防止剤により樹脂が劣化してしまう。
【0021】
本発明の(A)成分の層の厚さは、多層の数により変化するが、チューブの肉厚の3〜90%が好ましい。あまりに厚すぎると均一に分散された層状珪酸塩0.05〜30重量%を含むポリアミド樹脂からなる層が薄くなることによって燃料透過性が低下し好ましくない。
【0022】
本発明に用いる(B)成分のポリアミド6樹脂としては、酸アミド結合(−CONH−)を有する次式:(−CO−(CH25−NH−)nで示されるポリアミドが代表的なものであり、ε−カプロラクタムまたは6−アミノカプロン酸を重合させて得ることができる。
【0023】
本発明に用いる(B)成分のポリアミド6樹脂は、前記モノマーを主成分(50wt%以上)とする共重合体であってもよい。
【0024】
共重合体の場合に用いる他のモノマーとしては、ε−エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、ウンデカラクタム、12−アミノドデカン酸、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン並びにヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等のジアミンおよびテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸などを挙げることができる。
【0025】
また、本発明に用いる(B)成分は、ポリアミド6樹脂を主成分とする他のポリアミド樹脂またはその他のポリマーとの混合物であってもよい。混合中のポリアミド6樹脂の含有率は50重量%以上が好ましい。
【0026】
混合する他のポリアミド樹脂としては、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1212、ポリアミド6/66コポリマー、ポリアミド6/12コポリマー等を挙げることができる。また、その他のポリマーとしては、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を挙げることができる。
【0027】
また、本発明に用いる(B)成分には可塑剤を配合することもできる。可塑剤としては、例えば、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、p−ヒドロキシ安息香酸と炭素数6〜21の直鎖または分岐鎖アルコールとのエステル(例えば、2−エチルヘキシルp−ヒドロキシベンゾエート)等を挙げることができる。
【0028】
可塑剤の配合量はポリアミド樹脂成分100重量部に対して、0〜30重量部、好ましくは0〜15%重量部である。可塑剤の配合量が30重量部を超える場合には、チューブの破壊圧力が低下し、またブリードアウトの問題が発生するので好ましくない。
【0029】
また、本発明に用いる(B)成分には衝撃剤を配合することもできる。衝撃剤としては、例えば、アイオノマー、エチレンプロピレン共重合体、エチレンプロピレンターポリマー、ポリスチレン・ポリエチレンブチレンブロック共重合体、ポリスチレン・水添ポリイソプレンブロック共重合体、エチレンオクテンゴム等のゴム、エラストマー、もしくはそれらの変性物、さらにこれらの混合物等が使用できる。
【0030】
衝撃剤の配合量はポリアミド樹脂成分100重量部に対して、0〜35重量部、好ましくは10〜20重量部である。衝撃剤の配合量が35重量部を超える場合には、チューブの破壊圧力が低下し好ましくない。
【0031】
また、本発明に用いる(B)成分には導電性カーボンブラックを配合することもできる。導電性カーボンブラックを配合することにより樹脂が導電性となり、静電気による爆発等の予防が可能となる。これら導電性の樹脂を使用した層は本発明のいずれの層に用いても何ら問題はないが、好ましくは最内層に使用する。なお、ここで用いる導電性カーボンブラックとしては、良好な鎖状構造を有し、凝集密度の大きいものが好ましく、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等を挙げることができ、中でも。導電性カーボンブラックの量としてはその組成物に対して3〜30重量部%が好ましい。
【0032】
本発明の(B)成分として使用するポリアミド6樹脂は、多層燃料チューブのなかの1層として使用される。好ましくは、本発明の多層燃料チューブの最内層に使用される。(B)成分の樹脂を使用しないと低温衝撃性が悪くなる。
【0033】
本発明の(B)成分の層の厚さは、多層の数により変化するが、チューブの肉厚の3〜90%が好ましい。あまりに厚すぎると均一に分散された層状珪酸塩0.05〜30重量%を含むポリアミド樹脂からなる層が薄くなることによって燃料透過性が低下し、あまりに薄すぎるとチューブの低温での耐衝撃性が低下して好ましくない。
【0034】
本発明に用いる(C)成分の均一に分散された層状珪酸塩を含むポリアミド樹脂は、分子中に酸アミド結合(−CONH−)を有する重合体であり、具体的には、ε−カプロラクタム、6−アミノカプロン酸、ω−エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、α−ピロリドン、α−ピペリドンなどから得られる重合体又は共重合体、並びにヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等のジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸とを重縮合して得られる重合体もしくは共重合体又はこれらのブレンド物を例示することができる。好ましくはポリアミド6、ポリアミド66およびポリアミド6/66である。ポリアミド6/66共重合樹脂の場合では、共重合比率は、95/5〜5/95重量%の範囲で任意に選択することができる。
【0035】
本発明に用いる(C)成分の均一に分散された層状珪酸塩を含むポリアミド樹脂の層状珪酸塩は、珪酸マグネシウムまたは珪酸アルミニウムの層で構成される層状フィロ珪酸塩等を挙げることができる。
【0036】
層状フィロ珪酸塩の具体例としては、モンモリロナイト、サポナイト、パイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スティプンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロサイトなどを挙げることができる。これらは天然物でも、合成物でもよい。これらのなかでもモンモリロナイトが好ましい。
【0037】
本発明に用いる(C)成分の均一に分散された層状珪酸塩を含むポリアミド樹脂の均一に分散された状態とは、一辺の長さが0.002〜1μmで、厚さが6〜20Åの層状珪酸塩がポリアミド樹脂中に分散させた際、平均20Å以上の層間距離を保ち、均一に分散されていることである。ここで層間距離とは層状珪酸塩の平板の重心間距離を言い、均一に分散するとは、層状珪酸塩の平板が、平均的に5層以下で重なった多層物が平行に、またはランダムに、もしくは平行とランダムに混在した状態で、その50重量%以上が、好ましくは70重量%以上が局所的な塊を形成することなく分散する状態を言う。
【0038】
層状珪酸塩が多層状粘土鉱物である場合には、ジオクタデシルアミン、フェニレンジアミンのようなアミン、4−アミノ−n−酪酸、12−アミノドデカン酸のようなアミノ酸またはε−カプロラクタムのようなラクタム類の膨潤化剤と接触させて、予め層間を拡げて層間にモノマーを取り込みやすくした後、重合して均一に分散させることもできる。また、膨潤化剤を用い、予め層間を20Å以上に拡げて、これをポリアミド樹脂もしくはこれを含む樹脂と溶融混合して均一に分散させる方法によってもよい。
【0039】
層状珪酸塩の配合量はポリアミド樹脂100重量部に対して、0.05〜30重量部、好ましくは1〜10重量部、より好ましく1.5〜5重量部である。層状珪酸塩の配合量が0.05重量部未満のときには、燃料透過抑制効果が十分でなく、30重量部を超えるときには、多層チューブの組成物層を薄くしても、チューブ成形が困難になるとともに、低温での耐衝撃強度や伸び率が低下し、特に自動車用チューブ規格に適合しなくなるので好ましくない。
【0040】
本発明の(C)成分の層の厚さは、多層の数により変化するが、チューブの肉厚の3〜90%が好ましい。より好ましくは5〜80%、さらに好ましくは20〜50%である。(C)の厚さが90%を超えるとチューブの柔軟性や低温衝撃性が損なわれ、3%未満であると有効な燃料透過防止性が得られず好ましくない。
【0041】
本発明の多層燃料チューブの層の数は3層以上であるが、チューブ作成装置の機構から判断して7層以下、好ましくは3層〜6層、より好ましくは4層および5層の燃料チューブである。
【0042】
また、本発明の多層燃料チューブに使用する樹脂成分として、前記(A)、(B)および(C)成分以外に、さらに他の熱可塑性樹脂を用いることができる。他の熱可塑性樹脂としては、ポリアミド11樹脂および/またはポリアミド12樹脂、ポリアミド6樹脂、ポリアミド6/66共重合樹脂と接着できる熱可塑性樹脂、もしくは接着性樹脂を介してポリアミド樹脂と接着できるものであれば何ら制限されるものではない。
【0043】
本発明で使用できる他の熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、1,2−ポリブタジエン系樹脂、塩ビ系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂が好ましく使用され、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂がより好ましく使用され、ポリオレフィン系樹脂が最も好ましく使用される。
【0044】
ポリオレフィン系樹脂の例として、ポリエチレン、ポリプロピレンやこれらのコポリマーが挙げられる。さらに、これらのポリオレフィンは変性されたものであっても良い。特にポリエチレンやポリプロピレンを併用する場合には無水マレイン酸やグリシジル基含有モノマー等で変性したものを使用することが望ましい。
【0045】
ポリエステル系樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートが挙げられる。
【0046】
ポリフェニレンサルファイド系樹脂の例としては、ポリフェニレンサルファイドが挙げられる。
【0047】
ポリアミド系樹脂の例としては、ポリカプロラクタム、ポリラウロラクタムなどのラクタム重合物、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸重縮合物、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンドデカミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミドなどのアルキレンジアミンとジカルボン酸の重縮合物、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタラミドの共重合体、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンイソフタラミドの共重合体などの半芳香族ポリアミドなどが挙げられるが、得に制限されるものではない。
【0048】
本発明で使用される他の熱可塑性樹脂の層の厚さは、多層の数により変化し、多層の層厚が100%になるように調整されるが、チューブの肉厚の3〜90%が好ましい。また、多層にする位置としては、通常は中間層に位置するように配置される。
【0049】
多層燃料チューブの外径は、燃料(例えばガソリン)の流量を考慮し、肉厚はガソリンの透過性が増大せず、また、通常のチューブの破壊圧力を維持できる厚さで、かつ、チューブの組み付け作業容易性及び使用時の耐振動性が良好な程度の柔軟性を維持することができる厚さに設計されるが、特別限定されるものではない。好ましくは、外径は4〜15mm、肉厚は0.5〜2mmである。
【0050】
本発明の多層燃料チューブを製造する方法としては、例えば、構成する層の数または材料の数に対応する数の押出機より押出された溶融樹脂を、一つの多層チューブ用ダイスに導入し、ダイス内またはダイスを出た直後に各層を接着させ、その後通常のチューブ成形と同様にして製造する方法、また、一旦単層チューブを成形した後、そのチューブの外側に他の層をコーティングする方法等を挙げることができる。チューブの形状は直管であってもいいし、蛇腹状に加工されていても構わない。直管の多層チューブに対しては、その外側に保護層を設けるようにしてもよく、その形成材料としては、例えば、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、エピクロルヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、シリコンゴム等のゴムを挙げることができる。
【0051】
本発明の多層燃料チューブは、アルコールおよび/またはガソリンを燃料として使用するチューブに最適に用いられる。具体的には、発電機用の燃料チューブや自動車用燃料チューブが挙げられる。好ましくは自動車用の燃料チューブである。
【0052】
実施例
以下に実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における物性測定は次のように行った。
【0053】
(物性評価)
(チューブ低温耐衝撃性)
SAE J2260に記載の方法で評価した。
【0054】
(層状珪酸塩の分布状態)
層状珪酸塩を含むポリアミド樹脂をスライスし、透過電子顕微鏡による測定で判定した。
【0055】
(層状珪酸塩の層間距離)
層状珪酸塩を含むポリアミド樹脂をX線回折により測定した。
【0056】
(燃料透過性)
200mmにカットしたチューブの片端を密栓し、内部にFuelC(イソオクタン/トルエン=50/50重量比)とメチルアルコールを85/15重量比に混合したアルコール/ガソリンを入れ、残りの片端も密栓した後、全体の重量を測定し、次いで試験チューブを60℃のオーブンに入れ、重量変化を測定し燃料透過性を評価した。
【0057】
実施例1
層状珪酸塩の一単位の厚みが平均的に9.5Åで、一辺の長さが約0.1μmのモンモリロナイト100gを10リットルの水に分散させ、これに51.2gの12−アミノドデカン酸と24mlの濃塩酸を加え、5分間攪拌した後、真空乾燥し、12−アミノドデカン酸アンモニウムイオンとモンモリロナイトの複合体を調整した。
【0058】
得られた複合体中の層状珪酸塩の層間距離をX線回折により測定したところ、18Åであった。次に、ε−カプロラクタム10kg、水1リットルおよび前記複合体230gを攪拌翼付きの反応容器に入れ、100℃で反応系内が均一になるまで攪拌した。
【0059】
さらに温度を290℃に上昇させ、43kg/cm2の加圧下で一時間以上攪拌した。その後、放圧し、水分を揮発させながら常圧で3時間反応させた。反応終了後、反応容器の下部ノズルからストランド状に取り出した反応物を水冷した後、カッティングし、ポリアミド6樹脂(平均分子量22,000)およびモンモリロナイトからなるペレットを得、これを真空乾燥して、多層チューブの内層用材料に用いる組成物を得た(層状珪酸塩含有率1.8重量%、以下この組成物を樹脂1という)。
【0060】
また、外層材料として可塑剤、衝撃剤入りポリアミド12樹脂(宇部興産(株)製UBESTA3035MJ1)を、最内層材料として可塑剤、衝撃剤入りポリアミド6樹脂(宇部興産(株)製UBEナイロン1024JI)を、中間層用材料として変性ポリオレフィン樹脂(宇部興産(株)製UボンドF1100)を準備した。
【0061】
多層チューブ成形用装置として、最内層用押出機、内層用押出機、中間層用押出機および外層用押出機を備え、この4台の押出機から吐出された樹脂をアダプターによって集めチューブ状に成形するダイス、チューブを冷却し寸法制御するサイジングダイおよび引取り機等からなる装置を用い、最内層用押出機のホッパーにポリアミド6樹脂を、内層用押出機のホッパーに上記バリア層用材料を、中間層用押出機のホッパーに変性ポリオレフィン樹脂を、外層用押出機のホッパーにポリアミド12樹脂を投入し、図1に示す断面の内径6mm、外径8mmの多層チューブを作製した。チューブの最内層の厚みは0.3mm、内層の厚みは0.25mm、中間層の厚みは0.1mm、外層の厚みは0.35mmであった。得られたチューブの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0062】
実施例2
ポリアミド6樹脂をポリアミド6/66共重合樹脂(98%硫酸による相対粘度4.4(JIS K6810にて測定)、共重合比率は80/20重量%)に代えたほかは実施例1と同様にして内層用材料に用いる組成物(以下、この組成物を樹脂2という)を調製し、実施例1と同様にしてチューブを成形し、物性を評価をした。結果を表1に示す。
【0063】
実施例3
最内層材料を衝撃材入りポリアミド6樹脂(宇部興産(株)製UBEナイロン1018I)に代えたほかは、実施例1と同様にチューブを成形し、物性を評価した。結果を表1に示す。
【0064】
実施例4
最外層材料をポリアミド12樹脂(宇部興産(株)製UBESTA3030LUX)に代えたほかは、実施例2と同様にチューブを成形し、物性を評価した。結果を表1に示す。
【0065】
実施例5
最内層材料を導電性カーボンブラック(ライオン(株)製、ケッチェンブラックEC−600JD)を8重量%含有するポリアミド6樹脂(以下、この組成物を樹脂3という)に代えたほかは実施例2と同様にしてチューブを成形し、物性を評価した。結果を表1に示す。
【0066】
実施例6
内層と最内層の間にもう一つの中間層がくるような多層ダイスに代えたほかは、実施例2と同様にして4種5層チューブを成形し、物性を評価した。結果を表1に示す。そのチューブの層構成は、外層側から、可塑剤、衝撃剤入りポリアミド12樹脂(宇部興産(株)製UBESTA3035MJ1)、変性ポリオレフィン樹脂(宇部興産(株)製UボンドF1100)、樹脂2、変性ポリオレフィン樹脂(宇部興産(株)製UボンドF1100)、可塑剤、衝撃剤入りポリアミド6樹脂(宇部興産(株)製UBEナイロン1024JI)で、それぞれの層厚みは、外層側から0.35mm、0.05mm、0.25mm、0.05mm、0、30mmであった。
【0067】
実施例7
押出機を5台にして実施例2のさらに内層側に樹脂3を有する5種5層チューブを成形し、物性を評価した。その結果を表1に示す。それぞれの層厚みは、外層側から0.35mm、0.1mm、0.25mm、0.25mm、0、05mmであった。
【0068】
比較例1
ポリアミド6樹脂をポリアミド12樹脂(平均分子量35,000)に代えたほかは実施例1と同様にして最内層用材料に用いる組成物(以下、この組成物を樹脂4という)を調整し、その材料を多層チューブの最内層に使用し、上記記載のポリアミド12樹脂(宇部興産(株)製UBESTA3035MJ1)を内層、中間層、外層に使用して、実施例1と同様に多層チューブを成形し、物性を評価した。最内層の層厚みは0.3mmで、内層、中間層、外層の合計厚みは0.7mmであった。結果を表1に示す。
【0069】
比較例2
樹脂1を最内層に使用し、変性ポリオレフィン樹脂(宇部興産(株)UボンドF1100)を内層に、ポリアミド12樹脂(宇部興産(株)製UBESTA3035MJ1)を中間層、外層に使用して、実施例1と同様に多層チューブを成形し、物性を評価した。最内層の厚みは0.3mm、内層の厚みは0.1mm、中間層、外層の合計厚みは0.6mmであった。結果を表1に示す。
【0070】
比較例3
可塑剤、衝撃剤入りポリアミド6樹脂(宇部興産(株)製UBEナイロン1024JI)を最内層に使用したほかは、比較例2と同様に多層チューブを成形し、物性を評価した。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【符号の説明】
【0072】
1 最内層
2 内層
3 中間層
4 外層
5 最外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層以上の熱可塑性樹脂からなる層から構成される多層チューブであって、前記層が少なくとも、(A)ポリアミド11樹脂および/またはポリアミド12樹脂からなる層、(B)ポリアミド6樹脂からなる層及び(C)均一に分散された層状珪酸塩0.05〜30重量%を含むポリアミド樹脂からなる層であることを特徴とする多層燃料チューブ。
【請求項2】
前記(A)ポリアミド11樹脂および/またはポリアミド12樹脂からなる層が、多層チューブの最外層にある請求項1記載の多層燃料チューブ。
【請求項3】
前記(B)ポリアミド6樹脂からなる層が、多層チューブの最内層にある請求項1または2記載の多層燃料チューブ。
【請求項4】
前記(C)のポリアミド樹脂が、ポリアミド6樹脂および/またはポリアミド6/66共重合樹脂である請求項1〜3記載の多層燃料チューブ。
【請求項5】
最内層が、導電性樹脂からなる層である請求項1〜4記載の多層燃料チューブ。
【請求項6】
自動車用多層燃料チューブである請求項1〜5記載の多層燃料チューブ。
【請求項7】
チューブの形状が蛇腹状である請求項1〜6記載の多層燃料チューブ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−54055(P2010−54055A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278801(P2009−278801)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【分割の表示】特願2000−109162(P2000−109162)の分割
【原出願日】平成12年4月11日(2000.4.11)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】