説明

多層配線板の製造方法および多層配線板

【課題】絶縁樹脂層の表面段差が小さい多層配線板の製造方法、および、それにより得られる多層配線板を提供する。
【解決手段】(a)少なくとも一方の面に回路を備えた回路付基板2と、キャリアフィルム11表面に絶縁樹脂層12が形成されてなる絶縁樹脂付フィルム1であって絶縁樹脂層における温度170℃、面圧力0.65MPa・s、保持時間10分後の樹脂フロー量が50%以上である絶縁樹脂付フィルム1と、金属板3とをそれぞれ準備する工程;および、(b)回路付基板2と絶縁樹脂付フィルム1と金属板3とを、回路付基板の回路面と、絶縁樹脂付フィルムの絶縁樹脂層面とが対向し、かつ、絶縁樹脂付フィルムのキャリアフィルム面と金属板とが対向するように順に配置して熱圧着することにより、回路付基板表面に絶縁樹脂付フィルムをラミネートする工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線板の製造方法、および、それにより得られる多層配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
多層配線板は、一般的に、(1)内層回路となる回路(内層回路)が形成された絶縁基板上に、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸し半硬化状態にしたプリプレグと呼ばれる材料を銅箔と重ねて熱プレスにより積層一体化し、(2)ドリルにより層間接続用のスルーホールと呼ばれる孔をあけ、(3)スルーホール内壁と銅箔表面上に無電解めっきを行って、必要ならばさらに電解めっきを行って所要厚さの回路導体層(配線層)を形成した後、(4)不要な箇所の銅を除去することにより製造されている。
近年、電子機器の小型化、軽量化、多機能化が一段と進み、これに伴い、LSIやチップ部品等の高集積化が進み、その形態も多ピン化、小型化へと急速に変化している。このため、多層配線板においては、電子部品の実装密度を向上させるために、微細配線化の開発が進められている。こうした微細配線が可能な多層配線板の製造手法として、ガラスクロスを含まない絶縁樹脂をプリプレグの代わりに用い、必要な部分のみをバイアホール(ビアホール)で接続しながら配線層を形成していくビルドアップ法があり、軽量化や小型化、微細化に適した手法として主流になりつつある。
このビルドアップ方式で絶縁層を形成する方法としては、ラミネート方式、プレス方式、カーテンコート法、ロールコート法等が実施されている。このなかで、ラミネート方式は、ドライフィルム(絶縁樹脂付フィルム)を用いて連続的に短時間で両面同時に絶縁層を形成できることから、高生産性の点で有望である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−228581号公報
【特許文献2】特開2001−151853号公報
【特許文献3】特開平11−87927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラミネート方式で絶縁層を形成する場合は、内層回路の影響を受けやすく、内層回路の間隔が大きいとドライフィルムの絶縁樹脂がそのような内層回路の凹凸の形状に追従し、また、内層回路の高さが高いとドライフィルムの絶縁樹脂の埋め込み性が悪くなり、その結果、絶縁樹脂層表面の段差が大きくなり、絶縁樹脂層上への新たな回路形成に支障を来たしやすい。一方、プレス装置を用いてプレス法により絶縁層を形成する場合は、絶縁層の平坦性の観点からは有利であるが、プレス装置では一段毎に内層回路付基板/絶縁樹脂付フィルム/熱盤からなる積層体を構成する必要があり、ラミネート法に比べて生産性が低下し、さらに、ゴミ等の異物が混入しやすくなるために品質が低下する恐れがある。一方、カーテンコート法やロールコート法によると、内層回路自身の持つ段差が絶縁樹脂層表面の形状に与える影響が大きくなりやすく、また、片面ずつの塗布が必要であるなど、生産性が大幅に劣る。
このようなことから、ラミネート方式が生産性の点から最も有望であるが、その場合は、内層回路の間隔が大きくても、また内層回路の高さが高くても絶縁樹脂層表面の段差が大きくならないような絶縁樹脂層とラミネート方式が必要となっている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ラミネート方式を用いて絶縁樹脂層表面の段差が小さい多層配線板を製造する方法と、それにより得られる多層配線板とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第一の側面によれば、以下の工程を含む多層配線板の製造方法が提供される:(a)少なくとも一方の面に回路を備えた回路付基板と、キャリアフィルム表面に絶縁樹脂層が形成されてなる絶縁樹脂付フィルムであってその絶縁樹脂層における温度170℃、面圧力0.65MPa・s、保持時間10分後の樹脂フロー量が50%以上である絶縁樹脂付フィルムと、金属板とをそれぞれ準備する工程;および(b)回路付基板と絶縁樹脂付フィルムと金属板とを、回路付基板の回路面と絶縁樹脂付フィルムの絶縁樹脂層面とが対向し、かつ、絶縁樹脂付フィルムのキャリアフィルム面と金属板とが対向するように順に配置して熱圧着することにより、回路付基板表面に絶縁樹脂付フィルムをラミネートする工程。
本発明の第二の側面によれば、上記本発明の多層配線板の製造方法により得られる多層配線板が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多層配線板の製造方法によれば、表面平滑性に優れ、微細配線化に適した多層配線板を提供することができる。得られた多層配線板を用いて、配線の微細化が進行した場合でも、段差が原因のレジストの欠けや追従不足を大幅に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態において用いられる絶縁樹脂付フィルムおよび回路付基板の一例を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明に係る多層配線板の製造方法の一実施形態を模式的に示した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態を模式的に示した図面を参照しながら本発明を詳しく説明する。
まず、上記工程(a)として、少なくとも一方の面に内層回路となる回路を備えた回路付基板と、キャリアフィルム表面に絶縁樹脂層が形成されてなる絶縁樹脂付フィルムであって絶縁樹脂層における温度170℃、面圧力0.65MPa・s、保持時間10分後の樹脂フロー量が50%以上である絶縁樹脂付フィルムと、金属板とをそれぞれ用意する。各々を準備する順序は、特に限定されない。
図1(a)にみるように、絶縁樹脂付フィルム1は、キャリアフィルム11表面に絶縁樹脂層12が形成されてなるものである。このキャリアフィルム11としては、特に限定されることはなく、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の各種の熱可塑性プラスッチックフィルムを好ましく用いることができ、またアルミ箔、銅箔などの金属箔を用いることもできる。その厚みも特に限定されることはないが、取り扱い性や絶縁層の塗工性(しわ発生)等の観点から10μm以上であることが好ましく、材料費低減等の観点から100μm以下であることが好ましく、15〜70μmであることがより好ましい。
【0010】
上記絶縁樹脂層12としては、温度170℃、面圧力0.65MPa・sの条件下で保持時間10分後の樹脂フロー量が50%以上であるものが用いられる。
ここで、温度170℃、面圧力0.65MPa・s、保持時間10分後の樹脂フロー量とは、絶縁樹脂付フィルム1の絶縁樹脂層12の樹脂が、所定の加温・加圧条件で所定時間後にどれだけ流れ出すかを調べるものである。これを調べる方法としては、たとえば、以下の方法が挙げられる。(1)絶縁樹脂が付いていない(絶縁樹脂層が形成されていない)キャリアフィルムを100×100mm角に切断して、その単体での重量を測定する。(2)絶縁樹脂付フィルムを100×100mm角に切断して測定サンプルとし、その重量を測定し、(1)のキャリアフィルムの重量を差し引いた絶縁樹脂のみの重量を求める。(3)温度170℃、面圧力0.65MPa・sで10分間保持できる加圧可能な熱盤を有する装置を用いて(2)の測定サンプルを加温・加圧する。(4)10分間の加温・加圧中に、絶縁樹脂が熱により軟化する性質があれば流れ出すため、10分経過後に所定の大きさ(たとえば直径80mm)の金型で測定サンプルを打ち抜いて、流れ出した部分を除去する。(5)打ち抜いた測定サンプルの重量を測定して100×100mmサイズに換算する。この換算重量から(1)のキャリアフィルムの重量を差し引いて、絶縁樹脂のみの重量を求め、得られた絶縁樹脂の重量と(2)の絶縁樹脂の重量との差を、元の絶縁樹脂の重量に対する樹脂フロー量として表す。
【0011】
本発明においては、この樹脂フロー量が50%以上であれば、たとえば内層回路の間隔が最大で1000/1000mmであるようなパターンや直径5mmの丸穴がいくつも存在するようなパターンにおいても、ラミネートにより充分に絶縁樹脂を埋め込むことができ、しかも、ラミネート時に以下に述べる金属板を用いることにより、絶縁樹脂層表面の段差を、たとえば2μm以下程度にまで解消することができる。樹脂フロー量の上限については、特に限定はされないが、あまり大きくなりすぎると樹脂が流れすぎて絶縁樹脂層の膜厚が変化しやすくなる傾向があるため、概ね85%以下であることが好ましい。
【0012】
このような樹脂フロー特性を有していれば、この絶縁樹脂層を構成する成分は特に限定はされず、たとえば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂などを単独で、あるいは組み合わせて任意に用いることができるが、特に、電気絶縁性およびはんだ耐熱性の観点より、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
その場合の硬化剤としては、特に限定はされず、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤など一般的にエポキシ樹脂硬化剤として用いられるものを使用することができるが、保存安定性の観点から、シアノエチル化イミダゾールを好ましく用いることができる。すなわち、絶縁樹脂層には、必須成分としてエポキシ樹脂とシアノエチル化イミダゾールを含む樹脂組成物を好ましく用いることができる。この2成分とその他の樹脂および/またはその他の硬化剤を組み合わせて用いることも好ましい。具体的には、たとえば、フィルム成分として高分子量化合物を用いることも好ましく、アクリルゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等のゴム化合物や、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等を用いることもできる。また、これらの樹脂と熱硬化剤を併用することもでき、たとえば、フェノール樹脂とジシアンジアミドの併用、フェノール樹脂とシアノエチル化イミダゾールの併用なども可能である。フェノール樹脂は、ノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールノボラック型など、いずれの種類のものであってもよい。
【0013】
エポキシ樹脂としては、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、りん含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物等を用いることができる。これらのエポキシ樹脂は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、樹脂フロー性を考慮すれば、液状型エポキシ樹脂と固形型エポキシ樹脂を併用することが好ましい。
【0014】
シアノエチル化されたイミダゾール、すなわちシアノエチル化イミダゾールとしては、たとえば、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイトを好ましく用いることができる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらシアノエチル化イミダゾールは、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜1.0重量部用いることが、硬化性などの観点から好ましい。
【0015】
絶縁樹脂層は、樹脂フロー特性に影響のない範囲内で、たとえば、硬化促進剤、可塑剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、消泡剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤、難燃剤等の添加剤成分を含んでいてもよい。
【0016】
絶縁樹脂層12は、公知のいずれの方法により形成されていてもよく、たとえば、以上のような成分を含む樹脂組成物をキャリアフィルム11表面に、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の公知の方法により塗布し、乾燥させることにより好ましく形成することができる。その際、樹脂組成物は、必要に応じて任意の溶剤に希釈して用いてもよく、この希釈用溶剤としては、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチルエトキシプロピオネート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を好ましく使用できる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、混合系で用いてもよい。この溶剤の樹脂組成物への配合割合は、樹脂組成物の組成および塗膜形成方法に応じて適宜調整すればよく、たとえばコンマコータによりキャリアフィルム上に塗布する場合は、一般的に、溶剤を除く固形分が約30%〜約60%となるように溶剤の使用量を調節することが好ましい。
【0017】
塗布後の乾燥は、80〜110℃、1〜10分程度で行うことができる。乾燥温度が80℃より低く時間も1分未満であるような場合は、乾燥が充分に進まず絶縁樹脂層内の残存溶媒量が多くなり、その結果、樹脂フロー量が多くなりすぎたり残存溶媒の揮発により絶縁樹脂層内にボイドが発生したりする恐れがある。
一方、乾燥温度が110℃より高く時間も10分を超えるような場合は、乾燥が進みすぎて絶縁樹脂層表面での反応の進行によると思われる樹脂フロー量の低下が生じる恐れがある。
【0018】
絶縁樹脂層12の厚み(乾燥後の厚み)に関しては、絶縁性の観点から、最小絶縁距離が確保できる最小膜厚以上であることが好ましく、この最小絶縁距離は絶縁樹脂の組成により変わるものであるが、一般的には、30〜40μm以上であることが好ましい。絶縁樹脂層の膜厚を厚くすることは絶縁性の点では有利になるが、一方で、経済性の観点から、通常は60μm以下程度とすることが好ましい。
【0019】
次に、図1(b)にみるように、少なくとも一方の面に回路を備えた回路付基板2は、絶縁基板21表面に、内層回路となる第1の回路(第1の回路層)22aが形成されてなるものである。同図には、絶縁基板の片面にのみ回路(内層回路)が形成された回路付基板を示したが、たとえば両面銅張積層板を用いて得られるような、絶縁基板の両面に回路が形成されたものであってもよい。
【0020】
絶縁基板21としては、通常の配線板において用いられている公知の積層板、たとえば、ガラス布−エポキシ樹脂、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス紙−エポキシ樹脂等を使用することができ、特に制限されることはない。第1の回路22aは公知のいずれの方法により形成されていてもよく、銅箔と上記絶縁基板を張り合わせた銅張り積層板を用い、銅箔の不要な部分をエッチング除去するサブトラクティブ法や、上記絶縁基板の必要な箇所に無電解めっきによって回路を形成するアディティブ法等、公知の配線板の製造法を用いることができる。
【0021】
後述する工程(b)に先立ち、必要に応じて、第1の回路22aの表面の接着性を向上させるための内層回路表面処理を行ってもよい。この処理方法も、特に制限されることはなく、たとえば、次亜塩素酸ナトリウムのアルカリ水溶液により第1の回路22aの表面に酸化銅の針状結晶を形成し、形成した酸化銅の針状結晶をジメチルアミンボラン水溶液に浸漬して還元するなどの公知の方法を採用することができる。
【0022】
金属板としては、材質、厚み等制限されるものではないが、何回も使用可能な金属板が必要であることから、ステンレス板やアルミ板が最適である。厚みは厚くても問題ないが、熱伝達の均一性や金属板自身の変形等を考慮すれば、0.5〜1.0mm程度であることが好ましい。その大きさは、絶縁樹脂付フィルム全面を覆うことができる面積を有していればよい。
【0023】
以上に例示したような回路付基板、絶縁樹脂付フィルムおよびの金属板を準備したのち、工程(b)として、図2(a)にみるように、回路付基板2と絶縁樹脂付フィルム1と金属板3とを、回路付基板2の回路(内層回路)22a面と絶縁樹脂付フィルム1の絶縁樹脂層12面とが対向し、かつ、絶縁樹脂付フィルム1のキャリアフィルム11面と金属板3とが対向するようにして順に配置し、この全体を熱圧着して、回路付基板2表面に絶縁樹脂付フィルム1をラミネートする。熱圧着は、通常のラミネート法において用いられるラミネータを用いて行えばよい。
【0024】
本発明においては、ラミネータの熱盤と絶縁樹脂付フィルム1のキャリアフィルム11面との間に金属板3を挟んでラミネートが行われるようになり、このようにして金属板を介して上記所定の樹脂フロー特性を備えた絶縁樹脂層をラミネートすることにより、絶縁樹脂層の表面段差を小さくすることができるのである。たとえばラミネータの熱盤がゴム材質のものである場合などでは、熱や加圧によりゴムが変形して、その下の絶縁樹脂付フィルムも同様に変形しやすくなり、その結果、絶縁樹脂付フィルムが内層回路の凹凸の形状に追従して、表面段差が大きくなりやすい。しかし、本発明では、熱盤の下に金属板が存在することにより、金属板は熱や圧力で変形しないので、金属板の下の絶縁樹脂は内層回路の凹凸の形状には追従せずにフローしている状態となり、その結果、表面段差を小さくすることができると考えられる。金属板は、特に加熱をする必要はなく、通常は非加熱の状態で使用される。
【0025】
ラミネート時における熱圧着条件は、用いられる絶縁樹脂付フィルムの絶縁樹脂層の特性に応じて適宜設定すればよい。たとえば、加熱条件に関しては、絶縁樹脂の内層回路板への埋め込み性の観点から、絶縁樹脂付フィルムの絶縁樹脂の融点以上の温度に加熱されることが好ましい。加熱温度の上限に関しては、ラミネートする内層回路付基板の厚み、残存銅率などによる熱伝導性、加圧の均一性等の諸条件に応じて適宜設定することが好ましく、たとえば、基板が薄く残存銅率が低い場合は、加圧・加熱むらを考慮してより温度を上げる必要があるため、170℃以下とすることが好ましい。ここで、熱圧着の温度、すなわち熱圧着温度とは、ラミネータの熱盤温度をいう。加圧に関しては、圧力が低すぎると内層回路へ樹脂が流動しにくくなるため、0.2MPa・s以上であることが好ましい。好ましい圧力値も、加熱温度と同様に、基板の厚みや残存銅率などにより変化するが、圧力が高すぎると基板が変形する恐れがあるため、1.0MPa・s以下であることが好ましい。真空度は、15hPa/s以上になると内層回路板への埋め込み性が低下する恐れがあり、一方で真空度は低ければ低い方が好ましいが、装置の能力や所定値への到達までの待ち時間等が生産性に及ぼす影響などを考慮すると、5〜10hPa・sの範囲で行うことが好ましい。熱圧着時間は、10秒以下では内層回路への樹脂の流動に要する時間として不充分であり、90秒以上では生産性が低下する恐れがあるため、20〜60秒であることが好ましい。
【0026】
絶縁樹脂付フィルムの熱圧着は、回路付基板の特性、性状等に応じて、1回だけではなく複数回行うこともできる。特に、回路付基板が絶縁樹脂層を積層する側に貫通または非貫通の電気的接続孔(バイアホール)を有するものであるときは、バイアホール直上の絶縁樹脂層の段差をなくしてより平坦化するために、絶縁樹脂付フィルムの熱圧着を2回以上行うことが好ましい。たとえば、後述するように、硬化後の第1の絶縁樹脂層内に層間接続用の非貫通孔(バイアホール)が形成されている面に第2の絶縁樹脂層をラミネートする場合などである。
絶縁樹脂付フィルムの熱圧着を複数回行うときは、上記の工程(b)に続いて、表面に絶縁樹脂付フィルムがラミネートされた回路付基板と金属板を対向するように配置して再度熱圧着する工程(c)を行う。この工程(c)を繰り返すことにより、3回目、4回目の熱圧着も可能となる。
たとえば、回路付基板に直径100μm程度の非貫通孔が存在する場合などは、熱圧着を2回行うことが好ましい。これは、1回目の熱圧着により直径100μm程度の非貫通孔内に絶縁樹脂を平坦に充填した場合でも、絶縁樹脂の硬化の際に絶縁樹脂の流動による局所的な凹みが発生する場合があるからである。そこで、熱圧着を2回行うことにより、1回目の熱圧着で孔内に絶縁樹脂を充填し、2回目の熱圧着でさらなる平坦化を行いつつ絶縁樹脂を予備的に硬化させ、後に行われる熱処理による硬化(熱圧着による予備的硬化に対し「本硬化」という。
)の際の流動性を抑制することができるからである。この場合、2回目の熱圧着温度は、本硬化時の絶縁樹脂の流動を抑制する観点から、1回目の熱圧着温度より20℃以上高くすることが効果的である。2回目の熱圧着温度の上限に関しては、あまり温度が高すぎると残存溶剤による発泡などが生じる恐れがあるので、170℃以下とすることが好ましい。この温度以外の熱圧着条件(圧力、真空度、保持時間等)は、1回目と2回目とで、特に変える必要はない。また、2回目と3回目以降の熱圧着条件は、同じであっても、異なっていてもよい。複数回の熱圧着は、続けて行うことができる。
ラミネート後に必要に応じて絶縁樹脂付フィルム1のキャリアフィルム11を除去することにより、図2(b)に示すように、第1の回路22a面側に第1の絶縁樹脂層12aが積層された回路付基板2が得られる。キャリアフィルムとして金属箔が用いられている場合は、この金属箔が続いて形成される第2の回路の配線層となるため、除去する必要はない。
【0027】
図2(a)および(b)には、回路付基板2の片面に絶縁樹脂層12を積層する例を示したが、特に回路付基板がその両面に内層回路22a,22a’を有する場合などは、回路付基板の両面に絶縁樹脂層を積層するようにしてもよい。その場合は、2枚の絶縁樹脂付フィルム1,1’と2枚の金属板3,3’を用いるようにして、金属板3、絶縁樹脂付フィルム1、回路付基板2、絶縁樹脂付フィルム1’、金属板3’をこの順で、回路付基板の回路22a,22a’面と絶縁樹脂付フィルム1,1’の絶縁樹脂層12,12’面とがそれぞれ対向し、かつ、絶縁樹脂付フィルム1,1’のキャリアフィルム11,11’面と金属板3,3’とがそれぞれ対向するようにして配置して、それら全体を熱圧着すればよい。換言すると、回路付基板の両面に絶縁樹脂付フィルムを、共にそのキャリアフィルム側が外側になるように重ね、その各キャリアフィルム面とラミネータの熱盤との間に、それぞれ金属板を挟むようにして熱圧着することが好ましい。
【0028】
続いて、形成された第1の絶縁樹脂層12aの絶縁樹脂を硬化(本硬化)させる。その硬化は、後のめっき処理や銅のアニール処理などを考慮した温度や時間で行う必要がある。あまり硬化を進めると後のめっき処理時に銅との接着性が低下する恐れがあり、反対に硬化が足りないとめっき処理時のアルカリ処理液に浸食され、めっき液に溶解する恐れがあるからである。これらのことを考慮すると、たとえばエポキシ樹脂系の絶縁樹脂である場合は、150〜190℃で30〜90分間程度の熱処理を与えて硬化させることが好ましい。
【0029】
絶縁樹脂の硬化後、必要に応じて、図2(c)に示すように、第1の回路22aと続いて形成される第2の回路とを層間接続させるために、第1の絶縁樹脂層12aに第1のバイアホール5aを形成することもできる。このバイアホール5aの形成手法としては、特に限定はなく、レーザー法やサンドブラスト法などの公知の方法を用いることができる。ここで、第2の回路は、その上にさらに絶縁樹脂層を積層する場合は内層回路となるが、そうでない場合には、内層回路ではなく外層回路ということになる。
【0030】
その後、図2(d)に示すように回路加工を施して、第2の回路(内層回路あるいは外層回路)22bを形成するとともに、第1の回路22aと第2の回路22bの層間接続を行う。この第2の回路22bをめっき法で形成する場合は、接着性を向上させるために、第1の絶縁樹脂層12aを酸化性粗化液等により表面処理することが好ましい。酸化性粗化液としては、クロム/硫酸粗化液、アルカリ過マンガン酸粗化液、フッ化ナトリウム/クロム/硫酸粗化液、ホウフッ酸粗化液などを用いることができる。表面処理後、たとえば塩化第1スズの塩酸水溶液に浸漬して中和処理を行い、さらに必要に応じて、パラジウム等を全面に析出・付着させるためにめっき触媒付与処理を行う。めっき触媒付与処理は、たとえば塩化パラジウム系のめっき触媒液に浸漬することにより行われる。
【0031】
続いて、無電解めっき液に浸漬することにより、第1の絶縁樹脂層12a上の全面に、たとえば厚さが0.3〜1.5μm程度の無電解めっき層を析出させる。必要により、さらに電気めっきを行って回路導体を必要な厚さにするようにしてもよい。無電解めっきに使用する無電解めっき液には、公知のものを使用することができ、また、電気めっきについても公知の方法によることができ、どちらも特に限定されることはない。その後、不要な箇所をエッチングにより除去することにより、第2の回路22bが形成される。
【0032】
上記方法のほかに、めっき触媒を含有した絶縁樹脂層を用いてめっきレジストを形成し、無電解めっきにより必要な箇所のみに回路形成する方法、めっき触媒を含有しない絶縁樹脂層を粗化してめっき触媒を付与したのち、めっきレジストを形成して必要な箇所にのみ無電解めっき法により回路形成する方法を採用してもよい。あるいは、パターンめっき法を用いてもよく、たとえば厚み3μmの極薄銅箔を用いてこれを行うことができる。上記のめっき触媒を含有した絶縁樹脂層とは、たとえば、塩化パラジウムをカオリンやアルミナなどの吸着性の高い無機質に吸着させパラジウムイオンをジメチルアミノボランなどの還元剤で金属に還元しためっき触媒(たとえば、Cat#14:日立化成工業株式会社製)を絶縁樹脂中にパラジウム濃度として1000〜3000ppmとなるように加えたものである。
【0033】
また、キャリアフィルムとして銅箔等の金属箔を用い、絶縁樹脂層を金属箔付絶縁樹脂層として形成した場合は、エッチング法を用いて第2の回路22bを形成すればよい。このエッチング法に関しても特に限定はなく、任意の公知の方法を用いることができる。
【0034】
必要に応じて以上の工程を繰り返して、さらに層数の多い多層配線板とすることもできる。すなわち、第1の回路22aの表面処理と同様にして第2の回路22bの表面処理を行う。そして、この回路面に、第1の絶縁樹脂層12aの形成に用いたものと同じ絶縁樹脂付フィルムを用いて、同様に第2の絶縁樹脂層12bを形成する。この場合、第2の回路22bには第1のバイアホール5aが形成されているため、上記工程(c)に従って、絶縁樹脂付フィルムのラミネート後にもう一回、温度を上げて熱圧着を行うことが、平滑な絶縁樹脂層形成のために好ましい。
続いて、第2の絶縁樹脂層12bの樹脂を硬化(本硬化)させ(図2(e)参照)、第2のバイアホール5bを形成し(図2(f)参照)、さらに第2の回路22bと同様にして第3の回路(内層回路あるいは外層回路)22cを形成する(図2(g)参照)。以下、図には示さないが、同様の工程を繰り返すことで、任意の層数の多層配線板を製造することができる。
【0035】
本発明に係る多層配線板は、上述の本発明に係る多層配線板の製造方法により得られるものであり、その層構成、回路構成等の具体的構成は、特に限定されるものではない。
【0036】
本発明に係る多層配線板の製造方法では、絶縁樹脂付フィルムとして、絶縁樹脂層における温度170℃、面圧力0.65MPa・s、保持時間10分後の樹脂フロー量が50%以上のものを用い、かつ、ラミネートに際し熱盤と絶縁樹脂付フィルムのキャリアフィルム面との間に金属板を挟んで熱圧着するようにする点に特徴がある。それにより、絶縁樹脂層表面の段差がほとんどないように非常に平滑に、回路付基板上に絶縁樹脂付フィルムをラミネートすることができる。
ここで、段差がほとんどないとは、たとえば段差が2μm以下であるような状態をいう。得られる多層配線板は、表面凹凸が小さいものであり、したがって、段差が原因のレジストの欠けやレジストの追従不足を大幅に減少させることができ、その結果、微細配線性に適したものとなっている。
また、回路付基板が貫通または非貫通の電気的接続孔を有し、それらの孔が絶縁樹脂層をラミネートする側に存在する際には、熱圧着を2回以上行うことで、これらのバイアホールの直上に段差がほとんどない、平滑な絶縁樹脂層を形成できる。これにより、バイアホールの直上に配線を形成する場合にもレジストの追従性がよくなり、微細配線性に適した配線板を製造できる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
(1)回路付基板の作製
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(MCL−E−67:日立化成工業株式会社製商品名、銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.8mm、両面粗化箔を両面に有する)にエッチングを施して、片面に回路(以下、第1の回路とする)を有する回路板を作製した。
【0039】
(2)絶縁樹脂付フィルムの作製
下記組成の樹脂組成物を調製した。
o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
(YDCN−702:日本化薬株式会社製商品名) 50重量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(DER−331:ダウケミカル株式会社製商品名) 30重量部
カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム
(PNR−1H:JSR株式会社製商品名) 10重量部
熱硬化剤:ジシアンジアミド
(日本カーバイド株式会社製商品名) 2.9重量部
1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート
(2PZ−CNS:四国化成工業株式会社製商品名) 0.4重量部
溶剤:メチルエチルケトン 40重量部
溶剤:ジメチルホルムアミド 26重量部
この樹脂組成物を、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、100℃下で3分間乾燥して、乾燥後の絶縁樹脂層の膜厚が50±3μmの絶縁樹脂付フィルムを作製した。
【0040】
(3)樹脂フロー量の測定
得られた絶縁樹脂付フィルムを100mm角に切断して測定サンプルとし、その重量(イ)を測定した。別にキャリアフィルム(単体)を100mm角に切断し、その重量(ロ)を測定した。重量(イ)は5.64gであり、重量(ロ)は2.78gであって、重量(イ)から重量(ロ)を差し引いた絶縁樹脂(単体)の重量(ハ)は2.86gであった。次に、上記測定サンプルを、温度170℃、面圧力0.65MPa・sの条件で10分間保持した。10分経過後、直径80mmの金型で測定サンプルを打ち抜いて、流れ出した部分を除去した。打ち抜いた測定サンプルの重量(ニ)を測定し、2.11gを得た。得られた値を100mm角のサイズに換算して、換算重量(ホ)4.08gを得た。この換算重量(ホ)からキャリアフィルムの重量(ロ)を差し引いた重量(ヘ)(=樹脂フロー試験後の残った絶縁樹脂層の重量)を計算し、1.30gを得た。したがって、樹脂フロー試験により流れ出した樹脂量は、重量(ハ)−重量(ヘ)=1.56gであり、これを試験前の樹脂量である重量(ハ)で割って樹脂フロー量(%)とした。樹脂フロー量は、55%であった。
【0041】
(4)多層配線板の製造
(4.1)上記(2)の絶縁樹脂付フィルムを上記(1)の回路付基板に、フィルムの絶縁樹脂層が基板の回路面と接するように重ねた。外面のキャリアフィルム面の上に厚さ0.5mmのステンレス板を置き、バッチ式真空加圧ラミネーター(MVLP−500:名機株式会社製商品名)を用いて、100℃、0.65MPa・s、真空時間30秒、加圧時間30秒でラミネートした。キャリアフィルムを剥がした後、170℃、60分の硬化条件で、積層された第1の絶縁樹脂層の樹脂を硬化させた。
(4.2)硬化した第1の絶縁樹脂層に、CO2レーザ加工機(LCO−1B21型:日立ビアメカニクス社製商品名)を使用し、ビーム径80μm、周波数500Hz、パルス幅5μsec、ショット数7の条件で加工を行い、層間接続用のバイアホールを作製した。
(4.3)第1の絶縁樹脂層を化学粗化するために、粗化液として、KMnO4:60g/リットルとNaOH:40g/リットルを加えた水溶液を作製し、70℃に加温して、サンプルを5分間浸漬処理した。続いて中和液としてSnCl2:30g/リットルとHCl:300ml/リットルを加えた水溶液を用い、サンプルを室温で5分間浸漬処理して中和した。
【0042】
(4.4)第1の絶縁樹脂層表面に第2の回路を形成するために、まず、得られたサンプルを、PdCl2を含む無電解めっき用触媒液(HS−202B:日立化成工業株式会社製商品名)に室温で10分間浸漬させた。浸漬後のサンプルを水洗し、無電解銅めっき液(CUST−201:日立化成工業株式会社製商品名)に室温で15分間浸漬し、さらに硫酸銅電解めっきを行った。めっき処理後、180℃で30分間アニールを行い、第1の絶縁樹脂層表面に厚さ20μmの回路導体層を形成した。
次に、得られた回路導体層の不要な箇所をエッチング除去するために銅表面の酸化皮膜を#600のバフロール研磨で除去した後、エッチングレジスト層を形成し、エッチングを行った。その後、エッチングレジスト層を除去して、第1の回路と接続したバイアホールを含む第2の回路を形成した。
(4.5)さらに多層化するために、得られたサンプルを、亜塩素酸ナトリウム:50g/リットルとNaOH:20g/リットルとリン酸三ナトリウム:10g/リットルを加えた水溶液に85℃で20分間浸漬することにより第2の回路表面を粗化し、水洗後80℃/20分間乾燥して、第2の回路表面上に酸化銅の凹凸を形成した。
上記(4.1)〜(4.5)の工程を繰り返して、第2の絶縁樹脂層を形成し、第3の回路として外層回路を有する3層の多層配線板を作製した。
【0043】
[実施例2]
実施例1の(2)絶縁樹脂付きフィルム作製の際の乾燥条件を90℃で3分間とする他は、実施例1と同様にして3層の多層配線板を製造した。実施例2の樹脂フロー量(実施例1と同様に測定)は58%であった。
[実施例3]
実施例1の工程(4.4)の後に、(4.1)と同様にして絶縁樹脂付フィルムをラミネートし(ただし、圧力は0.5MPa・sとした)、続いて、熱盤温度を140℃に設定して熱盤温度が140℃に上がるのを待って、140℃、0.5MPa・s、真空時間30秒、加圧時間30秒で再度熱圧着を行った。その後、キャリアフィルムを剥がし、積層された第2の絶縁樹脂層の樹脂を、170℃、60分の上記(4.1)と同じ硬化条件で硬化させた。以降は、上記(4.2)〜(4.5)の工程を繰り返して、実施例1と同様に多層配線板を製造した。
[実施例4]
実施例1の(2)絶縁樹脂付きフィルム作製の際の乾燥条件を100℃で5分間として、樹脂フロー量(実施例1と同様に測定)が53%の絶縁樹脂付フィルムを得た。この絶縁樹脂付フィルムを用い、第1の絶縁樹脂層と第2の絶縁樹脂層形成のためのラミネートを、どちらも2回熱圧着して行った。いずれの場合も、1回目の熱圧着を100℃、0.5Mpa・s、真空時間30秒、加圧時間30秒で行い、続いて2回目の熱圧着を150℃、0.5Mpa・s、真空時間30秒、加圧時間30秒で行った。
以上のように、第1と第2の絶縁樹脂層形成のための絶縁樹脂付フィルムのラミネートに関しては、実施例1および2ではどちらも1回の熱圧着で行い、実施例4ではどちらも2回の熱圧着で行い、実施例3では第1の絶縁樹脂層形成を1回の熱圧着で、第2の絶縁樹脂層形成を2回の熱圧着で行った。
【0044】
[比較例1]
実施例1における1−シアノエチル−2フェニルイミダゾリウムトリメリテートを、配合量はそのままで、2−エチルー4メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成株式会社製商品名)に変更した他は、実施例1と同様に行った。比較例1の樹脂フロー量(実施例1と同様に測定)は3.5%であった。
【0045】
[比較例2]
実施例1の(2)絶縁樹脂付フィルム作製の際の乾燥条件を120℃で6分間とする他は、実施例1と同様にして3層の多層配線板を製造した。比較例2の樹脂フロー量(実施例1と同様に測定)は38%であった。
【0046】
[比較例3]
実施例1において、多層配線板の製造時にステンレス板を使用しないようにする他は、実施例1と同様にして3層の多層配線板を製造した。
【0047】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の多層配線板について、第1の絶縁樹脂層と第2の絶縁樹脂層の、絶縁樹脂層形成直後(ラミネート直後)と絶縁樹脂硬化後の表面粗さをそれぞれ測定した。また、外層回路の30/30μmラインの形成性を、合格率(%)で表した。
得られた結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1にみるように、比較例のものに比べ実施例の多層配線板は、表面凹凸が2μm以下であって表面平滑性に優れ、また、微細配線化に適していることが判明した。
【符号の説明】
【0050】
1 絶縁樹脂付フィルム
11 キャリアフィルム
12 絶縁樹脂層
2 回路付基板
21 絶縁基板
22a 第1の回路(内層回路)
3 金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む多層配線板の製造方法:
(a)少なくとも一方の面に回路を備えた回路付基板と、キャリアフィルム表面に絶縁樹脂層が形成されてなる絶縁樹脂付フィルムであって前記絶縁樹脂層における温度170℃、面圧力0.65MPa・s、保持時間10分後の樹脂フロー量が50%以上である絶縁樹脂付フィルムと、金属板とをそれぞれ準備する工程;および
(b)前記回路付基板と前記絶縁樹脂付フィルムと前記金属板とを、前記回路付基板の回路面と前記絶縁樹脂付フィルムの絶縁樹脂層面とが対向し、かつ、前記絶縁樹脂付フィルムのキャリアフィルム面と前記金属板とが対向するように順に配置して熱圧着することにより、前記回路付基板表面に前記絶縁樹脂付フィルムをラミネートする工程。
【請求項2】
前記工程(b)におけるラミネートが、前記絶縁樹脂付フィルムの絶縁樹脂の融点以上の温度で行われる請求項1記載の多層配線板の製造方法。
【請求項3】
前記回路付基板が貫通または非貫通の電気的接続孔を有するものであって、さらに以下の工程を含む請求項1または2記載の多層配線板の製造方法:
(c)表面に前記絶縁樹脂付フィルムがラミネートされた前記回路付基板と前記金属板を対向するように配置して再度熱圧着する工程。
【請求項4】
前記工程(c)における熱圧着温度が前記工程(b)における熱圧着温度よりも20℃以上高い請求項3記載の多層配線板の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁樹脂付フィルムの絶縁樹脂層がエポキシ樹脂およびシアノエチル化イミダゾールを含んでいる請求項1〜4のいずれか1項記載の多層配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の多層配線板の製造方法により得られる多層配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−15537(P2012−15537A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186062(P2011−186062)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【分割の表示】特願2003−110149(P2003−110149)の分割
【原出願日】平成15年4月15日(2003.4.15)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】