多層配線板及びその製造方法
【課題】多層配線板の反りや凹凸が生じても、配線層を形成するためのマスクとして均一性に優れた薄膜のパターンを簡易に形成することができる多層配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】支持基体11に金属層12,13が設けられた両面CCL10の表面に、プライマー樹脂層21と金属層22からなるプライマー付金属箔20を載置し、両者を接合し、プライマー樹脂層21を硬化させる。次に、金属層22側からビアVbを穿設し、その上に金属めっき層30を形成する。次に、エッチダウンした金属めっき層30と金属層22をパターニングした後、今度はそれをマスクとして、プライマー樹脂層21をパターニングする。そして、そのパターニングされたプライマー樹脂層21をマスクとして、両面CCL10の金属層12及び金属めっき層30をパターニングして配線パターンを形成する。
【解決手段】支持基体11に金属層12,13が設けられた両面CCL10の表面に、プライマー樹脂層21と金属層22からなるプライマー付金属箔20を載置し、両者を接合し、プライマー樹脂層21を硬化させる。次に、金属層22側からビアVbを穿設し、その上に金属めっき層30を形成する。次に、エッチダウンした金属めっき層30と金属層22をパターニングした後、今度はそれをマスクとして、プライマー樹脂層21をパターニングする。そして、そのパターニングされたプライマー樹脂層21をマスクとして、両面CCL10の金属層12及び金属めっき層30をパターニングして配線パターンを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多層配線板(多層配線基板)において、導体回路パターン等の配線層を絶縁層上に形成するための方法としては、配線パターン部分に選択的に配線層を形成するアディティブ法、多層配線板の基板全面に下地層を形成した後、その下地層の配線パターン部分以外を選択的に除去又はマスクし、パターン状に残った又は露出した下地層を利用してこの上に配線層を形成するセミアディティブ法、基板全面に導体層を形成した後、その導体層上にレジスト(感光性樹脂)層を形成し、そのレジスト層を露光・硬化した後、現像によって不要部分を除去してパターニングし、残ったレジスト層のパターンをマスクとして露出した部分の導体層をエッチング等により除去することにより、配線パターン以外の部分の導体層を選択的に除去して配線層を形成するサブトラクティブ法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−136282号公報
【発明の概要】
【0004】
これらの方法の中でも、サブトラクティブ法で形成する導体回路パターンのライン間のピッチは、一般に、マスク層となるレジスト層の厚さに依存する。これは、レジスト層の厚さが薄い場合、レジスト層のパターンのライン間にエッチング液が循環し易く(捌け具合がよく)、レジスト層のパターン間の溝(凹部)の底部に露呈している導体層がエッチングされ易いのに対し、レジスト層の厚さが厚い場合、レジスト層のパターンのライン間にエッチング液が循環し難く(捌け具合が悪く)、レジスト層のパターン間の溝底部に露呈している導体層がエッチングされ難いことによる。かかる状況は、特に、高エッチングファクター(エッチングの深さ方向の進行量を横方向(サイドエッチ又はアンダーカット)への進行量で除した値)のエッチング液の場合に顕著となり得る。なお、化学エッチングの代わりにウェットブラストによって導体層をエッチングする方法もあるが、この場合にも、ブラストスラリーの循環し易さによって同様な傾向が認められる。
【0005】
そこで、近時の電子機器等に対する更なる小型化、薄型化、高密度実装化の要求に応えるべく配線パターンの更なる狭ピッチ化を達成するために、レジスト層として液体レジストを種々の方法で塗布することにより、レジスト層の厚さをより薄く、具体的には、平均厚さとして数μm程度の薄いレジスト層を形成可能な方法が知られている。また、液体レジストの代わりにより薄いドライフィルムレジストを用いる方法も知られている。
【0006】
しかし、多層配線板の厚さは極めて薄くなってきており、それ自体、反りや凹凸が生じてしまい易く、通常の液体レジストの厚さよりも、その反りの程度や凹凸の寸法差(高低差)が大きいことも多く、そうなると、液体レジストを用いて薄い均一な膜厚のレジスト層を形成することは困難な傾向にある。また、本発明者の知見によれば、ドライフィルムレジストを用いた場合も、多層配線板の基板の反りや凹凸によって、薄い均一な膜厚のレジスト層を形成することは困難な傾向にあり、且つ、薄くなればなるほど、フィルムの取り扱いが難しく煩雑となる傾向にある。
【0007】
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、多層配線板の反りや凹凸が生じても、配線層を形成するためのマスクとして均一性に優れた薄膜のパターンを簡易に形成することができる多層配線板の製造方法及びそれにより形成される多層配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明による多層配線板の製造方法は、絶縁層の少なくとも一面に第1の導体層を形成する工程と、樹脂層及び第2の導体層からなる積層シートを、第1の導体層上にその樹脂層が接するように載置し、その樹脂層を硬化させる工程と、第2の導体層をパターニングする工程と、パターニングされた第2の導体層をマスクとして、樹脂層をエッチングする工程と、少なくともそのエッチングされた樹脂層をマスクとして、第1の導体層をエッチングし、配線パターンを形成する工程とを有する。
【0009】
この際、絶縁層は、その絶縁層を貫通する接続孔を有しており、第1の導体層を形成する工程においては、その接続孔の内部にも第1の導体層を形成するようにしてもよい。また、絶縁層の少なくとも一面に予め導体層を形成しておき、その後、絶縁層に接続孔を形成し、それから、その接続孔の内部、及び、予め形成された導体層上に更に導体層を形成してもよく、この場合、予め形成された導体層と後から追加形成された導体層の両方が「第1の導体層」となり得る。
【0010】
或いは、本発明による多層配線板の製造方法は、絶縁層の一面側及び他面側に第1の導体層を形成する工程と、樹脂層及び第2の導体層からなる積層シートを、絶縁層の一面側に形成された第1の導体層上にその樹脂層が接するように載置し、その樹脂層を硬化させる工程と、積層シート、絶縁層の一面側に形成された第1の導体層、及び、絶縁層を貫通する接続孔を形成し、絶縁層の他面側に形成された第1の導体層を接続孔の内部に露出させる工程と、第2の導体層上、及び、接続孔の内部に第3の導体層を形成する工程と、第2の導体層及び第3の導体層をパターニングする工程と、パターニングされた第2の導体層及び第3の導体層をマスクとして、樹脂層をエッチングする工程と、少なくともそのエッチングされた樹脂層をマスクとして、絶縁層の一面側に形成された第1の導体層をエッチングし、配線パターンを形成する工程とを有する。
【0011】
このように構成された多層配線板の製造方法においては、いずれの場合においても、樹脂層及び第2の導体層からなる積層シートを、その樹脂層と、絶縁層上の第1の導体層とが接するように設けるので、まず、第2の導体層に形成されたパターンをマスクとして樹脂層がパターニングされ、さらに、その樹脂層のパターンをマスクとして第1の導体層がエッチングにより除去されて配線層が形成される。よって、配線層をエッチングするためのマスクとなる樹脂層の厚さを薄く制御すれば、配線層のライン間隔を確実に狭ピッチ化(ファインピッチ化)することが可能となる。また、樹脂層のみのシートではなく、樹脂層と第2の導体層との積層シートを用いるので、取扱性に優れ、第1の導体層が形成された絶縁層に接合させ易い利点がある。さらに、このように薄い樹脂層と第2の導体層からなる積層シートを、絶縁層上に形成された第1の導体層に接合させるので、絶縁層(基板)の反りや凹凸が生じても、その形状に応じて一様な厚さの樹脂層を簡易に積層形成することができる。
【0012】
また、配線層の狭ピッチ化を実現し易い観点からは、積層シートの樹脂層として、第1の導体層よりも厚さが薄いものを用いることが好ましい。
【0013】
その絶縁層の寸法は特に制限されるものではないが、具体的には、例えば、厚さが0.1μm〜5μm程度のものが挙げられる。この絶縁層の厚さが0.1μm未満であると、絶縁層の機械的強度が過度に低下し、例えば、レーザー加工や物理的加工が施された場合に破壊されたりクラックが生じたりといった不都合が生じることがある。また、この絶縁層の厚さが5μm程度を超えると、配線層を形成するためのマスクが過度に厚くなり配線層の微細化に十分に対応し難くなる傾向にある。
【0014】
また、絶縁層とともに積層シートを形成する第2の導体層の寸法も特に制限されないが、具体的には、例えば、その厚さが0.1μm〜12μm程度のものが挙げられる。この第2の導体層の厚さが0.1μm未満であると、第2の導体層の機械的強度が過度に低下してしまい、積層シートの取扱性が悪化してしまうとともに、第2の導体層が剥離等して絶縁層が露出してしまうことがあり得る。一方、この第2の導体層の厚さが12μm程度を超えると、絶縁層から、配線層の微細化のために必要な配線層形成用のマスクを形成することが困難となってしまう傾向にある。なお、第2の導体層が12μm程度以下であれば、その第2の導体層をパターニングする際のマスクとしては、過度に薄くない通常のマスク(レジストマスク)を用いることができる。
【0015】
また、本発明による多層配線板は、本発明の多層配線板の製造方法によって有効に得られるものであり、すなわち、絶縁層の少なくとも一面に第1の導体層を形成し、樹脂層及び第2の導体層の積層シートを、第1の導体層上にその樹脂層が接するように載置し、その樹脂層を硬化させ、第2の導体層をパターニングし、パターニングされた第2の導体層をマスクとして、樹脂層をエッチングし、少なくともそのエッチングされた樹脂層をマスクとして、第1の導体層をエッチングし、配線パターンを形成することにより得られるものである。
【0016】
或いは、本発明による多層配線板は、絶縁層の一面側及び他面側に第1の導体層を形成し、樹脂層及び第2の導体層の積層シートを、絶縁層の一面側に形成された第1の導体層上にその樹脂層が接するように載置し、その樹脂層を硬化させ、積層シート、絶縁層の一面側に形成された第1の導体層、及び、絶縁層を貫通する接続孔を形成し、絶縁層の他面側に形成された第1の導体層を接続孔の内部に露出させ、第2の導体層上、及び、接続孔の内部に第3の導体層を形成し、第2の導体層及び第3の導体層をパターニングし、パターニングされた第2の導体層及び第3の導体層をマスクとして、樹脂層をエッチングし、少なくともそのエッチングされた樹脂層をマスクとして、絶縁層の一面側に形成された導体層をエッチングし、配線パターンを形成することにより得られるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、配線層を形成すべき第1の導体層上に、絶縁層及び第2の導体層からなる積層シートを、その絶縁層が第1の導体層に接するように接合し、第1の導体層からの配線層の形成に際して、その絶縁層をパターニングしたものをマスクとして用いることができるので、その絶縁層の厚さを十分に薄く制御することにより、従来の液体レジストやドライフィルムレジストでは困難であった配線層の更なる微細化・狭ピッチ化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図2】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図3】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図4】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図5】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図6】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図7】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図8】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図9】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図10】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図11】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図12】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図13】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図14】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図15】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図16】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図17】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図18】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図19】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図20】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図21】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図22】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図23】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図24】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図25】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図26】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図27】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図28】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図29】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図30】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図31】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図32】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図33】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図34】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図35】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図36】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0020】
図1乃至図16は、本発明による多層配線板の製造方法の一実施形態により多層配線板を形成している状態を示すプロセスフロー図(工程図)である。
【0021】
本実施形態においては、まず、両面CCL(Copper Clad Laminate)10を用意する(図1:第1の導体層を形成する工程)。両面CCL10は、支持基体11(絶縁層)の両面のそれぞれに、例えば箔状又は膜状の金属層12,13(第1の導体層)が設けられたものである。金属層12,13の材質としては、特に制限されず、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)等の金属が挙げられ、これらのなかでは、導電率やコストの観点から銅(Cu)が好ましい(以下、他の導体層、金属膜、配線層についても同様)。また、金属層12,13の厚さは特に制限されないが、例えば7μm程度のものを用いることができる。
【0022】
また、支持基体11としては、例えば樹脂絶縁層が挙げられ、それに用いられる樹脂材料としては、具体的には、例えば、ビニルベンジル樹脂、ポリビニルベンジルエーテル化合物樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、ポリフェニレエーテル(ポリフェニレンエーテルオキサイド)樹脂(PPE,PPO)、シアネートエステル樹脂、エポキシ+活性エステル硬化樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂(ポリフェニレンオキサオド樹脂)、硬化性ポリオレフィン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂又はベンゾオキサジン樹脂の単体、又は、これらの樹脂に、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸アルミウイスカ、チタン酸カリウム繊維、アルミナ、ガラスフレーク、ガラス繊維、窒化タンタル、窒化アルミニウム等を添加した材料、さらに、これらの樹脂に、マグネシウム、ケイ素、チタン、亜鉛、カルシウム、ストロンチウム、ジルコニウム、錫、ネオジウム、サマリウム、アルミニウム、ビスマス、鉛、ランタン、リチウム及びタンタルのうち少なくとも1種の金属を含む金属酸化物粉末を添加した材料、またさらには、これらの樹脂に、ガラス繊維、アラミド繊維等の樹脂繊維等を配合した材料、或いは、これらの樹脂をガラスクロス、アラミド繊維、不織布等に含浸させ材料、等を挙げることができ、電気特性、機械特性、吸水性、リフロー耐性等の観点から、適宜選択して用いることができる。
【0023】
次いで、この両面CCL10の一面側に形成された金属層12の表面を粗面化して粗面化層12aを形成する。ここで、金属層12の表面部に10〜200nmの微細孔を形成する低粗化処理を行ってもよい。また、その後の樹脂層を形成するため、低粗化の粗面化層12a上にシラン化合物(図示せず)が固着されていることが好ましい。配線パターンが微細になればなるほど、伝送時の損失が生じ易くなる傾向にあるが、低粗化処理を施した粗面化層12aを有すると、かかる伝送時の損失を効果的に低減させることが可能である。
【0024】
次に、未硬化のプライマー樹脂層21(樹脂層)が形成された銅箔等の金属層22(第2の導体層)からなる片面CCL(Copper Clad Laminate)構造を有するプライマー付金属箔20(積層シート)を、その未硬化のプライマー樹脂層21が金属層12の粗面化層12aと接するように載置し、両面CCL10とプライマー付金属箔20を例えば熱プレスして両者を接合し、プライマー樹脂層21を硬化させる(図1から図2:積層シートを載置し、樹脂層を硬化させる工程)。プライマー樹脂層21は、エポキシ樹脂、硬化剤、芳香族ポリアミド樹脂ポリマー等で構成され、高弾性、高靭性を示す樹脂層である。低粗化処理を施した粗面化層12aに通常のエポキシ樹脂を接合させると一定の強度は得られるが、高弾性、高靭性をもつプライマー樹脂層21であれば、粗面化層12aにより更に強固に接合し易い。プライマー樹脂層21の厚さは、特に制限されず、上述の如く、具体的には、例えば、0.1μm〜5μm程度の薄いものが挙げられる。また、金属層22の厚さも特に制限されず、上述の如く、具体的には、例えば、0.1μm〜12μm程度の薄いものが挙げられる。
【0025】
それから、その積層体に、金属層22側から、所定径を有する例えばレーザービームLa(例えば、UV−YAGレーザー)を照射し、金属層22、硬化したプライマー樹脂層21、及び金属層12を貫通し、かつ、支持基体11の途中まで、ビア形成用の孔Vaを穿設する(図3)。次に、その孔Vaの部位に、同等径を有するレーザービームLb(例えば、炭酸ガス(CO2)レーザー)を照射し、支持基体11を貫通するビアVb(接続孔)を穿設し、そのビアVbの内部に、支持基体11の他面側に形成された金属層13の一部を露出させる(図4:接続孔を形成し、第1の導体層を接続孔の内部に露出させる工程)。このとき、ビアVbを異なるレーザーを用いて二段階で形成せずに、例えば、炭酸ガス(CO2)レーザーを用いて一段階でビアVbを穿設してもよい。
【0026】
その後、そのビアVbが設けられた積層体の金属層22上、及び、ビアVbの内部に銅めっき等の金属めっきを施すことにより、金属層22上を覆い且つビアVbの内部を充填する金属めっき層30を形成する(図5:第2の導体層上、及び、接続孔の内部に第3の導体層を形成する工程)。次に、金属層22上の金属めっき層30の厚さが所定の厚さ(特に制限されないが、例えば数μm)となるまで、金属めっき層30をエッチダウンする(図6)。次いで、その金属めっき層30の上に、例えば紫外線感光型のドライフィルムレジスト40を積層接着した後(図7)、例えばメタルマスク(レチクル)等の所定のマスクM1をドライフィルムレジスト40の上方に配置し、紫外線等の硬化線Rを、マスクM1を介してドライフィルムレジスト40上に露光する(図8)。図示においては、ドライフィルムレジスト40において露光されずに未硬化な部位41と、露光により硬化された部位42を区別して表示した。
【0027】
続けて、マスクM1を撤去し、露光済みのドライフィルムレジスト40を現像して、ドライフィルムレジスト40における未硬化な部位41を金属めっき層30上から除去する(図9)。次に、露光により硬化されドライフィルムレジスト40上に残存した部位42をマスクとして、部位42間に露出した金属めっき層30及びその下層部位の金属層22をウェットエッチ等によりエッチングして(マイクロエッチ)、パターニングを行う(図10:第2の導体層及び第3の導体層をパターニングする工程)。これにより、当初、プライマー付金属箔20の構成要素であった金属層22がパターニングされ、プライマー樹脂層21の一部が露出する。
【0028】
次に、マスクとして使用したドライフィルムレジスト40の残部である部位42を、剥離除去する(図11)。それから、パターニングされた金属めっき層30及び金属層22をマスクとして、それらのパターンの間に露出したプライマー樹脂層21に、例えば、レーザービーム、ウェットブラストメディア、デスミアメディア等の媒体Lcを照射して、その部位のプライマー樹脂層21をエッチングして除去する(図12:パターニングされた第2の導体層及び第3の導体層をマスクとして、樹脂層をエッチングする工程)。
【0029】
次いで、図12に示す積層体にウェットエッチング等のエッチングを施す。これにより、プライマー樹脂層21上の金属めっき層30、及び、プライマー樹脂層21が除去されて露出した粗面化層12aを有する金属層12が除去されていき、やがて、プライマー樹脂層21上に残っていた金属層22も除去される。更にエッチングが進むと、パターニングされたプライマー樹脂層21をマスクとして、そのパターン間の金属層12、及びビアVb内部の金属めっき層30の上部の一部が除去され、パターニングされた金属層12及びビアVb内部の金属めっき層30によって構成される配線パターンが形成される(図13:エッチングされた樹脂層をマスクとして、絶縁層の一面側に形成された第1の導体層をエッチングし、配線パターンを形成する工程)。
【0030】
このとき、金属層12をエッチングするマスクとして、上述したような薄いプライマー樹脂層21のパターンを用いるので、支持基体11等の反りや凹凸が生じても、配線層を形成するためのマスクとして均一性に優れた薄膜のパターンを簡易に形成することができ、これにより、そのパターン間の間隔が狭くても金属層12のエッチングを良好に行うことができ、形成される配線パターンの微細化・狭ピッチ化が可能となる。また、プライマー樹脂層21の両端部が、そのパターン間の金属層12のサイドエッチが進む際の初期に下側に撓むので、更にサイドエッチが進んでしまうことを抑止することができる。
【0031】
さらに、必要に応じて、残留したプライマー樹脂層21にプラズマLd等を照射してその表面の粗化処理を行う(図14)。このとき、プライマー樹脂層21を除去してしまってもよい(同図においては、プライマー樹脂層21が残っている状態を示した。)。次に、その上に、樹脂層45をビルドアップ(積層)して表面を平坦化した後(図15)、さらにその上に、所定厚さ(例えば、金属層12,13と同等の厚さ)の上層金属層50を積層し、プレス成型して、本実施形態による多層配線板1を得る。
【0032】
このとき、残存するプライマー樹脂層21の表面が粗面化されていれば、その上にビルドアップされる樹脂層45との接合性が格段に高められ得る。なお、樹脂層45としては、ビルドアップ層であってもよいし、多層配線板1の最表面に形成されるソルダーレジストであってもよい。
【0033】
そして、プライマー樹脂層21と樹脂層45との境界面の表面粗さは、金属層12とプライマー樹脂層21との境界面の表面粗さ(すなわち粗面化層12aの粗さ)よりも小さいことが好ましい。すなわち、プライマー樹脂層21は、表面粗さが小さい金属層12の表面(粗面化層12a)に十分に密着可能であるが、プライマー樹脂層21とその上の樹脂層45との密着性を高めるためには、それらの境界層がより粗い方が好適である。この粗さは、金属層22にプライマー樹脂層21が接合している接合面にける粗化形態であり、プライマー樹脂層21の厚さよりも小さい範囲内において、表面粗さ及び粗化形状を適宜選択することができる。この表面粗さRzは、レーザー変位計等によって測定することができ、粗化形状は断面観察より確認することができる。
【0034】
図17乃至図36は、本発明による多層配線板の製造方法の他の実施形態により多層配線板を形成している状態を示すプロセスフロー図(工程図)である。
【0035】
本実施形態においても、まず、支持基体11の両面にそれぞれ金属層12,13が形成された両面CCL10を用意する(図17)。次に、両面CCL10の一面側に、ドライフィルムレジスト40を積層接着する(図18)。それから、図8で説明したのと同様にして、例えばメタルマスク(レチクル)等の所定のマスクM1をドライフィルムレジスト40の上方に配置し、紫外線等の硬化線Rを、マスクM1を介してドライフィルムレジスト40上に露光し、ドライフィルムレジスト40において露光されずに未硬化な部位41と、露光により硬化された部位42を得る(図19)。続けて、マスクM1を撤去し、露光済みのドライフィルムレジスト40を現像して、ドライフィルムレジスト40における未硬化な部位41を金属層12上から除去する(図20)。
【0036】
次に、露光により硬化されたドライフィルムレジスト40上に残存した部位42をマスクとして、部位42間に露出した金属層12をウェットエッチ等によりエッチングしてパターニングを行う(図21)。それから、マスクとして使用したドライフィルムレジスト40の残部である部位42を剥離除去する(図22)。次いで、図3及び図4で説明したのと同様に、金属層12側から、所定径を有する例えばレーザービームLa及び/又はレーザービームLbを照射し、支持基体11を貫通するビアVbを穿設し、そのビアVbの内部に、支持基体11の他面側に形成された金属層13の一部を露出させる(図23)。その後、図5で説明したのと同様に、そのビアVbが設けられた積層体の金属層12上、及び、ビアVbの内部に銅めっき等の金属めっきを施すことにより、金属層12上を覆い且つビアVbの内部を充填する金属めっき層30を形成する(図24)。
【0037】
次に、図6で説明したのと同様に、金属層12上の金属めっき層30の厚さが所定の厚さ(特に制限されないが、例えば数μm)となるまで、金属めっき層30をエッチダウンする(図25)。次いで、未硬化のプライマー樹脂層21が形成された銅箔等の金属層22からなるプライマー付金属箔20を、その未硬化のプライマー樹脂層21が金属めっき層30と接するように載置し、図25に示す状態の積層体とプライマー付金属箔20を例えば熱プレスして両者を接合し、プライマー樹脂層21を硬化させる(図26:積層シートを載置し、樹脂層を硬化させる工程)。このように、本実施形態では、金属層12及びエッチダウンされた金属めっき層30から第1の導体層が形成されている。すなわち、両面CCL10を用意する図17に示す工程も、金属めっき層30を金属層12上及びビアVb内に形成する工程も、絶縁層の少なくとも一面に第1の導体層を形成する工程に相当する。
【0038】
次に、プライマー付金属箔20の金属層22の上に、再び、例えば紫外線感光型のドライフィルムレジスト40を積層接着した後(図27)、例えばメタルマスク(レチクル)等の所定のマスクM1をドライフィルムレジスト40の上方に配置し、紫外線等の硬化線Rを、マスクM1を介してドライフィルムレジスト40上に露光し、ドライフィルムレジスト40において露光されずに未硬化な部位41と、露光により硬化された部位42を得る(図28)。
【0039】
続けて、マスクM1を撤去し、露光済みのドライフィルムレジスト40を現像して、ドライフィルムレジスト40における未硬化な部位41を金属層22上から除去する(図29)。次に、露光により硬化されたドライフィルムレジスト40上に残存した部位42をマスクとして、部位42間に露出した金属層22をウェットエッチ等によりエッチングして(マイクロエッチ)、パターニングを行う(図30:第2の導体層をパターニングする工程)。これにより、当初、プライマー付金属箔20の構成要素であった金属層22がパターニングされ、プライマー樹脂層21の一部が露出する。
【0040】
次に、マスクとして使用したドライフィルムレジスト40の残部である部位42を、剥離除去する(図31)。それから、パターニングされた金属層22をマスクとして、それらのパターンの間に露出したプライマー樹脂層21に、例えば、レーザービーム、ウェットブラストメディア、デスミアメディア等の媒体Lcを照射して、その部位のプライマー樹脂層21をエッチングして除去する(図32:パターニングされた第2の導体層をマスクとして、樹脂層をエッチングする工程)。
【0041】
次いで、図32に示す積層体にウェットエッチング等のエッチングを施す。これにより、プライマー樹脂層21上の金属層22、及び、プライマー樹脂層21が除去されて露出した金属層12が除去されていき、やがて、プライマー樹脂層21上に残っていた金属層22も除去される。更にエッチングが進むと、パターニングされたプライマー樹脂層21をマスクとして、そのパターン間の金属めっき層30及び金属層12が除去され、パターニングされた金属層12、及び、ビアVb内部を充填し且つ金属層12上に残存する金属めっき層30によって構成される配線パターンが形成される(図33:エッチングされた樹脂層をマスクとして、第1の導体層をエッチングし、配線パターンを形成する工程)。
【0042】
この実施形態においても、金属層12及び金属めっき層30をエッチングするマスクとして、上述したような薄いプライマー樹脂層21のパターンを用いるので、支持基体11等の反りや凹凸が生じても、配線層を形成するためのマスクとして均一性に優れた薄膜のパターンを簡易に形成することができ、これにより、そのパターン間の間隔が狭くても金属層12及び金属めっき層のエッチングを良好に行うことができ、形成される配線パターンの微細化・狭ピッチ化が可能となる。また、プライマー樹脂層21の両端部が、そのパターン間の金属層12のサイドエッチが進む際の初期に下側に撓むので、更にサイドエッチが進んでしまうことを抑止することができる。
【0043】
さらに、必要に応じて、残留したプライマー樹脂層21にプラズマLd等を照射してその表面の粗化処理を行う(図34)。この場合においても、プライマー樹脂層21を除去してしまってもよい(同図においては、プライマー樹脂層21が残っている状態を示した。)。次に、その上に、樹脂層45をビルドアップ(積層)して表面を平坦化した後(図35)、さらにその上に、所定厚さ(例えば、金属層12,13と同等の厚さ)の上層金属層50を積層し、プレス成型して、本実施形態による多層配線板2を得る。このときにも、残存するプライマー樹脂層21の表面が粗面化されていれば、その上にビルドアップされる樹脂層45の種類によっては、その樹脂層45との接合性が格段に高められ得る。
【0044】
また、上述したとおり、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において様々な変形が可能である。例えば、多層配線板1,2の多層構造は図示の層数に限られず、更に多段に設けられてもよく、その場合、ビアVb上や上層金属層50上に、ビアを有する絶縁層が更に形成されて、ビア・オン・ビアの構造が設けられてもよい。また、両面CCL10の金属層12の低粗化処理は必ずしも必要ない。さらに、多層配線板1,2の内部及び外部には、能動部品や受動部品等の電子部品が搭載されてもよい。かかる電子部品としては、例えば、半導体装置、その他の能動部品や、コンデンサ、インダクタ、サーミスタ、抵抗、その他各種の能動部品(L,C,R単体のチップ部品、L,C,Rのアレイ、多層基板を用いたLCR複合チップ部品等)が挙げられる。
【0045】
またさらに、両面CCL10を用いずに、例えば、支持基体11に金属層13が形成された片面CCLを用い、その金属層13が設けられた反対面に、めっき法(無電解めっき+電解めっき)、気相成長法等のCVD法、蒸着やスパッタ等のPVD法等の公知の成膜方法で、金属層12を形成してもよく、金属層13も同様に公知の成膜方法で形成してもよい。さらにまた、金属層13は設けなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明した通り、本発明による多層配線板及びその製造方法によれば、多層配線板の反りや凹凸が生じても、配線層を形成するためのマスクとして均一性に優れた薄膜のパターンを簡易に形成することができ、また、高エッチングファクターのエッチング液を用いたエッチングにも十分に対応できるので、回路パターンや各種電子部品を内蔵するモジュール、機器、装置、システム、各種デバイス等、特に高性能化が要求されるものに広く且つ有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1,2…多層配線板、10…両面CCL、11…支持基体(絶縁層)、12…金属層(第1の導体層)、13…金属層(第1の導体層)、12a…粗面化層、20…プライマー付金属箔(積層シート)、21…プライマー樹脂層(樹脂層)、22…金属層(第2の導体層)、30…金属めっき層(第1の導体層)、40…ドライフィルムレジスト、45…樹脂層、41…未硬化な部位、42…硬化した部位、50…上層金属層、La…レーザービーム、Lb…レーザービーム、Lc…媒体、Ld…プラズマ、M1…マスク、R…硬化線、Va…孔、Vb…ビア(接続孔)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多層配線板(多層配線基板)において、導体回路パターン等の配線層を絶縁層上に形成するための方法としては、配線パターン部分に選択的に配線層を形成するアディティブ法、多層配線板の基板全面に下地層を形成した後、その下地層の配線パターン部分以外を選択的に除去又はマスクし、パターン状に残った又は露出した下地層を利用してこの上に配線層を形成するセミアディティブ法、基板全面に導体層を形成した後、その導体層上にレジスト(感光性樹脂)層を形成し、そのレジスト層を露光・硬化した後、現像によって不要部分を除去してパターニングし、残ったレジスト層のパターンをマスクとして露出した部分の導体層をエッチング等により除去することにより、配線パターン以外の部分の導体層を選択的に除去して配線層を形成するサブトラクティブ法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−136282号公報
【発明の概要】
【0004】
これらの方法の中でも、サブトラクティブ法で形成する導体回路パターンのライン間のピッチは、一般に、マスク層となるレジスト層の厚さに依存する。これは、レジスト層の厚さが薄い場合、レジスト層のパターンのライン間にエッチング液が循環し易く(捌け具合がよく)、レジスト層のパターン間の溝(凹部)の底部に露呈している導体層がエッチングされ易いのに対し、レジスト層の厚さが厚い場合、レジスト層のパターンのライン間にエッチング液が循環し難く(捌け具合が悪く)、レジスト層のパターン間の溝底部に露呈している導体層がエッチングされ難いことによる。かかる状況は、特に、高エッチングファクター(エッチングの深さ方向の進行量を横方向(サイドエッチ又はアンダーカット)への進行量で除した値)のエッチング液の場合に顕著となり得る。なお、化学エッチングの代わりにウェットブラストによって導体層をエッチングする方法もあるが、この場合にも、ブラストスラリーの循環し易さによって同様な傾向が認められる。
【0005】
そこで、近時の電子機器等に対する更なる小型化、薄型化、高密度実装化の要求に応えるべく配線パターンの更なる狭ピッチ化を達成するために、レジスト層として液体レジストを種々の方法で塗布することにより、レジスト層の厚さをより薄く、具体的には、平均厚さとして数μm程度の薄いレジスト層を形成可能な方法が知られている。また、液体レジストの代わりにより薄いドライフィルムレジストを用いる方法も知られている。
【0006】
しかし、多層配線板の厚さは極めて薄くなってきており、それ自体、反りや凹凸が生じてしまい易く、通常の液体レジストの厚さよりも、その反りの程度や凹凸の寸法差(高低差)が大きいことも多く、そうなると、液体レジストを用いて薄い均一な膜厚のレジスト層を形成することは困難な傾向にある。また、本発明者の知見によれば、ドライフィルムレジストを用いた場合も、多層配線板の基板の反りや凹凸によって、薄い均一な膜厚のレジスト層を形成することは困難な傾向にあり、且つ、薄くなればなるほど、フィルムの取り扱いが難しく煩雑となる傾向にある。
【0007】
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、多層配線板の反りや凹凸が生じても、配線層を形成するためのマスクとして均一性に優れた薄膜のパターンを簡易に形成することができる多層配線板の製造方法及びそれにより形成される多層配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明による多層配線板の製造方法は、絶縁層の少なくとも一面に第1の導体層を形成する工程と、樹脂層及び第2の導体層からなる積層シートを、第1の導体層上にその樹脂層が接するように載置し、その樹脂層を硬化させる工程と、第2の導体層をパターニングする工程と、パターニングされた第2の導体層をマスクとして、樹脂層をエッチングする工程と、少なくともそのエッチングされた樹脂層をマスクとして、第1の導体層をエッチングし、配線パターンを形成する工程とを有する。
【0009】
この際、絶縁層は、その絶縁層を貫通する接続孔を有しており、第1の導体層を形成する工程においては、その接続孔の内部にも第1の導体層を形成するようにしてもよい。また、絶縁層の少なくとも一面に予め導体層を形成しておき、その後、絶縁層に接続孔を形成し、それから、その接続孔の内部、及び、予め形成された導体層上に更に導体層を形成してもよく、この場合、予め形成された導体層と後から追加形成された導体層の両方が「第1の導体層」となり得る。
【0010】
或いは、本発明による多層配線板の製造方法は、絶縁層の一面側及び他面側に第1の導体層を形成する工程と、樹脂層及び第2の導体層からなる積層シートを、絶縁層の一面側に形成された第1の導体層上にその樹脂層が接するように載置し、その樹脂層を硬化させる工程と、積層シート、絶縁層の一面側に形成された第1の導体層、及び、絶縁層を貫通する接続孔を形成し、絶縁層の他面側に形成された第1の導体層を接続孔の内部に露出させる工程と、第2の導体層上、及び、接続孔の内部に第3の導体層を形成する工程と、第2の導体層及び第3の導体層をパターニングする工程と、パターニングされた第2の導体層及び第3の導体層をマスクとして、樹脂層をエッチングする工程と、少なくともそのエッチングされた樹脂層をマスクとして、絶縁層の一面側に形成された第1の導体層をエッチングし、配線パターンを形成する工程とを有する。
【0011】
このように構成された多層配線板の製造方法においては、いずれの場合においても、樹脂層及び第2の導体層からなる積層シートを、その樹脂層と、絶縁層上の第1の導体層とが接するように設けるので、まず、第2の導体層に形成されたパターンをマスクとして樹脂層がパターニングされ、さらに、その樹脂層のパターンをマスクとして第1の導体層がエッチングにより除去されて配線層が形成される。よって、配線層をエッチングするためのマスクとなる樹脂層の厚さを薄く制御すれば、配線層のライン間隔を確実に狭ピッチ化(ファインピッチ化)することが可能となる。また、樹脂層のみのシートではなく、樹脂層と第2の導体層との積層シートを用いるので、取扱性に優れ、第1の導体層が形成された絶縁層に接合させ易い利点がある。さらに、このように薄い樹脂層と第2の導体層からなる積層シートを、絶縁層上に形成された第1の導体層に接合させるので、絶縁層(基板)の反りや凹凸が生じても、その形状に応じて一様な厚さの樹脂層を簡易に積層形成することができる。
【0012】
また、配線層の狭ピッチ化を実現し易い観点からは、積層シートの樹脂層として、第1の導体層よりも厚さが薄いものを用いることが好ましい。
【0013】
その絶縁層の寸法は特に制限されるものではないが、具体的には、例えば、厚さが0.1μm〜5μm程度のものが挙げられる。この絶縁層の厚さが0.1μm未満であると、絶縁層の機械的強度が過度に低下し、例えば、レーザー加工や物理的加工が施された場合に破壊されたりクラックが生じたりといった不都合が生じることがある。また、この絶縁層の厚さが5μm程度を超えると、配線層を形成するためのマスクが過度に厚くなり配線層の微細化に十分に対応し難くなる傾向にある。
【0014】
また、絶縁層とともに積層シートを形成する第2の導体層の寸法も特に制限されないが、具体的には、例えば、その厚さが0.1μm〜12μm程度のものが挙げられる。この第2の導体層の厚さが0.1μm未満であると、第2の導体層の機械的強度が過度に低下してしまい、積層シートの取扱性が悪化してしまうとともに、第2の導体層が剥離等して絶縁層が露出してしまうことがあり得る。一方、この第2の導体層の厚さが12μm程度を超えると、絶縁層から、配線層の微細化のために必要な配線層形成用のマスクを形成することが困難となってしまう傾向にある。なお、第2の導体層が12μm程度以下であれば、その第2の導体層をパターニングする際のマスクとしては、過度に薄くない通常のマスク(レジストマスク)を用いることができる。
【0015】
また、本発明による多層配線板は、本発明の多層配線板の製造方法によって有効に得られるものであり、すなわち、絶縁層の少なくとも一面に第1の導体層を形成し、樹脂層及び第2の導体層の積層シートを、第1の導体層上にその樹脂層が接するように載置し、その樹脂層を硬化させ、第2の導体層をパターニングし、パターニングされた第2の導体層をマスクとして、樹脂層をエッチングし、少なくともそのエッチングされた樹脂層をマスクとして、第1の導体層をエッチングし、配線パターンを形成することにより得られるものである。
【0016】
或いは、本発明による多層配線板は、絶縁層の一面側及び他面側に第1の導体層を形成し、樹脂層及び第2の導体層の積層シートを、絶縁層の一面側に形成された第1の導体層上にその樹脂層が接するように載置し、その樹脂層を硬化させ、積層シート、絶縁層の一面側に形成された第1の導体層、及び、絶縁層を貫通する接続孔を形成し、絶縁層の他面側に形成された第1の導体層を接続孔の内部に露出させ、第2の導体層上、及び、接続孔の内部に第3の導体層を形成し、第2の導体層及び第3の導体層をパターニングし、パターニングされた第2の導体層及び第3の導体層をマスクとして、樹脂層をエッチングし、少なくともそのエッチングされた樹脂層をマスクとして、絶縁層の一面側に形成された導体層をエッチングし、配線パターンを形成することにより得られるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、配線層を形成すべき第1の導体層上に、絶縁層及び第2の導体層からなる積層シートを、その絶縁層が第1の導体層に接するように接合し、第1の導体層からの配線層の形成に際して、その絶縁層をパターニングしたものをマスクとして用いることができるので、その絶縁層の厚さを十分に薄く制御することにより、従来の液体レジストやドライフィルムレジストでは困難であった配線層の更なる微細化・狭ピッチ化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図2】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図3】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図4】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図5】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図6】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図7】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図8】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図9】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図10】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図11】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図12】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図13】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図14】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図15】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図16】本発明の一形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図17】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図18】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図19】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図20】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図21】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図22】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図23】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図24】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図25】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図26】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図27】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図28】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図29】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図30】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図31】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図32】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図33】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図34】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図35】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【図36】本発明の他の形態により多層配線板を形成している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0020】
図1乃至図16は、本発明による多層配線板の製造方法の一実施形態により多層配線板を形成している状態を示すプロセスフロー図(工程図)である。
【0021】
本実施形態においては、まず、両面CCL(Copper Clad Laminate)10を用意する(図1:第1の導体層を形成する工程)。両面CCL10は、支持基体11(絶縁層)の両面のそれぞれに、例えば箔状又は膜状の金属層12,13(第1の導体層)が設けられたものである。金属層12,13の材質としては、特に制限されず、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)等の金属が挙げられ、これらのなかでは、導電率やコストの観点から銅(Cu)が好ましい(以下、他の導体層、金属膜、配線層についても同様)。また、金属層12,13の厚さは特に制限されないが、例えば7μm程度のものを用いることができる。
【0022】
また、支持基体11としては、例えば樹脂絶縁層が挙げられ、それに用いられる樹脂材料としては、具体的には、例えば、ビニルベンジル樹脂、ポリビニルベンジルエーテル化合物樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、ポリフェニレエーテル(ポリフェニレンエーテルオキサイド)樹脂(PPE,PPO)、シアネートエステル樹脂、エポキシ+活性エステル硬化樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂(ポリフェニレンオキサオド樹脂)、硬化性ポリオレフィン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂又はベンゾオキサジン樹脂の単体、又は、これらの樹脂に、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸アルミウイスカ、チタン酸カリウム繊維、アルミナ、ガラスフレーク、ガラス繊維、窒化タンタル、窒化アルミニウム等を添加した材料、さらに、これらの樹脂に、マグネシウム、ケイ素、チタン、亜鉛、カルシウム、ストロンチウム、ジルコニウム、錫、ネオジウム、サマリウム、アルミニウム、ビスマス、鉛、ランタン、リチウム及びタンタルのうち少なくとも1種の金属を含む金属酸化物粉末を添加した材料、またさらには、これらの樹脂に、ガラス繊維、アラミド繊維等の樹脂繊維等を配合した材料、或いは、これらの樹脂をガラスクロス、アラミド繊維、不織布等に含浸させ材料、等を挙げることができ、電気特性、機械特性、吸水性、リフロー耐性等の観点から、適宜選択して用いることができる。
【0023】
次いで、この両面CCL10の一面側に形成された金属層12の表面を粗面化して粗面化層12aを形成する。ここで、金属層12の表面部に10〜200nmの微細孔を形成する低粗化処理を行ってもよい。また、その後の樹脂層を形成するため、低粗化の粗面化層12a上にシラン化合物(図示せず)が固着されていることが好ましい。配線パターンが微細になればなるほど、伝送時の損失が生じ易くなる傾向にあるが、低粗化処理を施した粗面化層12aを有すると、かかる伝送時の損失を効果的に低減させることが可能である。
【0024】
次に、未硬化のプライマー樹脂層21(樹脂層)が形成された銅箔等の金属層22(第2の導体層)からなる片面CCL(Copper Clad Laminate)構造を有するプライマー付金属箔20(積層シート)を、その未硬化のプライマー樹脂層21が金属層12の粗面化層12aと接するように載置し、両面CCL10とプライマー付金属箔20を例えば熱プレスして両者を接合し、プライマー樹脂層21を硬化させる(図1から図2:積層シートを載置し、樹脂層を硬化させる工程)。プライマー樹脂層21は、エポキシ樹脂、硬化剤、芳香族ポリアミド樹脂ポリマー等で構成され、高弾性、高靭性を示す樹脂層である。低粗化処理を施した粗面化層12aに通常のエポキシ樹脂を接合させると一定の強度は得られるが、高弾性、高靭性をもつプライマー樹脂層21であれば、粗面化層12aにより更に強固に接合し易い。プライマー樹脂層21の厚さは、特に制限されず、上述の如く、具体的には、例えば、0.1μm〜5μm程度の薄いものが挙げられる。また、金属層22の厚さも特に制限されず、上述の如く、具体的には、例えば、0.1μm〜12μm程度の薄いものが挙げられる。
【0025】
それから、その積層体に、金属層22側から、所定径を有する例えばレーザービームLa(例えば、UV−YAGレーザー)を照射し、金属層22、硬化したプライマー樹脂層21、及び金属層12を貫通し、かつ、支持基体11の途中まで、ビア形成用の孔Vaを穿設する(図3)。次に、その孔Vaの部位に、同等径を有するレーザービームLb(例えば、炭酸ガス(CO2)レーザー)を照射し、支持基体11を貫通するビアVb(接続孔)を穿設し、そのビアVbの内部に、支持基体11の他面側に形成された金属層13の一部を露出させる(図4:接続孔を形成し、第1の導体層を接続孔の内部に露出させる工程)。このとき、ビアVbを異なるレーザーを用いて二段階で形成せずに、例えば、炭酸ガス(CO2)レーザーを用いて一段階でビアVbを穿設してもよい。
【0026】
その後、そのビアVbが設けられた積層体の金属層22上、及び、ビアVbの内部に銅めっき等の金属めっきを施すことにより、金属層22上を覆い且つビアVbの内部を充填する金属めっき層30を形成する(図5:第2の導体層上、及び、接続孔の内部に第3の導体層を形成する工程)。次に、金属層22上の金属めっき層30の厚さが所定の厚さ(特に制限されないが、例えば数μm)となるまで、金属めっき層30をエッチダウンする(図6)。次いで、その金属めっき層30の上に、例えば紫外線感光型のドライフィルムレジスト40を積層接着した後(図7)、例えばメタルマスク(レチクル)等の所定のマスクM1をドライフィルムレジスト40の上方に配置し、紫外線等の硬化線Rを、マスクM1を介してドライフィルムレジスト40上に露光する(図8)。図示においては、ドライフィルムレジスト40において露光されずに未硬化な部位41と、露光により硬化された部位42を区別して表示した。
【0027】
続けて、マスクM1を撤去し、露光済みのドライフィルムレジスト40を現像して、ドライフィルムレジスト40における未硬化な部位41を金属めっき層30上から除去する(図9)。次に、露光により硬化されドライフィルムレジスト40上に残存した部位42をマスクとして、部位42間に露出した金属めっき層30及びその下層部位の金属層22をウェットエッチ等によりエッチングして(マイクロエッチ)、パターニングを行う(図10:第2の導体層及び第3の導体層をパターニングする工程)。これにより、当初、プライマー付金属箔20の構成要素であった金属層22がパターニングされ、プライマー樹脂層21の一部が露出する。
【0028】
次に、マスクとして使用したドライフィルムレジスト40の残部である部位42を、剥離除去する(図11)。それから、パターニングされた金属めっき層30及び金属層22をマスクとして、それらのパターンの間に露出したプライマー樹脂層21に、例えば、レーザービーム、ウェットブラストメディア、デスミアメディア等の媒体Lcを照射して、その部位のプライマー樹脂層21をエッチングして除去する(図12:パターニングされた第2の導体層及び第3の導体層をマスクとして、樹脂層をエッチングする工程)。
【0029】
次いで、図12に示す積層体にウェットエッチング等のエッチングを施す。これにより、プライマー樹脂層21上の金属めっき層30、及び、プライマー樹脂層21が除去されて露出した粗面化層12aを有する金属層12が除去されていき、やがて、プライマー樹脂層21上に残っていた金属層22も除去される。更にエッチングが進むと、パターニングされたプライマー樹脂層21をマスクとして、そのパターン間の金属層12、及びビアVb内部の金属めっき層30の上部の一部が除去され、パターニングされた金属層12及びビアVb内部の金属めっき層30によって構成される配線パターンが形成される(図13:エッチングされた樹脂層をマスクとして、絶縁層の一面側に形成された第1の導体層をエッチングし、配線パターンを形成する工程)。
【0030】
このとき、金属層12をエッチングするマスクとして、上述したような薄いプライマー樹脂層21のパターンを用いるので、支持基体11等の反りや凹凸が生じても、配線層を形成するためのマスクとして均一性に優れた薄膜のパターンを簡易に形成することができ、これにより、そのパターン間の間隔が狭くても金属層12のエッチングを良好に行うことができ、形成される配線パターンの微細化・狭ピッチ化が可能となる。また、プライマー樹脂層21の両端部が、そのパターン間の金属層12のサイドエッチが進む際の初期に下側に撓むので、更にサイドエッチが進んでしまうことを抑止することができる。
【0031】
さらに、必要に応じて、残留したプライマー樹脂層21にプラズマLd等を照射してその表面の粗化処理を行う(図14)。このとき、プライマー樹脂層21を除去してしまってもよい(同図においては、プライマー樹脂層21が残っている状態を示した。)。次に、その上に、樹脂層45をビルドアップ(積層)して表面を平坦化した後(図15)、さらにその上に、所定厚さ(例えば、金属層12,13と同等の厚さ)の上層金属層50を積層し、プレス成型して、本実施形態による多層配線板1を得る。
【0032】
このとき、残存するプライマー樹脂層21の表面が粗面化されていれば、その上にビルドアップされる樹脂層45との接合性が格段に高められ得る。なお、樹脂層45としては、ビルドアップ層であってもよいし、多層配線板1の最表面に形成されるソルダーレジストであってもよい。
【0033】
そして、プライマー樹脂層21と樹脂層45との境界面の表面粗さは、金属層12とプライマー樹脂層21との境界面の表面粗さ(すなわち粗面化層12aの粗さ)よりも小さいことが好ましい。すなわち、プライマー樹脂層21は、表面粗さが小さい金属層12の表面(粗面化層12a)に十分に密着可能であるが、プライマー樹脂層21とその上の樹脂層45との密着性を高めるためには、それらの境界層がより粗い方が好適である。この粗さは、金属層22にプライマー樹脂層21が接合している接合面にける粗化形態であり、プライマー樹脂層21の厚さよりも小さい範囲内において、表面粗さ及び粗化形状を適宜選択することができる。この表面粗さRzは、レーザー変位計等によって測定することができ、粗化形状は断面観察より確認することができる。
【0034】
図17乃至図36は、本発明による多層配線板の製造方法の他の実施形態により多層配線板を形成している状態を示すプロセスフロー図(工程図)である。
【0035】
本実施形態においても、まず、支持基体11の両面にそれぞれ金属層12,13が形成された両面CCL10を用意する(図17)。次に、両面CCL10の一面側に、ドライフィルムレジスト40を積層接着する(図18)。それから、図8で説明したのと同様にして、例えばメタルマスク(レチクル)等の所定のマスクM1をドライフィルムレジスト40の上方に配置し、紫外線等の硬化線Rを、マスクM1を介してドライフィルムレジスト40上に露光し、ドライフィルムレジスト40において露光されずに未硬化な部位41と、露光により硬化された部位42を得る(図19)。続けて、マスクM1を撤去し、露光済みのドライフィルムレジスト40を現像して、ドライフィルムレジスト40における未硬化な部位41を金属層12上から除去する(図20)。
【0036】
次に、露光により硬化されたドライフィルムレジスト40上に残存した部位42をマスクとして、部位42間に露出した金属層12をウェットエッチ等によりエッチングしてパターニングを行う(図21)。それから、マスクとして使用したドライフィルムレジスト40の残部である部位42を剥離除去する(図22)。次いで、図3及び図4で説明したのと同様に、金属層12側から、所定径を有する例えばレーザービームLa及び/又はレーザービームLbを照射し、支持基体11を貫通するビアVbを穿設し、そのビアVbの内部に、支持基体11の他面側に形成された金属層13の一部を露出させる(図23)。その後、図5で説明したのと同様に、そのビアVbが設けられた積層体の金属層12上、及び、ビアVbの内部に銅めっき等の金属めっきを施すことにより、金属層12上を覆い且つビアVbの内部を充填する金属めっき層30を形成する(図24)。
【0037】
次に、図6で説明したのと同様に、金属層12上の金属めっき層30の厚さが所定の厚さ(特に制限されないが、例えば数μm)となるまで、金属めっき層30をエッチダウンする(図25)。次いで、未硬化のプライマー樹脂層21が形成された銅箔等の金属層22からなるプライマー付金属箔20を、その未硬化のプライマー樹脂層21が金属めっき層30と接するように載置し、図25に示す状態の積層体とプライマー付金属箔20を例えば熱プレスして両者を接合し、プライマー樹脂層21を硬化させる(図26:積層シートを載置し、樹脂層を硬化させる工程)。このように、本実施形態では、金属層12及びエッチダウンされた金属めっき層30から第1の導体層が形成されている。すなわち、両面CCL10を用意する図17に示す工程も、金属めっき層30を金属層12上及びビアVb内に形成する工程も、絶縁層の少なくとも一面に第1の導体層を形成する工程に相当する。
【0038】
次に、プライマー付金属箔20の金属層22の上に、再び、例えば紫外線感光型のドライフィルムレジスト40を積層接着した後(図27)、例えばメタルマスク(レチクル)等の所定のマスクM1をドライフィルムレジスト40の上方に配置し、紫外線等の硬化線Rを、マスクM1を介してドライフィルムレジスト40上に露光し、ドライフィルムレジスト40において露光されずに未硬化な部位41と、露光により硬化された部位42を得る(図28)。
【0039】
続けて、マスクM1を撤去し、露光済みのドライフィルムレジスト40を現像して、ドライフィルムレジスト40における未硬化な部位41を金属層22上から除去する(図29)。次に、露光により硬化されたドライフィルムレジスト40上に残存した部位42をマスクとして、部位42間に露出した金属層22をウェットエッチ等によりエッチングして(マイクロエッチ)、パターニングを行う(図30:第2の導体層をパターニングする工程)。これにより、当初、プライマー付金属箔20の構成要素であった金属層22がパターニングされ、プライマー樹脂層21の一部が露出する。
【0040】
次に、マスクとして使用したドライフィルムレジスト40の残部である部位42を、剥離除去する(図31)。それから、パターニングされた金属層22をマスクとして、それらのパターンの間に露出したプライマー樹脂層21に、例えば、レーザービーム、ウェットブラストメディア、デスミアメディア等の媒体Lcを照射して、その部位のプライマー樹脂層21をエッチングして除去する(図32:パターニングされた第2の導体層をマスクとして、樹脂層をエッチングする工程)。
【0041】
次いで、図32に示す積層体にウェットエッチング等のエッチングを施す。これにより、プライマー樹脂層21上の金属層22、及び、プライマー樹脂層21が除去されて露出した金属層12が除去されていき、やがて、プライマー樹脂層21上に残っていた金属層22も除去される。更にエッチングが進むと、パターニングされたプライマー樹脂層21をマスクとして、そのパターン間の金属めっき層30及び金属層12が除去され、パターニングされた金属層12、及び、ビアVb内部を充填し且つ金属層12上に残存する金属めっき層30によって構成される配線パターンが形成される(図33:エッチングされた樹脂層をマスクとして、第1の導体層をエッチングし、配線パターンを形成する工程)。
【0042】
この実施形態においても、金属層12及び金属めっき層30をエッチングするマスクとして、上述したような薄いプライマー樹脂層21のパターンを用いるので、支持基体11等の反りや凹凸が生じても、配線層を形成するためのマスクとして均一性に優れた薄膜のパターンを簡易に形成することができ、これにより、そのパターン間の間隔が狭くても金属層12及び金属めっき層のエッチングを良好に行うことができ、形成される配線パターンの微細化・狭ピッチ化が可能となる。また、プライマー樹脂層21の両端部が、そのパターン間の金属層12のサイドエッチが進む際の初期に下側に撓むので、更にサイドエッチが進んでしまうことを抑止することができる。
【0043】
さらに、必要に応じて、残留したプライマー樹脂層21にプラズマLd等を照射してその表面の粗化処理を行う(図34)。この場合においても、プライマー樹脂層21を除去してしまってもよい(同図においては、プライマー樹脂層21が残っている状態を示した。)。次に、その上に、樹脂層45をビルドアップ(積層)して表面を平坦化した後(図35)、さらにその上に、所定厚さ(例えば、金属層12,13と同等の厚さ)の上層金属層50を積層し、プレス成型して、本実施形態による多層配線板2を得る。このときにも、残存するプライマー樹脂層21の表面が粗面化されていれば、その上にビルドアップされる樹脂層45の種類によっては、その樹脂層45との接合性が格段に高められ得る。
【0044】
また、上述したとおり、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において様々な変形が可能である。例えば、多層配線板1,2の多層構造は図示の層数に限られず、更に多段に設けられてもよく、その場合、ビアVb上や上層金属層50上に、ビアを有する絶縁層が更に形成されて、ビア・オン・ビアの構造が設けられてもよい。また、両面CCL10の金属層12の低粗化処理は必ずしも必要ない。さらに、多層配線板1,2の内部及び外部には、能動部品や受動部品等の電子部品が搭載されてもよい。かかる電子部品としては、例えば、半導体装置、その他の能動部品や、コンデンサ、インダクタ、サーミスタ、抵抗、その他各種の能動部品(L,C,R単体のチップ部品、L,C,Rのアレイ、多層基板を用いたLCR複合チップ部品等)が挙げられる。
【0045】
またさらに、両面CCL10を用いずに、例えば、支持基体11に金属層13が形成された片面CCLを用い、その金属層13が設けられた反対面に、めっき法(無電解めっき+電解めっき)、気相成長法等のCVD法、蒸着やスパッタ等のPVD法等の公知の成膜方法で、金属層12を形成してもよく、金属層13も同様に公知の成膜方法で形成してもよい。さらにまた、金属層13は設けなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明した通り、本発明による多層配線板及びその製造方法によれば、多層配線板の反りや凹凸が生じても、配線層を形成するためのマスクとして均一性に優れた薄膜のパターンを簡易に形成することができ、また、高エッチングファクターのエッチング液を用いたエッチングにも十分に対応できるので、回路パターンや各種電子部品を内蔵するモジュール、機器、装置、システム、各種デバイス等、特に高性能化が要求されるものに広く且つ有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1,2…多層配線板、10…両面CCL、11…支持基体(絶縁層)、12…金属層(第1の導体層)、13…金属層(第1の導体層)、12a…粗面化層、20…プライマー付金属箔(積層シート)、21…プライマー樹脂層(樹脂層)、22…金属層(第2の導体層)、30…金属めっき層(第1の導体層)、40…ドライフィルムレジスト、45…樹脂層、41…未硬化な部位、42…硬化した部位、50…上層金属層、La…レーザービーム、Lb…レーザービーム、Lc…媒体、Ld…プラズマ、M1…マスク、R…硬化線、Va…孔、Vb…ビア(接続孔)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層の少なくとも一面に第1の導体層を形成する工程と、
樹脂層及び第2の導体層からなる積層シートを、前記第1の導体層上に該樹脂層が接するように載置し、該樹脂層を硬化させる工程と、
前記第2の導体層をパターニングする工程と、
前記パターニングされた第2の導体層をマスクとして、前記樹脂層をエッチングする工程と、
少なくとも前記エッチングされた樹脂層をマスクとして、前記第1の導体層をエッチングし、配線パターンを形成する工程と、
を有する多層配線板の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁層は、該絶縁層を貫通する接続孔を有しており、
前記第1の導体層を形成する工程においては、前記接続孔の内部にも第1の導体層を形成する、
請求項1記載の多層配線板の製造方法。
【請求項3】
絶縁層の一面側及び他面側に第1の導体層を形成する工程と、
樹脂層及び第2の導体層からなる積層シートを、前記絶縁層の一面側に形成された前記第1の導体層上に該樹脂層が接するように載置し、該樹脂層を硬化させる工程と、
前記積層シート、前記絶縁層の一面側に形成された前記第1の導体層、及び、前記絶縁層を貫通する接続孔を形成し、前記絶縁層の他面側に形成された前記第1の導体層を該接続孔の内部に露出させる工程と、
前記第2の導体層上、及び、前記接続孔の内部に第3の導体層を形成する工程と、
前記第2の導体層及び前記第3の導体層をパターニングする工程と、
前記パターニングされた前記第2の導体層及び前記第3の導体層をマスクとして、前記樹脂層をエッチングする工程と、
少なくとも前記エッチングされた樹脂層をマスクとして、前記絶縁層の一面側に形成された前記第1導体層をエッチングし、配線パターンを形成する工程と、
を有する多層配線板の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂層として、前記第1の導体層よりも厚さが薄いものを用いる、
請求項1〜3のいずれか1項記載の多層配線板の製造方法。
【請求項5】
絶縁層の少なくとも一面に第1の導体層を形成し、
樹脂層及び第2の導体層の積層シートを、前記第1の導体層上に該樹脂層が接するように載置し、該樹脂層を硬化させ、
前記第2の導体層をパターニングし、
前記パターニングされた第2の導体層をマスクとして、前記樹脂層をエッチングし、
少なくとも前記エッチングされた樹脂層をマスクとして、前記第1の導体層をエッチングし、配線パターンを形成する、
ことにより得られる多層配線板。
【請求項6】
絶縁層の一面側及び他面側に第1の導体層を形成し、
樹脂層及び第2の導体層の積層シートを、前記絶縁層の一面側に形成された前記第1の導体層上に該樹脂層が接するように載置し、該樹脂層を硬化させ、
前記積層シート、前記絶縁層の一面側に形成された前記第1の導体層、及び、前記絶縁層を貫通する接続孔を形成し、前記絶縁層の他面側に形成された前記第1の導体層を該接続孔の内部に露出させ、
前記第2の導体層上、及び、前記接続孔の内部に第3の導体層を形成し、
前記第2の導体層及び前記第3の導体層をパターニングし、
前記パターニングされた前記第2の導体層及び前記第3の導体層をマスクとして、前記樹脂層をエッチングし、
少なくとも前記エッチングされた樹脂層をマスクとして、前記絶縁層の一面側に形成された導体層をエッチングし、配線パターンを形成する、
ことにより得られる多層配線板。
【請求項1】
絶縁層の少なくとも一面に第1の導体層を形成する工程と、
樹脂層及び第2の導体層からなる積層シートを、前記第1の導体層上に該樹脂層が接するように載置し、該樹脂層を硬化させる工程と、
前記第2の導体層をパターニングする工程と、
前記パターニングされた第2の導体層をマスクとして、前記樹脂層をエッチングする工程と、
少なくとも前記エッチングされた樹脂層をマスクとして、前記第1の導体層をエッチングし、配線パターンを形成する工程と、
を有する多層配線板の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁層は、該絶縁層を貫通する接続孔を有しており、
前記第1の導体層を形成する工程においては、前記接続孔の内部にも第1の導体層を形成する、
請求項1記載の多層配線板の製造方法。
【請求項3】
絶縁層の一面側及び他面側に第1の導体層を形成する工程と、
樹脂層及び第2の導体層からなる積層シートを、前記絶縁層の一面側に形成された前記第1の導体層上に該樹脂層が接するように載置し、該樹脂層を硬化させる工程と、
前記積層シート、前記絶縁層の一面側に形成された前記第1の導体層、及び、前記絶縁層を貫通する接続孔を形成し、前記絶縁層の他面側に形成された前記第1の導体層を該接続孔の内部に露出させる工程と、
前記第2の導体層上、及び、前記接続孔の内部に第3の導体層を形成する工程と、
前記第2の導体層及び前記第3の導体層をパターニングする工程と、
前記パターニングされた前記第2の導体層及び前記第3の導体層をマスクとして、前記樹脂層をエッチングする工程と、
少なくとも前記エッチングされた樹脂層をマスクとして、前記絶縁層の一面側に形成された前記第1導体層をエッチングし、配線パターンを形成する工程と、
を有する多層配線板の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂層として、前記第1の導体層よりも厚さが薄いものを用いる、
請求項1〜3のいずれか1項記載の多層配線板の製造方法。
【請求項5】
絶縁層の少なくとも一面に第1の導体層を形成し、
樹脂層及び第2の導体層の積層シートを、前記第1の導体層上に該樹脂層が接するように載置し、該樹脂層を硬化させ、
前記第2の導体層をパターニングし、
前記パターニングされた第2の導体層をマスクとして、前記樹脂層をエッチングし、
少なくとも前記エッチングされた樹脂層をマスクとして、前記第1の導体層をエッチングし、配線パターンを形成する、
ことにより得られる多層配線板。
【請求項6】
絶縁層の一面側及び他面側に第1の導体層を形成し、
樹脂層及び第2の導体層の積層シートを、前記絶縁層の一面側に形成された前記第1の導体層上に該樹脂層が接するように載置し、該樹脂層を硬化させ、
前記積層シート、前記絶縁層の一面側に形成された前記第1の導体層、及び、前記絶縁層を貫通する接続孔を形成し、前記絶縁層の他面側に形成された前記第1の導体層を該接続孔の内部に露出させ、
前記第2の導体層上、及び、前記接続孔の内部に第3の導体層を形成し、
前記第2の導体層及び前記第3の導体層をパターニングし、
前記パターニングされた前記第2の導体層及び前記第3の導体層をマスクとして、前記樹脂層をエッチングし、
少なくとも前記エッチングされた樹脂層をマスクとして、前記絶縁層の一面側に形成された導体層をエッチングし、配線パターンを形成する、
ことにより得られる多層配線板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2010−232418(P2010−232418A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78223(P2009−78223)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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