説明

多層配線構造を有する基板の製造法および半導体装置

【課題】 製造が容易で、粘度安定性に優れ、良好な像形成が可能なポジ型感光性樹脂組成物を用いて、下層配線層の段差をほぼ完全に平坦化でき、配線の信頼性の高い多層配線構造を有する基板の製造法及び層間絶縁膜において下層配線層の段差がほぼ完全に平坦にされ、配線の信頼性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】 パターンの形成された配線層を有する基板上に、(a)有機溶媒可溶性ポリイミドと塩基性化合物とにより形成される錯体、(b)光酸発生剤及び(c)溶媒を含有してなるポジ型感光性樹脂組成物を用いて層間絶縁膜を形成し、その上に上層配線層を形成する工程を含むことを特徴とする多層配線構造を有する基板の製造法並びに(a)有機溶媒可溶性ポリイミドと塩基性化合物とにより形成される錯体、(b)光酸発生剤及び(c)溶媒を含有してなるポジ型感光性樹脂組成物を用いて形成された層間絶縁膜を有してなる半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多層配線構造を有する半導体集積回路、高密度実装基板等の電子回路基板の製造法及び半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体集積回路における多層配線構造の製造には、パターンの形成された配線層を有する基板上に真空蒸着、CVD(ケミカルベーパーデポジッション)等の気相成長法によりSiO2、SiN等からなる層間絶縁膜を形成し、スルーホールを開口した後、上層配線層を形成する方法が用いられている。しかし、気相成長法によって層間絶縁膜を形成する方法では、図7に示されるように下層配線層4の段差が層間絶縁層5の形成後もそのまま残り、上層配線層7を形成した際、上記段差部分で配線層が極めて薄くなり配線切れが起こりやすいという問題があった。なお、図7は気相成長法によって層間絶縁膜を形成した多層配線構造を示す断面図であり、1は半導体基板、2は二酸化シリコン膜である。そこでこれを改良するために、図5に示されるように層間絶縁膜5の形成を芳香族ジアミンと芳香族四塩基酸二無水物とから得られたポリアミック酸の溶液を塗布し、硬化して得られるポリイミドを用いる方法が提案され、現在では広く使われている(特公昭51−44871号公報等)。
【0003】一方、ポリイミドを用いる場合、膜加工は、フォトレジストを用いたエッチングプロセスによって行われていたため、最近では膜加工プロセスを合理化する目的でフォトレジストの機能を兼ね合わせた感光性重合体組成物の開発検討が進められている。この感光性ポリイミドとしては、様々なタイプのものが提案されているが、非露光部が現像処理により除去され露光部がパターンとして残るネガ型と、露光部が現像処理により除去され非露光部がパターンとして残るポジ型に大別される。ネガ型としては、例えば、特開昭49−11541号公報、特開昭50−40922号公報、特開昭54−145794号公報、特開昭56−38038号公報に、ポリイミド前駆体にエステル結合やイオン結合を介して感光基としてアクリロイル基を付与する方法が提案されている。一般にネガ型は、原理上、高解像度化が困難であったり、現像液として有機溶媒を大量に使用するため、環境上、安全上問題になっている。
【0004】これに対して、ポジ型は、一般にアルカリ水溶液が現像液として用いられており、また、ポジ型は原理的に高解像性が期待できることからポジ型感光性ポリイミドに対する注目が高まっている。ポジ型の感光性ポリイミドとしては、例えば、特公昭64−60630号公報、US4395482号、特開昭52−13315号公報、特開平4−120171号公報等に、水酸基を有する可溶性ポリイミド、ポリオキサゾール前駆体、ポリイミド前駆体にナフトキノンジアジドを添加する方法やカルボキシル基を保護したポリイミド前駆体に光酸発生剤を添加する方法が提案されている。しかし、これらには、現像後の高温処理による膜減りが大きかったり、粘度安定性が悪いまたは保護基の脱離効率が低い等の問題があり、実用レベルに達したものがないのが実情である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】請求項1及び2に記載の発明は、製造が容易で、粘度安定性に優れ、良好な像形成が可能なポジ型感光性樹脂組成物を用いて、下層配線層の段差をほぼ完全に平坦化でき、配線の信頼性の高い多層配線構造を有する基板の製造法を提供するものである。また請求項3記載の発明は、層間絶縁膜において下層配線層の段差がほぼ完全に平坦にされ、配線の信頼性の高い半導体装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、パターンの形成された配線層を有する基板上に、(a)有機溶媒可溶性ポリイミドと塩基性化合物とにより形成される錯体、(b)光酸発生剤及び(c)溶媒を含有してなるポジ型感光性樹脂組成物を用いて層間絶縁膜を形成し、その上に上層配線層を形成する工程を含むことを特徴とする多層配線構造を有する基板の製造法に関する。
【0007】また本発明は、前記の工程を2回以上繰り返す多層配線構造を有する基板の製造法に関する。さらに本発明は、(a)有機溶媒可溶性ポリイミドと塩基性化合物とにより形成される錯体、(b)光酸発生剤及び(c)溶媒を含有してなるポジ型感光性樹脂組成物を用いて形成された層間絶縁膜を有してなる半導体装置に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明において、パターンの形成された配線層を有する基板とは、例えば、アルミニウム配線層を形成したシリコン半導体基板、銅配線層を形成したセラミック高密度実装基板、銅配線層を形成したセラミックハイブリッド基板等を指す。本発明の製造法においては、ポジ型感光性樹脂組成物を、前記パターンの形成された配線層を有する基板上に、浸漬法、スプレー法、スクリーン印刷法、回転塗布法等によって塗布し、ついで加熱乾燥することにより粘着性のない塗膜とすることができる。
【0009】ここで、本発明で用いるポジ型感光性樹脂組成物について説明する。本発明で用いるポジ型感光性樹脂組成物においては、有機溶媒中でポリイミドと塩基化合物の錯体を形成するために、有機溶媒可溶性ポリイミドを用いる。用いる有機溶媒可溶性ポリイミドは、いずれかの有機溶媒に可溶なものを選択すればよいが、十分に可溶であるというためには、樹脂固形分濃度が10重量%以上の溶液になり得る溶解性を有することが好ましい。ポリイミドは、下記一般式(I)
【化1】


(式中、R1は、四価の芳香族基、脂環族基又は脂肪族基、R2は二価の芳香族基、脂環族基又は脂肪族基を表し、それらの基は、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、スルホン基等の置換基により置換されていてもよい)で表される繰り返し単位を有する。
【0010】このポリイミドは、有機溶媒中で、等モルのテトラカルボン酸二無水物とジアミンの反応から得られるポリイミド前駆体を加熱閉環することにより得ることができる。ここで、用いられるテトラカルボン酸二無水物とジアミンは、得られるポリイミドが有機溶媒可溶性となるように選ばれる。ポリイミド前駆体を加熱閉環する際、キシレン等の溶媒を添加してイミド化により発生する水を共沸させることが好ましい。またこの際、イミド化促進のための塩基性触媒等を添加することができる。
【0011】上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、オキシジフタル酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3,4,4−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,4,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、スルホニルジフタル酸二無水物、m−ターフェニル−3,3,4,4−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,3,4,4−テトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス{4−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス{4−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、下記一般式(II)
【化2】


(R3及びR4は一価の炭化水素基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、sは1以上の整数である)で示されるシロキサン構造を有するテトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましいものとして挙げられ、これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いられる。
【0012】また、上記ジアミンとしては、特に制限はないが、2,2′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′,6,6′−テトラメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、4,4−(又は3,4−、3,3−、2,4−、2,2−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4(又は3,4−、3,3−、2,4−、2,2−)ジアミノジフェニルメタン、4,4−(又は3,4−、3,3−、2,4−、2,2−)ジアミノジフェニルスルホン、4,4−(又は3,4−、3,3−、2,4−、2,2−)スルフィド、3,3−ジアミノジフェニルスルホン及びパラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、o−トリジン、o−トリジンスルホン、4,4−メチレン−ビス−(2,6−ジエチルアニリン)、4,4−メチレン−ビス−(2,6−ジイソプロピルアニリン)、2,4−ジアミノメシチレン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4−ベンゾフェノンジアミン、ビス−{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、3,3−ジメチル−4,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3,5,5−テトラメチル−4,4−ジアミノジフェニルメタン、ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン等の芳香族ジアミンが好ましく、これらは単独又は二種以上を組み合わせて用いられる。
【0013】また、密着性等を向上させるために、下記一般式(III)
【化3】


(式中、R5及びR6は二価の炭化水素基を表し、R7及びR8は一価の炭化水素基を表し、複数のR7及びR8はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、tは1以上の整数である)で示されるジアミノポリシロキサン等の脂肪族ジアミンを用いてもよい。
【0014】ポリイミドと塩基性化合物の錯体は、前記有機溶媒可溶性ポリイミドに塩基性化合物を添加し、室温で撹拌混合することにより製造することができる。この錯体は、ポリイミドのカルボニル基に塩基性化合物が配位して形成されると考えられる。塩基性化合物としては、特に制限はなく、一般に知られている塩基性化合物を使用することができる。好ましいものとしては、炭素原子数が1〜15のアルキル基を有するモノアルキルアミン、炭素原子数が1〜8のアルキル基を有するジアルキルアミン及び炭素原子数が1〜6のアルキル基を有するトリアルキルアミン等のアミン、炭素原子数が1〜6のアルコキシド(金属としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム)が挙げられる。具体的に好ましいものとしては、モノアルキルアミンとしては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノヘキシルアミン等、ジアルキルアミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジヘキシルアミン等、トリアルキルアミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン等、アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等が挙げられる。
【0015】錯体形成に用いる塩基性化合物の量は、特に制限はないが、ポリイミドの構造を示す前記一般式(I)で示される繰り返し単位、即ち、ポリイミドの2つのイミド結合を含む繰り返し単位を1単位とした繰り返し単位の総数を1として、これに対して塩基性化合物の分子の数が0.2〜20となる範囲の量を用いることが好ましく、0.5〜15となる量を用いるのがより好ましい。
【0016】ポリイミドの製造、上記錯体形成及び感光性組成物の製造に用いる有機溶媒としては、ポリイミドを完全に溶解する極性溶媒が一般に好ましく、中でも非プロトン性の極性溶媒がより好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン等が具体的に好ましい化合物として挙げられる。
【0017】その他、この極性溶媒以外に、ケトン類、エステル類、ラクトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類、例えば、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等も使用することができる。これらは、上記極性溶媒と併用することが好ましく、その場合、溶媒総量に対して、80重量%以下とすることが好ましい。
【0018】感光性樹脂組成物における溶媒の量は、特に制限されないが、粘度、塗膜形成性等の面から、前記ポリイミドとの合計総量に対して、1〜80重量%とすることが好ましく、10〜50重量%とすることがより好ましく、15〜40重量%とすることが特に好ましい。
【0019】感光性樹脂組成物に用いられる光酸発生剤とは、光の照射により酸を発生する機能を有するものをいい、特に制限はなく、一般によく知られた光酸発生剤を使用することができる。例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ニトロベンジルトシレート、ヒドロキシベンゾフェノンメタンスルホネートエステル、ジアリールヨードニウム塩、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルフォニウム塩、2,4,6−(トリクロロメチル)トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート等が好ましい化合物として挙げられる。これらの量は、感光特性の面から、ポリイミドの構造を示す一般式(I)で示される繰り返し単位の総数を1として、これに対して0.2〜30とすることが好ましく、0.5〜20とすることがより好ましい。
【0020】感光性樹脂組成物には、上記光酸発生剤の他に、必要に応じて感光剤を用いることができる。その感光剤としては、特に制限はないが、例えば、ミヒラーズケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2−t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ベンジル、ジフェニルジスルフィド、フェナンスレンキノン、2−イソプロピルチオキサントン、リボフラビンテトラブチレート、2,6−ビス(p−ジエチルアミノベンザル)−4−メチル−4−アザシクロヘキサノン、N−エチル−N−(p−クロロフェニル)グリシン、N−フェニルジエタノールアミン、2−(o−エトキシカルボニル)オキシイミノ−1,3−ジフェニルプロパンジオン、1−フェニル−2−(o−エトキシカルボニル)オキシイミノプロパン−1−オン、3,3,4,4−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス−[2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル]チタン等が挙げられる。これらは、単独又は二種以上を組み合わせて用いられる。これらを用いる場合、その量に特に制限はないが、ポリイミドの総量に対して、0.001〜10重量%とすることが好ましい。
【0021】感光性樹脂組成物は、浸漬法、スプレー法、スクリーン印刷法、回転塗布法等によってシリコンウエハ、金属基板、セラミック基板等の方法を用いて前述の基材上に塗布され、溶剤を適度に加熱乾燥することにより粘着性のない塗膜とすることができる。この塗膜上に、所望のパターンが描かれたマスクを通して活性光線又は化学線を照射する。照射する活性光線又は化学線としては、超高圧水銀灯を用いるコンタクト/プロキシミテイ露光機、ミラープロジェクション露光機、i線ステッパ、g線ステッパ、その他の紫外線、可視光源や、X線、電子線を用いることができる。照射後、照射部を現像液で溶解除去することによりスルーホールが形成される。
【0022】現像液としては、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液やトリエタノールアミン水溶液等の塩基性溶液が好ましいが、その他、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の良溶媒やこれらと低級アルコールや水または芳香族炭化水素等の貧溶媒との混合溶媒を用いることもできる。。次に100〜500℃、好ましくは120〜400℃の温度で数十分から数時間加熱することにより、感光剤と溶媒を完全に除去したポリイミド樹脂の皮膜である層間絶縁膜となり、これによって基板表面の特定部分で段差を被服平坦化することが出来る。上記の皮膜形成に際して、基板表面への密着性を高める目的で、感光性樹脂組成物にアミノシラン、エポキシシラン等の接着助剤を必要に応じて添加することも可能である。
【0023】こうしてスルーホールを形成した層間絶縁膜上に上層配線層を真空蒸着、スパッタリング、CVD(ケミカルベーパーデポジション)等の既に知られた方法を用いて形成することができる。これにより多層配線構造が形成されるが、さらに上層配線層をパターニングし、上記の製造法を2回以上繰り返すことにより、配線層と絶縁層のより多層化された配線構造を有する基板が得られる。本発明の半導体装置は、前記ポジ型感光性樹脂組成物を用いることによって形成された層間絶縁膜を有するものである。この半導体装置は通常、前述の多層配線構造の製造法によって形成される多層配線構造を有するものである。
【0024】
【実施例】
a.感光性樹脂組成物の製造撹拌機、温度計及び窒素導入管を備えた三口フラスコに4,4,−メチレン−ビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)73.3gおよびN−メチル−2−ピロリドン500gを加え窒素流通下、室温で撹拌溶解した。この溶液にピロメリット酸二無水物43.6gを添加し、5時間撹拌しポリイミド前駆体溶液を得た。このポリイミド前駆体溶液にキシレン150gを加え、150℃で2時間加熱後、残留キシレンを減圧留去してポリイミド溶液を得た。さらに、ジエチルアミン14.6gを添加し室温で3時間撹拌し、ポリイミド−アミン錯体溶液を得た。この得られたポリイミド−アミン錯体溶液10gに対して、光酸発生剤としてトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート1.6gを加え、撹拌混合後、フィルタ濾過して感光性樹脂組成物を得た。
【0025】b.多層配線構造を有する半導体装置の製造図1に示すように、まずコレクタ領域C、ベース領域Bおよびエミッタ領域Eからなる半導体素子が形成されている半導体基板1の表面に、CVD(化学気相成長法)により、二酸化シリコン膜2を形成させた。次いで電極引き出し部分となる所定部分を、通常のホトリソグラフィープロセスによりエッチング除去し、二酸化シリコン膜にビアホール(窓)3を設け、前記エミッタ領域およびベース領域の一部を露出させた。さらに前記ビアホール上にアルミニウム配線層をスパッタリング法により形成させ、ホトリソグラフィープロセスを行い、下層配線層4を形成させた。この配線層は1μmの厚さと0.5〜2μmの幅を有するものであった。
【0026】次に下層配線層上に、前記aの感光性樹脂組成物スピンコートし(図2)、ホットプレートを用いて80℃/60秒加熱し、ホトマスク6を介して超高圧水銀灯を用いて露光(露光量1000mJ/cm2)した(図3)。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で現像したところ、露光部が溶解し、未露光部が残存したポジの良好なパターンが得られた。次にコンベクションオーブンで350℃/1時間硬化して厚さ2μmのポリイミド層間絶縁膜5を得た(図4)。その後、上層アルミニウム配線層7をスパッタリング法によって形成し、図5に示す二層配線構造を有する半導体装置を得た。図5において5がポリイミドの層間絶縁膜である。
【0027】c.平坦化率と埋込性の評価こうして得られたポリイミド膜による初期段差の平坦化率を図6に示すa、bの値を測定し、その値から次式
【数1】


により求めたところ、およそ90%であった。また、溝パターンの部分でシリコン基板をカットし、走査型電子顕微鏡で断面形状を観察したところ、何れの溝にもポリイミド樹脂が十分充填されていることがわかった。
【0028】d.現像加工性の評価シリコン基板上に本発明の感光性樹脂組成物を上記同様の膜厚でスピンコートし、ホットプレートを用いて80℃/60秒加熱し、ホトマスクを介して超高圧水銀灯を用いて露光(露光量1000mJ/cm2)した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で現像したところ、露光部が溶解し、未露光部が残存したポジの良好なパターンが得られた。
【0029】比較例実施例において、ポリイミド溶液に添加したジエチルアミンを加えず、それ以外は、実施例と同様に処理して感光性樹脂組成物を得た。以下、実施例と同様にして、段差平坦化率、溝パターンの埋込性、現像加工性、現像後の膜状態を評価した。その結果、平坦化率は90%で埋込性も良好であったが、実施例と同様の現像加工性の評価を行ったところ、露光部と未露光部の溶解時間の差がなくパターン形成がなされなかった。
【0030】
【発明の効果】請求項1及び2記載の製造法によれば、レジスト塗布プロセスの不要な、感光性樹脂組成物のプロセスを用いて、下層配線層の段差を層間絶縁膜によりほぼ完全に平坦化できるため、多層配線化による段差の発生が殆どない配線の信頼性が飛躍的に優れた多層配線構造を有する基板が得られる。請求項3記載の半導体装置は、下層配線層の段差が層間絶縁膜によりほぼ完全に平坦化され、多層配線化による段差の発生が殆どない配線の信頼性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】下層配線層を有する半導体装置の断面図である。
【図2】下層配線層を有する半導体装置上に感光性樹脂組成物を塗布した状態を示す断面図である。
【図3】感光性樹脂組成物をホトマスクを介して露光した状態を示す断面図である。
【図4】ポリイミド絶縁層の形成工程を終了した状態を示す断面図である。
【図5】ポリイミド絶縁層により平坦化された二層配線構造を有する半導体装置の断面図である。
【図6】本発明の実施例における平坦化率の評価方法を示す図である。
【図7】気相成長法によるSiO2膜を層間絶縁膜とした従来法による多層配線構造の一例の断面図である。
【符号の説明】
1 半導体基板
2 二酸化シリコン膜
3 ビアホール(窓)
4 下層配線層
5 層間絶縁膜
6 ホトマスク
7 上層配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 パターンの形成された配線層を有する基板上に、(a)有機溶媒可溶性ポリイミドと塩基性化合物とにより形成される錯体、(b)光酸発生剤及び(c)溶媒を含有してなるポジ型感光性樹脂組成物を用いて層間絶縁膜を形成し、その上に上層配線層を形成する工程を含むことを特徴とする多層配線構造を有する基板の製造法。
【請求項2】 請求項1に記載の工程を2回以上繰り返す多層配線構造を有する基板の製造法。
【請求項3】 (a)有機溶媒可溶性ポリイミドと塩基性化合物とにより形成される錯体、(b)光酸発生剤及び(c)溶媒を含有してなるポジ型感光性樹脂組成物を用いて形成された層間絶縁膜を有してなる半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平11−26579
【公開日】平成11年(1999)1月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−177504
【出願日】平成9年(1997)7月3日
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)