説明

多成分溶媒溶液の再平衡方法

【課題】多成分溶媒溶液の再平衡方法を提供する。
【解決手段】本発明は、光重合性層を有する感光性印刷要素を処理するために有用である溶媒溶液を再平衡させるための方法に関する。溶媒溶液は、洗い流し処理中に感光性印刷要素から剥離される未重合材料およびその他の材料で汚染された状態となり、汚染物質の分離は、使用済み溶媒溶液中の1つ以上の成分の一部も同様に除去する。この方法は、3つ以上の成分を有する溶媒溶液中の成分の割合を再平衡させる。この方法は、汚染物質から分離された再生物を2つ以上の特性について測定するステップと、測定された各々の特性について生成された方程式に基づいて、再生物に添加すべき成分の質量を計算するステップと、再生物に対してこの質量の1つまたは複数の成分を添加して再生物中の成分割合を目標の割合に調整するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性印刷要素を処理するために有用である溶媒溶液を再平衡させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷版は、段ボール箱から厚紙箱およびプラスチックフィルムの連続ウェブにおよぶ包装材料の印刷のために広く使用されている。フレキソ印刷版は、隆起した画像表面につけられたインキが基材に転写される凸版印刷において使用される。フレキソ印刷版は、(特許文献1)および(特許文献2)中に記載されているものなどの光重合性組成物から準備可能である。光重合性組成物は一般に、エラストマー結合剤、少なくとも1つのモノマーおよび光開始剤を含む。感光性要素は一般に、支持体とカバーシートまたは多層カバー要素との間に置かれた光重合性組成物の固体層を有する。感光性要素は通常、カバーシートおよび/またはマスクフィルムの剥離を容易にするための剥離層を含む。感光性要素は、化学線に対する露光の時点で架橋または硬化するその能力によって特徴づけされる。典型的には、要素はマスクを通して紫外(UV)線などの化学線に対し、像様に露光されて、架橋または硬化する光重合性層の露光済み部域と、架橋も硬化もしない光重合性層の未露光部域すなわち未重合材料とを形成する。未露光部域は溶媒に対し可溶であり続け、露光済み部域は溶媒に対して不溶性となることから、像様露光された要素は、未重合部域を除去できる溶媒中で洗浄つまり現像され、その一方で重合(硬化)された材料は無傷の状態に残る。溶媒溶液は、注入、浸漬、噴霧またはローラー塗布などの任意の都合のよい方法で感光性要素に塗布されてよい。ブラシ掛けは、溶媒の洗い流しプロセスを容易にすることができ、組成物の未重合または未架橋部分の除去を補助することができる。
【0003】
洗い流し溶液を用いた光重合性要素の現像による凸版印刷組版の準備は周知である。このようなプロセスにおいて典型的に使用される溶媒現像液は、塩化炭化水素類、例えばトリクロロエチレンまたはテトラクロロエチレン;芳香族炭化水素類、例えばベンゼンまたはトルエン;飽和環式および非環式炭化水素類、例えばヘキサンおよびシクロヘキサン;不飽和環式炭化水素類、例えばテルペノイド化合物および低級脂肪族ケトン類を含む。溶媒は、単独で、組合せて、または非溶媒すなわち未重合材料を溶解させない材料と混合させた形で使用されてよい。一部の場合において、洗い流しまたは現像溶液は、(未重合材料に対する)溶媒の混合物であり、非溶媒はアルコールであり、これが剥離層を形成する材料の除去を補助しかつ/または化学線に対する露光により硬化された感光性樹脂組成物の膨潤を抑制する。
【0004】
現像溶液の最近の傾向は、3つ以上の成分を有する組成である。このような多成分現像溶液は、現像溶液のコストを削減しかつ/または現像溶液に追加の特徴または機能性を提供しかつ/または感光性要素のための特徴を提供する目的で、追加の成分を含むことができる。例えば、希釈剤を使用して、現像溶液のコストを削減しかつ/または臭気を低減させることができる。現像溶液混合物を安定化しかつ/または除去した材料が印刷組版に再付着するのを最小限に抑えるには、界面活性剤を使用することができる。結果として得られる印刷組版のインキ剥離および/または鮮明な印刷を補助するためにフルオロポリマーおよび/またはシリコーン化合物を使用することができる。
【0005】
使用するにつれて、現像溶液は、現像または洗い流し中に感光性要素から剥離された未重合材料またはその他の材料で、汚染された状態となる。コストおよび環境に対する影響を削減するためには、後続する現像プロセスのために現像溶液を再循環させることが望ましい。多くの場合において、溶媒および任意の非溶媒の再生物(reclaimant)溶液から汚染物質すなわち未重合材料およびその他の材料を分離するために、汚染された現像溶液は蒸留される。一部の場合において、汚染された現像溶液は、汚染物質を再生物溶液から分離するための遠心分離および任意には濾過によって機械的に分離される。
【0006】
しかしながら、現像溶液が2つ以上の成分で構成されている場合には、再生物溶液中の成分の割合が、多くの場合、出発現像溶液つまり新鮮な現像溶液中の成分の割合と異なる、すなわち再生物溶液が不均衡状態にあるという点で、再生物溶液の使用について問題が発生する。成分の損失は、現像溶液を回収するために使用される特定のプロセスの結果もたらされる可能性がある。同様に、分離された汚染物質、すなわち未重合材料は、現像溶液由来の溶媒成分またはその他の成分の一部を保持する可能性がある。(新鮮な現像溶液中の成分の割合とは)異なる成分割合を有する再生物溶液は、なおも感光性要素から材料を除去することができるかもしれないが、感光性要素から材料を除去する上でのその有効性は、経時的にかつ再生物溶液の連続的再利用と共に低下すると考えられる。不均衡な現像溶液を用いた洗い流しの結果として、感光性要素からの未重合材料の除去は不完全なものとなり、こうして感光性要素内のレリーフ部域は完全に形成されなくなるか、または、感光性要素の剥離層などの1つ以上の他の層の除去が不完全となる可能性がある。不完全な除去を補償するために現像溶液中での時間を延長させる場合がある。しかし、現像時間の延長は一般に、感光性要素がブラシ掛けを受ける時間をも延長させ、これにより、結果として得られる印刷組版のレリーフ構造に機械的損傷が導かれる可能性がある。現像時間の延長は同様に、溶媒による感光性要素の膨潤も増大させ、ひいては乾燥時間が長くなる可能性もある。通常、現像系の性能は、現像溶液の成分割合が可能な作用領域内で変動せずむしろ比較的恒常に維持されている場合に最適である。
【0007】
現像溶液中の成分割合および感光性要素から材料を除去する上でのその有効性を維持するためには、典型的には、加工装置に再循環される再生物溶液に対して(現像溶液の)成分の1つ以上を有する1つの溶液を添加することによって再生物溶液を「回復させる(buckup)」ことが一般的に行われている。一部の場合には、出発溶媒溶液の全成分を有する新鮮な溶媒溶液が、清浄された溶媒溶液に添加されて、加工装置内の洗い流しを補充する。回復溶液は、現像溶液の溶媒成分のみを含むか、または現像溶液の平均的な使用を反映する割合での溶媒成分とその他の1つまたは複数の成分の混合物を含んでいてよい。しかし、現像溶液中の溶媒および他の成分に対する異なる親和性を各々有する異なる光重合性組成物を各々有する異なるサイズおよびタイプの感光性要素を加工するために、現像溶液を使用する可能性がある。その結果、各顧客は、加工対象の感光性要素のミックス、再生物を回収するために用いられるプロセスおよび現像剤溶液の組成に少なくとも基づいて、相異なる再生物溶液(および現像溶液と再生物のミックス)を有するかもしれない。こうして、平均的加工システムに基づく成分割合を有する回復溶液は、再生物溶液を有効な現像溶液になるまで十分に修正しない場合がある。
【0008】
一部の場合において、ユーザーは、回復溶液を添加すべきか否か、そしてもし添加すべきである場合には添加すべき回復溶液の量を決定するために、再生物溶液の比重または屈折率などの1つの特性を測定する。1つの特性を測定することにより、再生物溶液が、加工装置に再循環された時点で有効であるかもしれない一定の範囲の組成の作用領域内に入るか否かが決定される。2成分現像溶液の場合、2成分の比率が変わるにつれて変動する再生物溶液の1つの特性の測定とは、その溶液中の2つの成分の比率を暗示する。再生物を目標組成にするためにこの再生物に添加できる回復溶液の量は、再生物の組成および系の合計体積に基づいて参照テーブルから決定可能である。しかし、再生物溶液の特性を1つのみ測定しても、特に現像溶液(そして再生物溶液)が3つ以上の成分を含む場合、各成分の割合が示されるわけではない。この方法は典型的には、多成分溶媒溶液を適正に再平衡させて、全ての成分を所望の運用組成内にすることができない。
【0009】
3つ以上の成分で構成されている現像溶液が不均衡であるか否かを判定するための1つの方法は、遠隔地での複合分析試験用に溶液の試料を送ることである。しかしながら、これには時間も費用もかかり、印刷組版の生産を遅延させる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,323,637号明細書
【特許文献2】米国特許第4,427,759号明細書
【特許文献3】米国特許第4,806,452号明細書
【特許文献4】米国特許第4,847,182号明細書
【特許文献5】米国特許第5,061,606号明細書
【特許文献6】米国特許第5,116,720号明細書
【特許文献7】米国特許第5,128,234号明細書
【特許文献8】米国特許第5,176,986号明細書
【特許文献9】米国特許第5,240,815号明細書
【特許文献10】米国特許第5,242,782号明細書
【特許文献11】米国特許第5,252,432号明細書
【特許文献12】米国特許第5,312,719号明細書
【特許文献13】米国特許第5,354,645号明細書
【特許文献14】米国特許第5,516,623号明細書
【特許文献15】米国特許第5,521,054号明細書
【特許文献16】米国特許第6,248,502号明細書
【特許文献17】米国特許第6,582,886号明細書
【特許文献18】米国特許第6,682,877号明細書
【特許文献19】米国特許第6,897,008号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2003/0198900号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2004/0091824号号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2004/0142282号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2004/0152019号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2007/0175235号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2006/0040218号明細書
【特許文献26】欧州特許出願公開第0511585A1号明細書
【特許文献27】欧州特許第0542254号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Plastic Technology Handbook,Chandler et al.,Ed.,(1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上の問題を考慮して、印刷組版を準備する顧客に対し、現像溶液および/または再生物溶液中の成分の均衡状態に関して即時フィードバックを提供する容易な社内的方法を提供する必要性が生じている。この方法は同様に、感光性要素からの材料の有効な除去のために現像溶液および/または再生物溶液中の成分の割合を維持するのに必要な1つまたは複数の回復溶液または1つまたは複数の新鮮な成分溶液の1回または複数回の添加に対する指針をも提供しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、光重合性層を有する感光性印刷要素を処理するために使用される、未重合部分を伴った溶媒溶液を再平衡させる方法を提供する。この方法の一実施形態は、a)n個の成分の混合物である溶媒溶液を提供するステップであって、ここでnは3以上(n≧3)であり、成分各々が、成分の第1の質量分率の合計に基づき、第1の質量分率を有しているステップと;b)未重合部分を中に含む溶媒溶液を収集するステップと;c)ステップb)の溶媒溶液から未重合部分を分離して、成分の再生物を形成するステップであって、再生物の成分の少なくとも1つが、第1の質量分率とは異なる第2の質量分率を有しているステップと;d)再生物の体積を決定するステップと;e)n−1個の特性について再生物を測定するステップと;f)成分各々に関連してステップe)で測定された各々の特性について生成された方程式に基づいて、かつ再生物中の成分の第2の質量分率の総和が1になる合計に基づいて、再生物に添加すべき成分の少なくとも1つの質量を計算するステップと;g)前記体積の再生物に対してステップf)に由来する前記質量の、n個の成分の少なくとも1つを添加して、再生物中の成分各々の第2の質量分率を目標質量分率に調整するステップと、を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、少なくとも1つの光重合性層を有する感光性要素などの記録用材料を処理するために使用される溶媒溶液を再平衡させる方法である。感光性要素は、本明細書中では同様に感光性印刷要素、光重合性要素または光重合性印刷要素としても言及されている場合がある。光重合性層は、少なくともポリマー結合剤、光重合性モノマーおよび光開始剤そして任意には添加剤を含んでいる。光重合性層は、溶媒溶液での処理により除去される少なくとも1つの未重合部分、典型的には、複数の未重合部分を含む。1つまたは複数の未重合部分は、光重合性層の1つまたは複数の非架橋部分であり、大部分の実施形態において、1つまたは複数の未重合部分は、光重合性層の1つまたは複数の未露光部分である。
【0015】
溶媒溶液は、3つ以上の成分を含む組成を有する。すなわち溶媒溶液は多成分溶媒溶液である。溶媒溶液中の3つ以上の成分は各々、感光性要素を、印刷に適した表面を有する印刷組版へと変換する上で1つ以上の機能を提供する。一般に、ポリマー材料またはその他の材料など、溶媒溶液により感光性要素から除去される材料は、溶媒溶液の一成分とみなされない。溶媒溶液は感光性要素由来の1つまたは複数の未重合部分および他の材料で汚染された状態になっているため、本方法は、汚染した溶媒溶液の再利用または再循環のための回収を提供する。再平衡には、再生された溶液中の成分割合を、現像により感光性要素から材料を連続的に有効に除去することを保証する目標割合組成に調整するステップが包含される。汚染された溶媒溶液の回収方法は、汚染物質から再生物溶液を分離するステップ、および再生物溶液中の成分を再平衡させるステップを含むことができる。再生物の再平衡とは、再生物溶液の2つ以上の特性の測定および実験的溶媒溶液組成から生成された少なくとも3つ以上の方程式の使用に基づき、再生物溶液の成分を調整することである。これらの方程式は、溶媒溶液中の成分各々の異なる割合のさまざまな組成を有する実験的溶媒溶液および測定された特性の各々から導出された関係を表わす。再生物溶液の成分の調整とは、再生物溶液中の成分各々の割合を目標の組成にするような量で、1つの成分、そして通常2つ以上の成分を再生物溶液に追加することである。溶媒溶液の再平衡は、再生物溶液による感光性要素からの1つまたは複数の材料の連続的で有効な除去を実質的に保証する。この方法は、多成分溶媒溶液すなわち3つ以上の成分の混合物を有する溶媒溶液(および再生物溶液)の回収に特に有用であるが、これは、これらの溶液が典型的に、1つの特性を測定しかつ参照テーブルを利用することによって回復溶液を用いて求められる調整を決定する従来の方法では適正に再平衡され得ないからである。
【0016】
一実施形態において、溶媒溶液の再平衡は、感光性印刷要素からの1つまたは複数の材料の有効な除去を続行する目標組成まで組成を調整する修正を溶媒溶液に対して行なうことによって、3つ以上の成分割合がそれらの初期割合から変化している組成を有する溶媒溶液の再生であり得る。別の実施形態において、溶媒溶液の再平衡は、3つ以上の成分の割合がそれらの初期割合から変化している組成を有しかつ感光性要素由来の材料で汚染された溶媒の、溶媒から汚染物質を分離することならびに感光性印刷要素由来の1つまたは複数の材料の有効な除去を提供する目標の組成状態まで溶媒溶液を調整する修正を溶媒溶液に対して加えることによる再生であり得る。大部分の場合において、目標の組成状態は、汚染物質を全くまたは実質的に含まない。目標の組成は、初期溶媒溶液の成分の割合と同じかまたは実質的に同じであってよい、あるいは感光性印刷要素からの1つまたは複数の材料の有効な除去に適したものである所望の成分割合の範囲内にあってよい、3つ以上の成分の割合を有する。
【0017】
本方法は、複合分析試験方法による測定のために分析用の再生物の試料を研究所に送る必要性及び試験結果の受領の遅延を回避し、現像溶液および/または再生物溶液中の成分の均衡状態に対する即時フィードバックを提供する。この方法は、容易であり、再生物溶液の特性を測定するために単純な現場装置を使用する。この方法は同様に、感光性要素からの材料の連続的で有効な除去のために、現像溶液および/または再生物溶液中の成分の割合を維持するのに必要な1つまたは複数の回復溶液または1つまたは複数の新鮮な成分溶液の1回または複数回の添加も判定する。本溶媒溶液再平衡方法は、液体溶媒溶液で処理する印刷組版準備用システムの性能を維持する。この方法は、溶媒溶液が感光性要素からの材料の除去(および適切な印刷組版の提供)において有効である目標の成分割合領域内に溶媒溶液組成を長時間維持することができる。(不均衡な)溶媒溶液による効果のない除去を補償する目的で洗い流し時間の延長など洗い流しプロセス条件を改変する傾向は、回避される。こうして目標の領域内に維持されている溶媒溶液組成は、作業効率を維持し、細かい特徴やハイライトドットの削り取りなど、結果として得られる印刷組版のレリーフ構造の損傷の可能性を削減する。本溶媒溶液再平衡方法は、成分割合が逸脱しそのため感光性要素から1つまたは複数の材料を除去する上でもはや有効でなくなっている使用済みの溶媒溶液組成物を交換する必要性をユーザーが回避できることから、溶媒廃液の環境に対する影響を削減する。
【0018】
感光性要素から未重合材料および他の材料を除去するための溶媒溶液を用いた処理は、感光性要素の洗い流し(washout、washing out)、現像(developmentまたはdeveloping)として言及され得る。処理により、結果として得られる印刷組版内に印刷に適したレリーフ表面が形成される。溶媒溶液は同様に、現像剤溶媒、現像用溶媒または溶液または現像剤として言及される場合もある。溶媒溶液は、3つ以上の成分の液体混合物である。溶媒溶液は、要素を使用に適したものにするため感光性要素から特定の1つまたは複数の材料の一部または全てを溶解させるのに十分な少なくとも1つの成分を有する。大部分の実施形態において、溶媒溶液の提供は、加工装置または洗い流し装置などの洗い流し処理に適した装置内に溶媒溶液を存在させることによる。使用される加工装置のタイプおよび感光性要素に対する溶媒溶液の接触方法には、その溶媒溶液が単独でまたはブラシ掛けなどの機械的作用と共に、感光性要素から未重合材料および追加材料を除去して、結果として得られる印刷組版内にレリーフ表面を作り出すことを条件として、制限はない。溶媒溶液は、注入、浸漬、噴霧またはローラー塗布などの任意の適切な方法で、感光性要素に塗布されてよい。ブラシ掛けは、光重合性組成物の1つまたは複数の未重合部分の除去を補助することにより、溶媒洗い流しプロセスを容易にすることができる。加工装置の運転及び加工装置内での溶媒溶液の使用は、システムおよび/またはユーザーのニーズに応じてバッチモードまたは連続モードで実施可能である。加工装置内にタンク、清浄溶媒貯留槽および汚染溶媒貯留槽を含む加工装置システムは、感光性要素の洗い流しに適した溶媒溶液の合計容積を有する。貯留槽は加工装置の一部であってよく、あるいはドラム缶またはTOTEタンクなどの他の適切な溶媒貯蔵コンテナであってよい。加工装置は、必要に応じて清浄な溶媒溶液を取込み、汚染した溶媒溶液を排出する。再生プロセスには、清浄な貯留槽および汚染した貯留槽ならびに分離ユニット、例えば溶媒溶液から汚染物質を除去するための加熱蒸発容器または他の装置の使用が含まれる。
【0019】
溶媒溶液は、n個の成分で構成された混合物であり、ここでnは3つ以上であり、各成分は、溶媒溶液中のn個の成分の質量分率の合計に基づいた質量分率を有する。n個の成分の質量分率の合計は1(すなわち合計100重量%)である。溶媒溶液は、n個の成分の混合物であるが、これは、溶液中の各成分が、成分間のいかなる化学結合も無くその独自の化学的同一性を保持しているからである。溶媒溶液中の成分各々の質量分率は、加工システム内の溶液の寿命全体にわたり推移する。新鮮な状態または未使用の状態での溶媒溶液の3つ以上の成分の各々は、第1の質量分率を有し、ここで、成分の第1の質量分率の合計は1(すなわち合計100重量%)に等しい。大部分の実施形態において、第1の質量分率でn個の成分を有する溶媒溶液は、新鮮なまたは未使用の溶媒溶液を伴う加工装置内への初期溶媒溶液投入物である。他の実施形態において、第1の質量分率でn個の成分を有する溶媒溶液は、本方法によって再平衡された回収溶媒溶液であり、任意には加工装置中に存在する(新鮮なまたは僅かに使用されたものであってよい)溶媒溶液に対し添加され得る。
【0020】
大部分の実施形態において、多成分溶媒溶液中の成分の数nは3であり、第1の活性成分、第2の活性成分及び希釈剤を含む。さらに他の実施形態において、多成分溶媒溶液中の成分の数は3であり、2つの第1の活性成分と1つの第2の活性成分を含む。一部の実施形態において、溶媒溶液中の成分の数nは4であり、第1の活性成分、第2の活性成分、希釈剤および界面活性剤を含むことができる。成分数が4以上である他の実施形態において、溶媒溶液は、少なくとも1つの第1の活性成分、少なくとも1つの第2の活性成分、および矯臭、溶解度増強、安全性(すなわち帯電防止剤)などの補足的な機能的有用性を提供しかつ/または化学的相溶性を促進する(すなわち界面活性剤)2つ以上の他の成分で構成される。
【0021】
第1の活性成分は、感光性要素の光重合性層から、未重合部分を除去する。大部分の場合において、第1の活性成分は、溶媒溶液中に未重合部分を溶解させることにより未重合材料を十分に除去するマトリクスポリマー用の優れた溶媒である。しかしながら、除去は溶解に限定されず、除去は、要素からの未重合材料の弛緩(loosening)、浮揚(lifting)または分離、または溶媒溶液中の未重合材料の懸濁を含み得る。第1の活性成分および任意には第2の活性成分および/または追加の機能的有用成分の1つ以上は、感光性要素の重合されたまたは硬化された1つまたは複数の部分を、洗い流しプロセス中に膨潤させるかもしれない。溶媒溶液は、1つの第1の活性成分、または互いに相補的である2つ以上の第1の活性成分を含んでいてよい。
【0022】
第1の活性成分として適している材料は、炭化水素類であり、これには、塩化炭化水素類、例えばトリクロロエチレン、ペルクロロエチレンまたはトリクロロエチレン;芳香族炭化水素類、例えば置換または非置換であり得るベンゼンおよびトルエン;飽和環式炭化水素類および飽和非環式炭化水素類、例えば石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、およびシクロヘキサン;不飽和環式炭化水素類、例えばテルペノイド化合物;および低級脂肪族ケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、第1の活性成分は、RCOOR’という一般式を有するアルキルエステル類から選択され得、式中Rは任意の有機部分であり得、R’は好ましくは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基である。R’は同様に、直鎖または分岐アルキル基でもあり得る。アルキルエステルは類、メチルエステル類、エチルエステル類、プロピルエステル類、ブチルエステル類、ペンチルエステル類、ヘキシルエステル類、オクチルエステル類、ノニルエステル類、デシルエステル類、ウンデシルエステル類、ドデシルエステル類およびその任意の分岐化合物を含むが、これらに限定されない。使用に適したアルキルエステル類には、6〜18個の炭素原子を伴う脂肪酸のアルキルエステル類が含まれるが、これらに限定されない。他の実施形態において、第1の活性成分は、脂肪酸エステル類、例えばアルコール類の酢酸エステル類、アルコキシ置換アルコール類の酢酸エステル類、アルコール類のカルボン酸エステル類およびアルコキシ置換アルコール類のカルボン酸エステル類から選択され得る。別の実施形態において、第1の活性成分は、モノテルペン類;テルペンエステル類、例えばテルピニルアセテート、テルピニルホルメート、イソボルニルアセテート、イソボルニルホルメート;テルペンエーテル類、例えばテルペニルアルキルエーテル、フェンチルアルキルエーテル、リモニルアルキルエーテル(なおここで、アルキル基は1〜18個の炭素を有する)から選択され得る。さらに別の実施形態において、第1の活性成分は、メチルフェニルエーテルおよびエチルフェニルエーテルから選択され得る。
【0023】
第1の活性成分は、溶媒溶液の合計重量質量に基づいて約30〜70%(そして0.30〜0.70の質量分率)で溶媒溶液中に存在する。2つ以上の第1の活性成分を含む溶媒溶液は40〜80重量%であり得る。
【0024】
少なくとも感光性要素由来の1つ以上の追加の層から1つまたは複数の材料を除去するために、第2の活性成分が存在していてよい。大部分の実施形態において、第2の活性成分は、マトリクスポリマーのための非溶媒、すなわち未重合材料を除去するために溶解または作用しない成分とみなされている。しかしながら、一部の実施形態において、第2の活性成分は、同様に、未重合材料に対する中程度の溶媒として機能してよい。エチルエトキシ−プロピオネートは、感光性要素の未重合材料および他の材料の両方のための中程度の溶媒の一例である。ただし中程度の溶媒としては、溶媒溶液の非常に高い温度または過度に長い洗い流し時間などの攻撃的加工条件が、感光性要素からの材料の十分な洗い流しを確保するために必要となるかもしれない。大部分の場合において、1つ以上の追加層から1つまたは複数の材料を除去することで、追加の材料は溶媒溶液中に溶解させられるが、第2の活性成分での除去には、感光性要素からの追加の材料の弛緩、浮揚、または分離、あるいは溶媒溶液中への追加の材料の懸濁が含まれ得る。大部分の実施形態において、追加の材料は第1の活性成分中に溶解しないかまたは僅かにしか溶解しないことから、第2の活性成分は、感光性層以外の感光性要素の1つ以上の層から1つまたは複数の追加の材料を除去する。大部分の実施形態において、第2の活性成分は、アルコールである。アルコールは、第2の活性成分として、感光性要素の剥離層を形成する材料を除去する。他の実施形態において、アルコールは、剥離層でない層の1つまたは複数の材料を除去するが、この層は、デジタル画像化可能なマスキング層など、感光性要素のための別の機能を有する。アルコールは、それが典型的な洗い流し処理サイクル中に感光性要素から他の材料を除去する上で適切に有効であることを条件として、特に限定されない。
【0025】
第2の活性成分として使用するのに適したアルコール類としては、脂肪族アルコール類、脂環式アルコール類、芳香族アルコール類、複素環式アルコール類、多環式アルコール類、三価アルコール類および多価アルコール類が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、アルコールは、少なくとも4個の炭素原子を有するアルキルアルコールであり得る。他の実施形態において、アルコールは芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール類およびフェノール類であり得る。適切なアルコール類の一部の非限定的例としては、イソプロパノール;イソヘプタノール;イソオクタノール;イソノナノール;2−エチルヘキサノール2−エトキシエタノール;ブチルアルコール;アルファテルピネオール;ジプロピレングリコールメチルエーテル;2−ブトキシエタノール;2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール;シクロペンタノール;およびシクロヘキサノールが含まれる。アルコール類の混合物や組合せも同様に使用可能である。市販のアルコール類混合物としてはExxal(商標)アルコールがあり、これはExxonMobil社製の分岐第一級アルコールの混合物である。大部分の実施形態において、アルコールは、135℃以上の沸点、したがって室温で低い蒸気圧を有する。
【0026】
溶媒溶液は、その合計に基づいて0〜約40重量%のアルコールを第2の活性成分として含んでいてよい。大部分の実施形態において、アルコールは、溶媒溶液の重量で約1〜約40%(0.01〜0.40の質量分率)、そしてより高い確率で約10〜約40%(0.10〜0.40の質量分率)で溶媒溶液中に存在する。
【0027】
感光性要素からそれぞれの材料を除去する上でのその有効性のほかに、溶媒溶液のための第1の活性成分および第2の活性成分の選択は、蒸気圧、引火点、沸点、混合物中の他の成分との相溶性、オゾン破壊活性、毒性、コストおよび溶液中および/または貯蔵中の安定性を含めた(ただしこれらに限定されない)1つ以上の追加の要因に基づくものであってよい。
【0028】
希釈剤は、第1の活性成分および第2の活性成分と相溶性を有するように選択され、かつ溶媒溶液中の活性成分の濃度を低下させるために使用される。活性成分は指示された濃度範囲で使用可能であることから、希釈剤の存在は溶媒溶液のコストを削減し、溶媒溶液との接触の結果もたらされる感光性要素の膨潤を低減させるのを補助するかもしれない。しかしながら、溶媒溶液による最適な洗い流し性能を得るためには、第1の活性成分と第2の活性成分の比は、1つまたは複数の希釈剤が溶媒溶液中に存在するか否かに関わらず同じかまたは実質的に同じでなくてはならない。任意には、感光性要素の未重合材料および/または他の追加の材料の除去において一定の僅かな活性を有するかもしれない希釈剤すなわち「中程度の溶媒」を選択することが有益であると考えられるが、その存在だけでは、感光性要素から材料を除去するためには十分ではない。したがって、希釈剤として適している材料と第1の活性成分として適している材料について幾分かの重複が存在する場合がある。一部の実施形態において、希釈剤は無臭であるか、または1つまたは複数の活性成分の臭気よりも少ない臭気を有し得る。希釈剤として適している材料には、石油蒸留物、ナフサ類、パラフィン系溶媒、水素処理石油蒸留物、鉱油、ミネラルスピリット、リグロイン、デカン、オクタンおよびヘキサンが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、希釈剤は、約1%未満の芳香族含有量を有する水素化石油留分である。水素化石油留分は、Shellsol(登録商標)およびExxsol(登録商標)という商標名で市販されている。イソパラフィン系溶媒は、広い範囲の揮発性およびそれに対応する引火点で市販されている。
【0029】
溶媒溶液は、溶媒溶液の合計に基づいて0〜約50重量%の希釈剤を含んでいてよい。大部分の実施形態において、希釈剤は、溶媒溶液の合計重量に基づいて約1〜50重量%(0.01〜0.5質量分率)、最も高い確率では約15〜約40重量%(0.15〜0.40質量分率)で溶媒溶液中に存在する。
【0030】
少なくとも第1および第2の活性成分を有する適切な溶媒溶液の例は、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)、(特許文献14)、(特許文献15)、(特許文献16)、(特許文献17)、(特許文献18)、(特許文献19)中及び(特許文献20)、(特許文献21)、(特許文献22)、(特許文献23)、(特許文献24)、(特許文献25)および(特許文献26)および(特許文献27)中に開示されている。
【0031】
溶媒溶液は、現像剤溶媒または結果として得られる印刷組版に対して付加的な機能性を提供する追加の成分を含み得る。追加の成分としては、未重合材料の溶解を加速するかまたは印刷組版を破片が無い状態に維持することのできる表面活性化合物、矯臭剤、臭気改良化合物、加工装置内のスラッジ集積を削減できるスラッジ防止剤、結果として得られる印刷組版に対する静電気引力を削減できる帯電防止剤、および結果として得られる印刷組版によるインキの剥離および/または鮮明な印刷を補助することのできる離型剤が含まれ得る。表面活性化合物の非限定的な例としては、アルキル−スルホネート類およびそれらの塩、アルキルアンモニウム塩、オキシエチル化脂肪族アルコール類、脂肪族アルコールエーテルスルフェート類およびそれらの塩、および脂肪族アルコールリンエステル類およびそれらの塩が含まれる。リモネン、ピネン、シトロネロールなどの一部のテルピノイド化合物が、臭気低減剤として有用であるかもしれない。香料業界は、臭気低減特性を提供するかまたは溶媒溶液のための矯臭剤として有用であるかもしれないシクロヘキサノールおよび置換シクロヘキサノールをベースとする広範囲の材料を提供している。離型剤としては、フルオロポリマーおよび/またはシリコーン化合物を使用することができる。追加の成分の各々は、溶媒溶液の合計重量に基づいて0〜10重量%で存在していてよい。
【0032】
溶媒溶液は、2つ以上の第1の活性成分および/または2つ以上の第2の活性成分、および/または2つ以上の希釈剤を含んでいてよい。溶媒溶液が2つ以上の第1の活性成分、および少なくとも1つの第2の活性成分を含むが、希釈剤は含まないということも企図されている。各成分が、測定された特性について識別可能な程度に異なる値を有することを条件として、本方法は、少なくとも3つの成分の異なる組合せを有する溶媒溶液を再平衡させるために有用である。有機溶媒現像溶液中での洗い流しにより未重合材料が除去される感光性要素に関連して本方法について記述してきたが、本方法は、水性または半水性現像溶液中での洗い流しによって未重合材料が除去可能である感光性要素にも同様に適用可能であるかもしれない。水性または半水性現像溶液が3つ以上の成分を有し、かつ測定された特性について識別可能な程度に異なる値を有する限り、本方法は、水性または半水性現像溶液を再平衡させるために使用可能である。
【0033】
各々第1の質量分率を有する3つ以上の成分で構成された溶媒溶液は、処理の結果得られる印刷組版のレリーフ表面または構造に関与しない材料を感光性要素から洗い流すかまたは除去する。大部分の実施形態において、加工装置内に収納された溶媒溶液中で、2つ以上の感光性要素が処理される。溶解しているおよび未溶解である除去済み材料は、溶媒溶液中に蓄積し、汚染溶媒溶液と呼ばれる場合がある。少なくとも未重合材料を中に含む溶媒溶液を収集するステップには、汚染溶媒溶液を加工装置とは別個の容器すなわち汚染溶液貯留槽まで導くステップが含まれる。溶媒溶液が、感光性要素由来の未重合材料および/または他の材料を合計溶媒溶液に基づいて少なくとも約1重量%〜15重量%以上含む場合、その溶媒溶液は汚染されているものとみなされる。一部の実施形態において、汚染溶媒溶液は、約2重量%〜約10重量%の汚染物質を含む。他の実施形態において、汚染溶媒溶液は、約1重量%〜約5重量%の汚染物質を含む。
【0034】
ステップb)の溶媒溶液から未重合部分を分離するステップには、n個の成分の再生物を形成するステップが含まれており、ここで、再生物の成分の少なくとも1つは、第1の質量分率とは異なる第2の質量分率を有している。大部分の実施形態において、汚染溶媒溶液から未重合部分を分離するステップは、蒸留プロセスによるものであり、ここで再生物は蒸留物である。蒸留は、沸騰液混合物中の揮発度の差に基づく混合物の分離方法である。溶媒溶液の蒸留による分離は、当業者の通常の技量の範囲内に入る。蒸留は、溶媒溶液から未溶解材料および溶解材料の汚染物質を分離する。他の実施形態において、分離は遠心分離と、任意選択でそれに続く濾過によるものである。さらに他の実施形態において、分離は、汚染溶液に対する凝固剤の添加により実施可能であり、その結果として、溶解した材料が選択的に沈殿することになり、その後これを濾過により除去することができる。さらに他の実施形態においては、精密濾過によって分離を達成することができる。遠心分離ならびに通常の濾過による分離は、典型的に、未重合材料の粒子などの未溶解材料を汚染溶媒溶液から除去することにより汚染溶媒溶液を清浄するが、一般的に溶媒溶液中に溶解した材料は除去しない。遠心分離および/または濾過により分離された溶媒溶液を再平衡させるための本方法は、汚染溶媒溶液中の溶解材料の量が比較的少ない、すなわち汚染溶媒溶液の重量で5重量%未満、好ましくは3重量%未満、最も好ましくは1.5重量%未満であることを条件として、適切なものである。
【0035】
汚染溶媒溶液から汚染材料を分離した後、ある体積の再生物溶液が収集され測定される。再生物は本質的に清浄された溶媒溶液、すなわち感光性要素由来の未溶解および溶解材料の大部分が除去されている溶媒溶液である。大部分の実施形態において、再生物は、開始時のつまり初期溶媒溶液中に存在した全成分nを含んでいる。一部の実施形態において、再生物は、開始時のつまり初期溶媒溶液中に存在した全ての成分よりも少ない成分を含んでいる。異なる溶媒(すなわち第1および第2の活性成分ならびに希釈剤)は、光重合性材料に対し異なる親和性を有することから、溶媒溶液(すなわち再生物)の組成は、分離プロセスによって改変される。溶媒溶液の1つ以上の成分の全て(わずかな割合で存在する場合)または一部分が分離ステップの廃棄物中に捕捉される。汚染溶媒溶液は、洗い流しプロセスまたは再生プロセス全体を通して、蒸発、吸収、吸着などの他の手段により成分の1つまたは複数の部分を弛緩させてよい。両方の実施形態において、再生物中の少なくとも1つの成分の割合は、提供された溶媒溶液中の成分の割合と同じではない。したがって、大部分の実施形態において、再生物中の成分各々は、提供された溶媒溶液中の第1の質量分率とは異なる質量分率(すなわち第2の質量分率)を有する。
【0036】
3つ以上の成分を有する再生物を2つ以上の特性について測定することにより、再生物中の各成分の割合の変化度推定値が提供される。再生物は、n−1個の特性について測定される。一実施形態において、再生物は、n−1個の特性について測定され、ここでn−1個の全ての特性は同じ温度で測定される。したがって再生物(および溶媒溶液)の組成が3つの成分を有する場合、その再生物の2つの特性が同じ温度で決定される。同様にして、再生物(および溶媒溶液)の組成が4つの成分を有する場合、再生物の3つの特性が測定される。
【0037】
大部分の実施形態において、測定される再生物の特性は、組成中の成分割合が変化するにつれて変化する溶媒溶液の特徴的な物理的特性である。各成分の割合変化を判定するために測定され得る再生物の特性の例としては、比重、屈折率および誘電率が含まれる。一実施形態において、特性は同じ温度で測定される。別の実施形態において、各特性は異なる温度で測定される。
【0038】
比重とは、既定の温度における水などの一部の標準的材料の密度に対するその材料の密度の比である。溶媒溶液および再生物などの液体の比重を測定するためには、比重計が用いられる。
【0039】
溶媒中への材料の溶解は、溶媒の比重のみならず、その光学特性、例えば屈折率をも変化させる。材料の屈折率(RI)は、真空中での光の速度とその材料中での光の速度との比として定義される。再生物(および溶媒溶液)の屈折率は屈折計で測定される。一部の実施形態では、ASTM D542に定めるアッベ屈折計を使用することができる。ブリックス尺度は、20℃での溶液の屈折率から導出された良く知られた尺度であり、数多くの業界で一般的に使用されている。ブリックスの最も一般的な用途の1つは、溶液の濃度決定におけるものである。市販の屈折計は、検査中の溶液の屈折率とブリックスの両方を提供できる。一部の実施形態において、屈折計上のブリックス尺度は、小数点以下の必要桁数が比較的少ないこと、ひいては切り捨て時に誤差が記録される確率がさほど有意でないことを理由として、使い勝手が良い。屈折率およびブリックスは両方共温度に敏感であり、溶液温度を制御できない場合には、内蔵式の自動温度補償のある屈折計を使用しなければならない。最新の光学的ブリックスおよび屈折計にはアナログ(アッベタイプ)式とデジタル式の2つのタイプがあり、卓上式(実験室環境内での使用向け)または携帯式としても入手可能である。携帯式屈折計は、現場で最も使い易すく、Miscoから入手可能なもの(型式PA202)が本発明において特に有用である。
【0040】
誘電率は、所与の誘電体が充填されたコンデンサのキャパシタンスと、誘電体として真空しか有していない同じコンデンサのキャパシタンスとの比である。溶媒溶液および再生物などの液体の誘電率を測定するためには、容量計またはインピーダンスブリッジを使用することができる。容量計またはインピーダンスブリッジとして使用するのに適した現場用または携帯式装置が、型式BI−870誘電率としてBrookhaven Instruments Corp.から入手可能である。
【0041】
特性を測定するためには実験室用または卓上用計器を使用できるが、携帯式装置または現場用装置は、単純で、使用が容易でかつ印刷組版生産施設において結果が即時に得られることから、これらの装置を使用して特性を測定することが好ましい。
【0042】
n個の成分の各々に関連して測定された各々の特性について1つの方程式を生成するステップは、溶媒溶液組成中の成分の割合が公知の(または規定された)要領で変動させられかつ変動させられた各々の組成について所望の特性が測定される一連の実験を実施することで達成される。測定された各々の特性についての方程式の生成は、溶媒溶液のモデル化において考慮されてよい。大部分の実施形態において、溶媒溶液のメーカーは、方程式を生成すると考えられる。しかしながら、溶媒溶液中の成分が公知であるかまたは決定可能であると考えられることを条件として、他の者が方程式を生成し得ることも可能である。方程式は、各成分の増分的濃度における反復的試行を含めた(ただしこれらに限定されない)任意の適切な手順によって、および統計学的に設計された手順によって生成され得る。方程式は、現場で遭遇することが予期される溶媒溶液の組成の代表的範囲に基づいて生成されるべきである。これには、溶媒溶液を使用するさまざまな加工装置システムのうちの1つ以上、溶媒溶液から汚染物質を分離するための方法、溶媒溶液中で加工される感光性要素の体積および/またはタイプ、再生または調整の間に加工される材料(すなわち感光性要素)の量ならびに調整間の再生サイクル数などを考慮に入れることが含まれていてよい。代表的組成範囲は、再生プロセスを1回以上反復させた結果としてもたらされることが予期される1つまたは複数の所望の組成を網羅する。n個の成分の各々が代表的範囲内で変動させられる異なる組成を各々有する複数の溶媒溶液すなわち実験的組成が調製される。実験的組成の1つ以上が、感光性要素から1つまたは複数の材料を除去する上で特に有効ではない成分の組合せを代表していることは可能であり、許容可能である。大部分の実施形態において、実験計画法(DOE)が、必要な方程式を生成するための溶媒溶液組成についての実験シリーズの枠組みを提供している。3つの成分を有する溶媒溶液の一例として、1つ以上の低、中および高質量分率値での予期された機能性の範囲内で各成分を変動させる一連の10個のDOE試験的溶媒溶液が調製される。
【0043】
10個のDOE試験的溶媒溶液の各々の混合物組成は、比重および屈折計などの所望の特性について測定され、データは線形回帰分析への適合のために記録される。これらの特定の特性は、温度に敏感であることから、10個のDOE試験的溶媒溶液の1シリーズについて、溶媒溶液の温度は一定に保たれる。10個のDOE試験的溶媒溶液について同じ特性を測定することにより、追加のシリーズを反復することができるが、溶媒溶液は、再生物の使用中の可能な温度を代表する1つの範囲にわたり異なる温度で測定される。作製された試験的溶媒溶液組成の数および実験設計は、溶媒溶液中の成分の数が変化するにつれて適切に変化すると考えられる。4つ以上の成分を有する溶媒溶液についての試験的組成の数及び実験設計を決定することは、当業者の技量の範囲内に十分入るものである。
【0044】
データ、すなわち各々の試験的組成についての測定された各々の特性は、2つの成分の質量分率そして任意には独立変数としての温度を用いて、線形回帰を使用して適合される。溶媒溶液中に4つ以上の成分が存在する場合、n成分溶液についての回帰には、n−1個の質量分率と、任意選択的に、独立変数として温度とが使用されると考えられる。生成された方程式は、測定された特性に対する組成および任意選択的に温度の影響を説明する。一実施形態においては、3つの成分のうちの2つが線形的に独立している(第3の成分は最初の2つの成分により定義される)ことから、各々の回帰は、第1の活性成分、第2の活性成分および温度に対して測定された特性を適合させる。ただし、方程式中に包含させるために3つの成分のうちの任意の2つを選択することが可能である。
【0045】
3つの成分を有し、n−1個の特性が測定される溶媒溶液についての実施形態において、回帰分析により生成される方程式の一例示的形態は以下の通りである:
1=A0+A11+A22+A31
2=B0+B11+B22+B32
ここで、溶媒溶液の第3の成分の質量分率であるx3は、100%に等しい成分の質量分率の和を用いる方程式(1)および(2)から削除されており、式中、
1は、比重などの第1の測定された特性を表し、
2は、屈折率などの第2の測定された特性を表し、
1は、第1の活性成分の質量分率であり、
2は、第2の活性成分の質量分率であり、
1は、第1の特性を測定する時の再生物の温度であり、
2は、第2の特性を測定する時の再生物の温度であり、
0、A1、A2、A3は、第1の測定された特性のデータの線形回帰から導出された定数であり、
0、B1、B2、B3は、第2の測定された特性のデータの線形回帰から導出された定数である。
【0046】
回帰方程式の適合度を査定し、調査対象の範囲全体にわたる観察されたデータを代表するために追加の項が必要とされるか否かを確認することは、当業者の能力範囲内に十分入るものである。このような高次項(例えばx12またはx12など)の存在は、数学をより複雑なものにするが、再生された溶液の組成を推定するプロセスを根本的に改変することはない。
【0047】
溶媒溶液および再生物が3つの成分を含み、第1の活性成分が酢酸アルキルであり、第2の活性成分がベンジルアルコールであり、第3の活性成分が6〜13個の炭素原子を有する炭化水素の水素処理石油留分である一実施形態において、比重と屈折率という測定された特性を用いてDOEから生成された方程式は、以下の通りである:
比重=0.762+0.127x1+0.284x2−0.000991 温度(℃)
屈折率=1.43−0.00434x1+0.0998x2−0.000382 温度(℃)
ここで、使用された組成範囲は、第1の活性成分について45%〜70%、第2の活性成分について15%〜40%、そして希釈剤について15%〜40%まで変動した。各シリーズについて、各特性の測定は、一定温度であったが、20℃から35℃まで5度の増分で異なる温度で特性を測定する複数のシリーズが実施された。
【0048】
DOE試験由来の測定された特性と、再生された溶液の測定された特性とから生成された方程式を用いて、再生物の組成中の成分の比率(すなわち質量分率)を推定することができる。数学的には、実験室データの回帰分析(またはDOE試験)からA0、A1、A2、A3、B0、B1、B2およびB3がわかっているため、再生された溶媒混合物についてY1、Y2、T1およびT2を測定することによって、x1およびx2について方程式(1)および(2)を解くことができる。大部分の実施形態において、溶媒溶液中の成分に関連して測定された各々の特性について1つの方程式を生成するステップは、溶媒溶液のメーカーにより達成される。方程式は、印刷組版生産施設において顧客に対してまたは顧客のために汚染した溶媒溶液を回収する当事者に対して、特定の再生物の測定された特性に基づき出力を計算するための方程式を有するスプレッドシートの形で提供され得る。再生物の特性Y1、Y2および1つまたは複数の温度T1およびT2の現場内測定値をスプレッドシートに入力すると、スプレッドシートは方程式から、再生物中の成分の各々の質量分率を計算する。データ(すなわちr値)に対する方程式の適合に応じて、各成分の計算された質量分率は、再生物中の成分の実際の質量分率の適正な推定値である。さらに、優れた予測能力を有するためには、回帰方程式は、組成の変化に対して異なる応答を示す必要がある。組成が変化するのと同じように両方の特性が変化する場合、回帰方程式は各々、実験データにうまく適合しているかもしれないが、特定の測定された特性セットを発生させる組成の予測の質は低い。数学的には、これはデータ解析の当業者にとってなじみのある直交性の概念である。選択された特性が、組成に対するそれらの依存性に関して十分な差異を示すものでない場合には、他の特性を選択することが必要となるかもしれない。
【0049】
再生物中の成分の各々の質量分率が推定されていることから、再生物を目標の組成に調整してそれを加工装置システムに戻すことができ、この再生物が洗い流しにより感光性要素から未重合材料および他の材料を有効に除去する(し続ける)ことを期待することができる。組成が目標の組成にとって許容可能な範囲内にある場合には、後続する調整手順は不要とみなしてよいが、その後の再生ステップにより、この組成が、調整を必要とするかもしれない範囲内となる確率は高い。
【0050】
再生物に対し添加すべき成分の少なくとも1つの質量を計算することで、再生物中の1つまたは複数の成分の割合を目標の組成中の目標の割合までもっていくのに必要な調整が決定される。計算は、スプレッドシートに入力された方程式により実施でき、再生物に添加すべき各成分の可能な添加の出力を提供する。再生物溶液(M)の合計質量は、再生物溶液の合計体積およびその密度から計算される。再生物溶液の比重はすでに測定されているため、測定された温度における水の密度を乗じるだけで、再生物溶液の密度が得られる。再生物溶液中の各成分の質量(m1、m2、・・・)は、各成分の推定される質量分率(x1、x2・・・)に再生物溶液の合計質量を乗じることにより計算可能である。
【0051】
i=M*xi
【0052】
再生物の濃縮は非現実的であることから、1つ以上の成分の添加は、再生物を目標組成にするための希釈である。各成分について、その成分の質量(mi)をその成分についての目標組成の質量分率(yi)で除することにより、その成分の目標分率を有するように再生物溶液を調整する最小質量(Wi)が得られる。
【0053】
i=mi/yi
【0054】
最小質量Wiは各成分について決定され、再生物を調整するための最小質量Wiの最大値は、調整された再生物質量Wとして選択される。再生物の各成分について、目標組成に達するために添加すべき成分の合計質量(zi)は、調整された再生物溶液(すなわち目標組成溶液)中に必要とされる量(質量による)と再生物溶液中に存在する量(質量による)との差である。したがって、再生物の各成分について、目標組成に達するために再生物に添加する必要のある成分の合計質量(zi)は、以下の方程式中に示されている通り、選択された調整済みの再生物質量(W)に目標組成の成分の質量分率(yi)を乗じたものから、再生物質量(M)に再生物溶液中の成分の質量分率(xi)を乗じたものを減算することにより計算される。
【0055】
i=(W)(yi)−(M)(xi
【0056】
大部分の実施形態において、材料を混合した場合でも質量は保存されることから、計算は質量分率に基づいて行なわれる。材料の混合時点で体積は常に保存されるわけではないにせよ、混合に由来する何らかの関連体積変化が理解されていることを条件として、質量分率の代わりに体積分率に基づいて計算を行なうことができるということも企図されている。体積変化に付随する誤差は比較的小さいと予期できるが、質量分率を使用することで、潜在的な混乱は回避される。
【0057】
便宜上、純粋成分の密度を用いて所要の添加を質量から体積へと変換することができる。大部分の実施形態において、再生物に対し1つまたは複数の成分を添加する目的、および目標組成まで再生物を再平衡する目的のために、溶媒溶液の各成分は別個の溶液として提供される。一部の実施形態において、第1の活性成分、第2の活性成分および希釈剤は各々、別個の溶液として提供され、再生物溶液に成分を添加するために、1つ以上の追加の成分の組合せまたは混合物である溶液が提供される。さらに他の実施形態において、第1の活性成分および第2の活性成分は、各々別個の溶液として提供され、再生物溶液に成分を添加するために、希釈剤と1つ以上の追加の成分の組合せまたは混合物である溶液が提供される。再生物を目標組成まで調整するために、再生物に対し各成分溶液が質量zi(または体積)だけ加えられる。
【0058】
成分の少なくとも1つの質量を再生物の体積に加えることで、再生物中の成分各々の第2の質量分率は、成分各々を質量分率yiで有する目標組成まで調整される。目標組成は、以上で記述された通りの良好な所望の洗い流し性能を提供する溶媒溶液の一組成範囲を表わす。一部の実施形態においては、再生物の体積に少なくとも1つの成分の質量を加えることで、再生物の第2の質量分率は、溶媒溶液の第1の質量分率に等しい目標組成に調整される。他の実施形態においては、再生物の体積に少なくとも1つの成分の質量を加えることで、溶媒溶液の第1の質量分率と異なる成分の質量分率を有する目標組成まで再生物の第2の質量分率が調整される。感光性要素から材料を連続的に有効に除去することを保証するために、溶媒溶液の初期割合まで再生物を調整する必要はないかもしれない。
【0059】
感光性要素
感光性要素または前駆体は、少なくとも1層の光重合性組成物層を含む。「感光性」という用語は、少なくとも1つの感光性層が、化学線に対する応答時点で1つまたは複数の反応、特に光化学反応を開始できるあらゆる系を包含する。一部の実施形態において、感光性要素は、光重合性層のための支持体を含む。一部の実施形態において、光重合性層は、結合剤、少なくとも1つのモノマー、および光開始剤を含むエラストマー層である。一部の実施形態において、感光性要素は、支持体の反対側で光重合性層に隣接する化学線不透明材料としても機能できる赤外線感応性材料の層を含む。
【0060】
別段の指示のないかぎり、「感光性要素」という用語は、化学線に対する露光を受け、処理されて印刷に適した表面を形成することのできる印刷用前駆体を包含する。別段の指示のないかぎり、「感光性要素」および「印刷組版」は、平担なシート、プレート、プレート・オン・スリーブ(plate−on−sleeve)およびプレート・オン・キャリア(plate−on−carrier)を含めた(ただしこれに限定されない)、印刷に適した状態になるかまたは印刷に適したものであるあらゆる形状の要素または構造を含む。感光性要素の結果として得られる印刷組版は、凸版印刷、例えばフレキソ印刷および活版印刷を最終用途とする印刷利用分野を有することが企図されている。凸版印刷は、印刷組版が画像部域から印刷し、印刷組版の画像部域が隆起しており非画像部域は押し下げられているまたは陥凹している印刷方法である。
【0061】
感光性要素は、光重合性組成物の少なくとも一層を含む。本明細書中で使用される「光重合性」という用語は、光重合性、光架橋性またはその両方である系を包含するように意図されている。光重合性層は、結合剤、少なくとも1つのモノマー、および光開始剤を含む組成物で形成された固体エラストマー層である。光開始剤は、紫外線および/または可視光線を含む化学線に対する感応性を有する。光重合性組成物の固体層は1つ以上の溶液で処理されて、フレキソ印刷に適したレリーフを形成する。本明細書中で使用されている「固体」という用語は、明確な体積と形状を有し、かつその体積または形状を改変する傾向をもつ力に抵抗する層の物理的状態を意味する。光重合性組成物の層は、約5℃〜約30℃の間の温度である室温において固体である。感光性要素には、感光性要素が化学線に露光されていない実施形態、および感光性要素が化学線に露光されている実施形態が含まれる。したがって、感光性要素には、光重合性組成物の層が1つまたは複数の未重合部分;または1つまたは複数の重合部分(すなわち光硬化または硬化されている);または1つまたは複数の重合部分および1つまたは複数の未重合部分の両方を含んでいる実施形態が含まれる可能性がある。
【0062】
結合剤は限定されず、単一のポリマーかまたはポリマーの混合物であり得る。一部の実施形態においては、結合剤はエラストマー結合剤である。他の実施形態においては、結合剤は、化学線に露光された時点でエラストマーとなる。結合剤は、共役ジオレフィン炭化水素の天然または合成ポリマーを含む。一部の実施形態において、結合剤は、A−B−Aタイプのブロックコポリマーのエラストマーブロックコポリマーであり、ここでAは非エラストマーブロックを表わし、Bはエラストマーブロックを表わす。非エラストマーブロックAはビニルポリマー、例えばポリスチレンであり得る。エラストマーブロックBの例としては、ポリブタジエンおよびポリイソプレンが含まれる。結合剤は、有機溶媒洗い流し溶液中で少なくとも可溶性、膨潤性または分散性を有する。
【0063】
凸版印刷に所望される特性が得られるかぎり、エラストマー層には単一エラストマー材料または材料の組合せのいずれでも使用可能である。エラストマー材料の例は(非特許文献1)に記載されている。多くの場合において、エラストマー層を調合するために熱可塑性エラストマー材料を使用することが所望されるかもしれない。熱可塑性エラストマー層が光化学的に強化されている場合、層はエラストマーにとどまるが、このような強化の後はもはや熱可塑性を有していない。これには、ブタジエンとスチレンのコポリマー、イソプレンとスチレンのコポリマー、スチレン−ジエン−スチレントリブロックコポリマーなどのエラストマー材料が含まれるが、これに限定されない。
【0064】
光重合性組成物は、透明で曇りのない感光性層が生産されるかぎりにおいて、結合剤と相容性のある付加重合可能な少なくとも1つの化合物を含む。付加重合可能な少なくとも1つの化合物も同様にモノマーと呼んでよい。光重合性組成物中で使用可能なモノマーは当該技術分野において周知であり、少なくとも1つの末端エチレン基を伴う付加重合エチレン不飽和化合物を含むが、これに限定されない。組成物は単一のモノマーまたはモノマーの組合せを含むことができる。モノマーは、光重合性組成物に適切なエラストマー特性および他の特性を提供するように当業者により適切に選択され得る。
【0065】
光開始剤は、化学線に対し感応性があり、過度の停止反応無く1つまたは複数のモノマーの重合を開始させる遊離ラジカルを生成する任意の単一の化合物または化合物の組合せであり得る。公知の部類の光開始剤、特に遊離ラジカル開始剤のいずれを使用してもよい。あるいは、光開始剤は化合物の混合物であってもよく、この場合、化合物の1つは、放射線により活性化される増感剤により誘発された場合に遊離ラジカルを提供する。好ましくは、主要な露光(ならびに後露光およびバックフラッシュ(backflash))のための光開始剤は、310〜400nmの間、好ましくは345〜365nmの可視光線または紫外線に対する感応性を有する。
【0066】
光重合性組成物は、所望の最終的特性に応じて他の添加剤を含むことができる。光重合性組成物に対する追加の添加剤としては、増感剤、可塑化剤、レオロジー改質剤、熱重合阻害剤、着色剤、加工助剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、染料および充填剤が含まれる。
【0067】
光重合性層の厚みは、最終用途である印刷利用分野に応じて、広い範囲にわたり変動し得る。一部の実施形態では、感光性層は約0.005インチから約0.250インチ以上(0.013〜0.64cm以上)の厚みを有することができる。光重合性層の典型的厚みは、約0.045インチ〜約0.250インチ(約0.025cm〜約0.64cm)である。
【0068】
感光性要素は典型的に、光重合性組成物の層に隣接して支持体を含む。支持体は、印刷組版を準備するために使用される感光性要素について従来使用されているあらゆる材料または材料の組合せで構成され得る。一部の実施形態において、支持体は0.002〜0.050インチ(0.0051〜0.127cm)の厚みを有する。
【0069】
当業者にとって周知であるように、感光性要素は、光重合性層に隣接して、すなわち支持体と反対側で光重合性層の側に、1つ以上の追加の層を含んでいてよい。所望の用途に応じて、追加層は化学線に対し不透明または透明であってよく、かつ、感光性要素のための1つ以上の機能を有していてよい。追加層としては、剥離層、エラストマーキャッピング層(elastmeric capping layer)、障壁層、粘着力改質層、感光性要素の表面特性を改変する層、およびそれらの組合せが含まれるが、これに限定されない。1つ以上の追加層は、処理中に全面的にまたは部分的に除去できるものであり得る。追加層の1つ以上は、感光性組成物層を被覆してよく、または部分的にのみこれを被覆してもよい。所望の最終用途に応じて光重合性層上の追加層を選択し準備することは、当業者の通常の技能範囲内に十分入るものである。本発明の感光性印刷要素はさらに、要素の最上層の上面に一時的なカバーシートを含んでいてよい。
【0070】
処理前に、質量分率は化学線に露光される。感光性要素から印刷組版を準備するプロセスは通常(ただし常にではない)後露光またはバックフラッシュステップを含む。これは、支持体を通した化学線に対するブランケット露光(blanket exposure)である。それは、光重合性層の支持体側で重合された材料の層または床を創出するため、および光重合性層を増感させるために使用される。バックフラッシュ露光は、他の画像形成ステップの前、後または最中に行なわれ得る。全体的(像様の)化学線露光ステップについて説明された従来の放射線源のいずれでも、バックフラッシュ露光ステップに使用可能である。露光時間は一般に数秒から最高数分までの範囲内にある。
【0071】
像様露光された場合、光重合性層の放射線に露光された部域は不溶性状態に転換され、層の未露光部域内では有意な重合または架橋は一切発生しない。任意の従来の化学線源をこの露光のために使用することができる。放射線源は一般に310〜400nmの長波紫外線を発出する。露光時間は、放射線の強度およびスペクトルエルネルギー分布、感光性要素からのその距離、ならびに光重合性材料の性質および量に応じて数秒から数分まで変動してよい。
【0072】
像様露光は、別個のフィルム、すなわち、画像担持トランスパレンシイ(image−bearing transparency)またはフォトツールであり得るかまたはコンピューター・トゥ・プレート(computer−to−plate)デジタル画像形成により形成されるインサイチュマスクとして感光性要素と一体化され得る画像担体フォトマスクを通して感光性要素を露光することによって実施可能である。
【0073】
マスクを通した化学線に対する像様露光、および別個のフィルムである場合のフォトマスクの除去後、感光性印刷要素は、光重合性層内の未重合部域を除去してレリーフ画像を形成するために溶媒溶液で処理される。処理ステップにより、少なくとも、化学線に露光されなかった部域内の光重合性層、すなわち光重合性層の未露光部域または未硬化部域が除去される。エラストマーキャッピング層を除いて、典型的には、光重合性層上に存在するかもしれない追加層は、光重合性層の重合された部域から除去されるかまたは実質的に除去される。マスクのデジタル形成のための別個のIR感応性層を含む感光性要素については、光重合性層中にレリーフ画像を形成する処理ステップは、(化学線に露光された)マスク画像も除去してよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性層を有する感光性印刷要素を処理するために使用される、未重合部分を伴った溶媒溶液を再平衡させる方法において、
a) n個の成分の混合物である溶媒溶液を提供するステップであって、nは3以上であり、前記成分の各々が、前記成分の第1の質量分率の合計に基づき、第1の質量分率を有しているステップと;
b) 前記未重合部分を中に含む前記溶媒溶液を収集するステップと;
c) ステップb)の前記溶媒溶液から前記未重合部分を分離して、前記成分の再生物を形成するステップであって、前記再生物の前記成分の少なくとも1つが、前記第1の質量分率とは異なる第2の質量分率を有しているステップと;
d) 前記再生物の体積を決定するステップと;
e) n−1個の特性について前記再生物を測定するステップと;
f) 前記成分の各々に関してステップe)で測定された各々の特性について生成された方程式に基づいて、かつ前記再生物中の前記成分の前記第2の質量分率の総和が1になる合計に基づいて、前記再生物に添加すべき前記成分の少なくとも1つの質量を計算するステップと;
g) 前記体積の再生物に対してステップf)からの前記質量の、前記n個の成分の少なくとも1つを添加して、前記再生物中の前記成分各々の前記第2の質量分率を目標質量分率に調整するステップと;
を含む方法。
【請求項2】
前記計算ステップがさらに、前記成分の各々に関してステップe)で測定された各々の特性についての方程式を生成するステップを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップf)の結果として得られた前記再生物中の前記成分各々の前記目標質量分率が、前記溶媒溶液の前記成分各々の前記第1の質量分率に等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップf)の結果として得られた前記再生物中の前記成分各々の前記目標質量分率が、前記溶媒溶液の前記成分各々の前記第1の質量分率とは異なる第3の質量分率である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップc)が、ステップb)の前記溶媒溶液から前記未重合部分を分離するための蒸留ステップを含み、前記再生物が前記n個の成分の蒸留物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップc)が、遠心分離ステップ、濾過ステップ、または遠心分離ステップと濾過ステップとの組合せから選択されて、ステップb)の前記溶媒溶液から前記未重合部分を分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記測定ステップe)の前記特性が、比重、屈折率、または誘電率から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
n−1個の特性についての前記再生物の前記測定ステップが、前記再生物の温度を決定するステップをさらに含み、測定された各々の特性について生成された前記方程式が前記n個の成分各々と前記温度に関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記測定ステップe)が、前記再生物の前記特性を測定するための携帯式装置を使用するステップをさらに含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒溶液が、前記要素から前記未重合部分を除去するための炭化水素、アルコール及び希釈剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒溶液が、酢酸アルキル、135℃以上の沸点を有するアルコールおよび希釈剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記炭化水素が、塩化炭化水素類、芳香族炭化水素類、飽和環式炭化水素類、飽和非環式炭化水素類、不飽和環式炭化水素類および低級脂肪族ケトン類から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記アルコールが、脂肪族アルコール類、脂環式アルコール類、芳香族アルコール類、複素環式アルコール類、多環式アルコール類、三価アルコール類および多価アルコール類から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記希釈剤が、石油蒸留物、ナフサ類、パラフィン系溶媒、水素処理石油蒸留物、鉱油、ミネラルスピリット、リグロイン、デカン、オクタンおよびヘキサンから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
ステップg)の結果として得られた前記再生物を前記溶媒溶液に戻すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記提供ステップa)が、前記感光性印刷要素を前記溶媒溶液中で処理して前記層から前記未重合部分を除去するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記生成ステップがさらに、
前記n個の成分を有する実験的溶媒溶液の組成を作り出すステップであって、前記実験的組成が、各々のn個の成分についての前記第1の質量分率を包含する可能な質量分率の範囲を代表しているステップと;
前記実験的溶媒溶液の前記組成各々のn−1個の特性を測定してデータを提供するステップと;
前記データについて線形回帰を行なって、前記n個の成分についての前記質量分率に関して測定された各々の特性についての前記方程式を生成するステップと;
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
1つ以上の温度各々において前記実験的溶媒溶液の前記組成各々の前記n−1個の特性を測定するステップをさらに含み、測定された各々の特性についての前記方程式が、前記n個の成分の前記質量分率および温度に関連している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
光重合性層を有する感光性印刷要素を処理するために使用される、未重合部分を伴った溶媒溶液を再平衡させる方法において、
a) n個の成分の混合物を含む溶媒溶液から再生物を形成するステップであって、nは3以上であり、前記溶媒溶液の前記成分各々が、前記成分の第1の質量分率の合計に基づき、第1の質量分率を有しており、かつ前記再生物の前記成分の少なくとも1つが、前記第1の質量分率とは異なる第2の質量分率を有しているステップと;
b) 前記再生物の体積を決定するステップと;
c) n−1個の特性について前記再生物を測定するステップと;
d) 前記成分各々に関してステップc)で測定された各々の特性について生成された方程式に基づいて、かつ前記再生物中の前記成分の前記第2の質量分率の総和が1になる合計に基づいて、前記再生物に添加すべき前記成分の少なくとも1つの質量を計算するステップと;
e) 前記体積の再生物に対してステップd)からの前記質量の、前記n個の成分の少なくとも1つを添加して、前記再生物中の前記成分各々の前記第2の質量分率を目標質量分率に調整するステップと;
を含む方法。

【公開番号】特開2012−88711(P2012−88711A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229863(P2011−229863)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】