説明

多拠点描画画像共有装置、多拠点描画画像共有システム、方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】遠隔の拠点間で描かれる複数の画像を多拠点で連携させて表示すること。
【解決手段】遠隔拠点間で描かれる複数の画像を多拠点で連携させて表示する多拠点描画画像共有システム100は、第1の拠点に設置され、第1の拠点で描かれた第1画像に他拠点で描かれた画像を合成して生成された表示画像をサイズを共有させて重畳表示することにより、重畳画像を生成する可視化装置112と、重畳画像を撮影する撮影装置114と、共有領域の画像から、設定された条件を満足する共有領域の画像を抽出し、現在表示している表示画像との画像差を計算して自拠点画像を生成する情報処理装置116と、他拠点のPC126,146から送付された自拠点画像をそれぞれ受領して送付先とするべき拠点の自拠点画像を含まない表示画像を生成し、自拠点画像の冗長性を排除しながらPC116に送付するサーバ装置130とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多拠点で描画対象物であるホワイトボード等に描かれた描画画像を共有する多拠点描画画像共有装置、多拠点描画画像共有システム、方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、企業活動のグローバル化や多拠点での連携業務の増加などの理由により、電話会議や、テレビ電話による会議などの利用が普及しつつある。電話会議では、主として音声のみでの会議となるので、記録性や理解の点で充分ではない場合がある。また、情報のリアルタイム性および完全性という点でテレビ会議も普及しているが、そのために利用するハードウェアが専用的なものとなり、コストも高くなりがちなこと、および多数の拠点の画像をどのように各拠点のディスプレイ画面上に配置するかなどの問題も発生する。また、多拠点を同時に連携するような場合、テレビ会議システムを構築するためのコスト負担の問題も発生する。
【0003】
特開2005−203886号公報(特許文献1)には、離れた会議室で会議が行われた場合、それぞれの会議室のホワイトボードに書き込まれた会議内容を相手のホワイトボードに表示させる目的で、遠隔地のそれぞれに設置され、照射画像を投影する2つのプロジェクタと、2つのプロジェクタに、投影すべき元画像を送信するサーバ装置とを備え、2つのプロジェクタのそれぞれが、照射画像を投影したスクリーンに書き込まれた書込画像を撮像する撮像手段と、撮像手段によって撮像された書込画像をサーバ装置に送信する送信手段とを有し、サーバ装置は、2つのプロジェクタの一方から受信した書込画像を元画像に合成する合成手段と、合成手段により合成された画像を2つのプロジェクタの他方へ送信する転送手段とを有する構成が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1において、複数の遠隔地、つまり多拠点で用いた場合、受信する拠点数に対応させた数の画像を送る必要があるため、各拠点での処理負荷が増大するという問題が発生する。またこの場合、多拠点で画像を共有するために、多拠点に対応した特別な装置が各拠点で必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、多拠点で描画対象物であるホワイトボードに描かれた描画画像を共有するためには、多拠点に対応した特別な装置が必要であり、また、各拠点での処理負荷が増大するという課題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明は、各拠点での処理負荷を増加させずに、多拠点で描かれた描画画像を共有させることができる描画画像の共有を容易にする、多拠点描画画像共有装置、多拠点描画画像共有システム、方法、プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、多拠点で描画対象物に描かれた画像を各描画対象物に共有させる多拠点描画画像共有装置であって、各拠点で描かれた画像を格納する画像格納手段と、画像格納手段に格納されている画像を、送信先で描かれた画像を含まないように重畳して合成する画像合成手段と、画像合成手段により合成された画像を各拠点に送信する画像送信手段を含む、多拠点描画画像共有装置を提供する。画像合成手段は、第1の拠点で描かれた画像および第1の拠点以外の拠点で描かれた画像の位置を重畳させて、合成画像を生成することができる。また、画像合成手段は、第1の拠点で描かれた画像および第1の拠点以外の拠点で描かれた画像の同一の位置のピクセル輝度値を最小値に置換して、合成画像を生成することができる。
【0008】
また、本発明の多拠点描画画像共有装置は、各拠点で描かれた最新の画像を格納する最新画像バッファを有しており、画像合成手段は、最新画像バッファに格納されている第1の拠点で描かれた画像を特定して、最新画像バッファに格納されている第1の拠点以外の画像を合成することができる。さらに、画像合成手段は、全拠点から受信した画像を全て統合して統合画像を生成し、統合画像と最新画像バッファに格納されている画像との差分画像を生成することで、合成画像を生成することができる。
【0009】
さらに、本発明の多拠点描画画像共有装置は、拠点の数と画質から画像合成手段の合成方法を判断する画像合成方法判断手段を含むことができる。
【0010】
さらに本発明では、画像送信手段は、送信すべき全拠点の合成画像が生成された段階で合成画像を各拠点に送信することができる。また、画像送信手段は、送信すべき合成画像が生成されると、順次合成画像を各拠点に送信することができる。さらに、画像送信手段は、画像合成が開始して所定の時間が経過した段階で合成画像を各拠点に送信することができる。さらに、画像合成手段は、画像合成が開始して所定の時間が経過した段階で全拠点の合成画像が生成されていない場合、最新画像バッファに格納された以前の最新画像を使用して、生成されていない合成画像を作成し、画像送信手段が当該合成画像を送信することができる。
【0011】
本発明によれば、遠隔会議における画像情報の共有を容易にする、多拠点描画画像共有システム、方法、プログラムおよび記録媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の多拠点描画画像共有システム100の第1の実施形態を示す図。
【図2】本実施形態の多拠点描画画像共有装置200の機能ブロックを示す図。
【図3】本実施形態の多拠点描画画像共有装置200が実行する処理のフローチャートを示す図。
【図4】本実施形態で使用する第1合成方法による画像処理の概略図。
【図5】本実施形態の第2合成方法による画像処理の概略図。
【図6】本実施形態の多拠点描画画像共有装置200が、各拠点から送付された自拠点画像を蓄積する処理のフローチャート。
【図7】本実施形態の第1合成方法を使用する場合の多拠点描画画像共有装置200のフローチャート。
【図8】本実施形態の第2合成方法を使用する場合の多拠点描画画像共有装置200の処理フローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施形態をもって説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。図1は、本発明の多拠点画像共有システム100(以下、単に装置100として参照する。)の第1の実施形態を示す。システム100は、図1に示した実施形態では、拠点1、拠点2および拠点3の間で描画対象物であるホワイトボード110,120に書かれた画像を相互に共有させている。なお、拠点数には限定はない。
【0014】
拠点1には、ホワイトボード110と、ホワイトボード110に拠点2から送付された画像を投影することでホワイトボード110に表示する可視化装置112と、ホワイトボード110の画像を全体としてキャプチャするための撮影装置114が設置されている。図1中、拠点1のホワイトボード110に記載された画像のうち、「A」は、拠点1で書かれたものであり、表示されている画像「B」および「C」は、それぞれ拠点2および拠点3で書かれたものであって、拠点1では、可視化装置112による表示画像として与えられている。本実施例では、可視化装置112として、ホワイトボードに投影することによって画像データを可視化するプロジェクタを使用するものとして説明するが、可視化装置112は、ホワイトボードにディスプレイ機能を付与し、ホワイトボードに直接、他拠点の画像を合成して生成される表示画像を表示させるように実装することもできる。
【0015】
さらに拠点1には、パーソナルコンピュータ116(以下、PC116として参照する。)といった情報処理装置が設置されていて、可視化装置112による投影および撮影装置またはデジタルビデオカメラ等の撮影装置114による他拠点と共有したい画像のキャプチャおよび拠点2、拠点3への拠点1で書かれた画像の送付などの制御を行っている。
【0016】
PC116は、本実施形態では、サーバ装置130に対するクライアントとして機能しており、キャプチャされたホワイトボード110の画像から拠点1で書かれた画像である拠点1の画像を取得し、ネットワーク118を介して接続されたサーバ装置130に送付する。また、PC116は、拠点1以外の他拠点の画像で構成された表示画像をサーバ装置130から受け取って可視化装置112によって投影させている。
【0017】
撮影装置114は、デジタルカメラ、ビデオカメラなどとすることができ、ホワイトボード110の画像を、例えばJPEG、MOVINGJPEG、H.264などのフォーマットで動画像として取得し、PC116へと連続的に画像ファイルを送信する。ホワイトボード110,120,140には、遠隔した拠点間で共有されるべき画像の相対サイズを共有させるため、予めホワイトボード110,120,140の4隅などにマークが付されている。マークは、可視化装置112,122,142の投影の際に、位置合わせするために利用され、手動または自動的に遠隔の拠点間でのホワイトボード110,120,140のサイズの相違などに対応している。
【0018】
拠点2および拠点3は、拠点1で説明したと同様のハードウェア配置を有している。拠点2に設置された可視化装置122は、拠点1および拠点3の画像をホワイトボード120に投影し、撮影装置124は、ホワイトボード120の画像をキャプチャして、PC126に送付する。PC126は、拠点2で書かれている画像「B」を含む拠点2の画像を取得し、拠点1および拠点3での投影のために、拠点2画像を、ネットワーク128を介してサーバ装置130に送付している。
【0019】
拠点3に設置された可視化装置142は、拠点1および拠点2の画像をホワイトボード140に投影し、撮影装置144は、ホワイトボード140の画像をキャプチャして、PC146に送付する。PC146は、拠点3で書かれている画像「C」を含む拠点2画像を取得し、拠点1および拠点2での投影のために、拠点3画像を、ネットワーク148を介してサーバ装置130に送付している。
【0020】
拠点1では、自拠点の画像「A」が描かれたホワイトボード110に対して、サーバ装置130に送付された拠点2および拠点3の画像「B」および「C」が表示画像としてプロジェクタ112から投影されることで、画像「A」、「B」および「C」がホワイトボード110上に重畳画像として表示されている。
【0021】
また、拠点2では、自拠点の画像「B」が描かれたホワイトボード120に対して、拠点1で描かれた画像「A」および拠点3で描かれた画像「C」が表示画像としてプロジェクタ122から投影され、画像「A」、「B」、「C」が重畳画像として表示されている。さらに、拠点3では、自拠点の画像「C」が描かれたホワイトボード140に対して、拠点1および拠点2でそれぞれ描かれた画像「A」、「B」がプロジェクタ142により表示画像として投影されて重畳される。この結果、図1では、拠点1、拠点2および拠点3でそれぞれ同一の画像が共有されていることが示されている。
【0022】
図1に示した実施形態では、サーバ装置130は、現在接続しているPC116,126,146を識別して多拠点画像共有を行うためのクライアントリストを管理しており、サーバ装置130は、クライアントリストに登録されたPC116,126,146またはさらに多くのPCに対して画像を共有させるため、画像処理を使用して各拠点に表示するための表示画像を生成する画像処理を行う。なお、以下の実施形態では、他拠点からサーバ装置130を介して送付され、可視化装置により投影することで表示される画像を、表示画像として参照する。また、撮影装置114などが撮影する画像を共有領域の画像として参照する。さらに、共有領域の画像と表示画像との間の差分画像を、自拠点画像として参照する。また、各拠点では自拠点の画像を抽出する処理を行ってからサーバ装置130に送付を行っている。この自拠点画像抽出処理の方法は、特許文献1等に記載される技術等で実現可能である。
【0023】
サーバ装置130は、PENTIUM(登録商標)、XEON(登録商標)、CELERON(登録商標)、CORE 2 DUO(登録商標)、PENTIUM(登録商標)互換チップなど、CISCアーキテクチャのマイクロプロセッサ、または、POWERPC(登録商標)などのRISCアーキテクチャのマイクロプロセッサを、シングルコアまたはマルチコアの形態で実装することができる。また、サーバ装置130は、WINDOWS(登録商標)200X、UNIX(登録商標)、LINUX(登録商標)などのオペレーティングシステムにより制御されていて、C、C++、JAVA(登録商標)、Perl、Rubyなどのプログラミング言語を使用して実装される、CGI、サーブレット、APACHE、IIS(Internet Information Server)などのサーバ・プログラムとして表示画像を生成する。
【0024】
PC116,126,146は、パーソナルコンピュータまたはワークステーションなどを使用して実装でき、また、そのマイクロプロセッサ(MPU)は、これまで知られたいかなるシングルコア・プロセッサまたはマルチコア・プロセッサを含んでいてもよい。また、PC116,126,146は、WINDOWS(登録商標)、UNIX(登録商標)、LINUX(登録商標)、MAC OSなど、これまで知られたいかなるオペレーティングシステムにより制御されてもよい。また、PC116,126,146は、サーバ装置130にアクセスするため、Internet Explorer(登録商標)、Mozilla(登録商標)、Opera(登録商標)、FireFox(登録商標)などのブラウザ・ソフトウェアを実装することができるし、レガシー構成のクライアント−サーバシステムとして実装することもできる。図1に示した実施形態では、クライアント−サーバシステムとして実装されており、サーバ装置130は、生成した拠点毎の表示画像を、自己が管理するクライアントリストを参照して順次ユニキャストすることによって、画像共有を可能としている。
【0025】
図2は、本実施形態の多拠点描画画像共有装置200の機能ブロックを示す。なお、図2の多拠点描画画像共有装置200は、便宜上、サーバ装置130のハードウェア資源を利用するソフトウェアの実行により、サーバ装置130を多拠点描画画像共有装置として機能させるものとして説明する。サーバ装置130は、ネットワークを介してPC116,126,146などのクライアントと相互通信を行って、表示画像のクライアントへの送付およびクライアントから自拠点画像を受領する。
【0026】
多拠点描画画像共有装置200は、ネットワーク接続を行うためのネットワークインタフェース210と、画像キュー212と、画像合成部216と、を含んで構成されている。ネットワークインタフェース210は、インターネットやLANなどのネットワーク118,128,148を介してクライアント116,126,146との間で画像を送受信する手段である。画像キュー212は、クライアントリスト222に登録されたクライアントの数に対応する画像RAMなどのメモリ領域を確保し、ネットワークから送付された各クライアントの自拠点画像を、各クライアントに割り当てられたメモリ領域に登録する画像格納手段である。なお、本実施形態でクライアントリスト222は、クライアントのIPアドレス、ハンドルネームなどを使用して作成することができ、画像共有要求を送付してきたPCのIPヘッダなどの情報を使用して順次生成することができる。
【0027】
画像キュー212に一旦格納された各画像は、画像合成部216による各クライアントに送付するべき表示画像を生成する処理のため、最新画像バッファ218に移動される。画像合成部216は、各拠点の自拠点画像を最新画像バッファ218から読み出し、これらの画像を統合して、クライアントが表示画像として使用する合成画像を生成し、クライアントに対応付けて確保した表示画像バッファ220に格納する。
【0028】
合成画像は、本質的には、各拠点から送付された自拠点画像を、レジストレーション合わせした後、レイヤ合成する処理によって作成することができる。画像合成部216は、レジストレーション合わせをする場合、例えば、重畳すべき画像の左上座標(0,0)を基準にして合成することができる。また、その他の基準点、例えば、左下座標、右上座標、右下座標等を基準点とすることができる。また、画像合成部216は、各自拠点画像を受け取って画像を合成する場合、同一の画像上の位置における各自拠点画像のピクセル輝度値を比較し、最小値となるピクセル輝度値を、当該位置における合成画像のピクセル輝度値として採用することができる。
【0029】
各拠点に送付するべき表示画像は、上述して作成した合成画像から、表示画像を送付するべきクライアントの自拠点画像を除いてレイヤ合成するか、または全自拠点画像を予め合成しておき、送付するべきクライアントの自拠点画像との差分画像として生成することができる。画像処理については、より詳細に後述する。ここで、レジストレーション合わせは、上下左右方向の画像の位置合わせを指し、レイヤ合成は、同一位置の画素値同士の演算により合成画像を作成する方法を指す。
【0030】
制御部214は、画像キュー212、画像合成部216、最新画像バッファ218、表示画像バッファ220の間のデータ処理および表示画像の送付を管理する機能手段であり、サーバ装置130の他の機能と同様に、サーバ装置130が含む中央処理装置(CPU)がプログラムを実行することによって画像RAMなど協働してサーバ装置130の機能手段として提供されている。
【0031】
図3は、本実施形態の多拠点描画画像共有装置200が実行する処理のフローチャートを示す。図3に示した処理は、多拠点描画画像共有装置機能が呼び出された後、サービスまたはデーモンとして機能し、サービスまたはデーモンが終了するまで、連続して処理が反復される。処理は、ステップS300から開始し、ステップS301でクライアントリスト222に登録されているクライアントの数、すなわち拠点数が3以下か否かを判断し、拠点数が3以下の場合(yes)、処理をステップS304に分岐させ、第1合成方法を使用して表示画像を生成し、ステップS305で、クライアントに生成した表示画像を送付し、処理を終了させる。
【0032】
また、ステップS301で拠点数が4以上の場合(no)、処理をステップS302に渡し、画質優先モードか否かを判断する。画質優先モードの場合(yes)、処理をステップS304に渡し、第1合成方法で表示画像を生成し、表示画像を送付した後、ステップS305で処理を終了する。一方、ステップS302で、画質優先モードではない場合(no)、処理をステップS303に渡し、第2合成方法で表示画像を生成する。なお、第1合成方法は、複数の自拠点画像を、逐次追加して合成する方法であり、第2合成方法は、処理開始時点までに蓄積した各自拠点画像から一括して合成画像を生成し、クライアント側で必要としない自拠点画像を減算して表示画像を生成する方法である。
【0033】
図4は、本実施形態で使用する第1合成方法による画像処理の概略図である。便宜上、拠点は、拠点1、拠点2、拠点3の3拠点で画像を共有するものとして説明する。各クライアントから送付された自拠点画像は、一旦最新画像バッファ218に登録される。画像キュー212に拠点1からの自拠点画像「A」401が送付されると、最新画像バッファ218は、データ構造410となる、第1合成方法では、自拠点画像「A」401を送付した以外の拠点2、拠点3の画像を合成し、表示画像バッファ220に登録するので、表示画像バッファ220には、データ構造420として登録されることになる。この段階で、他の拠点から自拠点画像が送付されていない場合、データ構造420を構成する画像421,422,423がそれぞれ表示画像として拠点1、拠点2、拠点3に送付される。
【0034】
また、合成タイミングで、拠点2の自拠点画像「B」411、および拠点3の自拠点画像「C」421が送付されている場合、自拠点画像を送付したクライアントに対応する画像を特定して合成時不要な自拠点画像を除去しながら、利用可能な自拠点画像を逐次合成し、データ構造440およびデータ構造460として表示画像を表示画像バッファ220に登録してゆく。ここで、画像の特定は、受信した画像の送信元を参照することで行うことができる。この結果、第1合成方法では、拠点数をnとして、計算量O=(n2−n)、メモリ消費量=(2n)となる。第1合成方法では、メモリ消費量が、拠点数の2乗にほぼ比例して増加するが、画像差分を計算せずに済む分、高画質化を期待することができる。なお、多拠点描画画像共有装置200の処理において、クライアントリスト222に登録されたクライアントからの画像が送付された後に処理を行う場合、必ずしも最新画像バッファを構成する必要はない。
【0035】
図5は、本実施形態の第2合成方法による画像処理の概略図である、図5と同様、便宜上、拠点は、拠点1、拠点2、拠点3の3拠点で画像を共有するものとして説明する。図5で説明する第2合成方法は、拠点1、拠点2、拠点3からそれぞれ送付された自拠点画像「A」501、「B」511、「C」521が存在する数だけ、最新画像バッファ218に取り込み、データ構造510,530,550を生成する。
【0036】
そして、最新画像バッファ218に新たな画像が登録されると、当該画像を統合し、それぞれ統合画像520,540,560として、最終的には全拠点の自拠点画像を総て合成した画像を生成する。その後、全拠点の自拠点画像を統合した画像である統合画像560から、最新画像バッファ218に登録された送付するべき拠点の自拠点画像を減算し、データ構成570に示す差分画像を生成して、表示画像バッファ220内の各宛先に対応する各拠点に割り当てられたメモリ領域に登録し、各拠点に配付する。
【0037】
当該差分画像を生成する場合、画像合成部216は、同一の画像上の位置における統合画像560および最新画像バッファに格納された画像の輝度値の差分を算出し、輝度値の取り得る最大値から当該差分を減算した値を、当該位置における差分画像の輝度値とすることができる。例えば、輝度の最大値が255である実施形態の場合、画像上の或る位置における統合画像の輝度値をa、最新画像バッファに格納された画像の輝度値bとすると、当該位置における差分画像の輝度値は255−(a−b)となる。
【0038】
第2合成方法は、計算量O=(2n)、メモリ消費量=(n+2)と第1合成方法よりもハードウェア資源消費という点では効率的であるが、差分画像を生成するため、色バランスなどの画質が低下する場合もあるため、拠点数が多く、また画質を優先しないことで充分な場合などに好ましく利用することができる。
【0039】
以下、図6〜図8に本実施形態の表示画像生成処理を詳細に説明する。図6は、本実施形態の多拠点描画画像共有装置200が、各拠点から送付された自拠点画像を蓄積する処理のフローチャートである。図6の処理は、ステップS600から開始し、各クライアントからの自拠点画像を受領したか否かを判断し。受領しない場合(no)自拠点画像の受信を待機する。一方、自拠点画像を受領した場合(yes)、ステップS601に制御を渡し、画像を画像キュー212に保存して、以後の処理を可能とする。なお、自拠点画像の蓄積は、クライアントリスト222に登録されたクライアント全部からの送付を受けるまで反復して行うこともできるし、受領した段階で逐次的に画像キュー212に送付することもできる。
【0040】
図7は、本実施形態の第1合成方法を使用する場合の多拠点描画画像共有装置200が実行する処理のフローチャートを示す。図7の処理は、ステップS700で画像キュー212に画像があるかどうかを判断し、画像が存在する場合(yes)、ステップS701で画像キュー212から画像を1つ抽出し、ステップS702で、最新画像バッファに抽出した画像を追加して更新する。一方、キューに画像がない場合(no)、処理をステップS703に分岐させ、画像合成タイミングが到来したか否かを判断する。
【0041】
ステップS703では、画像合成タイミングとなったか否かを判断し、画像合成タイミングが到来していない場合(no)処理をステップS700に戻し、キューの画像があるか否かの判断を反復させる。ステップS703で画像合成タイミングが到来した場合(yes)、ステップS704でまだ合成していない、すなわち前回の画像合成タイミングまでに合成されていない自拠点画像を最新画像バッファ218から読み出して合成画像を作成する。この際、合成画像は、減算処理などを加えずとも送付するべきクライアントの自拠点画像が除かされた表示画像として生成される。
【0042】
ステップS705では、生成した合成画像=表示画像を各クライアントに宛てて表示画像バッファ220からネットワークを介して送付しステップS706で、表示画像バッファ220内の画像をフラッシュして処理をステップS700に戻し、処理するべき画像が無くなるまで、ステップS700〜S706の処理を反復する。また、ステップS700で画像キュー212に処理するべき画像が無くなると、処理をS703に分岐させ、画像合成タイミングの到来を待機する。
【0043】
本実施形態では、制御部214は、表示画像バッファ220に全拠点の表示画像が格納されたときに、表示画像バッファ220に表示画像を各クライアントに送付させることができる。他の実施形態では、制御部214は、表示画像バッファ220に対して、表示画像バッファ220に格納された拠点の表示画像から順次クライアントに送付させることができる。
【0044】
さらに、他の実施形態では、制御部214は、画像合成処理が開始して所定の時間が経過した後に、表示画像バッファ220に表示画像を各クライアントに送付させることができる。この場合、制御部214は、表示画像バッファ220に全拠点の表示画像が格納されていないとき、画像合成部216に対して、以前に最新画像バッファ218に格納された最新画像を使用して、表示画像バッファ220に格納されていない表示画像を生成させることができる。
【0045】
図8は、本実施形態の第2合成方法を使用する場合の多拠点描画画像共有装置200の処理フローを示す。図8の処理は、ステップS800で画像キュー212に画像があるかどうかを判断し、画像が存在する場合(yes)、ステップS801で画像キュー212から画像を1つ抽出し、ステップS802で、最新画像バッファに抽出した画像を追加して更新する。また、ステップS800でキューに画像がない場合(no)処理をステップS803に分岐させる。
【0046】
ステップS803では、画像合成タイミングとなったか否かを判断し、画像合成タイミングが到来していない場合(no)処理をステップS800に戻し、キューに画像があるか否かの判断を反復する。ステップS803で画像合成タイミングが到来した場合(yes)、ステップS804でまだ合成していない、すなわち前回の画像合成タイミングまでに合成されていない自拠点画像を最新画像バッファ218から読み出して合成画像を作成する。この際、合成画像は、その時点で連携している全拠点からの自拠点画像を合成した画像として生成される。
【0047】
ステップS805では、生成した合成画像から、最新画像バッファ218に登録された自拠点画像を減算してクライアントの数分の表示画像を生成し、表示画像バッファ220に格納し、ステップS806で、表示画像を各クライアントに宛ててネットワークを介して送付しステップS807で、表示画像バッファ220内の画像をフラッシュして処理をステップS800に戻し、処理するべき画像が無くなるまで、ステップS800〜S807の処理を反復する。また、ステップS800で画像キュー212に処理するべき画像が無くなると、図7と同様に、処理をステップS803に分岐させ、画像合成タイミングを待機させる。ここで、画像合成タイミングは、所望のフレームレートとなるように一定間隔で発生させるようにしてもよい。例えば、10フレーム/秒となるように、0.1秒間隔で発生させるようにしてもよい。
【0048】
本実施形態では、制御部214は、表示画像バッファ220に全拠点の表示画像が格納されたときに、表示画像バッファ220に表示画像を各クライアントに送付させることができる。他の実施形態では、制御部214は、表示画像バッファ220に対して、表示画像バッファ220に格納された拠点の表示画像から順次クライアントに送付させることができる。
【0049】
さらに、他の実施形態では、制御部214は、画像合成処理が開始して所定の時間が経過した後に、表示画像バッファ220に表示画像を各クライアントに送付させることができる。この場合、制御部214は、表示画像バッファ220に全拠点の表示画像が格納されていないとき、画像合成部216に対して、以前に最新画像バッファ218に格納された最新画像を使用して、表示画像バッファ220に格納されていない表示画像を生成させることができる。
【0050】
以上のように、本発明によれば、多拠点でそれぞれ独立して描かれた画像を統合して、最小の時間差および画像の連続性を与えながら各拠点で共有することが可能となる。
【0051】
本実施形態の上記機能は、C++、Java(登録商標)、JavaScript(登録商標)、Perl、Rubyなどのオブジェクト指向プログラミング言語などで記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、プログラムは、ハードディスク装置、CD-ROM、MO、フレキシブルディスク、EEPROM、EPROMなどの装置可読な記録媒体に格納して頒布することができ、また他装置が実行可能な形式でネットワークを介して伝送することができる。
【0052】
これまで本実施形態につき説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
100 多拠点描画画像共有システム
110 ホワイトボード
112 可視化装置
114 撮影装置
116 パーソナルコンピュータ
118 ネットワーク
120 ホワイトボード
122 可視化装置
124 撮影装置
126 パーソナルコンピュータ
128 ネットワーク
130 サーバ装置
140 ホワイトボード
142 可視化装置
144 撮影装置
146 パーソナルコンピュータ
148 ネットワーク
200 多拠点描画画像共有装置
210 ネットワークインタフェース
212 画像キュー
214 制御部
216 画像合成部
218 最新画像バッファ
220 表示画像バッファ
222 クライアントリスト
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開2005−203886号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多拠点で描画対象物に描かれた画像を各描画対象物に共有させる多拠点描画画像共有装置であって、
各拠点で描かれた画像を格納する画像格納手段と、
前記画像格納手段に格納されている画像を、送信先で描かれた画像を含まないように重畳して合成する画像合成手段と
前記画像合成手段により合成された画像を各拠点に送信する画像送信手段

を含む、多拠点描画画像共有装置。
【請求項2】
前記画像合成手段は、第1の拠点で描かれた画像および前記第1の拠点以外の拠点で描かれた画像の位置を重畳させて、合成画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の多拠点描画画像共有装置。
【請求項3】
前記画像合成手段は、第1の拠点で描かれた画像および前記第1の拠点以外の拠点で描かれた画像の同一の位置のピクセル輝度値を最小値に置換して、合成画像を生成することを特徴とする請求項2に記載の多拠点描画画像共有装置。
【請求項4】
前記多拠点描画画像共有装置は、各拠点で描かれた最新の画像を格納する最新画像バッファを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多拠点描画画像共有装置。
【請求項5】
前記画像合成手段は、前記最新画像バッファに格納されている第1の拠点で描かれた画像を特定して、前記最新画像バッファに格納されている前記第1の拠点以外の画像を合成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多拠点描画画像共有装置。
【請求項6】
前記画像合成手段は、全拠点から受信した画像を全て統合して統合画像を生成し、当該統合画像と最新画像バッファに格納されている画像との差分画像を生成することで、合成画像を生成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多拠点描画画像共有装置。
【請求項7】
前記多拠点描画画像共有装置は、拠点の数と画質から画像合成手段の合成方法を判断する画像合成方法判断手段を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の多拠点描画画像共有装置。
【請求項8】
前記画像送信手段は、送信すべき全拠点の合成画像が生成された段階で合成画像を各拠点に送信する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の多拠点描画画像共有装置。
【請求項9】
前記画像送信手段は、送信すべき合成画像が生成されると、順次合成画像を各拠点に送信する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の多拠点描画画像共有装置。
【請求項10】
前記画像送信手段は、画像合成が開始して所定の時間が経過した段階で合成画像を各拠点に送信する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の多拠点描画画像共有装置。
【請求項11】
前記画像合成手段は、画像合成が開始して所定の時間が経過した段階で全拠点の合成画像が生成されていない場合、前記最新画像バッファに格納された以前の最新画像を使用して、前記生成されていない合成画像を作成し、
前記画像送信手段は、前記合成画像を送信する、請求項10に記載の多拠点描画画像共有装置。
【請求項12】
多拠点で描画対象物に描かれた画像を各描画対象物に共有させる多拠点描画画像共有装置と、前記描画対象物に描かれた画像から自拠点で書かれた内容のみを抽出し前記多拠点描画画像共有装置に送付するクライアントとを含む多拠点描画画像共有システムであって、前記多拠点描画画像共有装置は、
各拠点で描かれた画像を格納する画像格納手段と、
前記画像格納手段に格納されている画像を、送信先で描かれた画像を含まないように重畳して合成する画像合成手段と
前記画像合成手段により合成された画像を各拠点に送信する画像送信手段

を含む、多拠点描画画像共有システム。
【請求項13】
前記画像合成手段は、第1の拠点で描かれた画像および前記第1の拠点以外の拠点で描かれた画像の位置を重畳させて、合成画像を生成することを特徴とする請求項12に記載の多拠点描画画像共有システム。
【請求項14】
2以上の遠隔の拠点間で描かれる描画画像を共有する多拠点描画画像共有装置が実行する方法であって、前記方法は、前記多拠点描画画像共有装置が、
各拠点で描かれた画像を格納するステップと、
前記格納された画像を、送信先で描かれた画像を含まないように重畳して合成するステップと、
前記合成された画像を各拠点に送信するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記合成するステップは、第1の拠点で描かれた画像および前記第1の拠点以外の拠点で描かれた画像の位置を重畳させて、合成画像を生成するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記合成するステップは、第1の拠点で描かれた画像および前記第1の拠点以外の拠点で描かれた画像の同一の位置のピクセル輝度値を最小値に置換して、合成画像を生成するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記多拠点描画画像共有装置は、各拠点で描かれた最新の画像を格納する最新画像バッファを有しており、
前記合成するステップは、前記最新画像バッファに格納されている第1の拠点で描かれた画像を特定して、前記最新画像バッファに格納されている前記第1の拠点以外の画像を合成するステップを含む、請求項14乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記多拠点描画画像共有装置は、各拠点で描かれた最新の画像を格納する最新画像バッファを有しており、
前記合成するステップは、全拠点から受信した画像を全て統合して統合画像を生成し、当該統合画像と最新画像バッファに格納されている画像との差分画像を生成することで、合成画像を生成するステップを含む、請求項14乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
2以上の遠隔の拠点間で描かれる描画画像を共有する多拠点描画画像共有装置に対して、請求項14〜18のいずれか1項に記載のステップを実行させるためのコンピュータ実行可能なプログラム。
【請求項20】
請求項19に記載されたプログラムを記録したコンピュータ可読な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−5107(P2012−5107A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47669(P2011−47669)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】