説明

多数のアプリケーションをサポートするために格納アプリケーションプロファイルを有する多数搬送波システム

【課題】多数のアプリケーションをサポートする多数搬送波伝送システムの提供。
【解決手段】デジタル加入者線システムは、多数搬送波変調を使用して通信チャンネル上で通信できる2台の送受信器を含む。アプリケーションプロファイルが、通信チャンネル上での情報の送信を特性付けるために定義される。各送受信器は、アプリケーションプロファイルを格納し、格納アプリケーションプロファイルの一つに従って通信チャンネル上で情報を送信する。送受信器間でアクティブな数多くのアプリケーションにおいて変化が生じたとき、アプリケーションプロファイルのうちの第2のアプリケーションプロファイルが取出され、送受信器は、第2アプリケーションプロファイルに従って通信チャンネル上で情報を送信するステップへ移行する。この移行は、送受信器間の通信を中断して送受信器を再調整することなく起り得る。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、1999年3月12日出願の米国仮出願第60/124,222号、発明の名称「シームレス・レート適応型(SRA)ADSLシステム」、1999年10月22日出願の米国仮出願第60/161,115号、発明の名称「格納アプリケーション・プロファイルを有する多数搬送波システム」、および2000年1月19日出願の米国仮出願第60/177,081号、発明の名称「シームレス・レート適応型(SRA)多数搬送波変調システムとプロトコル」に基づく優先権を主張している、係属中である2000年3月10日出願の米国特許出願第09/522,869号の一部継続出願である。本出願は、また、1999年9月15日出願の米国仮出願第60/154,116号、発明の名称「多数のアプリケーションをサポートする送受信器」、1999年10月22日出願の米国仮出願第60/161,115号、発明の名称「格納アプリケーション・プロファイルを有する多数搬送波システム」、および、2000年1月19日出願の米国仮出願第60/177,081号、発明の名称「シームレス・レート適応型(SRA)多数搬送波変調システムとプロトコル」に基づく優先権を主張する。これら同時係属中の仮出願は、引用して本明細書にその全体が組込まれる。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、多数搬送波変調を使用する伝送システムに関する。より詳細には、本発明は、多数のアプリケーションをサポートする多数搬送波伝送システムに関する。
【背景】
【0003】
従来の多数搬送波伝送システムでは、多数搬送波変調またはディスクリート・マルチトーン変調(DMT)を使用して、送受信器が通信チャンネル上で通信を行っている。搬送波または通信チャンネルの使用周波数帯域内で離間するサブチャンネルは、システムのシンボル伝送レートで変調される。ADSL(非対称デジタル加入者線)システムでは、シンボルレートは、ほぼ4kHzである。サブチャンネルのビットエラー率が、受信している送受信器のところで実質的に等しくなるように、送信している送受信器は、250マイクロ秒毎に、送信用の新規のビットセットをサブチャンネルへ割当てる。その結果、所定シンボル期間に対して、ビット数をサブチャンネル毎に変えることができる。
【0004】
ITU(国際電気通信連合)規格G992.1とG992.2は、ADSL DMT送受信器の動作を特性付けるパラメータを規定している。ほんの数例ではあるがこれらパラメータには、送受信器間の接続のためのデータレート(b/秒)、アップストリームとダウンストリーム方向のサブチャンネルの数、および各サブチャンネルへ割当てられるビット数が含まれる。一般的に、そのようなパラメータは、送受信器の当初の構成およびインストール以降は固定されたままである。あるパラメータは接続のデータレートに依存し、ADSL接続が高データレートか低データレートであるときに変化できる。また、あるパラメータは、チャンネル条件が変化するときに変化できる。しかし、アプリケーションのタイプが決定された後は、すなわち音声、データ、映像などが決定された後は、そのアプリケーションのためにパラメータが最適化されて固定される。
【0005】
ITU G922.2規格に記載のスプリッタレス動作に関しては、ADSL送受信器が「チャンネルプロファイル」を格納し、このチャンネルプロファイルは、通信チャンネルの条件が変化する(例えば、電話機がフックから外れる)ときに使用されるパラメータのサブセットを含む。ADSL送受信器が制御しないイベント(例えば、ADSL送受信器と同じ線へ接続された電話機がフックから外れる)に起因してチャンネル条件が変わるときに、ADSL送受信器は新規チャンネル条件を同定し、いくつかの受信器機能(例えば、イコライザ、エコーキャンセラなど)を再調整し、そして新規チャンネル条件に使用されるチャンネルプロファイルへ切換えなくてはならない。ITU G922.2で「高速再調整」手順として定義されたこのプロセスにかかる時間は、ほぼ1〜2秒である。しかし、これらチャンネルプロファイルはチャンネル条件だけに依存し、ADSL接続上で実行しているアプリケーション(単数および複数)に依存しない。
【0006】
技術上の進展によって多数搬送波伝送システムに関するデータレートスループットが増えるのに伴って、ADSL送受信器は多数のアプリケーションをサポートできるようになっている。多数のアプリケーションをサポートするには、アクティブなアプリケーションの数とタイプが時間の経過とともに変化するのに従って、ADSL送受信器が迅速に効率よく伝送パラメータを適合させる必要がある。例えば、ADSL送受信器がインターネット上でデータにアクセスしている場合に、ADSL接続上で運ばれている音声通話がアクティブになるとき、ADSL送受信器は、アクティブな両アプリケーションに適応するよう伝送パラメータを改変できなくてはならない。他の音声通話および異なるアプリケーション(例えば、ビデオオンデマンド、ビデオ会議)がADSL接続上で起動および停止される際に、ADSL送受信器は、並行にアクティブなアプリケーションの様々な組合わせの様々な伝送要件もサポートできなくてはならない。例えば、ビデオ信号は、音声およびデータ信号より信頼性要件は高いが、伝送遅延要件は低い。伝送システムによっては、高信頼性と伝送遅延との間で折り合いを見出す必要があった。
【0007】
従って、アクティブなアプリケーションの数と種類が時間の経過とともに変化するのに従い、アクティブな多数のアプリケーションの様々な伝送要件をサポートできるシステムおよび方法に対するニーズが依然存在する。
【発明の概要】
【0008】
一つの目的は、多数のアプリケーションをサポートでき、そしてアプリケーションが起動および停止されるのに従って時間の経過とともに送信パラメータを迅速に効率よく改変できるDMT送受信器を提供することである。本発明の一局面において、多数搬送波変調システムは、通信チャンネル上で相互に通信できる2台の送受信器を有する。本発明の一局面で、多数搬送波変調システムは、通信チャンネルの上で相互に通信できる2台の送受信器を有する。本発明は、複数のアプリケーションをサポートするための方法を特徴とする。ここで、多数のアプリケーションプロファイルを定義すると、各アプリケーションプロファイルは、一つ以上のアプリケーションのユニークセットに対応し、そのユニークセットの各アプリケーションに関連付けた情報を通信チャンネル上で送信するために、各アプリケーションに対し少なくとも一つの送信パラメータを指定する。
【0009】
多数のアプリケーションプロファイルは、送受信器の一方に格納される。情報は、現在アクティブなアプリケーションのセットに対応する第1格納アプリケーションプロファイルに従い送信される。現在アクティブなアプリケーションのセットでの変化に応答して、第2格納アプリケーションプロファイルが選択される。この第2アプリケーションプロファイルは、現在アクティブなアプリケーションの変化セット中の一つ以上のアプリケーションに対応する。情報の送信は、送受信器を再調整するために、送受信器間の通信を中断することなく第2格納アプリケーションプロファイルの使用へ移行する。
【0010】
メッセージが送受信器の一つへ送信され、第2アプリケーションプロファイルを送受信器間でのその後の通信のために使用するアプリケーションプロファイルとして識別する。メッセージは、第2アプリケーションプロファイルへの移行を要請するよう動作できる。送受信器の受信器または送信器のいずれも、移行を始動するメッセージを送ることができる。
【0011】
返答メッセージは、メッセージが送信された送受信器から受信される。受信器が初期メッセージを送ったとき、返答メッセージは、リクエストを認可し、第2アプリケーションプロファイルの使用を同期化する。一つの実施の形態では、反転同期シンボルが、返答メッセージのために使用される。移行が送信器始動のとき、返答メッセージは、リクエストを認可して、第2アプリケーションプロファイルへ移行する。そこで、別のメッセージが送られ、認可を認知し、第2アプリケーションプロファイルの使用を同期化する。一つの実施の形態では、この他のメッセージは反転同期シンボルである。
【0012】
各アプリケーションプロファイルは、送受信器の完全な初期化を遂行して、または遂行することなく、通信チャンネル上で他方の送受信器へ送信され得る。アプリケーションプロファイルは、アクティブなアプリケーションのユニークセットの最初の出現により生成されることができ、そのユニークアプリケーションセットに関連付けられる。一つの実施の形態では、送受信器のそれぞれは、両送受信器によって用いられる予め定めたプロセスを使用して格納アプリケーションプロファイルの一つに対する送信パラメータの少なくとも一つをローカルで生成する。他の実施の形態では、送受信器は、格納アプリケーションプロファイルで予め設定されることができる。
【0013】
アプリケーションプロファイルでは、各アプリケーションのために指定される送信パラメータは、次のうち少なくとも一つを含む:送信データレート、ダウンストリームとアップストリーム送信のために割当てられるサブチャンネル、サブチャンネルのそれぞれへ割当てられるビットの数、パフォーマンスマージン、サブチャンネルのそれぞれに対する利得微調節、インターリーブ深さ、最小と最大QAMコンステレーションサイズ、巡回前置部分の長さ、コード語サイズ、フレーム化モード、およびトレリスコード。
【0014】
別の局面では、本発明は、送受信器間でアクティブである多数のアプリケーションをサポートするための方法を特長とする。複数のアプリケーションプロファイルが、通信チャンネルの上での情報の送信を特性付けるために展開される。各アプリケーションプロファイルは、送受信器間でアクティブになり得る一つ以上のアプリケーションのユニークセットに関連付けられる。アプリケーションプロファイルは送受信器で格納される。情報は、現在アクティブなアプリケーションのセットに対応する第1格納アプリケーションプロファイルに従い通信チャンネル上で送信される。変化した現在アクティブなアプリケーションのセットに対応するアプリケーションプロファイルの第2のものが、送受信器間でアクティブである現在アクティブなアプリケーションのセットにおける変化に応答して取出される。送受信器は、第2アプリケーションプロファイルに従い通信チャンネルの上で情報を送信するステップに移行する。移行は、送受信器を再調整して、または再調整せずに起り得る。
【0015】
なお別の局面では、本発明は、複数のアプリケーションをサポートするための方法を特徴とし、ここで複数のアプリケーションプロファイルが定義される。各アプリケーションプロファイルは、一つ以上のアプリケーションのユニークセットに対応し、通信チャンネルの上でそのアプリケーションに関連付けられた情報を送信するためにそのユニークアプリケーションセットにおける各アプリケーションに対する少なくとも一つの送信パラメータを指定する。複数のアプリケーションプロファイルは送受信器の一つで格納される。
【0016】
本発明のさらに別の局面では、多数搬送波変調システムは、通信チャンネル上で通信する送受信器を有する。複数のアプリケーションプロファイルが定義される。各アプリケーションプロファイルは、一つ以上のアプリケーションのユニークセットに対応し、通信チャンネルの上でそのアプリケーションに関連付けられた情報を送信するためにそのユニークアプリケーションセットにおける各アプリケーションに対する少なくとも一つの送信パラメータを指定する。
【0017】
複数のアプリケーションプロファイルは送受信器で格納される。情報は、現在アクティブなアプリケーションのセットに対応する第1格納アプリケーションプロファイルに従って送信される。第2格納アプリケーションプロファイルが、現在アクティブなアプリケーションのセットにおける変化に応答して選択される。この第2アプリケーションプロファイルは、変化した現在アクティブなアプリケーションのセットにおける一つ以上のアプリケーションに対応する。情報の送信は、送受信器を再調整する必要もなく、第2格納アプリケーションプロファイルの使用へ移行する。送受信器は、第2アプリケーションプロファイルをその後の通信のために使用するアプリケーションプロファイルとして識別するメッセージを送信または受信できる。
【0018】
本発明のなお別の局面では、各アプリケーションプロファイルは、一つ以上のアプリケーションのユニークセットに対応し、通信チャンネル上でそのアプリケーションに関連付けられた情報を受信するために、そのユニークアプリケーションセット中の各アプリケーションに対する少なくとも一つの受信パラメータを指定する。情報の受信は、第1格納アプリケーションプロファイルを使用することから、第2格納アプリケーションプロファイルの使用へ、送受信器を再調整する必要もなく移行する。この場合も、送受信器は、第2アプリケーションプロファイルをその後の通信のために使用するアプリケーションプロファイルとして識別するメッセージを送信または受信できる。
【発明の説明】
【0019】
図1は、非同期DSL伝送システム2を示し、通信チャンネル18上で中央局(CO)送受信器14と通信できる遠隔ディスクリート・マルチトーン変調(DMT)送受信器10(例えばモデム)を含む。遠隔DMT送受信器10は、本発明の原理に従って、送信器22、受信器26、および複数のアプリケーションプロファイル(AP)34を格納するメモリ30を含む。CO送受信器14は、送信器38、受信器42、および遠隔DMT送受信器10のアプリケーションプロファイル34と一対一で対応する複数のアプリケーションプロファイル50を格納するメモリ46を含む。
【0020】
一つの実施の形態における通信チャンネル18は、電話加入者線の一対の撚り線である。通信チャンネル18は、遠隔DMT送受信器10の送信器22からCO送受信器14の受信器42に至るアップストリーム送信経路、およびCO送受信器14の送信器38から遠隔DMT送受信器10の受信器26に至るダウンストリーム送信経路を提供する。システム2は、ダウンストリーム送信経路の帯域幅がアップストリーム送信経路の帯域幅より大きい点で非対称である。
【0021】
遠隔DMT送受信器10とCO送受信器14は、本発明の原理に従って、アプリケーションプロファイル34、50を使用してアプリケーションストリーム54、54'(全体的には符号54で示す)を送受信する。各アプリケーションストリーム54(以降、アプリケーション54と称する)は一種類の信号(例えばデジタルデータ、音声、映像など)を伝達する。例えば、音声信号のストリームは一つのアプリケーションであり、デジタルデータ信号のストリームは別のアプリケーションであり、そしてビデオ信号のストリームはさらに別のアプリケーションである。音声アプリケーションは、一つ以上のアクティブな音声通話に対応する。デジタルデータアプリケーションの例は、インターネットにアクセスするウエブ閲覧(IAWB)であり、ビデオアプリケーションの例は、ビデオオンデマンドである。ADSLシステム2は、他の信号種類から構成されるアプリケーション54も送信できる。アプリケーションストリームは個別のものとして示したが、様々な種類の信号を有する送信パケット(例えばATMセル)の単一ストリームの一部として送受信器10、14に到着できる。
【0022】
ADSLシステム2は、アクティブな多数のアプリケーション54を並行してサポートする。例えば、遠隔DMT送受信器10の送信器22は、音声アプリケーション信号およびデジタルデータアプリケーション信号を並行して、CO送受信器14の受信器42へ通信チャンネル18のアップストリーム送信経路上で送信できる。別の例として図1に示すのは、アップストリームとダウンストリーム送信経路上で、デジタルデータ、音声、およびビデオアプリケーション54に関連付けた信号を並行して送信するADSLシステム2を示す。
【0023】
いずれかの所定時点で、DSLシステム2は、現在アクティブであるゼロ、一つ、またはそれより多いアプリケーション54を有する。以降、アプリケーションのセットまたはアプリケーションセットと称する、一つ以上のアクティブなアプリケーションのユニークコンビネーションは、送受信器10、14のユニークでアクティブな通信状態を表す。アプリケーションセット54の例には、2つ以上の並行してアクティブな異なる種類のアプリケーション(例えば、一つ以上の音声通話から構成される音声電話アプリケーションと一緒のインターネットアクセスのウエブ閲覧アプリケーション)がある。アクティブなアプリケーションのセットの他の例は、アクティブなアプリケーションを一つだけ持つ(例えば、インターネットアクセスのウエブ閲覧アプリケーション、あるいは、一つ以上のアクティブな音声通話)。
【0024】
各アプリケーション54は、以下2つのカテゴリのアプリケーションのどちらか一方に該当する。(1)固定データレートアプリケーション、および(2)可変データレートアプリケーション。固定データレートアプリケーションは、特定の帯域幅を必要とし、通信チャンネル18を通過するためにその帯域幅を獲得しなくてはならない。所要のデータレートが目下利用できない場合、アプリケーションはその時点でサポートされることはない。固定データレートアプリケーションの一例は、音声電話アプリケーションであり、それは、アクティブな通話毎に64kb/秒を必要とする。ビデオアプリケーションによっては、特定の固定データレートを必要とするかもしれない。可変データレートアプリケーションは、データレートの範囲(例えば、1Mb/秒から2Mb/秒)で動作できる。従って、利用可能なチャンネル帯域幅がこの範囲に該当する場合、アプリケーションはサポート可能になる。可変データレートアプリケーションの一例はデジタルデータアプリケーション(例えば、インターネットにアクセスするウエブ閲覧)である。幾つかのビデオアプリケーションは、データレート範囲内で動作できる可変データレートアプリケーションの他の例である。
【0025】
このようなデータレート要件は、以下で更に詳細に説明するように、アプリケーションプロファイル34、50の内容を部分的に決定する。一般的に、一つ以上の固定データレートアプリケーションをサポートするアプリケーションプロファイル34、50は、そのような固定データレートアプリケーション毎に特定のデータレート要件を定める。可変データレートアプリケーションをサポートするアプリケーションプロファイル34、50は、特定の可変データレートアプリケーションの範囲に入る可変データレートの最大量までを定める。固定データレートおよび可変データレートアプリケーション両方をサポートするアプリケーションプロファイル34、50は、先ず特定のデータレート要件を、特定の固定データレートアプリケーション(単数または複数)へ割付け、次に残りの利用可能な帯域幅を可変データレートアプリケーション(単数または複数)へ割付ける。
【0026】
異なる種類のアプリケーション54も、通常は信頼性と伝送遅延に対して異なる送受信要件を持っている。より具体的には、データレート、呼出し時間、バーストまたはインパルスノイズ、ビットエラー率(BER)、およびデータレート対称性は、アプリケーションが異なると大幅に変わってしまう。例えば、高速ビデオアプリケーションは非対称であり、高いダウンストリームデータレート、例えば1.5Mb/秒から6Mb/秒、および低いアップストリームデータレート、例えば16kb/秒から64kb/秒を必要とする。加えて、ビデオ信号は送信時に高度に圧縮されるので、ビデオアプリケーションのインパルスノイズに対する免疫性は低い。その結果、ビデオアプリケーションは、<1E−9という低いBERを必要とする。>20m秒という長い呼出し時間は容認できる。
【0027】
対照的に、インターネット上でのウエブ閲覧のようなデジタルデータアプリケーションの非対称性は、ビデオアプリケーションより低く、32kb/秒から6Mb/秒間の範囲に及ぶダウンストリームデータレートと、32kb/秒から1Mb/秒間のアップストリームデータレートとを使用する。デジタルデータアプリケーションに対するビットエラー率要件は<1E−7であり、一般的にビデオアプリケーションよりもインパルスノイズに対する免疫性が高い。また、<5m秒という中程度の呼出し時間は一般的に容認できる。
【0028】
音声アプリケーション(すなわち通話)は対称性であり、アップストリームとダウンストリーム両方の送信経路で64kb/秒データレートを必要とする。インパルスノイズに対して高い免疫性を有しており、音声アプリケーションは、BER<1E−3を持ち得る。ビデオおよびデジタルデータアプリケーションと対照的に、必要な呼出し時間は約1.5m秒未満という低い値である。
【0029】
他の種類のアプリケーションは他の要件を持つことができる。
【0030】
様々なデジタル・マルチトーン送信(または受信)パラメータが、これらの要件を制御する。例えば、ビット割当テーブル(BAT)はデータレートとビットエラー率を制御する。リード・ソロモン(R/S)コード化はより低いビットエラー率を制御し、インターリーブ化はより低いビットエラー率を提供するが、両方とも呼出し時間の増加という犠牲を払ってインパルスノイズに対する免疫性を高める。アップストリームとダウンストリーム経路で使用されるトーン数が、データレート対称性を決定する。その結果、種々のパラメータが、通信チャンネル18上での所定アプリケーション54に関連付けられた信号のDMT送受信を特性付ける(以降、このようなパラメータを全体的に送信パラメータと称するが、これは信号を受信する場合にも使用される)。このような送信パラメータには以下が含まれる。
【0031】
送受信器10、14間における(アップストリームおよび/またはダウンストリーム)、所定アプリケーションのデータレート(ビット/秒);
所定アプリケーションのために、アップストリームとダウンストリーム送信経路に割当られるサブチャンネル;
所定アプリケーションのために各サブチャンネルへ割当てられるビット数;
所定アプリケーションのために各サブチャンネル上で使用される最小と最大の直交振幅変調(QAM)コンステレーションサイズ;
所定アプリケーションのためのトレリスコードの包含または排除;
所定アプリケーションのための巡回前置部分の長さ;
所定アプリケーションのためのコード化パラメータ(例えば、R/Sコード語サイズ);
所定アプリケーションのためのインターリーバが使用される場合、インターリーバの深さ;
所定アプリケーションのためのフレーム化モード(例えば、ITU ADSL伝送規格G922.1は4つの異なるフレーム化モードを規定している);
所定アプリケーションのために各トーンへなされる利得微調節;および
所定アプリケーションのためのパフォーマンスマージン。
【0032】
一つ以上のアクティブなアプリケーションに関連付けた信号を送受信するために、遠隔DMT送受信器10とCO送受信器14は、アプリケーションプロファイル34、50を使用して、そのような通信を特性付ける。より具体的には、各アプリケーションプロファイル34、50は、一つ以上の目下アクティブなアプリケーション54のユニークセットのための送信パラメータを特定するパラメータセットである。唯一のアクティブなアプリケーションを表すアプリケーションセットに対応するアプリケーションプロファイルは、その一つのアプリケーションのための送信パラメータを定める。以下に説明するように、各アプリケーションプロファイル34、50のパラメータへ指定される値は、そのアプリケーションプロファイルに対応するアプリケーションセット中の各アプリケーションのカテゴリと種類に依存する。
【0033】
2つ以上の並行してアクティブなアプリケーションを表すアプリケーションセットに対しては、対応するアプリケーションプロファイル34、50が、そのアプリケーションセット中のアクティブなアプリケーション毎に並行して適応する送信パラメータを特定する。実際上、アプリケーションプロファイル34、50は、個々のアプリケーション54の個々の送信(または受信)要件を、アクティブなすべてのアプリケーションの並行送信を達成する単一の送信パラメータセットに組合わせるよう動作する。
【0034】
例えば、接続のトータルデータレートが1.532Mb/秒であると仮定する。可変データレートアプリケーション(例えばデジタルデータアプリケーション)が単独で動いているとき、このデータレートが可変データレートアプリケーションのデータレートの範囲内にあるとして、それは、1.532Mb/秒の利用可能データレート全部を使用する。従って、アプリケーションプロファイルの一つの実施の形態は、この可変データレートアプリケーションに対応して、接続の利用可能データレート全体をこの可変データレートアプリケーションへ割付ける。固定データレートアプリケーション(例えば音声アプリケーション)が単独で動いているとき、それは、具体的に必要とされるデータレート(例えば、音声アプリケーション用の64kb/秒データレート)を使用する。従って、アプリケーションプロファイルの一つの実施の形態は、この固定データレートアプリケーションに対応して、具体的に必要とされるデータレートをこの固定データレートアプリケーションへ割付ける。
【0035】
上で説明した固定および可変データレートアプリケーションが並行して動いているとき、この2つのアプリケーションのセットに対応するアプリケーションプロファイルは、まず固定データレートアプリケーションのデータレート要件を供与し、次に固定データレートアプリケーションを充足した後に、残りのチャンネル帯域幅を使用する、可変データレートアプリケーションを供与する。従って、固定データレートアプリケーションが64kb/秒を必要とする音声アプリケーションである場合、アプリケーションプロファイルは、音声アプリケーションに対して所要の64kb/秒を指定し、残っているチャンネル帯域幅1.468Mb/秒データレートを可変データレートアプリケーションへ割付ける。もう一つの例として、固定データレートアプリケーションがそれぞれ64kb/秒を必要とする2つの音声通話で構成される音声アプリケーションである場合、アプリケーションプロファイルは、音声アプリケーションにとって必要な128kb/秒を指定し、残っているチャンネル帯域幅のデータレート1.404Mb/秒を可変データレートアプリケーションへ与える。これらの例では、可変データレートアプリケーションのための減少帯域幅(すなわち、1.532Mb/秒から1.468Mb/秒または1.404Mb/秒への)は、可変データレートアプリケーションの容認できるデータレートの範囲に入ることが想定される。実際上、アクティブな各アプリケーションに対する信号の個々の送受信に関連付けたパラメータは、並行してアクティブなアプリケーション全てに対する信号の同時送受信を達成する方法でアプリケーションプロファイルに組込まれる。
【0036】
上記では特定のアプリケーションのデータレートを指定して示したが、各アプリケーションプロファイル34、50は、そのアプリケーションプロファイル中の各アプリケーションに関連付けた信号のDMT送信(および受信)を特性付けるための、上記パラメータおよび記載していない他のパラメータのうちの一つまたは任意の組合せを指定できる。例えば、アプリケーションプロファイル34、50が指定できる他の送信パラメータは、アプリケーションプロファイル中のアプリケーションをサポートするために必要な呼出し時間経路の数、および各呼出し時間経路のデータレートである。
【0037】
別の例として、アプリケーションプロファイルは、アプリケーションへのサブチャンネルの割当も指定できる。例えば、可変データレートアプリケーションが単独で動いている場合を仮定すると、対応するアプリケーションプロファイルは、可変データレートアプリケーションに関連付けられたビットを搬送するために、利用可能なサブチャンネルを全て割当てる。更に、固定データレートアプリケーションが単独で動いている場合を仮定すると、対応するアプリケーションプロファイルは、固定データレートアプリケーションの具体的に必要とするデータレート(例えば、音声アプリケーションのための64kb/秒データレート)の達成に十分な利用可能サブチャンネルのサブセットを割当てる。これらの固定および可変データレートアプリケーションが並行して動いているとき、この2つのアプリケーションのセットに対応するアプリケーションプロファイルは、固定データレートアプリケーションへのいくつかのサブチャンネルの割当て、そして可変データレートアプリケーションへの他のサブチャンネルの割当を指定する。多分、一つ以上のサブチャンネルが、固定および可変データレートアプリケーションの両方へ割当てられることになる。
【0038】
アプリケーションプロファイルを、更に以下の5つの実施例のアプリケーションプロファイルAP#1〜AP#5によって説明するが、いずれも送受信器10、14で展開されて、その中に格納できる。これら実施例のプロファイルは、2種類のアプリケーション、つまり一つ以上の音声通話から構成される固定データレート音声アプリケーション、および可変データレートのインターネットアクセスウエブ閲覧(IAWB)アプリケーションが関与する5種類の異なる通信状態に関する送信特性を指定する。これらの実施例に対し、送受信器10、14間の接続(例えばアップストリーム)のトータルデータレートが1.532Mb/秒であって、IAWBアプリケーションが1Mb/秒から2Mb/秒の最小と最大のデータレート範囲を持っていると仮定する。音声アプリケーションの各音声通話は64kb/秒が必要である。一般的に、固定データレートアプリケーションはそのそれぞれが必要とするデータレートを受取り、可変データレートは接続の帯域幅容量の残りを受取る。
【0039】
アプリケーションプロファイル#1
アプリケーションプロファイル#1(以降、AP#1ともいう)は、一つだけの可変データレートアプリケーション、つまり1Mb/秒と2Mb/秒のデータレート範囲を持つIAWBアプリケーションのアプリケーションセットに対応する。従って、AP#1は、IAWBアプリケーションに関連付けられた信号を送信するために全接続容量(ここでは、1.532Mb/秒)を指定する。使用可能な全てのサブチャンネルが、IAWBデータストリームへ、各サブチャンネル上に1E−7BERを持つように割当てられる。R−Sコード語サイズは200バイトであり、そのインターリーバ深さは5コード語である。
【0040】
アプリケーションプロファイル#2
アプリケーションプロファイル#2(以降、AP#2ともいう)は、一つだけの固定データレートアプリケーション、つまり64kb/秒を必要とする音声電話(VT)アプリケーションのアプリケーションセットに対応する。従って、AP#2は、VTアプリケーションに関連付けられた信号を送信するために64kb/秒を指定する。64kb/秒を達成するのに十分なサブチャンネルのサブセットがVTデータストリームへ、各サブチャンネル上に1E−3BERを持つように割当てられる。コード化またはインターリーブ化はない。
【0041】
アプリケーションプロファイル#3
アプリケーションプロファイル#3(以降、AP#3ともいう)は、一つだけの固定データレートアプリケーション、具体的には、各通話が64kb/秒を必要とする別々の音声チャンネル上の2つの音声電話(VT)通話で構成される一つの音声アプリケーションのアプリケーションセットに対応する。従って、AP#3は、このVTアプリケーションに関連付けられた信号を送信するために128kb/秒(すなわち、2x64kb/秒)のデータレートを指定する。128kb/秒を達成するのに十分なサブチャンネルのサブセットがVTデータストリームへ、各サブチャンネル上に1E−3BERを持つように割当られる。この場合も、コード化またはインターリーブ化はない。
【0042】
アプリケーションプロファイル#4
アプリケーションプロファイル#4(以降、AP#4ともいう)は、異なる種類の2つのアプリケーション、具体的には、可変データレートIAWBアプリケーションおよび一つの固定データレートVTアプリケーションから成るアプリケーションセットに対応する。IAWBとVTアプリケーションに関連付けられた信号を送信するために、AP#4はデータレートとして、VTストリームのために64kb/秒を、そしてIAWBストリームのために1.468Mb/秒(1532kb/秒〜64kb/秒)を指定する。64kb/秒を達成するのに十分なサブチャンネルのサブセットがVTデータストリームへ、そのように割当てられる各サブチャンネル上に1E−3BERを持つように割当られる。1.468Mb/秒を達成するのに十分なサブチャンネルのサブセットがIAWBストリームへ、そのように割当てられる各サブチャンネル上に1E−7BERを持つように割当られる。IAWBストリームのために200バイトのR−Sコード語サイズがあり、そのインターリーバ深さは5コード語である。VTストリームに関してはコード化またはインターリーブ化がない。
【0043】
アプリケーションプロファイル#5
アプリケーションプロファイル#5(以降、AP#5ともいう)は、2つのアプリケーションつまり可変データレートIAWBアプリケーションと、各通話が64kb/秒を必要とする別々のチャンネル上の2つの音声電話通話で構成される一つの固定データレートVTアプリケーションとのアプリケーションセットに対応する。IAWBとVTアプリケーションに関連付けられた信号を送信するために、AP#5はデータレートとして、VTストリームのために128kb/秒を、そしてIAWBストリームのために1.404Mb/秒(1532kb/秒〜128kb/秒)を割付ける。128kb/秒を達成するのに十分なサブチャンネルのサブセットがVTデータストリームへ、そのように割当てられる各サブチャンネル上に1E−3BERを持つように割当られる。1.404Mb/秒を達成するのに十分なサブチャンネルのサブセットがIAWBストリームへ、そのように割当てられる各サブチャンネル上に1E−7BERを持つように割当られる。IAWBストリームのために200バイトのR−Sコード語サイズがあり、そのインターリーバ深さは5コード語である;この場合も、VTストリームに関してはコード化またはインターリーブ化がない。
【0044】
アプリケーション54が時間の経過とともにアクティブおよび非アクティブになる際に、遠隔DMT送受信器10とCO送受信器14は、格納されたアプリケーションプロファイル34、50を使用して、迅速に効率よく送信パラメータを変更し、それによって現在アクティブなアプリケーションの送信要件に適応する。現在アクティブなアプリケーションのセットへの変化が発生するときは常に、遠隔DMT送受信器10とCO送受信器14は、格納されたプロファイルのセット34、50から適切なアプリケーションプロファイルを選択する。一つの実施の形態では、アプリケーションプロファイルが現在アクティブなアプリケーションのセットに対して未だ存在しない場合、送受信器10、14の一方が適切なアプリケーションプロファイルを生成し、その新規のアプリケーションプロファイルを他方の送受信器との間で通信チャンネル18上で交換する。他の実施の形態では、送受信器10、14は、予め定めたアプリケーションプロファイルを用いて構成することができ、および/またはADSLシステム2の動作中にアプリケーションプロファイルを、プロファイルに対するそのような必要性が生じる際に動的に生成する。別の実施の形態では、アプリケーションプロファイルにおける送信パラメータは、初期化中に交換される。さらに別の実施の形態では、アプリケーションプロファイルにおける送信パラメータは、各送受信器10、14によって双方でローカルに生成される。
【0045】
図2は、遠隔DMT送受信器10の送信器22の具体例としての実施の形態を示し、異なる呼出し時間要件を持つ複数のアプリケーション54をサポートする2つの呼出し時間経路56、58を含む。CO送受信器14の送信器38は、送信器22と同等な経路と機能を備える。受信器26、42も同等な呼出し時間経路を備えるが、通信チャンネル18の上で受信した情報を復調するために送信器22、38のそれと反対の順序になっていて逆の動作を行う。
【0046】
複数の呼出し時間経路56、58を用いて、異なる呼出し時間要件を持つ異なるアプリケーションのビットストリームをADSL DMT送受信器10を介して送る。図2に、2つの異なるアプリケーション54''、54'''を示す。一つの具体例であるアプリケーション54''は、デジタルデータストリーム(例えば、ATM(非同期転送モード)データストリーム)であり、他方の具体例であるアプリケーションは音声電話アプリケーションである。追加のおよび/または異なるアプリケーションが使用できること、そしてデジタルデータおよび音声電話アプリケーションの使用は、単に本発明の原理を説明するだけのものであることを理解されたい。デジタルデータアプリケーション54''は、中程度量の呼出し時間(すなわち、ほぼ5m秒未満)を許容でき、インターリーブ化を有する呼出し時間経路56を介して送られる。低呼出し時間要件を持つ音声電話アプリケーション54'''は、インターリーブ化の無い他方の呼出し時間経路58を介して送られる。
【0047】
送信器22は、追加の、および/または異なる呼出し時間経路を持つことができる。例えば、一つの実施の形態では、ADSLシステム2は、デジタルデータおよび音声電話アプリケーションに加えてビデオアプリケーションを持つ。このビデオアプリケーションは、ATMデータアプリケーション54''の中程度の呼出し時間よりも高く、しかも音声電話アプリケーション54'''の低呼出し時間より高い呼出し時間を許容できる。この実施の形態のために、ADSLシステム2は、第3の異なる呼出し時間経路を設けることによってビデオアプリケーションの呼出し時間要件に適応できる。
【0048】
各呼出し時間経路56、58は、3つのブロック、すなわちMUXブロック60、フレーム化器/コード化器/インターリーバ(FCI)ブロックレイヤー64、64'、および変調器ブロック68を含む。MUXブロック60は、アクティブなアプリケーション54の信号ストリームを受信するための複数の入力と、呼出し時間経路56、58毎の出力とを有する。MUXブロック60は、デジタルデータアプリケーション54''の信号ストリームを第1呼出し時間経路56へ、そして音声データアプリケーション54'''の信号ストリームを第2呼出し時間経路58へ向ける。
【0049】
各FCIブロック64、64'(全体的には符号64)は、変調のためにビットのストリームを作成すること、受信した信号をフレームおよびスーパーフレームに変換すること、オーバヘッドチャンネル(すなわち、AOCおよびEOC)情報をフレームに加えること、そして該当する場合にコード化とインターリーブ化することに関連する機能性を提供する。各FCIブロック64によって行われる動作は、アプリケーション54''、54'''の種類、およびそのアプリケーションが取る呼出し時間経路56、58に依存する。
【0050】
第1呼出し時間経路56上で、FCIブロック64は、フレーマーブロック72、巡回冗長チェック(CRC)兼スクランブラー(SCR)ブロック76、フォワードエラー訂正(FEC)ブロック80(例えば、R−Sコード化)、およびインターリーブ化(INT)ブロック84を含む。第2呼出し時間経路58上で、FCIブロック64'は、フレーマーブロック76'、およびCRC兼SCRブロック80'を含む。FCIブロック64'を通る第2呼出し時間経路58は、第2経路58が音声ストリームにインターリーブ化またはコード化を行わないので、第1経路56とは異なる(すなわち、少ない)量の呼出し時間を持つ。
【0051】
変調器ブロック68は、DMT変調に関連する機能性を提供するとともに、直交振幅変調(QAM)エンコーダ88および逆高速フーリエ変換(IFFT)92を含む。QAMエンコーダ88は複数の入力を持ち、呼出し時間経路56、58から信号ストリームを受信して、それら信号ストリームを、変調のためにIFFT92へ送られることになる単一信号ストリームに組合せる。IFFT92は、QAMエンコーダ88から受信したビットを、通信チャンネル18の多数搬送波サブチャンネルに変調する。
【0052】
また、図2に示すのは、図1で説明した5つの具体例であるアプリケーションプロファイルAP#1〜AP#5である。アプリケーションプロファイル#1、#4および#5は、これらのプロファイルのそれぞれが、ATMデータストリームを特性付ける一つ以上の送信パラメータを指定するので、第1呼出し時間経路54のFCIブロック64につながっている。アプリケーションプロファイル#2、#3、#4および#5は、これらのプロファイルのそれぞれが音声ストリームを特性付ける一つ以上の送信パラメータを指定するので、第2呼出し時間経路58のFCIブロック64'につながっている。一つの実施の形態では、5つのアプリケーションプロファイルAP#1〜AP#5全ては、各プロファイルが通信チャンネル18のサブチャンネルへのビットの割当を特性付ける一つ以上の送信パラメータを規定するので、変調器ブロック68と通信している。
【0053】
アプリケーションプロファイルの格納および交換
予め定めたプロファイル
送受信器10、14が通信チャンネル18上でそのような通信を特性付けるアプリケーションプロファイルを用いて通信する前に、そのアプリケーションプロファイルは、適切なローカルメモリ30、46に格納される。一つの実施の形態では、各送受信器10、14が事前に設定される(例えば、ファクトリー設定)。すなわち、アプリケーションプロファイルがローカルメモリ30、46に格納された後に、送受信器10、14がADSLシステム2へ組込まれる。
【0054】
アプリケーションセットの最初の出現時に交換および格納されるプロファイル
別の実施の形態では、送受信器10、14は通信チャンネル18上でアプリケーションプロファイルを交換し、次にアプリケーションプロファイルを格納する。図3は、プロファイル交換を完行するために使用されるプロセスの実施の形態を示す。このプロセスを説明するために、遠隔DMT送受信器とCO送受信器10、14は、図1のAP#1に従うインターネットアクセスウエブ閲覧(IAWB)アプリケーションに関連付けられた信号を交換していることを仮定すると、このとき新規の音声アプリケーションが起動され、結果として新規アプリケーションプロファイルが必要になる。一般的に、遠隔の送受信器10またはCO送受信器14のどちらも新規アプリケーションプロファイルの交換のイニシエータとして働くことができる。より具体的には、遠隔DMT送受信器10の送信器22または受信器26のいずれも、あるいはCO送受信器14の送信器38または受信器42のいずれも、新規アプリケーションプロファイル交換を始動できる。
【0055】
IAWB信号の交換中に、新規音声アプリケーション54の起動が検出される(ステップ100)。送受信器10、14、またはDSLシステム2の他の構成要素(例えば、中で送受信器10、14が動作するコンピュータシステム)のいずれも、この検出を行える。この新規音声アプリケーション54の検出により、アクティブなIAWBアプリケーションと新規の音声アプリケーションとの組合せに対するアプリケーションプロファイルが既に存在するか否かの決定が成される(ステップ104)。この場合も、送受信器10、14、またはDSLシステム2の別の構成要素がこの決定を行ってもよい。そのようなアプリケーションプロファイルが存在しないとき、IAWBアプリケーションと新規音声アプリケーションとに関連付けられた信号の並行送信に適応する送信パラメータが決定される(ステップ108)。注目すべきは、アクティブなアプリケーションの停止も、結果として現在アクティブなアプリケーションのユニークセットをもたらし、目下はそれに対するアプリケーションプロファイルが存在しないことである。そのような場合には、停止後に現在アクティブである一つ以上のアプリケーションに関連付けられた信号を送信するために、同じように送信パラメータが決定される(ステップ108)。
【0056】
これらの送信パラメータは、新規アプリケーションプロファイルを表す。この新規アプリケーションプロファイルの一つの実施の形態は、先に図1で説明したように、AP#4が一つのIAWBアプリケーションと一つの音声アプリケーションとをサポートするので、アプリケーションプロファイル#4(AP#4)であってもよい。新規のアプリケーションプロファイルに識別子が連係する。例えば、この新規のアプリケーションの始動の時点で、既に3つの格納アプリケーションプロファイルがある場合、新規アプリケーションプロファイルは4番目になる。CO送受信器14でのアプリケーションプロファイルと遠隔DMT送受信器10でのアプリケーションプロファイルとの間が一対一で対応するので、新規アプリケーションプロファイルを識別するために、同一識別子が遠隔DMT10とCO送受信器14とによって使用されることになる。
【0057】
次に、送受信器10、14の一方が、他方の送受信器14、10との間で新規アプリケーションプロファイルを交換し、新規アプリケーションプロファイルに連係する送信パラメータを通信チャンネル18上でAOCまたはEOCチャンネルを使用して送る(ステップ112)。一つの実施の形態では、この新規アプリケーションプロファイルの送信は、新規のアプリケーションプロファイルの使用を要請するメッセージとして動作する。
【0058】
全初期化中に交換および格納されるプロファイル
別の実施の形態では、送受信器10、14はG992.2またはG992.1 ITU規格のITU準拠「全初期化」プロトコル、または同様の初期化プロトコルを使用して、相互に新規アプリケーションプロファイルを交換する、それは、送受信器間で送信情報を調整および交換するために、送受信器10、14間でのアプリケーションデータ通信を中断する。全初期化プロトコルの使用は、リンクにほぼ10秒の遮断を引起す。この10秒の中断は、現在アクティブなアプリケーションのユニークセットの最初の出現時に一度だけ発生し、ユニークセットに対して新規アプリケーションプロファイルが交換され、それに続いて格納される。別の実施の形態では、初期化時に送受信器10、14は、サポートされるべきアプリケーションを取決め、そしてアクティブなアプリケーションの可能な組合せの全てに対応するプロファイルを交換する。
【0059】
アプリケーションプロファイルが交換された後に送受信器10、14はアプリケーションプロファイルをローカルメモリ30、46に格納する(ステップ116)。その結果、送受信器10、14がAP#1(図1)に従い通信している間に、新規音声アプリケーションが起動されるとき、以下詳細に説明するように、通信チャンネル18上でのアプリケーションプロファイルの交換は実行されないので、つまり交換は不必要であるので、格納されているAP#4(図1)への移行が迅速になされる。
【0060】
アプリケーションプロファイルにおけるパラメータのローカル生成
送受信器10、14間での新規アプリケーションプロファイルの交換において、送受信器10、14は、新規アプリケーションプロファイル全ての送信パラメータを通信チャンネル18上で交換する必要はない。一つの実施の形態では、各送受信器10、14は、一つ以上の送信パラメータ(例えば、アプリケーションへのサブチャンネルの割当て)をローカルで展開でき、ローカルで展開されたパラメータを適切なアプリケーションプロファイルに格納できる。そのような送信パラメータのローカル展開は、アプリケーションプロファイルを初めて展開または更新するときに発生する。
【0061】
例えば、送受信器10、14が2つのアプリケーション、すなわちデジタルデータアプリケーションおよび音声アプリケーションを動かしていることを仮定する。送受信器10、14は、接続がこれらの2つのアプリケーションをサポートすることを指し示す情報を相互に交換する。この情報の交換に基づき、各送受信器10、14は、2つのアプリケーションに対応するアプリケーションプロファイルに対する一つ以上の送信パラメータをローカルで生成する。両送受信器10、14はこれらの送信パラメータを双方で生成するので、送受信器10、14は、ローカルで生成された送信パラメータを相互に通信チャンネル18上で交換しない。フレーム化、コード化、およびインターリーブ化に関連するパラメータのような他の送信パラメータは、それでも送受信器10、14間の情報交換で決定される。
【0062】
送信パラメータを双方で生成することは、アプリケーションプロファイルを初めて展開または更新する際に長々とした交換メッセージを減らしたり、削除するという利点がある。例えば、チャンネル条件の変化がチャンネル18の総データレートの減少をもたらし、その結果、幾つかのサブチャンネルに対するビット容量がさらに低下する場合、普通は、送受信器10、14は、この影響を受けたこれらサブチャンネルを指定する全てのアプリケーションプロファイルに対する更新を相互間で交換する必要があろう。アプリケーションプロファイル中の送信パラメータを双方で生成することによって、送受信器10、14は、更新情報を相互に交換する必要もなく、アプリケーションプロファイルを個々でローカルに更新できる。
【0063】
以下の3つの実施例は、2つのアプリケーション、ここではデジタルアプリケーションおよび音声アプリケーションへのサブチャンネルの割当に適用されるように双方で生成されたパラメータの使用を説明する。各実施例は、アプリケーションへの割当サブチャンネルを送信パラメータとして指定するアプリケーションプロファイルを示す。(1)デジタルデータアプリケーションが単独で動く場合の一つのアプリケーションプロファイル、(2)音声アプリケーションが単独で動く場合の別のアプリケーションプロファイル、および(3)デジタルデータおよび音声アプリケーションが並行して動く場合の別のアプリケーションプロファイル。
【0064】
第1アプリケーションプロファイルに対して、送受信器10、14のそれぞれは、接続を確立した後に、利用可能なデータレートおよび使用可能なサブチャンネル全体をデジタルデータアプリケーションへローカルで割当てる。送受信器10、14によって双方で生成されない他の送信パラメータ、例えば、フレーム化、コード化、およびインターリーブ化に関連付けられたパラメータは、送受信器10、14間の情報交換で決定される。
【0065】
第2アプリケーションプロファイルに対して、送受信器10、14は、接続のデータレート能力には無関係に、64kb/秒を音声アプリケーションへ割当てる。送受信器10、14はそれぞれ、所定の技法(例えば、規格で規定された)を使用して、音声アプリケーションの64kb/秒を搬送するよう割当てられるサブチャンネルを選択する。音声アプリケーションに対してサブチャンネルを選択するために、利用可能なサブチャンネルを介して繰返すスキーム例は、(1)最低周波数を持つサブチャンネルからより高い周波数を持つサブチャンネルへ上昇すること;(2)最高周波数を持つ利用可能なサブチャンネルからより低い周波数のサブチャンネルへ下降すること;(3)最小ビット数を持つサブチャンネルからより高いビット数を持つサブチャンネルへ上昇すること;および(4)最多ビット数を持つサブチャンネルからより少ないビット数を持つサブチャンネルへ下降することを含む。この場合も、送受信器10、14は、予め定めた様式で、または初期化中の交換時に決定されるように、フレーム化、コード化、およびインターリーブ化できる。
【0066】
第3アプリケーションプロファイルに対して、送受信器10、14はそれぞれ、64kb/秒を音声アプリケーションへ、そして残りのデータレートをデジタルデータアプリケーションへ割当てる。第2アプリケーションプロファイルと同様に、各送受信器10、14は所定の技法を用いて、音声アプリケーションを搬送するために割当てられるサブチャンネルを選ぶ(最高または最低周波数の、または、最小または最大コンステレイションのサブチャンネル)。また、フレーム化、コード化、およびインターリーブ化は、先に説明したように、予め定められるか、または交換中に決定される。
【0067】
送受信器10、14は、ローカルで生成されるアプリケーションプロファイルに対して調整のとれた番号付けスキームを用いる(例えば、#6=デジタルデータアプリケーションのみ、#7=音声アプリケーションのみ、#8=デジタルデータと音声アプリケーションを一緒に)。番号付けスキームは予め定めることもでき、さもなければ、送受信器10、14が番号付けスキームを通信チャンネル18上で交換できる。
【0068】
本発明の原理は、2つを超えるアプリケーションを持つ実施の形態まで拡張する。そのような実施の形態については、可能なアクティブアプリケーションのそれぞれに対して、個々におよび組合せで、対応するアプリケーションプロファイルを生成するために、送受信器10、14は、アプリケーションプロファイル送信パラメータおよびその対応するパラメータ値を選択するために所定ルールに追従する。
【0069】
格納アプリケーションプロファイルへの高速移行
DSLシステム2が動作している間は、アプリケーションを時間の経過とともに起動することも、停止することもできる。アクティブなアプリケーションにおけるこの変化(すなわち、アプリケーションの起動または停止による)は、送受信器10(または受信器)の知るところとなるので、ITU G922.1およびG922.2規格に規定されたような高速再調整で識別される必要はない。アプリケーションプロファイルは、チャンネル条件の変化ではなくアクティブなアプリケーションの変化により変えられているので、高速再調整で行われるように、エコーキャンセラ、イコライザ、などのレトリーバ機能を再調整する要件はない。
【0070】
その後の使用のためにアプリケーションプロファイルを格納することにより、別のアプリケーションプロファイルへ移行するために送受信器10、14によって使用される送受信器10、14間のハンドシェイクが短縮されるというのは、送受信器は新規のアプリケーションプロファイルを作成し、交換し、そして格納するプロセスを経る必要が無いからである。
【0071】
遠隔DMT送受信器10またはCO送受信器14、およびその送受信器10、14の受信器または送信器のいずれも移行を始動できる。格納アプリケーションプロファイルが同定され、それにより送受信器は、どのプロファイルを使用するべきかを他方へ単に通知する。アプリケーションプロファイルに連係する情報を、再送信する必要はない。一つの実施の形態では、格納アプリケーションプロファイルは番号が付される。従って、一方の送受信器は、単純に所望のアプリケーションプロファイルの番号を他方の送受信器に対して指定する。
【0072】
受信器始動の高速アプリケーションプロファイル移行
図4は、格納アプリケーションプロファイルへ移行するために、遠隔DMT送受信器10およびCO送受信器14によって使用される受信器始動プロセスの実施の形態を示す。プロセスは遠隔DMT送受信器10の受信器26の観点から示されるけれども、CO送受信器14の受信器42も移行を始動できることは言うまでもない。一つの実施の形態では、現在アクティブなアプリケーションのセットに変化が生じ(ステップ140)、別のアプリケーションプロファイルへの移行を必要とする。変化は、起動または停止されたアプリケーションの、または追加の帯域幅を必要とする既存のアプリケーションの(例えば、これまで一つだけの音声チャンネルを持っていた音声アプリケーションに対して第2音声チャンネルが開く)結果であってもよい。
【0073】
アクティブなアプリケーションの変化の後に、受信器26は、どのアプリケーションプロファイルが現在アクティブなアプリケーションのセットに対応するかを決定する(ステップ142)。受信器26は、AOCまたはEOCチャンネルを使用して、この現在アクティブなアプリケーションのセットに基づき、送信に使用されるべき格納アプリケーションプロファイルを指定するメッセージを送信器38へ送る(ステップ148)。このメッセージは受信器26からのリクエストに対応する。例えば、送受信器10、14がAP#1(図1)に従い通信しているときに、音声通話が起動されるとき、受信器26はリクエストを送信機38へ送ってAP#4(図1)への移行を要請する。一つの実施の形態で、リクエストは、数字4でAP#4を同定する。
【0074】
リクエストを受信後、送信器38は、要請された格納アプリケーションプロファイルが送信のために使用されようとしていることを受信器26に合図するために、そしてその使用を同期化するために、フラグとしての反転同期シンボルを送信する(ステップ152)。送信器38は反転同期シンボルに続いて、第1フレーム上または所定数のフレーム上での送信のための指定アプリケーションプロファイルの格納コピーを使用する(ステップ154)。この反転同期化信号は、送信器38によって送られる「進行」メッセージに対応する。受信器26は、反転同期シンボルを検出し(ステップ156)、そして送信器38と同期して、反転同期シンボルの後に受信される第1フレーム上または所定の数のフレーム上へ指定アプリケーションプロファイルを使用する。
【0075】
反転同期シンボルは同期シンボルであり、その中でQAM信号中の位相情報が180度偏移されている。180度以外の同期シンボルの位相偏移も「進行」メッセージのために使用できる。同期シンボルは、ANSIおよびITU規格に69シンボル毎に送信される固定の非データ搬送のDMTシンボルとして定義されている。同期シンボルは、全てのDMT搬送波を、基本的QPSK(2ビットQAM)変調を使用して予め定めた疑似ランダム数字列で変調することによって構築される。送受信器初期化プロセス中に使用されるこの同期シンボル信号は、同期シンボルの検出、そして非常にノイズの多い環境でさえ反転同期シンボルの検出を可能にする特別な自己相関性質を有する。
【0076】
チャンネルノイズに対して全く弱みを持たないため、殆ど難攻不落の送受信器10、14による新規のアプリケーションプロファイルの使用を同期化するために反転同期シンボルを使用することは、EOCまたはAOCチャンネルの使用よりもさらに強固なものとする。対照的に、EOCまたはAOCチャンネル上で送られるメッセージは、通信チャンネル18上のノイズによって反転同期シンボルよりも容易に悪化されてしまう。これらのオーバヘッドチャンネルは、フレーマー72でデータストリームに多重化されるので、有限数のDMTサブチャンネル上で直交振幅変調により送信される。通信チャンネル18上で発生するインパルスノイズまたは他のノイズは、EOCまたはAOCチャンネルメッセージにビットエラーを引起すことがあり、メッセージを失わせることになる。反転同期シンボルより大きい、ノイズへのEOCまたはAOCチャンネルの感度にもかかわらず、一つの実施の形態では、EOCまたはAOCチャンネルを用いて、「進行」メッセージを通信する。
【0077】
格納アプリケーションプロファイルへの受信器始動移行は、適切なアプリケーションプロファイルが格納されていて、交換される必要がないので、すばやく完了し、2つだけのメッセージ(リクエストと「進行」メッセージ)の交換が必要になる。この場合も、「進行」メッセージとして反転同期シンボルを使用することにより、送受信器10、14間の同期化をノイズ環境で強固なものにする。
【0078】
送信器始動高速アプリケーションプロファイル移行
図5は、格納アプリケーションプロファイルへ移行するために、遠隔DMT送受信器10およびCO送受信器14によって使用される送信器始動プロセスの実施の形態を示す。プロセスは遠隔DMT送受信器10の送信器22の観点から示されているが、CO送受信器14の送信器38も移行を始動できることは言うまでもない。以前のように、現在アクティブなアプリケーションのセットの変化が生じ(ステップ160)、別のアプリケーションプロファイルへの移行が必要になる。この場合も、変化は、起動または停止されたアプリケーションの、または追加の帯域幅を必要とする既存のアプリケーションの(例えば、これまで一つだけの音声チャンネルを持つ音声アプリケーションに対して第2音声チャンネルが開く)結果であってもよい。
【0079】
アクティブなアプリケーションの変化の後に、送信器22は、どのアプリケーションプロファイルが現在のアプリケーションのセットに対応するかを決定する(ステップ162)。送信器22は、AOCまたはEOCチャンネルを使用して、現在アクティブなアプリケーションのセットに基づき、送信に使用されるべき格納アプリケーションプロファイルを指定するメッセージを受信器42へ送る(ステップ168)。メッセージは、適切な格納アプリケーションプロファイルを、番号によって、またはその格納アプリケーションプロファイルにユニークに関連付けられたいずれか他の識別番号によって識別できる。このメッセージは送信器22からのリクエストに対応する。リクエストを受信後、受信器42は、「認可」または「否認」のメッセージを送信器22へ戻す(ステップ172)。
【0080】
送信器22が「認可」メッセージを受信した場合、送信器22は、要請された格納アプリケーションプロファイルが送信のために使用されるであろうことを受信器42に合図するフラグとして反転同期シンボルを送信する(ステップ176)。次に、送信器22は反転同期シンボルに続いて、第1フレーム上、または所定数のフレーム上での送信のために指定されたアプリケーションプロファイルの格納コピーを使用する(ステップ178)。この反転同期化信号は、送信器22によって送られる「進行」メッセージに対応する。受信器42は、反転同期シンボル(「進行」)を検出し(ステップ180)、そして送信器22と同期して、反転同期シンボルに続く第1フレーム上、または所定数のフレーム上の受信のために指定されたアプリケーションプロファイルを使用して通信を開始する。
【0081】
格納アプリケーションプロファイルへの送信器始動移行は、適切なアプリケーションプロファイルが格納されていて、交換される必要がないのですばやく完了し、送信器始動時に3種類のメッセージ(リクエスト、否認、または認可メッセージ、および「進行」メッセージ)の交換が必要になる。この場合も、「進行」メッセージとして反転同期シンボルを使用することにより、送受信器10、14間の同期化をノイズ環境で強固なものにする。
【0082】
別の実施の形態で、送受信器10、14は、ITU G922.2規格に記載の「高速再調整」プロトコル、または同様な高速初期化プロトコルを使用して格納アプリケーションプロファイルへ移行する、それは、送受信器間で送信情報を調整および交換するために、送受信器10、14間のアプリケーションデータ通信を中断する。高速再調整は1〜2秒の送受信器10、14間の切断を引起す。
【0083】
アプリケーションプロファイルの更新
一定の状況下で、格納アプリケーションプロファイル34(および対応するアプリケーションプロファイル50)の内容は、更新を必要とすることがある。例えば、通信チャンネル18条件は変化することがあり(例えば、電話機がフックから外れる)、それはチャンネル18のデータレート能力の増加または減少、およびチャンネル18の特定サブチャンネルの異なるビット容量をもたらすことになる。送受信器10、14は、影響を受けるサブチャンネルのビット容量を指定する全ての格納アプリケーションプロファイルを更新することが必要になる。一つの実施の形態で、各送受信器10、14は更新情報を相互に交換することなく、影響を受けたアプリケーションプロファイルの格納コピーをローカルで更新する。別の実施の形態では、送受信器10、14は更新情報を相互に交換する。
【0084】
本発明を、特定の好ましい実施の形態を参照して示し、かつ説明したが、形態および詳細における種々の変更が、以下の特許請求の範囲によって明確にされた本発明の精神と範囲から逸脱することなく、成され得ることは、この技術に精通した者は理解するであろう。例えば、本発明はDMT変調に関して説明したが、本発明の原理は、DWMT(ディスクリート・ウェーブレット・マルチトーン)変調へも適用される。また、ATMパケットの代りにIPフレームを使用して、データを運ぶことができる。更に、本明細書はADSLで発明を説明したが、いずれの形態のDSL、すなわちVDSL、SDSL、HDSL、HDSL2またはSHDSLも使用できることは言うまでもない。本発明の原理は、アプリケーションの複数セットをサポートするいずれのDMT通信システムへも適用され、ここで、アプリケーションは時間の経過とともに起動および停止される。先に説明したいくつかの実施の形態はインターネットおよび音声アプリケーションを含んでいるが、本発明の原理は、DSLシステム上で運ばれるアプリケーションのどのような組合せ(例えば、在宅勤務、ビデオ会議、高速インターネットアクセス、ビデオオンデマンド)にも適用されることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
本発明は、付属する特許請求の範囲に詳細に指示される。上記で説明した本発明の利点だけでなく、本発明の更なる利点も、添付図面に関連させて以下の説明を参照することによってよりよく理解できる。ここで、
【図1】図1は、本発明の原理に従って、中央局送受信器と通信できる遠隔DMT(ディスクリート・マルチトーン変調)送受信器を含み、アプリケーションプロファイルを使用して多数のアプリケーションをサポートする、デジタル加入者線多数搬送波伝送システムの実施の形態のブロック図であり;
【図2】図2は、異なる呼出し時間要件を持つ多数のアプリケーションをサポートするために2つの呼出し時間経路を有する遠隔DMT送受信器の送信器の実施の形態のブロック図であり;
【図3】図3は、中央局と遠隔DMT送受信器でアプリケーションプロファイルを初めて交換および格納するためのプロセスの実施の形態のフロー図であり;
【図4】図4は、格納アプリケーションプロファイルへ移行するために遠隔DMT送受信器およびCO送受信器によって使用される受信器始動プロセスの実施の形態のフロー図であり;および
【図5】図5は、格納アプリケーションプロファイルへ移行するために遠隔DMT送受信器およびCO送受信器によって使用される送信器始動プロセスの実施の形態のフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信チャンネル上で相互に通信できる2台の送受信器を含む多数搬送波変調システムにおいて、複数のアプリケーションをサポートするための方法であって、以下のステップを含むもの:
複数のアプリケーションプロファイルを定義するステップであって、各アプリケーションプロファイルは一つ以上のアプリケーションのユニークセットに対応し、そして前記通信チャンネル上で各アプリケーションに関連付けられた情報を送信するためにそのユニークアプリケーションセット中の各アプリケーションのための少なくとも一つの送信パラメータを指定し;
前記複数のアプリケーションプロファイルを前記送受信器の一つで格納するステップ;
現在アクティブなアプリケーションのセットに対応する第1格納アプリケーションプロファイルに従って情報を送信するステップ;
前記現在アクティブなアプリケーションのセットの変化に応答して、前記変化した現在アクティブなアプリケーションのセット中の前記一つ以上のアプリケーションに対応する第2格納アプリケーションプロファイルを選択するステップ;および
前記送受信器を再調整するために前記送受信器間の通信を中断することなく、前記第2格納アプリケーションプロファイルに従い情報を送信するステップへ移行するステップ。
【請求項2】
請求項1の方法であって、更に、前記第2アプリケーションプロファイルをその後の通信のために使用する前記アプリケーションプロファイルとして識別するメッセージを受信するステップを含むもの。
【請求項3】
請求項1の方法であって、更に、前記第2アプリケーションプロファイルを前記送受信器間でのその後の通信のために使用する前記アプリケーションプロファイルとして識別するメッセージを、前記送受信器の一つへ送信するステップを含むもの。
【請求項4】
請求項1の方法であって、更に、前記第2アプリケーションプロファイルへの移行を要請するメッセージを、前記送受信器の一つへ送信するステップを含むもの。
【請求項5】
請求項4の方法であって、更に、前記第2アプリケーションプロファイルへ移行する前記リクエストを認可する返答メッセージを、その一つの送受信器から受信するステップを含むもの。
【請求項6】
請求項5の方法であって、更に、前記認可を認知し、前記第2アプリケーションプロファイルの使用を同期化する別のメッセージをその一つの送受信器へ送るステップを含むもの。
【請求項7】
請求項5の方法であって、前記他のメッセージが、反転同期シンボルであるもの。
【請求項8】
請求項4の方法であって、更に、前記リクエストを認可し、前記第2アプリケーションプロファイルの使用を同期化する返答メッセージを、その一つの送受信器から受信するステップを含むもの。
【請求項9】
請求項8の方法であって、前記返答メッセージが、反転同期シンボルであるもの。
【請求項10】
請求項1の方法であって、更に、前記送受信器の完全初期化を行なうことなく、前記通信チャンネル上で他方の送受信器へ前記アプリケーションプロファイルの少なくとも一つを送信するステップを含むもの。
【請求項11】
請求項1の方法であって、更に、前記送受信器間で前記アプリケーションプロファイルの一つを交換するために前記送受信器の完全初期化を行うステップを含むもの。
【請求項12】
請求項1の方法であって、更に、アクティブなアプリケーションのユニークセットの初めての出現により前記アプリケーションプロファイルの一つを生成するステップ、および前記生成されたアプリケーションプロファイルを、そのユニークアプリケーションセットに関連付けるステップを含むもの。
【請求項13】
請求項1の方法であって、更に、前記格納アプリケーションプロファイルの一つに対する前記送信パラメータの少なくとも一つを、前記送受信器のそれぞれによってローカルで生成するステップを含むもの。
【請求項14】
請求項1の方法であって、前記送受信器は、前記格納アプリケーションプロファイルで予め構成されるもの。
【請求項15】
請求項1の方法であって、前記格納アプリケーションプロファイルの一つにおける各アプリケーションに対して指定される前記少なくとも一つの送信パラメータは、送信データレート、ダウンストリームとアップストリーム送信のために割当てられるサブチャンネル、前記サブチャンネルのそれぞれへ割当てられるビット数、パフォーマンスマージン、前記サブチャンネルのそれぞれに対する利得微調節、インターリーブ深さ、最小と最大QAMコンステレーションサイズ、巡回前置部分の長さ、コード語サイズ、フレーム化モード、およびトレリスコードの少なくとも一つであるもの。
【請求項16】
請求項1の方法であって、前記第1格納アプリケーションプロファイルは、ウエブ閲覧アプリケーションに関連付けられた信号の送信を特性付け、そして前記第2格納アプリケーションプロファイルは、音声電話アプリケーションおよび前記ウエブ閲覧アプリケーションに関連付けられた信号の並行送信を特性付けるもの。
【請求項17】
通信チャンネル上で相互に通信できる送受信器を含む多数搬送波変調システムにおいて、前記送受信器間でアクティブである多数のアプリケーションをサポートするための方法であって、以下のステップを含むもの:
前記通信チャンネル上での情報の送信を特性付けるための複数のアプリケーションプロファイルを展開するステップ;
各アプリケーションプロファイルを、前記送受信器間でアクティブになり得る一つ以上のアプリケーションのユニークセットに関連付けるステップ;
前記アプリケーションプロファイルを前記送受信器で格納するステップ;
現在アクティブなアプリケーションのセットに対応する第1格納アプリケーションプロファイルに従って前記通信チャンネル上で情報を送信するステップ;
前記送受信器間でアクティブである前記現在アクティブなアプリケーションのセットにおける変化に応答して、前記変化した現在アクティブなアプリケーションのセットに対応する、前記アプリケーションプロファイルのうちの第2のアプリケーションプロファイルを取出すステップ;および
前記第2アプリケーションプロファイルに従って前記通信チャンネル上で情報を送信するステップへ移行するステップ。
【請求項18】
請求項17の方法であって、前記ステップは、前記送受信器を再調整するために前記送受信器間の通信を中断することなくなされるもの。
【請求項19】
請求項17の方法であって、前記ステップは、前記送受信器を再調整して、前記第2格納アプリケーションプロファイルに従って通信するステップを含むもの。
【請求項20】
通信チャンネル上で相互に通信できる送受信器を含む多数搬送波変調システムにおいて、複数のアプリケーションをサポートするための方法であって、以下のステップを含むもの:
複数のアプリケーションプロファイルを定義するステップであって、各アプリケーションプロファイルは一つ以上のアプリケーションのユニークセットに対応し、そして前記通信チャンネル上で各アプリケーションに関連付けられた情報を送信するためにそのユニークアプリケーションセット中の各アプリケーションに対する少なくとも一つの送信パラメータを指定し;および
前記複数のアプリケーションプロファイルを前記送受信器の一つで格納するステップ。
【請求項21】
通信チャンネル上で通信する送受信器を含む多数搬送波変調システムにおいて、複数のアプリケーションをサポートするための方法であって、以下のステップを含むもの:
複数のアプリケーションプロファイルを定義するステップであって、各アプリケーションプロファイルは一つ以上のアプリケーションのユニークセットに対応し、前記通信チャンネル上で各アプリケーションに関連付けられた情報を送信するためにそのユニークアプリケーションセット中の各アプリケーションに対する少なくとも一つの送信パラメータを指定し;
前記複数のアプリケーションプロファイルを前記送受信器で格納するステップ;
現在アクティブなアプリケーションのセットに対応する第1格納アプリケーションプロファイルに従って情報を送信するステップ;
前記現在アクティブなアプリケーションのセットにおける変化に応答して、前記変化した現在アクティブなアプリケーションのセットに対応する第2格納アプリケーションプロファイルを選択するステップ;および
前記送受信器を再調整する必要なく、前記第2格納アプリケーションプロファイルに従い情報を送信するステップへ移行するステップ。
【請求項22】
請求項21の方法であって、更に、前記第2アプリケーションプロファイルをその後の通信のために使用する前記アプリケーションプロファイルとして識別するメッセージを送信するステップを含むもの。
【請求項23】
請求項21の方法であって、更に、前記第2アプリケーションプロファイルをその後の通信のために使用する前記アプリケーションプロファイルとして識別するメッセージを受信するステップを含むもの。
【請求項24】
通信チャンネル上で通信する送受信器を含む多数搬送波変調システムにおいて、複数のアプリケーションをサポートするための方法であって、以下を含むもの:
複数のアプリケーションプロファイルを定義するステップであって、各アプリケーションプロファイルは一つ以上のアプリケーションのユニークセットに対応し、前記通信チャンネル上で各アプリケーションに関連付けられた情報を受信するためにそのユニークアプリケーションセット中の各アプリケーションに対する少なくとも一つの受信パラメータを指定し;
前記複数のアプリケーションプロファイルを前記送受信器で格納するステップ;
現在アクティブなアプリケーションのセットに対応する第1格納アプリケーションプロファイルに従って情報を受信するステップ;
前記現在アクティブなアプリケーションのセットにおける変化に応答して、前記変化した現在アクティブなアプリケーションセットに対応する第2格納アプリケーションプロファイルを選択するステップ;および
前記送受信器を再調整する必要なく、前記第2格納アプリケーションプロファイルに従い情報を送信するステップへ移行するステップ。
【請求項25】
請求項24の方法であって、更に、前記第2アプリケーションプロファイルをその後の通信のために使用する前記アプリケーションプロファイルとして識別するメッセージを送信するステップを含むもの。
【請求項26】
請求項24の方法であって、更に、前記第2アプリケーションプロファイルをその後の通信のために使用する前記アプリケーションプロファイルとして識別するメッセージを受信するステップを含むもの。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−61234(P2008−61234A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212849(P2007−212849)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【分割の表示】特願2001−524318(P2001−524318)の分割
【原出願日】平成12年9月15日(2000.9.15)
【出願人】(500167917)アウェア, インコーポレイテッド (39)
【Fターム(参考)】