説明

多数個取り基板

【課題】クラックが生じる可能性を低減できる多数個取り基板を提供する。
【解決手段】基板として取り出されるべき基板領域2a〜2oが複数形成された多数個取り基板1であって、基板領域2a〜2oには発熱体6が設けられており、基板領域2a〜2oの一辺を除く周囲の辺には空隙3が形成されている。これにより、発熱体6が設けられた部位と、発熱体6が存在しない部位との間での熱応力の発生が抑制される。この結果、多数個取り配線基板1にクラックが生じる可能性を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板として取り出されるべき基板領域が複数形成された多数個取り基板に関する。
【背景技術】
【0002】
温度ヒューズ、ガスセンサ等に用いられる基板は、一般に、多数個取り基板を個片化することによって作製される(例えば、特許文献1参照)。この多数個取り基板は、基板として取り出されるべき基板領域が複数形成されている。この基板領域には、発熱体が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−010103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の多数個取り基板では、個片化する前に、発熱体が所望の性能を有しているか否か、検査する必要がある。具体的には、基板領域に設けられた発熱体を、短時間のうちに所望の温度に上昇させることによって、発熱体が所望の性能を有しているか否かを検査する。しかしながら、基板領域に設けられた発熱体を発熱させると、多数個取り基板において、発熱体が設けられた部位と発熱体が存在しない部位との間で熱応力が発生し、クラックが生じる可能性があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、クラックが生じる可能性を低減できる多数個取り基板に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明における多数個取り基板は、基板として取り出されるべき基板領域が複数形成された多数個取り基板であって、前記基板領域には発熱体が設けられており、前記基板領域の一辺を除く周囲の辺には空隙が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多数個取り基板は、クラックが生じる可能性を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る多数個取り配線基板の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1中に示したAの部分を拡大した図である。
【図3】図2中に示した切断線I−Iに沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る多数個取り配線基板1の概略構成を示す平面図である。図1に示すように、多数個取り配線基板1は、基板として取り出されるべき基板領域2a〜2oが、縦横の並びに複数配列形成されている。なお、図1では、基板領域2a〜2oが15個形成されている例について図示したが、これに限定されない。すなわち、多数個取り基板1に形成されるべき基板領域の数については、任意である。
【0011】
ここで、以下では、基板領域を説明する際、特に区別する必要のある場合にのみ、例えば、基板領域2aのように、それぞれを区別するための英小文字を付して説明し、特に区別する必要がない場合、あるいは、総称する場合には、例えば、基板領域2のように、英小文字を付さずに説明する。
【0012】
多数個取り配線基板1は、基板領域2の一辺を除く周囲の辺に空隙3が形成されている。空隙3が形成されている理由については後述する。なお、空隙3の幅や形状については任意である。
【0013】
また、多数個取り配線基板1は、基板領域2の少なくとも一辺の一部に切欠4が形成されていることが好ましい。ここで、この切欠4は、基板領域2の表面を切り欠いた溝である。本実施形態では、基板領域2の一辺の一部に2個の切欠4が形成されているが、これに限定されない。なお、空隙3と同様、切欠4も幅、形状、数については任意である。切欠4が形成されているので、分割ラインCに沿って基板領域2を基板として容易に取り出すことができる。なお、切欠4は、例えば、金型、レーザ等により形成される。
【0014】
なお、切欠4の代わりに、基板領域2を貫く切抜が形成されていてもよい。
【0015】
ここで、多数個取り配線基板1から取り出した基板は、例えば、温度ヒューズ、ガスセンサ用の基板として用いられる。
【0016】
図2は、図1中に示したAの部分を拡大した図である。図3は、図2中に示した切断線I−Iに沿って切断した断面図である。
【0017】
図2に示すように、基板領域2f(2)には、載置部5が設けられている。例えば、基板がガスセンサ用の基板として用いられる場合、載置部5は、ガス感応体(例えば、触媒、金属酸化物半導体等)が載置されるための役割を担うことになる。
【0018】
また、図3に示すように、多数個取り配線基板1は、第1絶縁層11と、第1絶縁層11に積層された第2絶縁層12とを含んでいる。第1絶縁層11および第2絶縁層12は、例えば、セラミック、シリコン、ガラス等の絶縁性材料からなるが、特に、セラミックからなるのが好ましい。セラミックは、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体、ガラスセラミック焼結体等である。
【0019】
なお、図3では、多数個取り基板1は、第1絶縁層11および第2絶縁層12の2つの絶縁層を含んでいる例について図示したが、これに限定されない。すなわち、多数個取り基板1は、任意の数の絶縁層を含んでいてもよい。
【0020】
また、第1絶縁層11の上面には、発熱体6が設けられている。すなわち、発熱体6は、第1絶縁層11と第2絶縁層12との間に埋設されている。発熱体6は、発熱する役割を担う部材である。発熱体6は、例えば、白金、モリブデン、タンタル、タングステン等からなる。例えば、基板がガスセンサ用の基板として用いられる場合、発熱体6は、載置部5に載置されるべきガス感応体を熱によって活性化する役割を担うことになる。
【0021】
また、第1絶縁層11の上面には、検査配線7が設けられている。この検査配線7は、発熱体6と電気的に接続されている。検査配線7を介して発熱体6に電圧を印加することにより、発熱体6は、検査工程において発熱することができる。これにより、発熱体6が所望の性能を有しているか否かを検査することができる。なお、図1では、検査配線7の図示を省略している。
【0022】
なお、検査工程は、多数個取り配線基板1を製造した後に行われる。すなわち、多数個取り配線基板1の製造工程を経た後に、検査工程が行われる。検査工程を経た後に、分割ラインCに沿って基板領域2を基板として取り出す工程(取り出し工程)が行われる。
【0023】
また、第1絶縁層11の下面には、電極8が設けられている。電極8は、銀、銅、金、パラジウム、タングステン、モリブデン、マンガン等の金属材料からなる。
【0024】
また、第1絶縁層11には、発熱体6と電極8とを電気的に接続するための貫通導体9が埋設されている。貫通導体9は、銀、銅、金、パラジウム、タングステン、モリブデン、マンガン等の金属材料からなる。なお、貫通導体9に、例えば、ニッケル、金等のめっき膜が施されていてもよい。これにより、多数個取り配線基板1から取り出した基板を、例えば、温度ヒューズ、ガスセンサ用の基板として用いた場合、電極8および貫通導体9を介して、発熱体6へ電圧を印加することが可能となる。
【0025】
なお、上記では、第1絶縁層11には、発熱体6と電極8とを電気的に接続するための貫通導体9が埋設されている例について説明したが、これに限定されない。すなわち、基板領域2の一部にキャスタレーションを形成し、このキャスタレーションによって発熱体6と電極8とを電気的に接続してもよい。例えば、基板領域2の少なくとも一辺の一部に形成された切欠4に側面導体を設けることにより、この側面導体によって発熱体6と電極8とを電気的に接続する。この側面導体も、貫通導体9と同様、銀、銅、金、パラジウム、タングステン、モリブデン、マンガン等の金属材料からなる。また、側面導体に、例えば、ニッケル、金等のめっき膜が施されていてもよい。
【0026】
以上のように、本実施形態に係る多数個取り配線基板1は、基板領域2の一辺を除く周囲の辺に空隙3が形成されている。このため、個片化する前に、発熱体6が所望の性能を有しているか否か検査した場合であっても、発熱体6の熱は、基板領域2内に蓄熱する(こもる)ことになる。すなわち、発熱体6が存在しない部位には、発熱体6からの熱の影響は抑制される。そのため、発熱体6が設けられた部位(基板領域2)と、発熱体6が存在しない部位との間での熱応力の発生が抑制される。この結果、多数個取り配線基板1にクラックが生じる可能性を低減できる。
【符号の説明】
【0027】
1 多数個取り配線基板
2a〜2o 基板領域
3 空隙
4 切欠
6 発熱体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板として取り出されるべき基板領域が複数形成された多数個取り基板であって、
前記基板領域には発熱体が設けられており、
前記基板領域の一辺を除く周囲の辺には空隙が形成されていることを特徴とする多数個取り基板。
【請求項2】
前記基板領域の一辺の一部には、切欠または切抜が形成されている、請求項1に記載の多数個取り基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多数個取り基板において前記基板領域を取り出すことにより得られる、基板。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−146418(P2011−146418A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3736(P2010−3736)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】