説明

多方向入力装置

【課題】 周囲の任意方向に操作される操作部材の操作により各種信号の入力を行う多方向入力装置において、センター復帰手段を小型化し、装置の低背化を図る。
【解決手段】 周囲の任意方向へ操作可能な操作部材50のセンター復帰手段70として、操作部材50が内側を貫通するようにリング状に形成されると共に、同心状態で均等な吸着力が発生するように操作部材50の軸方向に2段に配置された永久磁石71,72を用いる。一方の永久磁石71をボディ側に固定された固定部材とし、他方の永久磁石72を操作部材50と共に移動する可動部材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲の任意方向に操作される操作部材の操作により各種信号の入力を行う多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ジョイスティックと呼ばれるこの種の多方向入力装置は、通常、周囲の全方向へ傾倒操作可能に支持されたスティック状の操作部材と、直角な2方向へ動作可能に組み合わされ、操作部材の傾倒操作に伴って操作方向に対応する方向へ運動する1組の動作変換部材と、操作部材を中立位置に自動復帰させるセンター復帰手段と、1組の動作変換部材の各運動量に対応する信号を出力する一組の信号出力手段とを備えている。操作部材の操作性を向上させるために、操作部材にはキートップを取り付ける場合が多い。
【0003】
センター復帰手段としては通常コイルスプリングが使用されるが、例外的に円板状の永久磁石を使用する提案もなされている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−185257号公報
【0005】
操作部材のセンター復帰手段としてコイルスプリングを使用する多方向入力装置の典型的な構造を図3により説明する。図3に示された多方向入力装置は、ボディの中央部に配置されたスティック状の操作部材1を備えている。操作部材1は、当該部材の下端部に形成された上に凸の球面状の大径部2と、大径部2に当接するようにボディの側に設けられた球面状の受け座3との組合せにより、周囲全方向へ傾動可能に支持されており、その上端部にはキャップ状のキートップ4が取付けられている。
【0006】
センター復帰手段であるコイルスプリング5は、操作部材1の周囲に圧縮状態で配置されている。このコイルスプリング5は、リング部材6を介してキートップ4を上方へ付勢することにより、操作部材1を中立位置に弾性的に保持している。その保持力に抗して操作部材1を傾動操作すると、その操作方向及び操作量に応じてX−Y方向の一組のスライダー7が基板8上で水平方向へ移動し、その操作方向及び操作量が電気信号として出力される。
【0007】
センター復帰手段としてコイルスプリングは非常に一般的であり、多く使用されているが、このスプリングを効率よく機能させためには、バネ荷重を水平方向へ配分する機構が必要となる。しかし、最近は機器の薄型化に伴い、これに組み込まれる多方向入力装置にも低背化が強く求められるようになってきた。このため、バネ荷重を水平方向へ配分する機構を入力装置内に設けることが難しくなり、十分なセンター復帰精度が得られない問題が生じてきた。
【0008】
また、低背化に伴ってコイルスプリングの巻き線同士が接近し、操作量によってはコイルスプリングの巻き線同士が干渉し、操作感が悪化する問題も生じてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、低背化を推進した場合にも高いセンター復帰精度を維持でき、同時に優れた操作感も維持することができる多方向入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る多方向入力装置は、周囲の任意方向へ操作可能な操作部材を有しており、該操作部材の操作により各種信号の入力を行う多方向入力装置において、前記操作部材を中立位置に自動復帰させるセンター復帰手段として、前記操作部材が内側を貫通するようにリング状に形成されると共に、同心状態で均等な吸着力が発生するように操作部材の軸方向に2段に配置され、一方が前記操作部材と共に移動する可動部材とされ、他方がボディ側に固定された固定部材とされた一組の磁石、又は磁石と磁性体の組合せを具備している。
【0011】
本発明に係る多方向入力装置においては、一組の磁石、又は磁石と磁性体の組合せのうちの一方が操作部材と共に移動する可動部材とされ、他方がボディ側に固定された固定部材とされている。また、両部材は、内側を操作部材を貫通するリング状に形成されると共に、同心状態で均等な吸着力が発生するように操作部材の軸方向に2段に配置されている。操作部材の周囲にリング状の部材を2段配置することにより、磁石の外径を大きくすることができるので、コイルスプリングや円板状の磁石組を使用する場合と比べて、装置高を抑制した上で、ストロークを大きくすることができる。
【0012】
操作部材を中立位置から操作すると、その操作に伴って可動部材が移動し、操作部材を中立位置へ引き戻す磁力が生じる。このため、除荷すると操作部材は中立位置へ自動復帰する。すなわち、装置高を抑制した状態でも、高いセンター復帰精度を維持でき、優れた操作感も維持できるのである。
【0013】
センター復帰精度及び操作感を更に高めるためには、摺動式のガイド機構を用いるのがよい。具体的には、操作部材をガイドするために、操作部材には摺動方式で円板状の可動ガイド部を軸方向中間部に設け、ボディ側には、前記可動ガイド部を案内し、且つ操作部材の操作を阻害しないように中心部に貫通孔が設けられた摺動方式で環状の固定ガイド部を設ける。
【0014】
これらのガイド部に関しては更に、可動ガイド部が可動部材の保持部材を兼ね、固定ガイド部は固定部材の保持部材を兼ねる構成が合理的であり、装置の低背化に寄与する。
【0015】
操作部材は、周囲の任意方向へ傾動操作される傾動式でもよいが、傾動動作と共にスライド動作を行う複動式やスライド動作と共に昇降動作を行う複動式のほうが、水平方向の移動量の確保が容易となり、装置高の抑制に有利となる。また、復帰力の確保が容易となる。操作部材にこれらの複合動作を行わせるために、固定ガイド部及び可動ガイド部の摺動面を外周側へ向かって上又は下に傾斜させるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る多方向入力装置は、一組の磁石、又は磁石と磁性体の組合せのうちの一方を操作部材と共に移動する可動部材とし、他方をボディ側に固定された固定部材とすると共に、両部材をリング状にして操作部材の周囲に2段配置することにより、低背化を推進した場合にも高いセンター復帰精度を維持でき、合わせて優れた操作感も維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る多方向入力装置の縦断面図である。
【0018】
本実施形態に係る多方向入力装置は、基板10の上に下ケース20及び上ケース30を重ねてロックプレート40により固定した重ね合せ式のボディと、このボディ内に支持された操作部材50と、操作部材50に取付けられたキートップ60と、操作部材50のセンター復帰のためにボディ内に組み込まれた磁石方式のセンター復帰手段70と、操作部材50の動作を電気信号に変換するためにボディ内に組み込まれた上下一組のスライダー80A,80Bとを備えている。磁石方式のセンター復帰手段70は、後で詳しく説明するが、上下一組のリング状永久磁石71,72により構成されている。
【0019】
ボディを構成する下ケース20は、偏平な角型で底面が開放した樹脂ケースであり、内部に上下一組のスライダー80A,80Bを移動可能に収容している。下ケース20の中心部には、操作部材50が貫通し且つその操作を許容するために円形の貫通孔21が設けられている。円形の貫通孔21は下ケース20の天板部に設けられており、天板部の貫通孔周囲は、操作部材50を下からガイドする下側の固定ガイド部22である。固定ガイド部22のガイド面である上面には、貫通孔21から離れるにつれて下降する下降傾斜が付与されると共に、直径が異なる複数の環状突起23が同心円状に形成されている。
【0020】
下ケース20に重ねられる上ケース30は、下ケース20と同じ平面形状で底面が開放した角型の樹脂ケースであり、内部に磁石固定部材90を収容している。下ケース20の天板部には、操作部材50が貫通し且つその操作を許容するために円形の貫通孔31が中心部に位置して設けられている。
【0021】
磁石固定部材90は、上ケース30の天板部の裏側に、その天板部に接して配置された本体部91と、本体部91の四隅部から下方へ突出した脚状の支持部92とからなる。本体部91は、環状に形成された上側の固定ガイド部である。上側の固定ガイド部91は、下側の下ケース20との間に所定の隙間をあけて上ケース30内に収容されており、ここにおける隙間は、四隅部に設けられた脚状の支持部92により確保されている。
【0022】
固定ガイド部91には、上ケース30の貫通孔31より大径の貫通孔93が中心部に位置して設けられている。貫通孔93の周囲上面には、上ケース30の天板部との間に上側のリング状永久磁石71を保持するために、断面L状の切り込み94が全周にわたって設けられている。固定ガイド部91の下面は、下ケース20に形成された固定ガイド部22のガイド面である上面と対をなす上側のガイド面である。このガイド面には、中心部の貫通孔93から離れるにつれて下降する下降傾斜が、環状ガイド部22の上面に対応して付与されている。また、直径が異なる複数の環状突起95が同心円状に形成されている。
【0023】
ロックプレート40は、下ケース20の下に重ねられる角板形状の本体部41と、本体部41の四辺部からそれぞれ立ち上がったロック部42とを有している。4つのロック部42は、上ケース30の4つの側面に形成された爪部32に係合することにより、本体部41と上ケース30との間に下ケース20を挟持し、両ケース20,30を一体化することによりボディを構成する。
【0024】
ボディ内の中心部に設けられた操作部材50は、下ケース20及び上ケース30の中心部に貫通して配置されるシャフト状の本体部51と、本体部51の軸方向中間部に一体的に形成された円板状の可動ガイド部52とを有している。シャフト状の本体部51は、下ケース20の貫通孔21、上ケース30の貫通孔31及び磁石固定部材90の貫通孔83の内側中心部に配置されており、その上部は上ケース30の上方に突出している。そして、この上部には、ボディの上方に配置された円板状のキートップ60が同心状に連結されている。
【0025】
操作部材50の可動ガイド部52は、下ケース20と上ケース30内の磁石固定部材90との間に形成された隙間、すなわち、下ケース20に形成された下側の固定ガイド部22と、磁石固定部材90に形成された上側の固定ガイド部91との間に形成された環状の隙間に外周部が収容されており、より詳しくは、外周部が上側の固定ガイド部91によって上側から摺動可能に支持されると共に、外周部の周縁部を除く部分が、下側の固定ガイド部22によって下側から摺動可能に支持されるようになっている。可動ガイド部52の外周縁部下面には、下側のリング状永久磁石72を保持するために、断面L状の切り込み53が全周にわたって設けられており、下側の固定ガイド部22は、この切り込み53より内側の部分を下側から支持する。
【0026】
上側の固定ガイド部91の下面、及び下側の固定ガイド部22の上面は、操作部材50に設けられた円板状の可動ガイド部52を周囲全方向へ傾斜させつつスライドさせるために、いずれも外周側へ向かって緩やかに下降傾斜する上に凸の大R球面に形成されている。
【0027】
下ケース20内のスライダー80A,80Bは、当該ケース内に直角に交差して2段に収容されており、直角な2方向にスライド可能である。上段のスライダー80Aは、X方向にスライド可能な本体部81,81を両側に有し、両側の本体部81,81をY方向の水平な連結部82により連結した構成になっている。Y方向の水平な連結部82には、Y方向に延びる角形の長孔83が設けられており、一方の本体部81の下面には、下側の基板10の表面に形成されたX方向の抵抗回路に摺接するコンタクト84が取付けられている。
【0028】
下段のスライダー80Bは、Y方向にスライド可能な本体部を両側に有し、両側の本体部をX方向の水平な連結部82により連結した構成になっている。X方向の水平な連結部82には、X方向に延びる角形の長孔83が設けられており、一方の本体部の下面には、下側の基板10の表面に形成されたY方向の抵抗回路に摺接するコンタクトが取付けられている。そして、スライダー80A,80Bの交差部でそれぞれの長孔83,83を前記操作部材50の本体部51、特にその下部が貫通している。本体部51の動作を妨げないために、本体部51の下端部は、基板10に設けられた円形の貫通孔11に挿入されており、ロックプレート40の本体部41には非接触である。
【0029】
磁石方式のセンター復帰手段70は、同じ直径をもつ上下一組のリング状永久磁石71,72により構成されている。上下のリング状永久磁石71,72は一方が固定部材、他方が、操作部材50と共に移動可能な可動部材であり、吸着力が生じる極性に組み合わされている。上側のリング状永久磁石71は固定部材であって、上ケース30内の上側の固定ガイド部91に形成された環状の切り込み94に嵌合することにより、上ケース30の天板部と固定ガイド部91との間に固定されている。可動部材である下側のリング状永久磁石72は、操作部材50の可動ガイド部52に形成された環状の切り込み53に嵌合しており、操作部材50と共に移動可能である。
【0030】
次に、本実施形態に係る多方向入力装置の機能について説明する。
【0031】
操作部材50が操作されないとき、即ち外力を受けないときは、上下のリング状永久磁石71,72の間に働く吸着力により、リング状永久磁石71,72は同心状態を保持する。すなわち、リング状永久磁石71,72の同心性が崩れると、両者の間に働く吸着力が周方向で不均一になり、同心状態へ戻ろうとする復元力が生じるのである。
【0032】
前記復元力に抗してキートップ60を周方向へ操作すると、操作方向の外力が操作部材50の上端部に加わる。そうすると、操作部材50の軸方向中間部に設けられた円板状の可動ガイド部52が、環状に形成された上側の固定ガイド部91及び下側の固定ガイド部22、特に上側の固定ガイド部91に案内されて、外周側へ傾斜しつつスライド移動する。これにより、操作部材50のシャフト状の本体部51も外周側へ傾斜しつつスライド移動する。この動作、特に本体部51のスライド動作により、上下のスライダー80A,80Bが水平方向に移動し、各スライダーのコンタクトが基板10の表面に形成されたX方向及びY方向の抵抗回路上を摺動する。かくして、操作部材50の操作方向及び操作量に応じた電気信号が出力される。また、上下のリング状永久磁石71,72の同心性が崩れることにより、上下のリング状永久磁石71,72の間に磁気的な復元力が発生する。
【0033】
キートップ60に付加されている外力を除去する(除荷する)と、前記復元力により上下のリング状永久磁石71,72は同心状態に自動復帰する。これにより、操作部材50も中立位置に自動復帰する。
【0034】
こうして操作部材50はセンター復帰を行うが、センター復帰手段70として用いる上下のリング状永久磁石71,72は、操作部材50のシャフト状の本体部51の外側に配置されており、スペース効率が高い。しかも、操作部材50の水平方向のスライド動作が可能になり、シャフト状本体部51の下部にスライダー70,80を係合させることができる。これらのために、装置の低背化が推進され、低背化を推進した場合にあっても高精度なセンター復帰動作が可能となる。
【0035】
これに加え、固定部材である上側のリング状永久磁石71がボディ内のセンター位置に固定配置されているために、センター復帰精度が高い。リング状永久磁石71,72を用いることにより、動作荷重に異方性のない好操作感が得られる。磁力によりボディ側の上側の固定ガイド部91と操作部材側の可動ガイド部52がくっつき合って高さ方向に保持されるために、組み込みのための特別な機構が不要であり、この点からも低背化が推進される。磁石自体の摺動がなく、ボディ側の固定ガイド部91,22及び操作部材側の可動ガイド部52を摺動性のよい材料で構成しておけば、操作性の向上と共に、磨耗に対する高寿命化が可能とある。磁力を高めれば、リング状永久磁石71,72の離反距離を大きくすることが可能であり、これにより低背化を阻害することなく操作部材50の操作量を大きくすることができる。
【0036】
図2は本発明の別の実施形態に係る多方向入力装置の縦断面図である。
【0037】
本実施形態に係る多方向入力装置は、センター復帰手段70として、リング状永久磁石71と環状磁性体73との組合せを使用した点が、前述の多方向入力装置とは大きく相違する。また、操作部材50が水平方向のスライド動作及び垂直方向の昇降動作を行い、傾動動作を行わない点、及びボディ側の固定ガイド部及び操作部材50の側の可動ガイド部を各1段にし、操作部材50を垂直保持するための水平板100をボディ側に設けた点も相違点である。
【0038】
すなわち、本実施形態に係る多方向入力装置では、環状磁性体73は例えば鉄板であり、操作部材50の下端部近傍に一体形成された円板状の可動ガイド部52の下面に取付けられている。この環状磁性体73は、前述した下側のリング状永久磁石72と比べて広幅のリング状に形成されている。これにより、上側のリング状永久磁石71の磁力を水平方向へ配分することができ、操作部材50が外周側へ移動した場合も、上側のリング状永久磁石71との間に効果的な磁力を作用させることができる。
【0039】
可動ガイド部52の外周部上面は、外周側へ向かって下方へ傾斜した傾斜面52aになっている。可動ガイド部52の上側に位置するボディ側の固定ガイド部91では、可動ガイド部52の外周部上面に対向する外周部下面が、可動ガイド部52の傾斜面52aに対応する傾斜面91aになっている。
【0040】
ボディ内の固定ガイド部91より上方には、円板状の水平板100が配置されている。円板状の水平板100は、周囲全方向へ水平移動が可能であり、より詳しくは、ケース110の天板部とケース内の磁石固定部材90との間に形成された隙間にスライド自在に挿入されている。水平板100の中心部には、円筒状のガイド部101が垂直に設けられており、その内側を操作部材50のシャフト状の本体部51が摺動可能に貫通している。これにより、ガイド部101は操作部材50を、その昇降移動を許容しつつ垂直姿勢に保持する。なお、操作部材50の昇降動作を許容するために、操作部材50の下端部はケース110の底板部から離反している。
【0041】
他の構成、例えば操作部材50のシャフト状の本体部51が貫通する貫通孔がケース110の天板部及び固定ガイド部51に設けられていることなどは前述の実施形態と同じである。
【0042】
本実施形態に係る多方向入力装置では、上側に配置されたボディ側のリング状永久磁石71と下側に配置された操作部材側の環状磁性体73との間に働く吸引力により、操作部材50はケース110の底板部から離反した状態で中立位置に保持されている。この保持力に抗して操作部材50を外周側へ操作すると、水平板100は操作部材50と共に外周側へ移動する。操作部材50の可動ガイド部52は、傾斜面52aが固定ガイド部91の傾斜面91aに案内されて下降する。
【0043】
これにより、操作部材50は操作方向へ水平移動しつつ下方へ変位する。その結果、上側のリング状永久磁石71と下側の環状磁性体73との間に働く垂直方向の吸着力が、摺動面である傾斜面91a,52aにより水平方向の復元力に転換される。かくして操作部材50は中立位置へスムーズに自動復帰する。
【0044】
電気信号を取り出すためのセンサーとして、前述の実施形態では基板の表面に摺接するコンタクトを用いたが、このコンタクト摺接方式に限らず、導電ラバー方式でも磁気センサー方式でもよく、特にそのセンサー方式を限定するものではない。
【0045】
前述の実施形態では又、磁石固定部材90をケース内に収容したが、磁石をケースに直接取り付けることもでき、その場合は固定ガイド部91もケースに一体化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る多方向入力装置の縦断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る多方向入力装置の縦断面図である。
【図3】従来の多方向入力装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 基板
20 下ケース
22 固定ガイド部
30 上ケース
40 ロックプレート
50 操作部材
52 可動ガイド部
60 キートップ
70 センター復帰手段
71,72 リング状永久磁石
73 環状磁性体
80A,80B スライダー
90 磁石固定部材
91 固定ガイド部
100 水平板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の任意方向へ操作可能な操作部材を有しており、該操作部材の操作により各種信号の入力を行う多方向入力装置において、前記操作部材を中立位置に自動復帰させるセンター復帰手段として、前記操作部材が内側を貫通するようにリング状に形成されると共に操作部材の軸方向に2段に配置され、一方が前記操作部材と共に移動する可動部材とされ、他方がボディ側に固定された固定部材とされた一組の磁石、又は磁石と磁性体の組合せを具備することを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
前記操作部材をガイドするために、操作部材は摺動方式で円板状の可動ガイド部を軸方向中間部に有する一方、前記ボディ側は、前記可動ガイド部を案内し、且つ前記操作部材の操作を阻害しないように中心部に貫通孔が設けられた摺動方式で環状の固定ガイド部を有する請求項1に記載の多方向入力装置。
【請求項3】
前記可動ガイド部は前記可動部材の保持部材を兼ね、前記固定ガイド部は前記固定部材の保持部材を兼ねる請求項2に記載の多方向入力装置。
【請求項4】
前記操作部材は、傾動動作と共に水平方向のスライド動作を行う複動式、又は水平方向のスライド動作と共に垂直方向の昇降動作を行う複動式である請求項1に記載の多方向入力装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−294271(P2006−294271A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109186(P2005−109186)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】