説明

多方向操作スイッチ

【課題】主に各種電子機器の操作に使用される多方向操作スイッチに関し、容易に多様な操作の可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】プッシュスイッチ3などのスイッチを備えた多方向操作スイッチで、配線基板21に設けた電極22の上方に感圧体24を、感圧体24の上面に検知ピン26を配置し、操作体28で検知ピン26を押圧して、検知ピン26の押圧度合いにより感圧体24と電極22の接触抵抗を変化させることによって、接続された電子機器が多方向操作スイッチの接触抵抗の変化を反映した制御を行うことができるため、操作体28の傾倒方向、傾倒時間だけでなく、傾倒角度も反映させた容易で多様な操作の可能な多方向操作スイッチを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に用いられる多方向操作スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カーナビゲーションシステムやオーディオシステムなどの車両に搭載された電子機器やあるいは携帯電話等の携帯用の電子機器の高機能化や多様化が進むに伴い、これらの操作に用いられる多方向操作スイッチには、高速に操作が可能でかつ使いやすいものが求められている。
【0003】
このような従来の多方向操作スイッチについて、図13から図15を用いて説明する。
【0004】
なお、構成を判り易くするために、図面は厚さ方向の寸法を拡大して表わしている。
【0005】
図13は従来の多方向操作スイッチの分解斜視図、図14は同断面図であり、同図において、1は上面に配線パターンが形成された配線基板、2は略方形の電極である。
【0006】
また、3は押圧可能なプッシュスイッチで、プッシュスイッチ3は電極2上にハンダ付けなどで固定され、配線基板1上面に配置されている。
【0007】
また、4は樹脂製のピン、5は下面開口の樹脂製のケースで、ケース5の上面に孔5Aが左右に配置されると共に、ケース5の上面の前端、後端の側壁5Bに内側に突出した軸部5Cが設けられている。
【0008】
そして、配線基板1に固定されたプッシュスイッチ3の上面にピン4を載置して、ケース5左右の孔5Aからピン4の上端を突出させるよう、上方からケース5で覆っている。
【0009】
また、6は樹脂製の操作体で、略アーチ状の胴部6Aの左右端に押圧腕部6Bを、胴部6Aの前後端の側壁には、コの字状に凹んだ軸受部6Cを備えると共に、胴部6Aの上面に断面が略T字状の操作部6Dが形成されている。
【0010】
そして、この操作体6をケース5の上方から軸部5Cを軸受部6Cに挿入し、押圧腕部6Bの底面がピン4の上方に位置するよう組み合わせ、多方向操作スイッチ10が構成されている。
【0011】
また、このように構成された多方向操作スイッチ10が、例えば自動車のステアリングなどに、操作部6Dを樹脂製の上面カバー11の楕円形の孔11Aから露出させるよう上面カバー11で覆い、例えば車両のオーディオシステムやカーナビゲーションシステムなどにケーブル(図示せず)などで接続され配置される。
【0012】
そして、例えばオーディオシステムを使って聞きたい曲を選択したい場合に図15の断面図で示すように、操作者は操作部6Dを傾倒操作する。
【0013】
ここで、操作部6Dを右方向へ傾倒させると、右側の押圧腕部6Bによりピン4が押圧されプッシュスイッチ3が押圧される。
【0014】
また、プッシュスイッチ3が押圧されたことをオーディオシステムが検出し、操作者の前面のディスプレイなどに表示された曲を示す複数のアイコン(図示せず)のうち、現在選択されているアイコンより右側のアイコンが選択されるように移動する。そして、操作者は聞きたい曲のアイコンに選択が移動するまで、操作部6Dを傾倒操作するものであった。
【0015】
つまり、操作体6を左右いずれかに傾倒操作した際に、傾倒方向の押圧腕部6Bがピン4を介してプッシュスイッチ3が押圧されるため、操作者は操作部6Dの傾倒方向で各種電子機器に所望の処理を行わせていた。
【0016】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2006−12695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、近年、電子機器の高機能化や多様化が進む中、例えばオーディオシステムでは記録容量の大きなハードディスクが内蔵され、大量の楽曲等のうちから所望の楽曲を選択する必要が生じてきている。
【0019】
このような場合、上記従来の多方向操作スイッチにおいては、傾倒方向だけで各種電子機器を制御していたため、聞きたい曲のアイコンに選択が移動するまで待つには時間がかかったり、さらに傾倒している傾倒時間を検出して、傾倒時間が長い場合に早く移動させることも考えられるが、その場合、移動が早すぎて所望のアイコンで選択を停止させることができなかったり、複雑な操作ができないという課題があった。
【0020】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、容易に多様な操作が可能な多方向操作スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0022】
本発明の請求項1記載の発明は、押圧操作などが可能なスイッチを備えた多方向操作スイッチで、配線基板に設けた電極の上方に感圧体を、感圧体の上面に検知ピンを配置し、操作体の傾倒操作で検知ピンを押圧して、検知ピンの押圧度合いにより感圧体と電極の接触抵抗を変化させることによって、接続された電子機器が多方向操作スイッチの接触抵抗の変化を反映した制御を行うことができるため、操作体の傾倒方向、傾倒時間だけでなく、傾倒角度も反映させた容易で多様な操作の可能な多方向操作スイッチを得ることができるという作用を有する。
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、スイッチと操作体との間に弾性体をさらに備え、操作体は弾性体を介してスイッチを押圧し、弾性体の弾性復帰力をスイッチの復帰力より大きくしているため、スイッチが押圧されてONの状態で、感圧体を押圧するためのストロークを容易に調整可能な多方向操作スイッチを得ることができるという作用を有する。
【0024】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、操作体に傾倒角度に応じて揺動する操作体に設けられた揺動部を備え、揺動部で検知ピンを押圧するもので、揺動部の検知ピンに接触する面に窪みを設けているため、操作体の傾倒角度に対して検知ピンが下方へ移動する距離を、窪みの形状を変化することで制御することができ、操作体の傾倒角度に対する接触抵抗の変化を所望のものにする多方向操作スイッチを得ることができるという作用を有する。
【0025】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、配線基板には少なくとも四つのスイッチが配置され、感圧体は一つで、スイッチのいずれかが押圧された後、さらに操作体を傾倒操作すると感圧体の押圧力が増加するもので、四方向以上の方向に対応した多方向操作スイッチにおいても、感圧体は一つで対応できるため、簡易な構成で、より多様な操作の可能な多方向操作スイッチを実現することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明によれば、容易に多様な操作の可能な多方向操作スイッチを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一の実施の形態による多方向操作スイッチの分解斜視図
【図2】同第一の実施の形態による多方向操作スイッチの断面図
【図3】同第一の実施の形態による多方向操作スイッチの要部断面図
【図4】同第一の実施の形態による多方向操作スイッチの使用状況を示す配置図
【図5】同第一の実施の形態による多方向操作スイッチの動作状態を示す断面図
【図6】同第一の実施の形態による多方向操作スイッチの動作状態を示す要部断面図
【図7】同第一の実施の形態による多方向操作スイッチを用いた電子機器の表示を示す画面図
【図8】同第二の実施の形態による多方向操作スイッチの分解斜視図
【図9】同第二の実施の形態による多方向操作スイッチの要部断面図
【図10】同第二の実施の形態による多方向操作スイッチの要部の斜視図
【図11】同第二の実施の形態による多方向操作スイッチの動作状態を示す要部断面図
【図12】同第二の実施の形態による多方向操作スイッチの動作状態を示す要部断面図
【図13】従来の多方向操作スイッチの分解斜視図
【図14】同多方向操作スイッチの断面図
【図15】同多方向操作スイッチの動作状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図12を用いて説明する。
【0029】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0030】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0031】
(実施の形態1)
図1は本発明の第一の実施の形態による多方向操作スイッチの分解斜視図、図2は同断面図であり、同図において、21は上面に配線パターンが形成された配線基板、22は略方形の電極で、配線基板21の上面の左右に電極22がそれぞれ四つずつ設けられる。
【0032】
また、配線基板21の上面の略中央に半円形の電極23A、23Bが、所定の間隔を空けて、設けられている。
【0033】
また、押圧可能な自動復帰型のプッシュスイッチ3が、電極22上にハンダ付けなどで固定され、配線基板21上面に配置されている。なお、プッシュスイッチ3は特許請求の範囲に記載したスイッチの一例である。
【0034】
そして、24は感圧体で、電極23Aと電極23Bの上面に所定の間隔を設けて配置され、これらの電極23Aと電極23Bと感圧体24から感圧スイッチ25が構成されている。
【0035】
また、26は、ポリアセタールやナイロンなどの樹脂製の検知ピンで、下面が平坦な略円柱形状の押圧部26Aと、その上面に設けられた略円柱状の柱部26Bと、上端が丸くなった突端部26Cから構成される。
【0036】
さらに、27はシリコーンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、またはエチレンプロピレンジエンゴムなどの弾性材料で形成された下面開放で箱型の弾性体で、上面の略中央に十字状の孔27Aを備えている。
【0037】
そして、プッシュスイッチ3や感圧体24が配置された配線基板21の感圧体24の上面に検知ピン26が配置され、さらに上方から弾性体27を被せて収納されている。
【0038】
また、従来の多方向操作スイッチと同様に、4はポリアセタールなどの樹脂製のピン、5は下面開口のアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合合成樹脂などの樹脂製のケースで、ケース5の上面の左右に孔5Aが、ケース5の前端、後端に側壁5Bが、側壁5Bの内側に円形に突出した軸部5Cが設けられ、前後の側壁5Bの間には角孔5Dが設けられている。
【0039】
そして、弾性体27の上面で、左右のプッシュスイッチ3の上方となる位置にピン4を載置し、ケース5の左右の孔5Aからピン4の上端を突出させるよう、上方からケース5で覆うものとしている。
【0040】
また、28はポリカーボネートなどの樹脂製の操作体で、略アーチ状の胴部28Aの左右端に押圧腕部28Bを、胴部28Aの前後端の側壁には、コの字状に凹んだ軸受部28Cを備えると共に、胴部28Aの上面に断面が略T字状の操作部28Dが形成されると共に、操作部28Dの下方の延長胴部28Aの下面から棒状の揺動部28Eが延出している。
【0041】
そして、この操作体28をケース5の上方から、軸受部28Cに軸部5Cを挿入し、押圧腕部28Bの底面をピン4の上方に位置させ、揺動部28Eを角孔5Dから挿入して揺動部28Eの下端が検知ピン26の上端に接するよう組み合わせ、多方向操作スイッチ30が構成されている。
【0042】
さらに、図3の要部断面図を用いて、揺動部28Eと検知ピン26と感圧スイッチ25について詳細に説明する。
【0043】
ここで、感圧スイッチ25を構成する感圧体24は合成樹脂内にカーボン粉を分散したシート抵抗値0.5kΩ/□〜30kΩ/□の低抵抗体層31Aをフィルム(図示せず)の下面に印刷形成し、さらに細かな凹凸が下面全面に形成されたシート抵抗値50kΩ/□〜5MΩ/□の高抵抗体層31Bを印刷形成し、そして、所定の位置に孔を空けた絶縁フィルムなどのスペーサ32を貼り付けて構成されている。
【0044】
そして、スペーサ32の孔が電極23Aおよび電極23Bの上方に位置するように、感圧体24を電極23Aおよび電極23Bの上方に所定の間隔を設けて配置することで、高抵抗体層31Bと電極23A、23Bが接離可能なものとなっている。
【0045】
これにより、感圧体24に対する押圧力を増加させるほど電極23A、23Bに対する高抵抗体層31Bの接触面積が大きくなり、電極23A、23Bとの間で高抵抗体層31Bを介した接触抵抗が小さくなる感圧スイッチ25が形成されている。
【0046】
さらに、感圧体24の上面に、検知ピン26が平坦な押圧部26A下面で、感圧体24の上面を押圧可能なように配置されている。また、突端部26Cで揺動部28Eと接している。
【0047】
そして、揺動部28E下端が突端部26Cと接する位置には、揺動部28Eに緩やかな窪み28Fが二箇所設けられており、揺動部28Eが揺動した際に、突端部26Cが窪み28F内をスライド移動するよう構成されている。
【0048】
このように構成された多方向操作スイッチ30が、操作部28Dを樹脂製の上面カバー11の楕円形の孔11Aから露出させて、図4の配置図で示すように自動車のステアリング41などに配置され、例えば車両のオーディオシステムやカーナビゲーションシステムなどの電子機器に用いる車両前方の中央位置のディスプレイ42や、ステアリング41前方の表示パネル43にケーブル(図示せず)などで接続される。
【0049】
そして、操作者はディスプレイ42や表示パネル43の表示を見ながら、多方向操作スイッチ30の操作体28の操作部28Dを傾倒操作して、電子機器に所望の処理を行わせる。
【0050】
このときの、多方向操作スイッチ30の動作について、図5の断面図および図6の要部断面図を用いて説明する。
【0051】
ここで、例えば図5(a)のように、操作体28の操作部28Dに指を当てて右方向へ傾倒操作すると、操作体28は軸部5Cを軸として右方向へ傾倒する。
【0052】
ここで、押圧腕部28Bの底面がピン4を上方から押圧し、ピン4の底面が弾性体27を介してプッシュスイッチ3を押圧して、プッシュスイッチ3をONの状態にする。
【0053】
このとき、弾性体27を圧縮変形させるのに必要な力よりプッシュスイッチ3の復帰力が小さくなるよう、弾性体27の材料やプッシュスイッチ3を選定しているため、プッシュスイッチ3はONの状態で維持される。
【0054】
また、プッシュスイッチ3が節度感を生じさせ、操作者は操作部28Dを介して、その節度感を感じとることにより、プッシュスイッチ3がONになった時点を操作者が認識することができる。
【0055】
また、操作体28の傾倒により揺動部28Eが左方向へ揺動し、図6(a)で示すように、揺動部28E下端の窪み28F内を突端部26Cの上端がスライドする。
【0056】
ここで、窪み28Fがあることによって、検知ピン26の下方への移動が若干抑制されるため、感圧体24の上面は若干へこむものの押圧部26Aが感圧体24の上面を押す押圧力は抑制されている。
【0057】
この時、電極23Aおよび電極23Bと高抵抗体層31Bは緩やかに接触しており、電極23Aと電極23Bの間の接触抵抗は図3の状態と比べ若干小さくなるものの、後述する図6(b)の状態より比較的大きなものとなっている。
【0058】
つまり、操作者が、操作部28Dを押し込んで傾倒させると、まず、プッシュスイッチ3がONの状態になり節度感を感じる位置で、電極23Aおよび電極23Bと高抵抗体層31Bは緩やかに接触しており、電極23Aと電極23Bの間の接触抵抗は図3の状態と比べ若干小さくなっている。
【0059】
そして、操作者が図5(a)の状態から操作部28Dをさらに右側に押し込んで傾倒させ、図5(b)の状態にすると、押圧腕部28Bの底面がピン4を介して、弾性体27上を押圧する。
【0060】
ここで、プッシュスイッチ3は既に押されてONの状態にあるので、プッシュスイッチ3の上面は下がることがなく、プッシュスイッチ3の上面とピン4の底面の間の弾性体27が圧縮される。
【0061】
ここで軸部5Cを中心にさらに、操作体28が傾倒しているため、揺動部28Eが揺動し、図6(b)で示すように窪み28F内を突端部26Cがスライド移動する。
【0062】
なお、突端部26Cの上端は、図6(a)のように窪み28F内の一番窪んだ位置から、図6(b)のように窪み28F内をスライドして揺動部28E下端の最も突出した位置に移動しており、揺動部28Eの揺動する角度、つまり操作部28Dの傾倒角度に対して、緩急をつけた検知ピン26の押圧を可能なものとしている。
【0063】
ここで、検知ピン26が下方に移動し、高抵抗体層31Bの下面の凹凸が電極23A、23Bに押しつけられ、検知ピン26が下方に移動するほど高抵抗体層31Bと電極23A、23Bの接触面積が増加し、電極23Aと電極23Bの間の接触抵抗が減少するものとなっている。
【0064】
つまり、プッシュスイッチ3がONの状態で、さらに操作体28を傾倒させると、検知ピン26が操作体28により押圧され、検知ピン26を介して感圧体24の上面が押圧されるため、検知ピン26の押圧度合いにより感圧体24と電極23A、23Bの間の接触抵抗、ひいては電極23Aと電極23Bの間の接触抵抗が変化するものとなっている。
【0065】
また、揺動部28E下端に窪み28Fを備えることにより、操作体28の傾倒角度に対して検知ピン26が下方へ移動する距離を、窪み28Fの形状を変化することで制御することができ、操作体28の傾倒角度に対する電極23Aと電極23Bの間の接触抵抗の変化を所望のものにすることができる。
【0066】
なお、操作体28の操作部28Dへの操作力を解除すると、プッシュスイッチ3の復帰力と、弾性体27の弾性復帰力により図2の断面図に示す中立状態へ復帰する。
【0067】
ここで、プッシュスイッチ3の復帰力より弾性体27の弾性復帰力が大きいので、プッシュスイッチ3がONを維持した状態で弾性体27が圧縮状態から復帰し、それから、プッシュスイッチ3が復帰してOFFの状態になる。
【0068】
なお、上述の説明は、操作部28Dを右に傾倒させた場合について説明したが、左に傾倒させた場合においても、多方向操作スイッチ30の動作は同様である。
【0069】
このような操作部28Dの操作は、例えば図7の画面図で示すような、オーディオシステムの選曲操作で行われるもので、このシステムにおいて、ディスプレイ42には円弧形状の回転ホイール51上に音符の記号が記載された複数の円形のアイコン52が表示され、アイコン52のうち若干大きく表示されたアイコン52Aが現在選択されている曲を示している。
【0070】
さらに、タイトル表示部53にアイコン52Aに対応した曲名や歌手名が表示されている。
【0071】
ここで、操作部28Dを右に傾倒させて、プッシュスイッチ3がONすると、回転ホイール51が右に回転し、選択されたアイコンがアイコン52Aの左のアイコン52に順次移動する。
【0072】
この回転ホイール51の回転速度、つまり選択されたアイコン52が隣のアイコン52に移動する速度は、電極23Aと電極23Bの間の接触抵抗が小さいほど速くなるよう、オーディオシステムのマイコンなど(図示せず)がディスプレイ42の表示を制御している。
【0073】
なお、操作部28Dを左に傾倒させた場合は、回転ホイール51が左に回転し、選択されたアイコン52が右のアイコン52に順次移動し、傾倒角度によりアイコン52の選択の移動速度を変化させることができる。
【0074】
つまり、操作体28の傾倒角度によりアイコン52の選択の移動速度を変化させることができるため、所望のアイコン52が遠い場合には速く移動させるために傾倒角度を大きくし、所望のアイコン52に近づくと傾倒角度を弱くしたり強くしたりしながら、選択の移動速度を遅くあるいは速くするという、操作者の要望に応じた多様な操作が可能な多方向操作スイッチ30を得ることができる。
【0075】
なお、上述の説明では、低抵抗体層31Aと高抵抗体層31Bを重ねて、感圧体24を形成した構成について説明したが、シリコーンゴム等の基材内にカーボン等の導電粒子を分散した感圧導電層を用い、これを電極23Aと電極23Bの上に載置した構成としても、本発明の実施は可能である。また、感圧体24は押圧力の増加に伴い、増加あるいは減少の一定の方向で、電極23Aと電極23B間の接触抵抗が変化するものであれば良い。
【0076】
また、スイッチとしてプッシュスイッチ3を例にとり説明したが、これに限定されるものではなく、例えば操作体28でスライドスイッチを押圧してスライド操作させるものとして構成しても、本発明の実施は可能である。
【0077】
このように本実施の形態によれば、プッシュスイッチ3などのスイッチを備えた多方向操作スイッチで、配線基板21に設けた電極22の上方に感圧体24を、感圧体24の上面に検知ピン26を配置し、操作体28で検知ピン26を押圧して、検知ピン26の押圧度合いにより感圧体24と電極22の接触抵抗を変化させることによって、接続された電子機器が多方向操作スイッチの接触抵抗の変化を反映した制御を行うことができるため、操作体28の傾倒方向、傾倒時間だけでなく、傾倒角度も反映させた容易で多様な操作の可能な多方向操作スイッチを実現することができる。
【0078】
また、スイッチと操作体28との間に弾性体27をさらに備え、操作体28は弾性体27を介してスイッチを押圧し、弾性体27の弾性復帰力をスイッチの復帰力より大きくしているため、スイッチが押圧されてONの状態で、感圧体24を押圧するためのストロークを容易に調整可能な多方向操作スイッチを実現することができる。
【0079】
さらに、操作体28に操作部28Dの傾倒角度に応じて揺動する揺動部28Eを備え、揺動部28Eで検知ピン26を押圧するもので、揺動部28Eの検知ピン26に接触する面に窪み28Fを設けているため、操作体28の傾倒角度に対して検知ピン26が下方へ移動する距離を、窪み28Fの形状を変化することで制御することができ、操作体28の傾倒角度に対する接触抵抗の変化を所望のものにした多方向操作スイッチを実現し、多様な電子機器に対し窪み28Fの形状を変化するだけで柔軟に対応することができる。
【0080】
(実施の形態2)
図8は本発明の第二の実施の形態による多方向操作スイッチの分解斜視図、図9は同要部断面図、図10は要部の斜視図である。
【0081】
本実施の形態は実施の形態1に対し、操作体78が前後左右に傾倒可能に構成されている点、操作体78を下方に押圧操作すると、プッシュスイッチ63Eが押圧されONになる点が主として異なる。
【0082】
ここで、同図において、61は上面に配線パターンが形成された配線基板で、配線基板61の上面には、前後左右にプッシュスイッチ63A〜63Dが、プッシュスイッチ63Aとプッシュスイッチ63Bの間にプッシュスイッチ63Eが配置されている。また、プッシュスイッチ63A〜63Dで囲むように感圧スイッチ65が配置されている。なお、プッシュスイッチ63A〜63Dは特許請求の範囲に記載のスイッチの一例である。
【0083】
ここで、感圧スイッチ65は、実施の形態1の図3を用いて上述したように、配線基板65上面に形成された電極(図示せず)と、その上方の感圧体(図示せず)により構成されるもので、感圧スイッチ65の上面に加えた押圧力により感圧体が押圧され、電極間の接触抵抗が小さくなるよう構成されている。
【0084】
そして、67は弾性体で、弾性体67は感圧スイッチ65の上面に重ねて配置されている。なお、弾性体67の材料としては、シリコーンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、またはエチレンプロピレンジエンゴムなどの弾性材料が適している。
【0085】
さらに、68は略円筒状でその一方向が突出した支持体、69は棒状の傾動体、70はドーム状の底面の前後左右方向が突出した可動体である。ここで、支持体68の突出部68Aの上面には略半円状の凹み部68Bが設けられ、傾動体69には一端に設けられた円筒状の支点部69Aが凹み部68Bに嵌め込まれ支持体68上で傾動体69が傾動可能に構成されている。
【0086】
また、傾動体69の支点部69Aに対し逆側の端部は、プッシュスイッチ63E上方に配置され、傾動体69の傾動によりプッシュスイッチ63Eが押圧されるよう構成されている。
【0087】
また、可動体70はその上面に穴部70Aが、下面に四個の下方向に突出した押圧部70Bが設けられると共に、前後左右に突出した板状の傾動部70Cが備えられている。そして、可動体70は傾動体69を挟むように支持体68に組み合わされており、可動体70が支持体68上で前後左右に傾動すると、傾動方向の傾動部70Cがプッシュスイッチ63A〜63Dを押圧し、傾動方向の押圧部70Bが弾性体67を介して感圧スイッチ65を押圧するよう構成されている。
【0088】
なお、支持体68、傾動体69、可動体70の材料としては、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合合成樹脂、ポリアセタール、ナイロン、ポリカーボネートなどの樹脂が好適である。
【0089】
そして、71は下側ケース、72は上側ケースで、下側ケース71と上側ケース72の間に、配線基板61上に弾性体67、支持体68、傾動体69、可動体70が組合わされて配置され、上側ケース72に設けられた孔部72Aから可動体70の上面を露出させている。
【0090】
さらに、78は湾曲した板状の上面カバー、79はピン状の操作体で、上側ケース72上方から上面カバー78で覆われると共に、操作体79は可動体70の穴部70Aに、その下端が挿入されて、多方向操作スイッチ80が構成されている。
【0091】
なお、下側ケース71、上側ケース72、上面カバー78、操作体79の材料は、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合合成樹脂、ポリアセタール、ナイロン、ポリカーボネートなどの樹脂が好適である。
【0092】
つまり、操作体79を傾倒操作すると、四つのプッシュスイッチ63A〜63Dのうち傾倒方向に対応したものが押圧されONになるよう構成されると共に、感圧スイッチ65も押圧されるよう構成されている。
【0093】
また、操作体79を下方向に押圧操作すると、傾動体69が傾動しプッシュスイッチ63Eを押圧し、プッシュスイッチ63EがONするよう構成されている。
【0094】
次に、図11および図12の要部断面図を用いて、操作者が操作体79を傾倒操作、押圧操作した際の動作について説明する。
【0095】
図11は、操作体79を右方向に傾倒操作したときの要部断面図で、操作体79が接続された可動体70も右方向に回転し、傾動部70Cによりプッシュスイッチ63Bが押圧され、プッシュスイッチ63BがONする。この時、押圧部70Bは弾性体67の上面を押圧しているが、押圧力は僅かである。そして、操作者が操作体79をさらに右方向に傾倒操作すると、傾倒角度の増加に対応して、押圧部70Bの押圧力が増し、それと共に感圧スイッチ65の感圧体の押圧力も増加し、感圧スイッチ65が検知するものとなっている。
【0096】
なお、前後左右の四方向に操作体79を傾倒操作した場合は、操作体79の傾倒方向が変化し、それぞれの傾倒方向に対応したプッシュスイッチ63A〜63DがONする。また、前後左右の中間位置の斜め方向に操作体79を傾倒操作した場合は、プッシュスイッチ63A〜63Dのうち傾倒操作方向を挟む二つがONするため、多方向操作スイッチ80は計八方向の操作が可能である。
【0097】
また、図12は、操作体79を下方向に押圧操作したときの要部断面図で、操作体79が接続された可動体70も下方向に移動し、可動体70に押圧された傾動体69が傾動し、プッシュスイッチ63Eが押圧され、プッシュスイッチ63EがONする。
【0098】
このような操作体79の操作は、例えば、カーナビゲーションシステムの地図の表示画面上で、目的地を設定するためのポインタを移動させる場合に行われる。その場合、カーナビゲーションシステムのマイコンは、多方向操作スイッチ80のプッシュスイッチ63A〜63DがONしたこと、および感圧スイッチ65の押圧力を検出する。
【0099】
そして、カーナビゲーションシステムのマイコンは、地図の表示画面上でポインタを、操作体79が操作された方向に、また操作体79の傾倒角度に応じた速さで移動して表示する。そして、操作体79を下方向に押圧すると、プッシュスイッチ63EがONして目的地の確定などを行うものである。
【0100】
このように本実施の形態によれば、配線基板61には例えばプッシュスイッチ63A〜63Dの少なくとも四つのスイッチが配置され、感圧体は感圧スイッチ65を構成する一つで、スイッチのいずれかが押圧された後、さらに操作体79を傾倒操作すると感圧体の押圧力が増加するもので、四方向以上の方向に対応した多方向操作スイッチ80においても、感圧体は一つで対応できるため、簡易な構成で、より多様な操作の可能な多方向操作スイッチを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明による多方向操作スイッチは、容易に多様な操作の可能なものを実現することができるという有利な効果を有し、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0102】
3、63A〜63E プッシュスイッチ
4 ピン
5 ケース
5A 孔
5B 側壁
5C 軸部
5D 角孔
11、78 上面カバー
11A 孔
21、61 配線基板
22、23A、23B 電極
24 感圧体
25、65 感圧スイッチ
26 検知ピン
26A 押圧部
26B 柱部
26C 突端部
27、67 弾性体
27A 孔
28、79 操作体
28A 胴部
28B 押圧腕部
28C 軸受部
28D 操作部
28E 揺動部
28F 窪み
30、80 多方向操作スイッチ
41 ステアリング
42 ディスプレイ
43 表示パネル
51 回転ホイール
52、52A アイコン
53 タイトル表示部
68 支持体
68A 突出部
68B 凹み部
69 傾動体
69A 支点部
70 可動体
70A 穴部
70B 押圧部
70C 傾動部
71 下側ケース
72 上側ケース
72A 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチと、電極が配置された配線基板と、前記電極の上方に配置された感圧体と、前記感圧体の上面に配置された検知ピンと、傾倒操作されることにより前記検知ピンおよび前記スイッチを押圧する操作体とを備え、前記検知ピンの押圧度合いにより前記感圧体と前記電極の接触抵抗が変化する多方向操作スイッチ。
【請求項2】
前記スイッチと前記操作体との間に弾性体をさらに備え、前記操作体は前記弾性体を介して前記スイッチを押圧するもので、前記弾性体の弾性復帰力は前記スイッチの復帰力より大きい請求項1記載の多方向操作スイッチ。
【請求項3】
前記操作体は、傾倒角度に応じて揺動する揺動部を備え、前記揺動部で前記検知ピンを押圧するもので、前記揺動部の前記検知ピンに接触する面に窪みが設けられた請求項1記載の多方向操作スイッチ。
【請求項4】
前記配線基板には少なくとも四つのスイッチが配置され、感圧体は一つで、スイッチのいずれかが押圧された後、さらに操作体を傾倒操作すると感圧体の押圧力が増加する請求項1記載の多方向操作スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−18901(P2012−18901A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254684(P2010−254684)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】