説明

多方弁並びにこの多方弁を送風用配管経路中に設けた乾燥機能付き装置及びスクリーン版及びメタルマスク版用洗浄機

【課題】小型化が可能で、スクリーン版及びメタルマスク版用洗浄機等の乾燥機能付き装置に用いた場合でも、ブロワーが過負荷状態にならず、ヒータが異常加熱することがない多方弁を得る。
【解決手段】本体部11と、本体部11の一方の側に設けられ、本体部11と連通する吸気部12と、本体部11の吸気部12から本体部11の他方の側にかけて設けられ、本体部11と連通するN=4個の分岐部13と、吸気部12から最も遠い分岐部13を除く分岐部13に対応して3個((N−1)個)並設された弁部20とからなり、弁部20が全開状態においては、対応する分岐部13への流体経路を開いて、この分岐部13よりも吸気部12から遠い分岐部13への流体経路を遮断し、弁部20が全閉状態においては、対応する分岐部13への流体経路を遮断して、この分岐部13よりも吸気部12から遠い分岐部13への流体経路を開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は多方弁並びにこの多方弁を送風用配管経路中に設けた乾燥機能付き装置及びスクリーン版及びメタルマスク版用洗浄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の送風口(又は給水口)切替用の配管構造としては、例えば共通配管から各々分岐した分岐配管の途中に送風口(又は給水口)の開閉をおこなう開閉弁を設けたものがある(例えば特許文献1参照)。また、このような配管構造を用いた装置の量産化等を目的として、図10〜図12に示すような共通配管、分岐配管及び開閉弁を多方弁としてユニット化したものが提案されている。
【0003】
図10及び図11に示すように、多方弁110は本体部111と、この本体部111に連通している4つの分岐部112a〜112dで構成されている。この分岐部112a〜112dのそれぞれには、本体部から分岐部へ連通する流体経路を開閉する弁部113が設けられている。図12に示すように、この弁部113は、開閉弁114、回転軸115及びモータ116から構成されている。開閉弁114は、回転軸115を介してモータ116(モータ固定方法は図示せず)と回動自在に接続されており、分岐部112を開閉自在な構造となっている。
【0004】
図10に示すように、ブロワー101によって吸い込まれた空気は配管を介してヒーター102に送られる。この空気はヒーター102によって暖められ、多方弁110の本体部111に送られる。各分岐部112a〜112dはそれぞれ別々の送風口(図示せず)に接続されており、送風の必要がある送風口に接続された分岐部112の弁部113が全開状態となっている。本体部111に送られた空気は、弁体113が全開状態となっている分岐部112を通って送風口から吹き出される。
【0005】
【特許文献1】特開2006−322694号公報(段落番号0043、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の多方弁は、各分岐部に弁部が設けられているため、多方弁が大型化するという問題点があった。また、この多方弁を乾燥機能付き装置に用いた場合、モータの故障によって各分岐部が全て全閉状態のままとなったとき、ブロワーは空気を送れず過負荷状態となるという問題があった。さらに、ヒータが異常加熱し、発煙、発火の危険性があるという問題点があった。
【0007】
この発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、小型化が可能で、スクリーン版洗浄機等の乾燥機能付き装置に用いた場合であっても、ブロワーが過負荷状態にならず、ヒータが異常加熱することがない多方弁を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る多方弁は、本体部と、本体部の一方の側に設けられ、本体部と連通する吸気部と、本体部の吸気部から本体部の他方の側にかけて設けられ、本体部と連通するN個(N>2)の分岐部と、吸気部から最も遠い分岐部を除く分岐部に対応して(N−1)個並設された弁部とからなり、弁部が全開状態においては、対応する分岐部への流体経路を開いて、この分岐部よりも吸気部から遠い分岐部への流体経路を遮断し、弁部が全閉状態においては、対応する分岐部への流体経路を遮断して、この分岐部よりも吸気部から遠い分岐部への流体経路を開くものである。
【0009】
また、この発明に係る多方弁は、弁部が全開状態と全閉状態の間の半開状態で停止するものである。
【0010】
また、この発明に係る多方弁は、吸気部を有する吸気ブロックと、分岐部及び弁部を有する(N−1)個の分岐ブロックと、分岐部を有するエンドブロックとを順次連結することにより構成されるものである。
【0011】
また、この発明に係る多方弁は、弁部が、少なくとも、本体部内壁に設けられ、開閉板が挿入される溝部を有するレール部と、溝部に挿入された開閉板と、開閉板を駆動する直動アクチュエータからなるものである。
【0012】
また、この発明に係る多方弁は、開閉板にはU字形状の切り欠きが形成され、直動アクチュエータの先端部には、両端部に抜け防止用の鍔部が形成されたブッシュが設けられ、このブッシュが切り欠きに挿入されて、開閉板と直動アクチュエータとが接続されているものである。
【0013】
また、この発明に係る多方弁は、ブッシュの鍔部と開閉板との間にクッションが設けられているものである。
【0014】
また、この発明に係る多方弁は、直動アクチュエータがシリンダであるものである。
【0015】
また、この発明に係る乾燥機能付き装置は、上記いずれかの多方弁を送風用配管経路中に設けたものである。
【0016】
また、この発明に係るスクリーン版及びメタルマスク版用洗浄機は、上記いずれかの多方弁を送風用配管経路中に設けたものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る多方弁は、本体部と、本体部の一方の側に設けられ、本体部と連通する吸気部と、本体部の吸気部から本体部の他方の側にかけて設けられ、本体部と連通するN個(N>2)の分岐部と、吸気部から最も遠い分岐部を除く分岐部に対応して(N−1)個並設された弁部とからなり、弁部が全開状態においては、対応する分岐部への流体経路を開いて、この分岐部よりも吸気部から遠い分岐部への流体経路を遮断し、弁部が全閉状態においては、対応する分岐部への流体経路を遮断して、この分岐部よりも吸気部から遠い分岐部への流体経路を開く。したがって、従来の多方弁よりも弁部の数を削減することができるため、多方弁を小型化することができる。また、弁部の数を削減することにより、従来よりも安価な多方弁を得ることができる。さらに、この多方弁をスクリーン版洗浄機等の乾燥機能付き装置に用いた場合、弁部が故障したときでも、必ず1つの分岐部から空気が流出することができるので、この多方弁の空気流れ上流側に設置されたブロワーが過負荷状態にならず、ヒータが異常加熱することがない多方弁を得ることができる。
【0018】
また、この発明に係る多方弁は、弁部が全開状態と全閉状態の間の半開状態で停止する。このため、対応する分岐部への流体経路を開くとともに、下流への経路も開くことができる。したがって、吸気部から流入してきた流体を複数の分岐部から流出させることができる。
【0019】
また、この発明に係る多方弁は、吸気部を有する吸気ブロックと、分岐部及び弁部を有する(N−1)個の分岐ブロックと、分岐部を有するエンドブロックとを順次連結することにより構成されている。したがって、多方弁の仕様に合わせて容易に分岐部の数を変更することができる。
【0020】
また、この発明に係る多方弁の弁部は、少なくとも、本体部内壁に設けられ、開閉板が挿入される溝部を有するレール部と、溝部に挿入された開閉板と、開閉板を駆動する直動アクチュエータから構成されている。開閉板がレール部の溝部に挿入されているので、弁部の気密性が向上する。
【0021】
また、この発明に係る多方弁は、開閉板にはU字形状の切り欠きが形成され、直動アクチュエータの先端部には、両端部に抜け防止用の鍔部が形成されたブッシュが設けられ、このブッシュが切り欠きに挿入されて、開閉板と直動アクチュエータとが接続されている。したがって、開閉板と直動アクチュエータとの接続が容易となる。
【0022】
また、この発明に係る多方弁は、ブッシュの鍔部と開閉板との間にクッションが設けられているものである。したがって、開閉板のストロークと直動アクチュエータのストロークとの差分をクッションが吸収してくれるので、直動アクチュエータのストローク調整が容易となる。
【0023】
また、この発明に係る乾燥機能付き装置は、上記いずれかの多方弁を送風用配管経路中に設けている。したがって、多方弁の弁部が故障した場合でも、必ず1つの分岐部から空気が流出することができるので、この多方弁の空気流れ上流側に設置されたブロワーが過負荷状態にならず、ヒータが異常加熱することがない乾燥機能付き装置を得ることができる。
【0024】
また、この発明に係るスクリーン版及びメタルマスク版用洗浄機は、上記いずれかの多方弁を送風用配管経路中に設けている。したがって、多方弁の弁部が故障した場合でも、必ず1つの分岐部から空気が流出することができるので、この多方弁の空気流れ上流側に設置されたブロワーが過負荷状態にならず、ヒータが異常加熱することがない乾燥機能付き装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1に係る多方弁を用いたスクリーン版及びメタルマスク版用洗浄機の全体斜視図である。なお、スクリーン版及びメタルマスク版については版として、スクリーン版及びメタルマスク版用洗浄機については版洗浄機として以下説明する。
版洗浄機の筐体1は略直方体の箱型形状をしており、上側筐体1aと下側筐体1bとから構成されている。上側筐体1a内の略中央部には、スクリーン印刷に使用された版2が配置されている。この版2の表面(図1における左側面側)及び裏面(図1における右側面側)と対向する位置には、それぞれ洗浄・乾燥ブース3a及び3bが設けられている。これら洗浄・乾燥ブース3a及び3bは版2の洗浄範囲に対応した箱型形状をしており、版2側が開口した形状となっている。
【0026】
上側筐体1a内の右側上方には、多方弁10が設置されており、この多方弁10には、吸気部12及び、4つ(N=4、Nは自然数)の分岐部13a〜13dが設けられている。吸気部12はブロワー4(設置位置は後述)と配管6eによって接続されている。また、分岐部13aは配管6aによって洗浄・乾燥ブース3aの上面部と、分岐部13bは配管6bによって洗浄・乾燥ブース3bの側面部と、分岐部13cは配管6cによって洗浄・乾燥ブース3bの上面部と、分岐部13dは配管6dによって洗浄・乾燥ブース3bの側面部とそれぞれ接続されている。
【0027】
下側筐体1bには、ブロワー4及び洗浄液タンク5等が設置されている。上述のように、ブロワー4は配管6eによって多方弁10の吸気部12と接続されている。また、洗浄液タンク5は、配管(図示せず)によって、洗浄・乾燥ブース3a及び3bのそれぞれの内部に設けられた洗浄ノズル(図示せず)と接続されている。
【0028】
図2は、本実施の形態1に係る多方弁10の縦断面模式図である。多方弁10は本体部11、分岐部13a〜13d、及び弁部20a〜20c等から構成されている。本体部11は例えば略直方体の形状をしており、下面部11aの左側には、本体部11と連通した吸気部12が設けられている。また、本体部11の上面部11bには、左側から例えば4つの分岐部13a〜13dが設けられている。これら分岐部13a〜13dは、それぞれ本体部11と連通している。
【0029】
本体部11の内部には、分岐部13a〜13cのそれぞれの下方に略L字形状の固定板11ea〜11ecが設けられている。これら固定板11ea〜11ecの上側の端部及び側部は、それぞれ本体部11の上面部11b、前面部11c及び後面部11dの内壁に例えば溶接によって固定されている。また、本体部11には、弁部20a〜20cが設けられている。これら弁部20a〜20cは、固定板11ea〜11ecのそれぞれの下方に設けられている。
なお、固定板11eの形状は、本実施の形態1の形状に限られず、例えば平板状の部材を斜めに設けてもよい。
【0030】
図3は、本実施の形態1に係る弁部20aを示す詳細図であり、(a)は弁部20aが全開状態の詳細図、(b)は弁部20aが全閉状態の詳細図を示す。また、図4は、図3のA−A断面図である。なお、図4においては、弁部20aの説明を容易にするため、開閉板21及びレール部22を示し、シリンダ23、ブッシュ24、クッション25及びパッキン26を省略している。また、弁部20b及び20cは弁部20aと同様の構成であるので、弁部20aのみの説明を以下に示す。
【0031】
弁部20aは、開閉板21、レール部22、シリンダ23、パッキン24、ブッシュ25及びクッション26等から構成されている。開閉板21は例えば略長方形状の板部材であり、片面には、例えば略長方形状の板部材である接続部21aが溶接等によって接合されている。この接続部21aには、シリンダ23との接続部となる略U字形状の切り欠き21bが形成されている。
なお、本実施の形態1では開閉板21と接続部21aは別部品を溶接接合して形成しているが、これに限らず、例えば板部材を略L字形状に折り曲げて形成してもよい。
【0032】
図4に示すように、本体部11の前面部11c及び後面部11dの内壁にはそれぞれレール部22が設けられている。これらレール部22の本体11内部側の側面には、上下方向に凹形状の溝部22aが形成されている。開閉板21は、両側部がこの溝部22aに挿入されており、上下方向に摺動自在に支持されている。このとき、開閉板21は、接続部21aが設けられている面と反対の面が固定板11eの下側の端部と密着する位置に設けられている。
【0033】
図3に示すように、本体部11の下面部11aにはシリンダ23が設けられている。シリンダ23のシリンダロッド23aは、下面部11aに形成された孔11a≡に挿通され、本体11の内部に突出している。また、シリンダ23と下面部11aとの間にはパッキン24が設けられており、孔11a≡を介して本体部11内部の空気が漏れることを防止している。シリンダロッド23aの先端部には、例えば略円筒形状のブッシュ25が取り付けられている。このブッシュ25は略中心部に上下方向の雌ねじ部(図示せず)が形成されており、シリンダロッド23aの先端部に形成された雄ねじ部(図示せず)に螺合されて取り付けられている。
【0034】
なお、シリンダロッド23aへのブッシュ25の取り付け方法は本実施の形態1の方法に限定されるものでなく、例えばシリンダロッド23aをブッシュ25に形成された孔に嵌入して取り付けてもよい。
【0035】
このブッシュ25は、開閉板21の接続部21aに形成された略U字形状の切り欠き21bに挿入されている。ブッシュ25の両端部には鍔部25aが形成されており、この鍔部25aが抜け防止となって、開閉板21とシリンダ23とが接続されている。また、開閉板21の接続部21aの上下面側に形成される、開閉板21の接続部21aとブッシュ21の鍔部25aとの間には、それぞれクッション26が設けられている。
【0036】
(弁部20の組立方法)
本体部11の下面部11aは着脱可能となっている。レール部22は本体部11の内部に例えば溶接によって固定されている。このレール部22の溝部22aに開閉板21を挿入する。
【0037】
一方、下面部11aにおいては、下面部11aを本体部11から取り外した状態で、下面部11aとシリンダ23との間にパッキン24を挟み込むようにして、下面部11aにシリンダ23を取り付ける。次に、シリンダロッド23aの先端部の所定の位置に、クッション26が設けられたブッシュ25を取り付ける。次に、シリンダロッド23aに設けられたクッション26同士の間と、開閉板21の接続部21aに形成された略U字形状の切り欠き21bとが対向する位置まで、下面部11aを持ってシリンダロッド23a、ブッシュ25及びクッション26を本体11内に挿入する。次に下面部11aを右方向にスライドさせ、クッション26とクッション26との間に開閉板21の接続部21aを挿入する。最後に、本体11に下面部11aを例えばネジ締めにより固定する。
【0038】
(動作の説明)
まず、多方弁10の動作について説明する。
図3(a)に示すように、シリンダ23のシリンダロッド23aが下降端まで縮むと、開閉板21の下側端部21cが本体部11の下面部11aの内壁と密着する。そして、本体部11の下面部11a、前面部11c及び後面部11dと固定板11eaとによって形成される空間を閉塞する。つまり、下流(分岐部13b〜13d)への経路を遮断する。このとき、シリンダロッド23aのストロークは開閉板21のストロークStよりも長くなっているため、ブッシュ25に設けられている上側のクッション26が押縮される。
【0039】
図3(b)に示すように、シリンダ23のシリンダロッド23aが上昇端まで延びると、開閉板21の上側端部21dが本体部11の上面部11bの内壁と密着する。そして、本体11の上面部11b、前面部11c及び後面部11dと固定板11eaとによって形成される空間を閉塞する。つまり、分岐部13aへの経路を遮断する。上述のように、シリンダロッド23aのストロークは開閉板21のストロークStよりも長くなっているため、ブッシュ25に設けられている下側のクッション26が押縮される。
【0040】
このように、シリンダロッド23aのストロークと開閉板21のストロークStとの差分をクッション26が吸収してくれるので、シリンダロッド23aのストローク調整が容易となる。
【0041】
図5及び図6は、本実施の形態1に係る多方弁10の動作を示す縦断面模式図である。
図5(a)に示すように、弁部20a〜20cのいずれもが全開状態の場合、吸気部12から本体部11内に流入した空気は、分岐部13aから流出する。弁部20aによって下流(分岐部13b〜13d)への経路が遮断されているため、吸気部12から本体部11内に流入した空気は分岐部13b〜13dへは流れない。
【0042】
図5(b)に示すように、弁部20aが全閉状態、弁部20b及び20cが全開状態の場合、吸気部12から本体部11内に流入した空気は、分岐部13bから流出する。弁部20aによって分岐部13aへの経路が遮断されているため、吸気部12から本体部11内に流入した空気は分岐部13aへは流れない。また、弁部20bによって下流(分岐部13c及び13d)への経路が遮断されているため、吸気部12から本体部11内に流入した空気は分岐部13c及び13dへは流れない。
【0043】
図6(c)に示すように、弁部20a及び20bが全閉状態、弁部20cが全開状態の場合、吸気部12から本体部11内に流入した空気は、分岐部13cから流出する。弁部20a及び20bによって分岐部13a及び13bへの経路がそれぞれ遮断されているため、吸気部12から本体部11内に流入した空気は分岐部13a及び13bへは流れない。また、弁部20cによって下流(分岐部13d)への経路が遮断されているため、吸気部12から本体部11内に流入した空気は下流分岐部13dへは流れない。
【0044】
図6(d)に示すように、弁部20a〜20cのいずれもが全閉状態の場合、吸気部12から本体部11内に流入した空気は、分岐部13dから流出する。弁部20a〜20cによって分岐部13a〜13cへの経路がそれぞれ遮断されているため、吸気部12から本体部11内に流入した空気は分岐部13a〜13cへは流れない。
【0045】
続いて、本実施の形態1に係る多方弁10を用いた版洗浄機の動作について説明する。
洗浄動作が開始されると、洗浄・乾燥ブース3a及び3bがそれぞれ版2の方へ移動し、版2を挟み込む。このとき、洗浄・乾燥ブース3a及び3bの各開口部の周縁にはパッキンが設けられているので、版2の洗浄範囲は、洗浄・乾燥ブース3a及び3bで密閉された状態となる。その後、洗浄液タンクに貯蔵されている洗浄液が、洗浄・乾燥ブース3a及び3bのそれぞれの内部に設けられた洗浄ノズルから噴射され、版2を洗浄する。
【0046】
洗浄動作が終了した後、乾燥動作が開始される。乾燥動作が開始されると、ブロワー4が駆動され、ブロワー4によって吸引された空気は配管6eを通って多方弁10に送られる。このとき、多方弁10の弁部20a〜20cはいずれも全開状態(図5(a)の状態)となっているので、図1に示すように、多方弁10に送られた空気は、配管6aを通って洗浄・乾燥ブース3aの上面部から吹き出される。この洗浄・乾燥ブース3aの上面部から吹き出される空気によって、版2の表面に付着した洗浄液等を下方へ吹き飛ばす。
【0047】
その後、多方弁10の弁部20a及び20bは全閉状態、弁部20cは全開状態(図6(c)の状態)となり、多方弁10に送られた空気は、配管6cを通って洗浄・乾燥ブース3bの上面部から吹き出される。この洗浄・乾燥ブース3bの上面部から吹き出される空気によって、版2の裏面に付着した洗浄液等を下方へ吹き飛ばす。
【0048】
その後、多方弁10の弁部20aが全閉状態、弁部20b及び20cが全開状態(図5(b)の状態)となり、多方弁10に送られた空気は、配管6bを通って洗浄・乾燥ブース3aの側面部から吹き出される。この洗浄・乾燥ブース3aの側面部から吹き出される空気によって版2の表面を乾燥する。
【0049】
その後、多方弁10の弁部20a〜20cはいずれも全閉状態(図6(d)の状態)となり、多方弁10に送られた空気は、配管6dを通って洗浄・乾燥ブース3bの側面部から吹き出される。この洗浄・乾燥ブース3bの側面部から吹き出される空気によって版2の裏面を乾燥し、乾燥動作が終了する。
【0050】
このように構成された多方弁10においては、分岐部13の数よりも弁部20の数の方が少なくできるので、多方弁10を小型で安価に製作することができる。また、この多方弁10を用いた版洗浄機においては、必ず1つの分岐部20から空気が流出することができるので、多方弁20の空気流れ上流側に設置されたブロワー4が過負荷状態になることがない。
【0051】
また、開閉板21の両側部がこの溝部22aに挿入されているので、弁部20の気密性が向上する。
また、ブッシュ25が略U字形状の切り欠き21bに挿入されて、開閉板21とシリンダ23とを接続しているので、開閉板21とシリンダ23との接続が容易となる。
また、開閉板21の接続部21aとブッシュ21の鍔部25aとの間には、それぞれクッション26が設けられているので、シリンダロッド23aのストロークと開閉板21のストロークStとの差分をクッション26が吸収してくれるため、シリンダロッド23aのストローク調整が容易となる。
【0052】
なお、本発明に係る多方弁は本実施の形態1に係る多方弁10の構成に限定されるものではない。例えば、分岐部13の数を増減してもよい。開閉弁20の駆動源もシリンダ23である必要はない。直動アクチュエータであればモータ内蔵式など種々の駆動源を適用することができる。
【0053】
また、開閉弁20を直動式でなく回転式としてもよい。例えば平板形状の開閉板20の一方の端部を、本体部11の上面部11bの内壁に回動自在に固定する。開閉板20の他方の端部を上昇させた状態で分岐部13を閉塞し(全閉状態)、下降させた状態で下流への流路を遮断(全開状態)する。このように回転式の開閉板20を設けても本発明を実施可能である。
【0054】
また、本実施の形態1に係る版洗浄機のブロワー4と多方弁10との間にヒータを設けてももちろんよい。多方弁10を用いる装置としては、版洗浄機に限られず、例えば食器乾燥機等の乾燥機能が搭載された装置に多方弁10を用いてももちろんよい。水など空気以外の流体経路に多方弁10を使用することも可能である。
【0055】
実施の形態2.
実施の形態1では、シリンダ23として、停止位置が上昇端及び下降端となるいわゆる2ポジションシリンダを用いた。このため、多方弁10に流入した空気は、一箇所の分岐部のみから流出する構成となっていた。しかしながら、シリンダ23として、上昇端、下降端、及び上昇端と下降端の間となる位置で停止する、いわゆる3ポジションシリンダを用いることにより、多方弁10に流入した空気を複数の分岐部から流出させることが可能となる。
なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一機能については同一の符号を用いて述べることとする。
【0056】
図7及び図8は、本実施の形態2に係る多方弁10の動作を示す縦断面模式図である。図7(a)に示すように、弁部20aが半開状態、弁部20b及び20cが全閉状態の場合、吸気部12から本体部11内に流入した空気は、分岐部13a及び13bから流出する。弁部20bによって下流(分岐部13c及び13d)への経路が遮断されているため、吸気部12から本体部11内に流入した空気は分岐部13c及び13dへは流れない。
なお、半開状態は全開状態と全閉状態の中間(つまり、シリンダロッド23aの下降端と上昇端の中間位置)である必要はなく、全開状態と全閉状態の間の状態であればどの状態でもよい。
【0057】
図7(b)に示すように、弁部20a及び20bが半開状態、弁部20cが全閉状態の場合、吸気部12から本体部11内に流入した空気は、分岐部13a〜13cから流出する。弁部20cによって下流(分岐部13d)への経路が遮断されているため、吸気部12から本体部11内に流入した空気は分岐部13dへは流れない。
【0058】
図8(c)に示すように、弁部20a〜20bのいずれもが半開状態の場合、吸気部12から本体部11内に流入した空気は、分岐部13a〜13dから流出する。
また、図8(d)に示すように、例えば分岐部13bから空気を流出したく無い場合には、弁部20bを全閉状態とすることにより、分岐部13bへの経路が遮断されるため、吸気部12から本体部11内に流入した空気は分岐部13bへは流れない。
【0059】
このように構成された多方弁10においては、吸気部12から本体11に流入してきた空気を任意に複数の分岐部から流出させることができる。
【0060】
実施の形態3.
多方弁10を各分岐部ごとに分割可能な構成としてもよい。
なお、本実施の形態3において、特に記述しない項目については実施の形態1又は2と同様とし、同一機能については同一の符号を用いて述べることとする。
【0061】
図9は、本実施の形態3に係る多方弁10を示す縦断面模式図であり、(a)は各ブロックに分割された状態の多方弁10、(b)は各ブロックが連結された状態の多方弁10を示す。図9(a)に示すように、多方弁10は、吸気ブロック30、分岐ブロック40、及びエンドブロック50から構成されている。
【0062】
吸気ブロック30は、本体部31及び吸気部12から構成されている。本体部31は略直方体の箱型形状をしており、右側側面に開口部を有している。この開口部周縁には、分岐ブロック40と連結するための連結部33が設けられている。また、本体部31の下面部には、本体部31と連通した吸気部12が設けられている。
【0063】
分岐ブロック40は、本体部41、分岐部13及び弁部20から構成されている。本体部41は略直方体の箱型形状をしており、両側面に開口部を有している。これら開口部の各周縁には、吸気ブロック30、分岐ブロック40又はエンドブロック50と連結するための連結部43が設けられている。本体部41の上面部には、本体部41と連通した分岐部13が設けられている。また、本体41の内部には、弁部20が設けられている。
【0064】
エンドブロック50は、本体部51及び分岐部13から構成されている。本体部51は略直方体の箱型形状をしており、左側側面に開口部を有している。この開口部周縁には、分岐ブロック40と連結するための連結部53が設けられている。また、本体部51の上面部には、本体部51と連通した分岐部13が設けられている。
【0065】
図6(b)に示すように、3つ(必要な分岐部の数−1)の分岐部ブロック40を、それぞれの連結部43を例えばネジ締め等により連結する。この連結された分岐ブロック40のうち最も左側の分岐ブロック40と吸気ブロック30とを、連結部43と連結部33を例えばネジ締め等により連結する。また、連結された分岐ブロック40のうち最も右側の分岐ブロック40とエンドブロック50とを、連結部43と連結部53を例えばネジ締め等により連結する。このようにすることで、分岐部13が4つ(分岐部13a〜13d)の多方弁10を得ることができる。
【0066】
このように構成された多方弁10においては、多方弁10の仕様に合わせて容易に分岐部13の数を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施の形態1に係る多方弁を用いた版洗浄機の全体斜視図である。
【図2】本実施の形態1に係る多方弁10の縦断面模式図である。
【図3】本実施の形態1に係る弁部20を示す詳細図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】本実施の形態1に係る多方弁10の動作を示す縦断面模式図である。
【図6】本実施の形態1に係る多方弁10の動作を示す縦断面模式図である。
【図7】本実施の形態2に係る多方弁10の動作を示す縦断面模式図である。
【図8】本実施の形態2に係る多方弁10の動作を示す縦断面模式図である。
【図9】本実施の形態3に係る多方弁10を示す縦断面模式図であり、(a)は各ブロックに分割された状態の多方弁10、(b)は各ブロックが連結された状態の多方弁10を示す。
【図10】従来の多方弁を用いた送風口切替用配管を示す構成図である。
【図11】図10の多方弁を示す断面模式図である。
【図12】図11のZ−Z断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 筐体、1a 上側筐体、1b 下側筐体、2 版、3a,3b 洗浄・乾燥ブース、4 ブロワー、5 洗浄液タンク、6a〜6e 配管、10 多方弁、11 本体部、11a 下面部、11a≡ 孔、11b 上面部、11c 前面部、11d 後面部、11e(a〜c) 固定板、12 吸気部、13(a〜d) 分岐部、20(a〜c) 弁部、21 開閉板、21a 接続部、21b 切り欠き、21c 下側端部、21d 上側端部、22 レール部、22a 溝部、23 シリンダ、23a シリンダロッド、24 パッキン、25 ブッシュ、25a 鍔部、26 クッション、30 吸気ブロック、31 本体部、33 連結部、40 分岐ブロック、41 本体部、43 連結部、50 エンドブロック、51 本体部、53 連結部、101 ブロワー、102 ヒーター、110 多方弁、111 本体部、112(a〜d) 分岐部、113 弁部、114 開閉弁、115 回転軸、116 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部の一方の側に設けられ、該本体部と連通する吸気部と、
前記本体部の前記吸気部から前記本体部の他方の側にかけて設けられ、該本体部と連通するN個(N>2)の分岐部と、
前記吸気部から最も遠い前記分岐部を除く前記分岐部に対応して(N−1)個並設された弁部と、
からなり、
前記弁部が全開状態においては、対応する前記分岐部への流体経路を開いて、該分岐部よりも前記吸気部から遠い前記分岐部への流体経路を遮断し、
前記弁部が全閉状態においては、対応する前記分岐部への流体経路を遮断して、該分岐部よりも前記吸気部から遠い前記分岐部への流体経路を開くことを特徴とする多方弁。
【請求項2】
前記弁部は、前記全開状態と前記全閉状態の間の半開状態で停止することを特徴とする請求項1に記載の多方弁。
【請求項3】
前記吸気部を有する吸気ブロックと、
前記分岐部及び前記弁部を有する(N−1)個の分岐ブロックと、
前記分岐部を有するエンドブロックと、
を順次連結することにより構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多方弁。
【請求項4】
前記弁部は、
少なくとも、
前記本体部内壁に設けられ、前記開閉板が挿入される溝部を有するレール部と、
前記溝部に挿入された開閉板と、
該開閉板を駆動する直動アクチュエータからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多方弁。
【請求項5】
前記開閉板にはU字形状の切り欠きが形成され、
前記直動アクチュエータの先端部には、両端部に抜け防止用の鍔部が形成されたブッシュが設けられ、
該ブッシュが前記切り欠きに挿入されて、前記開閉板と前記直動アクチュエータとが接続されていることを特徴とする請求項4に記載の多方弁。
【請求項6】
前記ブッシュには、
前記鍔部と前記開閉板との間にクッションが設けられていることを特徴とする請求項5に記載の多方弁。
【請求項7】
前記直動アクチュエータは、シリンダであることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載の多方弁。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の多方弁を送風用配管経路中に設けたことを特徴とする乾燥機能付き装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の多方弁を送風用配管経路中に設けたことを特徴とするスクリーン版及びメタルマスク版用洗浄機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−115290(P2009−115290A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292009(P2007−292009)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(391006773)株式会社沖電気コミュニケーションシステムズ (16)
【Fターム(参考)】