説明

多構成成分繊維中のデンプン構成成分の水溶解度を減少するための組成物及び方法

デンプン不溶化剤及び熱可塑性ポリマーを含む第1構成成分、並びに非構造化デンプン及び可塑剤を含む第2構成成分を含む、溶融紡糸可能な多構成成分繊維が提供される。不溶化剤は、第2構成成分のデンプンに作用して、繊維が水に暴露された場合にデンプンをより可溶性でなくする。本発明はまた、多構成成分繊維を含む不織布ウェブ及び使い捨て物品を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にデンプン構成成分が、繊維のポリマー構成成分中に最初に存在する不溶化剤への暴露により少なくとも部分的に不溶化された場合の、デンプン及びポリマーを含む多構成成分繊維に関する。繊維は、不織布ウェブ及び使い捨て物品を製造するために用い得る。
【背景技術】
【0002】
多くの要因のために、デンプン含有繊維を高速の産業レベルで製造することは、それほど成功していない。費用、加工の困難さ、及び最終使用特性のために、商業的にはほとんど又は全く成功していない。デンプン繊維は、デンプンを含有するフィルム、ブロー成形物品、及び射出成形物品より製造がはるかに困難である。これは、デンプンの加工に必要な加工時間が、デンプンの迅速な結晶化又はその他の構造形成の特徴により短いためである。繊維製造においては、局所ひずみ速度及び剪断速度が、他のプロセスよりもはるかに大きい。更に、繊維紡糸には均一組成物が必要とされる。微細繊維を紡糸するために、小さな欠陥、わずかな不一致、又は溶融物の不均一性は、商業的に実行可能なプロセスにとっては容認できない。そのため、材料の選択、繊維の構造、及び加工条件は重要である。加工中の困難さに加えて、最終使用特性が多くの商業用途に好適でない。これは、デンプン繊維は典型的には低い引張り強度を有し、粘着性があるためである。
【0003】
より容認可能な加工性及び最終使用特性を有する繊維を製造するために、非デンプン系熱可塑性ポリマーをデンプンと組み合わせて用いることは望ましい。熱可塑性ポリマーの溶融温度は、使用中の溶融又は過度の構造変形を防ぐため最終使用安定性のために十分高いことが必要であるが、複合繊維がデンプンと共に加工可能であるように十分低いことも必要である。
【0004】
費用効率が高く、容易に加工可能であり、機能的な、また容認可能な耐水性を有する、デンプン含有繊維への要求が現在でも満たされずに存在している。デンプンを含有する熱可塑性組成物を、例えば米国特許第6,218,532号(マーク(Mark)ら、2001年4月17日)のように架橋によって、より不溶性にする方法が存在するが、こうした架橋はデンプン二構成成分繊維の加工性に逆の影響を与える。マーク(Mark)らによって製造される繊維は加工前に架橋されるが、それによって、それらの加工性及び小さい直径に製造されるそれらの全体的な能力を制限する。米国特許第5,874,486号(バスティオリ(Bastioli)ら、1999年2月23日)は、デンプン構成成分と熱可塑性ポリマーを包含する基質を含むポリマー組成物に関し、その際高濃度の充填剤がデンプン中に分散されている。米国特許第5,844,023号(トムカ(Tomka)、1998年12月1日)は、不連続構成成分として分散するデンプン及び少なくとも1つの特定ポリマーから本質的に成るポリマー分散物に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水の存在下での多構成成分繊維のデンプン構成成分からのデンプンの質量損失の問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1構成成分及び第2構成成分を含む溶融紡糸可能な多構成成分繊維を対象とする。第1構成成分は、デンプン不溶化剤及び熱可塑性ポリマーを含み、並びに第2構成成分は非構造化された、典型的には熱可塑性デンプンを含む。不溶化剤は、第2構成成分のデンプンに作用して、繊維が水に暴露された場合にデンプンをより可溶性でなくする。こうした相互作用は、接合部分を越えて隣接するデンプン領域を不溶性にする不溶化剤の第1構成成分からの拡散を含んでもよいし、繊維全体における剤の平衡に到達する第2デンプン構成成分全体への不溶化剤の拡散、そこに形成される拡散の勾配を含んでもよいし、又は例えばデンプンとの化学反応を含んでもよい。結果として得られる繊維は、不溶化剤なしの同様の繊維より、水と接触する場合にデンプンの損失がより少ない。加工中に第2の構成成分に不溶化剤を添加することに伴う困難は、こうした組成物が非常に悪い紡糸可能性を有することである。本発明の実施形態は、不溶化剤が第2構成成分のデンプンに作用した後の結果として得られる繊維である。こうした繊維は、非構造化不溶化デンプン、又は典型的には熱可塑性不溶化デンプンを含む第2構成成分を含む。
【0007】
多構成成分繊維の構造は、例えば、シース−コア、海島、サイド・バイ・サイド、分割パイ(segmented pie)、又はこれらの様々な組み合わせであることもできる。潜在的に水と接触する構成成分中、即ち、例えばシース−コア構造のシース中にデンプンが存在する実施形態では、可溶性デンプンは水との接触に際し取り除かれ得る。しかしながらこうした構造では、不溶化デンプンはシース構成成分中に残留し、コア構成成分の周囲にコーティングを形成することができる。
【0008】
こうした構成成分は費用効率が高く、市販の機器に用いるのに好適であると同時に、総組成物に顕著な量を占め、生分解性である。本発明の繊維は、既存の繊維より高い湿潤強度及びより低い水溶解度を有する。結果として得られる、本発明の多構成成分繊維の少なくとも部分的に不溶化されたデンプンは、水と接触して置かれた場合に、既存の繊維と比べてより少ないデンプンの損失を有する。本発明はまた、前記多構成成分繊維を含む不織布ウェブ及び使い捨て物品を対象とする。不織布ウェブはまた、本発明の繊維とブレンドされる他の合成繊維又は天然繊維を含有してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のこれら及びその他の特性、態様、及び利点は、以下の説明、添付の請求項、及び添付図面に関連して、よりよく理解されるであろう。図面中、構成成分Xは第2構成成分であり、及び構成成分Yは第1構成成分である。反転した実施形態では、構成成分Xは第1構成成分であり、及び構成成分Yは第2構成成分である。
【0010】
本明細書で用いられるすべての百分率、比率、及び割合は、特に指定しない限り、組成物の重量百分率による。すべての平均値は、特に明確に指定しない限り、組成物又はその構成成分の「重量により」計算される。ポリマーの「平均分子量」又は「分子量」は、特に指定しない限り、数平均分子量を指す。数平均分子量は、特に指定しない限り、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される。本明細書に引用されるすべての特許又はその他の出版物は、その参照文献が引用された目的のために、その中に含有されるすべての文章に関して、本明細書に参考として組み込まれる。いずれかのこうした特許又は出版物を含むことは、引用した参照文献が先行技術として引用できる、又はその中の対象が本発明に対して実質的な先行技術であるという承認を意図するものではない。
本明細書は(1)本発明の多構成成分繊維の材料、(2)多構成成分繊維の構造、(3)多構成成分繊維の材料特性、(4)プロセス、及び(5)物品、の詳細な記述を含有する。
【0011】
(1)材料
(第1構成成分材料:熱可塑性ポリマー)
熱可塑性ポリマーは、配合中のデンプンの顕著な分解を防ぐためには十分に低いが、繊維の使用中の熱安定性のために十分高い溶融温度を有する。熱可塑性ポリマーの好適な溶融温度は、約60℃〜約250℃、及び好ましくは約90℃〜約215℃である。熱可塑性ポリマー含有構成成分の組成物の溶融温度が上記の範囲内であるように、可塑剤又は希釈剤又はその他のポリマーが観測される溶融温度を、低下するために用いられる場合には、250℃を超える溶融温度(Tm)を有する熱可塑性ポリマーが用いられてもよい。0℃未満のガラス転移(Tg)温度を有する熱可塑性ポリマーを用いることが望ましい場合がある。熱可塑性ポリマー構成成分は、溶融紡糸に好適なレオロジー特性を有する。ポリマーの分子量は、ポリマー分子間の絡み合いを可能にするために十分高いが、溶融紡糸可能であるように十分低いことが必要である。溶融紡糸について、好適な熱可塑性ポリマーは、約1,000,000g/mol以下、好ましくは約5,000g/mol〜約800,000g/mol、より好ましくは約10,000g/mol〜約700,000g/mol、及び最も好ましくは約20,000g/mol〜約500,000g/molの分子量を有することができる。
【0012】
熱可塑性ポリマーは、短繊維(紡糸延伸法)又はスパンボンド/メルトブローン連続長繊維法として既知の方法で典型的に遭遇するような、好ましくは外延的流れの下で、かなり短時間で固化し、望ましくは熱的に安定な繊維構造を形成できることが必要である。本明細書で使用する時、「熱的に安定な繊維構造」は、繊維がそれらの形成の5分以内に25℃及び周囲大気圧で相対湿度50%の環境に設置される場合に、24時間にわたって顕著な溶融又は寸法の変化を示さないこととして定義される。対応するもとの繊維直径の長さを基準として用いる場合、測定される繊維直径において25%を超える差の寸法の変化は顕著であると考えられる。もとの繊維が円形でない場合は、最も短い直径を計算に用いることが必要である。最も短い直径を、24時間後の測定に用いることもまた必要である。好適な熱可塑性ポリマーには、ポリオレフィン、例えば低密度、高密度、直鎖低密度、又は超低密度ポリエチレンを含むポリエチレン又はそれらのコポリマー、アタクチックポリプロピレンを含むポリプロピレン又はそれらのコポリマー;ポリブチレン又はそれらのコポリマー;ポリアミド又はそれらのコポリマー、例えばナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66;ポリエステル又はそれらのコポリマー、例えばポリエチレンテレフタレート;オレフィンカルボン酸コポリマー、例えばエチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/マレイン酸コポリマー、エチレン/メタクリル酸コポリマー、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、又はこれらの組み合わせ;ポリアクリレート、ポリメタクリレート、及びそれらのコポリマー、例えばポリ(メチルメタクリレート)が挙げられる。ポリマーのその他の非限定例には、ポリカーボネート、ポリビニルアセテート、ポリ(オキシメチレン)、スチレンコポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン/メチルメタクリレートコポリマー、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。幾つかの実施形態では、熱可塑性ポリマーには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エチレンアクリル酸、ポリオレフィンカルボン酸コポリマー、ポリエステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0013】
生分解性熱可塑性ポリマーはまた本明細書に用いるのに好適である。生分解性材料は、生分解性材料が地中に埋められるか、さもなければ微生物と接触する(微生物の成長を招く環境条件での接触を含む)場合に、カビ、真菌、及び細菌のような微生物によって同化されやすい。好適な生分解性ポリマーには、好気的若しくは嫌気的消化処理を用いて、又は日光、雨、湿気、風、温度などの環境要素への暴露の効果によって環境で分解可能であるような生分解性の材料も包含される。生分解性熱可塑性ポリマーは、個々に又は生分解性又は非生分解性ポリマーの組み合わせとして用いることができる。生分解性ポリマーには、脂肪族構成成分を含有するポリエステルが挙げられる。ポリエステルの中では、脂肪族構成要素及びポリ(ヒドロキシカルボン)酸を含有するエステル重縮合物がある。エステル重縮合物には、二酸/ジオール脂肪族ポリエステル(例えば、ポリブチレンコハク酸エステル、ポリブチレンコハク酸エステル−コ−アジピン酸エステル)、脂肪族/芳香族ポリエステル(例えば、ブチレンジオール、アジピン酸、及びテレフタル酸から製造されるターポリマー)が挙げられる。ポリ(ヒドロキシカルボン)酸には、乳酸系ホモポリマー及びコポリマー、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、又は他のポリヒドロキシアルカノエートのホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。こうしたポリヒドロキシアルカノエートには、C6〜C12、及びそれより高級なもののような、より高級な鎖長モノマーを有するPHBのコポリマーが挙げられる。
【0014】
好適な市販のポリ乳酸の例は、カーギル・ダウ(Cargill Dow)からのネイチャーワークス(NATUREWORKS)及び三井化学からのラシエ(LACEA)である。好適な市販の二酸/ジオール脂肪族ポリエステルの例は、昭和高分子株式会社(Showa High Polymer Company,Ltd.)(日本、東京)からビオノーレ(BIONOLLE)1000及びビオノーレ(BIONOLLE)3000として販売されているポリブチレンコハク酸エステル/アジピン酸エステルコポリマーである。好適な市販の脂肪族/芳香族コポリエステルの例は、イーストマン化学(Eastman Chemical)からイースター・バイオ(EASTAR BIO)コポリエステルとして、又はバスフ(BASF)からのエコフレックス(ECOFLEX)として販売されている、ポリ(テトラメチレンアジピン酸エステル−コ−テレフタル酸エステル)である。
【0015】
ポリマーの選択及びポリマーの量は、当業者に理解されるように、最終製品の柔軟性、質感、及び特性に影響する。熱可塑性ポリマー構成成分は、単一ポリマー種又は二以上の非デンプン系熱可塑性ポリマーのブレンドを含有することができる。更にその他の材料が熱可塑性ポリマー構成成分中に存在することができる。典型的には、熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマー構成成分全体の約51重量%〜約100重量%、好ましくは約60重量%〜約95重量%、より好ましくは約70重量%〜約90重量%の量で存在する。
【0016】
(追加の第1構成成分材料:デンプン不溶化剤)
デンプン不溶化剤は、非構造化デンプンを、剤の存在しないデンプンより水溶性でなくする化学種である。剤はまたこうした不溶化を多構成成分繊維構造の繊維の二構成成分の接合部分を越えて伝えることができる。剤は不溶性を生じるデンプンと物理的なつながりを有してもよく、又はデンプンとの化学反応が生じてデンプンを被覆又はデンプンを架橋して不溶性を生じてもよい。いずれにしても、特別の、電子的、化学結合、水素結合、架橋、又は物理的絡み合わせが生じて、剤の存在しない場合よりデンプンをより水溶性でなくする。
【0017】
剤は、熱可塑性ポリマーもまた包含する第1構成成分中に提供される。剤は第1構成成分から多構成成分繊維の接合部分を越えて拡散して、第2構成成分中の隣接するデンプン領域を不溶性にしてもよいし、第2デンプン構成成分全体に拡散して繊維全体の剤の平衡に到達し及びその過程で拡散の勾配を提供してもよいし、又は例えば架橋によりデンプンと化学反応してもよい。結果として得られる繊維は、不溶化剤が存在しない繊維より、デンプンの顕著に小さい水溶解度を有する。加工中に第2の構成成分に不溶化剤を添加することに伴う困難は、こうした組成物が非常に悪い紡糸可能性を有することである。可溶化剤の効果は、デンプン構成成分の水溶解度の少なくとも部分的な減少により測定される。
【0018】
不溶化剤の例には、室温(25℃)を超える、並びに約275℃の熱可塑性デンプンの高い方の加工温度及び200℃を超える最小沸点温度未満の溶融温度を有する脂肪族又は芳香族カルボン酸又はカルボキシアミドが挙げられる。こうした不溶化剤には、飽和又は不飽和C8〜C22脂肪酸、例えばカプリル酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、エルカ酸、又は上記に列挙された脂肪酸の対応する脂肪酸アルコール若しくはアミド、特に前記脂肪酸のモノ−、ジ−、又はトリグリセリドが挙げられる。好適な脂肪族又は芳香族カルボキシアミドの例は、例えばステアルアミド、ベンズアミド、又はプロピオンアミドである。
【0019】
当該技術分野において既知の架橋剤もまた不溶化剤として用いてもよい。こうした架橋剤は、2つのデンプン分子をそれらの鎖に沿って様々な位置で共有架橋、又は架橋するために用いられる二官能性又は多官能性試薬であってもよい。例には、例えばホルムアルデヒド、エピクロロヒドリン、リン酸、アクロレイン、イソシアネート、エポキシ、無水物、又はこれらの混合物が挙げられる。更に、紫外線又は赤外線開始架橋反応が用いられてもよく、その場合は入射光が、次にデンプン基質を架橋する遊離ラジカルを生成する。架橋反応はまた、デンプンとデンプン可塑剤との間、デンプン可塑剤間、並びに熱可塑性ポリマーとデンプン若しくはデンプン可塑剤、又はこれらの様々な組み合わせにおいて、単独で若しくはその分布として生じることができる。これらの反応のすべては、それらが繊維の質量損失を減少する限り、等価の意味を有する。
デンプン不溶化剤は第1構成成分中に、組成物の約50重量%未満、約0.1重量%〜約40重量%、又は典型的には約0.1重量%〜約15重量%若しくは0.1重量%〜約30重量%の量で存在してもよい。
【0020】
(第2構成成分材料:非構造化デンプン)
本発明は、低価格の天然に生じるバイオポリマーである、デンプンの使用に関する。本発明に用いられるデンプンは、熱可塑性非構造化デンプンである。「非構造化デンプン」という用語は、もはやその天然に生じる粒状構造ではないデンプンを意味するために用いられる。「熱可塑性デンプン」又は「TPS」という用語は、繊維中に紡糸できてもよいようにその熱可塑性流動特性を改善するための可塑剤を有するデンプンを意味するために用いられる。
【0021】
天然デンプンは、従来の熱可塑性ポリマーのように溶融又は流動しない。天然デンプンは一般に粒状構造を有するため、熱可塑性材料のように溶融加工及び紡糸され得る前に「非構造化される」又は「非構造化」されることが必要である。理論に束縛されることを意図しないが、デンプンの粒状構造は、デンプン粒中の不連続なアミロペクチン及びアミロース領域の構造を含む粒を特徴とする。この粒状構造は、非構造化中に破壊され、その後溶媒又は可塑剤の存在下で、デンプン構成成分の体積の膨張が観察され得る。溶媒又は可塑剤の存在下で非構造化を経験するデンプンは、また典型的には、溶媒又は可塑剤を有する非構造化されていないデンプンに対して粘度の増加を有する。結果として得られる非構造化デンプンは、ゼラチン形態、又は乾燥及び又は徐冷に際し結晶形態であることができるが、しかしながらデンプンの天然の粒状構造を一旦破壊すると一般には元に戻らない。デンプンは、繊維の紡糸プロセスに影響する塊が存在しないように、完全に非構造化されることが望ましい。デンプンを非構造化するために用いられる非構造化剤は、更なる加工中にデンプンと共に残留してもよいし、又はそれがデンプンと共に紡糸繊維中に残留しないように取り除かれるという点で一時的なものであってもよい。
【0022】
デンプンは、様々な異なる方法で非構造化されることができる。デンプンは、溶媒により非構造化され得る。例えばデンプンは、デンプン及び溶媒の混合物に熱を受けさせて(これは加圧条件及び剪断力下で行うことができる)デンプンをゼラチン化して非構造化をもたらすことにより非構造化され得る。溶媒はまた可塑剤としても作用することができ、その後の加工中に可塑剤として機能するために組成物中に望ましくは保持されてもよい。デンプンを非構造化する溶媒として作用できる多様な可塑剤が本明細書に記載される。これらには低分子量の又はモノマーの可塑剤、例えばこれらに限定されないがヒドロキシル含有可塑剤が挙げられ、多価アルコールに限定されないが、例えばマンニトール、ソルビトール、及びグリセリンなどの多価アルコールが挙げられる。水もまたデンプンの溶媒及び可塑剤として作用できる。
【0023】
従来の熱可塑性ポリマーのように、流動し及び溶融紡糸可能なデンプンのためには、可塑剤が存在することが必要である。非構造化剤が取り除かれる場合、一般に非構造化されたままでいることはデンプンの性質であるが、しかしながら繊維紡糸を促進するために、可塑剤がデンプン構成成分に添加されるか、又はさもなければ含まれて、熱可塑性の特性をデンプン構成成分に付与することが必要である。したがって紡糸中に存在する可塑剤は、デンプンを非構造化するために用いたのと同じものであってもよい。あるいは特に非構造化剤が上記のように一時的なものである場合(例えば水)、別の又は追加の可塑剤がデンプンに添加されてもよい。こうした追加の可塑剤は、繊維紡糸工程の間デンプン中に残留する限り、デンプンが非構造化される前、間、又は後に添加されることができる。
【0024】
好適な天然に生じるデンプンとしては、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、小麦デンプン、サゴパームデンプン、タピオカデンプン、米デンプン、大豆デンプン、クズウコンデンプン、ワラビデンプン、ハスデンプン、キャッサバデンプン、ワクシートウモロコシデンプン、高アミロースコーンスターチ、及び市販のアミロース粉末が挙げられるが、これらに限定されない。デンプンのブレンドもまた用いてもよい。すべてのデンプンは本明細書中で有用であるが、本発明は、豊富に供給され、容易に補充可能であり、安価であるという利点を有する農作物源から誘導される天然デンプンを用いて、ごく普通に実施される。天然に生じるデンプン、特にコーンスターチ、小麦デンプン、及びワクシートウモロコシデンプンは、それらの経済性及び入手可能性に起因して、好ましいデンプンポリマーの選択である。
【0025】
加工デンプンもまた用いてもよい。加工デンプンは、その元来の分子量の特徴を変化させた、非置換又は置換デンプンとして定義される(即ち、分子量は変えられているが、その他の変化は、デンプンに対して必ずしもなされていない)。いずれかの技術により分子量は変更、好ましくは減少できるが、多数の技術が当該技術分野において周知である。これらには、例えば、酸又はアルカリ加水分解、酸還元、酸化還元、酵素還元、物理的/機械的分解(例えば加工機器の熱機械エネルギーの入力を介する)又はこれらの組み合わせによるデンプンの化学修飾が挙げられる。熱機械法及び酸化法は、原位置で行われる場合、更なる利点を提供する。デンプンの実際の化学的性質及び分子量の減少方法は、平均分子量が所望の程度又は範囲で提供される限りは重要ではない。こうした技術ははまた分子量分布を減少することができる。
【0026】
天然の加工されていないデンプンは、一般に非常に高い平均分子量を有し、広い分子量分布を有する(例えば、天然コーンスターチは、約60,000,000グラム/モル(g/mol)までの平均分子量を有する)。本発明に用いるデンプンの分子量を減少することは望ましい。分子量の減少は、上記のものを含む当該技術分野において既知のいずれかの技術によって得ることができる。溶融物に添加される非構造化デンプン又はデンプンのブレンドの分子量の範囲は、約3,000g/mol〜約8,000,000g/mol、好ましくは約10,000g/mol〜約5,000,000g/mol、及びより好ましくは約20,000g/mol〜約3,000,000g/molであることができる。
【0027】
任意に置換デンプンを用いることができる。置換デンプンを提供するデンプンの化学修飾には、これらに限定されないがエーテル化及びエステル化が挙げられる。例えばメチル、エチル、又はプロピル(又はより大きい脂肪族基)は、当該技術分野において周知の従来のエーテル化及びエステル化技術を用いてデンプン上に置換されることができる。こうした置換は、デンプンが天然の粒状形態にあるか、又は非構造化された後に行うことができる。置換は、デンプンの生分解性の速度を減少し得るが、また非構造化のための時間、温度、剪断力、及び/又は圧力条件を減少することもできる。化学的に置換されたデンプンの置換の程度は必ずという訳ではないが典型的には、約0.01〜約3.0であり、及びまた約0.01〜約0.06であることができる。
【0028】
典型的には熱可塑性デンプンは、熱可塑性デンプン構成成分の約51重量%〜約100重量%、好ましくは約60重量%〜約95重量%、より好ましくは約70重量%〜約90重量%含まれる。デンプン構成成分と熱可塑性ポリマーの比は、二構成成分繊維の構成成分中の熱可塑性デンプンの百分率を決定する。組成物中のデンプンの重量は、デンプン及びその天然に生じる結合水含量を包含する。用語「結合水」は、本発明の組成物を製造するためにデンプンと他の構成成分とを混合する以前に、デンプンに自然に生じる水を意味する。用語「遊離水」は、本発明の組成物の製造において添加される水を意味する。成分が一旦組成物中に混合されると、水はもはやその発生源によって区別することはできないことを、当業者は理解するであろう。天然デンプンは、典型的には、デンプンの約5重量%〜約16重量%の結合水含量を有する。
【0029】
(可塑剤)
1以上の可塑剤が、デンプンを非構造化し及びデンプンを流動可能にするために、即ち熱可塑性デンプンを生成するために、本発明に用いることができる。上記のように、可塑剤はデンプンのための非構造化剤として用いてもよい。可塑剤は、熱可塑性デンプンのための可塑剤として機能するために非構造化されたデンプン構成成分中に残留してもよいし、又は取り除かれ及び熱可塑性デンプン構成成分中の異なる可塑剤により置き換えられてもよい。可塑剤はまた最終製品の可撓性を改善する場合があり、これは組成物のガラス転移温度の低下によるものであると考えられている。
【0030】
熱可塑性ポリマー構成成分のための可塑剤又は希釈剤は、ポリマーの溶融温度を低下する、最終製品の可撓性を変更する、又は熱可塑性デンプンのブレンドとの全体的な相溶性を改善するために存在してもよい。更に、より高い溶融温度を有する熱可塑性ポリマーは、ポリマーの溶融温度を抑える可塑剤又は希釈剤が存在する場合に用いられてもよい。
【0031】
一般に可塑剤は、共に混合される本発明のポリマー構成成分と実質的に相溶性であることが必要である。本明細書で使用する時、「実質的に相溶性である」という用語は、組成物の軟化温度及び/又は溶融温度を超える温度に加熱される場合に、可塑剤が混合される構成成分中に存在するポリマーと均一な混合物を形成することができることを意味する。
【0032】
本明細書の可塑剤は、モノマー化合物及びポリマーを包含することができる。ポリマー可塑剤は、典型的には500,000g/mol未満の分子量を有する。ポリマー可塑剤は、ブロックコポリマー及びランダムコポリマー(それらのターポリマーを包含する)を含むことができる。特定の実施形態では、可塑剤は、例えば約20,000g/mol以下、又は約5,000g/mol以下、又は約1,000g/mol以下の分子量の低分子量の可塑剤を有する。可塑剤は単独で用いられてもよいし、又は1を超える可塑剤が本発明のいずれかの特定構成成分中に用いられてもよい。
【0033】
可塑剤は、例えば、二以上のヒドロキシルを有する多価アルコールを含む、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物であることができる。有用なヒドロキシル可塑剤の非限定例には、糖(例えば、グルコース、スクロース、フルクトース、ラフィノース、マルトデキストロース、ガラクトース、キシロース、マルトース、ラクトース、マンノースエリトロース、及びペンタエリスリトール)、糖アルコール(例えば、エリスリトール、キシリトール、マリトール、マンニトール、及びソルビトール)、多価アルコール(例えば、グリセロール(グリセリン)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサントリオール)など、及びこれらのポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な可塑剤は、特にグリセリン、マンニトール、及びソルビトールが挙げられる。
【0034】
また本明細書で有用なのは、ヒドロキシルポリマー可塑剤、例えばポロキサマー(poloxomers)(ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)及びポロキサミン(エチレンジアミンのポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)である。これらのコポリマーは、ニュージャージー州パーシッパニーのバスフ社(BASF Corp.)からプルロニック(PLURONIC)(登録商標)として入手可能である。好適なポロキサマー及びポロキサミンは、デラウェア州ウィルミントンのICIケミカルズ(ICI Chemicals)からシンパーロニック(SYNPERONIC)(登録商標)として、又はニュージャージー州パーシッパニーのバスフ社(BASF Corp.)からテトロニック(TETRONIC)(登録商標)として入手可能である。
【0035】
本明細書に用いるのに好適なものはまた、ヒドロキシル基を持たないものを含み、尿素及び尿素誘導体を含む、水素結合を形成する有機化合物;ソルビタンのような糖アルコールの無水物;ゼラチンのような動物タンパク質;ヒマワリタンパク質、大豆タンパク質、綿実タンパク質のような植物タンパク質;及びこれらの混合物である。その他の好適な可塑剤は、フタル酸エステル、コハク酸ジメチル及びコハク酸ジエチル及び関連するエステル、グリセロールトリアセテート、グリセロールモノアセテート及びジアセテート、グリセロールモノプロピオネート、ジプロピオネート、及びトリプロピオネート、ブタノエート、ステアレート、乳酸エステル、クエン酸エステル、アジピン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、及び生分解性のその他の更なる(father)酸のエステルである。脂肪族酸、例えばエチレンアクリル酸、エチレンマレイン酸、ブタジエンアクリル酸、ブタジエンマレイン酸、プロピレンアクリル酸、プロピレンマレイン酸、及びその他の炭化水素系酸は可塑剤の更なる例である。
【0036】
可塑剤の量は、分子量、デンプンの量、及びデンプン又は熱可塑性ポリマーに対する可塑剤の親和性に依存する。ポリマー構成成分を有効に可塑化する量を用いることができる。デンプンが繊維を有効に形成するように加工され得るように、可塑剤はデンプン構成成分を十分に可塑化することが必要である。一般に、デンプンの分子量の増加に伴って、可塑剤の量が増加する。典型的には可塑剤は、共に混合される構成成分中に、約2%〜約70%の量で存在することができ、また約5%〜約55%、又は約10%〜約50%であることができる。デンプンの可塑剤として機能するデンプン構成成分中に組み込まれるポリマーは、本発明のその構成成分の可塑剤構成要素の1部分として数えなければならない。可塑剤は、本発明の熱可塑性ポリマー構成成分について任意であり、0%又は2%未満の量は除外されることにならない。
【0037】
(任意材料)
任意にその他の成分が第1又は第2構成成分組成物中に組み込まれてもよい。これらの任意成分は、構成成分の約50重量%未満の量で存在してもよいが、又は別の実施形態では、約0.1重量%〜約30重量%、又は約0.1重量%〜約10重量%の量で存在してもよい。加工性を変更するため及び/又は最終製品の弾性、引張り強度、及び弾性率のような物理的特性を変更するために、任意材料を用いてもよい。他の利益には、酸化安定性を包含する安定性、輝度、色、可撓性、弾力性、作業性、加工助剤、粘度調節剤、及び抑臭が挙げられるが、これらに限定されない。任意成分には、核形成剤、塩、スリップ剤、結晶化促進剤又は遅延剤、臭気マスキング剤、架橋剤、乳化剤、界面活性剤、シクロデキストリン、潤滑剤、その他の加工助剤、光学的光沢剤、酸化防止剤、難燃剤、染料、顔料、充填剤、タンパク質及びそのアルカリ塩、ワックス、粘着付与樹脂、増量剤、湿潤強度向上樹脂、又はこれらの混合物が挙げられる。加工助剤には、ステアリン酸マグネシウム、又は特にデンプン構成成分中ではエチレンアクリル酸が挙げられる。
【0038】
(2)構造
本発明の多構成要素、多構成成分繊維は、幾つかの異なる構造であってもよい。本明細書で用いる時、構成要素とは、物質又は材料の化学種を意味するとして定義される。本明細書で用いる時、多構成要素とは、1を超える化学種又は材料を含有する繊維又はその構成成分を意味するとして定義される。繊維は構造において多構成成分である。本明細書で用いる時、構成成分とは、繊維の別の部分と空間的関係を有する繊維の単独の部分として定義される。多構成成分という用語は、本明細書で使用する時、お互いに空間的な関係において1つより多くの単独の部分を有する繊維として定義される。多構成成分という用語は、お互いに空間的関係において2つの単独の部分を有する繊維として定義される二構成成分を包含する。多構成成分繊維の異なる構成成分は、繊維の断面を横切る実質的に区別可能な区域に配置され、繊維の長さに沿って連続して伸長する。多構成成分繊維は、デンプン不溶化剤及び熱可塑性ポリマーを含む第1構成成分が、熱可塑性デンプンを含む第2構成成分に隣接する限り、2、3、4、又はそれより多くの構成成分を有してもよい。それ故に、第1構成成分及び第2構成成分という参照は、特に明確に指定しない限り、その他の構成成分を除外することを意味しない。図面は、構成成分への参照、例えばx、y、z、及びwを提供する。構成成分z及びwは第3及び第4構成成分であってもよく、別の熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ブレンド、例えば第1及び第2構成成分の組み合わせを超える強化された物理特性を提供するものであってもよい。
1つの実施形態では、熱可塑性ポリマー及びデンプン不溶化剤を含む第1構成成分は第2構成成分を、例えばシース−コア構造において取り囲み、その場合シースは第1構成成分でありコアは第2構成成分である。
【0039】
前段落に記載されるように、シース−コア構造は本明細書に例として提示されるが、第2構成成分が「外側」に暴露されるその他の構造もまた本発明について考えられる。例えば、第1構成成分が第2位構成成分を完全に取り囲まない構造である、分割パイ(segmented pie)構造、又はデンプンがシースである、反転したシース/コア構造は、各々がデンプン含有構成成分の「外側」への暴露を提供する。「外側」とは、例えば繊維が水中に置かれる場合の水への暴露を意味する。この実施形態では、第1構成成分のデンプン不溶化剤は、第1構成成分−第2構成成分接合部分に最も近い部分に不溶化デンプンの層を形成し、それによって接合部分に水不溶性デンプンのコーティングを提供する。可溶性デンプンは水への暴露により洗い流され、例えば繊維が水中に置かれる場合の、熱可塑性ポリマー表面の表面エネルギー論を変更する。
【0040】
図1A〜図9は、多構成成分繊維の様々な構造の断面図を示す概略図を提供する。1以上の構造の組み合わせもまた本発明の態様である。
第2構成成分と第1構成成分の重量比は、約5:95〜約95:5であることができる。別の実施形態では、比は約10:90〜約65:35、又は約15:85〜約50:50である。
【0041】
(3)材料特性
本発明の繊維の直径は、約200μm(μ)未満であり、及び別の実施形態では約100μ未満、約50μ未満、又は30μ未満であることができる。本明細書の1つの実施形態では、繊維は約5μ〜約25μの直径を有する。繊維直径は繊維紡糸技術において周知の要因により制御され、それには例えば紡糸速度及び処理質量が挙げられる。
【0042】
本発明において製造される繊維は、存在するデンプンの量、用いられるポリマー、及び繊維の具体的な構造に依存して、環境分解性であってもよい。「環境分解性」とは、生分解性、崩壊性、分散性、水洗可能性、若しくは堆肥化可能性であること、又はこれらの組み合わせであることと定義される。本発明において、繊維、不織布ウェブ、及び物品は環境分解性であってもよい。
【0043】
本明細書に記載されている繊維は、典型的には、使い捨ての不織布物品を製造するために用いられる。物品は、通常は水洗可能である。用語「水洗可能」は、本明細書で使用する時、トイレのような腐敗処理システム内で溶解、分散、崩壊、及び/又は分解でき、トイレに流した時にトイレ又はその他のいかなる下水管にも詰まることなく処分される材料を指す。繊維及び結果として得られる物品はまた、水反応性であってもよい。水反応性という用語は、本明細書で使用する時、水中に置かれるか又は流された時に、観察可能及び測定可能な変化が生じることを意味する。典型的な観察には、物品の膨潤、解体、溶解に気付くこと、又は一般的な劣化構造を観察することが挙げられる。
【0044】
本発明の二構成成分繊維は低い脆性及び高い強靱性、例えば約2MPa以上の強靱性を有することができる。強靭性は応力−ひずみ曲線の下の領域として定義される。
伸展性又は伸長性は、破断時伸長により測定される。伸展性又は伸長性は、適用された力の下で伸長できるが、必ずしも回復しないこととして定義される。破断時伸長は、繊維が破壊するまで伸長され得る距離として測定される。本発明の繊維が非常に伸張性であり得ることがまた見出されている。
【0045】
単一繊維の破断時伸長が、200%/分のひずみ速度が用いられることを除いて、ASTM標準D3822に従って試験される。10Nのロードセル及び空気グリップを用いてMTSシナジー(Synergie)400引張試験機で試験を実施する。試験は、ゲージ長が1インチ(2.54cm)の試料に対し、2インチ/分(5.08cm(センチメートル)/分)の速度で実施される。試料を引っ張って破断する。ピーク応力及び破断時の%伸長を記録し、及び10試験片について平均する。
【0046】
多構成成分繊維から製造される不織布製品はまた、望ましい機械的特性、特に、強度、可撓性、柔軟性、及び吸収性を示すことができる。強度の測定は、乾燥引張り強度及び/又は湿潤引張り強度を包含する。可撓性は、剛性と関連し、及び柔軟性に起因し得る。柔軟性は、一般に、可撓性及び質感の両方に関連する生理的に認識される属性として記載される。吸収性は、製品が流体を吸い取る能力、並びにその流体を保持する能力に関する。
【0047】
(4)プロセス
多構成成分繊維を製造する第1の工程は、配合又は混合工程であることができる。この配合工程において、原材料は、典型的には剪断力の下で加熱される。熱の存在下での剪断は、組成物を適切に選択すれば均一な溶融物を生じる。次に溶融物は、繊維が形成される押出成形機に設置される。繊維の収集物は、熱、圧力、化学結合剤、機械的絡み合わせ、及びこれらの組み合わせを用いて互いに組み合わされて、不織布ウェブの形成を生じる。次に不織布は物品へと組み立てられる。
【0048】
(配合)
配合工程の目的は、繊維の各構成成分について均一な溶融組成物を製造することである。好ましくは溶融組成物は均一であり、溶融物中に成分の均一な分布が存在することを意味する。結果として得られた溶融組成物(複数)は、紡糸繊維に対して水を本質的に含まないことが必要である。本質的に含まないとは、紡糸の間に繊維を究極的に破壊する場合がある泡を生じるような、実質的な問題を起こさないこととして定義される。溶融組成物の遊離水含量は、約1%以下、約0.5%以下、又は約0.15%以下であることができる。全含水量は、結合水及び遊離水を包含する。好ましくは総含水量(結合水及び遊離水を包含する)は約1%以下である。この低い含水量を達成するために、加工する前にデンプン又はポリマーを乾燥する必要があってもよく、及び/又はいかなる遊離水も除去するために加工中に真空が適用される。熱可塑性デンプン又は本明細書のその他の構成成分は、紡糸前に例えば約60℃の高温で乾燥することができる。乾燥温度は構成成分の構成要素の化学的性質によって決定される。そのため異なる組成物は、20℃〜150℃の範囲であることができ及び一般にポリマーの溶融温度未満である異なる乾燥温度を用いることができる。構成成分の乾燥は、当該技術分野において既知のもののような、紡糸と組み合わされた連続又は不連続の工程であってもよい。
【0049】
一般に、当該技術分野において既知の又は本明細書の目的に好適ないずれの方法も、本発明の構成成分の成分を混合するために用いることができる。典型的にはこうした技術には、熱、混合、及び圧力が挙げられる。当業者に理解されるように、特定の順番又は混合、温度、混合速度又は時間、及び機器は変化することができるが、しかしながら温度はデンプンが顕著に分解しないように制御されることが必要である。結果として得られる溶融物は均一であることが必要である。
【0050】
デンプン及び可塑剤のブレンドを混合する好適な方法は、次の通りである:
1.デンプンは可塑剤の添加により非構造化される。可塑剤は、ソルビトール又はマンニトールのように固体である場合は、デンプン(粉末形態)と共に二軸押出成形機の中に添加することができる。グリセリンのような液体はデンプンと、容積移送式ポンプを介して混合することができる。
2.デンプンは、押出成形機中での熱及び剪断力の適用により完全に非構造化される。デンプン及び可塑剤の混合物は、典型的には120〜180℃に約10秒〜約15分の時間にわたって、デンプンがゼラチン化するまで加熱される。
3.真空を押出成形機中の溶融物に典型的には少なくとも1度、遊離水を取り除くために適用することができる。真空を例えば押出成形機の長さのおよそ3分の2、又は操作者の望むその他のいずれかの点で適用することができる。
4.あるいは複数の供給領域を、複数の可塑剤又はデンプンのブレンドを導入するために用いることができる。
5.あるいはデンプンを液体可塑剤とプレミックスすることができ、押出成形機の中に供給することができる。
【0051】
配合技術分野の熟練者に理解されるように、多数の変形及び代わりの方法及び条件がデンプンを非構造化するため並びにデンプン溶融物の形成のために用いることができ、それには、これらに限定されないが供給ポートの位置及びスクリュー押出成形機の特性によることが挙げられる。
【0052】
好適な混合装置は、複数の注入点を有する複数の混合領域の二軸押出成形機である。複数の注入点を、非構造化デンプン及びポリマーを添加するために用いることができる。二軸バッチ混合機又は一軸押出成形システムも用いることができる。十分な混合及び熱が発生する限り、用いられる特定の装置は重要ではない。
【0053】
材料を配合する別の方法は、次第に上昇する温度の中で混合される押出成形システムに可塑剤、デンプン、及びポリマーを添加することを含む。例えば、6つの加熱領域を有する二軸押出成形機においては、最初の3領域が90℃、120℃、及び130℃に加熱されてもよく、及び最後の3領域がポリマーの融点より高く加熱される。この手順により、デンプンの最小限の熱分解を生じ、及び熱可塑性材料と密接に混合する前に、デンプンが完全に非構造化される。
【0054】
非構造化熱可塑性デンプンを配合する例は、第1の2つの加熱領域が50℃に設定され、及び残りの5つの加熱領域が150℃に設定された、ウェルナー・アンド・プフライデラー(Werner & Pfleiderer)の30mm直径、長さと直径の比が40:1の250RPMに設定された共回転二軸押出成形機を用いることである。真空が最後から2番目と最後の加熱部分の間に取り付けられ10atmの真空が引かれる。デンプン粉末及び可塑剤(例えば、ソルビトール)が、デンプン/可塑剤の重量比60/40で混合速度30lbs/h(13.6kg/h)において、例えば質量損失供給機(mass-loss feeders)を用いて押出成形機の下部にある供給スロートの中に個々に供給される。加工助剤をデンプン又は可塑剤と共に添加することができる。例えばステアリン酸マグネシウムを、熱可塑性デンプン構成成分の0〜1重量%の濃度で添加することができる。
【0055】
(紡糸)
本発明の繊維は溶融紡糸により製造することができる。溶融紡糸は、溶液からの湿式又は乾式紡糸のような他の紡糸とは区別され、こうした別の方法では、溶媒が溶融物中に存在し、及び揮発又は押出品からそれを拡散することにより除去される。
【0056】
溶融物の紡糸温度は、約105℃〜約250℃の範囲であることができ、及び幾つかの実施形態では、約130℃〜約230℃であることができる。加工温度は、各構成成分の化学的性質、分子量、及び濃度によって決定される。
一般に本発明については、高い繊維紡糸速度が望ましい。約10m/分以上の繊維紡糸速度を用いることができる。本明細書の幾つかの実施形態では、繊維紡糸速度は約100〜約7,000m/分、又は約300〜約3,000m/分、又は約500〜約2,000m/分である。
【0057】
繊維は、高いドローダウン比を特徴とする繊維紡糸方法により製造されてもよい。ドローダウン比は、その最大直径における繊維(これは従来の紡糸方法では、典型的にはスピナレットの毛管を出た直後に生じる)と形成された繊維の最終直径との比として定義される。ステープル、スパンボンド、又はメルトブローン法のいずれかによる繊維のドローダウン比は、典型的には1.5以上であり、及び約5以上、約10以上、又は約12以上であることができる。
【0058】
連続繊維は、例えばスパンボンド法又はメルトブローン法により製造することができる。あるいは、不連続(短繊維)繊維は、当該技術分野において周知の従来の短繊維法によって製造することができる。繊維製造の様々な方法はまた、当業者に理解されるように、組み合わせ技術を生み出すために組み合わせることができる。当業者は、どのように中空コア繊維が製造されるかを理解するが、米国特許第6,368,990号は幾つかの方法を論じている。
【0059】
紡糸繊維は形成後に、従来のゴデット巻き取りシステム又は空気通過抵抗減衰装置を用いて収集することができる。ゴデットシステムを用いる場合、繊維は、約50℃〜約200℃の温度での押出成形後延伸によって更に配向させることができる。延伸した繊維は、次に捲縮及び/又は切断して、カーディング、エアレイド、又は流体載置(fluidlaid)法において用いられる不連続繊維(短繊維)を形成してもよい。
繊維を紡糸する方法では、特に温度が105℃より高く上昇する時には、典型的には残留水濃度が繊維の1重量%以下、あるいは0.5重量%以下、又は0.15重量%以下であることが望ましい。
【0060】
二構成成分溶融紡糸機器は、例えば米国フロリダ州メルボルン所在のヒルズ社(Hills,Inc.)より市販されている。ヒルズ社(Hills,Inc.)の二構成成分紡糸技術は、米国特許第5,162,074号及び関連する一群の特許に提示されている。本発明のスピナレット毛管は、他の毛管直径も用い得るが、直径0.350mmと共に長さと直径との比4を有した。
【0061】
繊維を紡糸する及び構成成分を配合する方法は、配合、乾燥、及び紡糸を連続プロセスとしてインラインで行うことができ、及び好ましいプロセスの実行であり得る。
紡糸ラインにおける各構成成分の滞留時間は、高い溶融温度の熱可塑性ポリマーが非構造化デンプンと共に紡糸されるように選択される場合には意味を持ち得る。紡糸機器は、スピナレットにおいて暴露される非構造化の時間及び体積を最小限にすることにより、非構造化デンプン構成成分の高い加工温度への暴露を最小限にするように設計することができる。例えば、スピナレットへのポリマー供給ラインは封止することができ、二構成成分パック中への導入まで分離することができる。更に二構成成分繊維紡糸技術の熟練者は、少なくとも2つの構成成分が、スピナレットの中に導入されるまで、それらの別々の押出成形機の中に異なる温度で導入でき、加工できることを理解する。
【0062】
例えば、非構造化デンプンのコア及びポリプロピレンのシースを有するシース/コア繊維の二構成成分紡糸を考える。非構造化デンプン構成成分押出成形機の特性は、実施例4に類似するデンプン組成物に関して3つの加熱器領域の押出成形機の最初の3つの領域において80℃、150℃、及び150℃であってもよい。移動ライン、及び溶融ポンプ加熱器温度はまたデンプン構成成分について150℃である。ポリプロピレン構成成分の押出成形機の温度特性は、3つの加熱器領域の押出成形機の最初の3つの領域において180℃、230℃、及び230℃である。移動ライン及び溶融ポンプは230℃に加熱される。この場合スピナレット温度は180℃〜230℃の範囲であることができる。
【0063】
(5)物品
本明細書の繊維は、繊維が従来用いられるいずれの目的に用いられてもよい。これには、これに限定されないが不織布基材への組み込みが挙げられる。本明細書の繊維は当該技術分野において既知のいずれかの好適な方法によって不織布に変換されてもよい。連続繊維は、産業界で標準的なスパンボンド式技術を用いてウェブに形成でき、一方で短繊維は産業界で標準的なカーディング、エアレイド、又は湿式載置技術を用いてウェブに形成できる。典型的な接合方法には、圧延(圧力及び熱)、通気熱(thru-air heat)、機械的絡み合わせ、流体力学的絡み合わせ、ニードルパンチ、並びに化学接合及び/又は樹脂接合が挙げられる。圧延、通気熱(thru-air heat)、及び化学接合は、デンプン及びポリマー多構成成分繊維のための好ましい接合法である。熱接着性繊維が、加圧熱及び通気熱接合法に必要である。
【0064】
本発明の繊維はまた、他の合成繊維又は天然繊維と接合又は組み合わせて不織布物品を製造してもよい。合成繊維若しくは天然繊維は、形成プロセスで共にブレンドされてもよく、又は別個の層で用いられてもよい。好適な合成繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリレート、及びこれらのコポリマー及びこれらの混合物から製造される繊維が挙げられる。天然繊維には、セルロース繊維及びその誘導体が挙げられる。好適なセルロース繊維としては、広葉樹の繊維、針葉樹の繊維、麻、及び綿を包含する、任意の樹木又は植物から誘導されるものが挙げられる。レーヨンのような加工された天然セルロース資源から製造される繊維もまた包含される。
【0065】
本発明の繊維は、好適な物品の中でも、とりわけ不織布の製造に用いてもよい。不織布物品は、連続又は不連続な、並びに物理的及び/又は化学的に互いに結合した複数の繊維を15%を超えて含有する物品として定義される。不織布は、それ自体により、又は他の材料の複雑な組み合わせの構成成分としてのいずれかで用いられる層状製品(例えば、乳児用おむつ又は女性用生理用パッド)を製造するために、追加の不織布又はフィルムと組み合わされてもよい。好ましい物品は、使い捨ての不織布物品である。結果として得られる製品は、多くの異なる用途の1つに用途を見出してもよい。本発明の好ましい物品には、衛生及び医療用途向けの使い捨て不織布が挙げられる。衛生用途には、拭き取り用品;おむつ、特にトップシート又はバックシート;及び女性用パッド又は女性用製品、特にトップシートのような品目が挙げられる。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、本発明を更に説明する。下記の実施例に用いるデンプンは、すべてステーリー化学社(Staley Chemical Co.)からのスター(STAR)DRI1、スター(STAR)DRI100、エシレックス(ETHYLEX)2015、又はエシレックス(ETHYLEX)2035である。後者のステーリー(Staley)材料は置換デンプンである。エチレンアクリル酸(EAA)は、ダウ・ケミカル(Dow Chemical)からのプリマコア(PRIMACORE)5980Iである。ポリプロピレン(PP)樹脂は、バーゼル(Basell)のプロファックス(PROFAX)PH−835である。ポリエチレン(PE)は、ダウ・ケミカル(Dow Chemical)からのアスパン(ASPUN)6811Aである。ポリ(L)乳酸は、バイオマー(BIOMER)L9000(バイオマー(Biomer))である。ポリエチレンコハク酸エステル(PES)は、ビオノーレ(BIONOLLE)1020(昭和高分子(Showa High Polymer))である。ソルビトールは、アーチャー−ダニエルズ−ミッドランド社(Archer-Daniels-Midland Co.)(ADM)からのクリスタリン(Crystalline)NF/FCC 177440−2Sである。分子量、分子量分布、及び/又はコモノマー、又は欠陥レベルが異なる類似の化学的組成物を有するその他のポリマーもまた用いることができる。
【0067】
(比較実施例1)
PPのシース及びTPSのコアから構成される中空でないシース/コア二構成成分繊維コアは、スター(STAR)DRI1、ソルビトール、ステアリン酸マグネシウム、及びEAAがそれぞれ60:40:1:12の比で混合されたブレンドである。PPのシースは、バーゼル(Basell)のプロファックス(PROFAX)PH−835である。二構成成分繊維は、ヒルズ社(Hills Inc.)の4孔二構成成分システムを用いて、30/70のシース/コアの比(重量による)で製造される。全体的な質量通過は1分当たり、1孔当たり0.6g(ghm)である。190℃の溶融押出成形温度で連続長繊維法により繊維に溶融紡糸される場合は、繊維は圧縮空気(即ちルルギ銃(Lurgi gun))を用いて18μの最終繊維直径に減衰される。
【0068】
繊維の重量喪失は、1センチ深さの渦が創り出されるような力で攪拌しながら、500mLの25℃の水中に懸濁した銅網(大体100メッシュ)の中におよそ1gの非捲縮繊維を入れて置くことにより測定される。繊維を有する水を60分間攪拌し、その時間の後繊維を取り出し、オーブン中で15分間115℃で乾燥する。繊維を次にオーブンから取り出し、及び開放大気中で室温で30分間冷却させる。典型的にはこれらの繊維が室温の水中に置かれる場合は、コアがシースを通って水中に漏れ出してTPS構成成分の質量損失を時間と共に生じる。質量損失は、温度の上昇と共に75重量%を超えるTPS構成成分が失われ得る点まで増加する。表1は比較実施例1のデータを提供する。範囲は、TPSの質量損失を測定する場合に行われる観察の幅を網羅するように与えられる。100重量%以下の質量損失が可能である。与えられた範囲が100重量%を超えるように見える場合は、最大偏差は平均未満であるように取られる。
【0069】
【表1】

【0070】
(比較実施例2)
コア及びシース構成成分組成物は比較実施例1にある通りである。繊維は、82の孔を有するヒルズ社(Hills Inc)の二構成成分紡糸技術を用いるために変更されたアレックス・ジェームズ(Alex James)の二構成成分紡糸システム上で製造される。繊維は、巻き取り機を用いて減衰され、及び500m/分で収集される。繊維は次に、90℃の温度で、18μの直径に機械的に延伸される。190℃の溶融押出成形温度が紡糸のために用いられる。グールストン・テクノロジーズ(Goulston Technologies)(ルロール(LUROL)9519)により供給される親水性界面活性剤が、紡糸後延伸法の収集中に繊維をコーティングするために用いられる。繊維は長さ40mmに切断される。
【0071】
表2は比較実施例2のTPS質量損失についてのデータを提供する。
【0072】
【表2】

【0073】
(比較実施例3〜16)
これらの実施例は、様々なシース/コアの比で、及び様々なシースの材料を用いて、比較実施例1及び2の研究を繰り返している。試料は、比較実施例2と類似の加工条件を用いるアレックス・ジェームズ(Alex James)の紡糸ラインシステム上で製造される。すべての場合TPSのコアは一定に保持され、及び比較実施例1及び2に記載されるのと同じ組成物を有する。表3は、比較実施例3〜16のデータを提供する。
【0074】
【表3】

【0075】
(比較実施例17〜21)
スター(STAR)DRI1、ソルビトール、ステアリン酸マグネシウム、及びEAAがそれぞれ60:40:1:12の比で混合されたブレンドが、アルファ・アエサル(Alfa Aesar)(BK−08−01)からの2重量%のステアリン酸と配合される。この材料はよく紡がないが、純粋なTPSより小さい水溶解度を有する。表4は、比較実施例17〜21のデータを提供する。
【0076】
【表4】

実施例1〜14:シース用の熱可塑性ポリマー構成成分が様々な量のステアリン酸とブレンドされることを除いて、比較実施例1〜14に用いられたのと同じ組成物及び加工条件がここでは用いられ、表5に示される。
【0077】
【表5】

実施例1〜14のデータが示すように、ステアリン酸のようなデンプン不溶化剤の多構成成分繊維のシース構成成分への添加によって、TPSの質量損失の顕著な減少が達成される。理論により束縛されることを望まないが、本発明者は、不溶化剤が二構成成分間の境界の接合部分を超えて拡散し、それによってコア構成成分中のデンプンを不溶化すると考えている。
【0078】
本発明の特定の実施形態を例示し記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変形及び変更を実施できることが、当業者には自明であろう。本発明の範囲内におけるこのような変形及び変更のすべては、添付の請求項に網羅されることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1A】多構成成分繊維の断面図を示す概略図。 典型的な同心のシース−コア構造。
【図1B】多構成成分繊維の断面図を示す概略図。 中空でないコア及び成形された連続的シースを有するシース−コア構造。
【図1C】多構成成分繊維の断面図を示す概略図。 中空のコア、コアx、及び連続的シースyを有するシース−コア構造。
【図1D】多構成成分繊維の断面図を示す概略図を提供する。 中空のコア、コアx、及び成形された連続的シースyを有するシース−コア構造。
【図1E】多構成成分繊維の断面図を示す概略図。 不連続なシース−コア構造。
【図1F】多構成成分繊維の断面図を示す概略図。 更なる不連続なシース−コア構造。
【図1G】多構成成分繊維の断面図を示す概略図。 構成成分Xにより囲まれた中空のコア及び不連続なシース構成成分Yを有するシース−コア構造。
【図1H】多構成成分繊維の断面図を示す概略図。 構成成分Xにより囲まれた中空のコア及び不連続なシース構成成分Yを有する更なるシース−コア構造。
【図1I】多構成成分繊維の断面図を示す概略図。 偏心のシース−コア構造。
【図2A】分割されたパイ構造を有する二構成成分繊維の断面図を示す概略図。 中空でない8分割されたパイ構造。
【図2B】分割されたパイ構造を有する二構成成分繊維の断面図を示す概略図。 中空の8分割されたパイ構造。
【図3】リボン構造を有する二構成成分繊維の断面図を示す概略図。
【図4A】サイド・バイ・サイド構造を有する二構成成分繊維の断面図を示す概略図。サイド・バイ・サイド構造。
【図4B】サイド・バイ・サイド構造を有する二構成成分繊維の断面図を示す概略図。丸味を帯びた隣接線を有するサイド・バイ・サイド構造。隣接線は、2つの構成成分が交わるところ。構成成分Yは、構成成分Xよりも多量。
【図4C】サイド・バイ・サイド構造を有する二構成成分繊維の断面図を示す概略図。構成成分Yが構成成分Xの両側に丸味を帯びた隣接線を有して位置しているサイド・バイ・サイド構造。
【図4D】サイド・バイ・サイド構造を有する二構成成分繊維の断面図を示す概略図。構成成分Yが構成成分Xの両側に位置しているサイド・バイ・サイド構造。
【図4E】サイド・バイ・サイド構造を有する二構成成分繊維の断面図を示す概略図。構成成分Yが構成成分Xの先端に位置している成形されたサイド・バイ・サイド構造。
【図5A】海島構造を有する多構成成分繊維の断面図を示す概略図。構成成分Xが構成成分Yによって囲まれた中空でない海島構造。構成成分Xは三角形の形状であってもよい。
【図5B】海島構造を有する多構成成分繊維の断面図を示す概略図。構成成分Xが構成成分Yによって囲まれた中空でない海島構造。
【図5C】海島構造を有する多構成成分繊維の断面図を示す概略図。構成成分Xが構成成分Yによって囲まれた中空の海島構造。
【図6】リボン構造を有する三構成成分繊維の断面図を示す概略図。
【図7】中空でないコアを構成する構成成分X、内側の連続的シースを構成する構成成分Y、及び外側の連続的シースを構成する構成成分Zを有する、同心のシース−コア構造を有する三構成成分繊維の断面図を示す概略図。
【図8】中空でない8分割されたパイ構造を有する多構成成分繊維の断面図を示す概略図。
【図9】中空でない海島構造を有する三構成成分繊維の断面図を示す概略図。構成成分Xは、構成成分Yの単一の島、及び構成成分Zの複数の島を取り囲む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプン不溶化剤及び熱可塑性ポリマーを含む第1構成成分;及び
非構造化デンプン及び可塑剤を含む第2構成成分、
を含むことを特徴とする溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項2】
前記デンプン不溶化剤が前記第1構成成分中に0.1%〜15%の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項3】
デンプン不溶化剤及び熱可塑性ポリマーを含む第1構成成分;及び
非構造化不溶化デンプン及び可塑剤を含む第2構成成分、
を含むことを特徴とする、溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項4】
前記繊維がシース−コア構造を有し、前記第1構成成分がシース構造であり、及び前記第2構成成分がコア構造であることを特徴とする、請求項3に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項5】
前記繊維が、海島、リボン、分割パイ(segmented pie)、サイド・バイ・サイド、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される構造を有することを特徴とする、請求項3に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項6】
前記デンプン不溶化剤が、C8〜C22の脂肪族飽和又は不飽和カルボン酸であることを特徴とする、請求項3に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項7】
前記脂肪族カルボン酸が、ステアリン酸、オレイン酸、及びカプリル酸から成る群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項8】
前記脂肪族カルボン酸がステアリン酸であることを特徴とする、請求項7に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリオレフィンコポリマー、ポリオレフィンカルボン酸コポリマー、エチレンアクリル酸、ポリエステル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリマーが生分解性であることを特徴とする、請求項3に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリマーが500,000g/mol未満の分子量を有することを特徴とする、請求項10に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項12】
前記生分解性熱可塑性ポリマーが、結晶化可能なポリ乳酸のホモポリマー又はコポリマー、二価酸/ジオール脂肪族ポリエステル、脂肪族/芳香族コポリエステル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項13】
前記第1構成成分がコア構造であって前記第2構成成分がシース構造である、シース−コア構造を有することを特徴とする、請求項3に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項14】
前記第1構成成分が海構造であり、及び第2構成成分が島構造である海島構造を有することを特徴とする、請求項3に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項15】
前記第1構成成分が島構造であり、及び前記第2構成成分が海構造である海島構造を有することを特徴とする、請求項3に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項16】
デンプン不溶化剤及び熱可塑性ポリマーを含む第1の構成成分を配合する工程;
非構造化デンプン及び可塑剤を含む第2の構成成分を配合する工程;
前記第1構成成分に前記第2構成成分を接触して繊維を形成する工程、
含む方法により製造されることを特徴とする、溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項17】
前記デンプン不溶化剤が、C8〜C22の脂肪族飽和又は不飽和カルボン酸であることを特徴とする、請求項16に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項18】
前記第2の構成成分が外側の構成成分であり、前記繊維が:
前記不溶化剤により不溶化されないデンプンを取り除くために溶媒により繊維に接触する工程
それによって不溶化デンプンのコーティングを有する第1構成成分を有する繊維を提供する工程、
を更に含む方法により製造されることを特徴とする請求項16に記載の溶融紡糸可能な多構成成分繊維。
【請求項19】
請求項3に記載の多構成成分繊維を含む不織布ウェブ。
【請求項20】
請求項19に記載の不織布ウェブを含む使い捨て物品。


【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−505717(P2006−505717A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553591(P2004−553591)
【出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/036148
【国際公開番号】WO2004/046432
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】