説明

多段タービンポンプ

【課題】 組み立てが容易であり、また流体が高温であっても外胴とボルトとの熱膨張の差を容易に吸収できるようにした多段タービンポンプを得る。
【解決手段】 円筒状をした外胴1の内部をポンプ室2とし、ポンプ室2内に複数の羽根車3及び中間ケーシング4を多段状に積み重ねて配置し、外胴1の一端開口部に吸込口5を有する吸込側ケーシング6を、他端開口部に吐出口7を有する吐出側ケーシング8を配置して吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8をボルト9で締結し、吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8とで中間ケーシング4を支持し、羽根車3を駆動するポンプ軸10の一端にモータ11を連結した構造の多段タービンポンプにおいて、吐出側ケーシング8の内側面と最後段の中間ケーシング4aの外側面との間に非拘束部15を設けた。また、ボルト9で締結されている吸込側ケーシング6及び吐出側ケーシング8と外胴1の両端との間に、外胴1の軸方向への移動を許容する非拘束部21を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の羽根車を備えた多段タービンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図6に示すように、円筒状をした外胴1の内部をポンプ室2とし、ポンプ室2内に複数の羽根車3及び中間ケーシング4を多段状に積み重ねて配置し、外胴1の一端開口部に吸込口5を有する吸込側ケーシング6を、他端開口部に吐出口7を有する吐出側ケーシング8を配置して吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8をボルト9で締結し、吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8とで中間ケーシング4を支持し、羽根車3を駆動するポンプ軸10の一端にモータ11を連結した構造の多段タービンポンプが知られている。
【0003】
この構造の多段タービンポンプは、モータ11の駆動軸12にカップリング13を介して連結されるポンプ軸10に羽根車3が取り付けられ、また軸受14を介して中間ケーシング4が配置された状態にあり、そして、最後段の中間ケーシング4aの外側面と吐出側ケーシング8とは拘束状態となっている。また外胴1の一端開口部に配置した吸込側ケーシング6と他端開口部に配置した吐出側ケーシング8のボルト9による締結は、外胴1の端面1aを締結支点としている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0004】
このような構造の多段タービンポンプでは、モータ11の駆動軸12、駆動軸12にカップリング13を介して連結されるポンプ軸10、ポンプ軸10に軸受14を介して配置される中間ケーシング4、吐出側ケーシング8の相互の軸心にズレがあると、モータ11を駆動してポンプ軸10を回転させたとき、駆動軸12とポンプ軸10を連結しているカップリング13やポンプ軸10と中間ケーシング4の間の軸受14に偏荷重が加わり、該部位の早期摩耗や損傷を引き起こすおそれがある。
【0005】
そのため、上記の構造の多段タービンポンプの組み立てに当たり、モータ11の駆動軸12、ポンプ軸10、中間ケーシング4、吐出側ケーシング8の相互の軸心を一致させる必要があるが、多段タービンポンプの構成部品にある幾何公差のばらつきにより、そのまま組み立ててしまうとモータ11の駆動軸12、ポンプ軸10、中間ケーシング4、吐出側ケーシング8の相互の軸心にズレが生じてしまう。例えば、ボルト9で吸込側ケーシング6と締結された吐出側ケーシング8の軸心とポンプ軸10の軸心とにズレがあった場合、吐出側ケーシング8に拘束される最後の中間ケーシング4aの軸心もポンプ軸10の軸心とズレてしまい、最後段の中間ケーシング4aに重ねられている他の中間ケーシング4の軸心もポンプ軸10の軸心とズレてしまうことになる。このため、多段タービンポンプの組み立ては治具を用いて軸心合わせを行いながら組み立てるといった面倒な作業となっており、組み立てに長い時間を要していた。
【0006】
また、前記外胴1の一端開口部に配置した吸込側ケーシング6と他端開口部に配置した吐出側ケーシング8のボルト9による締結は複数箇所で締め付けているが、外胴1の端面1aを締結支点としているため、外胴1や吸込側ケーシング6、吐出側ケーシング8に製造ばらつきがあったり、締め付けにばらつきがあると、ポンプ軸10に対し外胴1が傾斜してしまう場合がある。また、流体が高温の場合、流体の温度影響の異なる外胴1とボルト9との熱膨張の差により吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8がボルト9により引っ張られ、曲げ応力により吸込側ケーシング6や吐出側ケーシング8が破損するおそれがあり、従来は、このような事態を回避するために、吸い込んだ高温の流体をボルト9に通すといったことも行われている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平7−10076号公報
【特許文献2】特開2000−130400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、特許文献1、2で開示されている構造の多段タービンポンプでは、その組み立てには治具を用いて軸心合わせを行いながら組み立てるといった面倒な作業となっており、組み立てに長い時間を要するといった問題があった。
また、前記外胴1の一端開口部に配置した吸込側ケーシング6と他端開口部に配置した吐出側ケーシング8のボルト9による締結は複数箇所で締め付けているが、外胴1の端面1aを締結支点としているため、外胴1や吸込側ケーシング6、吐出側ケーシング8に製造ばらつきがあったり、締め付けにばらつきがあると、ポンプ軸10に対し外胴1が傾斜してしまう場合があるといった問題があった。また、流体が高温の場合、流体の温度による影響が異なる外胴1とボルト9との熱膨張の差により吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8がボルト9により引っ張られ、曲げ応力により吸込側ケーシング6や吐出側ケーシング8が破損するおそれがあるといった問題があった。従来は、このような事態を回避するために、吸い込んだ高温の流体をボルト9に通すといったことも行われているが、その分構造が複雑になり、組み立てが一層面倒になる。
【0009】
本発明はこれらの問題点を解決することを目的とするものであり、組み立てが容易であり、また流体が高温であっても外胴とボルトとの熱膨張の差を容易に吸収できるようにした多段タービンポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、円筒状をした外胴の内部をポンプ室とし、前記ポンプ室内に複数の羽根車及び中間ケーシングを多段状に積み重ねて配置し、前記外胴の一端開口部に吸込口を有する吸込側ケーシングを、他端開口部に吐出口を有する吐出側ケーシングを配置して吸込側ケーシングと吐出側ケーシングをボルトで締結し、前記吸込側ケーシングと前記吐出側ケーシングとで前記中間ケーシングを支持し、前記羽根車を駆動するポンプ軸の一端にモータを連結した構造の多段タービンポンプにおいて、前記吐出側ケーシングの内側面と最後段の中間ケーシングの外側面との間に非拘束部を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、円筒状をした外胴の内部をポンプ室とし、前記ポンプ室内に複数の羽根車及び中間ケーシングを多段状に積み重ねて配置し、前記外胴の一端開口部に吸込口を有する吸込側ケーシングを、他端開口部に吐出口を有する吐出側ケーシングを配置して吸込側ケーシングと吐出側ケーシングをボルトで締結し、前記吸込側ケーシングと前記吐出側ケーシングとで前記中間ケーシングを支持し、前記羽根車を駆動するポンプ軸の一端にモータを連結した構造の多段タービンポンプにおいて、前記ボルトで締結されている前記吸込側ケーシング及び前記吐出側ケーシングと前記外胴の両端との間に、前記外胴の軸方向への移動を許容する非拘束部を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、円筒状をした外胴の内部をポンプ室とし、前記ポンプ室内に複数の羽根車及び中間ケーシングを多段状に積み重ねて配置し、前記外胴の一端開口部に吸込口を有する吸込側ケーシングを、他端開口部に吐出口を有する吐出側ケーシングを配置して吸込側ケーシングと吐出側ケーシングをボルトで締結し、前記吸込側ケーシングと前記吐出側ケーシングとで前記中間ケーシングを支持し、前記羽根車を駆動するポンプ軸の一端にモータを連結した構造の多段タービンポンプにおいて、前記吐出側ケーシングの内側面と最後段の中間ケーシングの外側面との間に非拘束部を設け、また、前記ボルトで締結されている前記吸込側ケーシング及び前記吐出側ケーシングと前記外胴の両端との間に、前記外胴の軸方向への移動を許容する非拘束部を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の、前記非拘束部が、空隙部であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の、前記非拘束部が、緩衝材であることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項2又は3に記載の、前記外胴の軸方向への移動を許容する非拘束部は、吸込側ケーシングと吐出側ケーシングを締結するボルトの両側に段部を形成して、段部をもって吸込側ケーシングと吐出側ケーシングの締結支点とし、吸込側ケーシングと吐出側ケーシングの内側端面間の長さを前記外胴の軸方向の長さより長くし、該長さの差をもって形成したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の多段タービンポンプによれば、吐出ケーシングの内側面と最後段の中間ケーシングの外側面との間に非拘束部を設けたので、多段タービンポンプの組み立てに当たり、ポンプ室内に複数の羽根車及び中間ケーシングを多段状に積み重ねて配置し、外胴の一端開口部に吸込口を有する吸込側ケーシングを配置し、他端開口部に吐出口を有する吐出側ケーシングを配置して、吸込側ケーシングと吐出側ケーシングをボルトで締結する際に、完全に締結する前に、ポンプ軸を回転させることによりポンプ室内に配置されている各中間ケーシングがポンプ軸の軸心方向に移動してその軸心がポンプ軸の軸心と一致し、吐出側ケーシングに支持されている最後段の中間ケーシングも非拘束部の存在により吐出側ケーシング上をポンプ軸の軸心方向に移動してその軸心がポンプ軸の軸心と一致するので、この状態で吸込側ケーシングと吐出側ケーシングをボルトで完全に締結することにより、仮に多段タービンポンプの構成部品にある幾何公差のばらつきがあっても、ポンプ軸と各中間ケーシングとの間に確実に軸心を一致させた状態で組み立てることができる。そして、その組立作業にあっては、前記のように、吸込側ケーシングと吐出側ケーシングをボルトで完全に締結する前に、ポンプ軸を回転させるといった簡単な作業でポンプ軸と各中間ケーシングとの軸心合わせが行えるので、容易に且つ短時間で行うことができる。
【0017】
請求項2に記載の多段タービンポンプによれば、ボルトで締結されている吸込ケーシング及び吐出ケーシングと外胴の両端との間に、外胴の軸方向への移動を許容する非拘束部を設けたので、流体が高温であっても外胴とボルトとの熱膨張の差を非拘束部で容易に吸収でき、吸込側ケーシングや吐出側ケーシングの破損を防止することができる。
【0018】
請求項3に記載の多段タービンポンプによれば、吐出ケーシングの内側面と最後段の中間ケーシングの外側面との間に非拘束部を設けたので、多段タービンポンプの組み立てに当たり、ポンプ室内に複数の羽根車及び中間ケーシングを多段状に積み重ねて配置し、外胴の一端開口部に吸込口を有する吸込側ケーシングを、他端開口部に吐出口を有する吐出側ケーシングを配置して吸込側ケーシングと吐出側ケーシングをボルトで締結する際に、完全に締結する前に、ポンプ軸を回転させることによりポンプ室内に配置されている各中間ケーシングがポンプ軸の軸心方向に移動してその軸心がポンプ軸の軸心と一致し、吐出側ケーシングに支持されている最後段の中間ケーシングも非拘束部の存在により吐出側ケーシング上をポンプ軸の軸心方向に移動してその軸心がポンプ軸の軸心と一致するので、この状態で吸込側ケーシングと吐出側ケーシングをボルトで完全に締結することにより、仮に多段タービンポンプの構成部品に幾何公差のばらつきがあっても、ポンプ軸と各中間ケーシングとの間に確実に軸心を一致させた状態で組み立てることができる。そして、その組立作業にあっては、前記のように、吸込側ケーシングと吐出側ケーシングとをボルトで完全に締結する前に、ポンプ軸を回転させるといった簡単な作業でポンプ軸と各中間ケーシングとの軸心合わせが行えるので、容易に且つ短時間で行うことができる。
また、ボルトで締結されている吸込ケーシング及び吐出ケーシングと外胴の両端との間に、外胴の軸方向への移動を許容する非拘束部を設けたので、流体が高温であっても外胴とボルトとの熱膨張の差を非拘束部で容易に吸収でき、吸込側ケーシングや吐出側ケーシングの破損を防止することができる。
【0019】
請求項4に記載の多段タービンポンプによれば、請求項1,2又は3に記載の、非拘束部が空隙部であるので、吐出側ケーシングに支持されている最後段の中間ケーシングと、ボルトで締結されている吸込ケーシングと吐出ケーシングとの間にある外胴は、いずれも空隙部の範囲内で自由に移動することができる。
【0020】
請求項5に記載の多段タービンポンプによれば、請求項1,2又は3に記載の、非拘束部が緩衝材であるので、吐出側ケーシングに支持されている最後段の中間ケーシングと、ボルトで締結されている吸込ケーシングと吐出ケーシングとの間にある外胴は、いずれも緩衝材の緩衝作用により緩衝可能な範囲内で自由に移動することができる。
【0021】
請求項6に記載の多段タービンポンプによれば、請求項2又は3に記載の、外胴の軸方向への移動を許容する非拘束部は、吸込側ケーシングと吐出側ケーシングを締結するボルトの両側に段部を形成して、段部をもって吸込側ケーシングと吐出側ケーシングの締結支点とし、吸込側ケーシングと吐出側ケーシングの内側端面間の長さを前記外胴の軸方向の長さより長くし、該長さの差をもって形成したので、吸込側ケーシングと吐出側ケーシングの内側端面間の長さと前記外胴の軸方向の長さの差の範囲内で、吸込側ケーシングと吐出側ケーシングとの間にある外胴は自由に移動することができ、吸込側ケーシングと吐出側ケーシングとをボルトで締結しても、また流体が高温で外胴とボルトとの熱膨張の差が生じても吸込側ケーシングや吐出側ケーシングに曲げ応力が発生しないので、曲げ応力による吸込側ケーシングや吐出側ケーシングの破損といった事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る多段タービンポンプの一実施例を示す縦断側面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図1の他の要部拡大図である。
【図4】本発明に係る多段タービンポンプにおける吐出側ケーシングの内側面と最後段の中間ケーシングの外側面との間に設けた非拘束部の構造の他例を示す拡大断面図である。
【図5】本発明に係る多段タービンポンプにおけるボルトで締結されている吸込側ケーシング及び吐出側ケーシングと外胴の両端との間に設けた非拘束部の構造の他例を示す拡大断面図である。
【図6】従来の多段タービンポンプの一実施例を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る多段タービンポンプを実施するための形態の一例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る多段タービンポンプの一実施例を示す縦断側面図、図2は図1の要部拡大図、図3は図1の他の要部拡大図である。なお、前述した図6と対応する部分には、同一符号を付して示している。
【0024】
本例の多段タービンポンプは、図1に示すように、円筒状をした外胴1の内部をポンプ室2としている。ポンプ室2内に複数の羽根車3及び中間ケーシング4を多段状に積み重ねて配置している。そして、外胴1の一端開口部に吸込口5を有する吸込側ケーシング6を、他端開口部に吐出口7を有する吐出側ケーシング8を配置して吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8をボルト9で締結し、吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8とで中間ケーシング4を支持している。ボルト9による吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8との締結は、周方向に等分に3〜4箇所で締結している。本例では3箇所で締結している。また、羽根車3はポンプ軸10に固定されており、中間ケーシング4は軸受14を介してポンプ軸10に配置されている。また、ポンプ軸10はモータ11の駆動軸12と一体構造に直結した構成となっている。
【0025】
前記のように構成された多段タービンポンプにおける吐出側ケーシング8の内側面と最後段の中間ケーシング4aの外側面との間に非拘束部15を設けている。この非拘束部15は、後述するところの、ポンプ軸10を回転させたとき、吐出側ケーシング8に支持されている最後段の中間ケーシング4aが吐出側ケーシング8上をポンプ軸10の軸心側に移動してその軸心がポンプ軸10の軸心と一致するまでの移動を許容する範囲をもって構成されており、本例では非拘束部15は空隙部16で構成されている。
【0026】
さらに詳細に説明すると、本例では、最後段の中間ケーシング4aの外周に、筒状側壁17の一端内周にフランジ18を有する受け皿19が嵌合しており、この受け皿19を介在させて中間ケーシング4aが吐出側ケーシング8に支持されている。そして、最後段の中間ケーシング4aの外周に嵌合している受け皿19の筒状側壁17の外側面と吐出側ケーシング8の内側面との間に前記した非拘束部15を構成する空隙部16が設けられている。
【0027】
また、本例では、最後段の中間ケーシング4aの下端と受け皿19のフランジ18との間には、緩衝部材20が介在しており、最後段の中間ケーシング4aに軸方向への移動があっても、受け皿19は緩衝部材20の弾発力で受け皿19のフランジ18が吐出側ケーシング8の端面に当接した状態を維持できるようになっている。本例では、緩衝部材20は波バネが使用されており、ポンプ軸10の先端が緩衝部材20となる波バネに圧接しており、波バネの復元力により受け皿19のフランジ18を吐出側ケーシング8の端面に押し当てるようになっている。
【0028】
また、本例では、ボルト9で締結されている吸込側ケーシング6及び吐出側ケーシング8と外胴1の両端との間に、外胴1の軸方向への移動を許容する非拘束部21を設けている。この非拘束部21は、後述するところの、流体が高温であったときに、外胴1とボルト9との熱膨張の差を吸収できる、すなわち、熱膨張の差による外胴1の移動を許容する範囲をもって構成されており、本例では非拘束部21は空隙部22で構成されている。
【0029】
さらに詳細に説明すると、本例では、吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8を締結するボルト9は、その両側に段部23、24を形成し、この段部23、24から小径の雄ネジ部25、26が突出した形状に形成されている。そして、ボルト9の一端側の雄ネジ部25を、段部23が吐出側ケーシング8の端面に当接するまで吐出側ケーシング8に形成した雌ネジ部27にねじ込んで螺着し、ボルト9の他端側の雄ネジ部26を吸込側ケーシング6に形成した貫通孔28に挿入して段部24を吸込側ケーシング6の端面に当接させた状態で吸込側ケーシング6の貫通孔28から突出した雄ネジ部26にナット29を螺合することにより、段部23、24を締結支点として吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8を締結している。
そして、このようにして締結された吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8の内側端面30、31間の長さを外胴1の軸方向の長さより長くし、該長さの差をもって非拘束部21となる空隙部22を形成している。
【0030】
上記のように構成された本例の多段タービンポンプは、次のようにして組み立てられる。本例では、モータ11の駆動軸12とポンプ軸10とを一体構造に直結した構成としている。このように構成したモータ11側に吸込側ケーシング6を取り付ける。このポンプ軸10に、中間ケーシング4と羽根車3を交互に配置し、最後段の中間ケーシング4aの外周に、緩衝部材20を介在させて受け皿19を嵌合させる。
【0031】
このようにしてポンプ軸10に中間ケーシング4と羽根車3を配置したら、その外周に外胴1を嵌合し、最後段の中間ケーシング4aに受け皿19を介在させて吐出側ケーシング8を当接させ、吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8をボルト9で締結して中間ケーシング4を支持する。
【0032】
この吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8を締結する際に、完全に締結する前にモータ11を駆動して駆動軸12、ポンプ軸10を回転させる。駆動軸12、ポンプ軸10の回転により駆動軸12とポンプ軸10の軸心が通り、各中間ケーシング4がポンプ軸10の軸心方向に移動してその軸心がポンプ軸10の軸心と一致し、吐出側ケーシング8に支持されている最後段の中間ケーシング4aも非拘束部15、本例では最後段の中間ケーシング4aの外周に嵌合している受け皿19の筒状側壁17の外側面と吐出側ケーシング8の内側面との間の空隙部16の存在により、吐出側ケーシング8上をポンプ軸10の軸心方向に移動してその軸心がポンプ軸10の軸心とが一致する。この状態で吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8をボルト9で完全に締結することにより、仮に多段タービンポンプの構成部品にある幾何公差のばらつきがあっても、ポンプ軸10と各中間ケーシング4との間に確実に軸心を一致させた状態で組み立てることができる。
【0033】
このように、本例では最後段の中間ケーシング4aの外周に嵌合している受け皿19の筒状側壁17の外側面と吐出側ケーシング8の内側面との間の非拘束部15を構成する空隙部16が設けられているので、組立作業にあっては、前記のように、吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8をボルト9で完全に締結する前に、ポンプ軸10を回転させるといった簡単な作業でポンプ軸10と各中間ケーシング4との軸心合わせが行えるので、容易に且つ短時間で行うことができる。
【0034】
また、本例では、最後段の中間ケーシング4aの下端と受け皿19のフランジ18との間には、緩衝部材20が介在しており、最後段の中間ケーシング4aに軸方向への移動があっても、受け皿19は緩衝部材20の弾発力で受け皿19のフランジ18が吐出側ケーシング8の端面に当接した状態を維持できるようになっているので、受け皿19と吐出側ケーシング8間のシール性が図れる。
【0035】
また、本例では、ボルト9で締結されている吸込側ケーシング6及び吐出側ケーシング8と外胴1の両端との間に、外胴1の軸方向への移動を許容する非拘束部21を構成する空隙部22が設けられていおり、この空隙部22は、流体が高温であったときに、外胴1とボルト9との熱膨張の差を吸収できる、すなわち、熱膨張の差による外胴1の移動を許容する範囲をもって構成されているので、流体が高温であっても外胴1とボルト9との熱膨張の差を空隙部22で容易に吸収でき、吸込側ケーシング6や吐出側ケーシング8の破損を防止することができる。
【0036】
本例では、外胴1の軸方向への移動を許容する非拘束部21を構成する空隙部22は、ボルト9の両側に段部23、24を形成して、段部23、24をもって吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8の締結支点とし、吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8の内側端面30、31間の長さを外胴1の軸方向の長さより長くし、該長さの差をもって形成したので、吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8の内側端面30、31間の長さと外胴1の軸方向の長さの差の範囲内で、吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8との間にある外胴1は自由に移動することができ、吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8とをボルト9で締結しても、また流体が高温で外胴1とボルト9との熱膨張の差が生じても吸込側ケーシング6や吐出側ケーシング8に曲げ応力が発生しないので、曲げ応力による吸込側ケーシング6や吐出側ケーシング8の破損といった事態を回避することができる。
【0037】
なお、本例では、最後段の中間ケーシング4aの外周に嵌合している受け皿19の筒状側壁17の外側面と吐出側ケーシング8の内側面との間に設けられた非拘束部15と、吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8と外胴1の両端との間に設けられた非拘束部21は、いずれも空隙部16、22で構成されているが、図4、図5に示すように緩衝材32、33で構成されていてもよい。非拘束部15、21が緩衝材32、33で構成されている場合は、吐出側ケーシング8に支持されている最後段の中間ケーシング4aとボルト9で締結されている吸込側ケーシング6と吐出側ケーシング8との間にある外胴1は、いずれも緩衝材32、33の緩衝作用により緩衝可能な範囲内で自由に前記した移動を行うことができる。緩衝材32、33としては、例えばゴム、スプリング、スポンジが用いられる。
また、本例では、モータ11の駆動軸12とポンプ軸10とが一体構造で直結されている構成のものについて説明したが、これに限られるものではなく、本発明は、駆動軸12とポンプ軸10とをカップリングを介して連結した構成のものにも適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 外胴
1a 端面
2 ポンプ室
3 羽根車
4 中間ケーシング
4a 最後段の中間ケーシング
5 吸込口
6 吸込側ケーシング
7 吐出口
8 吐出側ケーシング
9 ボルト
10 ポンプ軸
11 モータ
12 駆動軸
13 カップリング
14 軸受
15 非拘束部
16 空隙部
17 筒状側壁
18 フランジ
19 受け皿
20 緩衝部材
21 非拘束部
22 空隙部
23、24 段部
25、26 雄ネジ部
27 雌ネジ部
28 貫通孔
30、31 内側端面
32、33 緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をした外胴の内部をポンプ室とし、前記ポンプ室内に複数の羽根車及び中間ケーシングを多段状に積み重ねて配置し、前記外胴の一端開口部に吸込口を有する吸込側ケーシングを、他端開口部に吐出口を有する吐出側ケーシングを配置して吸込側ケーシングと吐出側ケーシングをボルトで締結し、前記吸込側ケーシングと前記吐出側ケーシングとで前記中間ケーシングを支持し、前記羽根車を駆動するポンプ軸の一端にモータを連結した構造の多段タービンポンプにおいて、
前記吐出側ケーシングの内側面と最後段の中間ケーシングの外側面との間に非拘束部を設けたことを特徴とする多段タービンポンプ。
【請求項2】
円筒状をした外胴の内部をポンプ室とし、前記ポンプ室内に複数の羽根車及び中間ケーシングを多段状に積み重ねて配置し、前記外胴の一端開口部に吸込口を有する吸込側ケーシングを、他端開口部に吐出口を有する吐出側ケーシングを配置して吸込側ケーシングと吐出側ケーシングをボルトで締結し、前記吸込側ケーシングと前記吐出側ケーシングとで前記中間ケーシングを支持し、前記羽根車を駆動するポンプ軸の一端にモータを連結した構造の多段タービンポンプにおいて、
前記ボルトで締結されている前記吸込側ケーシング及び前記吐出側ケーシングと前記外胴の両端との間に、前記外胴の軸方向への移動を許容する非拘束部を設けたことを特徴とする多段タービンポンプ。
【請求項3】
円筒状をした外胴の内部をポンプ室とし、前記ポンプ室内に複数の羽根車及び中間ケーシングを多段状に積み重ねて配置し、前記外胴の一端開口部に吸込口を有する吸込側ケーシングを、他端開口部に吐出口を有する吐出側ケーシングを配置して吸込側ケーシングと吐出側ケーシングをボルトで締結し、前記吸込側ケーシングと前記吐出側ケーシングとで前記中間ケーシングを支持し、前記羽根車を駆動するポンプ軸の一端にモータを連結した構造の多段タービンポンプにおいて、
前記吐出側ケーシングの内側面と最後段の中間ケーシングの外側面との間に非拘束部を設け、また、前記ボルトで締結されている前記吸込側ケーシング及び前記吐出側ケーシングと前記外胴の両端との間に、前記外胴の軸方向への移動を許容する非拘束部を設けたことを特徴とする多段タービンポンプ。
【請求項4】
前記非拘束部が、空隙部であることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の多段タービンポンプ。
【請求項5】
前記非拘束部が、緩衝材であることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の多段タービンポンプ。
【請求項6】
前記外胴の軸方向への移動を許容する非拘束部は、吸込側ケーシングと吐出側ケーシングを締結するボルトの両側に段部を形成して、段部をもって吸込側ケーシングと吐出側ケーシングの締結支点とし、吸込側ケーシングと吐出側ケーシングの内側端面間の長さを前記外胴の軸方向の長さより長くし、該長さの差をもって形成したものであることを特徴とする請求項2又は3に記載の多段タービンポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−127429(P2011−127429A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283597(P2009−283597)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】