説明

多段伸縮装置

【課題】多段伸縮装置において、各段の外形寸法差を小さくして装置の小型化・装置筒状体の意匠自由度の向上・装置の剛性を向上、さらには装置内部にある部品の組立保守性を改善した多段伸縮装置を提供すること。
【解決手段】最外段筒状体、中間段筒状体、最内段筒状体とからなり、最外段筒状体内から順次次段の筒状体が出没可能になされた多段伸縮装置において、中間段筒状体を牽引するワイヤが巻回され、前記中間段筒状体と一体として移動可能になされたプーリが、最内段筒状体内部に配設されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば舞台用撮影カメラや医療用X線照射装置あるいは産業用ロボット等の移動体を昇降させる多段伸縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第5図は、4段式に構成された従来の多段伸縮装置の一例を示している。この多段伸縮装置は、それぞれ径の異なる断面矩形の4本の筒状体が、同軸上に遊嵌されるとともに、各筒状体がその一つ外側の筒状体内から下方に出没可能になされたものである。4本の筒状体は外側から順に、最外段筒状体としての1段目筒状体1a、中間段筒状体としての2段目筒状体1bと3段目筒状体1c、最内段筒状体としての4段目筒状体1dにより構成されている。1段目筒状体1aは、天井30に固定され、残りの2段目筒状体1b、3段目筒状体1c、4段目筒状体1dは、上下方向に移動可能になされ、それぞれひとつ外側の筒状体内から出没可能に構成されている。
【0003】
前記2段目筒状体1bの下部内側面にはプーリ10が設けられている。このプーリ10にはワイヤ11が巻回されており、このワイヤ11は、一端が3段目筒状体1cの上端部に止着されるとともに、他端が1段目筒状体1aもしくは天井30に止着されている。また3段目筒状体1cの下部内側面にはプーリ12が設けられている。このプーリ12にはワイヤ13が巻回されており、このワイヤ13は、一端が4段目筒状体1dの上端部に止着されるとともに、他端が2段目筒状体1bの上端部に止着されている。
【0004】
一方、4段目筒状体1dの上端部には、ウインチワイヤ14の一端が止着されている。このウインチワイヤ14の他端は図示しないウインチにより、ウインチワイヤ14を巻き取りあるいは繰り出すことによって4段目筒状体1dを上下方向に移動するようになっている。またこれら1段目筒状体1aから4段目筒状体1d間の各すきまには、レール8aとベアリング8bとからなる案内部材8が設けられている。
【0005】
次に以上のように構成された多段伸縮装置の動作について説明する。第5図に示す伸長状態から、ウインチを駆動してワイヤ14を巻き上げ4段目筒状体1dを上方向に移動させると、この4段目筒状体1dの移動にともなって、3段目筒状体筒状体1cおよび2段目筒状体1bも上方向に移動する。このとき3段目筒状体1cに対する4段目筒状体1dの移動距離と、2段目筒状体1bに対する3段目筒状体1cの移動距離とが等しく、かつ2段目筒状体1bに対する3段目筒状体1cの移動距離と1段目筒状体1aに対する2段目筒状体1bの移動距離とが等しくなる。よって1段目筒状体1aに対する各筒状体の移動距離の割合は、4段目筒状体1d:3段目筒状体1c:2段目筒状体1b=3:2:1となる。このようにこれら2段目筒状体1b、3段目筒状体1cおよび4段目筒状体1dが上記割合で上方向に移動することにより、多段伸縮装置全体として、収縮動作が行われる。
【0006】
また逆に多段伸縮装置全体として伸長させる場合には、ウインチを駆動して4段目筒状体1dに止着されたワイヤ14を繰り出せば、4段目筒状体1dは自重によって下方向に移動し、この4段目筒状体1dの移動にともなって3段目筒状体1cおよび2段目筒状体1bも下方向に移動する。このとき4段目筒状体1d、3段目筒状体1c、および2段目筒状体1bの移動距離の割合は、収縮時と同様である。(例えば特許文献1参照)

【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−269497
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の多段伸縮装置にはいくつかの問題があった。特許文献1に示される装置の問題は、嵌合する筒状体同士のすきまにプーリやワイヤを配設しなくてはならず、必然的に各段筒状体の外形寸法差が大きくなり、装置小型化の障害となっていた。これは、最下段筒状体の外形寸法は、ねじり剛性や強度の問題からあまり小さくすることができず、したがって段数が増えるごとに、各段のそれぞれの外形寸法差分だけ大きくなり、最上段の外形寸法が増加することによる。
【0009】
また筒状体のすきまに、プーリ等が配設されているため、プーリやワイヤをサブユニットとしてとりだすことができず、保守点検がやりづらかった。
【0010】
また筒状体の水平断面形状を円形にすると、ワイヤを含むプーリ外周部が、近接する筒状体に干渉しないようにせねばならず、プーリ中心部では、プーリの厚み以上の隙間が必要になるため、スペース効率を考えると筒状体水平断面形状は、円形ではなく直線部を有する多角形に制約され、意匠的な自由度が制限されていた。
【0011】
さらには、筒状体と筒状体の間に、プーリやワイヤ等が配設されているため、重なり合う外側筒状体の下部内側と内側筒状体の上部外側それぞれに、環状摺動部材をはさんで、筒状体同士を摺接嵌合させ、水平方向の遊びを少なくしたり、剛性を高めたりすることが困難であった。
【0012】
そこで本発明では、筒状体各段の外形寸法差を大きくせず、ひいては装置の径方向寸法を大型化せずとも、各段筒状体を連携的に位置決めし、筒状体が急激に落下するような危険を生じさせない多段伸縮装置を提供することを目的とする。また、各段筒状体を連携的に伸縮させるための機構部を筒状体ユニットとは別のサブユニットとしてとりだせるようにすることにより組立や保守点検がやりやすい多段伸縮装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、筒状体同士のすきまをいたずらに増やすことなく、筒状体断面形状を略円形にすることが可能な意匠的自由度をもった多段伸縮装置を提供することを目的とする。 さらに、重なり合う外側筒状体の下部内側と内側筒状体の上部外側それぞれに、環状摺動部材をはさんで、筒状体同士を摺接嵌合させ、剛性を高めたり、あるいは筒状体の上下方向摺接構造を簡素化できる多段伸縮装置を提供することを目的とする。


【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明は、次のように構成される。請求項1記載の発明は、最外段筒状体、中間段筒状体、最内段筒状体とからなり、最外段筒状体内から順次次段の筒状体が出没可能になされた多段伸縮装置において、中間段筒状体を牽引するワイヤが巻回され、前記中間段筒状体と一体として移動可能になされたプーリが、最内段筒状体内部に配設されたことを特徴とする多段伸縮装置である。
【0015】
請求項2記載の発明は、最外段筒状体、中間段筒状体、最内段筒状体とからなり、最外段筒状体内から順次次段の筒状体が出没可能になされた多段伸縮装置において、中間段筒状体の上端から垂下した棒状部材の先端に、前記中間段筒状体を牽引するワイヤが巻回されたプーリが配設され、前記中間段筒状体と前記プーリとが一体として移動するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の多段伸縮装置である。
【0016】
請求項3に記載の発明は、最外段筒状体、中間段筒状体、最内段筒状体とからなり、最外段筒状体内から順次次段の筒状体が出没可能になされた多段伸縮装置において、中間段筒状体の上端から垂下した棒状部材の先端に、前記中間段筒状体を牽引するワイヤが巻回されたプーリが配設され、前記中間段筒状体と前記プーリとが一体として移動するように構成されるとともに、前記ワイヤの一端は前記中間段筒状体よりも外側の筒状体側に止着され、他端は前記中間段筒状体よりも内側の筒状体側に止着されたことを特徴とする請求項1または2に記載の多段伸縮装置である。
【0017】
請求項4記載の発明は、最内段をのぞくいずれかの筒状体端部近傍に位置検出部材が挿通されており、装置が最収縮もしくは所定の設定位置に収縮した際、前期位置検出部材が最内段部に接触して移動することを利用する収縮位置検出機構を有する請求項1〜3の一項に記載の多段伸縮装置である。


【発明の効果】
【0018】
上述したように本発明の多段伸縮装置は、多重嵌合している筒状体の隙間に、プーリやワイヤ等を配置せず、プーリ、ワイヤをすべて、最下段筒状体およびその延長領域に配置しているため、筒状体各段の外形寸法差を小さくでき、ひいては多段伸縮装置の径方向寸法を大型化することなく中間段筒状体を位置決めし、どの段の筒状体も急激に落下するような危険を生じさせないようにできる。
【0019】
また、各段筒状体を完全に分離しなくても、最上段の上端部から2段目以降の上端部を露出する状態にして、各段のキャップ部材を棒状体、プーリ、ワイヤと共に、それぞれの筒状体から分離すれば、キャップ部材と棒状体、プーリ、ワイヤが2組以上であっても、一体的に多段伸縮装置の本体から取り外すことやあるいは逆に組み付けることが可能なので、プーリやワイヤまわりの組立作業性や保守点検性を向上することができる。
【0020】
また、筒状体同士のすきまをいたずらに増やすことなく、筒状体断面形状を略円形状にした多段伸縮装置を提供することもできる。
【0021】
さらに、重なり合う筒状体同士のすきまに、環状摺動部材をはさみ、筒状体同士を摺動部材を介して摺接嵌合させ、水平方向の遊びを少なくしたり、剛性を高めたり、あるいは筒状体の上下方向摺接構造を簡素化することができる。
【0022】
さらに装置の側面に突起物を突出することなく、装置が最収縮もしくは所定の設定位置に収縮したことを検出することができる。

【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の多段伸縮装置を、天井懸垂4段伸縮式の移動体位置決め装置に適用した1実施例の外観を示す正面図である。
【図2】同実施例の、筒状体多段伸縮部の内部構造を示す正面断面図である。
【図3】同実施例の、内部構造を示す斜視図である。
【図4a】同実施例の、筒状体多段伸縮部の収縮位置検出部を表す断面図である。
【図4b】同実施例の、筒状体多段伸縮部が最収縮したときの位置検出部を表す部分断面詳細図である。
【図5】従来の天井懸垂式多段伸縮装置の内部を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の多段伸縮装置を、撮影カメラを位置決めする天井懸垂4段伸縮装置に応用した例について、図1から図4を用いて説明する。 図1は天井懸垂4段伸縮式の撮影カメラを位置決めする装置の1実施例の全体を示す正面図である。本実施例では、天井もしくは天井に固定されたレール上を移動する台車に一体的に構成された取付ベース部材1に、多段伸縮装置の最外段筒状体としての1段目筒状体21が鉛直方向に組み付けられている。1段目筒状体21の下端内側から、中間段筒状体としての2段目筒状体31と3段目筒状体41、および最内段筒状体としての4段目筒状体51が出入りし、4段目筒状体51の下端部に取り付けられた撮影カメラ9を昇降移動させる。1段目筒状体21の上部には、モータ4やギヤボックス3などにより駆動されるウインチ2が設けられており、ウインチ2に巻きつけられたウインチワイヤ6の一端は、本多段伸縮装置の内部を通して、4段目筒状体の下部に止着されている。
【0025】
図2は、本発明の内部機構を示す断面図であって、図1の全体図から、取付ベース部材1、ウインチ2、ギヤボックス3、モータ4、撮影カメラ9 を取り除いたものである。1段目筒状体21の内部に2段目筒状体31が、嵌合されており、同様に2段目筒状体31の内部に3段目筒状体41が、3段目筒状体41の内部に4段目筒状体51が嵌合されており、それぞれが上下方向に摺動可能になっている。また本実施例の、各段筒状体21、31、41、51の断面形状は略円形であるが、鉛直軸まわりの回転規制のため図示しない回転止めを設けてある。
【0026】
2段目筒状体31の上端部には2段目キャップ部材32が組み付けられており、2段目キャップ部材32から2段目棒状部材33が垂下している。2段目棒状部材33の下端部には、2段目プーリ34と2段目ワイヤ脱落防止部材35が装着されている。2段目プーリ34には、図示していないワイヤが巻回されており、当該ワイヤの一端は、2段目、3段目、4段目各キャップ部材の貫通穴を通って、1段目筒状体の上部にあるウインチベース板2aに止着されるとともに、もう一端は4段目キャップ部材52の貫通穴を通って3段目キャップ部材42に止着されている。
【0027】
同様に3段目筒状体41の上端部には3段目キャップ部材42が組み付けられており、3段目キャップ部材42から3段目棒状部材43が垂下している。3段目棒状部材43の下端部には、3段目プーリ44と3段目ワイヤ脱落防止部材45が装着されている。3段目プーリ44には、図示されていないワイヤが巻回されており、当該ワイヤの一端は、3段目と4段目のキャップ部材貫通穴を通って、2段目キャップ部材32に止着されるとともに、もう一端は4段目キャップ部材52に止着されている。
【0028】
1段目筒状体21の上部に設けられたウインチ2から下方にひきだされたウインチワイヤ6は、2段目、3段目、4段目各キャップ部材の中心部に設けられた長穴を貫通して4段目筒状体下部組みつけられた4段目ベースキャップ部材53に止着されている。
【0029】
図3は、本発明の内部機構を示す断面図であって、図2の断面図から、各段の筒状体21,31,41,51を取り除いた斜視図である。この図を用いて3段目ワイヤ46経路をさらに詳細に説明する。3段目筒状体41の上端部には3段目キャップ部材42が組み付けられており、3段目キャップ部材42から3段目棒状部材43が垂下している。
【0030】
3段目棒状部材43の下端部に装着された3段目プーリ44には、3段目ワイヤ46が巻回されており、当該ワイヤの一端は、4段目キャップ部材52に設けられた3段ワイヤ貫通穴52cと3段目キャップ部材42に設けられた3段ワイヤ貫通穴42aを通って、2段目キャップ部材32に設けられた3段ワイヤ止着部32aに止着され、前記3段目ワイヤ46のもう一端は、4段目キャップ部材の3段ワイヤ止着部52aに止着される。同様のしくみが、2段目棒状部材33の下端部に装着された2段目プーリ34に巻回された2段目ワイヤ36も適用される。なお2段目ワイヤ36の一端は、1段目筒状体上端部の代わりとなるウインチベース板2aに止着される。
【0031】
図4aは、本発明の多段収縮装置が最収縮もしくは所定の位置にあることを検出するための位置検出部材37を説明する断面図である。本断面図は、位置検出部材37の中心を通る面で断面化されており、図3とは異なる断面である。図4aにおいて、2段目キャップ部材32には、位置検出部材37を摺接する位置検出部材摺接穴32eが設けられており、当該摺接穴32eに摺接して上下方向に有限距離移動自在に位置検出部材37が組み付けられている。位置検出部材37の移動距離制限は、位置検出部材37が、キャップ部材32から脱落するのを防止するものであり、位置検出部材37の下端側には、キャップ部材42の位置検出部材貫通逃げ穴42aが設けられている。また当該位置検出部材貫通逃げ穴42aの下側には、4段目筒状体51の上端部か4段目キャップ部材52の一部が位置検出部材37の下端延長上にあり、位置検出部材当接部52eを形成している。
【0032】
次に本発明の動作について説明する。図2において、1段目筒状体21は、図示していない取付ベース部材に固定されている。4段目筒状体51は、1段目筒状体の上部に設けられた図示されていないウインチから下方に繰り出されたウインチワイヤ6によって懸垂されている。モータやギヤボックスを使って、前記ウインチを駆動することにより、ウインチワイヤ6の下端位置が上下に移動し、すなわち4段目筒状体51の位置を制御できる。
【0033】
図2に示す伸長状態から、ウインチを駆動してウインチワイヤ6を巻き上げ4段目筒状体51を上方向に移動させると、4段目筒状体51の移動にともなって、3段目筒状体筒状体41および2段目筒状体31も上方向に移動する。このとき3段目筒状体41に対する4段目筒状体51の移動距離と、2段目筒状体31に対する3段目筒状体41の移動距離とが等しく、かつ2段目筒状体31に対する3段目筒状体41の移動距離と1段目筒状体21に対する2段目筒状体31の移動距離とが等しくなる。よって1段目筒状体21に対する各筒状体の移動距離の割合は、4段目筒状体51:3段目筒状体41:2段目筒状体31=3:2:1となる。このようにこれら2段目筒状体31、3段目筒状体41および4段目筒状体51が上記割合で上方向に移動することにより、多段伸縮装置全体として、収縮動作が行われる。
【0034】
また逆に多段伸縮装置全体として伸長動作をさせる場合には、ウインチを駆動して4段目筒状体51に止着されたウインチワイヤ6を繰り出せば、4段目筒状体51は自重によって下方向に移動し、この4段目筒状体51の移動にともなって3段目筒状体41および2段目筒状体31も下方向に移動する。このとき4段目筒状体51、3段目筒状体41、および2段目筒状体31の移動距離の割合は、収縮時と同様である。
【0035】
これらの作用により、各筒状体の伸縮位置はバランスよく決定されるので、特定の筒状体の位置が不定になり、落下したりする恐れがない。
【0036】
さらに図2において示されているように、固定側の1段目筒状体21とウインチワイヤ6により位置が決定される4段目筒状体51以外の中間段筒状体31,41の伸縮位置を制御するための、プーリ34,44、やプーリ34,44に巻回されたワイヤ、プーリ34,44を保持する棒状体33,43をすべて、最内段の筒状体である4段目筒状体51の内部か、その移動領域に配設したので、各段筒状体のすきまには、プーリやワイヤを配設する必要がない。したがって、各段筒状体のすきまを小さくすることができ、すなわち、各段筒状体の外形寸法差を小さくすることができる。
【0037】
あるいは、各段筒状体のすきまに、プーリを配設する必要がないので、各段筒状体のすきまに直線部分がなくてもよい。あるいはプーリの直径が収まるだけのすきま領域を確保する必要がない。 したがって、各段筒状体の断面形状を略円形状にする意匠的な自由度が得られる。
【0038】
さらに各段筒状体の断面形状が略円形であれば、筒状体同士の摺動ガイドとして、特別なレールや転がり軸受けを使用せずに、樹脂等の摺動材量で形成された環状摺動部材7a、7bを筒状体同士の隙間にはさんでやれば、 省スペースで簡素な摺動機構を構成することが可能になる。 また、環状摺動部材をすべり軸受けで構成すれば、ボールベアリングを使った摺動機構にくらべて取付面積を広くできることにより、横荷重に対する剛性の向上が期待できる。
【0039】
さらに図2の多段伸縮装置において、次のような手順で1台分のプーリやワイヤ類を一体的に伸縮装置本体から取り出すことができる。 すなわちまず取付ベース部材1に止着された2段目プーリに巻回されたワイヤの一端をとりはずし、図2の状態にする。 次に1段目筒状体の上部から2段目筒状体の上部を引き出すと、2段目筒状体31から2段目キャップ部材32を分離することが可能である。 さらに2段目筒状体31の上部から3段目筒状体41の上部を引き出すと、3段目キャップ部材42を3段目筒状体41から分離することが可能である。 さらに3段目筒状体41の上部から4段目筒状体51の上部を引き出すと、4段目キャップ部材52を4段目筒状体51から分離することが可能である。以上の手順により、図3に示すような各段のキャップ部材32、42、52、棒状部材33,43、プーリ34,44、ワイヤ36,46からなるサブ組部品が、多段伸縮装置の本体側から取り出すことができる。
【0040】
図3に示すサブ組部品の状態でプーリやワイヤの動作確認や点検作業を行うことができるので、従来各段筒状体のすきまや内側に個別に設けられていた多段伸縮装置にくらべて、組立確認や保守点検時の作業性を向上させることができる。
【0041】
さらに本実施例では、図4aに示すとおり、2段目キャップ部材32の位置検出部材摺接穴32eに、位置検出部材37が挿通されている。本多段伸縮装置が最収縮状態になると、2段目キャップ部材32、3段目キャップ部材42、4段目キャップ部材52が接近ないし当接する結果、前記位置検出部材37は、位置検出部材貫通逃げ穴42aを通して、4段目筒状体上部の位置検出部52eに接触し、上方向に押し上げられる。 その結果、図4bに示すとおり、2段目キャップ部材32に挿通された位置検出部材37は、2段目キャップ部材32に対して図4bに示された移動量Lだけもちあげられ、1段目筒状体21の上部にあるウインチベース部材2aから、前記位置検出部材37の移動量Lを、光センサ、近接センサ、マイクロスイッチ等で検出することにより、本多段伸縮装置が最収縮もしくは所定の収縮位置に収縮したことを検出できる。図4a、図4bに示される位置検出機構は、図示しないセンサ部も含めて、装置の内部および1段目筒状体21の上部の領域しか占拠しない。すなわち装置側面に突起物やセンサ、配線コードが露出しないため、装置の美観を損なうことがなく、通常の利用者が触れることが可能な位置に突起物がないことにより、安全性向上も期待できるものである。
【0042】
本発明において、直接外部から駆動されない筒状体の位置決めする手段を、ワイヤを巻回させたプーリとして説明してきたが、ワイヤとプーリに置き換え可能なものであれば、他のものでもよく、例えば、チェーンとスプロケット、ベルトとプーリ、紐と紐をすべらせてUターンさせる案内ピンや案内溝でもよい。
【0043】
また本実施例において、1段目筒状体21の上部には、モータ4やギヤボックス3などを使って回転させることのできるウインチ2が設けられており、ウインチ2に巻きつけられたウインチワイヤ6の一端は、本多段伸縮装置の内部を通して、4段目筒状体の下部に止着されているとしたが、ウインチ2の位置を上下逆に入れ替えてもよい。 すなわち、4段目筒状体51の下部には、モータやギヤボックスなどを使って回転させることのできるウインチ2が設けられており、ウインチ2に巻きつけられたウインチワイヤ6の一端は、本多段伸縮装置の内部を通して、1段目筒状体の上部側に止着されていてもよい。
【0044】
さらに、本実施例では、懸垂式4段伸縮装置において、外部からの駆動力をウインチ2とウインチワイヤ6によって最下段筒状体51に伝えるとして説明したが、外部からの駆動力を伝える手段は、ばねやおもりといったエネルギ源とプーリとワイヤ、スプロケットとチェーン、プーリとベルトといった伝達手段を組み合わせたものであってもよい。あるいはエネルギ源と伝達手段とが一体化された、電動送りねじや油空圧のシリンダであってもよい。
【0045】
以上本発明の多段伸縮装置を、撮影カメラの位置決め装置に適用した例について説明したが、本発明は、広く昇降位置決めを目的とする装置に適用することが可能である。例えば医療用X線撮影装置やマニピュレータに適用すれば、多段伸縮装置の外形寸法が小形化されることにより、前記位置決め対象物を、多段伸縮装置の中心軸に近づけることができるから、より作業室内空間の有効利用が可能になる。 あるいは直立させた長尺パイプの内径加工や内径検査装置に適用すれば、より内径が小さいパイプの加工や検査が可能にある。
【0046】
さらに、本発明の多段伸縮装置を、舞台装置撮影カメラや集音マイクの位置決め装置に適用すれば、多段伸縮する筒状体断面形状を略円形にできることにより、舞台装置機材としての意匠性向上が期待できる。
【0047】
すなわち本発明は、各段筒状体の外形寸法差や装置の最大外形寸法を小さくし、また一方で筒状体断面の意匠自由度を大きくすることにより、より使い勝手を向上させた様々な多段伸縮装置に適用することができるものである。


【符号の説明】
【0048】
1 取付ベース部材
1a 従来技術の1段目筒状体
1b 従来技術の2段目筒状体
1c 従来技術の3段目筒状体
1d 従来技術の4段目筒状体
2 ウインチ
2a ウインチベース部材
3 ギヤボックス
4 モータ
6 ウインチワイヤ
7 環状摺動部材
8 従来技術の案内部材
8a 従来技術のレール
8b 従来技術のベアリング
9 撮影カメラ
10 従来技術の2段目プーリ
11 従来技術の2段目ワイヤ
12 従来技術の3段目プーリ
13 従来技術の3段目ワイヤ
14 従来技術のウインチワイヤ
21 1段目筒状体
30 従来技術の天井
31 2段目筒状体
32 2段目キャップ部材
32a 3段ワイヤ止着部
32c 2段ワイヤ貫通穴
32d ウインチワイヤ貫通穴
32e 位置検出部材摺接穴
33 2段目棒状部材
34 2段目プーリ
35 2段目ワイヤ脱落防止部材
36 2段目ワイヤ
37 位置検出部材
41 3段目筒状体
42 3段目キャップ部材
42a 3段ワイヤ貫通穴
42c 2段ワイヤ貫通穴
42e 位置検出部材貫通逃げ穴
43 3段目棒状部材
44 3段目プーリ
45 3段目ワイヤ脱落防止部材
46 3段目ワイヤ
51 4段目筒状体
52 4段目キャップ部材
52a 3段ワイヤ止着部
52c 2段ワイヤ貫通穴
52d ウインチワイヤ貫通穴
52e 位置検出部材当接部
54 4段目ベースキャップ部材




【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外段筒状体、中間段筒状体、最内段筒状体とからなり、最外段筒状体内から順次次段の筒状体が出没可能になされた多段伸縮装置において、中間段筒状体を牽引するワイヤが巻回され、前記中間段筒状体と一体として移動可能になされたプーリが、最内段筒状体内部に配設されたことを特徴とする多段伸縮装置。


【請求項2】
最外段筒状体、中間段筒状体、最内段筒状体とからなり、最外段筒状体内から順次次段の筒状体が出没可能になされた多段伸縮装置において、中間段筒状体の上端から垂下した棒状部材の先端に、前記中間段筒状体を牽引するワイヤが巻回されたプーリが配設され、前記中間段筒状体と前記プーリとが一体として移動するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の多段伸縮装置。


【請求項3】
最外段筒状体、中間段筒状体、最内段筒状体とからなり、最外段筒状体内から順次次段の筒状体が出没可能になされた多段伸縮装置において、中間段筒状体の上端から垂下した棒状部材の先端に、前記中間段筒状体を牽引するワイヤが巻回されたプーリが配設され、前記中間段筒状体と前記プーリとが一体として移動するように構成されるとともに、前記ワイヤの一端は前記中間段筒状体よりも外側の筒状体側に止着され、他端は前記中間段筒状体よりも内側の筒状体側に止着されたことを特徴とする請求項1または2に記載の多段伸縮装置。


【請求項4】
最外段筒状体、中間段筒状体、最内段筒状体とからなり、最外段筒状体内から順次次段の筒状体が出没可能になされた多段伸縮装置において、最内段筒状体をのぞくいずれかの筒状体の端部に位置検出部材が挿通保持されており、装置が最収縮もしくは所定の設定位置に収縮した際、前期位置検出部材の端部が最内段筒状体端部に当接して、移動することを利用した収縮位置検出機構を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の多段伸縮装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−121074(P2012−121074A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50172(P2009−50172)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(308013920)株式会社ディファレンス (3)
【Fターム(参考)】