説明

多段式遠心コンプレッサ

【課題】改良された遠心コンプレッサを提供する。
【解決手段】本発明の多段式遠心コンプレッサは、コンプレッサハウジングであって、当該コンプレッサハウジング内に圧縮すべき流体のための流路が形成されているコンプレッサハウジングと、複数の動翼を備えたロータであって、当該動翼が前記流路内に設けられているとともにロータと共に駆動軸を中心として回転可能であるロータと、複数の戻し翼を備えた三次元戻し翼列であって、コンプレッサハウジングに対してねじれ強さを有している戻し翼列と、を有して成り、流路は湾曲された転向流路を有しており、転向流路は流れ方向において戻し翼に前置されており、三次元戻し翼列の戻し翼の、翼底部および/または翼底部に対して軸方向に後置された翼頭部は曲率を有し、および/または戻し翼は、翼底部において第一の翼角度分布を有し、翼頭部において前記第一の翼角度分布と異なる第二の翼角度分布を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特にガス状の流体を圧縮するための多段式遠心コンプレッサに関する。当該多段式遠心コンプレッサは、コンプレッサハウジングであって当該コンプレッサハウジング内に圧縮すべき流体のための流路が形成されているコンプレッサハウジングと、複数の動翼を備えるロータであって、当該動翼が前記流路内に設けられているとともに前記ロータと共に駆動軸を中心として回転可能であるロータと、複数の戻し翼を備える三次元戻し翼列であって、前記コンプレッサハウジングに対してねじれ強さを有している三次元戻し翼列と、を有して成り、前記流路は湾曲された転向流路を有しており、当該転向流路は流れ方向において前記戻し翼に前置されている。
【背景技術】
【0002】
前記のような遠心コンプレッサは例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4から知られている。
【0003】
特に体積流量が比較的大きい場合、コンプレッサの二つの段の間にあって、180度の転向を成す入口において、ロータから排出される流れの結果として、流れ角分布が極めて不均一になる。これによって従来知られている二次元戻し翼列への流入不全が増大し、それとともに望ましくない流れ損失が生じる結果となる。より小さな構成を実現するためにディフューザの比率を減少させると、入射流損失および二次流損失がさらに増大する。
【0004】
特許文献5から単段式遠心コンプレッサが知られている。当該遠心コンプレッサはロータの半径方向外側に定置式のステータを有している。ステータのガイド翼は当該ガイド翼の長さにわたって、対数スパイラルに応じたねじりを有しており、それによって当該ガイド翼は互いにねじれた状態にある入口エッジもしくは出口エッジを備えている。湾曲された転向流路から成る流入部を備える戻し翼列として、後続の翼に対して装入することは考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許発明第4234739号
【特許文献2】独国特許出願公開第19654840号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第3430307号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第19554840号明細書
【特許文献5】独国特許発明第19502808号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は改良された遠心コンプレッサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1のおいて書き部に記載の遠心コンプレッサは、当該請求項1に記載の特徴によって改良されている。請求項15はこのような遠心コンプレッサのためのハウジングに対して保護を求め、請求項16はこのような遠心コンプレッサのための戻し翼列に対して保護を求めている。従属請求項は好適なさらなる構成に関する。
【0008】
本発明に係る遠心コンプレッサは、流体、特に例えば空気またはプロセス・ガスなどのガス状の流体を圧縮するために、二つまたはそれ以上の遠心コンプレッサ段を有している。当該遠心コンプレッサはこのために単一または複数の部材から成るコンプレッサハウジングを備え、当該コンプレッサハウジング内には、圧縮すべき流体を転向させるための少なくとも一つの流路が形成されている。各段は複数の動翼を備えるロータを有しており、当該動翼は流路内に設けられており、かつ、ロータと共に長手軸もしくは回転軸を中心として回転可能となっている。
【0009】
二つの段の間の流路において、好適に概ね180°湾曲された転向流路が形成されており、当該転向流路は上流段の動翼に対して流れ方向において後置されているとともに、下流段の動翼に対して流れ方向において前置されており、それによって上流段から排出される圧縮された流体を下流段に戻す。
【0010】
複数の戻し翼を備える戻し翼列が、流れ方向において、湾曲された転向流路に対して後置されている。当該戻し翼列はコンプレッサハウジングに対してねじれ強さを有しているとともに、例えば切削加工または腐食加工などの成形加工によって、当該コンプレッサハウジングと一体的に形成されており、当該コンプレッサハウジング内に差し込みまたはネジ留めなどによって着脱可能に、あるいは溶接またはリベット留めなどによって取り外し不能に固定されている。
【0011】
戻し翼列は三次元翼列として形成されている。すなわち、軸方向の翼幅にわたって少なくとも領域ごとに異なる曲率を備えている。戻し翼はそれぞれ、翼底部と、当該翼底部に対して軸方向に後置されている、すなわち流れ方向において前置されている段から軸方向にさらに遠く離れている翼頭部を有し、当該翼底部と翼頭部は軸方向の翼幅を限定するか、もしくは軸方向に流路を画定している。翼底部とは、特に戻し翼列の軸方向最前部の断面であって、上流段に対向している断面であってよく、翼頭部とはそれに応じて戻し翼列の軸方向最後部の断面であって、下流段に対向している断面であってよい。
【0012】
本発明の第一の態様では、翼底部および/または翼頭部は経線断面もしくは子午断面において、ゼロおよび無限大に対して、少なくとも領域ごとに異なる曲率を有している。特に翼底部もしくは翼頭部の軸方向の高さ、すなわち長手軸もしくは回転軸に対して垂直に配向されている基準面に対する翼底部もしくは翼頭部の距離が、戻し翼の長さもしくは径方向の延伸とともに非線形に変化し得る。知られている線形の、すなわち直線形または斜線形の翼頭部および翼底部に対し、戻し翼列において流れはこのように最適化され得る。
【0013】
このように軸方向において非線形の湾曲された翼底部もしくは翼頭部は、例えば回転軸上の垂直面を基準とする、軸方向の高さに対する半径に関して、好適に個々に規定された多項式関数、例えばスプライン関数またはベジエ曲線によって定義され得る。好適に湾曲された翼底部もしくは翼頭部は、連続的に、好ましくは滑らかに、すなわち単一または多重に連続微分可能に、特に曲率が急激に変化することなく、流れ経路の隣接する領域に移行する。
【0014】
前記のように定義される、回転軸に対して垂直な基準面の上方であって、戻し翼の長手方向における翼底部もしくは翼頭部の軸方向の高さの曲線挙動は、一つまたはそれ以上の少なくとも局所的な極値、すなわち一つまたはそれ以上の極小値および/または極大値を有し得る。特に当該曲線挙動が少なくとも一つの局所的または大域的な極小値および極大値を有する場合、当該曲線挙動は一つまたは複数の変曲点を有し得、当該変曲点において曲率が変化する。
【0015】
前記の第一の態様と組み合わされていてよい本発明の第二の態様によれば、転向流路の曲率半径は当該転向流路の長さに関して変化する。このとき曲率半径は例えば転向流路の断面の面中心点を結ぶ線と曲率中心との距離、あるいは、曲率中心に対する転向流路の径方向内側または径方向外側の画定部の距離によって規定され得る。特に、転向流路の曲率半径は当該転向流路の長さにわたって非線形に変化し得る。曲率半径が変わらない、すなわち円弧として形成されている、公知の転向流路に対して、戻し翼列への流入はこのように最適化され得る。
【0016】
好適な実施の形態において、転向流路の径方向内側または径方向外側の画定部は少なくとも領域ごとに異なって変化するので、当該転向流路の長さにわたって異なる流路の高さが生じる。
【0017】
変化する曲率半径も同様に例えば、転向流路の長さ、もしくは転向角度に関して、好適に区間ごとに規定された多項式関数、例えばスプライン関数またはベジエ曲線によって定義され得る。好適に湾曲された転向流路は、連続的に、好ましくは滑らかに、すなわち単一または多重に連続微分可能に、特に曲率が急激に変化することなく、流れ経路の隣接する領域に移行する。
【0018】
前記のように定義される曲率半径の曲線挙動は、一つまたはそれ以上の少なくとも局所的な極値、すなわち一つまたはそれ以上の極小値および/または極大値を有し得る。特に当該曲線挙動が少なくとも一つの局所的または大域的な極小値および極大値を有する場合、当該曲線挙動は一つまたは複数の変曲点を有し得、当該変曲点において曲率半径が変化する。
【0019】
前記の第一および/または第二の態様と組み合わされていてよい本発明の第三の態様によれば、三次元戻し翼列の戻し翼は、翼底部において第一の翼角度分布を有し、翼頭部において当該第一の翼角度分布と異なる第二の翼角度分布を有している。
【0020】
この場合、翼角度分布とは、当該分野で通常行われるように、翼の子午線方向の長さにわたる翼角度の曲線挙動、すなわち流体の流れ方向における翼角度の曲線挙動を表す。つまり、翼の特徴的な輪郭線、特に正中線またはデータム線が外周における接線と成す角度の曲線挙動を表す。
【0021】
このように翼底部と翼頭部において翼角度分布が異なることは、戻し翼列の軸方向前方の断面と軸方向後方の断面において翼の長手方向における翼角度の曲線挙動が異なることに等しい。
【0022】
本発明のように翼頭部と翼底部において翼角度分布が等しくないことによって、三次元翼形状が作られる。当該三次元翼形状は翼面のねじれに表れている。上流段のロータからの排出流および/または湾曲された転向流路の180°の転向から生じる流れ角分布の不均等性はこれによって低減または調整され得る。このようにして下流段への接近流が改善され、流れの入射が減少し、流れのガイドが改善される。これによって好適に遠心コンプレッサ段の効率を向上させることができるが、同時にディフューザの比率を減少させることもできる。それによって遠心コンプレッサ全体の構造を小さくすることができる。
【0023】
このとき好適に戻し翼列への入り口において、翼底部における第一の翼入口角は、翼頭部における第二の翼入口角よりも大きいか、または小さい。翼入口角とは、翼の上流側前方領域、すなわち流体が最初に翼に当たる領域における翼角度である。
【0024】
流れにおいて特に好適な条件は以下の通りである。すなわち、第一の翼入口角と第二の翼入口角のうちの一方が当該第一の翼入口角と第二の翼入口角のうちの他方に対して有する比が1.1より大きいか、または1.1に等しい、好ましくは1.2より大きいか、または1.2に等しい、特に1.3より大きいか、または1.3に等しい場合、および/または第一の翼入口角と第二の翼入口角のうちの一方が当該第一の翼入口角と第二の翼入口角のうちの他方よりも少なくとも5°、特に少なくとも10°大きい場合である。
【0025】
好適に、翼頭部における第一の翼出口角は、翼底部における第二の翼出口角とほぼ同一である。翼出口角とは、翼の下流側後方領域、すなわち流れが翼を出る領域における翼角度である。これによって好適に翼の出口において二次元の、ねじれのない翼が実現され、それによって下流側のコンプレッサ段の接近流が改善される。翼出口角はたとえば80°と100°の間の範囲、特に85°と95°の間の範囲であってよく、好適な実施の形態ではほぼ90°である。
【0026】
本発明において、戻し翼列の翼底部と翼頭部において翼角度分布が異なることによって、翼底部と翼頭部においてこのように異なる翼入口角と、ほぼ等しい翼出口角とを組み合わせることができる。それによって戻し翼列を流れ条件、特に翼入り口における当該流れの接近流および翼出口における排出流に対して最適に適合させる。
【0027】
好適に、翼頭部と翼底部の一方における翼角度変化、すなわち翼出口角と翼入口角との差と、翼頭部と翼底部の他方における翼角度変化との比は、1.1より大きいか、または1.1に等しく、特に1.14より大きいか、または1.14に等しい。
【0028】
翼底部における第一の翼角度および/または翼頭部における第二の翼角度は、戻し翼列への入り口と戻し翼列からの出口との間で単調に、特に狭義単調に変化する。このとき単調増加/単調減少するとは、翼入り口と翼出口との間の所定の位置における翼角度が、当該位置に対してそれぞれ上流にある領域の翼角度よりも常に大きいか、または当該翼角度と同じであるか、あるいは、翼入り口と翼出口との間の所定の前記位置に対してそれぞれ上流にある領域の翼角度よりも常に小さいか、または当該翼角度と同じであることを表し、相応に狭義単調増加/単調減少するとは、翼入り口と翼出口との間の所定の位置における翼角度が、当該位置に対してそれぞれ上流にある領域の翼角度よりも常に大きいか、あるいは、常に小さいことを表す。このような翼の側面形状は流体技術および製造技術の上で有利であり得る。
【0029】
戻し翼列の翼底部もしくは翼頭部の圧力側または吸引側または正中線を例えば円筒座標において、半径rに対して軸方向の高さhと周方向の角度βの曲線挙動によって表すと、第一の態様は特に以下の非線形関数によって示される。
【0030】
【数1】

【0031】
もしくは以下の式によって示される。
【0032】
【数2】

【0033】
相応に第二の態様は特に以下の式によって示される。
【0034】
【数3】

【0035】
もしくは以下の式によって示される。
【0036】
【数4】

【0037】
前記の式は曲率半径Rと好適におよそ0°からおよそ180°まで及ぶ転向角度ρを備え、相応に第三の態様は以下の式によって示される。
【0038】
【数5】

【0039】
当該式は少なくとも以下の領域において当てはまる。
【0040】
【数6】

【0041】
戻し翼は外径と内径とを有している。このとき内径は、翼の下流側の出口エッジであって、好適に遠心コンプレッサの長手軸もしくはロータの回転軸に対して平行である出口エッジと、前記長手軸との最小距離を表す。転向流路に対向している上流側の入口エッジも前記長手軸に対して平行であり得る。代替的に軸方向に傾斜した入口エッジも可能であり、当該入口エッジは子午面で見て長手軸に対して角度を成す。このような角度は好適に5°と65°の間の範囲にあり、それによって戻し翼列に流入する最適な流れが保証される。軸に平行な入口エッジも傾斜した入口エッジも、径方向において、流れが好適におよそ180°方向転換される転向流路の下方に設けられていてよく、転向流路からの出口で終結するか、あるいは径方向において転向流路内に突出していてよく、それによって戻し翼列内への流入と転向流路における流れの方向転換を最適化する。相応に外径とは、例えば翼の上流側の入口エッジと前記長手軸との最大距離、最小距離または中間の距離として定義され得る。
【0042】
外径と内径の比は好適に1.6より小さいか、または1.6に等しく、特に1.55より小さいか、または1.55に等しい。なぜなら、本発明のように翼角度分布が異なることによって、およびそれによって入射流損失ならびに二次流損失を減少させることによって、高い損失なしに遠心コンプレッサの径方向の構成空間が実現され得るからである。
【0043】
戻し翼の翼面は好適にいわゆる制御線によって表示可能であり、それによって翼のねじりに隆起または「弓形」が導入されない。
【0044】
さらなる有利点と特徴は従属請求項と実施例に記載されている。当該実施例に関して以下の部分概略図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の二つの実施形態による遠心コンプレッサの子午断面部分図である。
【図2】図1に示す遠心コンプレッサの戻し翼の翼角度分布を示す図である。
【図3】図1に示す遠心コンプレッサの二つの戻し翼の、翼底部と翼頭部における二つの戻し翼断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1において、実線もしくは二点鎖線で、本発明の第一の実施の形態(実線)および本発明のさらなる実施の形態(二点鎖線)による多段式遠心コンプレッサ1の遠心コンプレッサ段の子午断面が示されている。本図では流路2が認められ、当該流路は段入口3を備えており、当該段入口に圧縮すべき流体が流入し、当該流体は例えば図に示されないさらなる遠心コンプレッサ段から搬送される。流れ方向は矢印によって暗示されている。
【0047】
流路2の第一の下方湾曲部にロータ4が設けられており、当該ロータは複数の動翼5を備えている。このときロータ4は図に示さない駆動軸と回転不能に連結されており、当該駆動軸によって回転軸もしくは長手軸Aを中心として回転される。流体はロータ4の後にディフューザ部6に到達し、当該ディフューザ部に湾曲された転向流路7が接続しており、当該転向流路は概ね180°の湾曲を成している。
【0048】
二点鎖線で示されている実施の形態では、本図において転向流路の径方向外側の画定部から定置の曲率中心Mに至る距離である曲率半径Rは、転向流路7'の長さにわたって変化する。すなわち、曲率半径Rは0°からおよそ180°までに及ぶ転向角度ρを成して変化する。転向流路の径方向内側の画定部の曲率半径もこれとは異なる変化をなし、それによって転向流路7'の断面は同様に転向流路7'の長さにわたって変化する。しかしながら図に示さない変化形態において、当該断面は転向流路の長さにわたってほぼ一定に保たれてもよい。
【0049】
続いて流体は、径方向内側に向かって、複数の戻し翼9を備える戻し翼列8を貫流する。当該戻し翼は斜線によって概略的に示されているコンプレッサハウジング16に固定的に連結されるか、または当該コンプレッサハウジングと一体的に形成されている。
【0050】
戻し翼列8を貫流してから、流体は90°の湾曲部の後に段出口10に到達し、当該段出口から図に示されていないさらなる下流段に至り、当該さらなる下流段は好適に図1に示す段と等しく構成されている。構造体全体はコンプレッサハウジング16内に保持されており、当該コンプレッサハウジングは複数の部材から形成されていてよい。
【0051】
戻し翼がそれぞれ軸方向内側の翼底部11(図1の左)を有しているのが認められる。実線で示されている実施の形態では、当該翼底部は軸方向もしくは子午断面において非線形、例えば放物線形状に湾曲されており、それによって翼底部の軸方向の高さHは戻し翼9の長さもしくは半径、すなわち回転軸Aまでの距離に関して、翼入口13における最小値を起点として、まず翼のほぼ中心における極大値まで増加し、その後再びさらなる最小値に減少する。半径に関して、高さまたは翼の変化において急激に推移することなく行われる、転向流路7もしくは段出口10への滑らかな移行は二つの変曲点によって規定され、当該変曲点において湾曲の符号が変化し、本図に示す実施の形態において当該変曲点は翼入口もしくは翼出口における最小値と一致し得る。
【0052】
二点鎖線によるもう一方の実施の形態において翼底部11'は子午断面で見ると、回転軸Aに対して垂直に配向されているとともに、ディフューザ部6背面側15に接して設けられている。
【0053】
さらに戻し翼9がそれぞれ軸方向後ろの翼頭部12(図1の右)を有しているのが認められる。実線で示されている実施の形態では、当該翼頭部も軸方向もしくは子午断面において非線形に湾曲されており、それによって翼頭部の軸方向の高さhは戻し翼9の長さもしくは半径に関して、翼入口13における局所的最小値を起点として、まず翼のほぼ中心における大域的極小値まで減少し、その後大域的最大値に増加する。半径に関して、高さまたは翼の変化において急激に推移することなく行われる、転向流路7もしくは段出口10への滑らかな移行は二つの変曲点によって規定され、当該変曲点において湾曲の符号が変化し、本図に示す実施の形態において当該変曲点は径方向翼長さの25%および75%において、もしくは最大値と最小値との中間に位置し得る。
【0054】
もう一方の二点鎖線による実施の形態において、翼底部11に対向している翼頭部12'は子午断面で見ると、直線的に、すなわち湾曲せずに形成され、回転軸Aへの垂線に対して傾斜されており、それによって戻し翼列8の円錐状の拡張部が生じる。流路2は戻し翼列8の領域において、当該戻し翼列8に対応する円錐状の拡張部を有している。
【0055】
図2は二つの実施の形態に関して一致する、翼底部11における翼角度分布17と翼頭部12における翼角度分布18を、それぞれ翼の全長にわたって、翼入口13を起点として翼出口14に至るまで示している。翼底部11の翼入口角β1,hubはおよそ38°であることが認められる。翼頭部の翼入口角12β1,shroudはおよそ28°である。それぞれの翼入口角を起点として、翼底部と翼頭部は異なる全角度変化ΔβhubもしくはΔβshroudを有しており、Δβhubはおよそ56°であり、Δβshroudはおよそ66°である。
【0056】
翼底部11においても翼頭部12においてもねじれはそれぞれの翼入口角を起点として加算され、およそ94°になる。従って翼底部11の翼出口角と翼頭部12の翼出口角は同一である。それによって局所的に翼出口14において、二次元翼形状が作られ、それによって翼出口14においては回転軸Aに対する翼面のねじれがない。
【0057】
このとき、翼角度変化の比Δβshroud/Δβhubは1.14である。翼角度分布17,18は、翼底部11もしくは翼頭部12の長さに関して狭義単調な曲線挙動を有している。
【0058】
図3は二つの実施の形態に関して一致する二つの戻り翼9の断面を、翼底部11(番号.11)もしくは翼頭部12(番号.12)において、軸方向に離間された二つの切断面で示している。曲率は軸方向において、すなわち図3の平面からは認められない。本図に示す半径・円周の観点において、翼底部11における翼入口角β1,hubと翼頭部12における翼入口角12β1,shroudが書き込まれている。頭部断面9.12における翼輪郭と底部断面9.11における翼輪郭は、異なる翼入口角を起点として、異なる翼角度分布のために子午線方向に延伸する長さに関して狭義単調に変化し、その結果、径方向内側の翼出口14において翼出口角度は等しいことがわかる。
【0059】
図1において戻し翼9の入口エッジ13が回転軸Aに対して平行である前記の実施の形態のほかに、実線または二点鎖線で示されている実施の形態とは異なる、点線による第一の変化形態が示されている。当該変化形態において入口エッジ13'は、軸Aに対しておよそ45°より小さく傾斜している。この場合、外径Dとして例えば長手軸Aからの入口エッジ13'の最小距離が規定され得る。図1において実線または二点鎖線で示されている実施の形態とは異なる、一点鎖線による第二の変化形態が示されている。当該実施の形態において入口エッジ13''は回転軸Aに平行であるが、前記の実施の形態と異なり、半径方向において転向流路7内に突出している。
【符号の説明】
【0060】
1 遠心コンプレッサ
2 流路
3 段入口
4 ロータ
5 動翼
6 ディフューザ部
7 転向流路
8 戻し翼列
9 戻し翼
9.11 翼底部における戻し翼輪郭
9.12 翼頭部における戻し翼輪郭
10 段出口
11 翼底部
11' 翼底部
12 翼頭部
12' 翼頭部
13;13';13'' 翼入口エッジ
14 翼出口エッジ
15 背面側
16 ハウジング
M 曲率中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にガス状の流体を圧縮するための、少なくとも二つのコンプレッサ段を備えた多段式遠心コンプレッサ(1)であって、当該遠心コンプレッサは、
コンプレッサハウジング(16)であって、当該コンプレッサハウジング内に圧縮すべき流体のための流路(2)が形成されているコンプレッサハウジングと、
複数の動翼(5)を備えたロータ(4)であって、当該動翼が前記流路(2)内に設けられているとともに前記ロータ(4)と共に駆動軸(A)を中心として回転可能であるロータと、
複数の戻し翼(9;9')を備えた戻し翼列(8)であって、前記コンプレッサハウジング(16)に対してねじれ強さを有している戻し翼列と、を有して成り、
前記流路(2)は湾曲された転向流路(7;7')を有しており、当該転向流路は流れ方向において前記戻し翼(9;9')に前置されている多段式遠心コンプレッサにおいて、
前記三次元戻し翼列(8)の前記戻し翼(9)の、翼底部(11)および/または当該翼底部(11)に対して軸方向に後置された翼頭部(12)は、曲率を有しており、
前記転向流路(7')の曲率半径(R(ρ))は、前記転向流路の長さにわたって変化し、および/または
前記三次元戻し翼列(8)の前記戻し翼(9;9')は、前記翼底部(11;11')において第一の翼角度分布(17)を有し、前記翼頭部(12;12')において前記第一の翼角度分布と異なる第二の翼角度分布(18)を有していることを特徴とする遠心コンプレッサ。
【請求項2】
前記翼底部(11)の軸方向の高さ(H)および/または前記翼頭部(12)の軸方向の高さ(h)は、前記戻し翼(9)の長さにわたって変化することを特徴とする請求項1に記載の遠心コンプレッサ。
【請求項3】
前記翼底部(11)の前記軸方向の高さ(H)および/または前記翼頭部(12)の前記軸方向の高さ(h)の曲線挙動は、前記戻し翼(9)の長さに関して少なくとも一つの局所的な極値および/または少なくとも一つの変曲点を有していることを特徴とする請求項2に記載の遠心コンプレッサ。
【請求項4】
前記転向流路(7')の前記曲率半径(R(ρ))は、前記戻し翼(9)の長さに関して少なくとも一つの局所的な極値および/または少なくとも一つの変曲点を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の遠心コンプレッサ。
【請求項5】
前記戻し翼列(8)への入り口において、前記翼底部(11)における第一の翼入口角(β1,hub)は、前記翼頭部(12)における第二の翼入口角(β1,shroud)よりも大きいか、あるいは小さいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の遠心コンプレッサ。
【請求項6】
前記第一の翼入口角と前記第二の翼入口角のうちの一方(β1,hub)は、前記第一の翼入口角と前記第二の翼入口角のうちのもう一方(β1,shroud)の、少なくとも1.1倍、特に少なくとも1.2倍、特に少なくとも1.3倍の大きさであることを特徴とする請求項5に記載の遠心コンプレッサ。
【請求項7】
前記第一の翼入口角と前記第二の翼入口角のうちの一方(β1,hub)は、前記第一の翼入口角と前記第二の翼入口角のうちのもう一方(β1,shroud)よりも、少なくとも5°、特に少なくとも10°大きいか、もしくは小さいことを特徴とする請求項5または6のいずれか一項に記載の遠心コンプレッサ。
【請求項8】
前記戻し翼列(8)からの出口において、前記翼頭部(12)における第一の翼出口角と、前記翼底部(11)における第二の翼出口角はほぼ等しいことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の遠心コンプレッサ。
【請求項9】
第一の翼出口角および/または第二の翼出口角は80°と100°の間の範囲、特に85°と95°の間の範囲にあり、特にほぼ90°であることを特徴とする請求項8に記載の遠心コンプレッサ。
【請求項10】
前記翼頭部(12)と前記翼底部のうちの一方における、前記翼入り口(13)から前記翼出口(14)に至るまでの第二の翼角度変化(Δβshroud)は、前記翼頭部(12)と前記翼底部(11)のうちのもう一方における、前記翼入り口(13)から前記翼出口(14)に至るまでの第一の翼角度変化(Δβhub)の、少なくとも1.1倍、特に少なくとも1.14倍の大きさであることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の遠心コンプレッサ。
【請求項11】
前記翼底部(11)における前記第一の翼角度および/または前記翼頭部(12)における前記第二の翼角度は、前記戻し翼列(8)への入り口と前記戻し翼列からの出口との間で単調に、特に狭義単調に増加または減少することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の遠心コンプレッサ。
【請求項12】
前記戻し翼(9)は外径(D)と内径(d)とを有し、外径と内径の比(D/d)は1.6より小さいか、または1.6に等しく、特に1.55より小さいか、または1.55に等しいことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の遠心コンプレッサ。
【請求項13】
前記戻し翼(9)の前記転向流路(7)に対向している上流側の入口エッジ(13;13';13’')は前記コンプレッサの長手軸に対してほぼ平行であるか、もしくは当該長手軸に対して角度、特に5°と65°の間の範囲の角度をなす、および/または前記転向流路(7)内に突出していることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の遠心コンプレッサ。
【請求項14】
前記戻し翼(9)の翼面は制御線によって表示可能であることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の遠心コンプレッサ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の遠心コンプレッサのためのコンプレッサハウジングであって、
当該コンプレッサハウジング(16)内に形成されている、圧縮すべき流体のための流路(2)と、
複数の戻し翼(9)を備えた三次元戻し翼列(8)であって、前記コンプレッサハウジング(16)に対してねじれ強さを有している戻し翼列と、を有して成る、前記遠心コンプレッサのためのコンプレッサハウジングにおいて、
前記三次元戻し翼列(8)の前記戻し翼(9)の、翼底部(11)および/または翼頭部(12)は曲率を有し、および/または
前記戻し翼(9)は、前記翼底部(11)において第一の翼角度分布(17)を有し、前記翼頭部(12)において前記第一の翼角度分布と異なる第二の翼角度分布(18)を有していることを特徴とする遠心コンプレッサのためのコンプレッサハウジング。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載の遠心コンプレッサの三次元戻し翼列(8)のための戻し翼(9)において、前記三次元戻し翼列(8)の前記戻し翼(9)の、翼底部(11)および/または翼頭部(12)は曲率を有し、および/または
前記戻し翼(9)は、前記翼底部(11)において第一の翼角度分布(17)を有し、前記翼頭部(12)において前記第一の翼角度分布と異なる第二の翼角度分布(18)を有していることを特徴とする戻し翼。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−255619(P2010−255619A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26465(P2010−26465)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(501473888)マン ターボ アーゲー (21)
【氏名又は名称原語表記】MAN TURBO AG
【Fターム(参考)】