説明

多段熱処理法を用いてアゾ化合物の金属化合物を調製する方法

【課題】多段熱処理法を用いてアゾ化合物の金属化合物を調製する方法を提供する。
【解決手段】式(I)


に互変異性構造体の形態で一致するアゾ化合物の金属化合物を調製する方法であって、対応する金属化合物の水性懸濁液を少なくとも2段階のpHで熱処理することを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段熱処理法を用いてアゾ化合物の金属化合物を調製する方法と、その金属化合物の顔料としての使用と、その顔料の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
金属と、次式:
【0003】
【化1】

(式中、
RおよびR’は、互いに独立して、OH、NH、NH−CN、アリールアミノまたはアシルアミノであり、
およびR’は、互いに独立して、−OHまたは−NHである)
で示されるアゾ化合物との金属錯体顔料、
さらには、そのホスト−ゲスト化合物は、文献に広く記載されており、例は以下のとおりである。
− DE−A−2 064 093
− 米国特許第4,622,391号明細書
− 欧州特許出願公開第0994162A1号明細書
− 欧州特許出願公開第0994163A1号明細書
− 欧州特許出願公開第0994164A1号明細書
− 独国特許出願公開第10328999A1号明細書
【0004】
また、上記調製は熱処理によって行うことができ、熱処理は、6%を超える顔料濃度で有利に行われることも知られている。さらに、その熱処理が一定量の酸を添加することによって行われることも知られている。しかしながら、これらの方法で調製された顔料は、特に色強度の点で未だ欠点を有している。
【特許文献1】DE−A−2 064 093
【特許文献2】米国特許第4,622,391号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0994162A1号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0994163A1号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0994164A1号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第10328999A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、上記のような欠点のない、経済的で、かつ、工業的に容易に再現可能な方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、任意選択でゲスト化合物を含んでいてもよい、下記式(I)で示されるアゾ化合物またはその互変異性構造体の金属化合物、を調製する方法であって、この金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物を少なくとも2段階のpHで熱処理することを特徴とする方法に関する。
【0007】
【化2】

〔式中、
XおよびYを付した環は、それぞれ、=O、=S、=NR、−NR、−OR、−SR、−COOR、−CN、−CONR、−SO
【化3】

、アルキル、シクロアルキル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択される1個もしくは2個の置換基を有していてもよく、
環Xおよび環Yのいずれについても環内二重結合と環外二重結合との合計数は3であり、
(ここで、
は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、
は、水素、シアノ、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはアシルであって、
は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルである)
、R、RおよびRは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、このほかに、式(I)において破線で示されるように、5員環または6員環(この環には、さらなる環が縮合されていてもよい)を形成していてもよく、
は、−OH、−NR、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり(ここで、RおよびRは、先に定義したとおりである)、
CH基を有するR〜Rの置換基において、CH基中の水素原子は置換されていてもよく、
m、n、oおよびpは、1であってもよいし、他の選択肢として、式(I)において点線により示されるように、対応する置換基R〜Rが位置する環の窒素原子から二重結合が始まる場合には、0であってもよい〕
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の方法は、特に、式(I)で示されるアゾ化合物を、金属塩と、場合によりさらに所望のゲスト化合物とを、任意選択で有機溶剤を含んでいてもよい水中で反応させることによって、金属化合物の水性懸濁液を調製し、かつ、調製された懸濁液を少なくとも2段階のpHで熱処理することを特徴としている。
【0009】
「熱処理」という用語は、本発明においては、好ましくは、金属化合物および/またはそのホスト−ゲスト化合物を好ましくは水性媒体に懸濁または分散させた懸濁液または分散液を、所定の温度およびpHに保持することを意味する。各熱処理段階においては、温度は実質的に一定であることが好ましい。このように、1つの熱処理段階では、温度の中心温度からの変動が±5℃以下であることが好ましく、±3℃以下であることがより好ましい。しかしながら、各熱処理段階において、熱処理温度を変動または変化させることも可能である。ここで重要なことは、熱処理を少なくとも2つの異なるpH段階で行うことである。熱処理またはpH段階においては、水性懸濁液の所望のpHを設定することが好ましい。各熱処理段階では、pHは実質的に一定であることが好ましい。1つの熱処理またはpH段階における変動は、±1pH単位以下であることが好ましく、±0.5pH単位以下であることがより好ましい。
【0010】
金属化合物またはホスト−ゲスト化合物を少なくとも2段階のpHで熱処理した場合に、1段階で熱処理した場合に比べて、生成物の特性、特に色強度および/または製造コストが大幅に改善されうるということは、当業者にとって極めて驚くべきことである。
【0011】
多段熱処理は、固形分含有量が3重量%を超える分散液で行うことが好ましく、固形分含有量が4重量%〜15重量%の分散液で行うことがより好ましく、固形分含有量が6重量%〜10重量%の分散液で行うことが特に好ましい。
【0012】
有利には、多段熱処理は、各熱処理段階が80℃〜125℃の温度で行われる。多段熱処理は、各熱処理段階が90℃〜120℃で行われることが好ましく、95℃〜110℃で行われることが特に好ましい。本発明は、また、各熱処理段階における温度が実質的に同一である場合も含む。すなわち、熱処理は、実質的に同じ温度で、しかし異なるpHで行われる。たとえば、2段熱処理において、第1段階の熱処理温度が、第2段階の熱処理温度より低いこともあり、また、高いこともある。
【0013】
本発明により実施される多段熱処理は、pHレベルが0〜4の範囲にある、場合により有機溶剤を含んでいてもよい水中で行われることが好ましい。
【0014】
熱処理の少なくとも1段階は、pHが2〜4であることが好ましく、特に2.5〜3.5であることが好ましい。第2の熱処理段階におけるpHは、0〜3であることが好ましく、1〜2.5であることがより好ましい。2段階の熱処理におけるpHレベルの差は、0.5〜3単位であることが好ましく、1〜2単位であることがより好ましい。少なくとも2段階の熱処理においては、第2の熱処理段階は、第1の熱処理段階より低いpHで行うことが好ましい。
【0015】
熱処理の少なくとも2段階は、互いに独立して、0.25h〜24h継続することが好ましく、1h〜12h継続することが特に好ましく、2h〜8h継続することがいっそう好ましい。
【0016】
第1の熱処理段階は、第2以降の熱処理段階よりも高いpHで行うことが好ましい。第1の熱処理段階の時間は、第2以降の熱処理段階より短く、最長でも同じであることが好ましい。
【0017】
1つの理論に縛られるものではないが、第2以降の熱処理段階より高いpHレベルで実施することが好ましい第1の熱処理段階では、金属化合物および/またはホスト−ゲスト化合物の解凝集が生じる一方、それより後の熱処理段階では、金属化合物および/またはホスト−ゲスト化合物の結晶の成長が起こると考えられる。
【0018】
本発明の方法における第1の熱処理段階では、酸を加えることによりpHを、特に2.5〜3.5の範囲に調整することが好ましい。第2もしくはその後の熱処理段階は、場合により第1の熱処理段階に直接続くものである(特に、第2の熱処理段階が実質的に同じ温度で行われるとき)が、一定量の酸を加えることによってpHを下げることが好ましい。本発明の方法により調製される金属化合物およびそのホスト−ゲスト化合物は、十分に解凝集され、狭い粒度分布、特に、本発明による熱処理前の金属化合物および/またはそのホスト−ゲスト化合物より狭い粒度分布を有することが好ましい。
【0019】
本発明によれば、式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物は、特に、式(I)で示されるアゾ化合物の金属錯体化合物および/または式(I)で示されるアゾ化合物の塩型金属化合物であると理解される。本発明により調製される金属化合物では、式(I)で示されるアゾ化合物は、一般的には、単一脱プロトン化または多重脱プロトン化によりアニオンとして存在し、一方、金属は、カチオンとして存在し、これが式(I)で示されるアゾ化合物のアニオンに、塩型〜錯体型または配位型(すなわち、共有結合成分含有型)として結合する。式(I)は、アゾ化合物を、非脱プロトン化形態で、すなわち遊離酸の形態で示している。これらの錯体型および/または塩型の金属化合物の調製は、好ましくは、任意選択により塩基の存在下で、式(I)で示される酸性アゾ化合物を金属化合物と反応させて、式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物を生成させることに基づく。
【0020】
本発明により調製される金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物は、水和物の形態をとることも可能である。
【0021】
XおよびYを付した環上の置換基(1個もしくは2個の置換基)の上述した数は、本発明では、図示された置換基R〜Rおよび−OHを含まないと解釈されるものとする。したがって、XおよびYを付した環上の言及した置換基は、R〜Rにより占有されていない位置に配置される置換基である。したがって、置換基R〜Rに関しては、XおよびYを付した環に3個以上の置換基を配置することも可能である。
【0022】
本発明に係る方法の好ましい一実施形態では、式(I)で示される化合物中のXを付した環は、下記式:
【化4】

で示される環である。
(上記式中、
LおよびMは、互いに独立して、=O、=Sまたは=NRであり、
は、水素、−OR、−SR、−NR、−COOR、−CONR、−CN、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、
は、−OR、−SR、−NR、−COOR、−CONR、−CN、−SO
【化5】

、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、
または、置換基MとRもしくはMとRは、5員環または6員環を形成していてもよく、
、R、R、R、RおよびRは、先に定義したとおりである)
【0023】
本発明により調製される特に好ましい金属化合物は、遊離酸の形態で下記式(II)または式(III):
【化6】

で示される構造体またはその互変異性形に一致するアゾ化合物の金属化合物である。
(式中、
R’は、−OHまたは−NHであり、
R’、R”、R’およびR”は、それぞれ、水素であり、
M’およびM”は、互いに独立して、水素、−OH、−NH、−NHCN、アリールアミノまたはアシルアミノである)
【0024】
特に好ましい金属化合物は、遊離酸の形態で下記式(IV):
【化7】

(式中、
M’’’およびMIVは、互いに独立して、OHおよび/またはNHCNである)
で示される構造体またはその互変異性構造体に一致する、式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物である。
【0025】
特に好ましいものは、下記式:
【化8】

で示されるアゾ化合物またはその互変異性構造体の金属化合物である。
【0026】
以上の式では、置換基は、好ましくは以下の定義を有する。
【0027】
アルキルの定義に包含される置換基は、好ましくは、C〜Cアルキルであり、これは、たとえば、ハロゲン(たとえば、塩素、臭素、もしくはフッ素)、−OH、−CN、−NHまたはC〜Cアルコキシにより置換されていてもよい。それに包含されるC〜Cアルキルは、1個〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルキル、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシルであり、それらの異性体形がすべて包含される。
【0028】
シクロアルキルの定義に包含される置換基は、好ましくはC〜Cシクロアルキル、特にC〜Cシクロアルキルであり、これらは、たとえば、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン(たとえば、Cl、Br、F)、C〜Cアルコキシ、−OH、−CNおよび−NHにより置換されていてもよい。
【0029】
アリールの定義に包含される置換基は、好ましくは、フェニルまたはナフチルであり、これらは、たとえば、ハロゲン(たとえば、F、Cl、Br)、−OH、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、−NH、−NOおよび−CNにより置換されていてもよい。
【0030】
アラルキルの定義に包含される置換基は、好ましくは、フェニル−C〜C−アルキルまたはナフチル−C〜C−アルキルであり、これらは、たとえば、ハロゲン(たとえば、F、Cl、Br)、−OH、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、−NH、−NOおよび−CNにより芳香族基が置換されていてもよい。
【0031】
アシルの定義に包含される置換基は、好ましくは、(C〜Cアルキル)−カルボニル、フェニルカルボニル、C〜Cアルキルスルホニル、フェニルスルホニル、場合により、C〜Cアルキル置換、フェニル置換およびナフチル置換のカルバモイル、場合により、C〜Cアルキル置換、フェニル置換およびナフチル置換のスルファモイル、または場合により、C〜Cアルキル置換、フェニル置換もしくはナフチル置換のグアニルであり、提示したアルキル基は、たとえば、ハロゲン(たとえば、Cl、Br、F)、−OH、−CN、−NH、または、C〜Cアルコキシにより置換可能であり、かつ、指定のフェニル基およびナフチル基は、たとえば、ハロゲン(たとえば、F、Cl、Br)、−OH、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、−NH、−NOおよび−CNにより置換されていることができる。
【0032】
と一緒になったMもしくはRと一緒になったM、ならびに/または、R、R、Rおよび/もしくはRが、破線により先の式に示されるように、5員環もしくは6員環を形成する場合、該当する環系は、トリアゾール、イミダゾールもしくはベンゾイミダゾール、ピリミジンまたはキナゾリンの環系であることが好ましい。
【0033】
式(I)〜(V)で示されるアゾ化合物の金属化合物(金属化合物とは、すでに記載したように、塩型または錯体型の金属化合物を意味する)として好適な代表例は、好ましくは、式(I)〜(V)で示されるアゾ化合物のモノアニオン、ジアニオン、トリアニオンおよびテトラアニオンの塩および錯体である。好適な金属は、有利には、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sn、Pb、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Hf、Ta、W、La、Ce、PrおよびNdからなる群より選択される1種以上の金属から選択される。ニッケルが好ましい。
【0034】
特に好ましいのは、式(I)〜(V)と二価または三価の金属との塩および錯体、特にニッケル塩およびニッケル錯体である。本発明に係る方法の好ましい一実施形態では、式(I)で示されるアゾ化合物のNi塩またはNi錯体が調製されている。
【0035】
金属化合物は、好ましくは、下記構造:
【化9】

で示される1:1アゾバルビツール酸−ニッケル錯体またはその互変異性構造体である。
【0036】
本発明により調製される金属化合物は、任意選択により1種以上のゲスト化合物を含有していてもよい。ゲスト化合物は、好ましくは、有機化合物、すなわち、共有結合された炭素原子を少なくとも1個有する化合物である。本発明により調製される金属化合物とゲスト有機化合物との組成物は、包接化合物、インターカレーション化合物または固溶体のいずれであってもよい。
【0037】
好ましくは、それらは、下記構造:
【化10】

で示される1:1アゾバルビツール酸−ニッケル錯体またはその互変異性構造体とそれに含まれる少なくとも1種の他の有機化合物との包接化合物、インターカレーション化合物または固溶体である。
【0038】
特に好ましくは、それらは、式(VI)で示される上述した金属化合物とメラミンとの1:2のモル比のインターカレーション化合物である。
【0039】
一般的にいえば、本発明により調製される金属化合物は、1層の薄膜内の結合が本質的には水素結合および/または金属イオンによるものである層状結晶格子を形成する。該当する金属錯体は、好ましくは、実質的に平面状の薄膜で構成された結晶格子を形成する。
【0040】
式(I)で示されるアゾ化合物の金属錯体またはそのホスト−ゲスト化合物の本発明に係る調製は、種結晶の存在下で好適に行われる。種結晶は、好ましくは、本発明に係る方法により調製される式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物と同一の化学構造を有する。特に、調製される生成物が式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物とその中にゲストとして存在する化合物との組成物である場合、この種の包接組成物の種結晶もまた利用される。金属化合物またはホスト−ゲスト化合物の調製に種結晶を利用すると、一般に、より大きなBET比表面積が得られる。本発明にしたがって行われる多段熱処理は、一般に、BET比表面積を減少させるが、種結晶の存在下に金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物を調製することは、本発明において同様に有利なことである。一方で、種結晶の利用は、調製の再現性、特にバッチ法の場合、ここで好適に使用されるのが好ましいように再現性を向上させる。しかしながら、他方で、熱処理前の金属化合物またはホスト−ゲスト化合物の部分の比表面積ができるだけ高いレベルからスタートすることも理に適っている。驚くべきことに、使用される種結晶の物理的特性が必ずしも調製される金属化合物の物理的特性を決定するとは限らないことが判明した。したがって、たとえば、使用される種結晶が比較的小さいBET比表面積を有する場合であっても、BET比表面積の大きい金属化合物が得られる。その調製は、所与の反応バッチで調製される金属化合物の理論取得可能量を基準にして、好ましくは1ppm〜10,000ppm、特に10ppm〜5000ppm、非常に好ましくは50ppm〜3000ppm、特に100ppm〜2000ppmの種結晶の存在下で行われる。本発明に係る1つの特に好ましい方法では、種結晶は、反応器に導入されるか、または前駆体バッチから所望量の生成物を残すことによって反応器内に残される。特に連続して生産を行う場合には、所望量の生成物を残す方法を用いることが、経済的に有利となろう。
【0041】
したがって、熱処理段階で使用する出発物質に左右されるものの、本発明に係る方法により、式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物またはその少なくとも1種のゲスト化合物との組成物を、60〜180m/g、特に70〜160m/g、好ましくは80〜140m/g、特に90〜120m/gのBET比表面積で得ることが可能である。比表面積は、DIN66131:ブルナウアー(Brunauer)、エメット(Emmett)およびテラー(Teller)(B.E.T.)の方法を用いる気体吸着による固体の比表面積の測定に準拠して測定される。
【0042】
本発明の方法は、バッチ方式、すなわち、いわゆるバッチ法で行われることが好ましい。当業者の熟知するところであるが、「バッチ法」という用語は、不連続法を意味する。すなわち、本金属化合物の調製は、連続的に行われるのではなく、バッチ単位で、つまりバッチ方式で行われる。1反応バッチが完了した後、生成物が単離される。連続法の場合、これとは対照的に、出発物質は連続的に供給され、生成物は連続的に取り出される。
【0043】
本明細書の文面では、式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物(これは好ましくは少なくとも1種のゲスト化合物を含有するものである)はまた、本発明により調製される顔料とも称される。
【0044】
好適な金属化合物としては、塩または金属錯体などの金属化合物が、たとえばニッケル錯体などの他の金属錯体の結晶格子中に組み込まれたものが挙げられる。この場合、たとえば式(VI)中のニッケルなどの金属の一部分が他の金属イオンで置き換えられる可能性があるか、またはさらなる金属イオンが金属化合物(好ましくはニッケル錯体)と実質的に強い相互作用を行うようになる可能性がある。
【0045】
金属錯体の包接化合物、インターカレーション化合物および固溶体は、それ自体、文献から公知である。それらはまた、解説もなされており、それらの調製については、たとえば、欧州特許第0074515号明細書、欧州特許第0073463号明細書、欧州特許第0994163号明細書および欧州特許第0994162号明細書(その中の第5頁第40行〜第7頁第58行)に記載されている。したがって、それらの刊行物中の好適な化合物に関する記述の全内容が参照可能である。
【0046】
使用される特に好ましいゲスト化合物は、メラミンまたはメラミン誘導体、特に、下記式(VII)で示されるものである。
【0047】
【化11】

(式中、
は、水素、またはOH基により任意選択で置換されていてもよいC〜Cアルキルであり、非常に好ましくは、
は、水素である。)
【0048】
金属錯体の結晶格子中に組み込みうるゲスト物質の量は、一般的には、金属化合物の量を基準にして5重量%〜200重量%である。10重量%〜100重量%を組み込むことが好ましい。これは、適切な溶媒で洗浄することにより除去することのできないゲスト物質の量であり、元素分析から明らかにされる。当然ながら、指定量よりも多量または少量の物質を添加することも可能であり、任意選択で、過剰量をまったく洗浄除去しないようにすることも可能である。金属化合物の量を基準にして10重量%〜150重量%の量が好ましい。
【0049】
金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製は、たとえば、欧州特許第0074515号明細書、欧州特許第0073463号明細書、欧州特許第0994163号明細書および欧州特許第0994162号明細書に記載されているように行われる。アゾ化合物の合成に続いて、一般的にはインターカレートされる化合物の存在下で、金属塩により錯化が行われる。工業的に関心の対象となる二価および三価の金属の錯体のインターカレーション化合物の場合、特に、アゾバルビツール酸−ニッケル錯体の工業的および経済的に重要なインターカレーション化合物の場合、錯化およびインターカレーションさらには後続の単離は、有利には酸性pHの範囲内で行われる。
【0050】
金属塩の適合性は、好ましくは、上述した金属の水溶性塩、特に、好ましくはニッケルの塩化物、臭化物、酢酸塩、硝酸塩などにより得られる。使用される金属塩は、好ましくは、20℃において20g/l超、特に50g/l超の水に対する溶解度を有する。
【0051】
種々の指定した金属を含むこれらの塩の混合物を使用することも可能である。そのような塩混合物の使用は、特に中間色相の着色最終生成物を得る上で望ましい。
【0052】
好ましい一実施形態では、本発明の方法は、撹拌槽反応器などの反応器中で、バッチ法として、好ましくはポンプによる循環を適用して行われる。ここでは、「ポンプ循環」とは、調製中に内容物を反応器から取り出して再びそれに戻すことのできる手段が提供されることを意味する。そのようなポンプ循環の好ましい実施形態は、好ましくは反応器の外部に位置するパイプラインシステムを備えた反応器(特に、攪拌槽)の使用を伴う。パイプラインシステムは、少なくとも2つの異なる箇所で反応器または反応器内容物に結合される。パイプラインシステムは、反応器内容物を反応器から1箇所以上で取り出して、パイプラインシステムに通した後、再び1箇所以上の他の箇所で戻すことのできる手段を備える。この種の特定の手段は、ポンプである。本発明により使用されるポンプ循環システムは、好ましくは、反応器の外部に位置するパイプラインシステムに反応相手(たとえば、出発物質、出発物質の溶液、酸、塩基など)を導入できるようにする計量装置を備えることを特徴とする。
【0053】
本発明に係る特に好ましい一方法は、酸および塩基を反応器中に直接計量供給するのではなくポンプ循環システム中に計量供給することを含む。本発明に係る特に好ましい方法は、計量時間が理論的全ポンプ循環サイクル時間の0.2倍〜5倍、特に1倍〜2倍になるように、反応物、酸および/またはアルカリもしくは塩基を計量供給することを含む。理論的全ポンプ循環サイクルとは、反応器内容物の全量がポンプ循環システムを1回通り抜ける時間を意味する。
【0054】
ポンプ循環は、比較的速い流速を呈する領域を形成すると推定される。この流速は、一般的には、弱い攪拌作用の箇所(たとえば、一番上の攪拌ブレードよりも上の領域)における攪拌槽反応器中の流速よりも速い。ポンプ循環システムの領域に計量添加する場合、速い流速がそこに広くゆきわたっているので、特に、濃度の局所ピークを回避することが可能である。さらに、反応器内容物全体のより良好な混合が確実に行われる。本発明に係る方法では、驚くべきことに、ポンプ循環法を用いずに調製される生成物よりも大きい比表面積を有する生成物が製造される。さらに、ポンプ循環法を使用すると、生成物品質のばらつきがさらに低減される。2つ以上のポンプ循環システムを並列に使用することも可能である。
【0055】
本発明の方法において特に好適に使用される顔料は、式(I)で示されるアゾ化合物と金属塩(好ましくは20℃で20g/l超、特に50g/l超の水に対する溶解度を有するもの)との反応と、インターカレートされる化合物とのその後の反応とから直接得られるものである。
【0056】
非熱処理顔料(以下、反応物と称する)は、好ましくは、次のように、金属化合物との反応をpH≦2で行わせるという方法で得られる。その後のインターカレーションは、好ましくは1〜7のpHで行われる。インターカレーションがpH4で行われる場合、その後にpHを4.5超、好ましくは4.5〜7に上げることが好ましい。
【0057】
pHの調整には、有機または無機の酸および塩基を使用することが好ましい。
【0058】
好ましい酸は、HCl、HPO、HSO、HI、HBr、酢酸および/または蟻酸である。
【0059】
使用される好ましい塩基は、LiOH、KOH、NaOH、Ca(OH)、NH、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよび/またはジメチルエタノールアミンである。
【0060】
この反応物懸濁液は、その後、インターカレートされなかった部分、塩および他の不純物を分離するために、一方でろ過され、残留する反応物質は、好ましくは水で、特に熱水で洗浄される。
【0061】
こうして得られた反応物は単離され、任意選択により乾燥されてもよい。
【0062】
しかしながら、ワンポット法による合成により直接得られた金属化合物またはホスト−ゲスト化合物は、単離されることなく多段熱処理(好ましくはpH0〜4、温度80〜125℃の少なくとも2段階のpHで、好ましくはワンポット法により)に供されることが好ましい。(当業者が知っているように、温度が100℃を超えると、水性媒体では、周りの圧力は大気圧より高くなる。)
【0063】
本発明に係る方法によって熱処理され、かつ本発明に係る顔料を含む懸濁液は、好ましくは、熱処理後にpHを再び4.5〜7に調整される。その後、懸濁液は、好ましくは濾過される。こうして得られたプレスケーキは、任意選択により水で洗浄した後、乾燥させることが可能である。
【0064】
これに関連して好適な乾燥法としては、パドル乾燥などの慣用的方法が挙げられる。この種の乾燥法を適用後、顔料を従来法により粉砕すると、粉末形態の顔料が得られる。
【0065】
プレスケーキは、好ましくは、水性スラリーの形態でスプレー乾燥される。特に好ましくは、このスプレー乾燥は、固形分を増大させるために、アンモニアを含むスラリーをスプレーすることにより行われる。スプレーに供されるスラリーは、好ましくは10重量%〜40重量%、特に15重量%〜30重量%の固形分を有する。
【0066】
さらに、カルボン酸およびスルホン酸アミドなどの粘度降下剤を、スラリーを基準にして10重量%までの量、スラリーに加えることも可能である。
【0067】
本発明は、さらに、本発明により調製される少なくとも1種の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物と、少なくとも1種の分散剤とを混合する顔料配合物の調製方法を提供する。これらの顔料配合物は、好ましくは、水系への組込みに役立つ。
【0068】
好適な分散剤に関しては、冒頭で述べた先行技術、特に欧州特許出願公開第0994164A1号明細書の第9頁第56行〜第11頁第23行(その開示内容は本明細書の一部分をなすものとする)を参照しうる。特に好ましくは、顔料配合物は、90重量%超、特に95重量%超、好ましくは97重量%超の顔料(本発明により調製される金属化合物+任意選択によるゲスト種としての化合物)と分散剤とを含有する。
【0069】
本発明に係る多段熱処理法によって調製される顔料は、驚くべきことに、有利な特性を有している。この顔料は、有利な色強度、輝度、均一性、分散性および/または製造における経済性を示す。
【0070】
さらに、本発明により調製される金属化合物もしくはそのホスト−ゲスト化合物または顔料配合物は、すべての顔料最終用途に非常に好適である。
【0071】
それらは、たとえば、印刷インク、水性塗料またはバインダーカバー材を製造するためのあらゆる種類のワニスを着色するのに好適であり、ポリビニルクロリド、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの合成、半合成または天然の高分子物質を内部着色するのに、好適である。それらはまた、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリカーボネート繊維、ポリアクリロニトリル繊維またはポリアミド繊維などの天然、再生または人造繊維の原着に、さらにはテキスタイルおよびペーパーの印刷に、使用することも可能である。ノニオン性、アニオン性またはカチオン性の界面活性剤の存在下で粉砕または混練を行うことにより、これらの顔料から、ペーパーの着色、テキスタイルの顔料捺染、ラミネート印刷またはビスコースの原着に使用しうるペイント(たとえばエマルジョンペイント)の優れた安定水性顔料着色物を製造することが可能である。本発明に係る方法により調製される顔料は、インクジェット用途に、また、比較的大きいBET比表面積に基づき、液晶ディスプレイ用のカラーフィルターに、非常に好適である。
【0072】
[実施例]
〔調製例1〕
81%の乾物含有率のジアゾバルビツール酸水湿潤ペースト190g(乾燥重量154gに対応する)を、実験室用撹拌機により、3000gの水中で撹拌する。その後、混合物を80℃まで間接加熱し、この温度で134gのバルビツール酸を導入する。引き続き約30分間撹拌した後、濃度30%の水酸化カリウム溶液を用いてpHを5.0に調整する。その後、80℃、pH5.0で2時間撹拌する。次いで、バッチを5400gにまで水で希釈する。続いて90℃まで間接加熱を行い、この温度で252gのメラミンを導入する。その後、濃度22.5%の塩化ニッケル溶液575gを滴下して加える。できるかぎり完全な反応を達成するために、続いて90分間の撹拌を行う。次いで、濃度30%の水酸化カリウム溶液により、pHを5.0に調整する。その後、非熱処理懸濁液を、吸引フィルターで分離し、電解質を洗浄除去し、真空乾燥器中80℃で乾燥させ、さらに標準的な実験室用ミルで約2分間粉砕する。
【0073】
〔比較例1(一段熱処理)〕
調製例1により調製したアゾバルビツール酸−ニッケル錯体のメラミンインターカレーション化合物の非熱処理懸濁液(顔料含有量9.4%であり、これは乾燥基準では591gに対応する)約6275gを蒸留水により、たとえば顔料含有量7.5%にまで希釈する。その後、希釈された懸濁液を、塩酸を用いて直接pHを1.5に調整し、98℃の温度を12時間維持した。その後、懸濁液を95℃に冷却し、水酸化カリウム溶液を用いてpHを5.0に調整することによって分離する。
【0074】
続いて、生成物を吸引フィルターで分離し、電解質を洗浄除去し、真空乾燥器中80℃で乾燥させ、さらに標準的な実験室用ミルで約2分間粉砕する。
【0075】
〔本発明に係る実施例1およびそれに続く実施例〕
調製例1により調製したアゾバルビツール酸−ニッケル錯体のメラミンインターカレーション化合物の非熱処理懸濁液(顔料含有量9.4%であり、これは乾燥基準では591gに対応する)約6275gを蒸留水により、たとえば顔料含有量7.5%にまで希釈する。その後、塩酸を用いてpHを3に調整し、98℃の温度を30分間維持する。その後、pHを1.5に調整し、その温度を11.5時間維持した。その後、懸濁液を95℃に冷却し、水酸化カリウム溶液を用いてpHを5.0に調整することによって分離する。
【0076】
続いて、生成物を吸引フィルターで分離し、電解質を洗浄除去し、真空乾燥器中80℃で乾燥させ、さらに標準的な実験室用ミルで約2分間粉砕する。
【0077】
比較例1および本発明に係る実施例、並びに、表1に示した熱処理条件により、表1に示す特性が得られた。
【0078】
4gの各試験顔料を、ノールドショー(Nordsjo)(アクゾ・ノーベル(Akzo Nobel))製のレディ ノバ 70(Ready Nova 70)などの市販のホワイトペースト396gおよび直径2mmのガラスビーズ400mlにより、ジュースマイヤー(Suessmeier)ビーズミル中で、冷却しながら30分間粉砕した。これらのペーストを、スパイラルコーティングナイフ(25μm)を使用してナイフコーティング紙に塗布し、ガードナー カラー ガイド 450 色彩計(Gardner Color Guide 450 colorimeter)を使用して色彩測定を行った。
【0079】
色彩測定の原理は、たとえば、1986年にファルプメッスンク(Farbmessung)から発行されたバイエル・ファーベン・レビュー(Bayer Faben Revue)特別版3/2Dに記載されている。
【0080】
ブランク試験(比較例1)は、色強度100%と定義する。
【0081】
色強度は可能な限り高いことが好ましく、特に、色強度が非常に高い一方、比較的小さいBETを有することが好ましい。
【0082】
色強度本発明/色強度ブランク試験の比は、好ましくは>1、特には>1.05、より特に好ましくは>1.1である。
【0083】
色強度ブランク試験とは、ここでは、金属化合物および/またはそのホスト−ゲスト化合物で、2回以上の熱処理工程を経ていないものをいう。
【0084】
【表1】

【0085】
〔比較例2(1段階熱処理)〕
a)ジャケット加熱/冷却システム、攪拌機、邪魔板(フロー・ディスラプター)、及びポンプ循環システムをもつ20m反応器に、20rpmの撹拌速度で、80℃の6000リットルの水を入れた。乾物含有量81%のジアゾバルビツール酸水湿潤ペースト380kg(308kgの乾燥物に相当する)を導入した。
温度を80℃に保ち、この温度で268kgのバルビツール酸を導入した。ポンプ循環を伴う操作を行い、ポンプ循環は15m/hに設定した。1時間のポンプ循環の後、30%濃度の水酸化カリウム水溶液を用い、30分かけてpHを5.0に調節した、この水酸化カリウム溶液はポンプ循環中へ計量導入した。これに続けて、ポンプ循環を伴う、80℃およびpH5.0での撹拌を2時間行う。次にこのバッチを水で15000リットルに希釈する。次に、これを90℃に加熱し、この温度で500kgのメラミンを導入する。ポンプ循環は30m/hに設定する。その後、22.5%濃度の塩化ニッケル溶液1150kgを、30分間かけてポンプ循環路を介して計量導入する。可能なかぎり完全な反応を達成するために、ポンプ循環を行いながら90分間の撹拌を続けて行う。次に、30%濃度の水酸化カリウム溶液を用い、pHを30分かけて5.0に調節する。この水酸化カリウム溶液は、ポンプ循環中へ計量導入する。
【0086】
b)本発明によらない1段階熱処理法においては、30%濃度の塩酸125kgを、固定量として直接この懸濁液に(一度に)加え、98℃の温度を12時間保つ。その後、30%濃度の水酸化カリウム溶液を用いて、30分間かけてpHを5.0に調節する。この水酸化カリウム溶液はポンプ循環路中に計量導入し、温度は80℃に調節する。
【0087】
こびりついた堆積物のない反応器は、実質的に完全に空にすることができる。均一な顔料スラリーはフィルタープレスで単離し、電解質を洗浄除去し、80℃で乾燥する。
【0088】
〔本発明実施例6〕
第一の熱処理段階で、比較例2のa)に従って得られた懸濁液において、30%濃度の塩酸約50kgをポンプ循環路中に計量することによって、90℃においてpH3.0を30分間にわたって設定する。第二の熱処理段階においては、30%濃度の塩酸75kgを固定量として直接添加し、98℃の温度を11.5時間保つ。次に、30%濃度の水酸化カリウム溶液を用いて30分間にわたってpH5.0に調節する。この水酸化カリウム溶液はポンプ循環路中に計量し、温度は80℃に調節する。
【0089】
こびりついた堆積物のない反応器は、実質的に完全に空にすることができる。均一な顔料スラリーはフィルタープレスで単離し、電解質を洗浄除去し、80℃で乾燥する。
【0090】
〔本発明実施例7〕
第一の熱処理段階で、比較例2のa)に従って得られた懸濁液において、30%濃度の塩酸約50kgをポンプ循環路中に計量することによって、90℃においてpH3.0を30分間にわたって設定し、これに続けて30分間の撹拌を行う。第二の熱処理段階においては、30%濃度の塩酸75kgを固定量として直接添加し、98℃の温度を11時間保つ。次に、30%濃度の水酸化カリウム溶液を用いて30分間にわたってpHを5.0に調節する。この水酸化カリウム溶液はポンプ循環路中に計量し、温度は80℃に調節する。
【0091】
こびりついた堆積物のない反応器は、実質的に完全に空にすることができる。均一な顔料スラリーはフィルタープレスで単離し、電解質を洗浄除去し、80℃で乾燥する。
【0092】
〔本発明実施例8〕
第一の熱処理段階で、比較例2のa)に従って得られた懸濁液において、30%濃度の塩酸約50kgをポンプ循環路中に計量することによって、90℃においてpH3.0を30分間にわたって設定し、これに続けて30分間の撹拌を行う。第二の熱処理段階においては、硫酸水素カリウム80kgを直接加え、98℃の温度に11時間保つ。次に、30%濃度の水酸化カリウム溶液を用いて30分間にわたってpH5.0に調節する。この水酸化カリウム溶液はポンプ循環路中に計量し、温度は80℃に調節する。
【0093】
こびりついた堆積物のない反応器は、実質的に完全に空にすることができる。均一な顔料スラリーはフィルタープレスで単離し、電解質を洗浄除去し、80℃で乾燥する。
【0094】
比較例2、ならびに本発明実施例6、7、および8の試料はそれぞれ、標準的実験室用ミルで約2分間粉砕し、以下の試験に供した。
【0095】
4gの各試験顔料を、ノールドショー(Nordsjo)(アクゾ・ノーベル(Akzo Nobel))製のレディ ノバ 70(Ready Nova 70)などの市販のホワイトペースト396gおよび直径2mmのガラスビーズ400mlにより、ジュースマイヤー(Suessmeier)ビーズミル中で、冷却しながら30分間粉砕した。これらのペーストを、スパイラルコーティングナイフ(25μm)を使用してナイフコーティング紙に塗布し、ガードナー カラー ガイド 450 色彩計(Gardner Color Guide 450 colorimeter)を使用して色彩測定を行った。
【0096】
色彩測定の原理は、たとえば、1986年にファルプメッスンク(Farbmessung)から発行されたバイエル・ファーベン・レビュー(Bayer Faben Revue)特別版3/2Dに記載されている。
【0097】
ブランク試験(比較例2)は、色強度100%と定義する。
比較例2 色強度:100
本発明実施例6 色強度:105
本発明実施例7 色強度:108
本発明実施例8 色強度:106

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意選択でゲスト化合物を含んでいてもよい、下記式(I):
【化1】

〔式中、
XおよびYを付した環は、それぞれ、=O、=S、=NR、−NR、−OR、−SR、−COOR、−CN、−CONR、−SO
【化2】

、アルキル、シクロアルキル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択される1個もしくは2個の置換基を有していてもよく、
環Xおよび環Yのいずれについても環内二重結合と環外二重結合との合計数は3であり、
(ここで、
は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、
は、水素、シアノ、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはアシルであって、
は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルである)
、R、RおよびRは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、このほかに、式(I)において破線で示されるように、5員環もしくは6員環(この環には、さらなる環が縮合されていてもよい)を形成していてもよく、
は、−OH、−NR、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり(ここで、RおよびRは、先に定義したとおりである)、
CH基を有するR〜Rの置換基において、CH基中の水素原子は置換されていてもよく、
m、n、oおよびpは、1であってもよいし、他の選択肢として、式(I)において点線により示されるように、対応する置換基R〜Rが位置する環窒素原子から二重結合が始まる場合には、0であってもよい〕
で表されるアゾ化合物またはその互変異性構造体の金属化合物、を調製する方法であって、
前記金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物を少なくとも2段階のpHで熱処理することを特徴とする方法。
【請求項2】
式(I)で示される化合物中のXを付した環が、下記式:
【化3】

(式中、
LおよびMは、互いに独立して、=O、=Sまたは=NRであり、
は、水素、−OR、−SR、−NR、−COOR、−CONR、−CN、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、
は、−OR、−SR、−NR、−COOR、−CONR、−CN、−SO
【化4】

、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、
または、置換基MとRもしくはMとRは、5員環または6員環を形成していてもよく、
、R、R、R、RおよびRは、請求項1に定義したとおりである)
で示される環であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式(I)で示されるアゾ化合物が、その遊離酸の形態で、下記式(II)もしくは(III):
【化5】

(式中、
R’は、−OHまたは−NHであり、
R’、R”、R’およびR”は、それぞれ、水素であり、
M’およびM”は、互いに独立して、水素、−OH、−NH、−NHCN、アリールアミノまたはアシルアミノである)
またはその互変異性形に一致することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(I)で示されるアゾ化合物が、その遊離酸の形態で、下記式(V):
【化6】

またはその互変異性形に一致することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物が、式(I)で示されるアゾ化合物のモノアニオン、ジアニオン、トリアニオンおよびテトラアニオンと、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sn、Pb、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Hf、Ta、W、La、Ce、PrおよびNdからなる群より選択される1種以上の金属との塩または錯体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(I)で示されるアゾ化合物のNi塩またはNi錯体が、金属化合物として用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属化合物が、ゲスト化合物として環式または非環式の有機化合物、特にメラミン、を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属化合物の調製方法。
【請求項8】
前記熱処理段階が、固形分含有量が4重量%〜15重量%、非常に好ましくは6重量%〜10重量%の分散液で行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製方法。
【請求項9】
前記熱処理段階が、90℃〜120℃、特に95℃〜110℃の温度で行われることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製方法。
【請求項10】
熱処理段階の少なくとも1つの段階のpHが2〜4、特に2.5〜3.5であり、第2の熱処理段階のpHが0〜3、より好ましくは1〜2.5であり、かつ、好ましくは、これらの2段階の熱処理のpHレベルの差が、0.5〜3単位、好ましくは1〜2単位であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製方法。
【請求項11】
少なくとも1段階、好ましくは少なくとも2段階の熱処理が、0.25h〜24h、特にそれぞれ1h〜12h、非常に好ましくはそれぞれ2h〜8h継続することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製方法。
【請求項12】
顔料のBET比表面積が60〜180m/gに調整されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により調製される金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物が、水性スラリーの形態でスプレー乾燥されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法により調製される金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の使用を含むことを特徴とする液晶ディスプレイ用カラーフィルターの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法により調製される少なくとも1種の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物と、少なくとも1種の分散剤とを混合することを特徴とする顔料配合物の調製方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法により調製される金属化合物もしくはそのホスト−ゲスト化合物、または、請求項15に従って調製された顔料配合物の、顔料としての使用。
【請求項17】
印刷インク、水性塗料またはバインダー着色剤を調製するための、合成、半合成または天然の高分子物質(特に、ポリビニルクロリド、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレンまたはポリプロピレン)を内部着色するための、さらには天然、再生または人造繊維(たとえば、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリカーボネート繊維、ポリアクリロニトリル繊維またはポリアミド繊維)を原着するための、さらにはテキスタイルおよびペーパーに印刷するための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法により調製される金属化合物もしくはそのホスト−ゲスト化合物、または、請求項15に従って調製された顔料配合物の使用。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法により調製される金属化合物もしくはそのホスト−ゲスト化合物、または、請求項15に従って調製された顔料配合物の、ラミネート用顔料としての、液晶ディスプレイのカラーフィルター用顔料としての、または、インクジェット印刷用顔料としての使用。

【公開番号】特開2007−23288(P2007−23288A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196045(P2006−196045)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】