説明

多相電動機駆動装置

【課題】キャリア同期方式のメリットを生かし、直流電源の電圧と電流の振動を抑制する。
【解決手段】4以上の整数M個の巻線且つ4以上の整数N相の巻線を有し、各巻線相互間は電気的に絶縁され、かつ磁気的に結合された多相電動機1と、各巻線にそれぞれ接続され、直流電力を交流電力に変換する4以上の整数N台の単相パルス幅変調方式のインバータ回路11と、各11の内、第1と第2のインバータの間に対してキャリアの位相を位相角だけシフト、第2と第3のインバータの間に対してキャリアの位相を位相角だけシフトさせるという方法を繰り返すことにより、各11の線間電圧のオンするタイミングが分散するように各制御回路のキャリアの位相をシフトさせる位相補正回路とを備え、巻線数Mが相数N、インバータの台数Nの整数倍となるように構成し、各11の出力に1の巻線数M/Nだけ並列接続した多相電動機駆動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相PWM(パルス幅変調方式)のインバータのキャリア比較PWM制御により多相電動機を駆動する多相電動機駆動装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多相電動機の各相の巻線に対応して設けられた単相PWMインバータによる多相電動機駆動装置が開示され、これは電動機が発生するトルクに脈動が生じ、効率が低下するという問題を改善するための発明である。具体的には、電流制御回路と、誘導電圧演算手段とゲート制御回路を備え、誘導電圧演算手段で各相の負荷電流検出値に基づいて自己インダクタンス分、また自分(明細書原文の記載通りであるが、これは誤記と思われる)及び相互インダクタンス分による誘導電圧が演算される。電流制御回路で、各相の電流負荷指令と対応する相の電流検出値との偏差が零となる第1の電圧指令を出力する。ゲート制御回路で、前記第1の電圧指令と前記誘導電圧との偏差である第2の電圧指令及び波高値一定の搬送波に基づいて単相PWMインバータの各々のゲートを制御する。
【0003】
この結果、特許文献1の発明は、インダクタンスによる電流歪の影響分を除去することが可能となり、多相電動機に発生するトルクの脈動を軽減することができ、効率の低下を可及的に防止することができる。
【0004】
特許文献2は、複数台のPWM電力変換器(電力変換ユニット)の出力を、多相巻線を持つ1台のモータの各巻線別に供給してモータを速度制御し、PWM同期制御の同期ズレを防止する電力変換システムであって、以下に述べる機能を有するマスターユニット及びスレーブユニットを有している。マスターユニットは、電流制御部とPWM制御部及びインバータとを有して該インバータの出力をモータの1つの巻線に供給し、速度指令とモータの速度検出値とから電流制御部に電流制御指令を出力する速度制御部を実装し、またPWMキャリアの同期基準信号を発生する手段を備えている。スレーブユニットは、前記速度制御部から電流制御指令を受信する電流制御部と、PWM制御部及びインバータとを有して該インバータの出力をモータの他の巻線に供給するものであり、またスレーブユニットは、前記同期基準信号を受信して自ユニットのPWMキャリア同期基準信号との位相比較で前記マスターユニットとのPWMキャリア位相を同期させる手段と、該PWMキャリア信号を前記同期基準信号の伝送遅れ時間だけ位相を進める位相補正手段とを備えたものである。
【0005】
この結果、例えば電力変換ユニットAからBに同期信号を伝送するには、伝送路の伝送遅れ時間や、信号絶縁用のフォトカプラなどの遅延時間が存在する。この遅延時間の分だけ位相補正手段が進めるように作用するので、実際のPWMキャリアを同期させることができる。
【0006】
特許文献3は、複数台を並列したインバータ制御装置について、1台の基準とするインバータのPWMキャリア信号を位相基準として他のインバータのPWMキャリア信号の基準とするインバータとの差分を取ることにより、位相差を無くし、複数台の並列されたインバータ制御装置の全てのPWMキャリア信号を同期させることができ、横流を抑制することができる、というものである。
【0007】
図9〜図13は現在実施している多相電動機駆動装置の問題点を説明するための図であり、図9は図1のごとき構成の多相電動機駆動装置における制御装置部分のみを示すブロック図である。速度制御回路4は、加算器21と、速度制御回路本体22とを有している。設定した速度指令値と、速度検出器6で検出した速度検出値とを用いて加算器21にて速度偏差を演算し、速度制御回路本体22に入力する。速度制御回路本体22では、この速度偏差が零になるように制御して電流指令波高値を各単相PWMインバータ10iへ出力する。
【0008】
電流制御回路12は、乗算器23と、電流位相演算回路24と、加算器21と、電流制御回路本体25と、PWM制御回路26と、キャリア発生回路27と、キャリア同期PLL回路28と、キャリア周波数設定器29とを有している。
【0009】
電流位相演算回路24では多相電動機1の回転角度に応じた電流の位相を演算する。多相電動機1の相間には巻線構成に基づいて一定の位相差があり、各単相PWMインバータ10iの夫々で異なる位相を演算している。電流位相演算回路24で演算した上記位相の正弦と、速度制御回路4からの電流指令波高値とを用いて乗算器23にて電流指令値を演算する。
【0010】
この電流指令値は多相電動機1の巻線に流すべき交流負荷電流である。この電流指令値と、電流検出器14で検出した電流検出値とを用いて加算器21にて電流偏差を演算し、電流制御回路本体25に入力する。電流制御回路本体25では、この電流偏差が零になるように制御して電圧指令値ER1をPWM制御回路26に入力する。
【0011】
キャリア周波数設定器29にてキャリア周波数を設定し、キャリア同期信号源5から与えられたキャリア同期信号に基づき、各単相PWMインバータ10iのキャリアの位相が同期するようにキャリア同期PLL回路28にてキャリア周波数を制御し、キャリア発生回路27から各単相PWMインバータ10i間で同期したキャリアC1を発生させ、PWM制御回路26に入力する。
【0012】
各単相PWMインバータ10iのキャリアC1は図11に示すように同期していて、位相差もない。PWM制御回路26では、電圧指令値ER1とキャリアC1とを用いて次に述べるようなキャリア比較PWM制御(以下、PWM制御と呼ぶ)をおこない、インバータ回路11にゲートパルスを出力する。
【0013】
PWM制御回路26は、電圧指令値ER1と、キャリアC1との比較演算をおこない、例えば、ER1≧C1のとき、図1のインバータ回路11を構成している半導体主回路素子S1、S2、S3、S4のうちのS2及びS3をオン、S1及びS4をオフさせる。逆に、ER1<C1のときS1とS4をオン、S2とS3をオフさせる。これによりインバータ回路11は交流電圧を出力し、所望の交流負荷電流を流すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平7−327383号公報
【特許文献2】特開2007−244009号公報
【特許文献3】特開2003−134834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このような多相電動機駆動装置において、各単相PWMインバータ10i(iは1、2、3…N)はPWM制御をしているため、多相電動機1の電流には交流負荷電流である低周波の基本波電流の他に、PWM制御により流れるキャリア周波数程度あるいはそれ以上の高調波電流が流れる。
【0016】
一般的なPWM制御による電流制御は、基本波電流を制御するものであり、高調波電流は制御できず、電動機の巻線に印加された矩形波電圧と巻線のインピーダンスの大きさに応じて高調波電流は流れる。
【0017】
ここで多相電動機1と各単相PWMインバータ10iの配置を図12に示す。各相の巻線に対応して単相PWMインバータが配置されている。多相電動機1の各相の巻線は電気的には接続されていないが、異なる相の巻線による磁路がオーバラップするため磁気的に結合されている。全ての異なる相との磁気的な結合はあるが、特に隣り合う相の磁気的な結合が強いため、磁気的な結合は隣り合う相のみに限定して簡略化すると、図13に示す等価回路となる。今、第i相の単相PWMインバータ10iの端子電圧をVi、逆起電力をEi、電流をIi、抵抗をRi、自己インダクタンスをLi、相互インダクタンスをMiとすると、第i相における電圧方程式は次の(1)式となる。
【数1】

【0018】
ここで、(1)式の左辺第3項のMi dI(i+1)/dtは第i+1相の電流が変化したときの第i相の誘起電圧を表し、左辺第4項のM(i−1) dI(i−1)/dtは第i−1相の電流が変化したときの第i相の誘起電圧を表している。磁気的な結合は隣り合う相に限定しているため第i+1相と第i−1相による誘起電圧のみとし、他の相については省略する。
【0019】
(1)式によると第i相の電流は第i相の端子電圧と逆起電力の他に、第i+1相と第i−1相による誘起電圧に基づいて流れる。基本波電流は各単相PWMインバータ10iでの電流制御により必要な交流負荷電流分だけ流れるが、PWM制御による高調波電流に関しては制御できない。第i相の高調波電流は、第i相の端子電圧の高調波成分と、第i+1相と第i−1相の誘起電圧の高調波成分に基づいて流れる。
【0020】
多相電動機1の相間には一定の位相差が存在するため同一の電圧指令値にはならないが、隣り合う相との位相差が十分に小さければ、電圧指令値は隣り合う相とほぼ同じになる。
【0021】
また、各単相PWMインバータ10iのキャリアは同期しているため、各相の電圧指令値が同一ならば、ゲートパルスのオンオフのタイミングは各相で同じになる。そのため、第i相の端子電圧Viの高調波成分は、第i+1相の誘起電圧Mi dI(i+1)/dtの高調波成分と第i−1相の誘起電圧M(i−1) dI(i−1)/dtの高調波成分により打ち消されるため、第i相に流れる高調波電流は小さくなる。
【0022】
多相電動機1の各相の線間電圧波形についての説明図を図10(a)、(b)に示す。PWM制御を行っているため各相の線間電圧は方形波パルスが繰り返した波形となり、相間には一定の位相差がある。各相のキャリアが同期しているため、各相の方形波の中心位置は一致し、自相と隣り合う相の電圧が共にオンしている領域では、高調波成分の電圧を打ち消すため高調波電流は小さくなる。
【0023】
このように、多相電動機1を各相に対応して設けた単相PWMインバータ10iで駆動する場合、各単相PWMインバータ10iのキャリアを同期すれば高調波電流を抑制でき、多相電動機での銅損を減らすことができる。
【0024】
しかしながら、各単相PWMインバータ10iのキャリアを同期すると、直流電源の電圧と電流にキャリア周波数程度あるいはその整数倍の振動が発生するという問題がある。
【0025】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、キャリア同期方式のメリットを生かしつつ、直流電源の電圧と電流の振動を抑制することのできる多相電動機駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するため、 4以上の整数M個の巻線且つ4以上の整数N相の巻線を有し、各巻線相互間は電気的に絶縁され、かつ磁気的に結合された多相電動機と、
前記各巻線にそれぞれ接続され、直流電力を交流電力に変換する4以上の整数N台の単相パルス幅変調方式のインバータと、
前記各インバータに直流電力を供給する直流電源と、
前記各インバータ毎の主回路を構成する半導体主回路素子のゲートに、基準信号とキャリアの比較制御によって得られるゲート信号を与えて前記各インバータの主回路を制御する制御回路と、
前記各制御回路のキャリアを生成する基準となるキャリア同期信号を与えるキャリア同期信号源と、
前記インバータの内、第1のインバータと第2のインバータの間に対してキャリアの位相を位相角Aだけシフト、第2のインバータと第3のインバータの間に対してキャリアの位相を位相角Bだけシフトさせるという方法を繰り返すことにより、前記各インバータの線間電圧のオンするタイミングが分散するように前記各制御回路のキャリアの位相をシフトさせる位相補正手段と、
を備え、前記巻線数Mが前記相数N、インバータの台数Nの整数倍となるように構成し、前記各インバータの出力に前記多相電動機の巻線数M/Nだけ並列接続したことを特徴とする多相電動機駆動装置である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、キャリア同期方式のメリットを生かしつつ、直流電源の電圧と電流の振動を抑制することのできる多相電動機駆動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に関わる多相電動機駆動装置の第1の実施形態の基本構成を示す構成図。
【図2】本発明に関わる多相電動機駆動装置の第1の実施形態を示す制御回路のブロック図。
【図3】本発明に関わる線間電圧波形についての説明図。
【図4】図2のキャリアについて説明するための図。
【図5】多相電動機と単相PWMインバータの配置を説明するための図。
【図6】多相電動機と単相PWMインバータの配置を説明するための図。
【図7】本発明に関わる多相電動機駆動装置の第2の実施形態の基本構成を示す構成図。
【図8】本発明に関わる多相電動機駆動装置の第2の実施形態を示す制御回路のブロック図。
【図9】従来の多相電動機駆動装置の例を説明するための制御回路のブロック図。
【図10】図9に関わる線間電圧波形についての説明図。
【図11】図9のキャリアについて説明するための図。
【図12】多相電動機と単相PWMインバータの配置を示す図。
【図13】図12の等価回路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明による多相電動機駆動装置の実施形態について図面を参照して説明する。図1は第1の実施形態の全体の概略構成を示すブロック図であり、図2は図1の速度制御回路及び電流制御回路の詳細な構成を示すブロック図である。なお、図1は、従来の説明にも使用しているが、このブロック図は共通である。
【0030】
概略構成は、少なくとも4個又は少なくとも4相の巻線を有し、各巻線相互間は電気的に絶縁され、かつ磁気的に結合された多相電動機1と、前述した図12の各巻線にそれぞれ接続され、直流電力を交流電力に変換する少なくとも4台の単相パルス幅変調方式のインバータ回路11と、各インバータ回路11に直流電力を供給する直流電源2と、各インバータ回路11毎の主回路を構成する半導体主回路素子例えばIGBTのゲートに、基準信号とキャリアの比較制御によって得られるゲート信号を与えて各インバータ回路11の主回路を制御する電流制御回路12と、各電流制御回路12のキャリアを生成する基準となるキャリア同期信号を与えるキャリア同期信号源5と、各インバータ回路11の線間電圧のオンするタイミングが分散するように各制御回路のキャリアの位相をシフトさせる位相補正手段例えば位相補正回路34を備えたものである。
【0031】
多相電動機1はN相の多相電動機であって、各相i(i = 1, 2, ・・・, N)に対応して設けられた単相PWMインバータ10i (i = 1, 2, ・・・, N)によって駆動される。多相電動機駆動装置3は単相PWMインバータ10iと、速度制御回路4と、キャリア同期信号源5と、多相電動機1の回転速度を検出する速度検出器6とを有している。
【0032】
速度制御回路4は設定した速度指令値の速度となるように制御して電流指令波高値を単相PWMインバータ10iへ出力する。キャリア同期信号源5は各単相PWMインバータ10iの電流制御回路12に同一のキャリア同期信号を与えるものである。
【0033】
各単相PWMインバータ10iはIGBT等の半導体主回路素子S1、S2、S3、S4と、ダイオードD1、D2、D3、D4とを各々逆並列に接続してフルブリッジ回路を構成したインバータ回路11と、平滑コンデンサ13と、多相電動機1の巻線に流れる電流を検出する電流検出器14と、インバータ回路11にゲートパルスを出力する電流制御回路12とを有している。この単相PWMインバータ10iは平滑コンデンサ13にて直流電源2の直流電圧を平滑化し、電流指令波高値の電流が流れるように電流制御回路12はゲートパルスをインバータ回路11に出力し、インバータ回路11は交流電圧を出力する。
【0034】
図2は、図9に示す従来の電流制御回路12のブロック図に新たにキャリア信号位相補正器34を加えたものである。キャリア信号位相補正器34は各単相PWMインバータ10iについて、単相PWMインバータ101と単相PWMインバータ102に対してキャリアの位相を位相角Aだけシフト、単相PWMインバータ102と単相PWMインバータ103に対してキャリアの位相を位相角Bだけシフト、という方法で、キャリアの位相を個別に設定する。
【0035】
このように全単相PWMインバータ相互間でキャリアの位相をシフトすることで、キャリア同期方式のメリットを生かしつつ、各単相PWMインバータの線間電圧がオンするタイミングが分散するため、直流電源2の電圧と電流の振動を抑制することができる。
【0036】
図4に示すようにN台の単相PWMインバータの隣り合う相でキャリアの位相を360/N度ずつ等間隔にずらした場合、多相電動機1の各相の線間電圧波形は、図3(a)、(b)に示すように、各相の方形波の中心位置は360/N度ずつずれる。多相電動機の相数は3よりも十分に大きいため、1つの方形波の中心位置は隣り合う相とのずれ360/N度は十分に小さい。そのため、自相と隣り合う相の電圧が共にオンしている領域は、全相のキャリアが同期している場合と比べても殆んど減少しない。そのため、高調波成分の電圧を打ち消すことができ、高調波電流による多相電動機の銅損を減らす効果は保たれる。
【0037】
三相同期電動機に上記の方法でキャリアの位相をシフトしても、相数3であり1つの方形波の中心位置が120°ずれるため、キャリアを同期することによって高調波電流による銅損を減らす効果を十分に得られない。本制御装置は多相電動機駆動装置に対して効果を得られる。
【0038】
また、N台の単相PWMインバータの隣り合う相でキャリアの位相を180/N度ずつ等間隔にずらした場合にも、直流電源2の電圧と電流の振動を抑制することができる。
【0039】
さらに、N台の単相PWMインバータ間でキャリアの位相を不規則にずらし、かつその位相関係が変化しないよう固定した場合にも、直流電源2の電圧と電流の振動を抑制することができる。
【0040】
また、ここまで単相PWMインバータの台数をN、多相電動機の巻線数をN、多相電動機の相数をNの場合について述べたが、図5に示すように単相PWMインバータの台数をM、多相電動機の巻線数をM、多相電動機の相数をNとして、MがNの整数倍となるように構成した場合にも、直流電源2の電圧と電流の振動を抑制することができる。図5の意味するところは具体的には、各巻線に単相PWMインバータ1台を接続し、M/N群で構成する。このように構成すると、多相電動機が低出力の場合には、減群した状態で運転できる。
【0041】
さらに、図6に示すように単相PWMインバータの台数をN、多相電動機の巻線数をM、多相電動機の相数をNとして、MがNの整数倍となるように構成し、各々の単相PWMインバータ1台の出力に多相電動機の巻線数M/Nだけ並列接続した場合である。具体的には、各相の巻線M/Nを並列接続し、各相に単相PWMインバータを1台接続して構成したものである。このように構成することで、直流電源2の電圧と電流の振動を抑制することができる。
【0042】
図7は、本発明の第2の実施形態を説明するための多相電動機駆動装置の概略構成を示すブロック図であり、図8は図7の速度制御回路及び電流制御回路の詳細な構成を示すブロック図である。図1の第1の実施形態と異なる点は、キャリア同期信号源(1)5と、キャリア同期信号源(2)5aを設け、両者を切換え可能に切換スイッチ7を設けたものである。この場合、通常時はキャリア同期信号1を使用し、断線等の故障によりキャリア同期信号1を使用することができない場合にはキャリア同期信号2に切り換えて使用する。
【符号の説明】
【0043】
1…多相電動機、2…直流電源、3…多相電動機駆動装置、4…速度制御回路、5、5a…キャリア同期信号源、6…速度検出器、7…切換スイッチ、10i (i = 1, 2, 3, ・・・, N)…単相PWMインバータ、11…インバータ回路、12…電流制御回路、13…平滑コンデンサ、14…電流検出器、21…加算器、22…速度制御回路本体、23…加算器、24…電流位相演算回路、25…電流制御回路本体、26…ゲート制御回路、27…キャリア発生回路、28…キャリア同期PLL回路、29…キャリア周波数設定器、34…キャリア信号位相補正回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4以上の整数M個の巻線且つ4以上の整数N相の巻線を有し、各巻線相互間は電気的に絶縁され、かつ磁気的に結合された多相電動機と、
前記各巻線にそれぞれ接続され、直流電力を交流電力に変換する4以上の整数N台の単相パルス幅変調方式のインバータと、
前記各インバータに直流電力を供給する直流電源と、
前記各インバータ毎の主回路を構成する半導体主回路素子のゲートに、基準信号とキャリアの比較制御によって得られるゲート信号を与えて前記各インバータの主回路を制御する制御回路と、
前記各制御回路のキャリアを生成する基準となるキャリア同期信号を与えるキャリア同期信号源と、
前記インバータの内、第1のインバータと第2のインバータの間に対してキャリアの位相を位相角Aだけシフト、第2のインバータと第3のインバータの間に対してキャリアの位相を位相角Bだけシフトさせるという方法を繰り返すことにより、前記各インバータの線間電圧のオンするタイミングが分散するように前記各制御回路のキャリアの位相をシフトさせる位相補正手段と、
を備え、前記巻線数Mが前記相数N、インバータの台数Nの整数倍となるように構成し、前記各インバータの出力に前記多相電動機の巻線数M/Nだけ並列接続したことを特徴とする多相電動機駆動装置。
【請求項2】
前記位相補正手段は、前記インバータ間でキャリアの位相を180/N度ずつ等間隔にずらしたことを特徴とする請求項1記載の多相電動機駆動装置。
【請求項3】
前記位相補正手段は、前記インバータ間でキャリアの位相を不規則にずらし、かつその位相関係が変化しないよう固定することを特徴とする請求項1記載の多相電動機駆動装置。
【請求項4】
前記キャリア同期信号源は、複数で構成したことを特徴とする請求項1記載の多相電動機駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−39033(P2013−39033A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−217522(P2012−217522)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【分割の表示】特願2008−116029(P2008−116029)の分割
【原出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】