説明

多粒子改質放出組成物

【課題】連続して付与される2回またはそれ以上のIR投薬形態物の投与によって生じた血漿プロファイルに実質的に類似する血漿プロファイルを生じる有効成分を含む多粒子改質放出組成物を提供する。
【解決手段】パルス的な様式または2モード的な様式で有効成分を使用時に送達する多粒子改質放出組成物は、即時放出性構成要素と改質された放出性構成要素とを含む。即時放出性構成要素は有効成分含有粒子の第1の集団を含み、改質された放出性構成要素は、制御放出コーティング物でコーティングされた有効成分含有粒子の第2の集団を含む。この場合、即時放出性構成要素と改質された放出性構成要素とを組み合わせることにより、使用時において、有効成分がパルス的な様式または2モード的な様式で送達される。該多粒子改質放出組成物により達成される血漿プロフィルは、有効成分に対する患者の耐性を低下させる際に好都合である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多粒子改質放出組成物に関する。特に、本発明は、拍動性手段で有効成分を操作的に送出する多粒子改質放出組成物に関する。本発明は、さらに、このような多粒子制御放出組成物を含有する固形の経口投薬形態物に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤化合物の投与に関連した血漿プロファイルは、低濃度の溝で点在される高い有効成分濃度の拍動が観察される「拍動性プロファイル」として記述され得る。2つのピークを含む粒子プロファイルは、「二項の」として記述され得る。同様に、投与におけるこのようなプロファイルを生じる組成物または投薬形態物は、有効成分の「拍動性放出」を示すようであり得る。
【0003】
即時放出(IR)投薬形態物が、経時的間隔で投与される通常の頻繁な投与計画は、一般に、拍動性の血漿プロファイルを生じる。この場合には、血漿中薬剤濃度でのピークは、連続投与時点の間で発生する溝を有する各IR用量の投与(低い薬剤濃度の領域)後に観察される。このような投与計画(およびそれらの結果物である拍動性血漿プロファイル)は、それらに関連した特定の薬理学および治療的効果を示す。例えば、ピークの間の有効成分の血漿中濃度の低下によって供される洗い流し期間は、患者が種々の型の薬剤に耐性であるのを低減または防止する寄与因子であると考えられてきた。
【0004】
多くの制御放出薬剤処方は、薬剤化合物のゼロ次放出を生じる上で手助けになる。実際に、しばしば、従来の頻繁な投与計画に関連した薬剤の血漿中濃度でのピークから溝までの変動を減少させるこれらの処方の特定の対象である。しかし、拍動性系で固有の治療上および薬理学上の効果の幾つかは、ゼロ次放出薬剤送出系によって達成される一定な、またはほぼ一定な血漿中濃度の結果として失われるか、または減じられ得る。したがって、頻繁な投与についての必要性を減じつつ、頻繁なIR投与計画の放出を実質的に模倣する改質放出組成物または処方が望ましい。
【0005】
患者における耐性を生じ得る薬剤の典型的な実施例は、メチルフェニデートである。メチルフェニデート、またはα−フェニル−2−ピペリジン酢酸メチルエステルは、中枢神経および呼吸器系に影響を及ぼす刺激物質であり、そして注意欠陥障害の治療に一次的に使用される。胃腸管(GIT)から吸収後、薬剤効果は、従来のIR錠剤の経口投与の後に3−6時間、または広範な放出処方の経口投与の後に約8時間まで持続する。総投与量は、一般的に、日当たり5−30mgの範囲にあり、例外的事例では、60mg/日に上昇する。従来の投与計画下で、メチルフェニデートは、毎日2回付与され、特に、朝食前に1回用量が付与され、そして昼食前に第2回用量が投与される。最後の日用量は、寝る数時間前に付与されるのが好ましい。メチルフェニデート治療に関連した有害な影響としては、不眠症および患者の耐性の発生が挙げられる。
【0006】
WO98/14168(Alza Corp.)は、持続および一定の上昇速度でメチルフェニデートを投与する投薬形態物および方法を教示する。開示された投薬形態物は、可変量の放出速度を制御する材料で被覆され、そこにある増大した量の有効成分と共にハイドロゲルマトリックスを含む複数のビーズを包含する。有効成分用量および数および粘度付与被覆層の適切な組合せは、有効成分の血漿中濃度が、付与された期間かけて継続して増大する上昇放出プロファイルを付与するように選択できる。本発明と対照的に、WO98/14168の目的は、即時放出投薬形態物を用いて従来の治療に関連した均一な血中濃度(ピークおよび溝によって特徴づけられた)を特に避ける投薬形態物を提供することである。
【0007】
WO97/03672(Chiroscience Ltd.)では、メチルフェニデートが、ラセミ混合物の形態で、または単独異性体(RRd−トレオエナンチオマーのような)の形態で投与されたときに治療効果を示すことが開示されている。さらに、国際公開WO97/03763号(Chiroscience Ltd.)では、dtmpを含む持続性放出処方が開示されている。この開示は、それを通してdtmpが、持続性放出を保持し、そして少なくとも8時間の期間をかけて、少なくとも50%Cmaxの(有効成分の)血清中濃度を達成するために通過する被覆物を含む組成物の使用を教示する。したがって、この処方は、拍動性手段で有効成分を送出しない。
【0008】
Shahら、J.Cont.Rel.(1989年)9:169−175は、治療剤と共に固形投薬形態物に圧縮された特定の型のヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテルが、二項の放出プロファイルを付与することを開示する。しかし、1つの供給業者から得たポリマーが、二項のプロファイルを生じる一方で、異なる起源から得られるほとんど同一の製品特性を示す同じポリマーが、非二項性放出プロファイルを付与することに注目される。
【0009】
Giunchediら、Int.J.Pharm(1991年)77:177−181は、ケトプロフェンの拍動性放出についての親水性マトリックス多単位処方の使用を開示する。Giunchediらは、ケトプロフェンが、投与後(血漿半減期1−3時間)血液から迅速に排除され、そして薬剤の連続拍動が、ある種の治療について一定な放出よりいっそう有益であり得ることを教示する。開示された多単位処方は、ゼラチン製カプセルに入れられた4回の同一の親水性マトリックス錠剤を包含する。インビボでの研究は、血漿プロファイルに2つのピークを示すが、なんらよく定義された洗い流し期間はなく、そしてピークと溝の血漿中濃度との間の変動は小さい。
【0010】
Conteら、Drug Dev.Ind.Pharm.(1989年)15:2583−2596および欧州特許第0 274 734号(Pharmidea Srl)は、連続拍動でのイブプロフェンの送出についての三層錠剤の使用を示唆する。三層錠剤は、有効成分を含む第1の層、追加量の有効成分を含む第1の層と第3の層の間に介在される半透過性材料の防護層(第2の層)から構成される。防護層および第3の層は、不透明なケースに配置される。第1の層は、溶解流動体と接触して溶解する一方で、第3の層は、防御層の溶解または破裂の後にのみ利用可能である。このような錠剤で、有効成分の第1の部分は、直ぐに放出されるべきである。このアプローチ法は、有効成分の2つの部分の送出の相対的速度を制御するために、第1および第3の層の間の半透明性の層の供給をも必要とする。さらに、半透明層の破裂で、望まれ得ない有効成分の第2の部分の無制御の放棄に至る。
【0011】
米国特許番号第5,158,777号(E.R.Squibb & Sons Inc.)では、投与に続いて即時放出のために利用可能な腸内または遅延放出被覆pH安定性コア内にカプトプリルを含む処方が開示されている。pH安定性コアを形成するために、エデト酸二ナトリウムのようなキレート剤、またはポリソルベート80のような界面活性剤は、単独で、または緩衝剤と組合せてのいずれかで使用される。組成物は、経口投与に続いて即時放出に利用可能な多量のカプトプリル、および結腸での放出に利用可能な追加量のpH安定化カプトプリルを有する。
【0012】
米国特許番号第4,728,512号、米国特許番号第4,794,001号および米国特許番号第4,904,476号(American Home Products Corp.)は、3回の別個の放出を供する製品に関する。製品は、有効な医薬物質を含む3つの群の球状体を含有する:球状体の第1の群は、未被覆であり、そして消化で迅速に分解されて、当初量の医薬物質を放出する;第2の球状体は、pH感受性被覆物で被覆されて、第2の用量を供し;そして第3の球状体は、pH独立性被覆で被覆されて、第3の用量を供する。製品は、予め全身的に、集約的に代謝されるか、または相対的に短い排出半減期を示す医薬物質の反復放出を供するように設計される。
【0013】
米国特許番号第5,837,284号(Mehtaら)は、即時放出および遅延放出性粒子を有するメチルフェニデート投薬形態物を開示する。遅延放出は、特定のフィラーと組合せたアンモニオメタクリレートpH独立性ポリマーの使用によって供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO98/14168
【特許文献2】WO97/03672
【特許文献3】欧州特許第0 274 734号
【特許文献4】米国特許番号第5,158,777号
【特許文献5】米国特許番号第4,728,512号
【特許文献6】米国特許番号第5,837,284号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Shahら、J.Cont.Rel.(1989年)9:169−175
【非特許文献2】Giunchediら、Int.J.Pharm(1991年)77:177−181
【非特許文献3】Conteら、Drug Dev.Ind.Pharm.(1989年)15:2583−2596
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、操作中に、連続して付与される2回またはそれ以上のIR投薬形態物の投与によって生じた血漿プロファイルに実質的に類似する血漿プロファイルを生じる有効成分を含む多粒子改質放出組成物を提供することが本発明の目的である。
【0017】
操作中に、拍動性手段で有効成分を送出する多粒子改質放出組成物を提供することが本発明の別の目的である。
【0018】
本発明の別の目的は、組成物の有効成分に対する患者耐性の発生を実質的に減じるか、または排除する多粒子改質放出組成物を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、有効成分の第1の部分が、即時または遅延時間の後のいずれかに放出されて、薬剤放出の拍動を供する二項または多項手段で有効成分を放出し、そして有効成分の1つまたはそれ以上の追加の部分が、個々の遅滞期の後に各々放出されて、追加の拍動の薬剤放出を供する能力のある多粒子改質放出組成物を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、本発明の多粒子改質放出組成物を包含する固形経口投薬形態物を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的としては、操作中に、実質的に付与された2つの即時放出投薬形態物の投与によって生じた血漿プロファイルに実質的に類似する血漿プロファイルを生じる毎日1回の投薬形態物のメチルフェニデートの供給、およびこのような投薬形態物の投与における注意欠陥障害の治療の方法が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的は、有効成分含有粒子の第1の集団を含む第1の成分、および有効成分含有粒子の第2の集団の第2の成分を有する多粒子改質放出組成物によって認識される。第1および第2の成分に含まれる有効成分は、同じであるか、または異なる可能性があり、そして第2の成分の有効成分含有粒子は、改質放出コーティング剤で被覆される。代替的に、またはさらに、粒子を含む有効成分の第2の集団は、さらに、改質放出マトリックス材料を包含する。経口送出に続いて、操作中にある組成物は、拍動性手段で有効成分または有効成分類を送出する。
【0023】
本発明による多粒子改質放出組成物の好ましい実施形態では、第1の成分は、即時放出成分である。
【0024】
有効成分含有粒子の第2の集団に使用される改質放出コーティング剤は、有効成分含有粒子の第1の集団からの有効成分の放出と、有効成分含有粒子の第2の集団からの有効成分の放出との間に遅滞期を引起こす。同様に、有効成分含有粒子の第2の集団における改質放出マトリックス材料の存在は、有効成分含有粒子の第1の集団からの有効成分の放出と、有効成分含有粒子の第2の集団からの有効成分の放出との間に遅滞期を引起こす。遅滞期の期間は、改質放出コーティング剤の組成および/または量を変えること、および/または利用される改質放出マトリックス材料の組成および/または量を変えることによって変化し得る。したがって、遅滞期の期間は、望ましい血漿プロファイルを擬態するように設計され得る。
【0025】
多粒子改質放出組成物によって生じる血漿プロファイルは、連続して付与される2回またはそれ以上のIR投薬形態物の投与によって生じる血漿プロファイルに実質的に類似であるので、本発明の多粒子制御放出組成物は、患者耐性が問題の多い、有効成分を投与するのに特に有用である。したがって、この多粒子改質放出組成物は、組成物中の有効成分に対する患者耐性の発生を減じるか、または最小限にするのに有利である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、有効成分は、メチルフェニデートであり、そして操作中の組成物は、二項または拍動性手段で有効成分を送出する。操作中にあるこのような組成物は、例えば、典型的なメチルフェニデート治療計画でのような2回のIR用量の連続投与によって得られるものを実質的に擬態する血漿プロファイルを生じる。
【0027】
本発明は、本発明による組成物を含む固形の経口投薬形態物も提供する。
【0028】
本発明は、さらに、治療的に有効な量の本発明による組成物または固形投薬形態物を投与して、有効成分の拍動性または二項の投与を供することを特徴とする、その有効成分を利用する治療の必要な動物、特にヒトを治療する方法を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の利点としては、拍動性の血漿プロファイルから誘導される利益をなお維持しつつ、従来の多数のIR投与計画によって必要とされる投与頻度を減少させることが挙げられる。この投与頻度が減少されることは、患者にとって中断的であり、かつ厄介であり得る授業時間の中間での投与の必要性を排除するという点で、子供の場合に特に有益である。頻度が下げられて投与され得る処方を示すことは、患者が服従するという点でも有益である。本発明を利用することによって可能になった投与頻度における減少は、薬剤の投与において医療従事者によって費やされる時間の量を減少させることによって、医療費用を減少させることに貢献する。メチルフェニデートおよび他の制御物質の場合に、毎日1回処方(多数のIR用量の代わりに)を使用することは、学校または他の施設の敷地内で制御物質を保存する必要性を減じるか、または排除する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、ヒト志願者への続く3回の処方の経口投与に続くメチルフェニデートプロファイルを示す:A−総計10mgメチルフェニデート(表1(ii)による)を含有する粒子を包含する即時放出成分、および総計10mgメチルフェニデート(表2(viii)による;30重量%増加まで被覆されたIR粒子)を含有する粒子を包含する改質放出成分を有する20mgメチルフェニデート処方;B−総計10mgメチルフェニデート(表1(ii)による)を含有する粒子を包含する即時放出成分、および総計10mgメチルフェニデート(表2(vii)による;30重量%増加まで被覆されたIR粒子)を含有する粒子を包含する改質放出成分を有する20mgメチルフェニデート処方;および対照−時間0および4時間で投与された10mgRitalin(登録商標)の塩酸塩(IR)錠剤の2回用量(投与された総計20mgメチルフェニデート)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここに使用される場合、語句「粒子」は、それらのサイズ、形状または形態と関係なく孤立粒子、ペレット、ビーズ、または顆粒の存在によって特徴づけられるものの状態に該当する。ここに使用される場合、語句「多粒子」は、それらのサイズ、形状または形態と関係なく、複数の孤立または凝集粒子、ペレット、ビーズ、顆粒またはそれらの混合物を意図する。
【0032】
ここに使用される場合、本発明の組成物またはコーディング剤またはコーティング材料に関連して、語句「改質放出」は、即時放出でなく、そして制御放出、持続放出および遅延放出を包含すると解される放出を意味する。
【0033】
ここに使用される場合、語句「時間遅延」は、組成物の投与と、特定成分からの有効成分の放出との間の時間の持続に該当する。
【0034】
ここに使用される場合、語句「遅滞期」は、1つの成分からの有効成分の送出と、別の成分からの有効成分の連続送出との間の時間に該当する。
【0035】
本発明は、本発明による多粒子改質放出組成物における処方に特に適した有効成分の特定の実施例としてメチルフェニデートに関して詳細に記述される。
【0036】
本発明の多粒子改質放出組成物は、2つ以上の有効成分含有成分を有し得る。
この場合に、第2および連続成分からの有効成分の放出は、第1の成分および各連続成分から得られる有効成分の放出の間に遅滞期があるように改質される。操作において、このような組成物から生じるプロファイルにおける拍動の数は、組成物中の有効成分含有成分の数に依る。3つの有効成分含有成分を含む組成物は、プロファイルで3回の拍動を生じる。
【0037】
頻度を減少した投与計画との拍動性血漿プロファイルの利点を組合わせるのに有用である任意の有効成分が、本発明の実施に使用され得る。本発明の実施に特に有用なのは、その薬理学上および/または治療上の効果が、患者耐性の発生に感受性のある有効成分のもののような、複数の血漿濃度のピークの間の洗い流し期間から利益を得る有効成分が挙げられる。実施例の有効成分としては、それに限定されないが、ペプチドまたはタンパク質、ホルモン、鎮静薬、抗偏頭痛剤、抗凝固剤、麻酔薬アンタゴニスト、キレート剤、抗狭心症剤、化学療法剤、鎮静剤、抗新生物、プロスタグランジンおよび抗利尿剤、大脳刺激剤のような中枢神経系で作用する薬剤化合物、例えばメチルフェニデート;疼痛管理有効成分;アヘン剤のようなアルカロイド、例えばモルヒネ;硝酸塩のような心臓血管薬剤;およびリュウマチ症状を治療するための剤が挙げられる。さらに、本発明は、それに限定されないが、ペプチド、タンパク質または、インスリン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子制御タンパク質、心房のナトリウム排泄増加薬タンパク質、コロニー刺激因子、ベータセロン、エリトロポイエチン(EPO)のようなホルモン、α、βまたはγインターフェロンのようなインターフェロン、ソマトロピン、ソマトトロピン、ソマストスタチン、インスリン様成長因子(ソマトメジン)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、組織プラスミノーゲン活性化剤(TPA)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、オキシトシン、エストラジオール、成長ホルモン、酢酸ロイプロリド、ファクターVIII、インターロイキン−2およびその類似体のようなインターロイキン;フェンタニル、スフェンタニル、ブトルファノール、ブプレノルフィン、レボルファノール、モルヒネ、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、オキシモルホン、メタドン、リドカイン、ブピバカイン、ジクロフェナック、ナプロキセン、およびそれらの類似体のような鎮静薬;スマトリプタン、エルゴットアルカロイド、およびその類似体のような抗偏頭痛剤;ヘパリン、ヒルジン、およびそれらの類似体のような抗凝固剤;スコポラミン、オンダンセトロン、ドンペリドン、メトクロプラミド、およびそれらの類似体のような抗催吐剤;ジルチアゼン、クロニジン、ジフェジフィン、ベラパミル、イソソルビド−5−モノニトレート、有機硝酸化物、心臓障害の治療に使用される剤、およびそれらの類似体のような心臓血管剤、抗高血圧剤および血管拡張剤;ベンゾジアゼピン、フェノチオジン、およびその類似体のような鎮静剤;デフェロキサミン、およびそれらの類似体のようなキレート剤;デスモルプレシン、バソプレシン、およびそれらの類似体のような抗利尿剤;ニトログリセリン、およびそれらの類似体のような抗狭心症剤;フルオロウラシル、ブレオマイシン、およびそれらの類似体のような抗新生物;プロスタグランジンおよびそれらの類似体;およびビンクリスチンおよびそれらの類似体のような化学療法剤を含めた多数の薬剤を送出するのに使用し得ると解釈される。
【0038】
各成分における有効成分は、同じであるか、または異なっていてよい。例えば、第1の成分は、第1の有効成分を含み、そして第2の成分は、第2の有効成分を包含する組成物が、組合せ療法に望ましい可能性がある。実際に、2つまたはそれ以上の有効成分は、有効成分が互いに適合するときに同じ成分に組込まれ得る。組成物の1つの成分に存在する薬剤化合物は、例えば、薬剤化合物の生物利用性または治療的効果を改質するために、組成物の別の成分中でエンハンサー化合物または感作物質化合物に付随され得る。
【0039】
ここに使用される場合、語句「エンハンサー」は、ヒトのような動物でのGITを越えた総輸送を促進することによって、有効成分の吸収および/または生物利用性を増強する能力のある化合物に該当する。エンハンサーとしては、但し限定されないが、中程度の鎖の脂肪酸;塩、エステル、エーテルおよび、グリセリドおよびトリグリセリドを含むそれらの誘導体;非イオン性界面活性剤、例えばエチレンオキシドを、脂肪酸、脂肪酸アルコール、アルキルフェノールまたはソルビタンまたはグリセロール脂肪酸エステルと反応させることによって製造され得るもの;シトクロムP450阻害剤、P−糖タンパク質阻害剤等、及びこれらの剤の2つまたはそれ以上の混合物が挙げられる。
【0040】
各成分に含まれる有効成分の比率は、同じであるか、または所望の投与計画によって異なり得る。有効成分は、個々に、または第2の成分中の有効成分(有効成分類)と組合せて、治療応答を発揮するのに十分な任意の量で、第1の成分に存在し得る。適切である場合に、有効成分(または有効成分類)は、実質的に光学的に純粋なエナンチオマーのものの形態またはエナンチオマーの混合物、さもなければラセミ体のいずれかで存在し得る。有効成分は、0.1−500mgの量で、好ましくは1−100mgの量で組成物中に存在するのが好ましい。有効成分がメチルフェニデートである場合、0.5から60mgの量で第1の成分中に存在することが好ましい;さらに好ましくは、有効成分は、2.5から30mgの量で第1の成分中に存在する。有効成分は、第1の成分で記述されたものと同様の範囲内の量で連続成分に存在する。
【0041】
成分の各々から有効成分の放出についての時間放出特徴は、存在し得る賦形剤またはコーティング剤のいずれかを改質することを含めて、各成分の組成を改質することによって変化し得る。特に、活性剤の放出は、そのようなコーティング剤が存在する場合には、粒子上で改質された放出コーティング剤の組成および/または量を変化させることによって制御され得る。1つ以上の改質放出成分が存在する場合、これらの成分の各々についての改質放出コーティング剤は、同じであっても、異なっていてもよい。同様に、改質された放出が、改質放出マトリックス材料の封入によって促進される場合、有効成分の放出は、利用される改質放出マトリックス材料の選択および量によって制御され得る。改質放出コーティング剤は、各成分に、各特定の成分について所望の遅延時間を得るのに十分である任意の量で存在し得る。改質放出コーティング剤は、各成分に、各特定の成分の間の所望の時間的ずれを得るのに十分である任意の量で存在し得る。
【0042】
各成分からの有効成分の放出についての時間的ずれまたは遅延時間は、存在し得る任意の賦形剤およびコーティング剤を改質することを含めて、各成分の組成を改質することによって変化され得る。例えば、第1の成分は、活性成分が、投与により直ぐに実質的に放出される即時放出成分である。代替的に、第1の成分は、例えば、有効成分が、時間遅延の直後に実質的に放出される、時間遅延された即時放出構成成分であり得る。第2の構成成分は、例えば、ちょうど所望されたか、または選択的に、有効成分が、拡張期間かけて制御形態で放出される、時間遅延持続放出または拡張放出構成成分のような時間遅延された即時放出構成成分であり得る。
【0043】
当業者に予測されるとおり、血漿濃度曲線の正確な特性は、ちょうど記述されるこれらの因子の全ての組合せによって影響される。特に、各構成成分中の有効成分の送出(したがって、1組の作用も)の間の時間的ずれは、各構成成分の組成およびコーティング剤(存在する場合)を変化させることによって制御され得る。したがって、各構成成分の組成の変動(有効成分(類)の量および特性を含めて)によって、そして時間的ずれの変動によって、膨大な放出および血漿プロファイルが得られ得る。各構成成分からの有効成分の放出の間の時間的ずれの期間、および各構成成分からの放出(すなわち、即時放出、持続放出など)の特性によって、血漿プロファイルにおける拍動は、非常に分離され、そして明らかに定義されたピーク(例えば、時間的ずれが長いとき)または拍動は、程度(例えば、時間的ずれが短いとき)まで重ね合わされ得る。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明による多粒子改質放出組成物は、即時放出構成成分および少なくとも1つの改質放出成分、粒子を含む有効成分の第1の集団を包含する即時放出構成成分、および粒子を含む有効成分の第2および連続集団を包含する改質放出構成成分を有する。第2および連続改質放出構成成分は、制御放出コーティング剤を包含し得る。さらに、または代替的に、第2および連続改質放出構成成分は、改質放出マトリックス材料を包含し得る。操作では、例えば、単回改質放出構成成分を有するこのような多粒子改質放出組成物の投与は、組成物中の即時放出構成成分が、血漿プロファイル中の最初のピークに生じ、そして改質放出構成成分が、血漿プロファイルでの第2のピークに生じる特徴的な拍動性血漿濃度の有効成分を生じる。1つ以上の改質放出構成成分を包含する本発明の実施形態は、血漿プロファイルにおける別のピークを生じる。
【0045】
単回投与単位の投与から生じたこのような血漿プロファイルは、2つ(またはそれ以上)の投与単位の投与の必要性なしに、有効成分の2つ(またはそれ以上)の拍動を送出することが望まれる場合に有益である。さらに、ある種の障害の場合には、このような二項の血漿プロファイルを有することは特に有用である。例えば、典型的なメチルフェニデート治療計画は、4時間の隔たりを付与した即時放出投与処方の2回用量を投与することから構成される。この型の計画は、治療的に有効で、そして広く使用されることが分かった。このような投与計画によって生じた血漿プロファイルは、図1で「対照」曲線によって例示される。先に明記されたとおり、患者耐性の発生は、メチルフェニデート治療にしばしば関連した有害な影響である。2つのピークの血漿濃度の間の血漿プロファイルにおける溝は、有効成分の洗い流しの期間を提供することによって、患者耐性の発生を減じる上で有益である。有効成分のゼロ次または偽ゼロ次送出を供する薬剤送出系は、この洗い流し過程を促進しない。
【0046】
所望の手段での有効成分の放出を改質する任意のコーティング剤材料が、使用され得る。特に、本発明の実施で使用するために適したコーティング剤材料としては、それに限定されないが、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリマレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレテートのようなポリマーコーティング剤材料、Eudragit(登録商標)RSおよびRLの下に販売されるもののようなアンモニオメタクリレート共重合体、Eudragit(登録商標)SおよびLの下に販売されるもののようなポリアクリル酸およびポリアクリレートアクリレートおよびメタクリレート共重合体、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、セラック;カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、ナトリウムカルメロース、カルシウムカルメロース、ナトリウムカルボキシメチルスターチ、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、スターチ、および架橋の程度が、水の吸収およびポリマーマトリックスの拡大を促進するように低いセルロース基本架橋ポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、架橋スターチ、微細結晶性セルロース、キチン、アミノアセチル−メタクリレート共重合体(Eudragit(登録商標)RS−PM、Rohm & Haas)、プルラン、コラーゲン、カゼイン、寒天、アラビアゴム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、(膨潤性親和性ポリマー)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)(m.wt.〜5k−5,000k)、ポリビニルピロリドン(m.wt.〜10k−360k)、陰イオン性および陽イオン性ヒドロゲル、低い酢酸残基を有するポリビニルアルコール、寒天およびカルボキシメチルセルロースの膨潤性混合物、無水マレイン酸と、スチレン、エチレン、プロピレンまたはイソブチレンとの共重合体、ペクチン(m.wt.〜30k−300k)のようなヒドロゲルおよびゲル形成材料、寒天、アカシア、カラヤ、トラガカント、アルギンおよびグアルのような多糖、ポリアクリルアミド、Polyox(登録商標)ポリエチレンオキシド(m.wt.〜100k−5,000k)、AquaKeep(登録商標)アクリレートポリマー、ポリグルカンのジエステル、架橋ポリビニルアルコールおよびポリN−ビニル−2−ピロリドン、ナトリウムグルコレートスターチ(例えば、Explotab(登録商標);Edward Mandell C.Ltd.);多糖、メチルセルロース、ナトリウムおよびカルシウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、ポリエチレンオキシド(例えば、Polyox(登録商標)、Union Carbide)、メチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースブチラート、セルロースプロピオネート、ゼラチン、コラーゲン、スターチ、マルトデキソトリン、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、グリセロール脂肪酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、メタクリル酸およびメタクリル酸の共重合体(Eudragit(登録商標)、Rohm & Haas)、他のアクリル酸誘導体、ソルビタンエステル、天然ゴム、レクチン、ペクチン、アルギネート、アンモニアアルギネート、アルギン酸ナトリウム、カルシウム、カリウム、プロピレングリコールアルギネート、寒天、およびアラビアゴムのようなゴム、イナゴマメ、トラガカント、カラゲーン、グアル、キサンタン、スクレログルカンおよびそれらの混合物およびブレンドのような親和性ポリマーが挙げられる。当業者によって予測されとおり、可塑剤、滑剤、溶媒および同等物のような賦形剤を、コーティング剤に添加し得る。適切な可塑剤としては、例えば、アセチル化モノグリセリド;ブチルフタリルブチルグリコレート;ジブチルタートレート;ジエチルフタレート;ジメチルフタレート;エチルフタリルエチルグリコレート;グリセリン;プロピレングリコール;トリアセチン;シトレート;トリプロピオイン;ジブチルフタレート;アセチルモノグリセリド;ポリエチレングリコール;ヒマシ油;トリエチルシトレート;ポリハイドリックアルコール、グリセロール、アセテートエステル、グリセロールトリアセテート、アセチルトリエチルシトレート、ジベンジルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジオクチルアゼレート、エポキシ化タレート、トリイソオクチルトリメリテート、ジエチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−i−オクチルフタレート、ジ−i−デシルフタレート、ジ−n−ウンデシルフタレート、ジ−n−トリデシルフタレート、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケートが挙げられる。
【0047】
改質放出構成成分が、改質放出マトリックス材料を包含するとき、任意の適切な改質放出マトリックス材料または改質放出マトリックス材料の適切な組合せは、使用され得る。このような材料は、当業者に知られている。ここに使用される場合、語句「改質放出マトリックス材料」は、親水性ポリマー、インビトロで、またはインビボでそこに分散される有効成分の放出を改質する能力のある疎水性ポリマーおよびその混合物が挙げられる。本発明を実施するのに適した改質放出マトリックス材料としては、それに限定されないが、微細結晶性セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキルセルロース、ポリエチレンオキシド、メチルセルロースおよびエチルセルロースのようなアルキルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、セルロースアセテートブチラート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリアルカリメチルアセテート、ポチビニルアセテートおよびその混合物が挙げられる。
【0048】
本発明による多粒子改質放出組成物は、拍動性手段で有効成分の放出を促進する任意の適切な投薬形態物に組み込まれ得る。典型的に、投与量形態は、即時放出および改質放出構成成分を作る粒子を含む有効成分の異なる集団のブレンドであり、そのブレンドは、硬質または軟質ゼラチンカプセルのような適切なカプセルに充填される。代替的に、粒子を含む有効成分の異なる個々の集団は、適切な比率で、続いてカプセルに充填され得るミニ錠剤に圧縮(都合により追加の賦形剤と共に)され得る。別の適切な投薬形態物は、多層錠剤のものである。この例では、多粒子改質放出組成物の第1の構成成分は、1層に圧縮され得て、第2の構成成分は、多層錠剤の第2の層として続けて添加される。本発明の組成物を作製する粒子を含む有効成分の集団は、さらに、発泡性投薬形態物または速融解投薬形態物のような迅速に溶解する投薬形態物で含まれ得る。
【0049】
本発明による組成物は、異なるインビトロでの溶解プロファイルを示す粒子を含む有効成分の少なくとも1つの集団を包含する。
【0050】
好ましくは、操作中に、本発明の組成物およびその組成物を含有する固形経口投薬形態物は、第1の構成成分に含まれる有効成分の実質的に全てが、第2の構成成分から有効成分の放出の前に放出されるように有効成分を放出する。第1の構成成分は、IR構成成分を包含するとき、例えば、第2の構成成分から有効成分を放出するこが、IR構成成分中の実質的に全ての有効成分が、放出されるまで、遅延される。第2の構成成分からの有効成分の放出は、改質放出コーティング剤および/または改質放出マトリックス材料を使用することによって上に詳述されるとおり遅延され得る。
【0051】
さらに好ましくは、患者の系からの有効成分の第1の用量の洗い流しを促進する投与計画を供することによって患者耐性を最小限にすることが望ましい場合、第2の構成成分からの有効成分の放出は、第1の構成成分に含まれる有効成分の実質的に全てが、放出されるまで遅滞され、そして第1の構成成分から放出される有効成分の少なくとも1部が、患者の系から排除されるまでさらに遅滞される。好ましい実施形態では、操作中に組成物の第2の構成成分からの有効成分の放出は、実質的に、完全ではなくとも、組成物の投与後少なくとも約2時間の期間遅延される。
【0052】
有効成分がメチルフェニデートである場合、操作中での組成物の第2の成分からの有効成分の放出は、実質的に、完全ではなくとも、組成物の投与後少なくとも約4時間、好ましくは約4時間の期間遅延される。
【0053】
以下の実施例で、全ての百分率は、特に規定されない限り、重量である。実施例を通して使用される場合、語句「精製水」は、それに水濾過系を通過させることによって精製された水に該当する。
【0054】
実施例1.メチルフェニデートを含有する多粒子変性放出組成物
即時放出成分と変性放出成分を含んでなり、メチルフェニデートを活性成分として含む本発明の多粒子改質放出組成物を次のように製造する。
【0055】
(a)即時放出成分
メチルフェニデートHCl(50:50ラセミ混合物)の溶液を表1に示す調合物のいずれかにより製造する。例えば、Glatt GPCG3(Glatt、ProtechLtd.、Leicester、UK)流動床コーティング装置を用いて、メチルフェニデート溶液をほぼ16.9%の固形重量増加のレベル迄非パレイルシード上に被覆して、即時放出成分のIR粒子を形成する。
【0056】
【表1】

【0057】
(b)変性放出成分
上記の実施例1(a)により製造した即時放出粒子を表2に詳述した変性放出コーティング溶液によりコーティングすることにより、遅延放出粒子を含有するメチルフェニデートを製造する。例えば、流動床コーティング装置を用いて、ほぼ30%の重量増加迄の種々のレベル迄即時放出粒子をコーティングする。
【0058】
【表2】

【0059】
(c)溶解試験
pHに依存することなくコーティングされた成分((i)から(v)表2)をUSPタイプ1の装置(100rpm)中で次のプロトコルによりインビトロで試験する。すべてのサンプリング時点に対して試料を0.01NHCl(900ml)中、pH2.0、37°Cに置く。
【0060】
pHに依存してコーティングされた成分((vi)から(viii)表2)をUSPタイプ1の装置(100rpm)中で米国薬局方の腸保護の方法の変形バージョン(USP23、1995年、1795頁)により試験する。試料を0.01NHCl中に2時間置き、次に、サンプリング時点の残りの間、リン酸塩緩衝液pH6.8に移す。
【0061】
それぞれ、0.5−0.6、0.6−0.71および0.71−0.85の直径の寸法を持つ3つの異なるサイズの非パレイルシードを用いて、IR成分を調合した。0.5−0.6、0.6−0.71および0.71−0.85mmの非パレイルシードをコーティングすることにより形成されたIR粒子は、水性媒体中20分間以内で100%の活性成分を放出することが判明した。
【0062】
上記の実施例1(b)により製造された変性放出成分についての溶解溶液データを表3(a)から3(c)に示す。このデータは、塗布したコーティングの組成と厚さを変えることにより、変性放出成分の放出性能を変えることができることを示す。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
(d)即時および遅延放出粒子のカプセル化
上記の実施例1(a)と(b)により製造した即時および遅延放出粒子を例えば、Bosch GKF4000Sカプセル化装置を用いて、サイズ2の硬ゼラチンカプセル中に20mgの総服用強度迄カプセル化する。総服用強度20mgのメチルフェニデートは、即時放出成分の10mgと変性放出成分の10mgから構成された。
【0067】
表4は、表1(ii)に示す即時放出コーティング溶液と表2(vii)および(viii)に示す変性放出コーティング溶液を用いて製造した2つの多粒子の変性放出組成物についての溶解プロファイルを示す。これらの結果は、ほぼ50%のメチルフェニデートHCl活性成分が最初の半時間内に放出され、変性放出成分からの放出が約4時間遅延することを示す。
【0068】
【表6】

【0069】
表4に示される溶解プロファイルは、pHに依存してコーティングされた成分を含有する組成物がメチルフェニデート活性成分をパルスの形で放出することを示す。第1のパルスが、平坦領域の1時間前に起こり、該平坦領域では、活性成分の更なる量の放出が抑制される。該平坦領域の後、投与から4時間以降に、薬剤濃度の増加により示されるような活性成分放出の第2のパルスが続く。
【0070】
実施例2:メチルフェニデートを含有する多粒子変性放出組成物
即時放出成分と変性放出マトリックス材料を持つ変性放出成分を持つ、本発明による多粒子変性放出メチルフェニデート組成物を表5(a)および(b)に示す調合物により製造する。
【0071】
【表7】

【0072】
【表8】

【0073】
(e)インビボ放出
ヒト交差生体試験においては、絶食した健康なボランティアに20mgの本発明のメチルフェニデートHCl組成物を服用させて、Ritalin(登録商標)(Novatis;4時間間隔で10mgを2回服用)に対するこの組成物におけるメチルフェニデートHClの生体利用率を比較した。薬物動力学的評価は、投与後48時間迄の規則的な間隔での血液サンプリングにより測定した血漿レベルのメチルフェニデートを基準にした。また、試験前および試験後スクリーニングに対しても血液サンプリングを行った。
【0074】
図1を参照すると、「A」(変形成分はコーティング表2(viii)により30%で被覆されたIR粒子を含んでなる)とラベルした血漿像と「B」(変形成分はコーティング表2(vii)により30%で被覆されたIR粒子を含んでなる)は、実施例1により製造された多粒子変性放出組成物の経口投与後、ヒトのボランティアに観測されるメチルフェニデートの血漿濃度に相当する。双方の場合、血漿像は、4時間置いて、逐次的に与えられる2回服用のRitalinR IRからなる従来技術処理(図1で「対照」とラベルされている)に典型的な対照に定性的に類似している。
【0075】
上記の実施例1により製造された本発明の多粒子変性放出組成物に対して、即時放出成分に関連する血漿像における第1のピークは、Cmaxとピーク幅の点で対照像におけるRitalin(登録商標)の第1の服用に関連するピークに類似している。像Aは、慣用の1日2回の投与(対照像により例示されるように)のトラフ状の特性に本発明により製造された組成物が模倣することを示す。像Bは、また、血漿濃度における初期のピークの後顕著な低下を示す。双方の多粒子の変性放出組成物に対して、変性放出成分の効果は、投与後4時間で血漿濃度を増大させ、第2のピークレベルを生じることである。この観察された効果は再度対照を模倣する。
【0076】
図1から、本発明により製造された多粒子の変性放出組成物は、投与時に得られる血漿像の点で典型的な1日2回の治療(対照により代表される)を模倣することは明らかである。1日2回服用するRitalin(登録商標)に比較して、生体利用率のいかなる損失もなく本発明の組成物からのメチルフェニデートのインビボ放出が得られた。
【0077】
別な試験において、ADHDの34人の子供に20mgの本発明のメチルフェニデートHCl組成物を服用させた。シミュレーションしたクラスルーム設計を使用して、調合物「A」と「B」(上記の「A」と「B」調合物に対応して)をプラセボと比較した。SKAMP尺度で測定した注意および行為の双方と、試みた計算問題の数および正解の数により測定した機能的な結果を測定した薬物動力学的評価を9時間の期間にわたって行った。各調合物は、すべての効能測定の上でのプラセボからの統計的な差異を示した。個別の効能の評価は、「A」と「B」調合物は、行為に関して類似していることが明らかになることを示した。注意と機能的な結果に関しては、「A」調合物の子供は、「B」調合物の子供よりも手元の作業により多くの焦点を当てているように見え、4と6時間の間より迅速により多くの計算の問題を試みた
本発明は、ここで記述された特定の実施形態により範囲において限定されるべきでない。ここで記述されたものに加えて、本発明の種々の変形は、前の説明と次の特許請求から当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの有効成分を含み、かつ有効成分含有粒子の第1の集団を含む第1の構成要素と少なくとも1つのさらなる構成要素とを有し、さらなる構成要素のそれぞれが有効成分含有粒子のさらなる集団を含み、第1の構成要素およびさらなる構成要素に含まれる有効成分が同じであるか、または異なる多粒子改質放出組成物であって、有効成分含有粒子の少なくとも1つのさらなる構成要素は、被験者への経口送達後の組成物がその有効成分(1つまたは2つ以上)をパルス的な様式で送達するように、改質された放出性コーティング物をさらに含むか、あるいはまたはさらに、改質された放出性マトリックス材を含む多粒子改質放出組成物。
【請求項2】
前記組成物は第1の構成要素および1つのさらなる構成要素を含む、請求項1に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項3】
前記第1の構成要素は即時放出性構成要素であり、かつ前記さらなる構成要素は改質された放出性構成要素である、請求項2に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項4】
前記改質された放出性構成要素は、改質された放出性コーティング物を有する粒子を含む、請求項3に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項5】
前記改質された放出性構成要素は、改質された放出性マトリックス材を含む、請求項3に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項6】
有効成分含有粒子の前記第1の集団と、有効成分含有粒子の前記少なくとも1つのさらなる構成要素とは同じ有効成分を含む、請求項1に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項7】
有効成分含有粒子の前記第1の集団は2つ以上の有効成分を含む、請求項1に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項8】
有効成分含有粒子の前記少なくとも1つのさらなる構成要素は2つ以上の有効成分を含む、請求項1に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項9】
前記有効成分は、実質的に1つの光学的に純粋なエナンチオマーあるいはエナンチオマーの混合物(ラセミ状またはそれ以外)を含む、請求項1に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項10】
前記の第1の構成要素およびさらなる構成要素の少なくとも1つはエンハンサーをさらに含む、請求項1に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項11】
前記の第1の構成要素およびさらなる構成要素に含まれる有効成分の量が同じであるか、または異なる、請求項1に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項12】
それぞれの構成要素に含まれる有効成分の量が約0.1mg〜約1gである、請求項11に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項13】
前記有効成分が、メチルフェニデートまたはその薬学的に受容可能な塩、そのエナンチオマーまたは混合物、あるいはそれらの混合物である、請求項6に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項14】
有効成分含有粒子の前記の第1の構成要素およびさらなる構成要素が異なるインビトロ溶解特性を有する、請求項1に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項15】
前記第1の構成要素は即時放出性構成要素であり、かつ前記少なくとも1つのさらなる構成要素は改質された放出性構成要素である、請求項1に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項16】
使用時において、有効成分含有粒子の前記さらなる構成要素から有効成分が放出される前に、有効成分含有粒子の前記第1の集団から実質的にすべての有効成分が放出される、請求項15に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項17】
被験者における前記有効成分のインビボ放出は、有効成分の即時放出形態の2つ以上の用量の形態で投与される同じ有効成分のインビボ放出を模倣する、請求項1に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項18】
被験者における前記有効成分のインビボ放出は、有効成分の即時放出形態の2つ以上の用量の形態で投与される同じ有効成分のインビボ放出を模倣する、請求項13に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項19】
水性媒体における平均インビトロ溶解特性は、有効成分含有粒子の前記第1の集団に含まれる有効成分の約50%〜100%が組成物を投与した4時間以内に放出され、かつ有効成分含有粒子の前記さらなる構成要素に含まれる有効成分の約30%〜100%が組成物を投与した4時間〜8時間の間で放出される程度である、請求項16に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項20】
水性媒体における平均インビトロ溶解特性は、有効成分含有粒子の前記第1の集団に含まれる有効成分の約80%〜100%が組成物を投与した4時間以内に放出され、かつ有効成分含有粒子の前記さらなる構成要素に含まれる有効成分の約60%〜100%が組成物を投与した4時間〜8時間の間で放出される程度である、請求項19に記載の多粒子改質放出組成物。
【請求項21】
請求項1に記載される多粒子改質放出組成物を含む固形の経口投薬形態物。
【請求項22】
硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセルに充填された第1の有効成分含有粒子とさらなる有効成分含有粒子との混合物を含む、請求項21に記載の固形の経口投薬形態物。
【請求項23】
前記の第1の構成要素子とさらなる構成要素とは、別々かつ独立して小さな錠剤に圧縮成形され、硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセルに充填されている、請求項21に記載の固形の経口投薬形態物。
【請求項24】
前記第1の構成要素は多層錠剤の第1層内に圧縮成形され、前記少なくとも1つのさらなる構成要素は前記多層錠剤のさらなる層内に圧縮成形されている、請求項21に記載の固形の経口投薬形態物。
【請求項25】
前記の第1の構成要素およびさらなる構成要素は易溶性投薬形態物に取り込まれている、請求項21に記載の固形の経口投薬形態物。
【請求項26】
前記易溶性投薬形態物は高速溶解錠剤投薬形態物である、請求項25に記載の固形の経口投薬形態物。
【請求項27】
組成物に含まれる少なくとも1つの有効成分に対する患者の耐性が増大することを特徴とする状態を処置するための薬物を調製する際における、請求項1に記載される多粒子改質放出組成物の使用。
【請求項28】
注意欠陥障害を処置するための薬物を調製する際における、請求項1に記載される多粒子改質放出組成物の使用。
【請求項29】
注意欠陥障害を処置するための薬物を調製する際における、請求項13に記載される多粒子改質放出組成物の使用。
【請求項30】
その状態の処置において投与された有効成分に対する患者の耐性が増大することを特徴とする状態を処置する方法であって、請求項1に記載される多粒子改質放出組成物の治療的有効量を投与することを含む方法。
【請求項31】
請求項1に記載される多粒子改質放出組成物の治療的有効量を投与することを含む、注意欠陥障害を処置する方法。
【請求項32】
請求項13に記載される多粒子改質放出組成物の治療的有効量を投与することを含む、注意欠陥障害を処置する方法。
【請求項33】
前記の改質された放出性構成要素は、遅延した時間の後に、前記の改質された放出性構成要素から有効成分をパルス的に放出させるpH依存性ポリマーコーティング物を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項34】
前記pH依存性ポリマーコーティング物はメタクリラートコポリマーを含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記pH依存性ポリマーコーティングは、遅延した時間の後に、前記の改質された放出性構成要素からパルス的に有効成分を達成させるのに十分な比でメタクリラートとアンモニオメタクリラートコポリマーとの混合物を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
メタクリラート対アンモニオメタクリラートコポリマーの比が1:1である、請求項35に記載の組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−270128(P2010−270128A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−156897(P2010−156897)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【分割の表示】特願2000−579194(P2000−579194)の分割
【原出願日】平成11年11月1日(1999.11.1)
【出願人】(500370883)エラン ファーマ インターナショナル,リミティド (45)
【Fターム(参考)】