説明

多糖類微粒子状ゲル含有水分散体およびその製造方法ならびに多糖類微粒子状ゲル含有保湿剤と多糖類微粒子状ゲル含有眼科用組成物

【課題】
高温で加熱しても多糖類からなる微粒子状ゲルが粒子状の形態を保持し、水媒体中に一様に分散した多糖類微粒子状ゲル含有水分散体を提供する。
【解決手段】
多糖類微粒子状ゲル含有水分散体の製造方法において、多糖類と水媒体からなり、該多糖類のゲル転移温度以上に加熱して多糖類を水媒体に溶解させる工程、該水媒体に溶解した多糖類を外力を加えながらゲル転移温度以下に冷却して微粒子状多糖類を得る工程、該微粒子状多糖類を含有した水分散体に電離性放射線を照射する工程を含むことを特徴とする多糖類微粒子状ゲル含有水分散体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多糖類微粒子状ゲル含有水分散体およびその製造方法に関し、さらに、該微粒子状ゲルを配合することによって保湿性・生体安全性・取り扱い性を向上させた保湿剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品・医療材料・食品・化粧品などの分野では多糖類からなる種々の形態を有する多くの製品が開発されており、ゲル状の製品も提案されている。
【0003】
塗布性や生体安全性あるいは薬物滞留性を向上させるための多糖類からなる組成物が知られており、例えば特許文献1〜3には、多糖類をゲル転移温度より高い温度で水媒体に溶解し、剪断力を加えながらゲル転移温度以下に冷却することによって、多糖類の一部若しくは全部が微粒子状の物であって、水媒体中に一様に分散した多糖類含有組成物およびその製造方法が記載されている。また、特許文献4には、汗・涙液など塩を含んだ生理液と接触することで粘度が増加する多糖類含有組成物を調製し、使用前には低粘度で広範囲への塗布や投与が容易であり、使用中は粘度の増加により流れ落ちにくくなる特性を持った医薬品、化粧品などとして適用できることが記載されている。加えて、眼科応用として、多糖類含有組成物が、眼内組織への薬物の移行性を向上させる効果があることを見出し、点眼剤用の基剤として有用であることも記載されている。また、特許文献5には、多糖類含有組成物が眼球表面の涙液層を顕著に安定化する効果が見いだされており、ドライアイを治療または予防するための点眼剤へも有用であることが示されている。さらに、特許文献6には、多糖類含有組成物が涙液層のムチンと接触することによって特異的な増粘作用を示すことが見出されており、前眼部における薬物の滞留性に優れるとともに眼部の乾燥感を解消するので、眼球表面滞留促進剤、ドライアイ治療剤あるいは人工涙液として有用であることが示されている。
【0004】
しかし、このような多糖類からなる微粒子状物を含有した組成物の調整には、(1)空気中あるいは試薬に付着している細菌や微生物が組成物内に混入する、また、(2)保存時に組成物が空気中に曝された場合や皮膚などに接触した場合に細菌が混入するなどといった課題を有している。かかる課題解決のため、実際の製品として使用する場合には滅菌操作を行い、細菌や微生物を死滅させる必要がある。滅菌操作としては、濾過滅菌・加熱滅菌等を挙げることができる。濾過滅菌は、ある一定の大きさの孔が無数にあいたフィルターを用いて細菌や微生物を組成物から分離する方法である。この方法では、フィルターの孔径より小さい微小な微生物を除去することができない。また、多糖類からなる微粒子状物がフィルターの孔径以上の大きさであった場合、細菌や微生物とともに分離されてしまうため、上記組成物の滅菌方法としては適当ではない。
【0005】
一方、加熱滅菌は火炎滅菌法・乾熱滅菌法・高圧蒸気滅菌法といった方法を挙げることができる。かかる方法は高温で加熱することによって細菌や微生物を死滅させる方法である。多糖類からなる微粒子状物を含有した組成物の滅菌方法としては高圧蒸気滅菌法が好ましいが、該微粒子状物の水分散体は、多糖類のゲル転移温度以上、より具体的には90℃以上の温度で加熱を行うと微粒子状物が溶解してしまうため、再度剪断力を加えながらゲル転移温度以下に冷却しなければならず、加熱前の組成物の物性と異なってしまい、医薬品・医療材料・食品・化粧品への応用が難しいという問題があった。そのため、加熱を行っても多糖類からなる微粒子状物が粒子状の形態を保持した組成物の開発が望まれていた。
【0006】
一方、医薬品・化粧品などの分野においては、高い保湿性を有しながら生体安全性あるいは水分蒸発阻止性に優れた製品の開発が望まれている。
【0007】
従来より、皮膚の乾燥を抑え、皮膚の水分を保持するための保湿剤の成分として、多価アルコール・天然高分子・多糖類といった保水性を有する成分が主に使用されている。特に、高い保水性・生体安全性の観点から多糖類を有効成分とする保湿剤の開発が盛んに行われている。例えば、特許文献7には、分子量200万以上のヒアルロン酸を含有させ、使用感を向上させる機能を有した保湿剤を提案している。また、特許文献8には、多糖類を有効成分とし、安定した保湿能を有した保湿剤を提案している。しかし、これらの保湿剤に含有される多糖類の量は、保湿剤全体に対して0.1〜0.3重量%程度である。十分な保水性・生体安全性を付与するためには、多糖類を高濃度で配合することが好ましいが、高濃度で配合してしまうとベタツキが発生してしまい、使用感が低下してしまうという問題があった。そのため、多糖類を高濃度で配合してもベタツキが発生せず、保湿性・取り扱い性・生体安全性に優れた保湿剤の開発が望まれていた。
【0008】
ところで、緑内障や白内障等の眼疾患の治療方法としては、薬物を直接点眼する方法が一般的である。この点眼投与による眼疾患の治療効果は、薬物自体の効能に依存することは言うまでもないが、その効能を十分に発揮させるためには、投与した薬物の効果を長時間作用させることが重要な課題になってくる。
【0009】
また、近年コンピュータ等の長時間作業・コンタクトレンズの使用が日常化していることで、ドライアイ症状の多発化が問題視されている。眼球表面を覆っている涙液層は極めて薄く、滑らかに保たれている。しかし、涙液層が不安定になるとその表面が滑らかでなくなる結果、まばたきをするまでの短時間の間にドライスポットという乾燥部分が生じ、角膜の一部が露出することがある。このことが原因で眼部の異常な乾燥や涙膜の欠損(ドライスポット)を生じるため、角膜や結膜などの外眼部に深刻な障害を引き起こすことになる。これらの症状を予防・治療するためには、眼球表面の涙液層を長時間安定化し、眼球表面の涙液層を滑らかに保つことが要求される。
【0010】
薬物の効能を効果的に作用させるための様々な研究がなされており、例えば、特許文献9にはカルボキシビニルポリマー(CVP)を基剤として用いることにより点眼剤自体の粘度を上げ、眼球表面における薬物の滞留時間を長くし、薬物の徐放効果をはかり、それにより薬物の眼内移行性を向上させる技術が開示されている。この技術は、CVPの特性、即ち僅かな添加量でも点眼剤の粘度を飛躍的に上昇させる性質を利用するものである。
【0011】
上記技術は、眼軟膏の場合には好適に用いることが出来るが、点眼薬の場合には液滴の状態で点眼する必要がある。このことから、液滴として点眼でき、且つ優れた薬物の眼内移行性を達成できる点眼液の開発が行われている。
【0012】
また、ドライアイ予防・治癒のための眼科用組成物として、例えば、特許文献10には、ポリーγ−グルタミン酸(PGA)を成分として含む眼科用組成物が開示されており、ドライアイの予防・治癒に有効なドライアイ点眼薬用組成物/あるいは涙液置換物としての効果が長時間持続する人工涙液用組成物を得ることができることが示されている。ここで、この技術の基材として用いられているPGAの分子量は、組成物粘度・水分子を包含する性質等が良好であるという理由から5万以上が好適であると推奨されている。しかし、このような高分子量体を用いる場合、点眼薬用あるいは涙液置換物の、製品としての取り扱い性あるいは薬剤効果にかかわる物性(粘度・溶媒への溶解性等)を一定の範囲に制御することが困難になる。例えば、上記製品は低粘度であることが要求されるが、高分子量体を用いると低粘度の組成物を調整するときに粘度のばらつきを生じやすく、製造が困難になる。
【0013】
一方、特許文献1〜6に記載されている多糖類が微粒子状の形態を有する多糖類含有組成物は薬物の眼内移行性に優れ、さらには、眼球表面の涙液層を顕著に安定化する作用があることが示されており、点眼剤・ドライアイを予防、治療するための保存液といった眼科用組成物の基材として利用できることが記載されている。また、眼科用組成物にしたときも、取り扱い性あるいは薬剤効果にかかわる物性のばらつきが少なく、一定品質の製品を製造できることが示されている。
【0014】
しかしながら、一般に、これらの眼科用組成物は商品として上市する際には、高圧蒸気滅菌に代表される滅菌操作を行い、組成物中に含まれる細菌や微生物等を完全に除去する必要がある。ところが、多糖類含有組成物を含有する眼科用組成物に対して高圧蒸気滅菌を施すと、多糖類からなる微粒子状物が溶解してしまう。また、多糖類を含有した眼科用組成物の粘度が、滅菌操作を施す前と比べて、少なくとも数十mPa・S以上増加してしまうため、点眼剤やコンタクトレンズ用保存液といった実際の製品への適用ができないという問題があった。そのため、加熱滅菌が可能であり、さらに、加熱滅菌を行った後も、滅菌前の物性を維持する微粒子状多糖類を含有した眼科用組成物の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開平2−191540号公報
【特許文献2】特開2004−244329号公報
【特許文献3】特開2005−162955号公報
【特許文献4】特開2003−128588号公報
【特許文献5】特開2005−163023号公報
【特許文献6】特開2006−89460号公報
【特許文献7】特開昭63−156707号公報
【特許文献8】特開平8−301904号公報
【特許文献9】特公昭60−56684号公報
【特許文献10】特開2006−327949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記のような実状に鑑み、医薬品・医療材料・食品・化粧品等に適用することを目的に、加熱を行っても多糖類からなる微粒子状物が粒子状の形態を保持し、水媒体中に一様に分散した組成物である多糖類微粒子状ゲル含有水分散体およびその製造方法を提供する。さらには、保湿性・取り扱い性・生体安全性に優れた多糖類微粒子状ゲル含有保湿剤および、加熱滅菌可能であり、滅菌後も一定の品質を維持する多糖類微粒子状ゲルを含有した眼科用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、このような課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、かかる多糖類の微粒子状物を、水媒体中で加熱後も形態を保持してなる微粒子状ゲルとすることで、高圧蒸気滅菌が可能となり、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、第一の発明は、(1)実質的に多糖類からなる微粒子状ゲルを含有し、該微粒子状ゲルは水媒体中で95℃、30分間の加熱後も形態が保たれてなることを特徴とする多糖類微粒子状ゲル含有水分散体に関するものである。
【0018】
第二の発明は、(2)多糖類微粒子状ゲル含有水分散体の製造方法において、多糖類と水媒体からなり、該多糖類のゲル転移温度以上に加熱して多糖類を水媒体に溶解させる工程、該水媒体に溶解した多糖類を外力を加えながらゲル転移温度以下に冷却して微粒子状多糖類を得る工程、該微粒子状多糖類を含有した水分散体に電離性放射線を照射する工程を含むことを特徴とする多糖類微粒子状ゲル含有水分散体の製造方法である。
【0019】
第三の発明は、(3)第一の発明に記載の多糖類微粒子状ゲル含有水分散体を用いた多糖類微粒子状ゲル含有保湿剤であって、実質的に多糖類からなる微粒子状ゲルを0.01〜5重量%含有し、該微粒子状ゲルの平均粒子径が1μm〜200μmであり、さらに、該微粒子状ゲルは水媒体中で95℃、30分間の加熱後も形態が保たれてなることを特徴とする多糖類微粒子状ゲル含有保湿剤に関するものである。
【0020】
第四の発明は、(4)第一の発明に記載の多糖類微粒子状ゲル含有水分散体を用いた多糖類微粒子状ゲル含有眼科用組成物であって、実質的に多糖類からなる微粒子状ゲルを0.0001〜1重量%含有し、該微粒子状ゲルの平均粒子径が0.1μm〜100μmであり、さらに、該微粒子状ゲルは水媒体中で95℃、30分間の加熱後も形態が保たれてなることを特徴とする多糖類微粒子状ゲル含有眼科用組成物を含有してなる眼科用組成物であることを本旨とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、加熱滅菌を行っても多糖類からなる微粒子状ゲルが溶解することがなく、調整時の形態を保持した組成物を得ることができる。よって、これまでにない機能を持った医薬品・医療材料・食品・化粧品を安全に提供することができる。具体的には、海水で流れ落ちにくい日焼け止めクリーム・汗で流れ落ちない化粧品・汗で流れ落ちない医薬用軟膏・涙液による薬効成分の流出を抑えた点眼薬・眼球表面の涙液層を安定化する人口涙液・鼻腔および口腔内に長時間滞留し薬効の持続性の良好な鼻腔および口腔用製剤などを安全に提供することができる。また、気管・生殖腺などの粘膜表面に存在するムチンと接触することで増粘する性質を利用して、患部に長時間滞留し薬剤を効率的に徐放するドラッグデリバリーシステムへの応用も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明をさらに詳しく説明する。本発明は以下の四つの発明により構成される。
【0023】
第一の発明は、(1)実質的に多糖類からなる微粒子状ゲルであり、該微粒子状ゲルは水媒体中で95℃、30分間の加熱後も形態が保たれてなることを特徴とする多糖類微粒子状ゲル含有水分散体に関するものである。
【0024】
実質的に多糖類からなる微粒子状ゲルとは、微粒子状ゲルを構成する成分の約90〜100%が多糖類の構造からなることを表わす。一般に、水媒体中において、多糖類からなる微粒子状ゲルは90℃以上で加熱すると溶解するが、本発明の微粒子状ゲルは水媒体中で95℃で30分間の加熱後も溶解せず、粒子状の形態を保つ性質を有する。
【0025】
水媒体とは、水を主成分とする液状の物質であり、水以外の成分は特に限定されるものではないが、水の含有率が70〜80重量%を超えるものが好ましく、90重量%を超えるものがより好ましい。水媒体は水溶性化合物を含有してもよい。かかる水溶性化合物は、水に溶解して安定な組成物を与えるものであれば特に限定されない。これを例示すると、メタノール・エタノール・エチレングリコール・プロピレングリコール・グリセリンなどのアルコール類や各種の界面活性剤・乳化剤・分散剤・等張化剤を挙げることができる。また上記低分子化合物以外にもポリエチレングリコールやポリビニルアルコールなどの水溶性高分子化合物も用いることが出来る。かかる水溶性化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0026】
ここで、等張化剤とは一般に等張溶液に含まれる溶質のことである。等張溶液とは浸透圧の違う2種以上の溶液がある場合、一方の溶液に対して浸透圧が同じになるように等張化剤を加えたもののことである。本発明における組成物を単独で、または複数の組成物と組み合わせて用いる場合に等張化剤を用いることができる。等張化剤の添加量は任意の浸透圧に調整するためであれば特に限定されるものではない。かかる等張化剤としては、ソルビトール・マンニトール・塩化ナトリウム・リン酸ナトリウム・硼酸・グリセリン等を挙げることができる。
【0027】
また、加熱温度は95℃に限定されない。例えば、高圧蒸気滅菌法を用いて組成物の滅菌を行う場合、組成物中の微生物を完全に死滅させるために121℃、20分間の条件で加熱を行うが、本発明の多糖類からなる微粒子状ゲルはこの条件においても溶解しない。そのため、高圧蒸気滅菌法を用いることも可能となる。
【0028】
本発明の微粒子状ゲルを得るにあたっては、水媒体中の多糖類に電離性放射線を照射することが好ましい。多糖類のみに電離性放射線を照射すると分解反応が促進されるため、高温で加熱しても溶解しない微粒子状ゲルは得られない。また、電離性放射線照射による反応効率が高い点で、前記水媒体中の多糖類は微粒子状の形態を有していることが好ましい。
【0029】
一般に、放射線には電離性放射線と非電離性放射線がある。ここで、電離性とは放射線が物質中を透過してゆくとき、その通り道にある物質を形成している原子から電子をはじき出す作用をいう。電離性放射線として、γ線・電子線・X線・β線あるいはα線などを挙げることができる。一方、非電離性放射線には紫外線や可視光線などがある。非電離性放射線は電離能力が非常に弱い。そのため、反応効率の観点から電離性放射線を使用することが好ましい。より好ましくはγ線照射や電子線照射である。特に好ましくは、経済性、反応効率が優れた電子線照射である。
【0030】
本発明の微粒子状ゲルが粒子状の形態を保持する効果の発現メカニズムは完全に解明するに至ってないが、以下のように考えられる。水媒体中の微粒子状多糖類に電離性放射線を照射した場合、水分子自体が電離性放射線によりヒドロキシラジカルを生じ、このラジカルが微粒子状多糖類を構成する分子鎖への架橋反応の開始を誘導することになるものと推定される。また、微粒子状多糖類を構成する分子鎖の一部が、比較的自由な分子運動性をもっている場合、電離性放射線により形成されたラジカル等による架橋点が他の分子鎖と反応を起こせる距離に接近できるためであると推定される。
【0031】
本発明に適用される多糖類は、特に制限はなく、「糖化学の基礎」(阿武喜美子、瀬野信子著; 講談社、1984)に記載されているような一般的な多糖類のいずれであってもよい。複数の多糖類を併用することもできる。植物から得られる多糖類が好ましく、その具体例としては寒天、アガロース、アガロペクチン、デンプン、アミロース、アミロペクチン、イソリケナン、ラミナラン、リケナン、グルカン、イヌリン、レバン、フルクタン、ガラクタン、マンナン、キシラン、アラビナン、ペントザン、アルギン酸、ペクチン酸、フコイダン、アスコフィラン、カラギナン、ペクチン、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、アラビアガムなどが挙げられる。なかでも海草から得られる多糖類である寒天、アガロース、アガロペクチン、ラミナラン、フルクタン、ガラクタン、ペントザン、アルギン酸、キチン、ポルフィラン、フコイダン、アスコフィラン、カラギナンなどが好ましく、さらに好ましくは寒天、アガロース、アガロペクチンであり、特に好ましくは寒天である。
【0032】
寒天は、既に食品等に広く利用されており、日本薬局方に掲載されていることからも安全性が高い。また、寒天は、水分の蒸発を抑制する保水作用を有することから、医薬品・食品・化粧品などの保水剤として有用であることが知られている。
【0033】
寒天(agar)は、テングサやオゴノリなど各種の紅藻の細胞壁マトリックスに含まれる多糖であり、熱水で抽出して得られる。寒天は均一な物質ではなく、硫酸基を含まないアガロース(agarose)と硫酸基などを含むアガロペクチン(agaropectin)とに大きく分けられる。アガロースの割合は紅藻の種類によって異なり、例えばテングサ寒天ではアガロースが約70%を占める。
【0034】
寒天はどのような製法によるものでも良いが、安定供給という点から工業的製法による寒天が好ましい。用いる寒天の重量平均分子量は5千〜120万のものが好ましく、より好ましくは3万〜80万、さらに好ましくは5万〜50万のものである。
【0035】
微粒子状ゲルの形状は特に限定されないが、球状・楕球状もしくは不定形の形状を挙げることができる。異物感・違和感を与えないことから球状であることが好ましい。また、粒子径が数百μmである大きい微粒子状ゲルが組成物中に存在した場合、組成物の保存安定性に悪影響を及ぼす。また、点眼剤、鼻腔・口腔用製剤用途に用いた場合には、投与時に眼球および鼻腔内での違和感や刺激性がある等、機能面で不都合が生じることがある。したがって、微粒子状ゲルの粒径は300〜500μmのものが好ましく、より好ましくは粒径が50〜100μm以下である。特に好ましくは、30μm以下である。
【0036】
本発明の微粒子状ゲルは薬効成分を包含することができ、医薬用・医療材料への応用も可能である。薬効成分としては、実際に臨床使用されているもの、あるいは臨床使用が期待されているもの等幅広く利用できる。
【0037】
前記薬効成分としては、たとえばグルテチミド、抱水クロラール、ニトラゼパム、アモバルビタール、フェノバルビタール等の催眠鎮静剤:アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、塩酸テアラミド、ピロキシカム、フルフェナム酸、メフェナム酸、ぺンタゾシン等の解熱鎮痛消炎剤:アミノ安息香酸メチル、リドカイン等の局所麻酔剤:硝酸ナファゾリン、硝酸テトリゾリン、塩酸オキシメタゾン、塩酸トラマゾリン等の局所血管収縮剤:マレイン酸クロルフェニラミン、クロモグリク酸ナトリウム、オキサトミド、塩酸アゼラスチン、フマル酸ケトチフェン、トラキサノクスナトリウム、アンレキサノクス等の抗アレルギー剤:塩化ベンゼトニウム等の殺菌剤、塩酸ドパミン、ニヒデカレノン等の強心剤:塩酸プロプラノロール、ピンドロール、フェニトイン、ジソピラミド等の不整脈用剤:硝酸イソソルビド、ニフェジピン、塩酸ジルチアゼム、ジピリダモール等の冠血管拡張剤:ドンペリドン等の消化器官用剤:トリアムシノロンアセトニド、デキナメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、酢酸プレドニゾロン、フルオシノニド、プロピオン酸ペクロメタゾン、フルニソリド等の副腎皮質ホルモン剤:トラネキサム酸等の抗プラスミン剤:クロトリマゾール、硝酸ミコナゾール、ケトコナゾール等の抗真菌剤:テフガフール、フルオロウラシル、メルカプトプリン等の抗悪性腫瘍剤:アモキシリン、アンピシリン、セファレキシン、セファロチンナトリウム、セフチゾキシムナトリウム、ニリスロマイシン、塩酸オキシテトラサイクリン等の抗生物質:インスリン、ナケカルシトニン、ニワトリカルシトニン、ニルカトニン等のカルシトニン類、ウロキナーゼ、TPA、インターフェロン等の生理活性ペプチド;インフルエンザワクチン、豚ポルデテラ感染症予防ワクチン、B型肝炎ワクチン等のワクチン類:ビフォナゾール、シッカニン、酢酸ビスデカリニウム、クロトリマゾールおよびサリチル酸等の寄生性皮膚疾患用剤:スルファメトキサゾールナトリウム、エリスロマイシンおよび硫酸ゲンタマイシン等の化膿性疾患用剤:ジフェンヒドラミン等の鎮痒剤:ヨウ素、ポビドンヨード、塩化ベンザルコニウムおよびグルコン酸クロルヘキシジン等の外皮用殺菌消毒剤:塩酸ジフェンヒドラミンおよびマレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤:クロトリマゾール、硝酸ナファゾリル、フマル酸ケトチフェンおよび硝酸ミコナゾール等の生殖器官用剤:塩酸テトリゾリン等の耳鼻科用剤:アミノフィリン等の気管支拡張剤:フルオロウラシン等の代謝拮抗剤:ジアゼパム等の催眠鎮静剤:ノルフロキサシンおよびナリジクス酸等の合成抗菌剤などを挙げることができる。
【0038】
薬効成分の配合量は薬物の種類により変動するが、一般に所望の薬物を発揮するのに十分な量で配合する。
【0039】
本発明の微粒子状ゲルは必要に応じて医薬的に容認し得る緩衝剤、pH調節剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤等を適宜配合することができる。
【0040】
緩衝剤としては例えば、リン酸、クエン酸、酢酸、ε-アミノカプロン酸、ホウ酸、ホウ砂、トロメタモール等を挙げることができる。これらの緩衝剤は組成物のpHを3〜10に維持するのに必要な量を組成物に加えることが好ましい。
【0041】
pH 調節剤としては、例えば塩酸、クエン酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ酸、ホウ砂、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0042】
薬物や他の添加物が水難溶性の場合などに添加される可溶化剤としては、例えばポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、マクロゴール4000等を挙げることができる。
【0043】
安定化剤としては、例えばエデト酸、エデト酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0044】
保存剤としては、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等を挙げることができ、これらの保存剤を組み合わせて使用することもできる。
【0045】
可溶化剤としては、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油およびシクロデキストリンなどがあげられ、これらを用いる場合には0.001〜15重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0046】
第二の発明は、(2)多糖類微粒子状ゲル含有水分散体の製造方法において、多糖類と水媒体からなり、該多糖類のゲル転移温度以上に加熱して多糖類を水媒体に溶解させる工程、該水媒体に溶解した多糖類を外力を加えながらゲル転移温度以下に冷却して微粒子状多糖類を得る工程、該微粒子状多糖類を含有した水分散体に電離性放射線を照射する工程を含むことを特徴とする多糖類微粒子状ゲル含有水分散体の製造方法に関するものである。
【0047】
「多糖類のゲル転移温度以上に加熱して多糖類を水媒体に溶解させる工程」においては、公知例に記載されている方法に従えばよい。例えば特許文献1〜4に記載の方法のように、ゲル転移温度を有する多糖類と水媒体とを含む組成物に外力を加えながらこれを該多糖類のゲル転移温度以上の温度で加熱して多糖類を同媒体に溶解させればよい。ここで、ゲル転移温度とは加熱により溶解した多糖類が冷却されてゲルになるときの温度を意味し、多糖類に固有の物性値である。したがって、加熱により多糖類を水媒体に溶解する際のゲル転移温度以上の温度は、使用する多糖類の種類によって決まる。加熱温度としてゲル転移温度以上、好ましくはゲル転移温度+20℃以上の温度から選ばれる。
【0048】
水媒体中の多糖類含有量は0.0001〜30重量%の範囲が好ましい。この含有量が少な過ぎると、多糖類によるゲル化効果が十分発揮されない。また含有量が多すぎると、組成物中に多糖類のゲルが多く残り、低粘度の組成物を得ることができない。
【0049】
外力を加える手段としては、振動、剪断、撹拌、圧縮、粉砕などを例示することができる。液体に外力を加えることから、撹拌が好ましい。撹拌装置としては、例えばマグネティックスターラー・メカニカルスターラー・ミキサー・シェーカー・ローター等の撹拌機器を用いることができる。撹拌に伴って熱を発生せず、しかも該組成物に大きな外力を均等に与えることができることから、メカニカルスターラーが好ましい。メカニカルスターラーの好ましい回転数は1000rpm以下である。
【0050】
「水媒体に溶解した多糖類を外力を加えながらゲル転移温度以下に冷却して微粒子状多糖類を得る工程」においては、公知例に記載されている方法に従えばよい。例えば特許文献3に記載の方法のように、水媒体に溶解した多糖類を外力を加えながらゲル転移温度以下の温度に所定冷却速度かつ所定冷却速度ばらつきの範囲内で冷却することで多糖類の一部もしくは全部が微粒子状であって、水媒体中に一様に分散した組成物を得ることができる。ここで、冷却すべきゲル転移温度以下の温度は、好ましくは室温近辺、例えば15〜30℃の範囲から選ばれる。このように該組成物を室温付近まで冷却することにより一定品質の組成物を安定的に得ることができる。冷却すべき温度は、ゲル転移温度以下であれば微視的には部分的にゲル化が起こり得るが、高すぎるとその温度から室温近辺への温度降下過程で多糖類の一部が不均一にゲル化し、逆に低すぎると多糖類の分子運動が拘束されて組成物の粘度が上昇してしまう。
【0051】
水媒体に溶解した多糖類を冷却する工程でも外力を加える。冷却に伴ってゲル化が進行し多糖類含有水媒体の粘度は温度低下に伴って増加するが、この粘度に抗して組成物に外力を加える。この工程における外力付与手段は、加熱工程の外力付与手段について説明したものであってよい。外力の付与がないと組成物はゲル化し、ゲル化後に外力を付与してもゲルが均一な組成物にはならず、一定品質の組成物が得られない。
【0052】
冷却手段としては、空冷・水冷・氷冷・溶媒冷・風冷などを挙げることができる。用いる多糖類の性状に応じて、あるいは得ようとする組成物の性状に応じて適宜選択されてよいが、通常は空冷・水冷等が行われる。なお、組成物の温度がゲル転移温度以下、好ましくはゲル転移温度20℃以下、さらに好ましくは室温(30℃以下)に達した後も、組成物のゲル化が生じないように剪断を加え続けることが好ましい。
【0053】
「微粒子状多糖類を含有した水分散体に電離性放射線を照射する工程」においては、水媒体中で微粒子状の多糖類に電離性放射線を照射する。この工程により、高温で加熱しても多糖類からなる微粒子状ゲルが溶解せず、粒子状の形態を保持する性質を付与することができる。このような性質を付与する方法として電離性放射線を照射する方法以外に、架橋剤や反応性樹脂等を加える化学的な方法を挙げることができる。
【0054】
例えば、特開平8−27277号公報には、水溶性多糖類と反応性樹脂が溶解した溶液を噴霧乾燥することで微粒子化し、得られた微粒子を熱処理することで化学的に架橋させ、水に不溶な多糖類含有微粒子の製造方法が記載されている。また、特開2005−82527号公報には、水媒体中に多糖類を溶解した後、該加熱溶液を外力を加えながら冷却する工程において架橋剤を加えることで多糖類を化学的に架橋させる製造方法について記載されている。しかし、このような化学的方法は開始剤や架橋剤などを加えているため、これらが製品の特性や生体適合性の観点から望ましくない問題の原因となることがある。そのため、開始剤や架橋剤などを必要としない電離性放射線照射による方法が好ましい。
【0055】
一般に、放射線には電離性放射線と非電離性放射線がある。電離性放射線として、γ線・電子線・X線・β線あるいはα線などを挙げることができる。一方、非電離性放射線には紫外線や可視光線などがある。非電離性放射線は電離能力が非常に弱い。そのため、反応効率の観点から電離性放射線を使用することが好ましい。より好ましくはγ線照射や電子線照射である。特に好ましくは、経済性、反応効率が優れた電子線照射である。
【0056】
γ線は電子線と比較して透過力が大きいので、厚みのある試料を照射する場合に適した線源である。またγ線が透過する限りにおいて、試料収納に使用する容器の種類が制限されないという利点がある。例えば、大型のドラム缶やステンレス容器に大量の試料を入れて照射することも可能であり、大量に照射処理することができる。γ線照射には、セシウム137を使用した照射とコバルト60を使用した照射がある。セシウム137はコバルト60に比して、照射効率が劣るため、好ましいγ線照射はコバルト60を使用したγ線照射である。
【0057】
一方、電子線は、γ線のようにコバルト60やセシウム137のような放射性同位元素を使用しない。また、遮蔽装置も比較的簡易な物で良い、γ線に比べて照射処理能力が大きい等の特徴を有し、安全面や作業面で好ましい線源である。
【0058】
γ線や電子線照射をコントロールする因子は、γ線については線量、電子線については線量と照射電圧である。線量とは、照射される物質1Kgあたり1ジュールのエネルギー吸収があることを意味する。単位はGy(グレイ)で表される。照射電圧は照射する組成物への浸透深さと関連があり、電圧を上昇させると浸透深さが深くなることを意味する。橋架け反応に必要な線量は1kGy以上で300kGy程度まで可能であるが、望ましくは2〜50kGyである。線量が上記範囲未満では架橋が不十分であり、上記範囲超では分解反応が進む可能性がある。
【0059】
電子線は照射電圧に応じて透過力が異なるものの、一般にγ線に比して透過力が小さい。このため、使用する電子線の透過力(電子線のエネルギー)に応じて試料の厚みを調整することが好ましい。例えば、10MeV程度の高エネルギーの電子線は試料の厚さ数mm〜3cm程度のものを均一に照射することが可能であるのに対し、1MeV以下の低エネルギーの電子線は試料の厚さ3mm程度までしか均一に照射することができない。
【0060】
第三の発明は、(3)第1の発明に記載の多糖類微粒子状ゲル含有水分散体を用いた多糖類微粒子状ゲル含有保湿剤であって、実質的に多糖類からなる微粒子状ゲルを0.01〜5重量%含有し、該微粒子状ゲルの平均粒子径が1μm〜200μmであり、さらに、該微粒子状ゲルは水媒体中で95℃、30分間の加熱後も形態が保たれてなることを特徴とする多糖類微粒子状ゲル含有保湿剤に関するものである。
【0061】
本発明の多糖類微粒子状ゲルは、例えば、軟膏・クリーム・ローションといった携帯を有する保湿剤中に包含することができる。本発明における多糖類微粒子状ゲルは加熱滅菌が可能であり、また、高濃度で配合しても、ベタツキの発生を抑えることができ、使用感に優れる。さらに、微粒子状ゲルそれ自身が高い保水性を有するために、高濃度で配合することによって保湿能を大きく向上させることができる。上記多糖類微粒子状ゲルの含有量は、保湿剤全体に対して、0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。配合量が0.001重量%未満の場合には、その効果が十分に発揮されない。また、10重量%を超えて配合すると、得られる保湿剤の使用感が悪くなる。
【0062】
また、該多糖類微粒子状ゲルは、その平均粒子径が0.1μm〜500μmのものが好ましく、より好ましくは1μm〜300μmである。特に好ましくは、1μm〜200μmである。平均粒子径が500μmである大きい微粒子状ゲルが保湿剤中に存在した場合、保存安定性に悪影響を及ぼす。また、皮膚に塗布したときに異物感を与えてしまう。
【0063】
本発明の多糖類微粒子状ゲル含有保湿剤は、保湿剤の種類や目的に合わせて、任意成分として、下記の成分を適宜配合することができる。
【0064】
例えば、ソルビン酸、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸アルキル等の防腐剤、クロロブタノール、塩化ナトリウム・塩化マグネシウム・硫酸ナトリウム、グリセリン・プロピレングリコール・キシリトール、プロリン・セリン・グリシン等の保湿成分が挙げられる。安全性・安定性および価格等の観点からグリセリン、プロピレングリコール、パラオキシ安息香酸メチル・パラオキシ安息香酸エチルが好ましい。また、多糖類との親和性が良好であり、かつ、メタノールやエタノールといったアルコールと共存させることにより分散性に優れ、添加剤としての効果を十分に発揮できることからグリセリン、パラオキシ安息香酸メチルを特に好適に用いることができる。
【0065】
第四の発明は、(4)第一の発明に記載の多糖類微粒子状ゲル含有水分散体を用いた多糖類微粒子状ゲル含有眼科用組成物であって、実質的に多糖類からなる微粒子状ゲルを0.0001〜1重量%含有し、該微粒子状ゲルの平均粒子径が0.1μm〜100μmであり、さらに、該微粒子状ゲルは水媒体中で95℃、30分間の加熱後も形態が保たれてなることを特徴とする多糖類微粒子状ゲル含有眼科用組成物を含有してなる眼科用組成物に関するものである。
【0066】
本発明の眼科用組成物は、具体的には点眼剤の製品として用いることができる。加えて,コンタクトレンズ用浸漬液に本発明の眼科用組成物を用いた場合,コンタクトレンズに該組成物が付着した状態で目に装着でき,眼球表面の涙液層を長時間安定化し、涙液層を滑らかに保つことができることから,ドライアイを防止することができる。
【0067】
本発明の眼科用組成物は対象疾病に関して制約はなく、例えばドライアイ症候群・緑内障・白内障・炎症・花粉症等の治療に適した薬剤を含有させることにより、各疾病に対して有効に作用する。薬剤が有効に作用する理由は明らかにされていないが,多糖類からなる微粒子状ゲルが,薬剤を微粒子の内部あるいは表面近傍に包含し,眼内において効率的かつ持続的な徐放効果を発揮するためであると推測する。
【0068】
本発明の点眼剤に配合できる薬物の種類は特に限定されないが、例えば抗菌剤(キノロン系抗菌剤、セファロスポリン類、スルファセタミドナトリウム、スルファメトキサゾール等)、抗炎症剤(ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、プレゾニゾロン、ベタメタゾン、ジクロフェナック、インドメタシン、フルオロメトロン、プラノプロフェン、グリチルリチン酸二カリウム、イプシロン-アミノカプロン酸等)、抗ヒスタミン剤(マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン等)、抗緑内障剤(プロスタグランジン誘導体、炭酸脱水酵素阻害剤など)、抗アレルギー剤(クロモグリク酸ナトリウム等)等などが挙げられる。
【0069】
また、免疫抑制剤および代謝拮抗剤としてメソトレキセート、シクロホスファミド、シクロスポリン、6−メルカプトプリン、アザチオプリン、フルオロウラシルおよびテガフールなどが挙げられ、さらに上記化合物の混合剤、例えば硫酸ネオマイシンおよびリン酸デキサメタゾンナトリウムの組み合わせのような抗生物質/抗炎症剤混合物等の混合物などが挙げられるが、目の症状および病巣の治療に他の薬剤を使用することもできる。
【0070】
薬物の添加量は、0.001〜10重量%であることが好ましいが、治療効果が発現する濃度であれば、特に限定されない。
【0071】
本発明の点眼剤には、上記成分以外に、他の添加物として、等張化剤、緩衝剤、pH調節剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤等を適宜配合することができる。
【0072】
等張化剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ソルビトール、マンニトール等を挙げることができる。
【0073】
緩衝剤としては例えば、リン酸、リン酸塩、クエン酸、酢酸、ε-アミノカプロン酸、トロメタモール等を挙げることができる。
【0074】
pH調節剤としては、例えば塩酸、クエン酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ酸、ホウ砂、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0075】
薬物や他の添加物が水難溶性の場合などに添加される可溶化剤としては、例えばポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、マクロゴール4000等を挙げることができる。
【0076】
安定化剤としては、例えばエデト酸、エデト酸ナトリウム等を挙げることができる。
保存剤としては、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられ、これらの保存剤を組み合わせて使用することもできる。
【0077】
本発明の多糖類微粒子状ゲルを含有してなる眼科用組成物中の多糖類微粒子状ゲルの含有量は、0.0001重量%〜1重量%であることが好ましい。さらに好ましくは0.005重量%〜0.5wt%である。特に好ましくは0.01重量%〜0.1wt%である。多糖類微粒子状ゲルの含有量が0.0001重量%未満であると、所望の効果が十分に発揮されず、また、1重量%を超えると眼球表面への組成物の広がりや浸透が悪化し、眼科用途に用いる場合には差し心地感が悪くなる。
【0078】
また、本発明の眼科用組成物に用いられる該多糖類微粒子状ゲルの平均粒子径は0.1μm〜100μmのものが好ましく、より好ましくは1μm〜30μmである。特に好ましくは、1μm〜10μmである。平均粒子径が100μmである大きい微粒子状ゲルが眼科用組成物中に存在すると、点眼時に異物感を生じる、あるいは、組成物の保存安定性に悪影響を及ぼす等の問題が生じる。
【0079】
本発明の眼科用組成物の粘度は、0.1〜30mPa・sとなるように調整することが好ましい。さらに好ましくは、0.5〜20mPa・sである。特に好ましくは1〜10mPa・sである。粘度が30mPa・sを超えると眼科用途に用いる場合には差し心地感が悪くなる。
【0080】
本発明の眼科用組成物に含まれる多糖類の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が1〜100万であることが好ましい。より好ましくは2〜30万である。特に好ましくは3〜10万である。重量平均分子量が100万を超えると眼科用組成物を低粘度に保つことが困難になる。また、多糖類の重量平均分子量が1万以下であると、所望の効果を十分に発揮することができない。
【実施例】
【0081】
以下に本発明の実施例を示すが、これらは本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。なお、配合量の数値は、特に記載しない限りは「重量%」を意味する。
【0082】
実施例1
1.製造方法
1.1.加熱・冷却工程
成分(メーカー、製品名) 配合量
寒天(伊那食品工業製、AX−30) 0.5
蒸留水(大塚製薬、注射用蒸留水) 99.5
密閉容器に寒天を秤量し、そこに蒸留水を加えて分散させた。その後、この密閉容器を100℃に設定したオイルバスに浸漬し、メカニカルスターラー(型式:BL−600、HEIDON社製)を用いて回転速度700rpmのもと30分間攪拌し、寒天を蒸留水に溶解させた。その後、フラスコをオイルバスから引き上げ、メカニカルスターラーを用いて回転速度700rpmのもと攪拌しながら室温で210分間放冷し、微粒子状寒天を含有した水分散体を調整した。
【0083】
1.2.放射線照射工程
1.1で調整した微粒子状寒天を含有した水分散体を10ml採取し、密封容器中に入れ、25kGyの線量でγ線を照射した。
【0084】
2.耐熱性評価試験
1.2で照射を行った微粒子状寒天を含有した水分散体において、微粒子状ゲルを均一に分散させた後、プラスチックチューブに5ml採取した。加熱前に、この分散体を光学顕微鏡(ニコン社製 OPTIPHOTO−2)で観察した後、カメラで撮影した。次いで、このプラスチックチューブをアルミブロック恒温漕(TAITEC社製 TAH−1G)に入れ、95℃のもとで30分間加熱した。その後、プラスチックチューブを恒温漕から取り出し、光学顕微鏡(ニコン社製 OPTIPHOTO−2)で観察した後、カメラで撮影した。
【0085】
実施例2
放射線照射工程1.2において、1.1で調整した微粒子状寒天を含有した水分散体を10ml採取し、密封容器中に厚みが5mmになるように入れ、照射電圧を5MeVとし、25kGyの線量で電子線を照射した以外、実施例1と同じ操作を行った。
【0086】
実施例3
放射線照射工程1.2において、1.1で調整した寒天微粒子状ゲル含有水分散体を10ml採取し、密封容器中に厚みが5mmになるように入れ、照射電圧を5MeVとし、100kGyの線量で電子線を照射した以外、実施例1と同じ操作を行った。
【0087】
実施例4
高圧蒸気滅菌試験を行った以外、実施例1と同じ操作を行った。
【0088】
高圧蒸気滅菌試験
1.2で照射を行った微粒子状寒天を含有した水分散体において、微粒子状ゲルを均一に分散させた後、ガラス製の三角フラスコに入れ、アルミホイルをかぶせた。加熱前に、この分散体を光学顕微鏡(ニコン社製 OPTIPHOTO−2)で観察した後、カメラで撮影した。次いで、三角フラスコを高圧蒸気滅菌装置(トミー精工社製、LSX−500)に入れ、121℃のもとで20分間加熱した。その後、三角フラスコを装置から取り出し、光学顕微鏡(ニコン社製 OPTIPHOTO−2)で観察した後、カメラで撮影した。
【0089】
比較例1
1.製造方法
1.1.加熱・冷却工程
成分(メーカー、製品名) 配合量
寒天(伊那食品工業製、AX−30) 0.5
蒸留水(大塚製薬、注射用蒸留水) 99.5
密閉容器に寒天を秤量し、そこに蒸留水を加えて分散させた。その後、この密閉容器を100℃に設定したオイルバスに浸漬し、メカニカルスターラー(型式:BL−600、HEIDON社製)を用いて回転速度700rpmのもと30分間攪拌し、寒天を蒸留水に溶解させた。その後、フラスコをオイルバスから引き上げ、メカニカルスターラーを用いて回転速度700rpmのもと攪拌しながら室温で210分間放冷し、微粒子状寒天を含有した水分散体を調整した。
【0090】
2.耐熱性評価試験
1.1で調整した微粒子状寒天を含有した水分散体において、分散体中に微粒子状ゲルを均一に分散させた後、プラスチックチューブに5ml採取した。加熱前に、この分散体を光学顕微鏡(ニコン社製 OPTIPHOTO−2)で観察した後、カメラで撮影した。次いで、このプラスチックチューブをアルミブロック恒温漕(TAITEC社製 TAH−1G)に入れ、95℃のもとで30分間加熱した。その後、プラスチックチューブを恒温漕から取り出し、光学顕微鏡(ニコン社製 OPTIPHOTO−2)で観察した後、カメラで撮影した。
【0091】
実施例1〜4および比較例1における、加熱前および加熱後の分散体の画像を図1〜10に示す。なお、画像は、画像解析ソフトにて微粒子状ゲルのみを表示させた。図中の白い点が微粒子状ゲルを表わす。実施例1〜4および比較例1との比較より、実施例では明らかに加熱後においても微粒子状ゲルが溶解せず、微粒子状の形態を保持していることがわかる。このことより、高温で加熱を行っても微粒子状ゲルが溶解することがなく、調整時の形態を保持した組成物を得ることができることが示された。
【0092】
実施例5(γ線照射微粒子状寒天含有保湿剤の調整)
以下の処方によりγ線照射微粒子状寒天含有保湿剤を調整した。先ずグリセリン10.0重量%、実施例1にて作成した微粒子状寒天ゲルを凍結乾燥することにより得た微粒子状寒天粉末1.0重量%および蒸留水82.9重量%を加熱溶解し70℃に保った(成分A)。その後、エタノール7.0重量%にパラオキシ安息香酸メチル0.1重量%を溶解したものを成分Aに加え、室温まで放冷することでγ線照射微粒子状寒天含有保湿剤を得た。
【0093】
比較例2(微粒子状寒天含有保湿剤の調整)
以下の処方により微粒子状寒天含有保湿剤を調整した。先ずグリセリン10.0重量%、比較例1にて作成した微粒子状寒天ゲルを凍結乾燥することにより得た微粒子状寒天粉末1.0重量%および蒸留水82.9重量%を加熱溶解し70℃に保った(成分B)。その後、エタノール7.0重量%にパラオキシ安息香酸メチル0.1重量%を溶解したものを成分Bに加え、室温まで放冷することで微粒子状寒天含有保湿剤を得た。
【0094】
比較例3(保湿剤の調整)
表3に示す処方により保湿剤を調整した。先ず(1)グリセリン11.0重量%を(4)蒸留水82.9重量%に溶解させた後(成分C)、(2)エタノール7.0重量%に(3)パラオキシ安息香酸メチル0.1重量%を溶解したものを成分Cに加え、保湿剤を得た。
【0095】
「評価(1):肌のなめらかさ」
使用中及び使用後の肌のなめらかさを専門パネラー10名により実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
A:専門パネラー8名以上が使用中及び使用後肌がなめらかであると認めた。
B:専門パネラー6名以上8名未満が使用中及び使用後肌がなめらかであると認めた。
C:専門パネラー3名以上6名未満が使用中及び使用後肌がなめらかであると認めた。
D:専門パネラー3名未満が使用中及び使用後肌がなめらかであると認めた。
【0096】
「評価(2):肌のべたつきのなさ」
使用中及び使用後の肌へのべたつきのなさを専門パネラー10名により実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
A:専門パネラー8名以上が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
B:専門パネラー6名以上8名未満が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
C:専門パネラー3名以上6名未満が使用中及び使用後肌肌へのべたつきがないと認めた。
D:専門パネラー3名未満が使用中及び使用後肌へのべたつきがないと認めた。
【0097】
「評価(3):保湿効果の測定」
女性健常人の上腕内側部をエタノールで清拭後、実施例5および比較例2、3にて調整した保湿剤0.5gを半径3cmの領域に塗布した後、60分間経過した時点での当該部のコンダクタンスを、それぞれ表面抵抗測定計(シルテック社製、SLT-YKH4101)を用い、温度25℃、相対湿度40%の室内で測定した。このとき、実施例5および比較例2、3にて調整した保湿剤を塗布する前の皮膚のコンダクタンスはすべて同様の値を示した。また、測定値は被験者5名の平均値とした。得られたコンダクタンス測定結果にもとづき、4段階で評価を行った。評価基準を以下に示す。
A:顕著に保湿効果がある。(1800μs以上)
B:保湿効果がある。(1400μs以上1800μs未満)
C:あまり保湿効果は認められない。(1000μs以上1400μs未満)
D:保湿効果は認められない。(1000μs未満)
評価1、評価2および評価3の結果を表1に示す。表1の結果から、本発明の微粒子状寒天ゲルを配合した保湿剤は、皮膚に塗布したときのなめらかさ、保湿効果に関して、比較例3よりも優れた性質を有することが確認された。また、比較例2との比較から、本発明の微粒子状寒天ゲルを配合した保湿剤は、べたつきが発生せず、取り扱いに優れたものであり、かつ、高い保湿効果を示すことが示された。
【0098】
【表1】

【0099】
実施例6(γ線照射微粒子状寒天含有点眼剤の調整)
以下の処方により微粒子状寒天含有点眼剤を調整した。まず、実施例1にて作成した微粒子状寒天ゲルを凍結乾燥することにより得た微粒子状寒天粉末0.01重量部、滅菌精製水97.4重量部を加熱溶解し、40℃に保った(成分A)。その後、塩酸ピロカルピン0.01重量部とグリセリン2.6重量部を成分Aに加え、5分間攪拌を行った。その後、0.1N水酸化ナトリウムまたは0.1N希塩酸を加えてPHを7.0に調整し、室温まで放冷して微粒子状寒天含有点眼剤を得た。
【0100】
比較例4(微粒子状寒天含有点眼剤の調整)
以下の処方により微粒子状寒天含有点眼剤を調整した。まず、比較例1にて作成した微粒子状寒天ゲルを凍結乾燥することにより得た微粒子状寒天粉末0.01重量部、滅菌精製水97.4重量部を加熱溶解し、40℃に保った(成分A)。その後、塩酸ピロカルピン0.01重量部とグリセリン2.6重量部を成分Aに加え、5分間攪拌を行った。その後、0.1N水酸化ナトリウムまたは0.1N希塩酸を加えてPHを7.0に調整し、室温まで放冷して微粒子状寒天含有点眼剤を得た。
【0101】
「評価(4):粘度測定」
最初に、実施例6、比較例4で調整した点眼剤をそれぞれガラス瓶に適量採取し、点眼剤の粘度をB型粘度計(東京計器社製)を用い、20℃・60rpmの条件下で測定した。なお、ローターはNo.2を用いた。次に、上記点眼剤をガラス製の三角フラスコに入れ、アルミホイルをかぶせた。次いで、三角フラスコを高圧蒸気滅菌装置(トミー精工社製、LSX−500)に入れ、121℃のもとで20分間加熱した。その後、室温まで放冷し、三角フラスコを装置から取り出した。次いで、三角フラスコからそれぞれガラス瓶に適量採取し、点眼剤の粘度をB型粘度計(東京計器社製)を用い、20℃・60rpmの条件下で測定した。なお、ローターはNo.2を用いた。
【0102】
上記操作を4回行い、高圧蒸気滅菌前後の粘度の平均値,標準偏差を算出した。
実施例6および比較例4における、粘度の測定値を表2に示す。表2の結果より、実施例6では比較例4と比べて、高圧蒸気滅菌後も滅菌前の物性を維持していることが示された。
【0103】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施例1で得た寒天微粒子状ゲル含有水分散体の加熱前の光学顕微鏡写真
【図2】実施例1で得た寒天微粒子状ゲル含有水分散体の加熱後の光学顕微鏡写真
【図3】実施例2で得た寒天微粒子状ゲル含有水分散体の加熱前の光学顕微鏡写真
【図4】実施例2で得た寒天微粒子状ゲル含有水分散体の加熱後の光学顕微鏡写真
【図5】実施例3で得た寒天微粒子状ゲル含有水分散体の加熱前の光学顕微鏡写真
【図6】実施例3で得た寒天微粒子状ゲル含有水分散体の加熱後の光学顕微鏡写真
【図7】実施例4で得た寒天微粒子状ゲル含有水分散体の加熱前の光学顕微鏡写真
【図8】実施例4で得た寒天微粒子状ゲル含有水分散体の加熱後の光学顕微鏡写真
【図9】比較例1で得た寒天微粒子状ゲル含有水分散体の加熱前の光学顕微鏡写真
【図10】比較例1で得た寒天微粒子状ゲル含有水分散体の加熱後の光学顕微鏡写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に多糖類からなる微粒子状ゲルを含有し、該微粒子状ゲルは水媒体中で95℃、30分間の加熱後も形態が保たれてなることを特徴とする多糖類微粒子状ゲル含有水分散体。
【請求項2】
前項微粒子状ゲルは、水媒体中の多糖類に電離性放射線を照射することによって得られることを特徴とする請求項1に記載の多糖類微粒子状ゲル含有水分散体。
【請求項3】
前項水媒体中の多糖類が微粒子状であることを特徴とする請求項2に記載の多糖類微粒子状ゲル含有水分散体。
【請求項4】
電離性放射線が、γ線又は電子線であることを特徴とする請求項2または3に記載の多糖類微粒子状ゲル含有水分散体。
【請求項5】
多糖類微粒子状ゲル含有水分散体の製造方法において、多糖類と水媒体からなり、該多糖類のゲル転移温度以上に加熱して多糖類を水媒体に溶解させる工程、該水媒体に溶解した多糖類を外力を加えながらゲル転移温度以下に冷却して微粒子状多糖類を得る工程、該微粒子状多糖類を含有した水分散体に電離性放射線を照射する工程を含むことを特徴とする多糖類微粒子状ゲル含有水分散体の製造方法。
【請求項6】
電離性放射線が、γ線又は電子線であることを特徴とする請求項5記載の多糖類微粒子状ゲル含有水分散体の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の多糖類微粒子状ゲル含有水分散体を用いた多糖類微粒子状ゲル含有保湿剤であって、実質的に多糖類からなる微粒子状ゲルを0.01〜5重量%含有し、該微粒子状ゲルの平均粒子径が1μm〜200μmであることを特徴とする多糖類微粒子状ゲル含有保湿剤。
【請求項8】
グリセリン、パラオキシ安息香酸アルキル(ただし、アルキル基は炭素数1または2)から選ばれてなる少なくとも一つの添加剤が添加されてなる請求項7記載の多糖類微粒子状ゲル含有保湿剤。
【請求項9】
請求項1記載の多糖類微粒子状ゲル含有水分散体を用いた多糖類微粒子状ゲル含有眼科用組成物であって、実質的に多糖類からなる微粒子状ゲルを0.0001〜1重量%含有し、該微粒子状ゲルの平均粒子径が0.1μm〜100μmであることを特徴とする多糖類微粒子状ゲル含有眼科用組成物。
【請求項10】
請求項9記載の多糖類微粒子状ゲル含有眼科用組成物を含有してなる点眼剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−30978(P2010−30978A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309491(P2008−309491)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】