説明

多糖類誘導体およびその製法および使用

本発明の対象は、生体多糖類骨格およびこれとエーテル架橋を介して結合する分子量<5000を有する有機基とからなる多糖類誘導体である。有機基が一般式(Ia)または(Ib)を有する。生体多糖類−成分として有利にα−またはβ−(1,4)−および/またはα−またはβ−(1,3)−グルカン−単位、例えばキシログルカン、グルコマンナン、例えばガーゴムまたはイナゴマメゴム、キサンタンゴム、カラジーナン、アルギネートおよびペクチンを使用する。同様に、本発明はこの多糖類誘導体の製法を包含し、この製法においては生体多糖類−成分をN−(C〜C24)−アルキルマレアミド酸またはその塩と塩基触媒により反応させる。更に、この多糖類誘導体のセルロース繊維への結合のための使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、有機基と結合する生体多糖類誘導体、その製法およびその使用に関する。
【0002】
特別な側鎖、特にセルロース支持体に結合可能である側鎖を有する多糖類は技術水準から長期にわたって公知である。
【0003】
こうして、例えば国際特許出願WO99/36469は、多糖類がセルロースに結合することを可能にする、分子量少なくとも5000を有する基に結合している、多糖類−主鎖からなる多糖類−複合体が記載されている。
【0004】
この関連において、天然に存在する多糖類、例えばエンドウマメ−またはタマリンド−種子からのキシログルカンの、多糖類−多糖類−相互作用を介してセルロースに結合する特性は十分に知られている。この結合タイプは特に植物細胞壁から公知であるが、例えば製紙産業および繊維産業においてセルロース繊維に特別な特性を付与するためにも使用される。
【0005】
天然の多糖類の比較的大きな側基での誘導体化の他にも、生体ポリマーをカルボニル基を有する低分子量の基を用いて誘導体化することも試みられた。
【0006】
US−特許3297604号明細書はガラクトース−単位を酸化した形で含有するポリマー−組成物を記載しており、この際このカルボニル基はシアンヒドリン、ジサルファイト付加化合物、オキシムまたはヒドラゾンの形成下に反応する。この文献中に記載されている組成物はポリマー、例えばガーゴム、イナゴマメゴム、および特にセルロースの架橋のためにも使用することができる。
【0007】
ハヤシ等の刊行物(Plant Physiol. 1978, 83, 384-389中の“Pea Xyloglucan and Cellulose”)は、エンドウマメキシログルカンのセルロースへの結合挙動に関する研究を記載しており、この際キシログルカンをCNBrおよびフルオレセインアミンで処理した。従来と同様、この刊行物に記載した基はそれまでにも多糖類と結合された最も小さい分子単位である。
【0008】
従来の技術水準に基づいて、生体多糖類骨格およびこれと結合する有機基とからなり、この有機基がセルロース単位に結合することを可能とする、多糖類誘導体であって、特に生分解性であり、こうして特に産業上の観点から従来公知のセルロース繊維の処理剤に対して、生態学的および経済的に有意義な新たな可能性を提供する多糖類誘導体を製造するという本発明の課題が設定された。
【0009】
この新規多糖類誘導体は、できるだけ簡単な方法でかつ生態学的に問題のない出発化合物を使用して製造可能であり、特に環境に影響を受ける適用分野のために好適であることが必要である。
【0010】
この課題は、生体多糖類骨格およびこれとエーテル架橋を介して結合する分子量<5000を有する有機基とからなる多糖類誘導体により解決した。
【0011】
本発明による多糖類誘導体が、従来の著しく環境に調和する出発物質から簡単な方法で製造することができるべきであるという課題設定に適合するだけでなく、この多糖類誘導体は、分子量少なくとも5000の適した有機基を有する多糖類化合物にのみ公知であった、セルロース繊維への複合体化のためにも著しく好適であることが意外にも確認された。従来公知の多糖類誘導体とは異なり、本発明による多糖類誘導体はセルロース性繊維織物の処理の際に生じる立体的問題を回避する。
【0012】
更に、生体多糖類骨格と架橋した有機基は相当する簡単な後処理法により、種々の異なる顕著な特性に変化させることができ、このことは提案する多糖類誘導体の使用分野を更に拡張する。
【0013】
本発明において、有機基が分子量200〜4000であるのが有利である。有機基は有利に少なくとも1つのカルボン酸(塩)−またはカルボン酸エステル基および/または少なくとも1つのカルボン酸アミド基、特にカルボン酸−C〜C24−アルキルアミド基を含有する。カルボン酸(塩)−または−エステル基にまたはカルボン酸アミド基にα−位で、生体多糖類にエーテル架橋を介して結合している有機基が、特に有利である。一般式(Ia)または(Ib)
【0014】
【化1】

[式中、RはC〜C24−アルキル基である]を有する有機基が特に有利である。その際、この基Rは特に天然の脂肪酸基を表し、かつ場合により1つ以上の二重結合を有していてよい。R′はH、C〜C30−アルキル基またはカチオン、例えば金属(例えば、Na、K等)、アンモニウム基または有機カチオンを表す。
【0015】
本発明においては、生体多糖類−成分とは、これが有利にα−またはβ−(1,4)−および/またはα−またはβ−(1,3)−グルカン−単位からなり、特に有利には生体多糖類がグルカン、マンナンおよび/またはキシラン−単位、および殊に有利にはグルコース、マンノース、キシロース、ガラクトース、グルロン酸、マンヌロン酸および/またはガラクツロン酸−単位からなる。
【0016】
記号−Oは生体多糖類−成分の骨格から由来するO−原子を表す。
【0017】
本発明において生体多糖類骨格として、キシログルカン、グルコマンナン、マンナン、ガラクトマンナン、α−またはβ−(1,3),(1,4)−グルカン、グルクロン−、アラビノ−およびグルクロノアラビノキシランおよび特にガーゴム、イナゴマメゴム、キサンタンゴム、カラジーナン、アルギネート、ペクチン、デンプン、セルロースおよびその任意の誘導体、例えばメチル−、カルボキシメチル−、ヒドロキシアルキル−エチレングリコール−および/またはプロピレングリコール誘導体を有する、多糖類誘導体は生分解性に関して特に良好な特性を有している。
【0018】
特に、骨格としてヒドロコロイド、例えばガラクトマンナンを含有する多糖類誘導体は驚くほど迅速にかつ効果的にセルロース単位に結合する。
【0019】
全体としては、本発明の範囲において生体多糖類−成分は全く制限されないが、最小でも鎖長が糖単位4個を有するものを選択することが推奨される。
【0020】
単糖類単位あたりの有機基の数は本発明の範囲において広範囲で変化させることができ、有利に0.01〜4である。
【0021】
多糖類誘導体と共に、本発明はその製法も請求しており、その際生体多糖類を有機基を導入するために好適な試薬、有利にN−アルキルマレアミド酸またはその塩と塩基触媒により反応させる。その際、マレアミド酸は炭素原子6〜24個を有するアルキル基を有するべきである。他の好適な試薬は、生体多糖類のOH−基とエーテル結合を形成下に反応することのできるC=C−二重結合を有する有機化合物、例えばアクリル酸およびその誘導体である。
【0022】
本発明において、N−アルキルマレアミドが一般式R−NH(式中、R=C〜C24−アルキル)の脂肪酸アミンとマレイン酸無水物とから得られたのが有利である。
【0023】
本発明は、生体多糖類との本来の反応前にマレアミド−成分がマレイミド−誘導体に環化された変法も包含する。
【0024】
選択的に、マレアミド−成分を本発明に相応して多糖類と反応させた後に、スクシンイミド−誘導体に環化することもできる。
【0025】
更に、本発明はマレアミド−成分のカルボン酸官能基がエステル化される変法も包含し、このためにはアルコールR′OH(R′=C〜C30−アルキル)が特に推奨される。このエステル化工程は生体多糖類との反応の前にも後にも実施することができる。
【0026】
所望の品質で多糖類誘導体を獲得するために、生体多糖類骨格への有機基の付加を実施した後に、多糖類誘導体を沈殿させることができるが、このためには有利に鉱酸、例えば希塩酸を使用する。
【0027】
記載された、アミンとマレイン酸無水物とからのN−置換マレアミド酸およびマレイミドの製造は基本的に公知の合成法により実施され、これは例えばOrganic Synthesis, Coll. 第IV巻, p 944から公知である。マレアミド酸エステルまたはマレアミドへのアルコールの付加は、例えばR. A. Finneganおよび W. H. Mueller, J. Pharm. Sci. 1965, 54, 1257-1260から公知である。
【0028】
同様に、本発明はセルロース繊維への結合のために本発明による多糖類誘導体を使用することを包含する。有利に本発明の範囲においては繊維処理のための使用および特に有利に生分解性の柔軟剤としての使用が実施される。
【0029】
総括すると、本発明の中心は多糖類誘導体であり、これは骨格としてα−またはβ−(1,4)−および/またはα−またはβ−(1,3)−グルカン−単位を有する生体多糖類を有し、かつこれはエーテル架橋を介して分子量<5000を有する有機基と結合している。生体多糖類も特にこれと結合する有機基も、天然に存在する化合物もしくは毒物学的に問題ない化合物であるので、本発明による多糖類誘導体は容易に生分解可能な生成物を形成し、特に生態学的観点から産業における使用分野、例えば繊維処理および繊維加工においても全く問題を引き起こさない。
【0030】
以下の実施例は、本発明の利点を明らかにし、特に請求した多糖類誘導体の製造に関する利点を明らかにする。
【0031】

マレイン酸無水物4.0gおよびオクタデシルアミン10.8gをDMSO40ml中に溶かし、80℃で1時間撹拌した。次いで、この混合物にゆっくりと水酸化カリウム6.0gを添加し撹拌下に溶かした。この溶液にガーゴム4.9gを添加し、この混合物を撹拌下に120℃で1時間加熱した。次いで生成物を室温に冷却し、生成物を希塩酸およびエタノールで中和し、沈殿させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体多糖類骨格およびこれとエーテル架橋を介して結合する分子量<5000を有する有機基とからなる多糖類誘導体。
【請求項2】
有機基が一般式(Ia)または(Ib)
【化1】

[式中、RはC〜C24−アルキル基であり、R′はH、C〜C30−アルキル基またはカチオンを表す]を有する、請求項1記載の多糖類誘導体。
【請求項3】
生体多糖類がα−またはβ−(1,4)−および/またはα−またはβ−(1,3)−グルカン−単位からなる、請求項1または2記載の多糖類誘導体。
【請求項4】
生体多糖類がグルコース、マンノース、キシロース、ガラクトース、グルロン酸、マンヌロン酸および/またはガラクツロン酸−単位を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の多糖類誘導体。
【請求項5】
生体多糖類がキシログルカン、グルコマンナン、マンナン、ガラクトマンナン、α−またはβ−(1,3),(1,4)−グルカン、グルクロン−、アラビノ−およびグルクロノアラビノキシランおよび特にガーゴム、イナゴマメゴム、キサンタンゴム、カラジーナン、アルギネート、ペクチン、デンプン、セルロースおよびその誘導体である、請求項1から4までのいずれか1項記載の多糖類誘導体。
【請求項6】
多糖類とN−(C〜C24)−アルキルマレアミド酸またはその塩とを塩基触媒により反応させる、請求項1から5までのいずれか1項記載の多糖類誘導体の製法。
【請求項7】
N−アルキルマレアミドが一般式R−NH(式中、R=C〜C24−アルキル)の脂肪酸アミンとマレイン酸無水物とから得られた、請求項6記載の製法。
【請求項8】
多糖類との反応前にマレアミド−成分がマレイミド−誘導体に環化された、請求項6または7記載の製法。
【請求項9】
多糖類との反応後にマレアミド−成分がスクシンイミド−誘導体に環化される、請求項6から8までのいずれか1項記載の製法。
【請求項10】
マレアミド−成分のカルボン酸官能基がエステル化される、請求項6から9までのいずれか1項記載の製法。
【請求項11】
有機基の付加を実施した後、多糖類誘導体を有利には鉱酸で沈殿させる、請求項6から10までのいずれか1項記載の製法。
【請求項12】
セルロース繊維への結合のための、請求項1から5までのいずれか1項記載の多糖類誘導体の使用。
【請求項13】
繊維処理のための請求項12記載の使用。
【請求項14】
生分解性の柔軟剤としての請求項12または13記載の使用。

【公表番号】特表2007−534783(P2007−534783A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543454(P2006−543454)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013904
【国際公開番号】WO2005/054300
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(504213238)ビオグルト ビオガルデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (5)
【氏名又は名称原語表記】Bioghurt Biogarde GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Lise−Meitner−Str. 34, D−85354 Freising, Germany
【Fターム(参考)】