説明

多結晶シリコン中の炭素濃度測定方法

【課題】簡易・簡便に、しかも多結晶シリコン棒中の所望の位置における置換型炭素不純物の大凡の濃度が測定可能な方法を提供すること。
【解決手段】多結晶シリコンロッドから板状多結晶シリコンを切り出し、該板状多結晶シリコンの両面を鏡面研磨して2.12±0.01mmの厚みとする。置換型炭素濃度が既知の厚み2.00±0.01mmの単結晶シリコン標準試料を用いて赤外吸収分光法により標準測定法に則って検量線を作成し、鏡面研磨後の板状多結晶シリコンの置換型炭素の吸収帯ピークを含む波数領域の赤外吸収スペクトルを検量線作成時と同一条件下で求め、厚み補正を行うことなく置換型炭素濃度を求める上記置換型炭素濃度が既知の単結晶シリコン標準試料は、JEIDAによるラウンドロビン等で用いられた標準試料に準じて作成されたものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコン中の炭素濃度の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス用あるいは太陽電池用の基板には、一般に、シリコン基板が用いられる。このようなシリコン基板の原料には、シーメンス法により製造された多結晶シリコンが用いられるが、最終製品の高集積化や高品質化に対する要求が厳しくなるにつれ、多結晶シリコンに対する高純度化要求も厳しくなりつつある。
【0003】
シリコン結晶中の軽元素不純物としては格子間酸素や置換型炭素が知られており、格子間酸素は結晶中で析出して転位や積層欠陥を発生させ、置換型炭素は当該酸素の析出を促進する不純物として古くからその濃度測定手法が検討され、単結晶シリコンに対しては、ASTMやJEIDAなどの機関により、フーリエ変換赤外分光法を用いた標準測定法が確立されている。
【0004】
ところで、多結晶シリコンを析出させる際に用いられる反応炉内には多くのグラファイト部材が用いられるため、これらのグラファイト部材を発生源として多結晶シリコン中に炭素が取り込まれ易い。そして、このような炭素不純物は、特別な除去を行わない限り、多結晶シリコンを原料として製造される単結晶シリコン中に取り込まれる結果となるから、その高純度化の障害となってしまう。従って、半導体デバイス用あるいは太陽電池用の基板の低炭素濃度化を図るためには、その原料となる多結晶シリコンの炭素濃度を管理する必要がある。
【0005】
そこで、多結晶シリコン中の炭素濃度の評価方法が検討され、標準化もなされてきた。例えば、ASTM標準のひとつ(非特許文献1)では、浮遊帯域溶融(Floating Zone:FZ)法と光学的手法(赤外分光法またはフォトルミネッセンス法)の組み合わせにより、多結晶シリコン中の炭素濃度を測定する方法が規定されている。
【0006】
この方法では、先ず、シリコン芯線に析出させて得られた多結晶シリコンロッドにドリルで穴を開け、直径約20mmの円筒(コア)を抜き取る。次に、コアの切り出しの際にコア表面に生じたダメージを取り除くため、HNO/HF混酸によりコア表面を100μm以上エッチングする。そして、このコアを用いてFZ法により単結晶シリコン棒を得て、例えば非特許文献2に準拠する赤外分光法により炭素濃度測定を行う。
【0007】
しかし、この方法の場合、シリコン結晶中での炭素不純物の実効偏析係数が小さい(keff=0.07:非特許文献3参照)ことに起因して、FZ法により育成される単結晶棒が短いと原料である多結晶シリコン中の炭素濃度の正確な測定が困難であるという問題がある。具体的に説明すると、実効偏析係数が1よりも小さい不純物の場合、原料である多結晶シリコン中に含まれている不純物はFZ溶融領域に取り込まれ難いために原料側に濃縮される。このため、原料である多結晶シリコン中の炭素濃度を正確に測定しようとすると、長尺のFZ単結晶棒を育成する必要がある。
【0008】
特開2007−279042号公報(特許文献1)には、多結晶シリコン組成物中での炭素濃度よりも凍結溶融領域での炭素濃度が高いことを利用した測定方法が開示されている。この方法では、多結晶シリコン組成物から取り出した多結晶シリコンコアをFZ結晶成長装置でFZ成長させて単結晶領域と凍結溶融領域を含むコアとし、このコアを1150℃〜1360℃の範囲の温度で少なくとも2時間アニーリングし、上記単結晶領域と凍結溶融領域のそれぞれから取り出した試料を赤外分光分析して検量線を作成して単結晶領域の炭素濃度を求め、当該単結晶領域の炭素濃度に基づいて多結晶シリコン組成物の炭素濃度が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−279042号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ASTM F1723-02:“Standard Practice for Evaluation of Polycrystalline Silicon Rods by Float-Zone Crystal Growth and Spectroscopy”
【非特許文献2】ASTM F1391-93:“Standard Test Method for Substitutional Atomic Carbon Content of Silicon by Infrared Absorption”
【非特許文献3】F.Shimura “Semiconductor Silicon Crystal Technology” Academic Press, Inc. (1989) p.148-151
【非特許文献4】電子情報技術産業協会規格(JEITA EM-3503)「赤外吸収によるシリコン結晶中の置換型炭素原子濃度の標準測定法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述したとおり、従来の手法はFZ法による試料作製のプロセスを要する。加えて、非特許文献1記載の方法ではシリコン結晶中での実効偏析係数が小さな炭素の濃度を正確に測定するためには長尺のFZ単結晶棒とする必要があり、特許文献1記載の方法は極めて煩雑であるのみならず高温でのアニーリングも必要とする。
【0012】
本発明は上述したような従来方法の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易・簡便に、しかも多結晶シリコン棒の所望の位置における置換型炭素不純物の濃度を、短時間で測定することのできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の多結晶シリコン中の炭素濃度測定方法は、多結晶シリコンロッドから板状多結晶シリコンを切り出し、該板状多結晶シリコンの両面を鏡面研磨して2.12±0.01mmの厚みとし、置換型炭素濃度が既知の厚み2.00±0.01mmの単結晶シリコン標準試料を用いて赤外吸収分光法により標準測定法に則って検量線を作成し、前記鏡面研磨後の板状多結晶シリコンの所望の箇所の置換型炭素の吸収帯ピークを含む波数領域の赤外吸収スペクトルを前記検量線作成時と同一条件下で求め、厚み補正を行うことなく前記検量線に基づいて前記板状多結晶シリコンの置換型炭素濃度を求めることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第2の態様の多結晶シリコン中の炭素濃度測定方法は、多結晶シリコンロッドから少なくとも2枚の厚みの異なる板状多結晶シリコンを隣接して切り出し、該板状多結晶シリコンのそれぞれの両面を鏡面研磨して、2.12mmよりも薄い第1の板状多結晶シリコンと2.12mmよりも厚い第2の板状多結晶シリコンを準備し、置換型炭素濃度が既知の厚み2.00±0.01mmの単結晶シリコン標準試料を用いて赤外吸収分光法により標準測定法に則って第1の検量線を作成し、前記鏡面研磨後の第1および第2の板状多結晶シリコンの所望の箇所の置換型炭素の吸収帯ピークを含む波数領域の赤外吸収スペクトルを前記第1の検量線作成時と同一条件下で求め、厚み補正を行うことなく前記第1の検量線に基づいて前記第1および第2の板状多結晶シリコンの置換型炭素濃度を求め、前記前記第1および第2の板状多結晶シリコンの置換型炭素濃度と厚みから第2の検量線を作成し、該第2の検量線の厚み2.00±0.01mmに対応する炭素濃度を前記板状多結晶シリコンの切り出し部位の炭素濃度とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、FZ法等による単結晶化を施すことなくしかも特別な前熱処理も行わずに多結晶シリコン中の置換型炭素の大凡の濃度測定が可能となる。つまり、本発明によれば、簡易・簡便に、しかも多結晶シリコン棒中の所望の位置における置換型炭素不純物の大凡の濃度が測定可能な方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】炭素濃度測定用試料の調製プロセスの一例を示す図である。
【図2】FZ単結晶棒および把持部分からの板状シリコン結晶の切り出しを説明するための図である。
【図3】炭素濃度測定のプロセスの例を説明するための図である。
【図4】置換型炭素濃度の板状多結晶シリコン厚依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明の多結晶シリコン中の炭素濃度測定方法について説明する。
【0018】
シリコン結晶中の置換型炭素による赤外吸収のピークは605cm−1に認められ、電子情報技術産業協会(JEITA)により単結晶シリコンを用いた標準測定法が定められている(非特許文献4参照)。しかし、結晶粒を含む多結晶シリコン中の置換型炭素の測定法は標準化されていないため、上記標準測定法に則って炭素濃度を求めようとすれば、多結晶シリコンを一旦単結晶化する必要がある。
【0019】
そこで、かかる煩雑な手順を行うことなく、簡易・簡便で迅速に、かつ多結晶シリコン棒中の所望の位置における置換型炭素不純物の大凡の濃度を赤外吸収法により測定することが本発明の目的である。
【0020】
この目的を達成する前提として、本発明者らは、標準測定法により求められた単結晶シリコン中の炭素濃度と、当該単結晶シリコンと実質的に同じ炭素濃度を有する多結晶シリコンを測定して得られた炭素濃度との関連を調べた。
【0021】
炭素濃度測定用試料の調製:図1は、炭素濃度測定用試料の調製プロセスの一例を示す図である。先ず、シーメンス法により気相成長された多結晶シリコン棒を6本用意した(S101)。これら多結晶シリコン棒のそれぞれにつき、長手方向から、長さ150mm、直径20mmのコア(シリコンブロック)を円筒状に抜き取った(S102)。以下では、これらをコア1〜6という。続いて、上記コア1〜6のそれぞれを原料として、直径約10mmで長さ約200mmのFZ単結晶棒を育成した(S103)。
【0022】
図2は、FZ単結晶棒および把持部分からの板状シリコン結晶の切り出しを説明するための図で、この図中、符号10はコア(シリコンブロック)、符号20はFZ単結晶棒、そして符号30はシードである。この図に示したように、FZ単結晶棒のそれぞれのコーン部(21)から約180mmの位置から、円板状のFZ結晶(22)を約2mm厚で1枚切り出すとともに、FZ単結晶棒育成時に把持した部分のFZ単結晶棒近傍領域(11)から、厚さ約2mm(厚さA)と約2.5mm(厚さB)の板状多結晶シリコン(12,13)を各1枚切り出した(S104)。
【0023】
それぞれのFZ単結晶棒から切り出された板状単結晶シリコン(22)は、その両面を鏡面化して厚さが2.00±0.01mmの範囲内となるように調整した。また、それぞれのコアの把持部分から切り出された板状多結晶シリコン(12,13)も同様に、その両面を鏡面化して最小目盛りが1μm(0.001mm)のダイヤルゲージにより厚さを測定した(S105)。
【0024】
炭素濃度測定:上記6つの各コアのそれぞれから上記の手順で準備した1枚のFZ板状単結晶シリコンおよび2枚の板状多結晶シリコンの500cm−1から700cm−1の波数範囲の透過スペクトルを、赤外分光計で測定した。従って、炭素濃度測定対象としたものは、FZ板状単結晶シリコンが6枚、板状多結晶シリコンが12枚である。
【0025】
測定条件は上述の電子情報技術産業協会規格(JEITA EM-3503:非特許文献4)に則った。なお、参照試料としては、炭素を実質的に含まない部位であるFZ単結晶棒のコーン部から切り出した板状単結晶シリコンの両面を鏡面に加工した厚さが2.00±0.01mmの範囲内にあるものを予め1枚のみ準備して用いた。フーリエ変換赤外分光装置を用い、分解能2cm−2で積算回数を400回として測定した。なお、ビームスプリッタはGe/KBr、検出器はDTGS、光源はグローバーランプである。
【0026】
図3は、炭素濃度測定のプロセスの例を説明するための図である。先ず、参照試料の透過スペクトルを測定し(S201)、続いて、6枚のFZ板状単結晶シリコンと12枚の板状多結晶シリコンの透過スペクトルを測定した(S202)。
【0027】
これらのスペクトル測定の後、参照試料の透過スペクトルとFZ板状単結晶シリコンそれぞれの透過スペクトルの差を求め(S203)、当該差スペクトルの炭素ピーク(604cm−1)の両側にわたるベースラインを引く(S204)。そして、このベースラインとピークから吸光度を求め(S205)、試料厚みの補正により、各FZ板状単結晶シリコンの置換型炭素濃度を求めた(S206)。これにより検量線が得られる。
【0028】
同様に、参照試料の透過スペクトルと板状多結晶シリコンそれぞれの透過スペクトルの差を求め、当該差スペクトルの炭素ピーク(604cm−1)の両側にわたるベースラインを引いて求めた吸光度から、試料厚みの補正により、各板状多結晶シリコンの置換型炭素濃度を求めた。その結果を表1に示す。なお、厚みの単位はmm、濃度の単位はppmaである。ここで、濃度Aは厚さAの板状多結晶シリコンの炭素濃度算出値、濃度Bは厚さBの板状多結晶シリコンの炭素濃度算出値を示す。
【0029】
【表1】

【0030】
この表にまとめたように、各FZ板状単結晶シリコンの炭素濃度は何れも正の値を示しているのに対し、厚さAの板状多結晶シリコンからは何れも負の値の炭素濃度が得られている。炭素濃度が負ということはあり得ないから、上記結果は、多結晶シリコンの炭素濃度を単結晶シリコンの標準測定法で測定しても、意味のある値が得られないことを示している。
【0031】
そこで、各コアにつき、厚さAの板状多結晶シリコンから得られた炭素濃度と厚さBの板状多結晶シリコンから得られた炭素濃度を用いて検量線を作成し、当該コアから得たFZ板状単結晶シリコンの値と炭素濃度が概ね一致する厚みを求めたのが厚さCである。表1中に示した濃度Cは、上記検量線から試料厚さCに点で読み取った炭素濃度である。
【0032】
図4は、置換型炭素濃度の板状多結晶シリコン厚依存性を示す図であり、ここに示した結果は、上記コア1についての検量線である。この場合、コア1から得られたFZ板状単結晶シリコンの炭素濃度は0.03742ppmaであるから、検量線においてこの炭素濃度値を与える厚みは2.135mmとなり、この厚さが上記厚さCとなる。
【0033】
つまり、厚みCの板状多結晶シリコンの炭素濃度を標準測定法に則って測定すれば、FZ法等による単結晶化を施すことなくしかも特別な前熱処理も行わずに多結晶シリコン中の置換型炭素の正確な濃度測定が可能となる。
【0034】
そして、表1に示した厚みCの平均値は2.12mmであるから、板状多結晶シリコンの厚みを2.12mmとして標準測定法に則って炭素濃度測定を行えば、簡易・簡便に、しかも多結晶シリコン棒中の所望の位置における置換型炭素不純物の大凡の濃度が測定可能となる。なお、JEITAの標準測定法では試料厚みの誤差は±0.01mmとされているから、上記2.12mmは実質的には、2.12±0.01mmとすべきである。
【0035】
つまり、本発明では、多結晶シリコンロッドから板状多結晶シリコンを切り出し、該板状多結晶シリコンの両面を鏡面研磨して2.12±0.01mmの厚みとし、置換型炭素濃度が既知の厚み2.00±0.01mmの単結晶シリコン標準試料を用いて赤外吸収分光法により標準測定法に則って検量線を作成し、前記鏡面研磨後の板状多結晶シリコンの所望の箇所の置換型炭素の吸収帯ピークを含む波数領域の赤外吸収スペクトルを前記検量線作成時と同一条件下で求め、厚み補正を行うことなく前記検量線に基づいて前記板状多結晶シリコンの置換型炭素濃度を求めることにより、多結晶シリコン中の炭素濃度を測定する。ここで、上記置換型炭素濃度が既知の単結晶シリコン標準試料は、旧社団法人日本電子工業振興協会(JEIDA)によるラウンドロビン等で用いられた標準試料に準じて作成されたものが好ましい。
【0036】
なお、より真の炭素濃度に近い値を得るためには、上述したように、多結晶シリコンロッドから少なくとも2枚の厚みの異なる板状多結晶シリコンを隣接して切り出し、該板状多結晶シリコンのそれぞれの両面を鏡面研磨して、2.12mmよりも薄い第1の板状多結晶シリコンと2.12mmよりも厚い第2の板状多結晶シリコンを準備し、置換型炭素濃度が既知の厚み2.00±0.01mmの単結晶シリコン標準試料を用いて赤外吸収分光法により標準測定法に則って第1の検量線を作成し、前記鏡面研磨後の第1および第2の板状多結晶シリコンの所望の箇所の置換型炭素の吸収帯ピークを含む波数領域の赤外吸収スペクトルを前記第1の検量線作成時と同一条件下で求め、厚み補正を行うことなく前記第1の検量線に基づいて前記第1および第2の板状多結晶シリコンの置換型炭素濃度を求めた上で、さらに、前記前記第1および第2の板状多結晶シリコンの置換型炭素濃度と厚みから第2の検量線を作成し、該第2の検量線の厚み2.00±0.01mmに対応する炭素濃度を前記板状多結晶シリコンの切り出し部位の炭素濃度とすることが好ましい。
【0037】
上述のような第2の検量線は、板状多結晶シリコンの切り出し部位の炭素濃度をより正確に求めることを可能とするから、単一の検量線から求める場合に比べ、より正確な値が得られる。
【0038】
実施例:多結晶シリコン棒から、上述した手順に従い、厚さ2.000mmの板状FZ単結晶シリコン1枚と、厚さ2.006mmおよび2.477mmの板状多結晶シリコンを各1枚準備し、両面を鏡面に研磨した。
【0039】
これらの試料につき透過スペクトルを測定し、各試料の炭素濃度を求めたところ、板状FZ単結晶シリコンは0.08758ppma、厚さ2.006mmおよび2.477mmの板状多結晶シリコンはそれぞれ−0.06909ppmaおよび0.56866ppmaであった。
【0040】
厚さ2.006mmの板状多結晶シリコンの炭素濃度値−0.06909ppmaと、厚さ2.477mmの板状多結晶シリコンの炭素濃度値0.56866ppmaから第2の検量線を作成し、この第2の検量線の厚み2.00±0.01mmに対応する炭素濃度を求めると0.08506ppmaであった。この値は、同一の多結晶シリコン棒から別途作作製したFZ単結晶シリコンの炭素濃度と僅かに3%異なるにすぎない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、FZ法等による単結晶化を施すことなくしかも特別な前熱処理も行わずに多結晶シリコン中の置換型炭素の大凡の濃度測定が可能となる。つまり、本発明によれば、簡易・簡便に、しかも多結晶シリコン棒中の所望の位置における置換型炭素不純物の大凡の濃度が測定可能な方法が提供される。
【符号の説明】
【0042】
10 コア(シリコンブロック)
11 把持部分のFZ単結晶棒近傍領域
12,13 板状多結晶シリコン
20 FZ単結晶棒
21 コーン部
22 円板状のFZ結晶
30 シード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶シリコンロッドから板状多結晶シリコンを切り出し、
該板状多結晶シリコンの両面を鏡面研磨して2.12±0.01mmの厚みとし、
置換型炭素濃度が既知の厚み2.00±0.01mmの単結晶シリコン標準試料を用いて赤外吸収分光法により標準測定法に則って検量線を作成し、
前記鏡面研磨後の板状多結晶シリコンの所望の箇所の置換型炭素の吸収帯ピークを含む波数領域の赤外吸収スペクトルを前記検量線作成時と同一条件下で求め、
厚み補正を行うことなく前記検量線に基づいて前記板状多結晶シリコンの置換型炭素濃度を求める、ことを特徴とする多結晶シリコン中の炭素濃度測定方法。
【請求項2】
多結晶シリコンロッドから少なくとも2枚の厚みの異なる板状多結晶シリコンを隣接して切り出し、
該板状多結晶シリコンのそれぞれの両面を鏡面研磨して、2.12mmよりも薄い第1の板状多結晶シリコンと2.12mmよりも厚い第2の板状多結晶シリコンを準備し、
置換型炭素濃度が既知の厚み2.00±0.01mmの単結晶シリコン標準試料を用いて赤外吸収分光法により標準測定法に則って第1の検量線を作成し、
前記鏡面研磨後の第1および第2の板状多結晶シリコンの所望の箇所の置換型炭素の吸収帯ピークを含む波数領域の赤外吸収スペクトルを前記第1の検量線作成時と同一条件下で求め、
厚み補正を行うことなく前記第1の検量線に基づいて前記第1および第2の板状多結晶シリコンの置換型炭素濃度を求め、
前記前記第1および第2の板状多結晶シリコンの置換型炭素濃度と厚みから第2の検量線を作成し、
該第2の検量線の厚み2.00±0.01mmに対応する炭素濃度を前記板状多結晶シリコンの切り出し部位の炭素濃度とする、ことを特徴とする多結晶シリコン中の炭素濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−220212(P2012−220212A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82983(P2011−82983)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】