説明

多軸ファイバジャイロ

【課題】部品の共通化を実現する多軸ファイバジャイロを提供する。
【解決手段】複数の光源2と、複数の光ファイバループ4と、複数の第1光カプラ3と、複数の第2光カプラ7と、複数の位相変調器6と、複数の偏光子9と、多芯フェルール付き受光素子8と、複数の光源2を時分割制御する時分割制御回路とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の共通化を実現する多軸ファイバジャイロに関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバジャイロは、光ファイバを巻き回して形成された光ファイバループに光を左右逆回りに伝搬させ、サニャック効果によって両光間に生じる位相差を検出することで、光ファイバループに沿った角速度を検出するものである。その角速度を微分積分して角加速度、角度を検出することもできる。
【0003】
図5に示されるように、ファイバジャイロ51は、光源52と、該光源52からの光を2分岐すると共に戻り光を干渉させる第1光カプラ53と、該第1光カプラ53の分岐光を軸の左右回りに伝搬する光ファイバループ54と、該光ファイバループ54の一部の光ファイバ54aが振動子55に巻き付けられた位相変調器56と、上記第1光カプラ53から戻る干渉光を受光用に取り出す第2光カプラ57と、該第2光カプラ57からの干渉光を受光する受光素子58と、上記第1光カプラ53と上記第2光カプラ57との間に挿入された偏光子59と、上記光源の駆動回路、上記振動子の駆動回路、上記受光信号の処理回路等を実装した制御基板60とを備える。
【0004】
【特許文献1】特開平11−173860号公報
【特許文献2】特開2000−46565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファイバジャイロは、航空機、船舶、自動車等の移動体に搭載して移動体の角速度や角度を検出することに用いられる。また、ファイバジャイロは、ロボットや機械の可動部に搭載してその可動部の動きや姿勢を認識することに用いられる。
【0006】
このとき、ピッチ角、ヨー角、ロール角のように3軸の情報が必要な場合がある。このような場合、従来は、図5の1軸用ファイバジャイロを3基、搭載している。2軸の情報で十分な場合は2基搭載し、4軸以上の情報が必要な場合は、4基以上搭載することになる。
【0007】
このように、N軸(Nは2以上の自然数)の情報を検出するために、同じファイバジャイロをそのままN基用いたのでは、ファイバジャイロのコストはそのままN倍となり、重量や体積もそのままN倍となる。しかし、各ファイバジャイロに含まれるいくつかの部品を共通化することができれば、コストや重量・体積をN倍より小さく抑えられる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、部品の共通化を実現する多軸ファイバジャイロを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、複数の光源と、該光源と同数であり上記複数の光源からの光を任意の座標軸に左回り光及び右回り光として伝搬する光ファイバループと、上記光源と同数であり各々の光源からの光をそれぞれ2分岐して上記複数の光ファイバループに入射させると共に上記複数の光ファイバループを周回した光を干渉させる複数の第1光カプラと、上記光源と同数であり上記複数の第1光カプラからの各干渉光を受光用に分岐する複数の第2光カプラと、上記複数の光ファイバループを伝搬する左回り光と右回り光に位相差を生じさせる位相変調器と、上記光源と同数であり上記複数の第2光カプラからの光を直線偏光にする複数の偏光子と、上記複数の第2光カプラからの各干渉光を受光する多芯フェルール付き受光素子と、上記複数の光源を時分割制御する時分割制御回路とを備えたものである。
【0010】
また、本発明は、光源と、該光源からの光を任意の座標軸に左回り光及び右回り光として伝搬する複数の光ファイバループと、上記光源からの光を光ファイバループと同数の光源ラインに分岐する前段光カプラ群と、上記複数の光源ラインと同数であり各々の光源ラインからの光をそれぞれ2分岐して上記複数の光ファイバループに入射させると共に上記複数の光ファイバループを周回した光を干渉させる複数の第1光カプラと、上記複数の光源ラインと同数であり上記複数の第1光カプラからの各干渉光を受光用に分岐する複数の第2光カプラと、上記複数の光ファイバループを伝搬する左回り光と右回り光に位相差を生じさせる位相変調器と、上記複数の光源ラインと同数であり上記複数の第2光カプラからの光を直線偏光にする複数の偏光子と、上記複数の第2光カプラからの各干渉光を受光する多芯フェルール付き受光素子とを備え、さらに上記複数の光源ラインは、上記光源ラインの長さを順次異ならせる遅延ラインを備えたものである。
【0011】
上記位相変調器は、上記複数の光ファイバループの各々の一部の光ファイバが共通の振動子に巻き付けられて形成されてもよい。
【0012】
上記振動子に巻き付けられる光ファイバは、テープファイバであってもよい。
【0013】
上記位相変調器は、上記複数の光ファイバループの各々の一部の光ファイバが共通の変調信号線に接続される振動子に巻き付けられて形成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0015】
(1)部品の共通化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1に示されるように、本発明の第1の実施形態に係る多軸ファイバジャイロ1は、3個の光源2と、各々の光源2からの光を2分岐すると共に戻り光を干渉させる3個の第1光カプラ3と、各々の第1光カプラ3の分岐光を左右回りに伝搬する3個の光ファイバループ4と、これら3個の光ファイバループ4の各々の一部の光ファイバ4aが共通の振動子5に軸方向に3段に巻き付けられた3段式位相変調器6と、上記3個の第1光カプラ3から戻る干渉光を受光用に取り出す3個の第2光カプラ7と、これら3個の第2光カプラ7が取り出した干渉光を受光する3芯フェルール付き受光素子8と、上記3個の光源2を時分割制御する時分割制御回路(図示せず)と、上記第1光カプラ3と上記第2光カプラ7との間に挿入された偏光子9と、上記光源の駆動回路、上記振動子の駆動回路、上記受光信号の処理回路(いずれも図示せず)、上記時分割制御回路等を実装した制御基板10と、該制御基板10の振動子駆動回路と上記共通振動子5を接続する変調信号線11とを備えたものである。
【0018】
光源2は、SLD(スーパールミネッセントダイオード)などの半導体発光素子からなる。制御基板10に実装される各光源の駆動回路は、同じく制御基板10に実装される時分割制御回路によって制御され、各光源2を順次、所定の時間間隔で駆動することにより、互いに異なる時間帯に1個の光源2のみを発光させるようになっている。
【0019】
第1光カプラ3は、1×2入出力ポートを有するファイバカプラである。一端の1入出力ポートは、光源側に向けられ、偏光子9に接続される。反対端の2入出力ポートは、それぞれ光ファイバループ4の両端に接続される。第1光カプラ3は、各々の光源2からの光を2分岐して光ファイバループ4の左右回りに送り出すと共に、光ファイバループ4を左右回りで伝搬(周回)し第1光カプラ3に戻ってきた光を結合し、干渉させることにより、左回り光と右回り光による干渉光を光源側に取り出すものである。
【0020】
光ファイバループ4は、例えば、偏波面保存光ファイバをループ状に巻き回して形成され、そのループ面に直交する軸の左右回りに光を伝搬させることができる。3個の光ファイバループ4は、例えば、互いにループ面を直交させて設けることで、直交3軸の角速度検出に適用することができる。
【0021】
3段式位相変調器6は、3個の位相変調器を一体化したものであり、3個の光ファイバループ4の各々の一部の光ファイバ4aを1個の共通振動子5に軸方向に3段に巻き付けて形成したものである。制御基板10に実装される振動子駆動回路は、変調信号線11を介して共通振動子5を駆動するようになっている。共通振動子5は、例えば、PZT(ピエゾセラミック)からなる。共通振動子5が振動することにより、共通振動子5に巻き付けられた3個の光ファイバ4aが同時に伸縮し、各光ファイバ4aを伝搬する光の位相が変調される。これにより、左回り光と右回り光との間に位相差を生じさせる。ただし、本実施形態では、3個の光源2が互いに異なる時間帯に駆動されるので、3個の光ファイバ4aを同時に光が伝搬することはない。
【0022】
なお、図1では、3段式位相変調器6を説明するために、共通振動子5を従来技術の振動子55よりもサイズが大きく図示されているが、本実施形態の多軸ファイバジャイロ1の共通振動子5は従来技術の振動子55と同程度のサイズに作製することができる。これは、共通振動子5のサイズ(長さ)に比べ、一部の光ファイバ4aの周囲領域は小さいことによる。
【0023】
第2光カプラ7は、1×2入出力ポートを有するファイバカプラである。一端の1入出力ポートは、光ファイバループ側に向けられ、偏光子9に接続される。反対端の2入出力ポートは、一方が光源2に接続され、他方が3芯フェルール付き受光素子8の各フェルール12に接続される。第2光カプラ7は、光源2からの光を第1光カプラ3に送り出し、第1光カプラ3から戻る干渉光を受光用に取り出して3芯フェルール付き受光素子8に送り出すものである。
【0024】
3芯フェルール付き受光素子8は、PD(フォトダイオード)などの半導体受光素子と、この半導体受光素子の発光面に臨む3芯のフェルール12とを一体化したものである。これにより、3芯フェルール付き受光素子8は、3個の第2光カプラ7が取り出した各干渉光を受光することができる。ただし、本実施形態では、3個の光源2が互いに異なる時間帯に駆動されるので、3軸分の干渉光が同時に受光されることはない。
【0025】
偏光子9は、第1カプラ3と第2光カプラ7とを接続する光ファイバの一部をコイル状に形成すると共に、コアの複屈折を大きくしたファイバ型の偏光子である。
【0026】
制御基板10は、光源駆動回路、振動子駆動回路、受光信号処理回路、時分割制御回路等を実装したものである。光源駆動回路、振動子駆動回路、受光信号処理回路は、慣用のものであり、詳しくは述べない。時分割制御回路は、互いに異なる時間帯に1個の光源2のみを駆動するよう、3個の光源2を時分割制御するものである。
【0027】
各光源2の発光時間間隔は、制御基板10に実装される各回路及び図示しない演算処理部が各光源2の発光制御及び受光素子8からの受光信号を処理できる十分な時間に設定する。例えば、本実施形態では、3個の光源2は、0.1μsのパルス幅を有するパルス光をそれぞれ同時に発光することなく順次発光するように、駆動・制御される。
【0028】
図1の多軸ファイバジャイロ1における軸ごと(各座標軸)の角速度検出原理は、図5のファイバジャイロと同じであるので、詳しくは述べない。多軸ファイバジャイロ1は、例えば、ピッチ角、ヨー角、ロール角の角速度を検出するために、次のような動作を行う。
【0029】
まず、時分割制御回路は、ピッチ角用の光ファイバループ4に光を伝搬させるために、1個の光源2(ピッチ角用)を駆動する。このとき、他の2個の光源2(ヨー角用、ロール角用)は駆動されない。これにより、ピッチ角用の光源2から出射された光は、第1光カプラにより分岐され当該光ファイバループ4を左右回りに伝搬し、第1光カプラ3により光ファイバループ4を周回した左回り光と右回り光が結合され干渉し、その干渉光が第2光カプラ7から取り出されて3芯フェルール付き受光素子8で受光される。他の2個の光ファイバループ4には光が伝搬していないので、このとき受光される干渉光は、ピッチ角用の光ファイバループ4から得られたもののみである。よって、受光信号処理回路は、受光信号からピッチ角の角速度を検出する。
【0030】
ヨー角、ロール角についても同様に、時分割制御回路がヨー角用又はロール角用の光源2のみを駆動することにより、3芯フェルール付き受光素子8では当該光ファイバループ4のみから得られた干渉光を受光し、受光信号処理回路は、受光信号からヨー角、ロール角の角速度を検出することになる。
【0031】
このように時分割制御回路により3個の光源2を順次発光させることで、各光ファイバループ4を周回した左右回りの光の各干渉光を、同一の3芯フェルール付き受光素子8を用いて時分割で受光でき、ピッチ角、ヨー角、ロール角の角速度を順次検出することができる。
【0032】
本実施形態によれば、受光素子が共通化されて1個になっているので、図5のファイバジャイロを3基使用すると受光素子が3個になるのに比べて、受光素子の個数が少ない。
よって、受光素子のコストが低減されると共に、受光素子が占める重量・体積を低減させることができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、3個の位相変調器の振動子が共通化されて1個になり、変調信号線が1本になっているので、図5のファイバジャイロを3基使用すると振動子が3個、変調信号線が3本になるのに比べて、振動子の個数が少なく、変調信号線の本数が少ない。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
【0035】
図2に示した多軸ファイバジャイロ21は、図1の多軸ファイバジャイロ1と異なり、3個の位相変調器22は、各光ファイバループ4の光ファイバ4aが個別の振動子23に巻き付けられている。制御基板10からの変調信号線11は1本であり、3個の振動子23に共通配線されている。他の部分は、図1の多軸ファイバジャイロと同じである。
【0036】
この実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、受光素子が共通化されて1個になっているので、受光素子のコストが低減されると共に、受光素子が占める重量・体積を低減させることができる。
【0037】
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
【0038】
図3に示した多軸ファイバジャイロ31は、図1の多軸ファイバジャイロ1と異なり、各光ファイバループ4の光ファイバ4aが一体にテープ化された3芯テープファイバ32を備え、位相変調器は、この3芯テープファイバ32が1個の共通の振動子33に巻き付けられて形成される。制御基板10からの変調信号線11は1本であり、振動子33に共通配線されている。他の部分は、図1の多軸ファイバジャイロと同じである。
【0039】
この実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、受光素子が共通化されて1個になっているので、受光素子のコストが低減されると共に、受光素子が占める重量・体積を低減させることができる。
【0040】
また、振動子33に巻き付けられ位相変調器を形成する光ファイバ4aがテープファイバからなるので、振動子33への巻き付け工程が簡便になり、位相変調器の形成が容易となる。
【0041】
また、この実施形態によれば、3個の位相変調器の振動子が共通化されて1個になり、変調信号線が1本になっているので、振動子の個数が少なく、変調信号線の本数が少ない。
【0042】
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。
【0043】
図4に示されるように、本発明の第4の実施形態に係る多軸ファイバジャイロ41は、1個の光源42と、該光源42からの光を3個の光源ライン431,432,433に分岐する前段光カプラ群44と、各々の光源ライン431,432,433からの光を2分岐すると共に戻り光を干渉させる3個の第1光カプラ3と、各々の第1光カプラの分岐光を互いに異なる軸の左右回りに伝搬する3個の光ファイバループ4と、これら3個の光ファイバループ4の各々の一部の光ファイバ4aが共通の振動子5に軸方向に3段に巻き付けられた3段式位相変調器6と、上記3個の第1光カプラ3から戻る干渉光を受光用に取り出す3個の第2光カプラ7と、これら3個の第2光カプラ7が取り出した干渉光を同一の受光素子を用いて時分割で受光するための3芯フェルール付き受光素子8と、2個の上記光源ライン432,433に挿入された長さが順次異なる2個の遅延ライン451,452とを備えたものである。
【0044】
多軸ファイバジャイロ41は、図1の多軸ファイバジャイロ1との相違点のみに着目すると、光源42が1個であり、前段光カプラ群44によって光源42からの出射光を3個の光源ライン431,432,433に分岐するようになっている。また、2個の上記光源ライン432,433には長さが異なる遅延ライン451,452が挿入されている。他の部分は、図1の多軸ファイバジャイロ1と同じである。
【0045】
前段光カプラ群44は、1×2入出力ポートを有する3個のファイバカプラ461,462,463を組み合わせたものである。1個目のファイバカプラ461の一端の1入出力ポートが光源42に接続され、反対端の2入出力ポートは、それぞれ2個目と3個目のファイバカプラ462,463の一端の1入出力ポートに接続される。
【0046】
2個目と3個目のファイバカプラ462,463の反対端の2入出力ポートには、光源ラインが接続される。ここで、2個目のファイバカプラ462の反対側の2入出力ポートには、遅延ラインが挿入されていない第1光源ライン431と、第1遅延ライン451が挿入された第2光源ライン432とが接続され、3個目のファイバカプラ463の反対側の2入出力ポートの一方は、第2遅延ライン452が挿入された第3光源ライン433に接続され、他方は未使用とされる。
【0047】
光源ライン432,433に挿入される遅延ライン451,452の長さは、図示しない演算処理部が受光素子8からの受信信号を処理するのに十分な遅延時間を各遅延ライン451,452によって作れるように適宜決定される。本実施形態では、第1光源ライン431を30m、第2遅延ライン452を60mとした。また、光源42は、0.1μsのパルス幅を有するパルス光信号を0.2μsの間隔を開けて出射するように設定した。
【0048】
遅延ライン451,452は、光源ライン432,433を形成する光ファイバの一部をボビンに巻き回すことで、所定の長さの光ファイバを一箇所に集中させて配置したものである。遅延ライン451,452は、一方向(CW)に巻いた部分と反対方向(CCW)に巻いた部分とにより形成され、一方向に巻いた部分と反対方向に巻いた部分とでは、互いにファイバ長、巻き回数を等しくして、両方向に巻かれた光ファイバの断面積が等しくなるように形成される。これにより、遅延ライン451,452が回転運動を検出するのを抑えることができる。
【0049】
多軸ファイバジャイロ41の動作は、光源42が所定の時間間隔でパルス光を出射すると、まず遅延ラインが挿入されていない第1光源ライン431を伝搬した光が光ファイバループ4を左右回りし、第1光カプラ3で干渉してその干渉光が第2光カプラ7から取り出され、3芯フェルール付き受光素子8で受光される。
【0050】
次に、第1遅延ライン451が挿入された第2光源ライン432を伝搬した光が、第1光源ライン431を伝搬した光に比べて第1遅延ライン451を伝搬する時間だけ遅れて光ファイバループ4を伝搬し、第1光カプラ3、第2光カプラ7を介して干渉光として3芯フェルール付き受光素子8で受光される。その後、第2遅延ライン452が挿入された第3光源ライン433を伝搬した光が、第1光源ライン431を伝搬した光に比べて第2遅延ライン452を伝搬する時間だけ遅れて光ファイバループ4を伝搬し、第1光カプラ3、第2光カプラ7を介して干渉光として3芯フェルール付き受光素子8で受光される。
【0051】
このように、遅延ライン451,452があるために、各光源ライン431,432,433は異なるタイミングで光を伝搬させる。したがって、3芯フェルール付き受光素子8では、光源42が1回パルス状に点灯されると、3回のタイミングに分けて干渉光が受光される。受光信号処理回路は、これら3回の受光信号から例えば、ピッチ角、ヨー角、ロール角の順序で角速度を検出する。
【0052】
この実施形態によれば、光源42が共通化されて1個になっているので、図5のファイバジャイロを3基使用すると光源が3個になるのに比べて、光源42の個数が少ない。よって、光源42のコストが低減されると共に、光源42が占める重量・体積を低減させることができる。
【0053】
また、この実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、3個の位相変調器の振動子が共通化されて1個になり、変調信号線が1本になっているので、振動子の個数が少なく、変調信号線の本数が少ない。
【0054】
本実施形態では、前段光カプラ群44の3個目のファイバカプラ463を省略し、1個目のファイバカプラ461の2入出力ポートの他方と第2光カプラ7とを減衰器を介して接続する構成でもよい。例えば、ファイバカプラによる減衰が3dBの場合、3dB減衰器を用いることで、第3光源ライン433を伝搬する光と、第1、第2光源ライン431,432を伝搬する光とを同レベルにするように調整する。
【0055】
これまでの実施形態では、3個の光ファイバループを設けた3軸ファイバジャイロを説明したが、2軸以上の任意の座標軸の角速度を検出する多軸ファイバジャイロに本発明は効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態を示す多軸ファイバジャイロの構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す多軸ファイバジャイロの構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す多軸ファイバジャイロの構成図である。
【図4】本発明の第4実施形態を示す多軸ファイバジャイロの構成図である。
【図5】従来のファイバジャイロの構成図である。
【符号の説明】
【0057】
1、21、31、41 多軸ファイバジャイロ
2 光源
3 第1光カプラ
4 光ファイバループ
5 共通の振動子
6 3段式位相変調器
7 第2光カプラ
8 3芯フェルール付き受光素子
9 偏光子
10 制御基板
11 変調信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源と、該光源と同数であり上記複数の光源からの光を任意の座標軸に左回り光及び右回り光として伝搬する光ファイバループと、上記光源と同数であり各々の光源からの光をそれぞれ2分岐して上記複数の光ファイバループに入射させると共に上記複数の光ファイバループを周回した光を干渉させる複数の第1光カプラと、上記光源と同数であり上記複数の第1光カプラからの各干渉光を受光用に分岐する複数の第2光カプラと、上記複数の光ファイバループを伝搬する左回り光と右回り光に位相差を生じさせる位相変調器と、上記光源と同数であり上記複数の第2光カプラからの光を直線偏光にする複数の偏光子と、上記複数の第2光カプラからの各干渉光を受光する多芯フェルール付き受光素子と、上記複数の光源を時分割制御する時分割制御回路とを備えたことを特徴とする多軸ファイバジャイロ。
【請求項2】
光源と、該光源からの光を任意の座標軸に左回り光及び右回り光として伝搬する複数の光ファイバループと、上記光源からの光を光ファイバループと同数の光源ラインに分岐する前段光カプラ群と、上記複数の光源ラインと同数であり各々の光源ラインからの光をそれぞれ2分岐して上記複数の光ファイバループに入射させると共に上記複数の光ファイバループを周回した光を干渉させる複数の第1光カプラと、上記複数の光源ラインと同数であり上記複数の第1光カプラからの各干渉光を受光用に分岐する複数の第2光カプラと、上記複数の光ファイバループを伝搬する左回り光と右回り光に位相差を生じさせる位相変調器と、上記複数の光源ラインと同数であり上記複数の第2光カプラからの光を直線偏光にする複数の偏光子と、上記複数の第2光カプラからの各干渉光を受光する多芯フェルール付き受光素子とを備え、さらに上記複数の光源ラインは、上記光源ラインの長さを順次異ならせる遅延ラインを備えたことを特徴とする多軸ファイバジャイロ。
【請求項3】
上記位相変調器は、上記複数の光ファイバループの各々の一部の光ファイバが共通の振動子に巻き付けられて形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の多軸ファイバジャイロ。
【請求項4】
上記振動子に巻き付けられる光ファイバは、テープファイバであることを特徴とする請求項3記載の多軸ファイバジャイロ。
【請求項5】
上記位相変調器は、上記複数の光ファイバループの各々の一部の光ファイバが共通の変調信号線に接続される振動子に巻き付けられて形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の多軸ファイバジャイロ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−309695(P2008−309695A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158725(P2007−158725)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】