説明

多重ループアンテナ

【課題】本発明の目的は、小型で広帯域特性を有するループアンテナの提供にある。
【解決手段】本発明の多重ループアンテナは、給電部と、給電部より給電される第1のループと、第1のループの内側に設けられ、給電部より逆相給電される第2のループと、第2のループの内側、及び前記第1のループの外側の少なくとも一方に設けられた第3のループとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地上波デジタル放送又は無線通信サービスに向けた小型で広帯域のループアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地上波デジタル放送などの無線通信サービスの普及に伴い、アンテナの研究開発が活発に行われ、様々な形状のアンテナが提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、矩形のループと円形のループとが給電点を共通として接続された構造を有する地上波デジタル放送向け2重ループアンテナが開示されている(図23(a)参照)。特許文献1に記載された2重ループアンテナは、矩形ループの内側に円形ループを配置し、加えて円形のループ部が矩形のループ部に内接している。
【0004】
他の例としては、たとえば非特許文献1「ワイヤレスPANを目指した広帯域アンテナ」では、同図(b)からわかるように、サイズの異なる2つの矩形ループを平面状に内外に配置した2重ループアンテナが報告されている。当該アンテナは、それぞれのループの給電点を共通にとして、面積が大きい第1のループの中に面積が小さい第2のループが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−17511号広報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】倉本 晶夫 ワイヤレスPANを目指した広帯域アンテナ(電子情報通信学会論文誌 B Vol.J90-B No.9 pp797-809)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した2重ループアンテナの構成は、サイズや形状の異なる2つのループアンテナを、給電部を共通として接続したものである。すなわち、ループアンテナは、ループ部に電力を供給するための給電端子(あるいは給電端子間のことを開放端と呼ぶ)をループの両端に有するが、上記の構成では、それぞれ異なるループアンテナがそれぞれの給電端子を共通として給電点に接続されている。このため、内側に配置されたループ、および外側に配置されたループにおける電流は、同位相(同じ方向)に流れるようになる。
【0008】
多重ループアンテナの広帯域化の検討によって、2重ループでは双方のループで電磁結合が生じ、他方のループにより発生した磁界により一方のループが電磁誘導を受け、ループ上には誘導電流が誘起されてしまうことが、広帯域化を阻害する一因と判った。
【0009】
後ほど述べるように、多重ループアンテナの広帯域化のためには、2重に配置したループでは、直接給電(励振)したときの電流に対し、電磁誘導による誘起電流が同位相(方向)になることが判った。すなわち、このことは2重ループを給電点により直接的に励振した際、内外のループ部分に流れる電流が逆位相(逆方向)になれば良いことを意味する。
【0010】
特許文献1に記載されたような構成では、給電点を共通としているので、内外ループに流れる電流は同位相であり、提案する多重ループアンテナのように逆位相にしたときのほどの帯域特性が得られない課題があった。
【0011】
また、例えば特許文献1に記載されたような構成では、帯域を広げるために、2つのループ素子の大きさ、サイズ比、線幅、2つのループ素子の位置関係などの最適化をはかるため、広帯域化の点で充分な自由度を持つとは言い難かった。
【0012】
本発明の目的は、広帯域特性を有し、且つ特性の調整が容易な多重ループアンテナを提供することにある。
【0013】
本発明による多重ループアンテナは、上記課題を鑑みてなされたものであって、2重ループの内外に配置されたループに流れる電流を逆位相にするため、内外ループの接続や給電方法、給電部の構造、さらには、内外ループの調整・接続機構に関して特徴を持たせものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の多重ループアンテナは、給電部と、前記給電部より給電される第1のループと、前記第1のループの内側に設けられ、前記給電部より逆相給電される第2のループと、前記第2のループの内側、及び前記第1のループの外側の少なくとも一方に設けられた第3のループとを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の多重ループアンテナは、給電部と、導電性のループ部の両端に第1及び第2の給電端子を有して前記給電部より給電される第1のループと、前記第1のループの内側に設けられ、導電性のループ部の両端に第1及び第2の給電端子を有して前記給電部より給電される第2のループと、前記第1のループの第1の給電端子と前記第2のループの第2の給電端子とを接続する第1の接続線と、前記第1のループの第2の給電端子と前記第2のループの第1の給電端子とを接続する第2の接続線とを有し、前記第1の接続線、および前記第2の接続線には、前記給電部から極性のことなる電圧または電流が供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、広帯域特性を有し、尚且つ特性の調整が容易なアンテナ特性を有する多重ループアンテナを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の一形態であるループアンテナ1を示す概略図である。
【図2】第2の実施の一形態であるループアンテナ2を示す概略図である。
【図3】第3の実施の一形態であるループアンテナ3を示す概略図である。
【図4】第4の実施の一形態であるループアンテナ4を示す概略図である。
【図5】第5の実施の一形態であるループアンテナ5を示す概略図である。
【図6】第6の実施の一形態であるループアンテナ6を示す概略図である。
【図7】第7の実施の一形態であるループアンテナ7を示す概略図である。
【図8】第8の実施の一形態であるループアンテナ8を示す概略図である。
【図9】第9の実施の一形態であるループアンテナ9を示す概略図である。
【図10】他の実施形態のループアンテナを例示する概略図である。
【図11】他の実施形態のループアンテナを例示する概略図である。
【図12】第2の実施形態の解析モデルを示した図である。
【図13】第2の実施形態のVSWR特性の計算結果を示した図である。
【図14】第4の実施形態の解析モデルを示した図である。
【図15】第4の実施形態のVSWR特性の計算結果を示した図である。
【図16】第8の実施形態の解析モデルを示した図である。
【図17】第8の実施形態のVSWR特性の計算結果を示した図である。
【図18】第8の実施形態のアンテナ上の電流分布を示した図である。
【図19】第8の実施形態の試作アンテナを写した図である。
【図20】第8の実施形態の試作アンテナの寸法を示した図である。
【図21】第8の実施形態のVSWR特性の実測結果と計算結果を示した図である。
【図22】第8の実施形態の放射パターンの計算結果を示した図である。
【図23】特許文献1及び非特許文献1に記載された2重ループアンテナを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて、詳細に説明する。
【0019】
(実施形態1)
〔構成〕
図1は、第1の実施の一形態であるループアンテナ1を示す概略図である。ループアンテナ1は、図1(a)に示すように第1のループ11と第2のループ21を有し、図中下方のクロス部分に給電部60を有する。第1のループ11は、給電端子1および1’ を開放端として有する。第2のループ21は、給電端子2および2’を開放端として有する。
【0020】
ループアンテナ1は、図1(b)に示すようにループの端子2と1’、および端子1と2’を互いに交差するように接続線100および101でつなぐことにより、第1のループ11と第2のループ21を直結した構成としている。ここで第1のループ11と第2のループ21はそれぞれの使用周波数の1波長に相当する長さを有している。
【0021】
給電部60は、図に示す様に立体的に設けられ、片端を接続線100に、他端を101に接続される。換言すれば、給電部60から得られる電圧または電流の極性が互いに逆となるように、第1のループ11と第2のループ21を、開放端1-2’と開放端2-1’で互い違いに接続されている。
【0022】
給電部60よりそれぞれの接続線に流れ出る電流は、開放端を介してループ部分へ流れ、それぞれのループ11および21に流れる電流は逆向きとなる。このようにクロス部分に接続された給電部60は、その片端が第1のループ11と第2のループ12の一端につながれ、また他端も第1のループ11と第2のループ12につながれ、本アンテナを構成する。第1のループ11と第2のループ21は、給電部60に対して逆相に接続された構成をとっている。
【0023】
〔作用・効果〕
このような構成によって、広帯域なアンテナができる原理を以下に説明する。
【0024】
一般に、線状アンテナにおいて、広帯域化する場合には、2つの長さの異なる、すなわち、共振周波数の異なる素子を近傍に配置して、片方の素子に給電を行なわずに、いずれか一方にのみ給電する方法をとる。しかし、このような方法では、給電されていない素子への結合振幅分布が小さく、副共振の効果が少ないため、通常、10%程度の帯域しか得られない。
【0025】
したがって、より広い帯域を得るには、2つの長さの異なる(共振周波数の異なる)素子を近傍に配置して、両方の素子に給電し、互いの空間結合振幅を強くし、副共振の効果を強める方法が有効である。
【0026】
この場合、2つの素子は、物理的に、適度に素子を隔てて置く必要があり、この際の空間的な結合において、位相差を生じる。したがって、適度に空間的な距離を置いた場合の位相差を考慮し、2つの素子を逆位相で給電し、互いの素子の誘起電流が同位相となるように、素子間隔を調整することで、より広帯域なアンテナが実現できる。
【0027】
上記に説明した項目を考慮して、広帯域化のポイントである以下の3点に注目して、多重アンテナの構造を定める。
1)2つの共振周波数の異なる素子を用いる
2)より強い結合を得るために、両方に給電する
3)上記2)の空間的な相互誘起電流が、直接給電した電流と同位相になるようにする
【0028】
これらの条件を満たす構造として、図1の構造とする。すなわち、本発明によるアンテナは、共振長が異なる第1のループ11と第2のループ12を、立体的に設けられた給電部60により直接的に給電(励振)し、ループ11とループ12の開放端子を交差させて接続することにより、それぞれのループに誘起される電流が直接励振したときの電流とほぼ同位相(方向)になるように構成したものである。
【0029】
通常、第1のループ11の共振周波数をf1、第2のループ12の共振周波数をf2とおくと(f1<f2)、f2/f1は、1.5前後とすることができる(通常の無給電素子の場合は、1.1程度である)。
【0030】
次に別の実施の形態を複数示す。尚、第1の実施の形態と同一要素、同一内容については、説明を明瞭とする為、記載を簡略化又は省略する。
【0031】
(実施形態2)
〔構成〕
図2は、第2の実施の一形態である多重ループアンテナ2を示す概略図である。多重ループアンテナ2は、図2に示すように第1のループ12と第2のループ22と第3のループ32を有し、クロス部分に給電部60を有する。第1のループ12と第2のループ21は、給電部60に対して逆相に接続される。
第3のループ32は、ループ22の内側に設けられる。
【0032】
〔作用・効果〕
図2の構造は、電気的にみれば、図1の内側に、さらに円周が短い、すなわち、共振周波数の高い無給電素子を配置したことになる。
【0033】
多重ループアンテナ2は、第1のループ12の共振周波数をf1、第2のループ22の共振周波数をf2、第3のループ32の共振周波数をf3とおくと(f1<f2<f3)となり、f2/f1が1.5前後とする帯域に加え、f3/f2が1.1前後とする高域の周波数まで帯域を広げられる。
【0034】
(実施形態3)
〔構成〕
図3は、第3の実施の一形態である多重ループアンテナ3を示す概略図である。多重ループアンテナ3は、図3に示すように第1のループ13と第2のループ23と第3のループ33を有し、クロス部分に給電部60を有する。第1のループ13と第2のループ23は、給電部60に対して逆相に接続される。
第3のループ33は、第1のループ13の外側に設けられる。
【0035】
〔作用・効果〕
図3の構造は、電気的にみれば、図1の外側に、さらに円周が長い、すなわち、共振周波数の低い無給電素子を配置したことになる。
【0036】
多重ループアンテナ3は、第1のループ13の共振周波数をf1、第2のループ23の共振周波数をf2、第3のループ33の共振周波数をf3とおくと(f3<f1<f2)となり、f2/f1が1.5前後とする帯域に加え、f3/f1が1.1前後とする低域の周波数まで帯域を広げられる。
【0037】
(実施形態4)
〔構成〕
図4は、第4の実施の一形態である多重ループアンテナ4を示す概略図である。多重ループアンテナ4は、図4に示すように第1のループ14と第2のループ24と第3のループ34を有し、クロス部分に給電部60を有する。また、多重ループアンテナ4は、第2のループ24と第3のループ34とが接続部44によって接続されている。
【0038】
接続部44は、結合度を高めるために第2のループ24上の比較的大きな電流が流れる領域で接続されることが望ましい。
【0039】
第2のループ24を所望の周波数に対して1λの長さを有するものとすると、給電点に対向するループ辺上であって、例えば、辺の中心付近の電流最大位置で接続しても良い。
【0040】
〔作用・効果〕
図4の構造は、電気的にみれば、図2の内側の無給電素子を直接接続し、結合を強めたものと考えられる。この場合、第3のループに直接給電しているアンテナとは異なり、第2のループ24の末端に接続されているので、第2のループ24と第3のループ34との結合は、図2の場合より、わずかに強くなる程度と考えられる。
【0041】
よって、多重ループアンテナ4の特性は、多重ループアンテナ2に対して、若干広帯域な特性が得られることになる。
【0042】
(実施形態5)
〔構成〕
図5は、第5の実施の一形態である多重ループアンテナ5を示す概略図である。多重ループアンテナ5は、図5に示すように第1のループ15と第2のループ25と第3のループ35を有し、クロス部分に給電部60を有する。また、多重ループアンテナ5は、第1のループ15と第3のループ35とが接続部45によって接続されている。
【0043】
接続部45は、結合度を高めるために第1のループ15上の比較的大きな電流が流れる領域で接続されることが望ましい。
【0044】
第1のループ15を所望の周波数に対して1λの長さを有するものとすると、給電点に対向するループ辺上であって、例えば、辺の中心付近の第1のループの電流最大位置で接続しても良い。
【0045】
〔作用・効果〕
図5の構造は、電気的にみれば、図3の外側の無給電素子を直接接続し、結合を強めたものと考えられる。この場合、第3のループに直接給電しているアンテナとは異なり、第1のループ15の末端に接続されているので、第1のループ15と第3のループ35との結合は、図3の場合より、わずかに強くなる程度と考えられる。
【0046】
よって、多重ループアンテナ5の特性は、多重ループアンテナ3に対して、この場合の帯域は、図3の場合より、若干広帯域な特性が得られることになる。
【0047】
(実施形態6)
〔構成〕
図6は、第6の実施の一形態である多重ループアンテナ6を示す概略図である。多重ループアンテナ6は、図6に示すように第1のループ16と第2のループ26と第3のループ36を有し、クロス部分に給電部60を有する。また、多重ループアンテナ6には、第3のループ36の内側に調整素子56が設けられている。
【0048】
〔作用・効果〕
図6の構造は、電気的にみれば、図2の内側の無給電素子に、調整素子56を、整合用のスタブとして設けたことになる。調整素子56の長さを調節することで、多重ループアンテナ6の入力インピーダンスを調整する可能となり、より広帯域な特性が得られる。
【0049】
(実施形態7)
〔構成〕
図7は、第7の実施の一形態である多重ループアンテナ7を示す概略図である。多重ループアンテナ7は、図7に示すように第1のループ17と第2のループ27と第3のループ37を有し、クロス部分に給電部60を有する。また、多重ループアンテナ7には、第3のループ37の外側に調整素子57が設けられている。
【0050】
〔作用・効果〕
上記多重ループアンテナ6同様、調整素子57の長さを調節することで、入力インピーダンスを調整することができ、より広帯域な特性が得られる。
【0051】
(実施形態8)
〔構成〕
図8は、第8の実施の一形態である多重ループアンテナ8を示す概略図である。多重ループアンテナ8は、図8に示すように第1のループ18と第2のループ28と第3のループ38を有し、クロス部分に給電部60を有する。また、第2のループ28と第3のループ38とは、接続部48で接続されている。また、第3のループ38には、内側に調整素子58が設けられている。
【0052】
第3のループ38上において調整素子58が接続されて位置は、後述のように、比較的電流が小さい領域である。調整素子58が設けられる領域は、磁界が小さく、電界が強いところであるため、2つの調整素子をその先端を向かい合わせるように設置し、その間隔を調整すると、キャパシタンス的な結合が変化する。当該変化がアンテナのインピーダンスを調整することに寄与する。
【0053】
〔作用・効果〕
多重ループアンテナ8も、多重ループアンテナ2と多重ループアンテナ6の関係同様、調整素子58の長さを調節することで、入力インピーダンスを調整することが可能となり、より広帯域な特性が得られる。
【0054】
(実施形態9)
〔構成〕
図9は、第9の実施の一形態である多重ループアンテナ9を示す概略図である。多重ループアンテナ9は、図9に示すように第1のループ19と第2のループ29と第3のループ39を有し、クロス部分に給電部60を有する。また、第1のループ29と第3のループ39とは、接続部49で接続されている。また、第3のループ39には、外側に調整素子59が設けられている。
【0055】
〔作用・効果〕
多重ループアンテナ9も、多重ループアンテナ3と多重ループアンテナ7の関係同様、調整素子59の長さを調節することで、入力インピーダンスを調整することが可能となり、より広帯域な特性が得られる。
【0056】
(実施形態10)
〔構成〕
ここまで、本発明のループアンテナの実施形態として、ループ形状が矩形である場合について説明してきたが、ループ形状はこれに限らず、円形や楕円形、長方形、多角形であっても良い。図10(a)に、ループアンテナを円形ループアンテナとした場合の実施形態を示す。図10(b)は、ループアンテナを楕円形ループアンテナとした場合の実施形態を示す。図10(c)は、ループアンテナを長方形ループアンテナとした場合の実施形態を示す。図10(d)は、ループアンテナを多角形ループアンテナとした場合の実施形態を示す。
【0057】
〔作用・効果〕
図10に示される多重ループアンテナは、多重ループアンテナ8の外形を四角から円、楕円、多角形としたものである。図10に示される多重ループアンテナの原理も、多重ループアンテナ8と同様である。このように、例えば、収納物の形状に応じて、外形を任意な形状としてよい。
【0058】
また、図10(b)のように、横長の楕円とすることで、方位方向のビーム幅を若干シャープにすることは可能である。同様に、縦長の楕円とすれば、仰角方向のビームをシャープにすることが可能である。
【0059】
(実施形態11)
〔構成〕
図11は、ループアンテナを1重のループアンテナとした図である。このように、1重のループアンテナの内側ないしループアンテナの外側の少なくとも一方に1点で電気的に接続されて設けられたループを設けて、多重ループを構成し、必要に応じて調整素子を設けることによって、従来の1重ループアンテナに対して小型化、広帯域化を図ることができる。
【0060】
また、ループアンテナを3重や4重としても良い。ループアンテナを多重化する場合には、夫々のループに対して、次の内側のループに逆電流が流れるようにする。
【0061】
〔作用・効果〕
図11に示される多重ループアンテナは、多重ループアンテナ2ないし9を用いて説明したように、空間結合より若干結合の強い無給電素子を有することによって、空間結合の多重ループアンテナよりも広帯域な特性が得られる。
【0062】
多重ループアンテナの材質としては、金属板でも良いし、PWB、FPC、導電布、導電性シートにアンテナ素子を貼り付け又はプリンティングしても良い。
【0063】
また、第1ないし第3のループを自己補対するように設けることによって、更に良好な特性を得られる。
【0064】
また、第1ないし第3のループは、ループの中心位置を揃えたることが望ましい。
【0065】
以上説明したとおり、本発明によれば、広帯域特性を有し、尚且つ特性の調整が容易なアンテナ特性を有する多重ループアンテナを提供できる。
【0066】
これまで、実施形態1から11の構成と動作について説明してきた。次に、各実施形態のループアンテナの特性の計算結果、および実測結果について説明する。
【0067】
(実施形態2)
実施形態2に係るループアンテナ100の特性についての計算結果を説明する。
【0068】
ループアンテナ100の各寸法は、図12に示す様に、L1=187, L2=168, L3=127, L4=111(単位はmm)とし、当該寸法のループアンテナ100の特性(モデル1)、モデル1のループアンテナの内側に1辺が104.5mmの第3のループを装荷した場合の特性(モデル2)、1辺が94mmの第3のループを装荷した場合の特性(モデル3)についてそれぞれ計算を行った。
【0069】
図13は、ループアンテナ100における第3のループの寸法に起因するVSWRの周波数特性を示す図である。図13に示されたように、第3のループを第2のループの内側に装荷することによって、第2のループの寸法から定まる低VSWR領域が高周波側にシフトした。即ち、第3のループを第2のループの内側に装荷することによって、VSWR<2を満足する周波数領域を広げ、アンテナを広帯域化できる。
【0070】
(実施形態4)
実施形態4に係るループアンテナ200の特性についての計算結果を説明する。
【0071】
ループアンテナ200の各寸法は、図14に示す様に、L1=187, L2=168, L3=127, L4=111,L5=94(単位はmm)とする。当該寸法のループアンテナ200に、給電部から第2のループの使用周波数、第3のループの使用周波数それぞれの1/2波長に相当する電気長だけ離れた位置で第2のループと第3のループとを接続する導体として機能する接続部を設けた。
【0072】
図15は、ループアンテナ200における接続部の有無に起因するVSWRの周波数特性を示す図である。図15に示されたように、第2のループと第3のループを導体によって接続することによって、全体的にVSWR値が低下した。特に、第2のループの寸法から定まるVSWR<2の周波数領域が広がるという結果が得られた。
【0073】
このように、第2のループと第3のループを導体によって接続することによって、全体的にVSWR値を低下できる。即ち、VSWR<2を満足する周波数領域を広げ、アンテナを広帯域化できる。
【0074】
(実施形態8-1)
実施形態8に係るループアンテナ300の特性についての計算結果を説明する。
【0075】
ループアンテナ300の各寸法は、図16に示す様に、L1=187, L2=168, L3=127, L4=111,L5=94(単位はmm)とする。また、実施形態4と同様に第2のループと第3のループとを接続する接続部を有する。当該寸法形状のループアンテナ300に、第3のループの左辺、右辺の中央部から内側にそれぞれ対向するように延びた2つの調整素子を設けた。
【0076】
図17は、ループアンテナ300における調整素子の有無に起因するVSWRの周波数特性を示す図である。図17に示されたように、第3のループの内側に調整素子を設けることによって、第2のループの寸法から定まるVSWR<2の領域が高周波側に拡大した。即ち、第3のループの内側に調整素子を設けることによって、VSWR<2を満足する周波数領域を高周波数側に広げ、アンテナの広帯域化を可能とできる。
【0077】
図18は、周波数670MHzのときのアンテナ上の電流分布を示したものであり、調整素子の好適な配置を示したものである。ただし、ここで用いたアンテナ寸法は上記(図16)とは若干異なり、L178=, L2=160, L3=121, L4=106,L5=94(単位はmm)である。この周波数では第3のループ長は1λループを形成しないが(0.84λ程度)、ループ上の電流分布より、給電点に対向する辺上では電流が強く、調整素子を設置した辺上の領域では電流が小さいことを確認した。この結果は、調整素子の設置領域は電流が小さい領域が好適であることを意味しており、結合などが小さい理想的な1λループの場合には、給電点よりλ/4に相当する領域付近であると言える。
【0078】
(実施形態8-2)
実施形態8のアンテナ形状を基本形として、給電点の間隔を2.7mmとしたループアンテナ500について、実測と計算結果を基に説明する。
【0079】
最も広帯域な特性を示した給電部の高さ(2.7mm)を計算によって算出し、当該計算結果を踏まえて実際にアンテナを試作してループアンテナの実測を行った。試作アンテナを図19に示す。試作アンテナのアンテナパターンには導電性布を用い、非導電性の布上に導電性布を両面テープ等で貼り付けて、図20に示すアンテナ500の寸法に合わせて製作した。給電部は、第1のループと第2のループが交差する部分において、両者の間隔が2.7mmとなるように一方のループを浮かせ、その間に給電用の同軸ケーブルを挿入し、芯線とグランドをそれぞれ第1のループと第2のループに接続した構成とした。VSWRの実測結果とシミュレーション結果を図21に示す。
【0080】
図21に示されたように、VSWR特性の実測の結果、500MHz〜550MHz近傍と700MHz近傍の2箇所で非常に低いVSWR値を示す特性が得られた。これは低VSWR値を示す周波数に若干の差異はあるもののシミュレーションにおいても同様の傾向が見られる。帯域幅に関しては、シミュレーションおよび実測においても共に、所望の周波数帯域(470MHz〜710MHz)において所望するVSWR値(2.3以下)を満たす結果が得られた。
【0081】
なお、今回のモデルでは、給電点の間隔を2.7mmとしているが、この間隔を変化させることでVSWRが変化することを確認しており、本アンテナ構成では、給電点の高さを変えて、所望の周波数帯域において所望のVSWR値をコントロールしても良い。
【0082】
尚、周波数帯域470MHz〜710MHz、VSWR値2.3以下は、ワンセグ放送の受信に望まれる値である。
【0083】
ここまで当該ループアンテナ500の試作品のアンテナ単体の特性と計算結果について説明してきたが、本アンテナの応用例としては、衣類等に装着して使用するウェアラブルアンテナが挙げられる。例えばループパターンを導電性布やFPCを用いて作成することで折りたたみや屈曲可能な柔軟性を有したループアンテナを提供できる。これを例えば、衣服の人体胸部前面や背面に脱着可能な構成とすることで、地上波デジタル放送受信用ループアンテナとなる。
【0084】
また、ループパターンはサイズの小さい内側のループをPWBで構成して外側のループを導電布で構成しても良い。このようにすることによって、アンテナの一部分に形状保持の硬性を有して全体的に柔軟性を持ったループアンテナを提供できる。
【0085】
最後に、多重ループアンテナの指向性特性を示す。
図22は、ループアンテナ500のX-Y座標面における指向性特性を示す図である。図22に示されたように、ループアンテナ500は、所望の周波数帯域の全ての領域において良行な指向性特性を有する。また、他の多重ループアンテナも同様の特性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、地上波デジタル放送向けのループアンテナに適用できる。これに限らず、アンテナ寸法等を調整することにより、例えばUHF帯やUWB、2GHz帯、5GHz帯を1つの帯域又は複数の帯域に跨って使用するループアンテナに適用できる。また、WiMAX、WUSB、WLAN、LTEなどの通信規格に対応したループアンテナに適用できる。
【符号の説明】
【0087】
11、12、13、14、15、16、17、18、19 第1のループ
21、22、23、24、25、26、27、28、29 第2のループ
32、33、34、35、36、37、38,39 第3のループ
44、45、48、49 接続部
56、57、58、59 調整素子
60 給電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電部と、
前記給電部より給電される第1のループと、
前記第1のループの内側に設けられ、前記給電部より逆相給電される第2のループと、
前記第2のループの内側、及び前記第1のループの外側の少なくとも一方に設けられた第3のループと
を有することを特徴とする多重ループアンテナ。
【請求項2】
前記第2のループの内側に前記第3のループを設ける場合、前記第2のループと前記第3のループとを1点で電気的に接続することを特徴とする請求項1記載の多重ループアンテナ。
【請求項3】
前記第1のループの外側に前記第3のループを設ける場合、前記第1のループと前記第3のループとを1点で電気的に接続することを特徴とする請求項1記載の多重ループアンテナ。
【請求項4】
前記第3のループと、前記第1又は第2のループとを電気的に接続する位置は、前記給電部から1/2波長に相当する電気長だけ離れた位置であることを特徴とする請求項2又は3記載の多重ループアンテナ。
【請求項5】
前記第3のループと、前記第1又は第2のループとを接続する位置は、前記給電点に対向する前記第1または第2のループ辺上であることを特徴とする請求項2または3記載の多重ループアンテナ。
【請求項6】
前記第3のループに、調整素子を設けることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一記載の多重ループアンテナ。
【請求項7】
前記調整素子は、前記第3のループに対して内側又は外側の何れか一方に設けることを特徴とする請求項6記載の多重ループアンテナ。
【請求項8】
前記調整素子は、前記第3のループの電流分布における最小地点近傍に設けることを特徴とする請求項6又は7記載の多重ループアンテナ。
【請求項9】
前記第1ないし第3のループは、正方形、長方形、多角形、円形、楕円形の内何れかの形状に揃えることを特徴とする請求項1ないし8の何れか一記載の多重ループアンテナ。
【請求項10】
前記第1ないし第3のループは、ループの中心位置を揃えた形状であることを特徴とする請求項1ないし9の何れか一記載の多重ループアンテナ。
【請求項11】
柔軟性を有する素材で構成されることを特徴とする請求項1ないし10の何れか一記載の多重ループアンテナ。
【請求項12】
PWB、FPC、導電布、導電性シートの何れか又はその組み合わせに構成されることを特徴とする請求項1ないし11の何れか一記載の多重ループアンテナ。
【請求項13】
前記第1ないし第3のループを、自己補対性を有する平面形状に構成したことを特徴とする請求項1ないし12の何れか一記載の多重ループアンテナ。
【請求項14】
給電部と、
導電性のループ部の両端に第1及び第2の給電端子を有して前記給電部より給電される第1のループと、
前記第1のループの内側に設けられ、導電性のループ部の両端に第1及び第2の給電端子を有して前記給電部より給電される第2のループと、
前記第1のループの第1の給電端子と前記第2のループの第2の給電端子とを接続する第1の接続線と、
前記第1のループの第2の給電端子と前記第2のループの第1の給電端子とを接続する第2の接続線と
を有し、
前記第1の接続線、および前記第2の接続線には、前記給電部から極性のことなる電圧または電流が供給される
ことを特徴とする多重ループアンテナ。
【請求項15】
前記第1のループは、所望の周波数の1波長に相当する長さを有する導電性のループ部を有し、前記第2のループは、前記周波数と異なる所望の周波数の1波長に相当する長さを有する導電性のループ部を有することを特徴とする請求項14記載の多重ループアンテナ。
【請求項16】
給電部と、
前記給電部より給電される第1のループと、
前記第1のループの内側、及び前記第1のループの外側の少なくとも一方に1点で電気的に接続されて設けられたループと
を平面形状に構成したことを特徴とする多重ループアンテナ。
【請求項17】
前記第1のループの内側、及び前記第1のループの外側の少なくとも一方に1点で電気的に接続されて設けられたループに、調整素子を設けることを特徴とする請求項16の何れか一記載の多重ループアンテナ。
【請求項18】
請求項1ないし17の何れかに記載の多重ループアンテナを有することを特徴とする衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−200207(P2010−200207A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45248(P2009−45248)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(599016431)学校法人 芝浦工業大学 (109)
【Fターム(参考)】