説明

多重化制御システムおよび多重化制御システムの制御方法

【課題】
一部の制御装置に異常が発生した場合に予備の制御装置を設けなくても通常時と同様の多重化制御機能を維持することを目的とする。
【解決手段】
制御装置2−1〜2−3の診断機能により診断した異常診断結果を異常診断信号23−1〜23−3として操作装置3へ出力し、操作装置3がセンサ1−1〜1−3からの入力信号13−1〜13−3と操作信号63と異常診断信号23−1〜23−3をもとに出力信号37−1〜37−3を切替回路7−1〜7−3に出力し、操作装置3が異常診断信号23−1〜23−3をもとに切替回路7−1〜7−3に切替回路切替信号37−11〜37−31を出力し、切替回路7−1〜7−3が切替回路切替信号37−11〜37−31をもとに出力信号24−1〜24−3を出力信号37−1〜37−3に切り替えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一部の制御装置に異常が発生した場合に多重化制御機能を維持する多重化制御システムおよび多重化制御システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、多重化制御システムは、多重化された制御装置にそれぞれのセンサからの入力信号および操作装置を介した操作信号の各入力信号をもとに、制御対象を制御するための出力信号を論理回路に出力し、論理回路において出力信号の多数決演算を実施した後に、制御対象に制御信号の出力を行うものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
多重化制御システムの1つの制御装置に異常が発生した場合、正常な制御機能を有する他系の制御装置からの出力信号を用いて多数決演算を実施することにより、制御対象への制御信号の出力が可能となり、制御を継続していた。
【0004】
しかしながら、多重化制御システムの用途によっては、運用上の制約により、制御対象を制御するための制御信号を出力する際に、動作可能であるべきチャンネル数が多重化された制御装置の全チャンネル数を必要とする場合がある。
【0005】
このような運用上の制約が適用されている多重化制御システムにおいては、予備の制御装置を設け、多重化された制御装置に異常が発生した場合、予備の制御装置に切替えて対応している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09-44203号公報
【特許文献2】特開平06-259276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した多重化制御システムにおいては、予備の制御装置を設けるスペースが必要であり、予備の制御装置を設けるので価格が高くなる課題があった。
【0008】
本発明は、これらの課題を解決するために、予備の制御装置を設けなくても通常時と同様の多重化制御機能を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る多重化制御システムは、操作信号を出力する操作装置と、センサからの入力信号と前記操作信号をもとに第1の出力信号を出力する制御装置と、前記第1の出力信号をもとに第2の出力信号を出力する切替回路と、前記第2の出力信号をもとに制御対象に制御信号を出力する論理回路とを備え、前記制御装置は、診断機能による異常診断結果を異常診断信号として前記操作装置へ出力し、前記操作装置は、前記センサからの入力信号と前記操作信号をもとにした第3の出力信号と前記異常診断信号をもとにした切替回路切替信号を前記切替回路に出力し、前記切替回路は、前記切替回路切替信号をもとに前記第2の出力信号を前記第3の出力信号に切り替えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る多重化制御システムは、操作信号を出力する操作装置と、複数のセンサからの入力信号と前記操作信号をもとに出力信号を出力する制御装置と、前記出力信号をもとに制御対象に制御信号を出力する論理回路とを備え、前記制御装置は、前記入力信号の異常を診断した場合に正常なセンサからの入力信号と前記操作信号をもとに出力信号を出力することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る多重化制御システムの制御方法は、制御装置がセンサからの入力信号と操作装置からの操作信号をもとに第1の出力信号を切替回路に出力し、前記切替回路が第2の出力信号を論理回路に出力し、前記論理回路が前記第2の出力信号をもとに制御対象を制御するための制御信号を出力し、前記制御装置の診断機能により診断した異常診断結果を異常診断信号として前記操作装置へ出力し、前記操作装置が前記センサからの入力信号と前記操作信号と前記異常診断信号をもとに第3の出力信号を前記切替回路に出力し、前記操作装置が前記異常診断信号をもとに前記切替回路に切替回路切替信号を出力し、前記切替回路が前記切替回路切替信号をもとに前記第2の出力信号を前記第3の出力信号に切り替えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、予備の制御装置を設けなくても通常時と同様の多重化制御機能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における実施例1に係る多重化制御システムを示す図。
【図2】本発明における実施例2に係る多重化制御システムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る多重化制御システムおよび多重化制御システムの制御方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明における実施例1に係る多重化制御システムを示す図である。
【0016】
操作装置3は、オペレータの操作による入力信号である操作信号63をもとに、各制御装置2−1〜2−3に操作信号32−1〜32−3を出力することでオペレータとのインタフェースとして用いられている。この操作装置3には、各制御装置2−1〜2−3と同等の制御機能が付加されており、制御装置としての制御機能を有する。
【0017】
操作装置3では、センサ1−1〜1−3からの入力信号13−1〜13−3に対して、操作装置3に付加した制御機能による処理結果として出力信号37−1〜37−3を切替回路7−1〜7−3に出力する。
【0018】
制御装置2−1〜2−3は、センサ1−1〜1−3からの入力信号12−1〜12−3と操作装置3からの操作信号32−1〜32−3の各入力信号をもとに制御対象5を制御するための出力信号27−1〜27−3を切替回路7−1〜7−3に出力する。また、制御装置2−1〜2−3に診断機能を付加し、診断機能による制御装置の異常診断結果を異常診断信号23−1〜23−3として操作装置3へ出力する。
【0019】
操作装置3は、入力された異常診断信号23−1〜23−3をもとに、切替回路7−1〜7−3に切替回路切替信号37−11〜37−31を出力する。
【0020】
切替回路7−1〜7−3は、切替回路切替信号37−11〜37−31をもとに、切替回路切替信号37−11〜37−31がONした時は、操作装置3からの出力信号37−1〜37−3を切替回路7−1〜7−3の出力信号24−1〜24−3として出力する回路の切り替えを実施する。
【0021】
論理回路4は、切替回路7−1〜7−3からの出力信号24−1〜24−3をもとにn/n論理を実行した結果である制御信号45を制御対象5に出力する。
【0022】
例えば、制御装置2−1に異常が発生した場合、制御装置2−1は診断機能により診断した結果である異常診断信号23−1を操作装置3に伝送する。操作装置3から切替回路7−1に切替回路切替信号37−11が伝送され、切替回路7−1が操作装置3からの出力信号37−1を出力信号24−1とするように切り替わる。操作装置3の制御機能を異常が発生した制御装置2−1の制御機能として利用する。
【0023】
本実施形態によれば、操作装置3に、制御装置としての制御機能を備え、多重化された制御装置の1つに異常が発生した場合には操作装置3の制御機能を異常が発生した制御装置の制御機能として利用することにより、センサ1−1からの出力信号24−1が、入力信号13−1として操作装置3および切替回路7−1を介して論理回路4に継続して出力されるので、全チャンネル数分の入力信号を入力することができ、通常時と同様の多重化制御機能を縮退することなく継続させることができる。
【0024】
これにより、運用上の制約により、多重化された制御装置の全チャンネル数での制御機能を要求されている多重化制御システムにおいて、運用上の制約の逸脱となる可能性を低減し、稼働率を向上することができる。
【実施例2】
【0025】
図2は本発明における実施例2に係る多重化制御システムを示す図である。
【0026】
操作装置3は、オペレータの操作による入力信号である操作信号63をもとに、各制御装置2−1〜2−3に操作信号32−1〜32−3を出力することでオペレータとのインタフェースとして用いられている。
【0027】
センサ1−1は、制御装置2−1に入力信号12−1を入力し、制御装置2−2に入力信号13−1を入力する。同様にセンサ1−2は、制御装置2−2に入力信号12−2を入力し、制御装置2−3に入力信号13−2を入力し、センサ1−3は、制御装置2−3に入力信号12−3を入力し、制御装置2−1に入力信号13−3を入力する。
【0028】
制御装置2−1〜2−3は、センサ1−1〜1−3からの入力信号12−1〜12−3と入力信号13−1〜13−3と操作装置3からの操作信号32−1〜32−3が入力されている。各入力信号をもとに制御対象5を制御するための出力信号24−1〜24−3を論理回路4に出力する。論理回路4は、制御装置2−1〜2−3からの出力信号24−1〜24−3をもとにn/n論理を実行した結果である制御信号45を制御対象5に出力する。
【0029】
また、制御装置2−1〜2−3に診断機能を付加し、診断機能によりセンサからの入力信号の異常を診断し、正常な1つのセンサからの入力信号と操作装置3を介した操作信号63をもとに制御対象5を制御するための出力信号24−1〜24−3を論理回路4に出力する。
【0030】
例えば、1つのセンサ1−1に異常が発生した場合、センサ1−1から制御装置2−1への入力信号12−1に異常が発生する。制御装置2−1は、診断機能により入力信号12−1の異常を診断すると、センサ1−3からの入力信号13−3と操作装置3からの操作信号32−1の各入力信号をもとに出力信号24−1を論理回路4に継続して出力する。
【0031】
本実施形態によれば、各制御装置に2つのセンサからの入力信号を入力することで、1つのセンサに異常が発生した場合でも、正常な他系のセンサからの入力信号により制御装置から出力信号を論理回路に継続して出力されるので、全チャンネル数分の入力信号を入力することができ、通常時と同様の多重化制御機能を縮退することなく継続させることができる。
【0032】
これにより、運用上の制約により、多重化された制御装置の全チャンネル数での制御機能を要求されている多重化制御システムにおいて、運用上の制約の逸脱となる可能性を低減し、稼働率を向上することができる。
【0033】
なお、以上の説明は単なる例示であり、本発明は上述の実施の形態に限定されず、様々な形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
1−1〜1−3 センサ
2−1〜2−3 制御装置
3 操作装置
4 論理回路
5 制御対象
7−1〜7−3 切替回路
12−1〜12−3 入力信号
13−1〜13−3 入力信号
23−1〜23−3 異常診断信号
24−1〜24−3 出力信号
27−1〜27−3 出力信号
32−1〜32−3 操作信号
37−1〜37−3 出力信号
37−11〜37−31 切替回路切替信号
45 制御信号
63 操作信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作信号を出力する操作装置と、
センサからの入力信号と前記操作信号をもとに第1の出力信号を出力する制御装置と、
前記第1の出力信号をもとに第2の出力信号を出力する切替回路と、
前記第2の出力信号をもとに制御対象に制御信号を出力する論理回路と
を備え、
前記制御装置は、診断機能による異常診断結果を異常診断信号として前記操作装置へ出力し、
前記操作装置は、前記センサからの入力信号と前記操作信号をもとにした第3の出力信号と前記異常診断信号をもとにした切替回路切替信号を前記切替回路に出力し、
前記切替回路は、前記切替回路切替信号をもとに前記第2の出力信号を前記第3の出力信号に切り替えることを特徴とする多重化制御システム。
【請求項2】
操作信号を出力する操作装置と、
複数のセンサからの入力信号と前記操作信号をもとに出力信号を出力する制御装置と、
前記出力信号をもとに制御対象に制御信号を出力する論理回路と
を備え、
前記制御装置は、前記入力信号の異常を診断した場合に正常なセンサからの入力信号と前記操作信号をもとに出力信号を出力することを特徴とする多重化制御システム。
【請求項3】
制御装置がセンサからの入力信号と操作装置からの操作信号をもとに第1の出力信号を切替回路に出力し、
前記切替回路が第2の出力信号を論理回路に出力し、
前記論理回路が前記第2の出力信号をもとに制御対象を制御するための制御信号を出力し、
前記制御装置の診断機能により診断した異常診断結果を異常診断信号として前記操作装置へ出力し、
前記操作装置が前記センサからの入力信号と前記操作信号と前記異常診断信号をもとに第3の出力信号を前記切替回路に出力し、
前記操作装置が前記異常診断信号をもとに前記切替回路に切替回路切替信号を出力し、
前記切替回路が前記切替回路切替信号をもとに前記第2の出力信号を前記第3の出力信号に切り替えることを特徴とする多重化制御システムの制御方法。
【請求項4】
制御装置が複数のセンサからの入力信号と操作装置からの操作信号をもとに出力信号を論理回路に出力し、
前記論理回路が前記出力信号をもとに制御対象を制御する制御信号を出力し、
前記制御装置が前記センサからの入力信号の異常を診断した場合に正常なセンサからの入力信号と前記操作信号をもとに出力信号を出力することを特徴とする多重化制御システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−257246(P2010−257246A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106819(P2009−106819)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】