説明

多重同時周波数検出

【課題】コンピュータシステムの入力デバイスとして用いるタッチセンサパネルを提供する。
【解決手段】タッチセンサパネル上に接触画像を発生させるための複数の刺激周波数及び位相の使用。複数の感知チャンネルの各々は、タッチセンサパネル内の列に結合することができ、かつ複数の混合器を有することができる。感知チャンネル内の各混合器は、特定周波数の復調周波数を発生させることができる回路を利用することができる。複数の段階の各々で、様々な位相の選択された周波数を用いてタッチセンサパネルの行を同時に刺激することができ、各感知チャンネル内の複数の混合器は、選択された周波数を用いて各感知チャンネルに接続した列から受信した信号を復調するように設定することができる。全ての段階の完了後に、複数の混合器からの復調済み信号は、各周波数でのタッチセンサパネルに対する接触画像を判断する計算に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータシステムのための入力デバイスとして用いられるタッチセンサパネルに関し、より具体的には、ノイズのスペクトル解析を実行して低ノイズ刺激周波数を識別する複数のデジタル混合器の使用と、タッチセンサパネル上の接触イベントを検出して位置を定めるための複数の刺激周波数及び位相の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コンピュータシステムにおいて操作を行う上で、ボタン又はキー、マウス、トラックボール、タッチセンサパネル、ジョイスティック、及びタッチスクリーンなどのような多くの種類の入力デバイスが利用可能である。特に、タッチスクリーンは、操作の容易性及び多用性、並びに価格の低下によって益々一般的になってきている。タッチスクリーンは、タッチセンサ式表面を有する透明パネルとすることができるタッチセンサパネルと、タッチセンサ式表面が表示デバイスの可視区域を実質的に覆うことができるように、パネルの背後に位置決めすることができる表示デバイスとを含むことができる。タッチスクリーンは、ユーザが、表示デバイスによって表示されているユーザインタフェース(UI)によって指示された位置で、指、スタイラス、又は他の物体を用いてタッチセンサパネルに触れることにより様々な機能を実行することを可能にすることができる。一般的に、タッチスクリーンは、タッチセンサパネル上の接触イベント及び接触イベントの位置を認識することができ、コンピュータシステムは、次に、接触イベントの時点で現れている表示に従って接触イベントを解釈することができ、この後、接触イベントに基づいて1つ又はそれよりも多くのアクションを実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開出願第2006/0097991号
【特許文献2】米国特許出願第10/842、862号
【特許文献3】米国特許出願第11/619、433号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タッチセンサパネルは、行及び列トレースのマトリックスから形成することができ、センサ又はピクセルは、これらの行と列が誘電体によって分離されながらも互いに交差する箇所に存在する。各行は、刺激信号によって駆動することができ、刺激信号に起因して列内に注入される電荷が接触の量に比例するので、接触位置は識別することができる。しかし、刺激信号に必要とされる可能性がある高電圧は、センサパネル回路を大きなサイズのものにし、2つ又はそれよりも多くの個別のチップに分離することを強いる可能性がある。更に、容量ベースのタッチセンサパネルと液晶ディスプレイ(LCD)のような表示デバイスとで形成されるタッチスクリーンは、LCDを作動させるのに必要な電圧スイッチングがタッチセンサパネルの列上へ容量的に結合して不正確な接触測定を引き起こす可能性があるので、ノイズ問題に悩まされる可能性がある。更に、システムに給電又は充電するのに用いられる交流(AC)アダプタも、タッチスクリーン内にノイズを結合する可能性がある。他のノイズ発生源は、システム内のスイッチング電源、バックライトインバータ、及び発光ダイオード(LED)パルスドライバを含むことができる。これらのノイズ発生源の各々は、時間に関して変化する可能性がある固有の干渉周波数及び振幅を有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ノイズのスペクトル解析を実施して低ノイズの刺激周波数を識別する複数のデジタル混合器の使用と、タッチセンサパネル上の接触イベントを検出して位置を定めるための複数の刺激周波数及び位相の使用とに関する。複数の感知チャンネルの各々は、タッチセンサパネル内の列に結合することができ、複数の混合器を有することができる。各感知チャンネル内の各混合器は、特定の周波数、位相、及び遅延を有する復調周波数を発生するように制御することが可能な回路を利用することができる。
【0006】
スペクトルアナライザ機能を実行する時には、刺激信号は、タッチセンサパネル内の行のいずれにも印加されない。全ての検出ノイズを含むタッチセンサパネルに印加されている総電荷を表すことができる全ての感知チャンネルの出力合計は、各感知チャンネル内の混合器の各々にフィードバックすることができる。混合器は対にすることができ、混合器の各対は、特定の周波数の同位相(I)及び直交(Q)信号を用いて全ての感知チャンネルの合計を復調することができる。各混合器対の復調済み出力は、この特定周波数でのノイズのマグニチュードを計算するために用いることができ、マグニチュードが低い程、この周波数でのノイズは低い。その後のタッチセンサパネル走査機能に使用するために、いくつかの低ノイズ周波数を選択することができる。
【0007】
タッチセンサパネル走査機能を実行する時には、複数の段階の各々において、様々な位相の選択された低ノイズ周波数を用いてタッチセンサパネルの行を同時に刺激することができ、各感知チャンネル内の複数の混合器は、選択された低ノイズ周波数を用いて、各感知チャンネルに接続した列から受信した信号を復調するように設定することができる。複数の混合器からの復調済み信号は、その後、保存することができる。全ての段階が完了した後に、この保存した結果は、各周波数でのタッチセンサパネルに対する接触の画像を判断する計算に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に従ってノイズのスペクトル解析を実施して低ノイズの刺激周波数を識別する複数のデジタル混合器を利用することができ、タッチセンサパネル上の接触イベントを検出して位置を定めるために複数の刺激周波数及び位相を利用することができる例示的なコンピュータシステムを示す図である。
【図2a】本発明の一実施形態による例示的な相互キャパシタンスタッチセンサパネルを示す図である。
【図2b】本発明の一実施形態による定常状態(非接触)条件における例示的なピクセルの側面図である。
【図2c】本発明の一実施形態による動的(接触)条件における例示的なピクセルの側面図である。
【図3a】本発明の一実施形態による例示的な感知チャンネル又はイベント検出及び復調回路の一部分を示す図である。
【図3b】本発明の一実施形態によるN個の例示的な感知チャンネル又はイベント検出及び復調回路の簡易ブロック図である。
【図3c】本発明の一実施形態によるスペクトルアナライザ又はパネル走査論理回路のいずれとしても設定することができる10個の感知チャンネルの例示的なブロック図である。
【図4a】本発明の一実施形態によるLCD相及びタッチセンサパネル相を示す例示的なタイミング図である。
【図4b】本発明の一実施形態によるLCD相及びタッチセンサパネル相を表す例示的な流れ図である。
【図4c】本発明の一実施形態による例示的な容量式走査計画を示す図である。
【図4d】本発明の一実施形態による異なる低ノイズ周波数において完全な画像結果を計算するための特定のチャンネルMに関する例示的計算を示す図である。
【図5a】本発明の一実施形態に従ってノイズのスペクトル解析を実施し、低ノイズの刺激周波数を識別する複数のデジタル混合器を利用することができ、タッチセンサパネル上の接触イベントを検出して位置を定めるために複数の刺激周波数及び位相を利用することができる例示的な携帯電話を示す図である。
【図5b】本発明の一実施形態に従ってノイズのスペクトル解析を実施し、低ノイズの刺激周波数を識別する複数のデジタル混合器を利用することができ、タッチセンサパネル上の接触イベントを検出して位置を定めるために複数の刺激周波数及び位相を利用することができる例示的なデジタルオーディオプレーヤを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の好ましい実施形態の説明では、本出願の一部を成し、本発明を実施することができる特定的な実施形態を示す添付図面を参照する。本発明の実施形態の範囲を逸脱することなく、他の実施形態を用いることができ、構造的変更を加えることができることは理解されるものとする。
本発明は、ノイズのスペクトル解析を実施して低ノイズの刺激周波数を識別する複数のデジタル混合器の使用と、タッチセンサパネル上の接触イベントを検出して位置を定めるための複数の刺激周波数及び位相の使用とに関する。複数の感知チャンネルの各々は、タッチセンサパネル内の列に結合することができ、複数の混合器を有することができる。感知チャンネル内の各混合器は、特定の周波数、位相、及び遅延を有する復調周波数を発生させるように制御することが可能な回路を利用することができる。
【0010】
スペクトルアナライザ機能を実行する時には、タッチセンサパネル内の行のいずれにも刺激信号は印加されない。全ての検出ノイズを含むタッチセンサパネルに印加される総電荷を表すことができる全ての感知チャンネルの出力合計は、各感知チャンネル内の混合器の各々にフィードバックすることができる。混合器は対にすることができ、混合器の各対は、特定の周波数の同位相(I)及び直交(Q)信号を用いて全ての感知チャンネルの合計を復調することができる。各混合器対の復調済み出力は、この特定の周波数でのノイズのマグニチュードを計算するために用いることができ、このマグニチュードが低い程、この周波数でのノイズは低い。その後のタッチセンサパネル走査機能における使用のために、いくつかの低ノイズ周波数を選択することができる。
【0011】
タッチセンサパネル走査機能を実行する時には、複数の段階の各々において、様々な位相の選択された低ノイズ周波数を用いて、タッチセンサパネルの行を同時に刺激することができ、各感知チャンネル内の複数の混合器は、選択された低ノイズ周波数を用いて、各感知チャンネルに接続した列から受信する信号を復調するように設定することができる。複数の混合器からの復調済み信号は、その後、保存することができる。この保存した結果は、全ての段階が完了した後に、各周波数でのタッチセンサパネルでの接触の画像を判断する計算に用いることができる。
【0012】
本明細書では、本発明の一部の実施形態を相互キャパシタンスタッチセンサに関して説明する場合があるが、本発明の実施形態は、そのように限定されず、自己容量式タッチセンサのような他種のタッチセンサに一般的に適用可能であることを理解すべきである。更に、本明細書では、タッチセンサパネル内のタッチセンサを行及び列を有するタッチセンサの直交アレイに関して説明する場合があるが、本発明の実施形態は、直交アレイに限定されず、対角、同心円、及び3次元、並びにランダム方向を含むあらゆる次元数及び方向に構成されたタッチセンサに一般的に適用可能にすることができることを理解すべきである。更に、本明細書に説明するタッチセンサパネルは、シングルタッチ又はマルチタッチセンサパネルのいずれかとすることができ、この後者は、2004年5月6日に出願され、2006年5月11日に米国特許公開出願第2006/0097991号として公開された「マルチポイントタッチスクリーン」という名称の本出願人の現在特許出願中の米国特許出願第10/842、862号に説明されており、この内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に従ってノイズのスペクトル解析を実施し、低ノイズの刺激周波数を識別する複数のデジタル混合器を利用することができ、タッチセンサパネル上での接触イベントを検出して位置を定めるために複数の刺激周波数及び位相を利用することができる例示的なコンピュータシステム100を示している。コンピュータシステム100は、1つ又はそれよりも多くのパネルプロセッサ102、周辺機器104、及びパネルサブシステム106を含むことができる。1つ又はそれよりも多くのパネルプロセッサ102は、例えば、ARM968プロセッサ又は同様の機能及び能力を有する他のプロセッサを含むことができる。しかし、他の実施形態では、パネルプロセッサ機能は、代わりに、状態機械のような専用論理回路によって実施することができる。周辺機器104は、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は他の種類のメモリ又はストレージ、ウォッチドッグタイマなどを含むことができるが、これらに限定されない。パネルサブシステム106は、1つ又はそれよりも多くの感知チャンネル108、チャンネル走査論理回路110、及びドライバ論理回路114を含むことができるが、これらに限定されない。チャンネル走査論理回路110は、RAM112にアクセスし、感知チャンネルからデータを自律的に読取り、更に感知チャンネルに制御を与えることができる。更に、チャンネル走査論理回路110は、タッチセンサパネル124の行に選択的に印加することができる様々な周波数及び位相の刺激信号116を発生させるようにドライバ論理回路114を制御することができる。一部の実施形態では、パネルサブシステム106、パネルプロセッサ102、及び周辺機器104は、単一の特定用途向け集積回路(ASIC)へと集積することができる。
【0014】
タッチセンサパネル124は、複数の行トレース又は駆動線、並びに複数の列トレース又は感知線を有する容量性感知媒体を含むことができるが、他の感知媒体を用いることもできる。行及び列トレースは、酸化インジウム錫(ITO)又は酸化アンチモン錫(ATO)のような透明の導電媒体で形成することができるが、銅のような他の透明及び不透明の材料を用いることもできる。一部の実施形態では、行及び列トレースは、互いに対して垂直とすることができるが、他の実施形態では、他の非直交方向が可能である。例えば、極座標系では、感知線は、同心円とすることができ、駆動線は、放射状に延びる線とすることができる(又は、その逆も同様である)。従って、本明細書に用いる「行」及び「列」、「第1の次元」及び「第2の次元」、又は「第1の軸」及び「第2の軸」という用語は、直交グリッドだけではなく、第1及び第2の次元を有する他の幾何学的構成の交差トレース(例えば、極座標構成の同心及び放射状線)を含むこと意図していると理解すべきである。行及び列は、実質的に透明な基板の片面に実質的に透明な誘電体で分離して形成するか、又はこの基板の対向する両面に形成するか、又はこの誘電体によって分離した2つの別々の基板上に形成することができる。
【0015】
トレースが互いに上下に通過(交差)する(しかし、互いに直接的な電気接触を持たない)トレースの「交差点」では、トレースは、本質的に2つの電極を形成することができる(2つよりも多いトレースが交差することもできるが)。行及び列トレースの各交差点は、容量性感知ノードの役割を達成することができ、かつ画素(ピクセル)126として見ることができ、これは、タッチセンサパネル124を接触の「画像」を取り込むものとして見る場合に、特に有用なものとすることができる。(言い換えれば、パネルサブシステム106が、タッチセンサパネル内の各タッチセンサにおいて接触イベントを検出したか否かを判断した後に、マルチタッチパネル内の接触イベントが発生したタッチセンサのパターンを接触の「画像」(例えば、パネルに触れる指のパターン)として見ることができる。)行電極と列電極の間のキャパシタンスは、所定の行が直流(DC)電圧レベルに保持される時には、浮遊キャパシタンスとして現れ、所定の行が交流(DC)信号によって刺激を受ける時には、相互信号キャパシタンスCsigとして現れる。タッチセンサパネルの近く又はその上での指又は他の物体の存在は、触れられているピクセルにおいて存在する信号電荷Qsigを測定することによって検出することができ、Qsigは、Csigの関数である。タッチセンサパネル124の各列は、パネルサブシステム106内の感知チャンネル108(本明細書ではイベント検出及び復調回路とも呼ぶ)を駆動することができる。
【0016】
コンピュータシステム100はまた、パネルプロセッサ102から出力を受信し、この出力に基づいてアクションを実施するためのホストプロセッサ128を含むことができ、これらのアクションは、カーソル又はポインタのような物体を移動させ、スクロール又はパンを行い、制御設定を調節し、ファイル又は文書を開き、メニューを表示し、選択を行い、命令を実行し、ホストデバイスに接続した周辺デバイスを作動させ、電話呼び出しに応答し、電話呼び出しを行い、電話呼び出しを終了し、音量又はオーディオ設定を変更し、住所、多くの場合に掛ける電話番号、着信、不在着信のような電話通信に関連する情報を記憶し、コンピュータ又はコンピュータネットワークにログオンし、権限が付与された個人にコンピュータ又はコンピュータネットワークの制限区域へのアクセスを可能にし、ユーザの好むコンピュータ表示画面構成に関連付けられたユーザプロフィールをロードし、ウェブコンテンツへのアクセスを可能にし、特定のプログラムを起動し、及び/又はメッセージを暗号化又は復号するなどを含むことができるが、これらに限定されない。ホストプロセッサ128はまた、パネル処理には関連がなくてもよい追加機能を実行することができ、プログラムストレージ132、及びデバイスのユーザにUIを提供するためのLCDディスプレイのような表示デバイス130に結合することができる。
【0017】
一部のシステムでは、センサパネル124は、高電圧ドライバ論理回路によって駆動することができる。高電圧ドライバ論理回路によって必要とされる可能性が高い高電圧(例えば、18V)は、大幅に低いデジタル論理回路電圧レベル(例えば、1.7から3.3V)で作動することができるパネルサブシステム106から高電圧ドライバ論理回路を分離して形成することを強いる可能性がある。しかし、本発明の実施形態では、オフチップの高電圧ドライバ論理回路をオンチップドライバ論理回路114で置換することができる。パネルサブシステム106は、低いデジタル論理回路レベルの供給電圧しか持たない可能性が高いが、オンチップドライバ論理回路114は、2つのトランジスタを互いにカスケード接続して電荷ポンプ115を形成することによって、デジタル論理回路レベルの供給電圧よりも高い供給電圧を発生させることができる。電荷ポンプ115は、デジタル論理回路レベルの供給電圧の約2倍(例えば、3.4Vから6.6Vへ)の振幅を有することができる刺激信号116(Vstim)を発生させるために用いることができる。図1は、電荷ポンプ115をドライバ論理回路114から分離して示しているが、電荷ポンプは、ドライバ論理回路の一部とすることもできる。
【0018】
図2aは、本発明の実施形態による例示的な相互キャパシタンスタッチセンサパネル200を示している。図2aは、行204トレースと列206トレースとの交差点に位置する各ピクセル202における浮遊キャパシタンスCstrayの存在を示している(図2aでは、図を簡素化するために、1つの列のみのCstrayしか例示していないが)。図2aの例では、AC刺激Vstim214、Vstim215、及びVstim217をいくつかの行に印加することができる一方、他の行をDCに接続することができる。後に説明することになるが、Vstim214、Vstim215、及びVstim217は、異なる周波数及び位相のものとすることができる。行における各刺激信号は、影響を受けるピクセルに存在する相互キャパシタンスを通じて、列内への電荷Qsig=Csig×Vstimの注入を引き起こすことができる。指、掌、又は他の物体が、影響を受けるピクセルの1つ又はそれよりも多くに存在する時に、注入される電荷の変化(Qsig_sense)を検出することができる。Vstim信号214、215、及び217は、1つ又はそれよりも多くの正弦波バーストを含むことができる。図2aは、行204と列206とが実質的に直角であるように例示しているが、上述のように、これらをそのように整列させる必要はないことに注意されたい。上述のように、各列206は、感知チャンネル(図1の感知チャンネル108を参照されたい)に接続することができる。
【0019】
図2bは、本発明の実施形態による定常状態(非接触)条件にある例示的なピクセル202の側面図である。図2bには、誘電体210によって分離した列206及び行204のトレース又は電極の間の相互キャパシタンスの電界方向線208の電界を示している。
【0020】
図2cは、動的(接触)条件にある例示的なピクセル202の側面図である。図2cでは、指212がピクセル202の近くに置かれている。指212は、信号周波数において低インピーダンスの物体であり、列トレース204から身体へのACキャパシタンスCfingerを有する。身体は、約200pFの接地への自己キャパシタンスCbodyを有し、ここで、Cbodyは、Cfingerよりも大幅に大きい。指212が、行電極と列電極の間の一部の電界方向線208(誘電体を出て行電極の上方の空気を通過する縁電界)を遮蔽した場合には、これらの電界方向線は、指及び身体内に固有のキャパシタンス経路を通じて接地へと短絡され、その結果、定常状態信号キャパシタンスCsigは、ΔCsigだけ低減する。言い換えれば、組み合わさった身体及び指のキャパシタンスは、Csigを量ΔCsig(本明細書ではCsig_senseとも呼ぶことができる)だけ低減する役割を達成し、接地への短絡又は動的帰還経路としての役割を達成することができ、電界の一部を遮断し、その結果、正味の信号キャパシタンスが低減する。このピクセルにおける信号キャパシタンスは、Csig−ΔCsigになり、ここで、Csigは、静的(非接触)成分を表し、ΔCsigは、動的(接触)成分を表している。Csig−ΔCsigは、指、掌、又は他の物体が全ての電界、特に誘電体内に完全に留まる電界を遮断することができないので、常に非ゼロである可能性があることに注意されたい。更に、指は、マルチタッチパネルに対してより強く又はより完全に押されるに従って平坦化する傾向を有する場合があり、電界のより多くを遮断し、従って、ΔCsigを変数とすることができ、指がパネルに対して如何に完全に押下されたか(すなわち、「非接触」から「完全接触」までの範囲)を表すことができることを理解すべきである。
【0021】
図3aは、本発明の実施形態による例示的な感知チャンネル又はイベント検出及び復調回路300の一部分を示している。1つ又はそれよりも多くのチャンネル300をパネルサブシステム内に存在させることができる。タッチセンサパネルからの各列は、感知チャンネル300に接続することができる。各感知チャンネル300は、仮想接地増幅器302、増幅器出力回路309(下記により詳細に説明する)、信号混合器304、及び積算器308を含むことができる。増幅器出力回路309は、図を簡素化するために図3aには示していない他の信号混合器及び関連回路に接続することができることに注意されたい。
【0022】
DC増幅器又は電荷増幅器と呼ぶことができる仮想接地増幅器302は、フィードバックコンデンサCfb及びフィードバック抵抗器Rfbを含むことができる。一部の実施形態では、小さいVstim振幅に起因して、行内に注入することができる電荷量は非常に少ないので、Cfbは、一部の過去の設計におけるものよりも大幅に小さくすることができる。しかし、他の実施形態では、全行に至るまでの行を一時点で同時に刺激することができ、これは、電荷を追加する傾向を有するので、Cfbのサイズは低減しない。
【0023】
図3aは、1つ又はそれよりも多くの入力刺激Vstimが、タッチセンサパネル内の1つ又はそれよりも多くの行に印加され、かつ指、掌、又は他の物体が存在しない時に、感知チャンネル300に接続したタッチセンサパネルから寄与を受けることができる総定常状態信号キャパシタンスCsig_totを破線で示している。定常状態の非接触条件では、列に注入される総信号電荷Qsig_totは、各刺激を受ける行によって列内に注入される全電荷の合計である。言い換えれば、Qsig_tot=Σ(刺激を受ける全行におけるCsig*Vstim)である。ある列に結合された各感知チャンネルは、その列内の1つ又はそれよりも多くのピクセルにおける指、掌、又は他の身体部分又は物体の存在に起因する総信号電荷におけるいかなる変化も検出することができる。言い換えれば、Qsig_tot_sense=Σ(刺激を受ける全行における(Csig−Csig_sense)*Vstim)である。
【0024】
上述のように、タッチセンサパネル上の各ピクセルには、固有の浮遊キャパシタンスCstrayが存在する可能性がある。仮想接地電荷増幅器302では、基準電圧Vrefに結合された+(非反転)入力と共に、−(反転)入力もVrefへと駆動することができ、DC作動点を確立することができる。従って、仮想接地電荷増幅器302への入力においてどれ程のCsigが存在するかに関わらず、−入力を常にVrefへと駆動することができる。仮想接地電荷増幅器302の特性から、Cstrayの両端の電圧は電荷増幅器によって一定に保たれるために、Cstrayに蓄積されるいかなる電荷Qstrayも一定である。従って、浮遊キャパシタンスCstrayがどれ程−入力に追加されようとも、Cstrayへの正味の電荷は常にゼロになる。従って、対応する行がDCに保たれる時、及び刺激を受ける時に純粋にCsig及びVstimの関数である時には、入力電荷はゼロである。いずれの場合にも、Csigの両端には電荷が存在しないので、浮遊キャパシタンスは排除され、いかなる式からも本質的に脱落する。従って、手がタッチセンサパネルの上にある時でさえ、Cstrayは増大することができるが、出力は、Cstrayにおける電荷によって影響を受けなくなる。
【0025】
仮想接地増幅器302の利得は、小さいものとすることができ(例えば、0.1)、Csig_totとフィードバックコンデンサCfbとの比として計算することができる。調節可能なフィードバックコンデンサCfbは、電荷Qsigを電圧Voutに変換することができる。仮想接地増幅器302の出力Voutは、比−Csig/Cfbに、Vrefを基準とするVstimを乗じたものとして計算することができる電圧である。従って、Vstim信号は、仮想接地増幅器302の出力において、非常に小さい振幅を有する信号として出現させることができる。しかし、指が存在する時には、信号キャパシタンスは、ΔCsigだけ低減するので、出力振幅は、更に一層低減させることができる。電荷増幅器302の出力は、全行の刺激信号の重ね合わせに、その電荷増幅器に関連付けられた列上のCsig値の各々を乗じたものである。列は、正の位相の周波数によって駆動される一部のピクセルを有し、同時に負の位相の(又は、180度位相がずれた)同じ周波数で駆動される他のピクセルを有することができる。この場合には、この周波数にある電荷増幅器出力信号の総成分は、Csig値の各々に刺激波形の各々を乗じた積の合計に関連付けられた振幅及び位相のものとすることができる。例えば、2つの行が正の位相で駆動され、2つの行が負の位相で駆動され、Csig値が全て等しい場合には、全出力信号はゼロになる。指が、正の位相で駆動されているピクセルのうちの1つに近づくと、この周波数の全出力は、負の位相を有することになる。
【0026】
Vstimは、タッチセンサパネル内の行に印加されると、正弦波バースト(例えば、スペクトル的に幅狭にするために滑らかに変化する振幅を有する正弦波)又はそうでなければDC信号である他の非DC信号として発生させることができるが、一部の実施形態では、Vstimを表す正弦波は、他の非DC信号に先行及び追従させることができる。Vstimが行に印加され、感知チャンネル300に接続した列において浮遊キャパシタンスが存在する場合には、この特定の刺激に関連付けられた電荷増幅器302の出力は、電荷増幅器302の利得に対応するVstimの頂点間(p−p)振幅のある一定の割合とすることができる定常状態条件でのp−p振幅を有するVrefを中心とする正弦波列とすることができる。例えば、Vstimが6.6Vのp−p正弦波を含み、電荷増幅器の利得が0.1である場合には、この行に関連付けられた電荷増幅器の出力は、約0.67Vのp−p正弦波とすることができる。全行からの信号は、前置増幅器の出力において重ね合わせられることに注意すべきである。前置増幅器からのアナログ出力は、ブロック309においてデジタルに変換される。309からの出力は、デジタル信号混合器(これはデジタル逓倍器である)304内で復調波形Fstimと混合させることができる。
【0027】
Vstimは、特に矩形波で形成される場合に望ましくない高調波を生成する可能性があるから、復調波形Fstim316は、数値制御式発振器(NCO)315からデジタルで発生させてVstimに同期させることができるガウス正弦波とすることができる。デジタル復調のために用いられるNCO315に加えて、独立したNCOをデジタル/アナログ変換器(DAC)に接続することができ、その出力は、任意的に反転して、行の刺激として用いることができることを理解すべきである。NCO315は、出力周波数を設定する数字制御入力、遅延を設定する制御入力、及びNCOが同位相(I)又は直交(Q)信号を発生させることを可能にする制御入力を含むことができる。信号混合器304は、出力からFstim316を低減することによって電荷増幅器310の出力を復調することができ、より良好なノイズ除去をもたらす。信号混合器304は、一例ではFstimの上下約±30kHzとすることができる通過域の外側の全周波数を除去することができる。このノイズ除去は、全てが高感度(フェムトファラドレベルの)感知チャンネル300と干渉する可能性があるいずれかの特性周波数を有する、802.11及びBluetoothなどのような多くのノイズ発生源を有する高ノイズ環境において有用なものとすることができる。復調される対象の各周波数において、信号混合器304の入力における信号の周波数は同じであるから、信号混合器304は、本質的に同期整流器であり、その結果、信号混合器出力314は、本質的に整流済みガウス正弦波である。
【0028】
図3bは、本発明の実施形態によるN個の例示的な感知チャンネル又はイベント検出及び復調回路300の簡易ブロック図を示している。上述のように、感知チャンネル300内の各電荷増幅器又はプログラマブル利得増幅器(PGA)302は、増幅器出力回路309に接続することができ、増幅器出力回路309は、更に、マルチプレクサ303を通じてR個の信号混合器304に接続することができる。増幅器出力回路309は、アンチエイリアス処理フィルタ301、ADC303、及び結果レジスタ305を含むことができる。各信号混合器304は、別々のNCO315からの信号で復調することができる。各信号混合器304の復調済み出力は、別々の積算器308及び結果レジスタ307に接続することができる。
【0029】
過去の設計では、高電圧Vstim信号(例えば、18V)から発生する大量の電荷を検出したと考えられるPGA302は、ここでは低電圧Vstim信号(例えば、6.6V)から発生する少量の電荷を検出することができることを理解すべきである。更に、各NCO310は、異なる周波数、遅延、及び位相の信号を発生させることができるので、NCO315は、電荷増幅器302の出力を同時ではあるが異なって復調させることができる。従って、特定の感知チャンネル300内の各信号混合器304は、過去の設計の約1/Rの電荷を表す出力を発生させることができるが、各々が異なる周波数で復調を行うR個の混合器が存在するので、各感知チャンネルは、尚も過去の設計におけるものとほぼ同じ総電荷量を検出することができる。
【0030】
図3bでは、信号混合器304及び積算器308は、ASIC内部のアナログ回路内ではなく、デジタルで実施することができる。混合器及び積算器をASIC内部のアナログ回路内ではなくデジタルで実施することにより、ダイ空間を15%節約することができる。
図3cは、本発明の実施形態に従ってスペクトルアナライザ又はパネル走査論理回路のいずれとしても設定することができる10個の感知チャンネル300の例示的なブロック図を示している。図3cの例では、10個の感知チャンネル300の各々は、タッチセンサパネル内の別々の列に接続することができる。各感知チャンネル300は、下記により詳細に説明するマルチプレクサ又はスイッチ303を含むことができることに注意されたい。図3cの実線の接続は、パネル走査論理回路として設定された感知チャンネルを表すことができ、破線の接続は、スペクトルアナライザとして設定された感知チャンネルを表すことができる。これより図3cをより詳細に解説する。
【0031】
図4aは、本発明の実施形態によるLCD相402、並びに垂直ブランキング又はタッチセンサパネル相404を示す例示的なタイミング図400を示している。LCD相402中に、LCDは、活発にスイッチングを行うことができ、画像を発生させるのに必要な電圧を発生させることができる。この時点では、パネル走査は実行されない。タッチセンサパネル相404中に、感知チャンネルは、低ノイズ周波数を識別するためにスペクトルアナライザとして設定することができ、更に、接触の画像を検出して位置を定めるためにパネル走査論理回路として設定することができる。
【0032】
図4bは、本発明の実施形態による図3cの例(現在の例)に対応するLCD相402及びタッチセンサパネル相404を表す例示的な流れ図406を示している。段階0では、上述のようにLCDを更新することができる。
段階1〜3は、低ノイズ周波数識別相406を表すことができる。段階1では、感知チャンネルは、スペクトルアナライザとして設定することができる。スペクトルアナライザの目的は、その後のパネル走査における使用のためのいくつかの低ノイズ周波数を識別することである。タッチセンサパネルの行のいずれにも刺激周波数が印加されなければ、全ての検出ノイズを含むタッチセンサパネルに印加されている総電荷を表す全ての感知チャンネルの出力合計は、各感知チャンネル内の混合器の各々にフィードバックすることができる。混合器は対にすることができ、混合器の各対は、特定の周波数の同位相(I)及び直交(Q)信号を用いて全ての感知チャンネルの合計を復調することができる。各混合器対の復調済み出力は、この特定の周波数でのノイズのマグニチュードを計算するために用いることができ、マグニチュードが低い程、この周波数でのノイズは低い。
【0033】
段階2では、段階1の処理を異なる周波数の組に対して繰り返すことができる。
段階3では、最低計算マグニチュード値を生じる周波数を識別することによって、その後のタッチセンサパネル走査における使用のためのいくつかの低ノイズ周波数を選択することができる。
段階4〜19は、パネル走査相408を表すことができる。段階4〜19では、感知チャンネルは、パネル走査論理回路として設定することができる。段階4〜19の各々において、タッチセンサパネルの行を同時に刺激するために、選択された低ノイズ周波数の様々な位相を用いることができ、各感知チャンネル内の複数混合器は、選択された低ノイズ周波数を用いて、各感知チャンネルに接続した列から受信する信号を復調するように設定することができる。この後、複数の混合器からの復調済み信号を保存することができる。
段階20では、全ての段階が完了した後に、この保存した結果は、選択された低ノイズ周波数の各々においてタッチセンサパネルに対する接触の画像を判断する計算に用いることができる。
【0034】
再度図3cに示す現在の例を参照すると、感知チャンネル300は、スペクトルアナライザとして設定されており、同時にタッチセンサパネルの行のいずれにも刺激信号は印加されていない。この例では、10個の列、従って、10個の感知チャンネル30、及び各感知チャンネル300において3個の混合器304、つまり総計で30個の混合器が存在する。あらゆる感知チャンネル300内の全ての増幅器出力回路309の出力は、加算回路340を用いて互いに合計することができ、電荷増幅器302の代わりに加算回路340の出力を選択するように設定することができるマルチプレクサ又はスイッチ303を通じて、全ての混合器304内に供給することができる。
【0035】
感知チャンネルがスペクトルアナライザとして設定されている間に、列上への背景結合を測定することができる。いかなる行にもVstimが印加されないので、いかなるピクセルにおいてもCsigが存在せず、パネル上でのいかなる接触もノイズ結果に影響を与えないはずである(接触する指又は他の物体が、ノイズを接地に結合しない限り)。全ての増幅器出力回路309の全出力を加算器340内で加算することによって、タッチセンサパネル内へと受信されている総ノイズを表す1つのデジタルビットストリームを取得することができる。ノイズの周波数及びノイズが発生しているピクセルは、スペクトル解析以前には既知ではないが、スペクトル解析が完了した後には間違いなく既知になる。ノイズが発生しているピクセルは、既知ではなく、スペクトル解析の後で復元されないが、ビットストリームが汎用ノイズ収集器として用いられているので、これらは既知である必要はない。
【0036】
スペクトルアナライザとして設定されている間に、図3cの例における30個の混合器は、15個の対に用いることができ、各対は、NCO315によって発生する15個の異なる周波数においてI及びQ信号を復調する。これらの周波数は、例えば、200kHzと300kHzの間とすることができる。NCO315は、加算回路340のノイズ出力を復調するためにデジタル混合器304を用いることができるデジタルのランプ正弦波を生成することができる。例えば、NCO315_0_Aは、周波数F0のI成分を発生させることができ、一方でNCO315_0_Bは、F0のQ成分を発生させることができる。同様に、NCO315_0_Cは、周波数F1のI成分を発生させることができ、NCO315_1_Aは、F1のQ成分を発生させることができ、NCO315_1_Bは、F2のI成分を発生させることができ、NCO315_1_Cは、F2のQ成分を発生させることができるという具合である。
【0037】
この後、加算回路340の出力(ノイズ信号)は、15個の混合器対を用いて、F0からF14までのI及びQ成分によって復調することができる。各混合器304の結果は、積算器308内に蓄積することができる。各積算器308は、サンプリング期間にわたって混合器304からの即時の値を蓄積(互いに加算)することができるデジタルレジスタとすることができる。サンプリング期間の終了点において、蓄積された値は、この周波数及び位相におけるノイズ信号の量を表している。
【0038】
特定の周波数でのI及びQ復調の蓄積された結果は、同位相又は直交のいずれかにあるこの周波数での成分量を表すことができる。この後、これらの2つの値は、マグニチュード及び位相計算回路342において、この周波数での総マグニチュードの絶対値(振幅)を求めるために用いることができる。高いマグニチュードは、この周波数での高い背景ノイズレベルを意味することができる。各マグニチュード及び位相計算回路342によって計算されたマグニチュード値は、保存することができる。Q成分がなければ、復調周波数と位相がずれたノイズが未検出のままに留まることに注意されたい。
【0039】
この処理全体は、15個の異なる周波数F15〜F29において繰り返すことができる。この後、30個の周波数の各々に対して保存されたマグニチュード値を比較することができ、本明細書で周波数A、B、及びCで記す最低マグニチュード値(従って、最低ノイズレベル)を有する3つの周波数を選択することができる。一般的に、選択される低ノイズ周波数の個数は、各感知チャンネル内の混合器の個数に対応させることができる。
【0040】
引き続き図3cを参照すると、感知チャンネル300が、パネル走査論理回路として設定される時には、図3cの破線は無視することができる。段階4〜19の各々において、タッチセンサパネルの行を同時に刺激するために、様々な位相の選択された低ノイズ周波数を用いることができ、各感知チャンネル内の複数の混合器は、選択された低ノイズ周波数A、B、及びCを用いて、各感知チャンネルに接続した列から受信する信号を復調するように設定することができる。図3cの例では、NCO_0_Aは、周波数Aを発生させることができ、NCO_0_Bは、周波数Bを発生させることができ、NCO_0_Cは、周波数Cを発生させることができ、NCO_1_Aは、周波数Aを発生させることができ、NCO_1_Bは、周波数Bを発生させることができ、NCO_1_Cは、周波数Cを発生させることができるという具合である。この後、各感知チャンネル内の各混合器304からの復調済み信号は、積算器308内で蓄積して保存することができる。
【0041】
一般的に、R個の低ノイズ周波数F0、F1…FR-1によって復調されたいずれかの感知チャンネルM(ここで、Mは、M=0からN−1である)におけるR個の混合器出力は、xF0S[chM]、xF1S[chM]…xFR-1S[chM]という表記で表すことができ、ここで、xF0は、周波数F0で復調された混合器出力を表し、xF1は、周波数F1で復調された混合器出力を表し、xFR-1は、周波数FR-1で復調された混合器出力を表し、Sは、パネル走査相におけるシーケンス番号を表している。
【0042】
従って、段階4(パネル走査相におけるシーケンス番号1に対応する)では、低ノイズ周波数A、B、及びCを復調周波数として用いて、保存すべき出力は、xa1[ch0]、xb1[ch0]、xc1[ch0]、xa1[ch1]、xb1[ch1]、xc1[ch1]…xa1[ch9]、xb1[ch9]、xc1[ch9]と記すことができる。従って、現在の例では、段階4において30個の結果が保存される。段階5(パネル走査相におけるシーケンス番号2に対応する)では、保存すべき30個の結果は、xa2[ch0]、xb2[ch0]、xc2[ch0]、xa2[ch1]、xb2[ch1]、xc2[ch1]…xa2[ch9]、xb2[ch9]、xc2[ch9]と記すことができる。段階6〜19の各々において保存すべき30個の出力も、同様に命名することができる。
【0043】
図3cの感知チャンネルの外部の追加論理回路は、図1のチャンネル走査論理回路110に実施することができるが、これは、他の場所に設置することもできると考えられることを理解すべきである。
図4cは、本発明の実施形態による現在の例に対応する例示的な容量式走査計画410を示している。図4cは、15個の行R0〜R14を有する例示的なセンサパネルにおける図4bに示す段階0〜19を説明している。
【0044】
段階0はLCD相を表し、この時点でLCDを更新することができる。LCD相には、約12msを充てることができ、この間は、行を刺激することはできない。
段階1〜19は、LCDにおける垂直ブランキングを表すことができ、この間は、LCDは電圧を変更しない。
段階1〜3は、低ノイズ周波数の識別相を表すことができ、これには約0.6msを充てることができ、この間も前と同様に行を刺激することはできない。段階1では、200kHzから300kHzの範囲にわたって異なる周波数(少なくとも10kHzずつ分離した)のI及びQ成分をスペクトルアナライザとして設定された感知チャンネル内の混合器対に同時に印加することができ、これらの周波数でのノイズのマグニチュードを保存することができる。段階2では、300kHzから400kHzの範囲にわたって異なる周波数のI及びQ成分をスペクトルアナライザとして設定された感知チャンネル内の混合器対に同時に印加することができ、これらの周波数でのノイズのマグニチュードを保存することができる。段階3では、最低ノイズ周波数A、B、及びCは、最低の保存されたマグニチュードを生じた周波数を特定することによって識別することができる。最低ノイズ周波数の識別は、段階1及び2で測定された測定スペクトルだけに対して行うことができ、又は段階1及び2からの過去のフレームの測定履歴を考慮に入れることができる。
【0045】
段階4〜19は、パネル走査相を表すことができ、これには約3.4msを充てることができる。
約0.2msを充てることができる段階4では、A、B、及びCの正及び負位相を一部の行に印加することができると同時に、他の行を刺激せずに残すことができる。+Aは、正の位相を有する走査周波数Aを表すことができ、−Aは、負の位相を有する走査周波数Aを表すことができ、+Bは、正の位相を有する走査周波数Bを表すことができ、−Bは、負の位相を有する走査周波数Bを表すことができ、+Cは、正の位相を有する走査周波数Cを表すことができ、−Cは、負の位相を有する走査周波数Cを表すことができることを理解すべきである。センサパネルの列に結合された感知チャンネル内の電荷増幅器は、行が刺激されることに起因して列に結合される総電荷を検出することができる。各電荷増幅器の出力は、各々が復調周波数A、B、又はCのいずれかを受信する感知チャンネル内の3つの混合器によって復調することができる。結果又は値xa1、xb1、及びxc1を取得して保存することができ、ここで、xa1、xb1、及びxc1はベクトルである。例えば、xa1は、10個の値xa1[ch0]、xa1[ch1]、xa1[ch2]…xa1[ch9]を有するベクトルとすることができ、xb1は、10個の値xb1[ch0]、xb1[ch1]、xb1[ch2]…xb1[ch9]を有するベクトルとすることができ、xc1は、10個の値xc1[ch0]、xc1[ch1]、xc1[ch2]…xc1[ch9]を有するベクトルとすることができる。
【0046】
特に、段階4では、+Aが、行0、4、8、及び12に印加され、+B、−B、+B、及び−Bが、それぞれ行1、5、9、及び13に印加され、+C、−C、+C、及び−Cが、それぞれ行2、6、10、及び14に印加され、行3、7、11、及び15には刺激が印加されない。列0に接続した感知チャンネルは、上述の周波数及び位相で刺激を受けた全ての行から列0内へと注入されている電荷を感知する。感知チャンネル内の3つの混合器は、この時点でA、B、及びCを復調するように設定することができ、この感知チャンネルにおいて3つの異なるベクトル結果xa1、xb1、及びxc1を取得することができる。例えば、ベクトルxa1は、+Aによって刺激を受けている4つの行(例えば、行0、4、8、及び12)において列0〜9内へと注入される電荷の合計を表すことができる。しかし、ベクトルxa1は、接触が発生した特定の行が依然未知であるから、完全な情報を提供しない。平行して同じ段階4で、行1及び5を+Bで刺激することができ、更に、行9及び13を−Bで刺激することができ、ベクトルxb1は、+B及び−Bによって刺激を受けている4つの行(例えば、行1、5、9、及び13)において列0〜9内へと注入される電荷の合計を表すことができる。平行して同じ段階4で、行2及び14を+Cで刺激することができ、更に、行6及び10を−Cで刺激することができ、ベクトルxc1は、+C及び−Cによって刺激を受けている4つの行(例えば、行2、6、10、及び14)において列0〜9内へと注入される電荷の合計を表すことができる。従って、段階4の終了時には、各々10個の結果を含む3つのベクトル、つまり総計で30個の結果が得られて記憶される。
【0047】
段階5〜19は、異なる位相のA、B、及びCを異なる行に印加することができ、各段階で異なるベクトル結果が得られることを除いては、段階4と同様である。段階19の終了時には、図4cの例では、総計で480個の結果を取得していることになる。段階4〜19の各々において480個の結果を取得することにより、組合せ的で要因的な手法が用いられ、各ピクセルに対して、3つの周波数A、B、及びCにおける接触の画像に関する情報が区分的に得られる。
【0048】
段階4〜19は、多重位相走査及び多重周波数走査という2つの特徴の組合せを示していることに注意すべきである。各特徴は、それ独自の恩典を有することができる。多重周波数走査は、3分の1に時間を節約することができ、その一方で多重位相走査は、約2倍優れたSN比(SNR)をもたらすことができる。
多重位相走査は、異なる位相の複数の周波数を用いて行の大部分又は全てを同時に刺激することによって用いることができる。多重位相走査は、2007年1月3日出願の「同時感知構成」という名称の本出願人の現在特許出願中の米国特許出願第11/619、433号に説明されており、この内容は、引用によって本明細書に組み込まれている。多重位相走査の1つの恩典は、単一のパネル走査からより多くの情報を取得することができるという点である。多重位相走査は、刺激周波数の位相とノイズの位相とのある一定のアラインメントを原因として生じる可能性がある不正確さの可能性を最小にするので、より正確な結果を達成することができる。
【0049】
更に、多重周波数走査は、複数の周波数を用いて行の大部分又は全てを同時に刺激することによって用いることができる。上述のように、多重周波数走査は、時間を節約する。例えば、一部の過去の方法では、周波数Aで15行を15段階で走査することができ、次に、周波数Bで15行を15段階で走査することができ、更に、周波数Aで15行を15段階で走査することができ、つまり総計45段階で走査することができる。しかし、図4cの例で示すように多重周波数走査を用いると、総計で16段階(段階4から段階19まで)のみを必要とする可能性がある。最も簡易な実施形態における多重周波数は、最初の段階において、周波数AでR0、周波数BでR1、及び周波数CでR2を同時に走査し、次に、段階2において、周波数AでR1、周波数BでR2、及び周波数CでR3を同時に走査するという具合に総計で15の段階を含むことができる。
段階4〜19の終了時に、上述の480個の結果が得られて記憶されると、これらの480個の結果を利用して付加的な計算を実行することができる。
【0050】
図4dは、本発明の実施形態に従って現在の例に対応する異なる低ノイズ周波数での完全な画像結果を計算するための特定のチャンネルMに対する例示的な計算を示している。この例では、M=0から9である各チャンネルMに対して、各行及び各周波数A、B、及びCにおける行の結果を取得するために、図4dに示す45個の計算を実行することができる。各チャンネルに関する45個の計算の各組は、そのチャンネルに関連付けられたピクセルの列に対して得られたピクセル値を発生させることができる。例えば、行0、周波数Aの計算(xa1[chM]+xa2[chM]+xa3[chM]+xa4[chM])/4は、周波数Aにおける行0、チャンネルMの結果を発生させることができる。この例では、あらゆるチャンネルに対して全ての計算が実行され、記憶された後には、総計で450個の結果が得られていることになる。これらの計算は、図4bの段階20に対応する。
【0051】
これらの450個の結果のうちでは、周波数Aに対して150個、周波数Bに対して150個、及び周波数Cに対して150個が存在することになる。特定の周波数に関する150個の結果は、各列(すなわち、チャンネル)と行の交差点に対して独特な値が与えられるので、この周波数での画像マップ又は接触の画像を表している。次に、これらの接触の画像は、3つの画像を合成し、これらの特性に注目して、どの周波数が本質的に高いノイズを有するか及びどの周波数が本質的に清浄であるかを判断するソフトウエアによって処理することができる。この後、更に別の処理を実施することができる。例えば、3つ全ての周波数A、B、及びCが、全て比較的ノイズを持たない場合には、結果を互いに平均化することができる。
図4c及び4dに示す計算は、図1のパネルプロセッサ102又はホストプロセッサ128の制御下で実行することができるが、これらは、他の場所でも実行することができることを理解すべきである。
【0052】
図5aは、タッチセンサパネル524、感圧接着剤(PSA)534を用いてセンサパネルに接合された表示デバイス530、並びに本発明の実施形態に従って低ノイズの刺激周波数を識別し、接触イベントを検出して位置を定めるためにタッチセンサパネルに複数の刺激周波数及び位相を印加するための図1のコンピュータシステム100内の他のコンピュータシステムブロックを含むことができる例示的な携帯電話536を示している。
【0053】
図5bは、タッチセンサパネル524、感圧接着剤(PSA)534を用いてセンサパネルに接合された表示デバイス530、並びに本発明の実施形態に従って低ノイズの刺激周波数を識別し、接触イベントを検出して位置を定めるためにタッチセンサパネルに複数の刺激周波数及び位相を印加するための図1のコンピュータシステム100内の他のコンピュータシステムブロックを含むことができる例示的なデジタルオーディオ/ビデオプレーヤ540を示している。
添付図面を参照して本発明の実施形態を十分に説明したが、当業者には様々な変更及び修正が明らかになることに注意されたい。そのような変更及び修正は、特許請求の範囲によって定められる本発明の実施形態の範囲に含まれていると理解されるものとする。
【符号の説明】
【0054】
100 コンピュータシステム
102 パネルプロセッサ
104 周辺機器
106 パネルサブシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチセンサパネルから接触の画像を発生させるのに用いられる複数の値を取得するための装置であって、
タッチセンサパネルの異なる感知線から信号を受信するように設定された電荷増幅器と、
マルチプレクサの出力に結合された複数の混合器と、
復調周波数を発生させるために前記複数の混合器の各々に結合された1つの周波数発生回路と、
蓄積された混合器出力を表す値を発生させるために前記複数の混合器の各々に結合された1つの積算器と、
を各チャンネルが含む複数の感知チャンネル、
を含み、
各感知チャンネル内の各周波数発生回路が、前記タッチセンサパネルの駆動線に異なる位相で同時に印加される異なる刺激周波数に対応する異なる復調周波数を発生させる、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記周波数発生回路のうちの1つ又はそれよりも多くは、数値制御式発振器(NCO)を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各感知チャンネルによって発生した前記複数の値を記憶するためのメモリを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記記憶された複数の値を用いて、前記複数の感知線の各々に対して、各駆動線に対する駆動線結果と前記複数の復調周波数の各々とを計算して記憶するためのプロセッサを更に含むことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置を含むコンピュータシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のコンピュータシステムを含む携帯電話。
【請求項7】
請求項5に記載のコンピュータシステムを含むデジタルオーディオプレーヤ。
【請求項8】
接触の画像を発生させるための複数の値をタッチセンサパネルから取得するためのシステムであって、
複数の駆動線及び複数の感知線を有するタッチセンサパネルと、
前記タッチセンサパネルに結合された集積回路と、
を含み、
前記集積回路は、
前記複数の駆動線への複数の刺激信号を発生するように設定され、前記集積回路に対する低レベル供給電圧を高レベル供給電圧に変換するように構成された電荷ポンプを含み、かつ該高レベル供給電圧を低減した振幅の刺激信号に変換するように更に設定された駆動論理回路と、
前記タッチセンサパネルの異なる感知線からの感知信号を受信するように構成された電荷増幅器を各チャンネルが含み、かつ複数の蓄積された混合器出力を表す複数の値を該受信した感知線から発生させるための複数の感知チャンネルと、
を有し、
各感知チャンネル内の各電荷増幅器は、低減したフィードバックキャパシタンスを含み、その物理的サイズは、前記低減した振幅の刺激信号によって前記感知線上に注入されたより低量の電荷に従って縮小されている、
ことを特徴とするシステム。
【請求項9】
各感知チャンネルが、
マルチプレクサの出力に結合された複数の混合器と、
復調周波数を発生させるために前記複数の混合器の各々に結合された周波数発生回路と、
前記蓄積された混合器出力を表す前記値を発生させるために前記複数の混合器の各々に結合された積算器と、
を更に含み、
各周波数発生回路が、前記タッチセンサパネルの前記駆動線に同時に印加される異なる刺激周波数に対応する異なる復調周波数を発生させる、
ことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記周波数発生回路のうちの1つ又はそれよりも多くは、数値制御式発振器(NCO)を含むことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
各感知チャンネルによって発生した前記複数の値を記憶するためのメモリを更に含むことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記記憶された複数の値を用いて、前記複数の感知線の各々に対して、各駆動線に対する駆動線結果と前記複数の復調周波数の各々とを計算して記憶するためのプロセッサを更に含むことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
請求項9に記載のシステムを含むコンピュータシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータシステムを含む携帯電話。
【請求項15】
請求項13に記載のコンピュータシステムを含むデジタルオーディオプレーヤ。
【請求項16】
タッチセンサパネルから接触の画像を発生させるのに用いられる複数の値を取得するための装置を含む携帯電話であって、
装置が、
タッチセンサパネルの異なる感知線から信号を受信するように設定された電荷増幅器と、
マルチプレクサの出力に結合された複数の混合器と、
復調周波数を発生させるために前記複数の混合器の各々に結合された1つの周波数発生回路と、
蓄積された混合器出力を表す値を発生させるために前記複数の混合器の各々に結合された1つの積算器と、
を各チャンネルが含む複数の感知チャンネル、
を含み、
各感知チャンネル内の各周波数発生回路が、前記タッチセンサパネルの駆動線に異なる位相で同時に印加される異なる刺激周波数に対応する異なる復調周波数を発生させる、
ことを特徴とする携帯電話。
【請求項17】
タッチセンサパネルから接触の画像を発生させるのに用いられる複数の値を取得するための装置を含むデジタルオーディオプレーヤであって、
タッチセンサパネルの異なる感知線から信号を受信するように設定された電荷増幅器と、
マルチプレクサの出力に結合された複数の混合器と、
復調周波数を発生させるために前記複数の混合器の各々に結合された1つの周波数発生回路と、
蓄積された混合器出力を表す値を発生させるために前記複数の混合器の各々に結合された1つの積算器と、
を各チャンネルが含む複数の感知チャンネル、
を含み、
各感知チャンネル内の各周波数発生回路が、前記タッチセンサパネルの駆動線に異なる位相で同時に印加される異なる刺激周波数に対応する異なる復調周波数を発生させる、
ことを特徴とするデジタルオーディオプレーヤ。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【公開番号】特開2012−133797(P2012−133797A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37075(P2012−37075)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【分割の表示】特願2008−180710(P2008−180710)の分割
【原出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
【出願人】(503260918)アップル インコーポレイテッド (568)
【Fターム(参考)】