説明

多領域触媒構成物

排ガス処理用基材、およびこの排ガス処理用基材を含むシステムと方法を提供する。触媒基材は、外側の周辺領域を構成する際に、外側の周辺領域と比較して、中央の領域を流れる排ガス流が多いことを特徴とする流れ特性を有する。外側の周辺領域は、その流路の表面にトラッピング物質または吸着物質を有するか、内側の領域に比べて長い軸長を有するか、内側の領域に比べて、流路の開口部を狭くできる。一実施形態において、炭化水素トラップなどのトラッピング物質を含有する保護膜を入口端に塗布する。別の実施形態では、酸素貯蔵成分を含有する触媒を出口端に塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、外側の周辺領域を構成する際に、外側の周辺領域に比べて、中央の領域を流れる排ガスの流量が多いという流れ特性を有する触媒基材に関する。かかる基材は、触媒機能に加えてトラッピングおよび/または吸着特性を提供する。また、本発明は、かかる触媒基材を包含する排ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
触媒コンバータは、排ガスの有害成分を除去および/または変換するものとしてよく知られている。ガソリンエンジンの場合、触媒コンバータは、通常、三方向変換(TWC)触媒を包含し、内燃機関の排ガス系に配置されている。かかる触媒は、不燃焼炭化水素や一酸化炭素の排ガス流において、酸素による酸化および窒素酸化物の窒素への還元を促進する。リーン動作状態で作動するディーゼルエンジンの場合、不燃焼炭化水素や一酸化炭素の酸化を促進するディーゼル酸化触媒(DOC)が、通常、提供されている。
【0003】
触媒コンバータは、この目的のために、様々な構造を有する。ひとつの形態では、触媒コンバータは、触媒コーティングを施した硬質の骨格モノリシック基材を含む。モノリスは、通常並行している、多数の長手方向の流路を有するハニカム型の構造をしており、高表面積を有する、触媒を被覆した本体を提供する。
【0004】
ハニカムの長さ方向に沿った領域に配置された異なる触媒構成物を含むモノリシックハニカムが、触媒燃焼プロセスで使用されている。層状触媒構造は、様々なプロセスにより、セラミックや金属のモノリス構造上に形成することができる。多領域触媒とトラップは、米国特許第7,189,376号(Kumar)に記載されている。自動車の炭化水素吸着剤システムは、米国特許第5,916,133号(Buhrmaster)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,189,376号
【特許文献2】米国特許第5,916,133号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
排ガス系において、例えばエルボにおける、エンジンと触媒コンバータ間の限られた配管空間は、触媒コンバータを通過する流れの不均等分布につながる。この流れの不均等分布は、過渡状態時の触媒の効率と変換に影響を及ぼす。
【0007】
提案されているSULEV排気規制などの、さまざまな規制機関によって設定されているより厳しい排気基準を満たすために、例えば三方向変換触媒点火による点火を助長し、早める触媒構造の開発は、恩恵をもたらす。更に、領域コーティング技術を改良し、触媒の長さ及び半径方向に沿った、特定の触媒構成物または汚染物質吸着剤構成物の配置を評価することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つまたは複数の態様は、排ガス処理用触媒複合体と、この排ガス処理用触媒複合体を含むシステムと方法に関する。一般に、この排気ガス処理用触媒複合体は、第一および第二の複数の長手方向流路であって、第一の複数の流路は内側の半径領域を画定し、第二の複数の流路は外側の半径領域を画定する、第一および第二の複数の長手方向流路を含む、基材を含み、第一および第二の複数の長手方向流路の内部表面は、支持体上の触媒金属を含む少なくとも一つの触媒層を含み、第二の複数の流路は、第二の複数の流路と比較して、より多くの排ガスが第一の複数の流路を通過するように構成される。
【0009】
より多くの排ガスを外側の半径領域を通じて流すことによって、触媒材料の貴金属分布を変えることなく点火を早めることができる。このようにして、自動車の動作システムや触媒形成とは独立した方法で、排ガスの流れの変更を実現できる。
【0010】
特定の実施形態において、第二の複数の流路の内部表面は、貴金属がないときは、トラッピング物質または吸着物質を含む層を更に有し、第一の複数の流路の内部表面には、実質的に、トラッピング物質や吸着物質が存在しない。
【0011】
別の実施形態において、第一と第二の複数の流路の内面は、両方とも、貴金属がないときは、トラッピング物質または吸着物質を含む層を有し、第二の複数の流路は、第一の複数の流路に比べて、より長い平均軸長を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による基材の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による基材の概略図である。
【図3】半径領域を有する基材のコーティングに有用なディップ・パンの説明図である。
【図4A】本発明の一実施形態による基材の概略図である。
【図4B】図4Aの概略図の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一つまたは複数の実施形態では、貴金属を含む触媒材料で被覆した基材、例えば、内燃機関に使用する触媒コンバータを含む。この基材の半径領域周辺は、差背圧を生じるとともに、低温始動時に点火を早めることが可能なように、触媒コンバータの中央領域を流れる排気流を増量するように構成されている。こうして、より多くの対流熱が中央領域に集中されて昇温速度を早める。上記の差背圧は、多くの方法で発生させることができ、例えば、半径領域周辺を、中央領域より多くのウオッシュコート材で被覆できる。別のオプションとしては、中央領域と比較して、より長い軸長を持つ周辺領域を設ける方法がある。更に別のオプションとしては、中央領域と比較して、外部領域により狭い流路を設ける方法がある。追加のウオッシュコート材、より長い軸長、または周辺領域の狭い開口部のいずれかによって設けられた制限によって、背圧が制御され、触媒材料の断面積への流入量が増加する。これによって、限られた配管スペース、例えば、エンジンと触媒コンバータとの間のエルボにより生じる、触媒材料を通る流れの不均等分布が減少する。これらの構成は、オペレーティングシステム及びオリジナルの貴金属を含む触媒生成の影響を受けずに流れを変更できる方法を提供する。流れを基材の中央領域に集中することにより、周辺領域は熱損失を防止する絶縁領域の役割を果たす。
【0014】
「下流」と「上流」は、触媒基材または領域を記載する際に使用する場合、排ガス流の流れの方向で識別される排気システムにおける相対的位置を表す。「入口」は、そこから排気ガスが基材に進入する基材の端部を意味し、「出口」は、そこから排気ガスが基材から出る基材の端部を意味する。
【0015】
一般に、この排気ガス処理用触媒複合体は、第一および第二の複数の長手方向流路であって、第一の複数の流路は内側の半径領域を画定し、第二の複数の流路は外側の半径領域を画定する、第一および第二の複数の長手方向流路を含む、基材を含み、第一および第二の複数の長手方向流路の内部表面は、支持体上の触媒金属を含む少なくとも一つの触媒層を含み、第二の複数の流路は、第二の複数の流路と比較して、より多くの排ガスが第一の複数の流路を通過するように構成される。
【0016】
具体的な実施形態において、第二の複数の流路の内部表面は、貴金属がないときは、トラッピング物質または吸着物質を含む層を更に含み、第一の複数の流路の内部表面は、実質的に、そのトラッピング物質または吸着物質から独立している。
【0017】
別の実施形態では、第一と第二の複数の流路の内部表面は、それぞれ、貴金属がないときは、トラッピング物質または吸着物質を含む層を更に含み、第二の複数の流路は、第一の複数の流路と比較して、より長い平均軸長を有している。詳細な実施形態では、第二の複数の流路の平均長は、第一の複数の流路の平均長よりも、1cmまたは基材の長さの20%のどちらかの小さい数値だけ、長い。
【0018】
一実施形態では、触媒材料は、内燃機関のガス排気流の処理に適している一つまたは複数の貴金属を含む。例えば、三方向変換(TWC)またはディーゼル酸化に適した触媒材料を提供することが望ましい場合がある。触媒材料は、特定のエンジン用途に必要な任意の組成および階層構造で構成できる。
【0019】
一実施形態では、外側の半径領域は、基材の断面積の略50%以下、または36%あるいは20%までを含む。
【0020】
貴金属を含まない適当なトラッピング物質または吸着物質は、炭化水素トラップ、有毒トラップ、酸素貯蔵成分を含むが、これに限定されない。トラッピング物質または吸着物質を含む層は、用途に応じて、触媒層の上または下に配置することができる。例えば、炭化水素トラップ層は、触媒層の下に設けることができる。また、詳細な実施形態においては、炭化水素吸着剤を含む層は、基材の入口端から開始して、1cmまたは基材の長さの20%のより短い方と同程度まで軸方向に延伸する。詳細な実施形態においては、疏水性ゼオライトなどの分子篩を含む炭化水素トラップ層が提供されている。本明細書で用いるように、ゼオライトなどの分子篩は、細孔分布が略均一で平均孔サイズが20Å以下の物質を指す。
【0021】
ゼオライトは、フォジャサイト、菱沸石、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ZSM−5ゼオライト、ZSM−12ゼオライト、SSZ−3ゼオライト、SAPO5ゼオライト、オフレタイト、またはベータ・ゼオライトなどの、天然または人工のゼオライトとすることができる。好適なゼオライト吸着物質は、アルミナに対するシリカの含有率が高い。ゼオライトは、少なくとも約25/1からの、好ましくは少なくとも約50/1からのシリカ/アルミナのモル比を有しうるものであり、有効範囲は、約25/1から1000/1まで、50/1から500/1まで、および約25/1から300/1まで、約100/1から250/1までであり、あるいは、35/1から180/1までも実証されている。好ましいゼオライトは、ZSM、Y、ベータ・ゼオライトを含む。特に好ましい吸着剤は、US6,171,556で開示されている種類のベータ・ゼオライトを含みうる。ゼオライトの負荷は、十分なHC貯蔵能力を確保するため、および、温度勾配が低温貯蔵に従っている間の、貯蔵されたパラフィンの早期解放を防止するために、0.1g/in3以上であるべきである。好適には、ゼオライトの含有率は、約0.4から約2.0g/in3、または0.7から1.0g/in3の範囲内である。
【0022】
更なる実施形態において、半径領域は、有毒トラップ剤または吸着剤を含む保護膜を有する。有毒トラップ剤と吸着剤触媒は、当技術分野では既知である。例えば、適当な有毒トラップ保護膜は、その全体が参照により本出願に組み込まれる、米国特許出願公開第2007/0014705号に記載されている。有毒トラップ保護膜は、S−、P−、Mn−、C−と相互作用する成分および/またはFeを含有する化学種を含んでおり、これらの有毒物又は重い堆積物を貴金属含有層から遠ざける。かかる成分の例として、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、および/または酸化セリウムでドープした多孔質アルミナを含む。その他の保護膜物質としては、例えば、一つまたは複数のアルカリ土類金属成分等の、NOxおよび/またはSOxトラップが含まれる。
【0023】
別の実施形態は、酸素貯蔵成分を含む外側の半径領域を有する。かかる位置のOSCは、更なる湿し水機能効果をもたらし、また、望ましい設計特性でありうる、酸素センサーに対する遅延時間の増加をもたらす。これは、貴金属を含有する内側の半径領域を通じた炭化水素変換を維持することを目的とする。通常、酸素貯蔵成分は、複数の還元酸化物または一つもしくは複数の希土類金属を有するであろう。適当な酸素貯蔵成分の例としては、セリア、プラセオディミア、またはその合成が含まれる。セリアの層への供給は、例えば、セリア、セリウムとジルコニウムの混合酸化物、および/または、セリウム、ジルコニウム、ネオジムの混合酸化物を使用して実現できる。
【0024】
一実施形態において、酸素貯蔵成分を有する層は、基材の出口端から開始して、1cmまたは基材の長さの20%のうちのより短い方と同程度まで、軸方向に延伸している。
【0025】
別の態様において、炭化水素、一酸化炭素、および、その他の排ガス成分を含む内燃機関排気流の排気処理システムには、排気マニフォルドを介して内燃機関と流体連通する排気管と、本発明による触媒複合体の実施形態が備えられている。
【0026】
本発明の別の態様において、本発明による触媒複合体の実施形態によって炭化水素、一酸化炭素、および窒化酸化物を含むガス流に接触することを含む、排ガスの処理方法を含む。更に、エタノールの使用による酸素化物を含む排気流も処理可能である。
【0027】
本発明の実施形態によるガス処理物およびシステムの構成要素の詳細を以下で説明する。
【0028】
図1に、入口端12と出口端14を有する基材10を示す。図1では、入口端12は、内側の半径領域2と外側の半径領域4を有している。内側の半径領域2と外側の半径領域4を構成する、長手方向に延伸している流路の内部表面上には、少なくとも一つの触媒層が設けられている。一実施形態においては、外側の半径領域4の流路の内部表面上に、基材10の軸長に沿ってトラップまたは吸着層が設けられている。図2では、出口端14は、内側の半径領域6と外側の半径領域8を有する。別の実施形態では、酸素貯蔵成分を含む層が、外側の半径領域6の流路の内部表面に設けられている。
【0029】
被覆基材の一つまたは複数の実施形態は、定量電荷被覆装置で被覆スラリーを保持する修正ディップ・パンを用いて選択的に被覆することができる。例えば、図3に示すように、ディップ・パンは、外側のリング44に取り付けられている固形中央プレート42を備える幾何学インサートを有することができ、スラリー43が基材10と近づくと、外側の半径核が被覆され、内側の半径核は被覆されない。あるいは、望ましいサイズの内側の核の接着表面を基材に接着させて、被覆スラリーの進入を防止できる。ディップ・パンのインサートは、アニュラスなどの任意の半径領域被覆プロフィールを提供するように修正できる。
【0030】
図4Aと図4Bでは、内側の半径領域52と外側の半径領域54を有する基材50を示す。外側の半径領域54の流路は、内側の半径領域52の流路と比べて、平均軸長が長い。この流路の長さの差が、背圧の差を生じ、これによって、外側の半径領域に比べて、内側の半径領域の流量が増大することを可能にする。両領域の流路の内部表面は、層状のウオッシュコートを含有することができ、一つの層は触媒として活性であり、別の層は、トラッピング物質または吸着物質を備える。
【0031】
〔キャリア〕
一つまたは複数の実施形態において、一つまたは複数の触媒構成物がキャリア上に配置される。キャリアは、通常触媒の製造に使用される任意の材料でよいが、セラミックまたは金属のハニカム構造を有することが好ましい。流路が(基材を通るハニカム流として言及した)流れに対して開放されるように、基材の入口面または出口面からそこを通って延伸する、細かな並列したガス流路を有する種類のモノリス基材などの任意の適切なキャリアを使用できる。流体の入口から流体の出口までの流路が本質的に直線路である流路は、流路を通過するガスが触媒材料と接触するように、触媒材料がウオッシュコートとして被覆されている壁によって画定される。モノリス基材の流路は、薄い壁のチャンネルであって、台形、矩形、正方形、正弦波形、六角形、長円形、円形等の任意の適切な断面形状またはサイズのものであってよい。かかる構造体は、断面の平方インチあたり約60から約900以上のガス入口開口部(つまり、セル)を包含できる。
【0032】
また、キャリアは、チャンネルが交互にブロックされ、一方向から(入口方向)チャンネルに進入するガス流がチャンネルの壁を通って流れ、もう一方の方向(出口方向)のチャンネルから出るような、壁流フィルター基材であってもよい。二重酸化触媒構成物を璧流フィルターに被覆できる。かかるキャリアを使用する場合、システムは、粒子をガス状汚染物質とともに除去できる。この璧流フィルターキャリアは、コーディエライトまたは炭化ケイ素などの当技術分野において既知の材料から製造できる。
【0033】
セラミック製キャリアは、例えば、コーディエライト、コーディエライト・アルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ・シリカ・マグネシア、ジルコン珪酸塩、シリマナイト、珪酸マグネシウム、ジルコン、葉長石、アルミナ、アルミノ珪酸塩などの、任意の適当な耐熱材料で製造できる。
【0034】
本発明の触媒として有用なキャリアはまた、本質的に金属製であり、一つまたは複数の金属または金属合金で構成される。金属製キャリアは、波板またはモノリス形などの様々な形状で使用できる。好ましい金属製支持体として、耐熱性金属やチタンやステンレス鋼などの金属合金、および、鉄が実質的または主要な成分であるその他の合金が含まれる。かかる合金は、ニッケル、クロム、および/またはアルミニウムのうちの一つまたは複数を含有してもよく、これらの金属の総量は、少なくとも15重量%の合金、例えば、10〜25重量%のクロム、3〜8重量%のアルミニウム、最大20重量%のニッケルを、有利に含みうる。また、合金は、マンガン、銅、バナジウム、チタンなどの一つまたは複数の他の金属を少量または微量含有してもよい。金属キャリアの表面を高温、例えば、1000℃以上で酸化させ、酸化層をキャリアの表面に形成することによって合金の腐食に対する抵抗を高めることができる。かかる高温によって誘発された酸化は、耐熱性金属酸化支持体の付着力を高めると共に金属成分のキャリアに対する触媒性を促進する。
【0035】
別の実施形態においては、一つまたは複数の触媒構成物が開放セル型の基材上に堆積される。かかる基材は、当技術分野において既知であり、通常、耐熱セラミック材または金属材料で形成されている。
【0036】
〔層状触媒複合体の調製〕
基材に使用される層状触媒複合体は、従来技術で周知のプロセスで容易に調製できる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0001782号を参照されたい。代表的なプロセスを以下に説明する。本明細書で用いるように、「ウオッシュコート」という用語は、流路が処理対象のガス流を通過できる十分な多孔質のハニカム状キャリア部材などの、基材キャリ材料に塗布する、薄い、粘着性の触媒の被覆またはその他の材料という、当技術分野における通常の意味を有する。
【0037】
触媒複合体は、モノリシック・キャリア上の層で簡単に調製することができる。特定のウオッシュコートの最初の層の場合、ガンマ・アルミナなどの高表面積耐熱金属酸化物の微小に分割された粒子は、例えば水などの、適当な媒体中でスラリー状にできる。次に、キャリアを係るスラリーに一度または複数回浸すか、望ましい量の金属酸化物、例えば、約0.5から約2.5g/in3がキャリア上に堆積されるように、スラリーをキャリアに被覆することができる。貴金属(例えば、パラディウム、ロディウム、プラチナ、および/または、それらの組み合わせ)、安定剤、および/または、促進剤などの成分を含有させるために、かかる成分を水溶性または水分散性成分または複合体の混合物としてスラリーに包含させることができる。その後で、被覆したキャリアを、例えば、500〜600℃で約1〜3時間加熱することによって、か焼する。通常、パラディウムが望ましい場合、パラディウム成分を化合物または複合体の形で使用して、耐熱金属酸化物支持体、例えば、活性アルミナ上に、成分の拡散を実現する。本発明の目的のために、「パラディウム成分」という用語は、か焼または使用すると、触媒的に活性化された形態、通常、金属または金属酸化物に分解または変質する任意の成分、複合体等を意味する。金属成分を耐熱金属酸化物支持体粒子に含浸または堆積させるために使用する液体媒質が、触媒構成物中に存在している金属またはその化合物または複合体またはその他の成分と逆反応せず、加熱および/または真空状態下で揮発または分解によって金属成分から除去できる限りにおいて、水溶性化合物または水分散性化合物または金属成分の複合体を使用できる。場合によっては、触媒を使用し、使用時に高温に曝されるまで液体の除去が完了しないことがある。一般的に、経済性と環境問題の観点から、貴金属の可溶性化合物または複合体の水溶液が用いられている。例えば、適当な化合物は、硝酸パラジウムまたは硝酸ロジウムである。焼成ステップの間、または、少なくとも成分を使用する初期の段階の中で、かかる化合物は、金属または金属化合物の触媒的に活性化した形態に変質される。
【0038】
本発明の層状触媒合成物の任意の層を調製する適当な方法は、望ましい貴金属化合物(例えば、パラディウム化合物、またはパラディウムとプラチナの化合物)の混合水溶液と、実質的に全ての水溶液を吸着し、後に水と化合して被覆可能なスラリーを形成する湿性固形物を形成できるだけ十分に乾燥した、例えば、ガンマ・アルミナなどの、少なくとも一つの微細化した高表面積耐熱金属酸化物支持体を調製することである。一つまたは複数の実施形態において、スラリーは、酸性であり、pHは、約2から約7未満である。スラリーのpHは、適量の無機酸または有機酸をスラリーに添加することによって下げることができる。酸と原料の適合性を考慮する場合、両者の組み合わせを使用できる。有機酸は、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸等を含むがこれに限定されない。その後で、所望の場合、酸素貯蔵成分の水溶性または水分散性化合物、例えば、セリウムとジルコニウムの合成物、安定剤、例えば、酢酸バリウム、および、促進剤、例えば、硝酸ランタンをスラリーに添加してもよい。
【0039】
一実施形態において、この後、スラリーを、実質的に全ての固形物の粒子サイズが約20ミクロン未満、つまり、平均直径が約0.1〜15ミクロンの、粉末状にする。この粉末化は、ボールミルまたはその他の類似の装置で実施でき、スラリーの固形含有率は、例えば、約15〜60 重量%、より具体的には、約25〜40重量%でありうる。
【0040】
上記のキャリア上に最初の層を堆積する方法と同じ方法で、最初の層上に追加の層を調製および堆積できる。
【0041】
必要に応じて、触媒層は安定剤と促進剤を含有してもよい。適当な安定剤として、バリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、または、それらの混合物から成る群から選択される金属の、一つまたは複数の非還元性金属酸化物が含まれる。好適には、安定剤は、バリウム、および/または、ストロンチウムの一つまたは複数の酸化物を含む。適当な促進剤として、ランタン、プラセオジム、イットリウム、ジルコニウム、または、それらの混合物から成る群から選択される一つまたは複数の希土類金属の、一つまたは複数の非還元性酸化物が含まれる。
【0042】
また、触媒層は、酸素貯蔵成分を含有してもよい。通常、酸素貯蔵成分は、一つまたは複数の希土類金属の一つまたは複数の還元性酸化物を含有するであろう。適当な酸素貯蔵成分の例としては、セリア、プラセオディミア、またはそれらの複合体が含まれる。セリアの層への供給は、例えば、セリア、セリウムとジルコニウムの混合酸化物、および/または、セリウム、ジルコニウムおよびネオジムの混合酸化物を使用して実現できる。
【0043】
別途表示しない限り、本明細書と特許請求の範囲に記載の含有物、反応条件等の数量を表す全ての数字は、全ての場合、「約」という用語で修飾されるものと理解される。
【0044】
〔半径方向に区分された基材の製造〕
本発明の半径方向に区分された基材は、従来技術で周知のプロセスで容易に製造できる。代表的なプロセスとしては、入口端および/または出口端をウオッシュコートに浸すことと、内側の半径領域は被覆せずに、所望の外側の半径領域を被覆するために、テンプレートかステンシルを使用することと、を含む。下記のプロセスは、本発明の種々の実施形態によって変更が可能であると理解されよう。
【0045】
本明細書の全体にわたって言及されている「一実施形態」、「特定の実施形態」、「一つまたは複数の実施形態」、または「ある実施形態」は、かかる実施形態に関連して記載されている特定の機能、構造、材料または特性が、本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれていることを意味する。従って、本明細書の様々な箇所で現れる「一つまたは複数の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、または「ある実施形態において」のような語句は、必ずしも本発明の同じ実施形態に言及していない。更に、特定の機能、構造、材料、または特性は、一つまたは複数の実施形態で、任意の適当な方法で組み合わせることができる。
【0046】
本発明は、上記の実施形態および変更例に具体的に言及して記載されている。本明細書を読み、理解している人は、更なる修正および変更を思いつくかもしれない。このような修正と変更の全ては、本発明の範囲内にある限り、本発明に含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス処理用触媒複合体であって、
第一および第二の複数の長手方向流路であって、前記第一の複数の流路は内側の半径領域を画定し、前記第二の複数の流路は外側の半径領域を画定する、第一および第二の複数の長手方向流路を含む、基材を含み、
前記第一および第二の複数の長手方向流路の内部表面は、支持体上の触媒金属を含む少なくとも一つの触媒層を含み、
前記第二の複数の流路は、前記第二の複数の流路と比較してより多くの排ガスが前記第一の複数の流路を通過するように構成される、触媒複合体。
【請求項2】
前記第二の複数の流路の内部表面は、貴金属が無い場合はトラッピング物質または吸着物質を含む層を更に含み、前記第一の複数の流路の内部表面には、実質的に、前記トラッピング物質または吸着物質が存在しない、請求項1に記載の触媒複合体。
【請求項3】
前記第一および前記第二の複数の流路の前記内部表面は、貴金属が無い場合、トラッピング物質または吸着物質を含む層を更に含み、前記第二の複数の流路は、前記第一の複数の流路に比べてより長い平均軸長を有する、請求項1に記載の触媒複合体。
【請求項4】
前記第一および前記第二の複数の流路の内部表面は、貴金属が無い場合、トラッピング物質または吸着物質を含む層を更に含み、前記第二の複数の流路は、前記第一の複数の流路と比べて、より小さい平均開口部周辺サイズを有することを特徴とする、請求項1に記載の触媒複合体。
【請求項5】
前記外側の半径領域が、前記基材の断面積の約50%以下を占める、請求項1に記載の触媒複合体。
【請求項6】
前記トラッピング物質または前記吸着物質が、炭化水素吸着剤を含む、請求項2から4のいずれか1項に記載の触媒複合体。
【請求項7】
前記炭化水素吸着剤を含む前記層が、前記少なくとも一つの触媒層の下に位置する、請求項6に記載の触媒複合体。
【請求項8】
前記炭化水素吸着剤を含む前記層が、前記基材の入口端から開始して、1cmまたは前記基材の長さの20%のうち、より短い方と同程度まで軸方向に延伸する、請求項6に記載の触媒複合体。
【請求項9】
前記炭化水素吸着剤が、ZSM−5、Y−ゼオライト、ベータ・ゼオライト、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるゼオライトを含有する分子篩を含む、請求項6に記載の触媒複合体。
【請求項10】
前記トラッピング物質または吸着物質が、セリア、プラセオディミア、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される酸素貯蔵成分を含む、請求項2から4のいずれか1項に記載の触媒複合体。
【請求項11】
前記酸素貯蔵成分を含む前記層が、前記少なくとも一つの触媒層の上または下に位置する、請求項10に記載の触媒複合体。
【請求項12】
前記酸素貯蔵成分を含む前記層が、前記基材の出口端から開始して、1cmまたは前記基材の長さの20%のうち、より短い方と同程度まで軸方向に延伸する、請求項10に記載の触媒複合体。
【請求項13】
前記第二の複数の流路の平均長が、前記第一の複数の流路の平均長より、1cmまたは前記基材の長さの20%のうちいずれか短い方の長さだけ長い、請求項1に記載の触媒複合体。
【請求項14】
炭化水素、一酸化炭素、およびその他の排ガス成分を含む内燃機関の排気流の処理システムであって、
排気マニフォルドを介して前記内燃機関と流体連通している排気管と、
請求項1から4のいずれか1項に記載の前記触媒複合体とを含む、排気処理システム。
【請求項15】
排ガス処理方法であって、炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物を含むガス流を、請求項1から4のいずれか1項に記載の前記触媒複合体に接触させる工程を含む、排ガス処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate


【公表番号】特表2012−523957(P2012−523957A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505992(P2012−505992)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/031551
【国際公開番号】WO2010/121236
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】