説明

大型基板薬液処理装置

【課題】 薬液による危険作業に対し、薬液処理槽の薬液の貯液強度と、大型基板の薬液処理の操作性とを高め、安全に作業を行うことができる大型基板薬液処理装置を提供する。
【解決手段】 薬液処理槽10と、薬液供給手段50と、リンス液排水手段60とを有し、薬液処理槽10は、側壁部10−2と底板部10−1と溝部10−4とにより構成され、底板部10−1は、側壁部10−2から溝部10−4に向かって下降傾斜を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型基板の薬液処理に係り、詳しくは、薬液による危険作業に対し、薬液処理槽の薬液の貯液強度と、大型基板の薬液処理の操作性とを高め、安全に作業を行うことができる大型基板薬液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来における大型基板薬液処理装置の構成を示す構成図である。図2aにおいて、大型基板薬液処理装置の薬液処理部は、薬液処理槽10と薬液供給手段50とから構成され、リンス処理部は、リンス処理槽70とリンス液供給手段60とから構成されている。大型ガラス基板30は、薬液供給手段50により供給された薬液処理槽10内の熱硫酸20に浸漬されて処理される。処理が終了すると大型ガラス基板30は取り出され、リンス処理部のリンス処理槽70に浸漬され、リンス液供給手段60により供給された純水25によりリンス処理され、溢れた純水は排水される。
【0003】
この場合、処理される基板は、一辺が1mを越える大型ガラス基板30であり、薬液処理槽10は、大型ガラス基板30を立てて挿入する縦型構造である。このため、人手により大型ガラス基板30を熱硫酸20内に浸漬して処理した後、再び取り出してリンス処理する工程は操作性が悪く、危険を伴う作業であった。
【0004】
また、図2bは、薬液処理槽の底部のエッジの接続を示す構造図である。図2bにおいて、薬液処理槽10の底板部10−1の端部と側壁部10−2は、面合せされ溶接された構造となっている。ところで、薬液処理槽10は縦型構造であるため、熱硫酸20による圧力がこの溶接部分に強く加わり、さらに外部からの衝撃が加わると、この溶接部分に亀裂が生じ、熱硫酸がリークする問題があった。
【0005】
特許文献1には、基板処理装置が、基板を水平に保持する基板保持手段と、基板保持手段に保持された基板を回転させる基板回転手段と、回転している基板に純水を供給する純水供給手段と、水溶性アルコールを供給する水溶性アルコール供給手段と、基板回転手段、純水供給手段及び水溶性アルコール供給手段を制御する制御手段とを含む、旨の記載がある。
【特許文献1】特開2007−227467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、薬液による危険作業に対し、薬液処理槽の薬液の貯液強度と、大型基板の薬液処理の操作性とを高め、安全に作業を行うことができる大型基板薬液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の大型基板薬液処理装置は、大型ガラス基板を薬液処理する大型基板薬液処理装置であって、薬液処理槽と、薬液供給手段と、リンス液供給手段とを有し、薬液処理槽は、側壁部と底板部と溝部とを有し、底板部は、側壁部から溝部に向かって下降傾斜を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の大型基板薬液処理装置の薬液処理槽の側壁部は、削り出しによるL型構造を有し、側壁部と底部とは、内部に共通の接続ピンが埋め込まれて溶接されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の大型基板薬液処理装置の薬液処理槽の底板部には、複数のブロックが設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、横型槽により水圧を軽減し、且つ薬液処理槽の薬液の貯液強度を高めて、人手による大型基板の操作時に発生する外部衝撃による槽の亀裂事故を防止し、基板の薬液処理とリンス処理とを同じ薬液処理槽で行うために、液回収が容易に行える構造にして操作性を高め、さらに熱硫酸による事故を防ぐため使用量を可能な限り軽減することを可能とした。これにより、薬液による危険作業に対し安全に作業を行うことができる大型基板薬液処理装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明による大型基板薬液処理装置の構成を示す装置構成図である。図1aにおいて、大型基板薬液処理装置100は、薬液処理槽10と、薬液供給手段50と、リンス液排水手段60とを有している。薬液処理槽10は、底板部10−1と側壁部10−2と溝部10−4とにより構成されている。また、底板部10−1は、側壁部10−2から溝部10−4に向かって下降傾斜を有している。このように中央部の溝部10−4に向けて傾斜を持たせることにより、効率よく薬液の回収を行うことが可能となる。
【0012】
大型ガラス基板30は、薬液供給手段50により供給された薬液処理槽10内の熱硫酸20中に、横に倒して浸漬され、薬液処理が開始される。薬液処理が終了すると、熱硫酸20は、薬液供給手段50により溝部10−4を介して一旦回収され、続いて、一次側から供給された純水25によりリンス処理が開始される。リンス水は定量にて供給を停止し、設定時間保持され、タイムアップ後排水される。この排水は一旦リンス液排水手段のタンクに排水され中和剤と混合後、一定のPHにしてから排水される。リンス処理が終了すると、大型ガラス基板30は取り出され、純水50は完全に排水される。続いて、薬液供給手段50により回収された熱硫酸20が、再び薬液処理槽10内に供給され、つぎの大型ガラス基板30の薬液処理が開始される。
【0013】
この場合、処理される大型ガラス基板30は横に倒して浸漬されるため、薬液処理槽10は横型構造となっている。このため、底板部10−1と側壁部10−2との接続部に加わる熱硫酸20による圧力は、縦型構造に比べ軽減される。しかし、人手により大型ガラス基板30を熱硫酸20内に浸漬する際、何らかの原因で側壁部10−2に発生する外部衝撃により、底板部10−1と側壁部10−2との接続部に大きな力が加わり亀裂が生じ、熱硫酸がリークする可能性がある。これについて、次に説明する。
【0014】
図2bは、薬液処理槽の底板部と側壁部との接続を示す構造図である。図2bにおいて、薬液処理槽10の側壁部10−2は削り出しによるL型構造を有し、側壁部10−2と底板部10−1とは、内部に共通の接続ピン10−3が埋め込まれて溶接されている。これにより、面合せされ溶接された構造に比べて機械強度が大幅に向上し、外部衝撃による亀裂事故がなくなり、熱硫酸のリークによる危険性が無くなる。
【0015】
また図1aにおいて、薬液処理槽10の底板部10−1には、複数のブロック40が設置されている。このブロック40は、人手によるハンドリングのための空間を確保すると共に、安定した薬液処理を行うために大型ガラス基板30を水平に保持する。さらに、傾斜により溝部10−4に向けて生じる空間部分においても、複数個のブロック40が設置されることにより、熱硫酸20の使用量を軽減することが可能となる。
【0016】
以上説明したように本発明によれば、横型槽により水圧を軽減し、且つ薬液処理槽の薬液の貯液強度を高めて、人手による大型基板の操作時に発生する外部衝撃による槽の亀裂事故を防止し、基板の薬液処理とリンス処理とを同じ薬液処理槽で行うために、液回収が容易に行える構造にして操作性を高め、さらに熱硫酸による事故を防ぐため使用量を可能な限り軽減することを可能とした。これにより、薬液による危険作業に対し安全に作業を行うことができる大型基板薬液処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による大型基板薬液処理装置の構成を示す装置構成図。
【図2】従来における大型基板薬液処理装置の構成を示す構成図。
【符号の説明】
【0018】
10 薬液処理槽
10−1 底板部
10−2 側壁部
10−3 接続ピン
10−4 溝部
20 熱硫酸
25 純水
30 大型ガラス基板
40 ブロック
50 薬液供給手段
60 リンス液排水手段
70 リンス処理槽
100 大型基板薬液処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型ガラス基板を薬液処理する大型基板薬液処理装置であって、
薬液処理槽と、薬液供給手段と、リンス液供給手段とを有し、
前記薬液処理槽は、側壁部と底板部と溝部とを有し、
前記底板部は、前記側壁部から前記溝部に向かって下降傾斜を有することを特徴とする大型基板薬液処理装置。
【請求項2】
前記薬液処理槽の前記側壁部は、削り出しによるL型構造を有し、前記側壁部と前記底部とは、内部に共通の接続ピンが埋め込まれて溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の大型基板薬液処理装置。
【請求項3】
前記薬液処理槽の前記底板部には、複数のブロックが設置されていることを特徴とする請求項1に記載の大型基板薬液処理装置。

【図1】
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【図2】
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