説明

大気圧グロー放電プラズマを発生させるための方法及び装置

大気圧グロー放電プラズマAPG(7)を発生させるための方法及び装置(1)であって、複数の電極(4,5)が配置され、この複数の電極(4,5)が前記プラズマ(7)を形成するための放電空間を規定する。電極(4,5)は、電源(8)に接続され、この電源(8)は、少なくとも50kHzの周波数を有するAC電圧を電極(4,5)に供給する。ガス状物質(6)は、前記放電空間に供給され、少なくとも、アルゴン、窒素、および空気より成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、大気圧グロー放電(APG)プラズマを発生させるための方法及び装置、並びにその使用に関する。特に、本発明は、大気圧グロー放電(APG)プラズマを発生させるための方法及び装置に関し、ここで、複数の電極は、上記プラズマを形成するための放電空間を規定するように配置される。
【背景技術】
【0002】
グロー放電を適用することによる表面改質または表面処理(modification or treatment of a surface)は、写真フィルム製造産業のように、産業上知られた技術であり、或る表面および材料特性を改善するために使用される。例えば、写真フィルムの製造では、熱可塑性高分子フィルム(トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、または類似物質)は、表面の密着性(adhesion properties)を改善するためにグロープラズマ(glow plasma)を用いて下処理される。
【0003】
一般に、プラズマは、材料加工(material processing)に適した解決策であると考えられている。なぜなら、それは、反応種(ラジカル、イオン)の大きな流量(flux)を発生させるからであり、それは、処理区域(process zone)に向けられ、そして適切な電界分布を用いることにより所望の形状に操作される。プラズマ処理は、大気圧で発生させることができれば、相当な利点を有する。大気圧を使用することの利点は、反応種の密度が低圧の場合における密度よりも大きいことであり、真空技術を回避する利点もある。
【0004】
大気グロー放電(APG)の他の好ましい特徴は、約300−400Kの低温におけるこれらプラズマの発生である。このことは、写真フィルム製造法において普及しているように、この技術を可塑性高分子の表面処理に適用可能とするであろう。
【0005】
上述の環境下でプラズマを発生させることは容易な技術ではない。大気圧では、粒子密度が高く、その結果、反応種の平均自由行路(mean free path)が小さくなる。励起およびイオン化の処理はわずかな領域に制限され、そしてプラズマは主にフィラメント状の形態で発生される。
【0006】
大気圧でのプラズマは極めて不安定であり、且つ、ブレークダウン後の短い時間にアークまたはスパーク状態になる傾向がある。電流密度の任意の局所的な増加は、抑制されるよりも、むしろ増大する傾向があり、プラズマが抑制されるであろう。
【0007】
プラズマを発生させるためは、ガスがイオン化される程の十分なエネルギーをガスに与えることを必要とする。プラズマの内部では、ガスの要素間の相互作用と衝突が、化学的または物理的に、準安定体(metastables)、イオン、電子、その他のような、活性種(active species)を生成する。また、再結合および励起された要素の基底状態への遷移は、プラズマからフォトンの放出(emission)を生じさせる。
【0008】
プラズマを維持するために、十分な自由電子がプラズマに存在すべきである。均一な大気プラズマを得るための解決策の一つは、バックグランドプリイオン化(background pre-ionization)の発生であり、種電子(seed electron)がプラズマブレークダウン前に反応炉に存在しなければならないことを意味する。これらの種電子は、プラズマ自体の内部の相互作用を通じて上述したように生成され、または、プラズマに存在する種(species)と電極表面との間の相互作用の結果として生成され得る。
【0009】
一般に、APGプラズマは、AC電圧を複数の電極に印加することにより生成される。熱可塑性高分子フィルムのような処理されるべき基質(substrate)は、1又は2以上のこれら電極表面に沿って搬送される。AC電圧の周波数は、プラズマの特性を改善するために変更されてもよい。
【0010】
材料加工で使用するためのプラズマの適用性は、次のパラメータを決定することにより評価される。
− APGプラズマに与えられるパワー。これは印加電圧およびプラズマ電流から計算される。
− 照射非均一性(exposure non-uniformity)。これは表面への照射(exposure)の統計的分布に基づく。
− 最小照射時間(minimum time of exposure)。ここで、表面の99%は、少なくとも1J/cm(考慮される照射の統計的変動)の表面プラズマエネルギー線量にさらされる。
上述の照射非均一性パラメータおよび最小照射時間は、以下で更に詳細に説明される。
【0011】
写真フィルム産業での材料加工におけるような多くの状況および適用において、可能な限り短いプラズマ処理時間を有することは有利である。プラズマ照射時間は次の式で与えられる。
【0012】
【数1】

【0013】
ここで、Lはプラズマ反応炉の長さであり、vは線速度(line speed)である。
照射が短時間であることは、高速な線速度の使用と、“中間”のサイズ(L=10-20cm)のAPG反応炉の使用を可能にする。処理されるべき材料の表面で最大表面エネルギーに達するために必要とされるエネルギー線量は、理解できるように、多くの要因に依存し、それは表面および材料の特性である。1J/cmのエネルギー線量での大気圧グロープラズマ処理は最大表面エネルギーに達するのに十分である。しかしながら、ポリエチレン(PE)のような或るタイプの高分子化合物(polymer)とゼラチンとの間の許容し得る密着性を得るためには、50ないし100mJ/cmの間のエネルギー線量で既に十分である。
【0014】
材料を処理するために必要とされる最小照射時間は次の式で与えられる。
【0015】
【数2】

【0016】
ここで、Pは、プラズマによって消費されたパワーであり、Sは、活性電極表面、即ち、プラズマによって覆われた電極表面の一部である。
【0017】
プラズマ照射は確率論的な処理であるので、表面の局所的部分がプラズマにさらされるかどうかについても同様に確率論的である。これは、P/Sの平均値と、この平均値からの或る分散を有する確率論的パラメータによって表される。従って、最小照射時間は、99%の確実性で表面の全ての要素が少なくとも1J/cmのエネルギー線量にさらされるという要件(requirement)によって決定される。プラズマの均一性によっては、表面に照射されるエネルギー線量は、表面の或る局所的場所(local site)でかなり高くなるかもしれない。
【0018】
照射の統計的変動(statistical fluctuations)を考慮に入れると、最小照射時間は次の式で与えられる。
【0019】
【数3】

【0020】
ここで、Dは、表面で局所的に受け取られたエネルギー線量であり、δDは、統計的分散(平均からの平均標準偏差)である。照射の統計的分散は、本明細書において後で計算される。
【0021】
処理プロセスの他の品質クリテリウム(quarity criterium)はプラズマ照射の均一性である。ハイレベルの均一性を確立するためには、照射の変動が微小スケール(人間の目では検出不能な100μm又はそれよりも小さいスケール)でのみ存在するということが必要とされる。従って、99%の確実性で、10−4cmのサイズを有する材料表面の任意の要素が、少なくとも1J/cmのエネルギー線量にさらされなければならない。
【0022】
コロナ放電または無音放電のようなストリーマー放電(streamer discharge)が上述した基準を満たすことは極めて困難である。その原因は、ストリーマー空間電荷の斥力と、ストリーマープラズマ近傍での電界の低下であると考えられている。結果として、このタイプの放電は、処理すべき全ての材料を覆うことができず、数ミリメートルの空隙がストリーマー放電間に存在する。
【0023】
単一パルスについて、10−4cmの表面単位(surface unit)にわたる照射の分散(平均相対変動)は、次の式で与えられる。
【0024】
【数4】

【0025】
ここで、Dspは、単位面積パルスあたりのエネルギー線量であり、Sは、単位がcmでの電極表面積であり、Epulseは、単一パルスでプラズマから得られるエネルギーである。数式(4)を得るために、表面の各要素上の電流密度値は統計的に独立であると仮定する。
【0026】
照射のポアソンの統計的分布を仮定すると、N個のパルスに対する照射のための相対的照射変動(relative fluctuation of exposure)は、次の式で表される。
【0027】
【数5】

【0028】
ここで、fはパルス周波数であり、N=ftは、APG反応炉を通して材料表面(例えば金属箔の表面)を移動中に表面の要素によって受信されたプラズマの数である。
【0029】
パルスあたりのエネルギーの統計的変動値は、16個のサンプルパルスを用いて、印加されたAC電圧およびプラズマ電流の波形から決定される。従って、次の式が成り立つ。
【0030】
【数6】

【0031】
ここで、Iplasmaは、プラズマ電流であり、Uは、APG反応炉の電極に印加されるAC電圧である。
【0032】
数式(29と統計的変動を考慮すれば、最小照射時間は次の式のように決定される。
【0033】
【数7】

【0034】
数式(5)および(7)は、明らかに、照射時間を低減すると共に均一性を増加させるためには高い周波数が重要であることを示している。数式(7)によって定義される最小照射時間は、密着性(adhesion)のコーティングを改善するためのPEN、PET,PEの処理要件に強く依存すると共に、さらに非均一性が容認できるほどの表面サイズと最小照射に依存する。
【0035】
プラズマの均一性を反映すると共に、異なる動作条件および適用のための大気圧グロー(APG)プラズマを比較するために使用されるパラメータは、(単一パルス照射後の)1cmの表面上の照射の変動(variation)であり、次のように表される。
【0036】
【数8】

【0037】
以下では、δD(パーセントとして測定される)は、照射非均一性パラメータと称され、そして、数式(7)により定義されるような最小照射時間と共にプラズマ品質パラメータとして使用される。
【0038】
照射均一性は、表面の電荷の電荷分布を視覚化するトナー試験(toner test)によりチェックされる。
この場合、トナーが形成するスポットのサイズと、トナーが形成するスポット間の距離との比dは、次のように表される。
【0039】
【数9】

【0040】
安定的な大気グロープラズマを発生させるための多くの試みがなされた。
US6299948では、窒素ガス中で、AC電圧と周波数との適切な組み合わせにより均一なプラズマを発生させるための方法が開示されている。使用される周波数範囲は、200Hzないし35kHzであり、15kHz以下の周波数を優先的に使用し、且つ、その範囲における印加電圧の振幅は5ないし30kVである。
【0041】
しかしながら、高い周波数でのプラズマにおける材料処理は、時間と共に放電数が増加されるために有益である。パルスあたりの発生電荷と、パルスあたりのエネルギーは、周波数と共にわずかしか変化しないが、動作周波数(operating frequency)が増加されると、単位時間あたりのパルス数が増加する。従って、平均パワー(単位時間あたりに放出された電荷)は、周波数と共に比例的に増加する。従って、材料処理は、低い周波数のときよりも速く、そして、理解できるように、これは工業上の処理に明らかな利益をもたらす。
【0042】
US5414324は、1ないし100kHzの周波数範囲において均一な大気圧グロー放電プラズマを発生させる装置および方法について述べている。この文献で使用されている周波数範囲は、イオントラッピングモデル、即ち、イオンの移動度(mobility)はプラズマガスにおいてトラップされる程に低いが、電子の移動度は十分に高くて電極に到達することができるというモデルに基づいている。ガスは放電電極間に存在し、少なくともガスは、空気、亜酸化窒素(nitrous oxide)、または、アルゴン、ヘリウム、ネオンなどのような希ガスのうちの一つを含む。しかしながら、この文献は、より高い周波数ではプラズマが不安定になり、もはや維持できなことを提言している。
【0043】
高い周波数でのプラズマ発生における反応ガスとしてのヘリウムの適用は、しばしば実施されてきた。欧州特許EP 0 790 525、EP 0 821 273およびEP 0 699 954は、高い周波数でグロープラズマを発生させるための方法および装置を開示している。
【0044】
EP 0 790 525は、空気中での10kHzにおけるプラズマの発生、少量のN及び/又はOを含むHe中での40kHz、450kHz、13.56MHzにおけるプラズマの発生を開示している。ガスは、使用される装置電極の穴(hole)を通じてパージ(purge)される。プラズマ処理されるPETおよびPENの密着特性(adhesion properties)の測定は、密着性効果を改善するのに450kHzの動作周波数が有利であることを示す。コロナおよびプラズマ処理されたサンプルは、これらの文献において比較され、プラズマがより優れた密着特性を提供することを示している。
【0045】
EP 0 821 273における改善された実施形態は、プラズマ処理されたPENの密着特性について述べており、ここで、プラズマは、10および450kHzで、反応ガスとして使用される空気と比較してヘリウムおよび窒素(の組み合わせ)中で発生される。使用された装置(arrangement)は、ドラム(drum)と並列に配置されたベアチタン部品(bare titanium parts)から成るコロナ用の設定(corona-like setup)である。ドラムはシリコーン層(silicone layer)で覆われ、高分子フィルムが放電空間を通ってドラム上に運ばれる。放電空間は、実質的にヘリウムから成るガスで満たされ、高分子フィルムが大気グロー放電にさらされる。幾つかの実験が、10kHzの周波数で実質的にNから成る反応ガスを用いて実施された。
【0046】
US5585147には、表面をクリーニングするために大気圧グロー放電プラズマでガラス繊維(glass fabric)の表面を処理して、その密着特性を改善し、有機シラン化合物(organosilane compound)で表面をコーティングするための方法が開示されている。ガラス繊維は、実質的にヘリウム及び/又はアルゴンから成る搬送ガス(carrier gas)において発生されるプラズマで処理され、その搬送ガスは反応ガスと混合される。所望のクリーニング性能と密着特性を達成するために、ガス混合(gas mixture)は、プラズマを発生させる前に、100℃と600℃との間に予熱される。しかし、これら温度は、プラズマを、熱可塑性高分子フィルムのような温度に敏感な基質(substrate)の表面処理に適さないものにする。
【0047】
しかしながら、AC電圧の高い周波数(>50kHz)でAPGプラズマを発生させるための方法におけるヘリウムの適用は好ましくない。ヘリウムは、約5ppm(parts per million)の濃度で大気中に存在する。しかしながら、ある天然ガス鉱床(natural gas deposit)は大量のヘリウムを含むことが発見され、従ってほとんどのヘリウムはこれらの天然ガス鉱床から得られる。鉱床のいくつかは、容積で約0.3%の濃度のヘリウムを含む。世界におけるヘリウムのほとんどは、テキサス、オクラホマ、カンザス、およびロッキー山脈で発見された天然ガス鉱床に由来している。
【0048】
ヘリウムは、低温液化処理(low temperature liquefaction process)を用いて天然ガス流(natural gas stream)から抽出される。この低温方法は、50%以上のヘリウムと窒素との混合物と少量の他のガスとからなる原料ヘリウム(crude helium)を、主に炭化水素から成る液化部分から分離する。圧力スイング吸着(pressure swing adsorption; PSA)および極低温処理を含む多くの他の技術は、原料ヘリウムを濃縮されたヘリウム製品に精製するために使用される。ヘリウムは、希少であり、抽出が困難であるために高価なガスである。ヘリウムの使用が上述の適用においてなるべく回避されるのは主にこの理由による。
【0049】
ヘリウム適用の他の欠点は、ヘリウム固有の重さ(0.17g/l)に起因して、ヘリウムが極めて揮発的(volatile)であることである。この理由により、ヘリウムガスは常に装置の最小の穴から抜け出そうとする。ガス注入手段のための更に複雑なシステムおよび適切な密閉(sealing)が、ヘリウムガスを反応ガスとして使用する装置では必要とされる。
【0050】
最後に、原子量が4のヘリウムは、処理されるべき表面との衝突において比較的少量のエネルギーを放出する。より重いものの使用、即ちより重い粒子はより大きなエネルギーを交換し、そして表面の物理的な処理に寄与する。従って表面活性化(surface activation)およびエッチング(etching)のような用途では、ヘリウムは最適な選択ではない。
【0051】
さらに、US5585147において行われているように、放電空間における搬送ガスの加熱は、写真フィルム製造産業において行われているような、熱可塑性高分子フィルムを処理するためには好ましい選択ではない。より高い温度は、例えば融解(melting)により、熱可塑性高分子にダメージを与える。他方、エネルギー消費に起因して温度が自動的に或る程度上昇することが経験されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0052】
本発明の目的は、卓越した表面処理性能を用いてAC電圧の高い動作周波数で安定的かつ均一な低温大気圧グロー放電プラズマを発生させるためのコスト効率に優れた方法を提供することである。
【0053】
本発明のこれら及び他の目的は、大気圧グロー放電プラズマ(APG)を発生させるための方法によって達成され、複数の電極は、配置されて前記プラズマを形成するための放電空間を定義し、前記電極は電源に接続されでAC電圧が前記電極に印加され、ガス状の基質(substrate)が前記放電空間に供給され、前記電極に印加される前記AC電圧は、少なくとも前記ガス状の基質のブレークダウン電圧に等しい振幅を有すると共に少なくとも50kHzの周波数を有し、前記ガス状の基質は、実質的に、アルゴン、窒素、および空気から成るグループの中の少なくとも一つから成る。
【課題を解決するための手段】
【0054】
本願発明者は、50kHz以上の周波数のAC電圧を用いて、その印加されるAC電圧の振幅を少なくともブレークダウン電圧(ここで、ブレークダウン電圧は、使用される各搬送ガスに固有である)に等しく維持することにより、エネルギーの消費を大幅に低減できることを発見した。従って、放電空間における温度が制御される。上記印加されるAC電圧を上述のレベルに維持することの他の重要な発見は、数式(8)に定義されるような、発生されるグロー放電プラズマの均一性が著しく改善されたことである。数式(7)により定義される最小照射時間における減少もまた発見された。従って、本発明は、放電空間における低温、短照射時間、およびAPGのハイレベルな均一性を提供する。故に、本発明は、熱可塑性高分子に対する熱的なダメージが防止されるので、熱可塑性高分子が低ガラス温度(T)を有して含まれるものを含む種々の装置産業(process industry)において適用され得る。理解できるように、印加される電圧は、グロー放電プラズマを維持するために十分に大きくなければならない。しかし、印加電圧の振幅は、高すぎてはならず、少なくとも、適用されるガス状の基質のブレークダウン電圧の140%より高くなってはいけない。
【0055】
更に放電空間における温度を制御するために、ガス状の基質は、100℃よりも低い温度に維持される。好ましくは、ガスは、室温、即ち20℃と30度との間に維持される。
【0056】
低い臨界温度(例えば、低いガス転移温度)を有する細心の注意を要する高分子の場合、更に、放電空間におけるフィルムの滞留時間を低減することにより、高分子に与えられる温度を低減してもよい。これは、或る速度で放電空間を通してフィルムを移動させ、フィルムの原型を保つような、フィルム温度が維持される所望の滞留時間が達成されるような速度を適応(adapt)することにより達成される。(例えばフィルムの速度を適応させることにより)滞留時間を低減することは、上述したようなAC電圧の振幅を低減させることとは独立に実施され、これらの量(measure)のどちらも、別々に又は両方一緒に実施されてもよい。
【0057】
AC電圧の周波数の増加は、準安定体の構築(build up of metastable)の増加をもたらし、電極とプラズマとを相互作用させてプラズマの安定性と密度を改善する。さらに周波数の増加は、フィラメント状の放電の抑制に寄与する活性種(active species)の数の増加をもたらす。この振る舞いは、アルゴン、空気、窒素、およびヘリウムにおいて確立されたが、しかしながら、他のガスはこの振る舞いを示さなかった。
【0058】
アルゴン、窒素、および空気は、ヘリウムよりも極めて大きくて重い原子から構成され(Ar 40、N 28、空気はおよそ78%のNと20%のOと1%のArと1%のHOと幾つかの他成分との混合である)、上記ガスの使用は、上記の説明を考慮すれば、表面処理の用途において好ましい。さらに、空気、窒素またはアルゴンの使用は、ヘリウムの使用よりもコスト効率のよい解決策である。この理由により、本発明は、多くの産業プロセスにおいて高い周波数でのAGPプラズマの適用性を改善する。
【0059】
良好な結果は、特に、放電空間にアルゴンの多い大気を提供することにより達成された。安定的で均一なAPGプラズマがこの方法で達成されることが理解された。
【0060】
本発明の実施形態において、AC電圧は、プラズマが発生された後に、高くてもブレークダウン電圧の140%のレベルに低減される。プラズマを確立した後の印加電圧の好ましい範囲は、ブレークダウン電圧の110%と120%との間である。
【0061】
他の実施形態において、ガス状の基質は、アルゴンに加えて、O、CO、NH、SiHのような共通先駆ガス(common precursor gasses)、炭化水素、TEOSおよびHMDSOのような有機ケイ素(organosilicons)、または有機金属(organo-metallic)及びそれらの組み合わせから成るグループの中の1又は2以上のような少なくとも一つの更なるガスを含む。観測されるように、多くのこれらガス状の化学的基質が存在すると、プラズマは、より容易に持続する。(Ar,N,空気、又はそれらの組み合わせから成る)搬送ガスは、容積で50%までの他のガスを含んでもよいが、良好な結果は、容積でおよそ20%の濃度を用いて達成される。
【0062】
本発明の好ましい実施形態は、搬送ガスの存在下で均一なプラズマが達成されると共に、上記更なるガスの濃度が段階的に少しずつ増加されるように上記更なるガスを放電空間に供給するように、少なくともプラズマを本質的に安定化するステップを含む。濃度を少しずつ増加させる各ステップの後に、所望の濃度の安定的なプラズマが達成されるまでAC電圧を調整することによりプラズマを安定化するステップが続く。
【0063】
上述した段階的な少しずつの増加は、更なるガスの濃度のガス濃度の増加を含み、その増加は、最終的に所望する濃度と比較して相対的に小さい。例えば、濃度をその最大の所望値、例えば4段階(トータルの25%)または10段階(トータルの10%)または20段階(最大の所望濃度の5%)に増加させることは、最終的に所望する濃度と比較して、比較的小さい段階と考えられる。
【0064】
電圧立ち上がり時間(voltage rise time)を、サイン電圧がゼロ電圧振幅と最大/最小電圧振幅との間で上昇/下降するのに必要な最小時間間隔(shortest time interval)として定義すると、プラズマを安定化させることは、電圧立ち上がり時間が0.1ないし10kV/μsの範囲であるように電圧特性を調整することにより達成される。最適条件(optimum)は、0.1ないし5kV/μsの範囲における値で達成される。
【0065】
また、安定的なAPGプラズマは、プラズマ電流密度を10mA/cmよりも小さく維持することにより容易に達成できることが観測された。
【0066】
上述の効果および利点は、前記ガス状の基質が放電空間を貫流(flow through)する実施形態において増進される。
【0067】
プラズマによる基質フィルムの処理を対象とする本発明の実施形態は、少なくとも一つの電極が、処理されるべき基質フィルムを支持するときに達成されてもよい。前記基質フィルムが、少なくとも一つの電極の表面を放電空間を通して搬送されて、上記基質をAGPプラズマ放電にさらしてもよい。
【0068】
本発明の更に他の実施形態において、少なくとも一つの電極は、誘電体材料(dielectric material)で覆われている。誘電体の表面は、プラズマの安定性(stability)および性能(performance)において重要な役割を演じることが観測された。
【0069】
上述の誘電体材料は、必ずしも、処理されるべき基質フィルムと同じ性質(nature)ではない。誘電体材料は、APGプラズマの振る舞いを改善するために、少なくとも一つの電極の表面にコーティングされてもよい。
【0070】
さらに、本発明によって提供される方法は、(動作パラメータに関する)次の表に示された環境下で使用され得る。
【0071】
【表1】

【0072】
アルゴン、窒素、および空気のような搬送ガスについては、望ましい電圧は1−6kVの範囲である。
【0073】
本発明の他の態様において、大気圧グロー放電プラズマ(APG)を発生させるための装置が提供され、この装置は複数の電極を備え、前記電極は放電空間が前記電極によって定義されるように配置され、さらに、この装置は、少なくとも50kHzの周波数を有するAC電圧を前記電極に印加するための手段と、ガス状の基質を前記放電空間に供給するための手段とを備え、ガス状の基質を前記放電空間に供給するための前記手段が、実質的に、アルゴン、窒素、および空気から成るグループのうちの少なくとも一つを供給するために配置されたことを特徴とする。
【0074】
上述の本発明は、表面が、ガラス、高分子、金属等(この特定のサンプルは、密着性を改善すること、または、疎水性または親水性を作り出すことのような表面処理の変形である)であり得るところの表面アクティベーション処理(surface activation processes)におけるような;SiH、炭化水素、有機ケイ素(TEOS,HMDSOなど)または有機金属(organometallic)のような特定の化学組成ガスが通常含まれるところの化学気相成長処理(chemical vapour deposition process)におけるような;高分子の堆積処理(deposition process)及び酸化性材料(oxidic materials)のための堆積処理におけるような;殺菌またはドライクリーニング目的が理解され得るところの種々の基質の表面クリーニング処理におけるような、産業における種々の処理において適用されてもよい。さらに、本発明は、また、100mbarと1barの間(大気圧)のような大気圧以下で良好に適用され得る。
【0075】
さらに、本発明は、本明細書の好ましい実施形態を参照して図面および詳細な説明により明らかにされ、本発明は、APGを用いた基質処理サービスを対象とする。本発明は、開示される実施形態に限定されるものではなく、その実施形態は説明目的のために提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
図1において、プラズマを発生させるための装置1は、第1電極4に結合された誘電体2を備える。第2電極5は、基質フィルム3を搬送するために配置され、放電空間10の反対側に配置される。ガス流(gas flow)6は、前記誘電体2および基質フィルム3と並行に設定される。第1電極4は、調節可能なAC電源(power supply)8に接続され、50kHzよりも高い周波数のAC電圧を供給するために配置される。第2電極5は、前記AC電源8に接続されると共にグランド9に接続される。
【0077】
本発明による方法において、ガス流6は、アルゴン、空気、および窒素のグループのうちの少なくとも一つを備えて設定される。例えば、純粋なアルゴンは、搬送ガスとして使用されてもよく、または、他には、アルゴンおよび空気、または窒素およびアルゴンの混合が任意の濃度で使用されてもよい。以下に述べる例は、窒素、空気、およびアルゴンを用いて実施された。意外にも、本発明による方法を用いれば、搬送ガスとしてのアルゴン、空気、または窒素の存在は、プラズマの安定性および強度に関して良い影響力を持つ。
【0078】
ガス流の設定後、電極4,5には、調節可能なAC電源8によってエネルギーが供給される。電源8は、50kHz−1MHz(好ましくは、100−700kHz)の範囲の周波数でブレークダウン電圧よりも最大で40%高い3−6kVの範囲の振幅(好ましくは、振幅はブレークダウン電圧よりも10%ないし20%高い)を有するAC電圧が供給されるように調整されている。一旦、ブレークダウン電圧に到達すると、プラズマ7は、誘電体2と基質フィルム3との間で発生される。同時に、前記フィルム3をその全表面に沿って処理するために、基質フィルム3は、プラズマを通り過ぎて何れかの方向に移動される。
【0079】
さらに、搬送ガスは、酸素、二酸化炭素、NH、SiHのような共通先駆ガス(common precursor gasses)、炭化水素、TEOSおよびHMDSOのような有機ケイ素(organosilicons)、または有機金属(organo-metallics)、またはこれらガスの組み合わせ又は混合を含んでもよい。これらガスは、処理の始めから搬送ガスに存在していてもよい。良好な結果は、プラズマを安定化するステップ後にさらにガスを付加することにより達成される。この付加は、少しずつの段階的な増加(fractional stepwise increments)で、所望の濃度(例えば20%)が確立されるまで各ステップの後にプラズマを安定化させることにより、最も良好に行われる。
【0080】
上述の段階的な少しずつの増加は、更なるガスの濃度のガス濃度増加(gas concentration increments)を含み、その増加は、最終的に望まれる濃度と比較して比較的小さい。例として、例えば4段階(全体の25%)または10段階(全体の10%)または20段階(最大所望濃度の5%)で濃度をその最大所望値に増加させることは、最終的に望まれる濃度と比較して、比較的小さい段階と考えられる。
【0081】
もう一つの方法として、搬送ガスに対する反応ガスの化学的な付加は、均一なグロープラズマが搬送ガスにおいて発生(ignite)されて、概ね10−20sの間、操作(operate)された後に行われる。搬送ガスに付加された反応ガスの濃度は、少しのパーセントの濃度段階で徐々に増加され、その後、プラズマを安定に維持するために、段階あたり約5−10%で、プラズマに印加される電圧が漸次的に増加される。
【0082】
誘電体2は、PET,PEN,PTFE、またはシリカ(silica)またはアルミナ(alumina)のようなセラミックのような材料を含む。任意の組み合わせ又は混合が同様に使用されてもよい。写真フィルム製造産業では、基質フィルム3は、感光層(photo sensitive layers)のためのサポート(support)であってもよく、感光層は、該感光層を付加する前にその密着性を改善するために先ずAPGプラズマを用いて処理される。前記サポートは、任意の適切な高分子であってもよいが、多くの場合、この目的のために、PEN、PET、TAC、PE、またはポリオレフィンラミネート加工紙(polyolefin laminated paper)が使用できる。
【0083】
プラズマを安定化させることは、電圧立ち上がり時間が0.1ないし10kV/μsの範囲であるように電圧特性を調整することにより達成される。好ましくは、0.1ないし5kV/μsの範囲の値を用いて達成される。電圧立ち上がり時間は、AC電圧の振幅と周波数に依存すると共に、誘電体2の誘電透磁性(dielectric permeability)および誘電体材料の厚さにより影響される。
【0084】
また、安定したAPGプラズマは、10mA/cmよりも小さなプラズマ電流密度を維持することにより、特に、5mA/cmに等しいかそれよりも小さいプラズマ電流密度で容易に達成できる。
【0085】
放電空間10を形成する誘電体2と基質フィルム3との間の距離は、0.1−5mmの範囲であり、好ましくは、250−1500μmの距離である。ガス流6の容積ガス流(volumetric gas flux)は、1l/minと50l/minとの範囲内であり、好ましくは約10l/minである。誘電体2の厚さは、1−1000μmであり、好ましくは250μmと500μmとの間である。
【0086】
図2は、写真フィルムのような基質フィルム3を処理するための本発明による装置を示す。この装置において、電極4は、円筒形状のドラム電極の周囲の半円の内側を形成する。電極4は、電極ホルダー11に取り付けられている。ドラム形状の電極5は、基質フィルム3を支持する円筒であり、そのフィルム3は、前記電極4および4によって形成される放電空間10を通って、ドラム電極5の回転動作により移動される。誘電体塗膜(dielectric coating)2は、電極4上に設けられ、または支持されたフィルム3、電極5の下に設けられる。図2では、少しの電極4が示されているに過ぎないことに留意されたい。電極4は、調整可能な電源8の出力に接続され、電源8の他方の出力がグランド9に接続されると共に、接続36によりドラム電極5がグランド9に接続される。
【0087】
支持ロール13により、基質フィルム3が処理チャンバー20の内部に運ばれ、そして支持ロール12によりドラム電極5上に導かれる。処理後、基質フィルム3は、支持ロール14により処理チャンバーを離れる。使用中には、調整可能な電源8を用いて前記電極にエネルギーを供給することにより、放電空間10にプラズマが発生される。基質フィルム3の表面は、前記放電空間10を通って移動されるに従って前記プラズマによって処理される。
【0088】
さらに、処理チャンバーは、ガス注入口15と、ガス排出口16と、放電空間10にガス流6を設定するための手段17とを備える。注入口15と支持ロール12との間の柔軟性のある壁18は、注入口15と排出口16との間の直接的なガス流の形成を防止する。結果として、ガス流6は余儀なく放電空間10を通って流される。
【0089】
ガス流6は、実質的に、アルゴン、空気、窒素のグループのうちの少なくとも一つ、またはそれらの組み合わせから成る。加えて、化学的気相成長法で使用されるような共通先駆ガス(common precursors)、NH、二酸化炭素、酸素、またはそれらの任意の組み合わせのような更なるガスが、ガス流6に付加されてもよい。好ましくは、搬送ガスに存在する他のガスの量は、容量で50%を超えない。従って、アルゴン、空気、または窒素を含む1又は2以上のガス貯蔵手段22(図2では、例としてアルゴンを含むガスボトルが示されている)は、バルブ21と、図示されるような複数のガス流を結集する要素21とを介して、ガス注入口15に接続される。上述した酸素、二酸化炭素、NH、共通先駆ガスなどの前記更なるガスは、複数の貯蔵手段23に貯蔵され、バルブ19を介して要素21に与えられてもよく、バルブ19は、更なるガスの濃度が段階的に増加または減少されるように、段階的に調節可能であってもよい。連続的に調節可能なバルブが同様に濃度の段階的な調節を可能にすることが理解される。従って、段階的に調節可能なバルブ19の使用が好ましいが、選択肢を残す。
【0090】
段階的に調節可能なバルブは、上述した方法を可能とし、ここで、更なるガスの付加は、少しずつの段階的な増加で、且つ、所望濃度の更なるガスが設定されるまで各段階の後にプラズマを安定化させることにより実施される。さらに、バルブ19の要件は、望まれる少しの段階の大きさによって決定されることが理解される(幾つかの例が上述された)。
【0091】
プラズマブレークダウン中に電圧を制御するために1又は2以上の電流チョークコイル(current choke coil)(図示なし)が装置に付加されてもよい。
本発明は、その多くの実施例を述べることにより説明され、その実施例は、(他の実施例の中から)実験室環境において試験された。
【0092】
[例1]
第1の例では、速度が2m/sの室温のアルゴンを、印加電圧の振幅が1.4kVの放電空間に与えることにより、大気圧グロー放電プラズマが発生される。両方の電極は、100マイクロメーターの厚さのポリエチレンナフタレート(polyethylene-naphtalate)から成る誘電体材料で覆われている。(一般には放電空間を形成する)電極間の空隙距離(gap distance)は1mmである。LCマッチング回路が本プラズマ装置に組み込まれている。測定結果を以下の表にリストアップして示す。
【0093】
【表2】

【0094】
図3は、本明細書の初めに定義したようなプラズマ品質パラメータの周波数依存性を示す図である。この図は、APGプラズマに投入されるパワーP 25、照射非均一性パラメータδD 26、および最小照射時間tminim 27を示す。これらのパラメータは、印加されるAC電圧およびプラズマ電流の測定に基づいており、印加されるAC電圧の低い周波数と高い周波数でのアルゴン(Ar)プラズマ特性の比較研究の結果である。その値は、両対数スケールでプロットされている。
【0095】
高い周波数(>50kHz)でAPGプラズマを発生させることの利点は、この図に示される結果により裏付けられる。パワー密度(power density)は、ほとんど10の因子(factor)で増加するが、処理時間および非均一性パラメータは、同じオーダーの振幅で減少する。加えて(図3には示されないが)、大きな空隙(放電空間の寸法)は、プラズマにおいて何ら不安定化が生じることなく可能とされる。
【0096】
[例2]
第2の例では、大気圧グロー放電プラズマは、印加電圧の振幅が4.5kVでの放電空間に2m/sの速度で窒素ガス(N)を与えることにより発生された。両方の電極は、100μmの厚さを有するポリエチレンナフタレート(PEN)から成る誘電体材料で覆われている。(典型的には放電空間を形成する)電極間の空隙距離は1mmである。LCマッチング回路が本プラズマ装置に組み込まれている。測定結果は、以下の表にリストアップされると共に、図4のグラフに表されている。再び、APGプラズマに投入されるパワーP 28、照射非均一性パラメータδD 29、および最小照射時間tminim 30が示されている。
【0097】
【表3】

【0098】
[例3]
第3の例では、大気圧グロー放電プラズマは、印加電圧の振幅が4.5kVでの放電空間に2m/sの速度で空気を与えることにより発生された。両方の電極は100μmの厚さを有するポリエチレンナフタレート(PEN)から成る誘電体材料で覆われている。(典型的には放電空間を形成する)電極間の空隙距離は1mmである。LCマッチング回路が本プラズマ装置に組み込まれている。測定結果は、以下の表にリストアップされると共に、図5に表されている。再び、APGプラズマに投入されるパワーP 31、照射非均一性パラメータδD 32、および最小照射時間tminim 33が示されている。
【0099】
【表4】

【0100】
[例4]
約280kHzの周波数での測定例として、図6は、電極に印加されるAC電圧と、本発明による方法または装置を用いて発生されたプラズマの電流の図である。この特定の例では、使用された搬送ガスは流速が2m/sのアルゴンであり、空隙距離は2mmである。プラズマ電流は実線で示され、印加電圧は点線で示されている、
【0101】
上述の実験結果は、高い周波数で、アルゴン、窒素、および空気の存在下で、安定したプラズマが発生できることを示している。しかしながら、窒素及び空気ガスについて均一で安定したプラズマを維持するための動作範囲(operation window)はむしろ制限される。アルゴンガスについては、前記現象は以外にも観測されない。他方、200ないし500kHzの周波数範囲では、ガスのプラズマ非均一性(plasma non-uniformity of gasses)は、1と10kHzとの間の周波数において得られるものよりも1桁小さいことが観測された。前記観測は、より高い周波数、好ましくは少なくとも50kHzの周波数でAPGプラズマを発生させることについての明らかな利点を示している。より好ましくは、周波数は、100ないし1MHzの範囲であり、最も好ましくは、100−700kHzの範囲である。
【0102】
高い周波数で増加したプラズマの安定性は、グロープラズマブレークダウンに必要とされるプレイオン化(pre-ionization)を提供する準安定体(metastable)の役割を果たすと考えられている。周波数の増加により、放電パルス間の間隔が減少し、その結果、前の放電パルスから放電空間に存在する準安定体の密度が増加する。
【0103】
周波数の増加は材料加工効率に関する利益を示すが、1MHzよりも高い周波数で大気グロープラズマを発生させることは挑戦的なことである。これは、プラズマの不安定状態(プラズマブレークダウン)の間に、プラズマに印加される電圧は可能な限り迅速に減少しなければならないという要件のせいである。これは、電極を誘電体で覆うことにより達成される(dielectric barrier discharge system; DBD)。ブレークダウンの後、誘電体表面に蓄積しているプラズマ電荷によって発生される電界は、プラズマに印加される電圧を減少させる。
【0104】
周波数が増加すると、印加電圧の立ち上がり時間も増加し、且つまた、プラズマに印加される電圧が誘電体上に蓄積された電荷の電界によって低下される前に増加する遷移状態期間も増加する。
【0105】
さらに、DBDシステムでの最大許容プラズマ電流(maximum allowed plasma current)は周波数に比例して増加し、より高い周波数で電流が極めて高くなって(好ましくない)アーク遷移(arc transition)へのグローの確率を増加させる。
【0106】
包括すると、本発明の多くの修正および変形は上述の教示内容を考慮すれば可能であることが分かる。従って、修正クレームの範囲内で、本発明は、本明細書で具体的に述べられたもの以外にも実施できることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明による方法を実施するための装置を示す図である。
【図2】基質フィルムを処理するためのAPGプラズマ処理装置を示す図である。
【図3】Arを搬送ガスとして用いた本発明により発生されたプラズマにおけるプラズマ品質パラメータの依存性を示す図である。
【図4】Nを搬送ガスとして用いた本発明により発生されたプラズマにおけるプラズマ品質パラメータの依存性を示す図である。
【図5】空気を搬送ガスとして用いた本発明により発生されたプラズマにおけるプラズマ品質パラメータの依存性を示す図である。
【図6】本発明による方法または装置を用いて発生されたプラズマにおけるプラズマ電流と印加電圧の特性を示す図である。
【符号の説明】
【0108】
2 誘電体
3 基質フィルム
4,5 電極
6 ガス流
7 プラズマ
8 AC電源
9 グランド
10 放電空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧グロー放電プラズマ(APG)を発生させる方法であって、複数の電極が、前記プラズマを形成するための放電空間を規定するように配置され、前記電極は電源に接続されると共に該電極にはAC電圧が印加され、且つガス状の物質が前記放電空間に供給され、前記電極に印加される前記AC電圧は少なくとも前記ガス状の物質のブレークダウン電圧に等しい振幅を有すると共に少なくとも50kHzの周波数を有し、且つ前記ガス状の物質は、実質的に、アルゴン、窒素、および空気から成るグループのうちの少なくとも一つから成る方法。
【請求項2】
前記AC電圧の振幅は、前記ブレークダウン電圧の約140%以下である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記AC電圧の振幅は、前記ブレークダウン電圧の110%ないし120%である請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ガス状の物質の温度は、100℃よりも低い請求項1ないし3の何れか1項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの更なるガスが、前記放電空間における前記ガス状の物質に供給される請求項1ないし4の何れか1項記載の方法。
【請求項6】
少なくとも、
前記更なるガスの濃度が少しずつ段階的に増加されるように、前記プラズマを実質的に安定化させた後に前記更なるガスを前記放電空間に供給するステップと、
前記更なるガスの前記濃度の各段階的増加の後に前記AC電圧を調整することにより前記プラズマを安定化させるステップと
を含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも一つの更なるガスは、容積で多くとも50%の濃度で前記ガス状の物質に供給される請求項5および6の何れか1項記載の方法。
【請求項8】
前記濃度は、容積で多くとも20%である請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記放電空間における前記ガス状の物質に供給される前記少なくとも一つの更なるガスは、O、CO、NH、SiHのような共通先駆ガス、炭化水素、TEOSおよびHMDSOのような有機ケイ素、または有機金属およびそれらの組み合わせのグループのうちの少なくとも一つからなる請求項5ないし8の何れか1項記載の方法。
【請求項10】
前記放電空間に供給される前記ガス状の物質は、前記放電空間を貫流されてガス流を確立する請求項1ないし9の何れか1項記載の方法。
【請求項11】
前記ガス流は、1l/minないし50l/minの範囲の流速を有する請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ガス流の速度は、0.1−10m/sの範囲である請求項10および11の何れか1項記載の方法。
【請求項13】
前記ガス流の速度は、1−5m/sの範囲である請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記AC電圧は、1MHzよりも小さな周波数を有するように選択された請求項1ないし13の何れか1項記載の方法。
【請求項15】
前記AC電圧の前記周波数は、100kHzないし700kHzの範囲内に選択された請求項14記載の方法。
【請求項16】
高分子フィルムを処理するために使用される請求項1ないし15の何れか1項記載の方法であって、前記放電空間における前記可塑性の高分子フィルムの滞留時間は、該可塑性の高分子が該可塑性高分子フィルムのガラス転移温度よりも低い温度に維持されるように選択される方法。
【請求項17】
前記滞留時間は、前記放電空間を通して前記フィルムを移動させると共に前記フィルムの速度を制御することにより制御される請求項16記載の方法。
【請求項18】
高分子フィルムを処理すると共に前記グロープラズマを維持するために使用される請求項1ないし17の何れか1項記載の方法であって、前記AC電圧の振幅は、前記放電空間の温度が、前記フィルムの処理の期間中、前記熱可塑性の高分子フィルムのガラス転移温度よりも低く維持されるように選択される方法。
【請求項19】
前記熱可塑性の高分子フィルムは、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)および同様の熱可塑性高分子から成るグループのうちの少なくとも一つを含む請求項16ないし18の何れか1項記載の方法。
【請求項20】
前記電極の少なくとも一つは、誘電体材料のフィルムで覆われた請求項1ないし19の何れか1項記載の方法。
【請求項21】
前記誘電体材料のフィルムは、1μmないし1000μmの範囲における厚さを備えるように選択された請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記厚さは、250μmないし500μmの範囲内である請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記電極の少なくとも二つは、100μmないし5000μmの範囲内の距離を隔てて互いに離間して配置された請求項1ないし22の何れか1項記載の方法。
【請求項24】
前記距離は、250μmないし1500μmの範囲内に選択された請求項23記載の方法。
【請求項25】
電圧立ち上がり時間は、前記AC電圧がゼロから始めてその最大値に到達する最短時間間隔を規定し、前記AC電圧の前記電圧立ち上がり時間は、0.1ないし10kV/μsの範囲である請求項1ないし24の何れか1項記載の方法。
【請求項26】
前記プラズマを通る電流密度は、10mA/cmよりも小さい請求項1ないし25の何れか1項記載の方法。
【請求項27】
前記プラズマを用いた化学的気相成長処理で前記放電空間における基質を処理するために使用される請求項1ないし26の何れか1項記載の方法。
【請求項28】
大気圧グロー放電プラズマ(APG)を発生させるための装置であって、放電空間を規定するように配置された複数の電極を備え、さらに、前記電極にAC電圧を印加するための手段と、前記放電空間にガス状の物質を供給するための手段とを備え、前記電極にAC電圧を印加するための前記手段は、少なくとも前記ガス状の物質のブレークダウン電圧に等しい振幅を有すると共に少なくとも50kHzの周波数を有するAC電圧を供給するために配置され、且つ、前記放電空間にガス状の物質を供給するための前記手段は、実質的に、100℃よりも低い温度を有する空気、窒素、およびアルゴンから成るグループのうちの少なくとも一つを供給するために配置された装置。
【請求項29】
AC電圧を印加するための前記手段は、前記ブレークダウン電圧の140%以下の振幅を有するAC電圧を供給するために配置された請求項28記載の装置。
【請求項30】
ガス状の物質を供給するための前記手段は、前記放電空間における前記ガス状の物質に少なくとも一つの更なるガスを供給するために配置された請求項28または39の何れか1項記載の装置。
【請求項31】
ガス状の物質を供給するための前記手段は、少なくとも一つの更なるガスの濃度が段階的に調整可能なような、前記少なくとも一つの更なるガスを供給するために更に配置された請求項30記載の装置。
【請求項32】
前記少なくとも一つの更なるガスは、O、CO、NH、SiHのような共通先駆ガス、炭化水素、TEOSおよびHMDSOのような有機ケイ素、または有機金属およびそれらの組み合わせのグループのうちの一つから成る請求項30または31の何れか1項記載の装置。
【請求項33】
前記放電空間を通して前記ガス状の物質を流すための手段を備えた請求項28ないし31の何れか1項記載の装置。
【請求項34】
前記放電空間を通して前記ガス状の物質を流すための前記手段は、1l/minないし50l/minの範囲内の流速を有する流れを確立するために配置された請求項32記載の装置。
【請求項35】
前記放電空間を通して前記ガス状の物質を流すための前記手段は、0.1−10m/sの範囲内の流速を有する流れを確立するために配置された請求項34記載の装置。
【請求項36】
高い周波数のAC電圧を印加するための前記手段は、50kHzないし1MHzの範囲内の周波数を有する電圧を印加するために配置された請求項28ないし35の何れか1項記載の装置。
【請求項37】
前記電極の少なくとも一つは、前記プラズマによって処理されるべき熱可塑性の高分子フィルムを支持するために配置された請求項28ないし36の何れか1項記載の装置。
【請求項38】
前記熱可塑性の高分子フィルムの前記ガラス転移温度よりも低い温度に前記フィルムが維持されるような前記フィルムの滞留時間のための速度で、前記放電空間を通して前記熱可塑性の高分子フィルムを移動させるために配置された手段をさらに備えた請求項37記載の装置。
【請求項39】
AC電圧を印加するための前記手段は、前記放電空間の温度が、前記フィルムの処理中、前記熱可塑性の高分子フィルムのガラス転移温度よりも低い状態を保つような振幅を有するAC電圧を供給するために配置された請求項37または38の何れか1項記載の装置。
【請求項40】
前記電極の少なくとも一つと接触する誘電体材料のフィルムを備えた請求項28ないし39の何れか1項記載の装置。
【請求項41】
前記誘電体材料のフィルムは、1μmないし1000μmの範囲の厚さを有する請求項40記載の装置。
【請求項42】
前記放電空間は、前記電極間の間隔によって規定される寸法を有し、前記寸法は、0.1mmないし5mmの範囲内である請求項28ないし41の何れか1項記載の装置。
【請求項43】
前記AC電圧がゼロから始めてその最大値に到達する最短時間間隔を調整するために配置され、前記調整が少なくとも0.1ないし10kV/μsの範囲で実施される請求項28ないし42の何れか1項記載の装置。
【請求項44】
10mA/cmよりも下の範囲で前記プラズマを通る電流密度を調整するために配置された請求項28ないし43の何れか1項記載の装置。
【請求項45】
前記プラズマを安定化させるために配置された電流チョークコイルを備えた請求項28ないし44の何れか1項記載の装置。
【請求項46】
前記装置は、前記プラズマを用いて前記放電空間における基質上で化学的気相成長処理を実施するために配置された請求項1ないし45の何れか1項記載の装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧グロー放電プラズマ(APG)(7)用いて基質(3)を処理する方法であって、複数の電極(4,5)が、前記プラズマ(7)を形成するための放電空間(10)を規定するように配置され、前記電極(4,5)は電源(8)に接続されると共に該電極(4,5)にはAC電圧が印加され、且つガス状の物質(6)が前記放電空間(10)に供給され、前記電極(4,5)に印加される前記AC電圧は少なくとも前記ガス状の物質(6)のブレークダウン電圧に等しい振幅を有すると共に少なくとも100kHzの周波数を有し、且つ前記ガス状の物質(6)は、実質的に、アルゴン、窒素、および空気から成るグループのうちの少なくとも一つから成り、該方法は、前記基質(3)に対する熱的なダメージを防止するために前記基質(3)に加えられる温度を低減するために、前記ブレークダウン電圧よりも高い電圧に前記AC電圧の振幅を制御することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記AC電圧の振幅は、前記ブレークダウン電圧の約140%以下である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記AC電圧の振幅は、前記ブレークダウン電圧の110%ないし120%である請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ガス状の物質(6)の温度は、100℃よりも低い請求項1ないし3の何れか1項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの更なるガスが、前記放電空間(10)における前記ガス状の物質(6)に供給される請求項1ないし4の何れか1項記載の方法。
【請求項6】
少なくとも、
前記更なるガスの濃度が少しずつ段階的に増加されるように、前記プラズマ(7)を実質的に安定化させた後に前記更なるガスを前記放電空間(10)に供給するステップと、
前記更なるガスの前記濃度の各段階的増加の後に前記AC電圧を調整することにより前記プラズマ(7)を安定化させるステップと
を含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも一つの更なるガスは、容積で多くとも50%の濃度で前記ガス状の物質(6)に供給される請求項5および6の何れか1項記載の方法。
【請求項8】
前記濃度は、容積で多くとも20%である請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記放電空間(10)における前記ガス状の物質(6)に供給される前記少なくとも一つの更なるガスは、O、CO、NH、SiHのような共通先駆ガス、炭化水素、TEOSおよびHMDSOのような有機ケイ素、または有機金属およびそれらの組み合わせのグループのうちの少なくとも一つからなる請求項5ないし8の何れか1項記載の方法。
【請求項10】
前記放電空間(10)に供給される前記ガス状の物質(6)は、前記放電空間(10)を貫流されてガス流(6)を確立する請求項1ないし9の何れか1項記載の方法。
【請求項11】
前記ガス流(6)は、1l/minないし50l/minの範囲の流速を有する請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ガス流(6)の速度は、0.1−10m/sの範囲である請求項10および11の何れか1項記載の方法。
【請求項13】
前記ガス流(6)の速度は、1−5m/sの範囲である請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記AC電圧は、1MHzよりも小さな周波数を有するように選択された請求項1ないし13の何れか1項記載の方法。
【請求項15】
前記AC電圧の前記周波数は、100kHzないし700kHzの範囲内に選択された請求項14記載の方法。
【請求項16】
熱可塑性の高分子フィルムを処理するために使用される請求項1ないし15の何れか1項記載の方法であって、前記放電空間(10)における前記可塑性の高分子フィルムの滞留時間は、該可塑性の高分子が該可塑性高分子フィルムのガラス転移温度よりも低い温度に維持されるように選択される方法。
【請求項17】
前記滞留時間は、前記放電空間(10)を通して前記フィルムを移動させると共に前記フィルムの速度を制御することにより制御される請求項16記載の方法。
【請求項18】
熱可塑性の高分子フィルムを処理すると共に前記グロープラズマ(7)を維持するために使用される請求項1ないし17の何れか1項記載の方法であって、前記AC電圧の振幅は、前記放電空間(10)の温度が、前記フィルムの処理の期間中、前記熱可塑性の高分子フィルムのガラス転移温度よりも低く維持されるように選択される方法。
【請求項19】
前記熱可塑性の高分子フィルムは、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)および同様の熱可塑性高分子から成るグループのうちの少なくとも一つを含む請求項16ないし18の何れか1項記載の方法。
【請求項20】
前記電極(4,5)の少なくとも一つは、誘電体材料(2)のフィルムで覆われた請求項1ないし19の何れか1項記載の方法。
【請求項21】
前記誘電体材料(2)のフィルムは、1μmないし1000μmの範囲における厚さを備えるように選択された請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記厚さは、250μmないし500μmの範囲内である請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記電極(4,5)の少なくとも二つは、100μmないし5000μmの範囲内の距離を隔てて互いに離間して配置された請求項1ないし22の何れか1項記載の方法。
【請求項24】
前記距離は、250μmないし1500μmの範囲内に選択された請求項23記載の方法。
【請求項25】
電圧立ち上がり時間は、前記AC電圧がゼロから始めてその最大値に到達する最短時間間隔を規定し、前記AC電圧の前記電圧立ち上がり時間は、0.1ないし10kV/μsの範囲である請求項1ないし24の何れか1項記載の方法。
【請求項26】
前記プラズマ(7)を通る電流密度は、10mA/cmよりも小さい請求項1ないし25の何れか1項記載の方法。
【請求項27】
前記プラズマ(7)を用いた化学的気相成長処理で前記放電空間(10)における基質(3)を処理するために使用される請求項1ないし26の何れか1項記載の方法。
【請求項28】
大気圧グロー放電プラズマ(APG)(7)用いて基質(3)を処理するための装置であって、放電空間(10)を規定するように配置された複数の電極(4,5)を備え、さらに、前記プラズマ(7)を発生させるための前記電極(4,5)にAC電圧を印加するための手段(8)と、前記放電空間(10)にガス状の物質(6)を供給するための手段(19,21−24,34)とを備え、前記電極(4,5)にAC電圧を印加するための前記手段(8)は、少なくとも前記ガス状の物質(6)のブレークダウン電圧に等しい振幅を有すると共に少なくとも100kHzの周波数を有するAC電圧を供給するために配置され、且つ、前記放電空間(10)にガス状の物質(6)を供給するための前記手段(19,21−24,34)は、実質的に、100℃よりも低い温度を有する空気、窒素、およびアルゴンから成るグループのうちの少なくとも一つを供給するために配置され
、前記電極(4,5)にAC電圧を印加するための前記手段(8)は、前記基質(3)に対する熱的なダメージを防止するために前記基質(3)に加えられる温度を低減するために、前記ブレーク電圧よりも高い電圧に前記AC電圧を制御するために配置されたことを特徴とする装置。
【請求項29】
AC電圧を印加するための前記手段(8)は、前記ブレークダウン電圧の140%以下の振幅を有するAC電圧を供給するために配置された請求項28記載の装置。
【請求項30】
ガス状の物質(6)を供給するための前記手段(19,21−24,34)は、前記放電空間(10)における前記ガス状の物質(6)に少なくとも一つの更なるガスを供給するために配置された請求項28または39の何れか1項記載の装置。
【請求項31】
ガス状の物質(6)を供給するための前記手段(19,21−24,34)は、少なくとも一つの更なるガスの濃度が段階的に調整可能なような、前記少なくとも一つの更なるガスを供給するために更に配置された請求項30記載の装置。
【請求項32】
前記少なくとも一つの更なるガスは、O、CO、NH、SiHのような共通先駆ガス、炭化水素、TEOSおよびHMDSOのような有機ケイ素、または有機金属およびそれらの組み合わせのグループのうちの一つから成る請求項30または31の何れか1項記載の装置。
【請求項33】
前記放電空間(10)を通して前記ガス状の物質(6)を流すための手段(17)を備えた請求項28ないし31の何れか1項記載の装置。
【請求項34】
前記放電空間(10)を通して前記ガス状の物質(6)を流すための前記手段(17)は、1l/minないし50l/minの範囲内の流速を有する流れを確立するために配置された請求項32記載の装置。
【請求項35】
前記放電空間(10)を通して前記ガス状の物質(6)を流すための前記手段(17)は、0.1−10m/sの範囲内の流速を有する流れを確立するために配置された請求項34記載の装置。
【請求項36】
高い周波数のAC電圧を印加するための前記手段(8)は、50kHzないし1MHzの範囲内の周波数を有する電圧を印加するために配置された請求項28ないし35の何れか1項記載の装置。
【請求項37】
前記電極(4,5)の少なくとも一つは、前記プラズマ(7)によって処理されるべき熱可塑性の高分子フィルムを支持するために配置された請求項28ないし36の何れか1項記載の装置。
【請求項38】
前記熱可塑性の高分子フィルムの前記ガラス転移温度よりも低い温度に前記フィルムが維持されるような前記フィルムの滞留時間のための速度で、前記放電空間(10)を通して前記熱可塑性の高分子フィルムを移動させるために配置された手段をさらに備えた請求項37記載の装置。
【請求項39】
AC電圧を印加するための前記手段(8)は、前記放電空間(10)の温度が、前記フィルムの処理中、前記熱可塑性の高分子フィルムのガラス転移温度よりも低い状態を保つような振幅を有するAC電圧を供給するために配置された請求項37または38の何れか1項記載の装置。
【請求項40】
前記電極(4,5)の少なくとも一つと接触する誘電体材料(2)のフィルムを備えた請求項28ないし39の何れか1項記載の装置。
【請求項41】
前記誘電体材料(2)のフィルムは、1μmないし1000μmの範囲の厚さを有する請求項40記載の装置。
【請求項42】
前記放電空間(10)は、前記電極(4,5)間の間隔によって規定される寸法を有し、前記寸法は、0.1mmないし5mmの範囲内である請求項28ないし41の何れか1項記載の装置。
【請求項43】
前記AC電圧がゼロから始めてその最大値に到達する最短時間間隔を調整するために配置され、前記調整が少なくとも0.1ないし10kV/μsの範囲で実施される請求項28ないし42の何れか1項記載の装置。
【請求項44】
10mA/cmよりも下の範囲で前記プラズマ(7)を通る電流密度を維持するために前記AC電圧の周波数を調整するために配置された請求項28ないし43の何れか1項記載の装置。
【請求項45】
ブレークダウン中の電圧を制御するために配置された電流チョークコイルを備えた請求項28ないし44の何れか1項記載の装置。
【請求項46】
前記装置は、前記プラズマ(7)を用いて前記放電空間(10)における基質(3)上で化学的気相成長処理を実施するために配置された請求項1ないし45の何れか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−503406(P2006−503406A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539055(P2004−539055)
【出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010923
【国際公開番号】WO2004/030019
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(598169815)フジ フォト フィルム ビー.ブイ. (12)
【氏名又は名称原語表記】Fuji Photo Film B.V.
【Fターム(参考)】