説明

大脳疲労回復剤

【課題】大脳疲労に基づく計算能力低下等の大脳疲労を回復する薬剤の提供する。
【解決手段】(a)クロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸及びそれらの薬学的に許容される塩から選ばれる1種以上と(b)プロアントシアニジンを含有するヒトの大脳疲労回復剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトに固有の高度な精神的活動(例えば計算能力)による疲労すなわち大脳疲労を回復させるための薬剤及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
疲労は、通常、精神疲労と肉体疲労に大きく分類される。現代社会においては、肉体的疲労よりも精神的な疲労がもたらす影響の方がとりわけ深刻になってきている。疲労回復剤としては各種ビタミンやミネラル等の栄養補給剤が用いられているが、実際上は肉体疲労時の栄養補給を目的としている。一方、精神疲労に対する効果効能をもった疲労回復剤については未だ知られていない。
【0003】
クロロゲン酸類については、例えば抗高血圧作用や血管内皮機能改善作用などが報告されているが(例えば、特許文献1、2参照)、大脳疲労に対する作用については知られておらず、例えば、大脳疲労の一例として、長時間コンピュータを使用した場合や連続した思考による大脳疲労(思考能力の低下)を回復させる効果に関する報告はない。
【特許文献1】特開2002−53464号公報
【特許文献2】特開2003−261444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的はヒトに固有の精神的活動(例えば計算能力、連続思考等)による疲労を回復させる剤、すなわち大脳疲労回復剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者らは、視覚の疲労を通じて大脳疲労の度合いを評価するフリッカーテストと大脳疲労を生じさせる計算負荷作業とを組み合せ、作業継続による計算能力等の低下、すなわち大脳疲労を回復させる成分を探索したところ、クロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸及びそれらの薬学的に許容される塩から選ばれる1種以上とプロアントシアニジンを組み合わせた場合に優れた大脳疲労回復効果があることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、(a)クロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸及びそれらの薬学的に許容される塩から選ばれる1種以上と(b)プロアントシアニジンを含有するヒトの大脳疲労回復剤及び大脳疲労回復用食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長時間コンピュータ使用後、計算やその他の思考による精神疲労(大脳疲労)による能力低下を回復させることができる。また、大脳疲労が想定される30〜40分前に服用しておくことで大脳疲労を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いるクロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸は、これを含有する天然物、特に植物から抽出することもでき、化学合成により工業的に製造することもできる。
【0009】
本発明におけるクロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸には、立体異性体が存在し、本発明では、純粋な立体異性体又はそれらの混合物を用いることができる。本発明におけるクロロゲン酸類には、具体的には、3−カフェイルキナ酸、4−カフェイルキナ酸、5−カフェイルキナ酸、3,4−ジカフェイルキナ酸、3,5−ジカフェイルキナ酸、4,5−ジカフェイルキナ酸、3−フェルリルキナ酸、4−フェルリルキナ酸、5−フェルリルキナ酸及び3−フェルリル−4−カフェイルキナ酸等が含まれる(中林ら,コーヒー焙煎の化学と技術,弘学出版株式会社,p166-167)。
【0010】
クロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸は、塩にすることにより水溶性を向上させ、生理学的有効性を増大させることができる。これらの塩としては、薬学的に許容される塩であればよい。このような塩形成用の塩基物質としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基が用いられるが、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物が好ましい。本発明においては、これらの塩を調製してから、その他の成分からなる組成物中に添加したものでもよいし、クロロゲン酸類等と塩形成成分とを別々に該組成物中に添加して、この中で塩を形成せしめたものでもよい。
【0011】
クロロゲン酸類、カフェ酸を含有する天然物抽出物としては、例えば、コーヒー、キャベツ、レタス、アーチチョーク、トマト、ナス、ジャガイモ、ニンジン、リンゴ、ナシ、プラム、モモ、アプリコット、チェリー、ヒマワリ、モロヘイヤ、カンショ、南天の葉、ブルーベリー、小麦などの植物から抽出したものが好ましい。
例えば、クロロゲン酸類は、コーヒー生豆、南天の葉、リンゴ未熟果等の植物体から抽出したものが好ましく、さらにアカネ科コーヒー(Coffee arabica LINNE)の種子より、温時アスコルビン酸、クエン酸酸性水溶液又は熱水で抽出して得たものがより好ましい。
【0012】
具体的には、生コーヒー豆抽出物としては、長谷川香料(株)「フレーバーフォールダー」、リンゴ抽出物としては、ニッカウヰスキー(株)「アップルフェノン」、ヒマワリ種抽出物としては、大日本インキ化学工業(株)「ヘリアント」などが挙げられる。
【0013】
フェルラ酸を含有する天然物抽出物、特に植物抽出物としては、例えば、コーヒー、タマネギ、ダイコン、レモン、センキュウ、トウキ、マツ、オウレン、アギ、カンショ、トウモロコシ、大麦、小麦、コメ等が好ましく、特にコメが好ましい。本発明におけるコメとは、イネ科イネ(Oryza sativa LINNE)の種実等の生又は乾燥物を意味する。
【0014】
植物からフェルラ酸を抽出する方法としては、例えば、コメの糠より得られた米糠油を、室温時弱アルカリ性下で含水エタノール及びヘキサンで分配した後、含水エタノール画分に得られたフェルラ酸エステルを、加圧下熱時硫酸で加水分解し、精製して得る方法が挙げられる。また、細菌(Pseudomonas)を、フトモモ科チョウジノキ(Syzygium aromaticum MERRILL et PERRY)のつぼみ及び葉より水蒸気蒸留で得られた丁子油、又は丁子油から精製して得られたオイゲノールを含む培養液で培養し、その培養液を、分離、精製して得ることもできる。
【0015】
またフェルラ酸は化学合成、例えば、バニリンとマロン酸との縮合反応によって製造することもできる(Journal of American Chemical Society,74,5346,1952)。
【0016】
本発明の食品や医薬製剤中のクロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸及びそれらの薬学的に許容される塩から選ばれる1種以上(成分(a))の含有量は、食品や医薬製剤の形態、所望すべき摂取量に応じて適宜決められるが、粉剤や顆粒剤などの場合には、0.1〜60質量%、さらに0.5〜55質量%、特に5〜50質量%が好ましい。液剤や飲料の場合には、0.001〜10質量%、さらに0.05〜1質量%が好ましい。特に0.1〜0.6質量%が好ましい。
【0017】
本発明で使用されるプロアントシアニジンは、各種植物体中に存在する縮合型タンニン、すなわちフラバン−3−オール又はフラバン−3,4−ジオールを構成単位として縮合もしくは重合により結合した化合物群である。これらは酸処理によりシアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジン等のアントシアニジンを生成するところから、この名称が与えられているものであり、上記構成単位の2量体、3量体、4量体さらに10量体以上の高分子のプロシアニジン、プロデルフィニジン、プロペラルゴニジン等のプロアントシアニジン及びそれらの立体異性体等を含むものである。原料としては各種植物体、例えばブドウ種子、ブドウ果皮、クランベリー果実、リンゴ果実、柿渋、小豆あるいは杉、檜、松の樹皮等が例として挙げられ、またワイン、果実ジュースなど食品由来のもの、化学合成したものなども知られている。原料の由来や原料の利用部分、製造法、精製法については何ら制限されないが、含有量が多いことや糖類などの夾雑物の含量も少ないため、高純度のプロアントシアニジンが容易に得られることから、原料としてはブドウ種子が好適である。
【0018】
これらプロアントシアニジンは市販もされており、例えばブドウ種子を原料とする「グラビノール」(キッコーマン(株))、リンゴ未熟果を原料とする「アップルフェノン」(ニッカウヰスキー(株))、海岸松の樹皮を原料とする「ピクノジェノール」(ホーファーリサーチ社(イギリス))等であり、一般的には粉状の形態である。
なおブドウ種子抽出物は、赤ワイン中の健康に寄与する物質として注目されており、仏国では医薬品として、米国では栄養補助食品として、日本では健康食品素材や食品添加物として利用されている。また各種試験によっても安全性が確認されており、極めて安全性の高いものである。プロアントシアニジンは、公知の方法[例えば、特公平3−7232号公報に記載の方法あるいは松の樹皮からの抽出法;アール・ダブル・ヘミングウェイ(R.W.Hemingway)ら、フィトケミストリー(Phytochemistry),1983年,第22巻、p.275−281]あるいはそれに準じた方法を採用することによって上記各種植物体からも容易に得ることができる。
【0019】
本発明の食品や医薬製剤中のプロアントシアニジンの含有量は、食品や医薬製剤の形態、所望すべき摂取量に応じて適宜決められるが、粉剤や顆粒剤などの場合には、0.02〜20質量%、さらに0.1〜15質量%、特に1〜14質量%が好ましい。液剤や飲料の場合には、0.0002〜3質量%、さらに0.01〜0.3質量%が好ましい。特に0.03〜0.2質量%が好ましい。
【0020】
本発明の大脳疲労回復剤又は大脳疲労回復用食品中の、(a)クロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸等と、(b)プロアントシアニジンとの含有質量比、((a)/(b))は、大脳疲労回復効果や大脳疲労低減効果の点から8/1〜1/1、さらに6/1〜2/1が好ましい。特に5/1〜3/1が好ましい。
【0021】
本発明のヒトの大脳疲労回復剤とは、ヒトの精神的活動に基づく大脳疲労を回復させるもの及び該大脳の疲労を軽減させるものである。ヒトの精神的活動とは、ヒトの論理的理解力を伴う精神的活動のことをいう。ヒトの精神的活動の具体的な内容としては、思考作業、計算作業、コンピューター作業等が挙げられる。また、上記のヒトの精神的活動に伴う大脳疲労とは、個人差もあるが、パソコン作業等については、1〜2時間後の状態をいう。
【0022】
精神的活動に伴う大脳疲労は、クレペリンテスト、ATMT、計算負荷作業等により生じた精神疲労をフリッカーテスト等を実施し評価できる。
クレペリンテストは、本来は精神検査を目的として用いられている連続加算作業であり、具体的には、横に並んだ隣り合わせの一桁の数字を順に足していく作業であり、高度な精神的活動の作業に伴う大脳疲労発生作業として位置づけることができる。ここでクレペリンテストは計算能力、コンピューター作業、連続思考等のモデル系として、定量化のために用いることができる。
【0023】
ATMTは、本来は精神機能検査法として用いられるもので、タッチパネル上に提示されたターゲットとなる数字を順に押していく視覚探索課題で、ターゲット毎の探索反応時間を記録でき、反応毎にターゲットを再配置させたり、あるいは新規に追加発生させることができる。そのため、課題遂行中のワーキングメモリーや疲労度を測定することも可能である。
【0024】
計算負荷作業は、英数字検出課題、数字加算課題、短期記憶課題を被験者に与えるものである。英数字検出課題は、固定された数字あるいは英文字が提示された場合、マウスを左クリックし、それ以外であれば、右クリックする課題である。数字加算課題は、提示された2桁2段の数字を全て加算した値をキーボードから入力する課題である。短期記憶課題は、最初に左側に提示された4つの数字に合致した数字が右側に提示された場合に左クリックし、合致しない場合には右クリックする課題であり、3つの課題は精神的活動の作業に伴う大脳疲労発生作業として位置づけることができる。
【0025】
フリッカーテストとは、任意の間隔で点滅する光源に対する視覚反応を測定する方法であるが、直接的には視器を通して大脳皮質の活動状態(疲労状態)を評価するものである。
【0026】
大脳の疲労度回復効果を計測するために、フリッカーテストを実施するが、さらに、精神的反応を測定するために指尖容積脈波測定(カオス解析)を計測することが好ましい。指尖容積脈波測定(カオス解析)は、脈の動態がカオスであることより指先から身体全体の状態を数値化できるものである。カオスは複数のカオスの絡み合いにより生じ、局所でひとつのカオスを形成する特徴を持つ。従って、この理論を用いた解析を行なえば、身体の一部のみからの情報で身体全体の状態を数値として把握できるものと考えられる。
【0027】
また、主観的な疲労感を調べるために、多面的感情状態尺度、自覚症状しらべ、及び疲労に関する質問紙を用いることが好ましい。多面的感情状態尺度短縮版は、複数の感情の主観的状態を同時に測定するための質問紙であり、抑鬱・不安(気がかりな、不安な、悩んでいる、自信がない、くよくよした)、倦怠(つまらない、疲れた、退屈な、だるい、無気力な)、活動的快(活気のある、元気いっぱいの、気力に満ちた、はつらつとした、陽気な)、非活動的快(のんびりした、ゆっくりした、のどかな、おっとりした、のんきな)、集中(慎重な、ていねいな、丁重な、思慮深い、注意深い)の5項目についてどの程度感じているか4段階(1.全く感じていない、2.あまり感じていない、3.少し感じている、4.はっきり感じている)でチェックするものである。また、疲労に関する質問紙(VAS(Visual Analog Scale))では、全体的疲労感、精神的疲労感、身体的疲労感、自覚的ストレス、緊張感、眠気、退屈感、意欲、空腹感、のどの渇き、イライラ感、爽快感の12項目について10cmの線分上に現在の状態を縦線で記入するものである。0cmをその状態に関して全くなし、10cmを経験し得る最大とした。但し、線分中央が必ずしも「普通の状態」ではない。
【0028】
本発明品の疲労回復効果としては、精神疲労(大脳疲労)として示されるフリッカーテスト値の低下がクロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸等とプロアントシアニジンの摂取によって回復すること、及びフリッカーテスト値の低下がクロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸等とプロアントシアニジンの摂取によって軽減されることにある。
なお、本発明のヒトの大脳疲労回復剤で回復され得る大脳疲労は、主としてヒトが仕事や勉強の場面で行なうデスクワーク等に伴う疲労である。
【0029】
本発明のヒトの大脳疲労回復剤の有効成分であるクロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸等及びプロアントシアニジンは、各成分のみを組み合わせて服用してもよいが、好ましくは賦形剤、担体等の薬品及び食品分野で慣用の補助成分、例えば乳糖、ショ糖、液糖、蜂蜜、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、各種ビタミン類、クエン酸、リンゴ酸、香料、無機塩などとともに、カプセル剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤、ドリンク剤、注射剤、点滴剤等にすることができる。
【0030】
ドリンク剤及び食品の場合、必要に応じ、他の生理活性成分、ミネラル、ビタミン、ホルモン、栄養成分、香味剤等を混合することも可能である。また、緑茶系飲料、烏龍茶系飲料、紅茶系飲料、アイソトニック系飲料とすることもできる。
【0031】
本発明のヒトの大脳疲労回復剤は、主にコンピュータ使用等に基づく計算能力の低下等の大脳機能低下の回復に有用であり、その服用量は成人1日あたりクロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸又はそれらの薬学的に許容される塩として30〜14000mg、より好ましくは50〜10000mg、さらに好ましくは200〜7600mg、特に250〜3000mgが好ましい。また、プロアントシアニジンの服用量は成人1日あたり13〜800mg、さらに26〜270mgが好ましい。大脳疲労回復効果をより有効に発現させるためには、毎日継続して服用することが好ましいと考えられる。
【実施例】
【0032】
健常人3名が、温湿度一定の部屋に入室し、10分間馴化した後、安静状態のフリッカーテストを行なった。つぎに計算負荷作業(英数字検出課題3分、数字加算課題5分、短期記憶課題3分、ATMT)を行なった後、再びフリッカーテストを行なった。最後のフリッカーテスト後、主観的アンケート(疲労に関するVAS(Visual Analog Scale))を用いてその時点での精神状態・疲労感を聞いた。5分間休憩後、再びフリッカーテスト、計算負荷作業、フリッカーテストの順に試験を行なった。
その後、以下に示す3種類のうち、いずれかの試験サンプル(各1.25g)を水190mLで飲用し、再びフリッカーテストを行なった。
【0033】
(試験サンプル)
A)プロアントシアニジン(160mg)とクロロゲン酸類(600mg)を含有するオブラート包含剤、
B)プロアントシアニジン(160mg)を含有するオブラート包含剤、
C)プラセボとしてオブラートを含有するオブラート包含剤である。
ここに、クロロゲン酸類は、生コーヒー豆抽出物(クロロゲン酸類47.9%、カフェイン1.1%)を使用した。
【0034】
各試験サンプルを服用後、15分後、30分後、及び120分の時点で、前記同様にフリッカーテスト、計算負荷作業、フリッカーテスト、主観的アンケートを行ない、各時間での計算負荷作業後のフリッカーテストと主観的アンケート得点の変化を評価した。主観的アンケートとしては、倦怠、爽快感を測定した。
以上の試験を3名の被験者がそれぞれ、A)、B)、C)の全てについて行なった。但し、A)、B)、C)各試験サンプルの服用順序は任意とした。
【0035】
フリッカーテストの結果を図1に示した。プロアントシアニジンを服用した場合、及びクロロゲン酸類とプロアントシアニジンを同時に服用した場合、プラセボを服用した場合に比べ、フリッカー値の低下は抑制されていた。特にクロロゲン酸類とプロアントシアニジンを同時に服用した場合、プロアントシアニジン単体で服用した場合よりもフリッカー値の低下が抑制されていた。サンプル服用30分後で最もフリッカー値の差が大きく、プラセボ服用では5.6%低下し、プロアントシアニジン単体では3.7%低下し、クロロゲン酸類とプロアントシアニジンを同時に服用した場合は0.8%増加し、ほぼ飲用前の状態を維持していた。
【0036】
また、図2、3に示すように主観的アンケートにおいては、倦怠(渡辺ら、疲労の科学、医学のあゆみ、Vol.204No.5、p392−397(2003))に関してサンプル服用30分以降で倦怠感が低下し、維持する結果が得られた。プラセボ服用時では飲用前と比べて1.3点(30分後)、1.7点(120分後)倦怠感が増加し、プロアントシアニジン単体服用時では1.0点(30分後)、1.3点(120分後)倦怠感が増加したが、クロロゲン酸類とプロアントシアニジンを同時に服用した場合では0.7点(30分後)、1.0(120分後)しか倦怠感が増加せず、服用30分以降倦怠感が維持できた。爽快感(やさしいフィトンチッドのはなし、フィトンチッド普及センター、p30−31(1999))においてはサンプル服用30分後でサンプル間に差があり、プラセボ服用時では服用前と比べて2.0点爽快感が低下し、プロアントシアニジン単体服用時では6.3点爽快感が低下したが、クロロゲン酸類とプロアントシアニジンを同時に服用した場合では2.3点爽快感が増加した。
【0037】
さらに、計算負荷課題の結果を図4、5に示した。図に示すように英数字検出課題における正答率の変化量(%)はサンプル服用前と比べてプラセボ、プロアントシアニジン単体服用時ではほとんど変化しておらず、クロロゲン酸類とプロアントシアニジンを同時に服用時では15分後以降10%程度正答率が上がり120分後まで維持していた。短期記憶課題においてはプラセボ及びプロアントシアニジン服用時で時間経過(30分後、120分後)とともに正答率が低下するが、クロロゲン酸類とプロアントシアニジンを同時服用した時は時間経過(30分後、120分後)とともに増加傾向にあった(30分後;プラセボ:1.2%低下、プロアントシアニジン単体:0.9%低下、クロロゲン酸類とプロアントシアニジン同時飲用:2.4%増加、120分後;プラセボ:0.3%低下、プロアントシアニジン単体:2.8%低下、クロロゲン酸類とプロアントシアニジン同時飲用:1.3%増加)。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】クロロゲン酸類とプロアントシアニジンとの同時服用後のフリッカー値の変化量を示す図である。
【図2】クロロゲン酸類とプロアントシアニジンとの同時服用後の倦怠に対する作用を示す図である。
【図3】クロロゲン酸類とプロアントシアニジンとの同時服用後の爽快感に対する作用を示す図である。
【図4】クロロゲン酸類とプロアントシアニジンとの同時服用後の英数字検出課題に対する作用を示す図である。
【図5】クロロゲン酸類とプロアントシアニジンとの同時服用後の短期記憶課題に対する作用を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)クロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸及びそれらの薬学的に許容される塩から選ばれる1種以上と(b)プロアントシアニジンを含有するヒトの大脳疲労回復剤。
【請求項2】
精神的活動に伴う大脳疲労を軽減するものである請求項1に記載の大脳疲労回復剤。
【請求項3】
(a)クロロゲン酸類、カフェ酸、フェルラ酸及びそれらの薬学的に許容される塩から選ばれる1種以上と(b)プロアントシアニジンを含有するヒトの大脳疲労回復用食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−297304(P2007−297304A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125027(P2006−125027)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】