説明

大面積検出器およびディスプレイ

例えば医用撮像用のX線検出器として使用するための大面積検出器(3)は、積層を貫通して各信号収集器(10)と連絡するチャネル(6)を有する複数の交互に積み重ねられたダイノードおよび絶縁層から成るモノリシック増幅装置と組み合わされた放射線感応検出器(8)から構成される。大面積検出器(3)は、1mm2当たり50〜60画素程度の高解像度を達成しながら、1m2またはそれ以上のタイルで形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学で、ただしそれに限らず、使用される大面積検出器およびディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮像に関連して医療技術では著しい進歩がもたらされてきた。伝統的に、X線画像はX線感光フィルムを記録媒体として使用して撮影されてきた。しかし、最近になって、アモルファスシリコンをシンチレータと組み合わせて使用するデジタルX線画像を生成する、固体検出器が提案された。
【0003】
二次元位置感応情報を提供することのできる固体検出器の一例は、米国特許公開第2003/0080298号(特許文献1)に記載されている。該検出器は、X線検出のためにシンチレータと組み合わせて使用する、シリコンアバランシェフォトダイオード(APD)の形をとる。しかし、そのような検出器の解像度およびその総検出面積(300〜400mm2のタイル)の両方に限界がある。したがって、この型の固体検出器を大面積検出器で使用することができるようになる前に、克服すべき重要な技術的問題が依然として存在する。
【0004】
上述した型の固体検出器を使用する可能性は医用撮像の分野で検討されてきており、米国特許第6263043号(特許文献2)には、MR走査にも使用される患者用ベッド内に装着された放射線固体検出器を想定した、MRおよびX線の複合型スキャナが記載されている。米国特許第6263043号は、ヒトの身長のほぼ半分を撮像するのに充分な表面積を有する固体検出器を示しているが、上述した通り、これは、現在利用可能な固体センサでは実行できない。
【特許文献1】米国特許公開第2003/0080298号
【特許文献2】米国特許第6263043号
【発明の開示】
【0005】
したがって、本発明は、大面積検出器としての実現に特に適した、電磁放射線モノリシック検出器を提供することを課題とする。本発明はまた、医療診断および治療用の大面積X線検出器を提供しようと努める。本発明はまた別個に、モノリシック大面積ディスプレイを提供することを課題とする。
【0006】
本書における電磁放射線検出器という言及は、ガンマ線、X線、生物発光、および紫外線波長を含む可視光の検出を包含するつもりであるが、それらに限定されない。
【0007】
本発明は、一層の放射線感光材料層と、増幅装置と、一つまたはそれ以上の信号収集器とを備えた電磁放射線検出器であって、増幅装置はダイノード材および電気絶縁体の複数の交互積層を含み、各ダイノード層は露出した二次電子放出材を有し、各積層は、積層を貫通して延びる複数の電子増倍管チャネルを形成すべく、隣接層のアパーチャと整列する複数のアパーチャを有し、増幅装置は各ダイノード層に予め定められた電圧電位を印加する各ダイノード層への電源接続を含み、電磁放射線の検出の放射線感光材料からの信号が一つまたはそれ以上の信号収集器によって収集される前に一つまたはそれ以上の電子増幅器チャネルで増幅されるように、一つまたはそれ以上の信号収集器を電子増倍管チャネルの放射線感光材料とは反対側の端に配置して成る、電磁放射線検出器を提供する。
【0008】
一態様では、本発明は、一層のX線放射線感光材料層と、増幅装置と、画像処理装置とを備えたX線撮像装置であって、増幅装置はダイノード材および電気絶縁体の複数の交互積層を含み、各ダイノード層は露出した二次電子放出材を有し、各積層は、積層を貫通して延びる複数の電子増倍管のチャネルを形成すべく、隣接層のアパーチャと整列する複数のアパーチャを有し、増幅装置は、各ダイノード層に予め定められた電圧電位を印加するための各ダイノード層への電源接続と、電子増倍管チャネルの端に配置された複数のアノードとを含み、各アノードは一つまたはそれ以上のチャネルに関連付けられ、かつ前記撮像装置に入射したX線放射の二次元画像を生成するために位置感応画像データを画像処理装置に供給するための画像データリンクを有して成る、X線撮像装置を提供する。
【0009】
X線撮像装置は、好ましくは1mm当たり少なくとも10画素、より好ましくは1mm当たり50画素の画像解像度が可能であり、理想的には患者用ベッド内に装着される。
【0010】
代替実施形態では、本発明は、一層の蛍光体材料層と、増幅装置と、複数の電界放出チップと、駆動装置とを備えたディスプレイであって、増幅装置はダイノード材および電気絶縁体の複数の交互積層を含み、各ダイノード層は露出した二次電子放出材を有し、各積層は、積層を貫通して延びる複数の電子増倍管のチャネルを形成すべく、隣接層のアパーチャと整列する複数のアパーチャを有し、増幅装置は各ダイノード層に予め定められた電圧電位を印加するための各ダイノード層への電源接続を含み、駆動装置の制御下で電界放出チップによって放出された電子は、蛍光体材料の層に二次元画像が形成されるように、蛍光体材料の層に入射される前に、増幅装置によって増倍されて成る、ディスプレイを提供する。
【0011】
理想的には、ディスプレイは1m2の最小タイルサイズを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、単なる例示として、本発明の実施形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1に示すX線撮像機は、X線源1および患者用ベッド2から構成される。図示する通り、X線源1は移動可能であるので、患者用ベッドの様々な領域を線源1からのX線に選択的に曝露させることができる。患者用ベッド2は、その中に大面積ピクセル化X線検出器3を組み込んでおり、それは患者用ベッドの実質的に全長および全幅に延在することが好ましい。代替的に、検出器3は患者用ベッドより小さい面積とすることができ、ベッド上の患者に対する検出器の位置を調整することができるように、ベッド内に配置された可動支持体(図示せず)上に装着することが好ましい。
【0014】
検出器3は、電子増倍管チャネル6のモノリシック配列が内部に装着された、外部真空排気チャンバ5を含み、それについては下で詳述する。図示するように撮像される患者を支える表面7は、チャンバ5の上壁であるか、あるいはその上に重なる。チャンバ5の上壁内に、または真空排気チャンバの上壁に隣接して、シンチレータに入射するX線に応答して光子を発生するシンチレータ8がある。次いで一層の感光材料9が、シンチレータ8の最下面またはシンチレータ8に面する電子増倍管チャネル6の配列の上面のいずれかに設けられる。電子増倍管チャネル6はシンチレータ8に向かって開き、シンチレータ8から遠い方のチャネルの端にアノード10を有する。理想的には、各チャネルは、図示するようにそれ自身の個別にアドレス指定可能なアノード10を有する。しかし、X線検出器3は、個別にアドレス指定可能なアノード10の配列を含み、各アノードが二つ以上のチャネルにわたって延在することも可能である。いずれの場合も、アノードの配列は二次元の位置特定的なデータを提供する。アノードからのデータは、電源およびデータリンク11を介して画像処理装置12に送られ、画像処理装置はデータを、検出器3によって検出された二次元X線強度分布の一つまたはそれ以上の画像に変換する。アノード10および電子増倍管チャネルは支持基板13上に作製され、その全てが真空排気チャンバ5内に収容される。
【0015】
実時間X線撮像が必要な場合、基板13を取り外し、電子増倍管チャネルの配列がシンチレータ8によって生成される原画像の増幅器として機能するように、アノード10を一層の蛍光体と置換することが可能である。
【0016】
図2および3でさらに詳細に示すX線検出器3は、電子増倍管チャネル6の配列から構成され(一つのチャネルだけが図3に示される)、各々のチャネルは、チャネルの底に配置されたそれぞれの個別にアドレス指定可能なアノード10を有する。シンチレータ8に面する各チャネルの頂部またはヘッドには、感光材料9が施与される。感光材料9は一般的にシンチレータ8によって発生する光の波長に基づいて選択され、バイアルカリ物質を含むが、それに限定されない。シンチレータ8に隣接する真空排気チャンバ5の上壁は、チャンバ内またはチャンバの外側におけるシンチレータ8の配置に基づいて、チャンバ上壁のX線または光に対する透過性に不当に影響を及ぼすことなく、電位をチャンバの上壁に印加することができるように、インジウムスズ酸化物(ITO)の薄膜を含むことが好ましい。
【0017】
したがって、電子増倍管チャネル6はシンチレータ8によって生成された画像を増幅するように働くので、検出器3は内部利得を含む。これは、検出器によって生成された最終画像の解像度およびコントラストのいかなる損失も無く、ずっと低い線量のX線を医療撮像に使用することを可能にする。さらに、下で詳述するように、該検出器の製造方法は、大面積ピクセル化検出器の製造を可能にする。例えば1cm2、50cm2、および1m2さえも超える検出器の表面積が可能である。
【0018】
本発明のピクセル化検出器3は、該検出器を図1に示すように患者用ベッドの全長に延在できるように充分大きく製造することができる。これは、可動X線源により、患者のどの領域でも患者の最小限の移動により撮像できることを意味する。実際、これは、患者の繰返し画像または時間順序画像を撮影するときに、患者用ベッドが固定基準点として働くことを可能にする。また、アノードの配列は個別にアドレス指定可能であるので、これは画像データをアノードから選択的に収集することを可能にする。これは、一定の時間内に実時間で順次記録しかつ観察することのできる別個の画像の数を増加するように、操作される画像データの量を低減することができる。これは、インシアタ(in-theatre)放射線撮影には特に重要になり得る。それはまた、特定のより小さい関心領域を細いX線ビームを使用して再検査し、その領域のより高い解像度の画像を生成することができるように、検出器が様々なレベルの画像解像度をもたらすことができることをも意味する。
【0019】
以上、医用撮像に関連して記述したが、本発明は、例えば航空機に微細亀裂が無いか検査するために大面積検出器を必要とする非破壊検査(NDT)をはじめ、医用以外のX線撮像にも同等に適用可能であることは、言うまでもなく明白である。
【0020】
電子増倍管の配列は、内容を参照によって本書に組み込む、同一発明者によってEP-A-1004134に記載されているものと同様の構造である。検出器3は、基板13上のダイノード材14および絶縁体15の交互積層のモノリシック構造から構成され、チャネル6の配列がダイノード14および絶縁体15の層にエッチングされている。ダイノード材は導電性であり、好ましくは金属である。しかし、ダイノード材として使用するのに適した他の導電性材料は、高密度グラファイト、熱分解炭素、ルチル、ドープトアルミナ、ドープトジルコニア、または結晶モリブデンを含むが、それらに限らない。チャネル6は、部分的にチャネル内に突出する各台ノード層14と互い違いに配置されるようにエッチングされる。各チャネルに露出するダイノード層14の表面の少なくとも一領域はまた、酸化ベリリウム銅、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、二酸化セシウム、またはセシウム化アンチモン(caesiated antimony)のような二次電子放出材16に被覆される。
【0021】
各ダイノード層14はまた、該層に電圧を印加することができるように、電源接続をも含む。個々のダイノード層に印加される電圧レベルは、アノード10に向かう方向に増加する電位がダイノード層に印加されるように、ダイノード層の積層内のダイノード層の位置に依存する。さらに、電子増倍管配列内の個々のアノード10の各々は、各チャネルの上部で感光材料9に入射する光の量を表わす増幅信号を搬送するための信号接続17を含む。電源接続および信号接続17は両方とも、電源およびデータリンク11およびそこからさらに画像処理装置12に接続するために、真空排気チャンバ5内を貫通して延びる。
【0022】
電子増倍管配列のチャネル6は、10から500ミクロンの間、好ましくは100ミクロン未満の間隔で規則的な格子状に配設することが好ましい。しかし、チャネルおよびそれらの関連アノードの配設は、検出器の要件に従って変化させることができる。
【0023】
各ダイノード層14のアパーチャは、10から100ミクロンの間の直径であることが好ましい。しかし、1から1000ミクロンの間の直径であるアパーチャも考えられる。絶縁体層15のアパーチャのサイズはダイノード層14のそれより大きく、20〜110ミクロンの間であることが好ましいが、再び、5から1100ミクロンの間の直径のアパーチャが考えられる。絶縁体層15により大きいアパーチャを持つときに、各ダイノード層14の上面18および下面19の縁部領域は露出される。これらの露出される上面18および下面19の縁部領域は、感光材料9によって発生した電子がダイノード層14に衝突するときに、ダイノード層14における電荷漏洩を低減することを確実にする。
【0024】
ダイノード層14は1ミクロンを超える任意の厚さとすることができ、好ましくは10から50ミクロンの間である。絶縁体層15は同様に1ミクロンを超える任意の厚さとすることができ、好ましくは10から50ミクロンの間である。さらに、ダイノード14の層の厚さは好ましくは絶縁体層15の厚さである。しかし、最終的に、各層の厚さは設計の好みの問題であり、検出器の所望の特性と同様にダイノード層14および絶縁体層15の材料の選択に依存することができる。
【0025】
二次電子放出材16の厚さは、10nmから200nmの間であることが好ましい。さらに、放射材16は少なくとも5の二次電子放出係数を持つことが好ましい。
【0026】
検出器を製造する二つの方法を今から説明する。それらはどちらもマイクロエンジニアリング技術を使用する。第一の方法では、凸要素の配列が基板上に設けられる。凸要素は、熱に曝露した後略凸形状を取る熱変形可能なプラスチック材であることが好ましい。クロム、金合金のような低い第二の二次電子放出係数を有する薄い金属膜が次いで、凸要素の表面および基板の露出表面上に堆積される。次いで薄い金属膜は、各凸要素の表面を金属膜で被覆したままでパターン形成されて、アノードの配列が形成される。各々のアノードはまた、細い帯状の金属膜の形の電源接続を有する。次いで第一絶縁体層が、基板およびアノードの表面上にマスクを介して塗布される。各々がそれぞれのアノードと整列しかつそれぞれのアノードを露出させるチャネルの形の複数のアパーチャがもたらされるように、第一絶縁体層はマスクによってパターン形成される。ポリイミドのような充填材が、アパーチャを完全に充填しかつ絶縁体層の露出上面全体に広がるように、アパーチャ内に堆積される。絶縁体層の表面より上の充填材はその後に、絶縁体層の表面が露出するように除去される。次いでダイノード層が絶縁体層および充填材の上にマスクを介して堆積される。ダイノード層はマスクによって複数のアパーチャとパターン形成され、各アパーチャはそれぞれのアノードに関連付けられる。次いでダイノード層のアパーチャは同じ充填材で充填される。充填材はダイノード層の上面まで除去される。次いで上述した製造工程が繰り返されて、一連の交互に重なる絶縁体およびダイノードの層が形成される。次いで感光材料が最上層の各チャネルに直接隣接する領域に塗布される。最後に、各アノードおよび各ダイノード層に電気接続が行なわれ、構造全体が鋼またはガラスのパッケージの内部に真空下で密封される。
【0027】
好ましくは、絶縁体層またはダイノード層の上面を露出させるように充填材が除去された後、薄膜の形の連続シード層が絶縁体またはダイノード層および充填材の露出面上に堆積される。シード層はダイノード層と同一材料であることが好ましい。シード層は、各層が次々に増倍管配列の表面全体にわたって平坦化され、よって配列全体における各層の厚さの変動を最小化することを確実にする。
【0028】
第二の代替的方法では、検出器は、複数のダイノード−絶縁体プレートを積み重ねることによって製造される。各ダイノード−絶縁体プレートは、一層のダイノード材を一層の電気絶縁体に接着することによって製造される。複数のアパーチャを画定するマスクが接着層に施され、硬質粉体の噴射により、ダイノードおよび絶縁体の両方の層を侵食して対応するアパーチャを形成する。絶縁体層のアパーチャがダイノード層のアパーチャより大きい直径を持つように、絶縁体層のアパーチャの壁はその後選択的にエッチングされる。絶縁体層の厚さが維持されるように、選択的エッチング液に対して化学的耐性を持つ一層の材料を、ダイノード層から離れた絶縁体層の表面に塗布することが好ましい。次いでダイノード層のアパーチャの壁は二次電子放出材を塗布され、複数のアパーチャを有する単一のダイノード−絶縁体プレートが形成される。次いで、隣接プレートのアパーチャが整列して複数の連続した電子増倍管チャネルが形成されるように、複数のそのようなダイノード−絶縁体プレートが一つに積み重ねられる。次いで、各電子増倍管チャネルが閉じられ、それぞれのアノードを持つように積み重ねられた構造の一端は、第一の方法について上述したような、複数のアノードを有する基板によって閉じられる。次いで感光材料が積層の最上面の各チャネルに隣接する領域に塗布される。最後に、各アノードおよび各ダイノード層に電気接続が行なわれ、構造全体が鋼またはガラスのパッケージの内部に真空下で密封される。
【0029】
上述した製造方法は、患者用ベッド内に、またはNDTの場合には可動検出器として、構成するのに適するように充分に頑健な大面積検出器を生産する。したがって、1m2またはそれ以上の連続活性表面積つまり入射電子の方向を向きかつそれに対して応答する表面積を持つ、電子増幅チャネルの単体のモノリシック配列を作成することができる。さらに、これらの製造方法は、撓むことができしたがって非平面状構造内に組み込むことができる、大面積検出器を製造することを可能にする。この一例を図4に示す。それは、患者用ベッドの長さに対して略垂直かつ患者用ベッドの幅に対して略平行な平面内で、例えば弧状に移動するように適応されたX線源1と共に、患者の三次元X線撮像を達成することができるように、非平面状の検出面を説明するために、側部が持ち上げられ、単一の連続した大面積検出器がベッドのフレームによって支持された、患者用ベッドを示す。
【0030】
これらの製造方法により、検出器3は、アモルファスシリコン検出器を使用して現在達成可能な画像解像度より10倍以上優れた画像解像度が可能である。例えば、検出器3は1mm当たり10画素、より好ましくは1mm当たり50〜60画素が可能であるが、より高い解像度およびより低い解像度も可能である。
【0031】
上述した検出器3はX線に特定的であるが、本発明に係る同様の大面積検出器は、可視光、紫外光、および生物発光を含め、他の形の電磁放射線の検出に備えることが可能である。そのような大面積検出器の用途は、自動生産およびDNA検査のような生物科学におけるマシンビジョンを含む。紫外光を含む入射可視光から画像を生成するために大面積検出器を使用する場合、感光材料9の適切な選択により該材料をこれらの波長の入射放射線に反応させることができるので、シンチレータ8は省くことができる。
【0032】
現在、多くの自動生産ラインでは、いく列もの個々のカメラが生産ラインを監視するために使用される。本発明の検出器により、生産ラインの幅全体に及ぶ単一の大面積検出器を代わりに使用することができる。アルミニウム、鋼、またはガラスのような連続平面状材料が生産される場合、これは特に重要である。
【0033】
本発明に係る大面積検出器はさらに、環境監視に使用することができる。大面積検出器は、ガンマ放射線のような電磁放射線のサイン波長を監視するために、航空機をはじめとする車両に搭載することができる。これらの用途では、位置感応検出は必要なく、個別アノードは、電子増倍管配列の基板の表面全体に及ぶ単一アノードに置き換えることができる。
【0034】
生物科学の場合、大面積検出器は、一個または一群の電子増倍管チャネルが例えばDNA分析におけるマイクロアレイの各々の個別検査部位に対応するように構成することができる。特定の波長の蛍光発光に敏感な感光材料9により、個々の試料の蛍光サインを素早く検出することができ、電子増倍管チャネルは増幅器として働くので、非常に弱い蛍光発光でも、検出器は5×105のダイナミックレンジが可能であるので、検出することができる。
【0035】
大面積検出器の可撓性はまた、固定された360°カメラとしての使用にも適したものにする。検出器は、電子増倍管チャネルの開端が外方を向いた円筒形を描くように形作ることができる。好適な実施形態では、個々の画素の集光は、検出器の湾曲外面に近接して、かつ円筒形の中心軸に略平行に配置された円筒形ガラス棒によって達成される。ガラス棒は、ガラス棒が検出器の任意の表面帯片の直前に選択的に配置することができるように、円筒形検出器を取り囲む軌道上に移動可能に装着される。この構成により、関連画素の前にガラス棒を適切に配置することを通して、カメラを取り囲む領域の選択的画像を、検出器によって記録することができる。また、ガラス棒を検出器円筒形の外周に連続的に移動させ、かつ特定の帯片の画素からのデータ収集のタイミングを集光ガラス棒が適位置に着いたときに同期させることによって、カメラから選択された方向または全方向の連続画像を記録することができる。
【0036】
上述した技術は、大規模ディスプレイにも同等に適しており、特にずっと高価なプラズマスクリーン技術の代替物として適している。大面積フラットパネルディスプレイの一例を図5に示す。ディスプレイ20は、チャンバの壁の一つの内面に一層の蛍光体21が設けられた外部真空排気チャンバ5’を含む(蛍光体層21は図5では、単に理解を助けるために、透明に図示されている)。蛍光体層のチャンバの壁とは反対側に、蛍光体21の層に面して、電子増倍管チャネル6’の配列がある。電子増倍管チャネル6’は両端が開いており(製造中に元の基板が除去されている)、蛍光体層21とは反対側に面するチャネル6’の端の先に、モリブデンチップ22の配列がある。したがって、モリブデンチップによって発生した電子ビームが増幅されるように、電子増倍管配列6’はモリブデンチップ22と蛍光体層21との間に導入される。蛍光体層21に画像が生成されるようにチップ22を駆動する手段は、一般的に従来通りである。
【0037】
フルカラー画像を達成異するためには、隣接する電子増倍管チャネルを三個単位でグループ化し、各グループの三個のチャネルおよびそれらのそれぞれの三つの蛍光体の色が単一表示画素に対応するように、グループ内の各チャネルが赤/緑/青から選択されたそれぞれの蛍光体領域と整列することが好ましいことは、言うまでもなくすぐに明白になるであろう。
【0038】
該ディスプレイの構造は、それらを特に大面積ディスプレイに適したものにする。本発明により、各々の個別タイルのサイズを例えば1m2またはそれ以上にして、複数の個別ディスプレイタイルを相互に隣接して配設することによって、例えばスポーツイベントで使用するための極めて大きい面積のディスプレイを構成することが可能である。電子増倍管配列の存在はディスプレイタイルに追加的な強度をもたらす一方、依然としてタイルに幾らかの撓みを与え、それはそのようなディスプレイタイルを非平面上の広告板として使用することを可能にする。
【0039】
本発明のディスプレイはまた、ヘッドマウントディスプレイとしての実現にも適している。該ディスプレイは、他の従来形のヘッドマウントディスプレイより重量がずっと軽く、それは、ディスプレイを長時間使用することを意図する場合、重要な考慮事項である。さらに、該ディスプレイは、ディスプレイの着用者がディスプレイを通して見ることができるように適応させることができ、それによって多くの従来のヘッドマウントディスプレイでみられた着用者の周辺環境の認識に対する制約が軽減される。これに関し、該ディスプレイは、電子増倍管配列に一連のスルーチャネル(through channel)を備えて、ディスプレイの向こうからの光の通過が可能となるように、製造することができる。上述したディスプレイの製造方法は、電子増倍管配列におけるスルーチャネルの追加に特に適していることは、言うまでもなく明白であろう。
【0040】
したがって、本発明に従って、大面積検出器およびディスプレイは、本書に記載した製造技術を使用して可能になり、かつ実用的になることが分かる。そのような大面積モノリシック検出器およびディスプレイの用途は、本書に記載した例によって実証されるように多数あり、本書の例は限定とみなすべきではない。むしろ、本発明の範囲は付随する特許請求の範囲に記載する通りである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る医療診断用のX線撮像装置を示す概略図である。
【図2】図1のX線検出器の一部分の拡大切欠き斜視図である。
【図3】図1のX線検出器の単一チャネルの略断面図である。
【図4】本発明に係る代替X線撮像装置を示す図である。
【図5】本発明に係る大面積フラットパネルディスプレイの一部分の拡大切欠き斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一層の放射線感光材料層と、増幅装置と、一つまたはそれ以上の信号収集器とを備えた電磁放射線検出器であって、前記増幅装置はダイノード材および電気絶縁体の複数の交互積層を含み、各ダイノード層は露出した二次電子放出材を有し、各積層は、前記積層を貫通して延びる複数の電子増倍管のチャネルを形成すべく、隣接層のアパーチャと整列する複数のアパーチャを有し、前記増幅装置は各ダイノード層に予め定められた電圧電位を印加するための各ダイノード層への電源接続を含み、電磁放射線の検出の前記放射線感光材料からの信号が一つまたはそれ以上の信号収集器によって収集される前に一つまたはそれ以上の電子増幅器チャネルで増幅されるように、一つまたはそれ以上の前記信号収集器を前記電子増倍管チャネルの前記放射線感光材料とは反対側の端に配置するように構成された電磁放射線検出器。
【請求項2】
複数の信号収集器を有し、各信号収集器が一つまたはそれ以上の電子増倍管チャネルに関連付けられる、請求項1に記載の検出器。
【請求項3】
各ダイノード層のアパーチャの壁が前記一つまたはそれ以上の信号収集器に向かって細くなる、請求項1ないし2のいずれか一項に記載の検出器。
【請求項4】
前記一つまたはそれ以上の信号収集器は、前記電子増倍管チャネルの端に配置された基板上に装着された一つまたはそれ以上のアノードである、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の検出器。
【請求項5】
複数の個別にアドレス指定可能なアノードを含み、前記検出器は、前記アノードの各々から位置特定的画像データを受け取るために、前記アノードの各々と連絡する画像データリンクをさらに含む、請求項4に記載の検出器。
【請求項6】
前記一つまたはそれ以上の信号収集器は蛍光体を含み、前記電子増倍管チャネルからの入射電子に応答して発光する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の検出器。
【請求項7】
前記増幅装置は、少なくとも1m2延在する上部活性表面を有する電子増倍管チャネルの連続モノリシック配列から構成される、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の検出器。
【請求項8】
前記増幅装置の前記上部活性表面が非平面状である、請求項7に記載の検出器。
【請求項9】
一層のX線放射線感光材料層と、増幅装置と、画像処理装置とを備えたX線撮像装置であって、前記増幅装置はダイノード材および電気絶縁体の複数の交互積層を含み、各ダイノード層は露出した二次電子放出材を有し、各積層は、前記積層を貫通して延びる複数の電子増倍管のチャネルを形成すべく、隣接層のアパーチャと整列する複数のアパーチャを有し、前記増幅装置は、各ダイノード層に予め定められた電圧電位を印加するための各ダイノード層への電源接続と、前記電子増倍管チャネルの端に配置された複数のアノードとを含み、各アノードは一つまたはそれ以上のチャネルに関連付けられ、かつ前記撮像装置に入射したX線放射の二次元画像を生成するために位置感応画像データを前記画像処理装置に供給するための画像データリンクを有するように構成されたX線撮像装置。
【請求項10】
1mm当たり少なくとも50画素の画像解像度を有する、請求項9に記載のX線撮像装置。
【請求項11】
前記増幅装置は、少なくとも1m2延在する上部活性表面を有する電子増倍管チャネルの連続モノリシック配列から構成される、請求項9または10のいずれか一項に記載のX線撮像装置。
【請求項12】
前記増幅装置の前記上部活性表面は非平面状である、請求項9ないし11のいずれか一項に記載のX線撮像装置。
【請求項13】
請求項9ないし12のいずれか一項二記載のX線撮像装置を組み込んだ患者用ベッド。
【請求項14】
前記X線撮像装置は前記ベッドの固定位置にあり、前記患者用ベッドの実効長全体に実質的に延在する、請求項13に記載の患者用ベッド
【請求項15】
前記ベッドの長手方向の側辺がベッド面から上方に延び、かつ前記X線撮像装置の一部分を含み、それによってベッド上の患者の三次元X線画像を生成することができる、請求項9ないし14のいずれか一項に記載の患者用ベッド。
【請求項16】
一層の蛍光体材料層と、増幅装置と、複数の電界放出チップと、駆動装置とを備えたディスプレイであって、前記増幅装置はダイノード材および電気絶縁体の複数の交互積層を含み、各ダイノード層は露出した二次電子放出材を有し、各積層は、前記積層を貫通して延びる複数の電子増倍管チャネルを形成すべく、隣接層のアパーチャと整列する複数のアパーチャを有し、前記増幅装置は各ダイノード層に予め定められた電圧電位を印加するための各ダイノード層への電源接続を含み、前記駆動装置の制御下で前記電界放出チップによって放出された電子は、前記蛍光体材料の層に二次元画像が形成されるように、前記蛍光体材料の層に入射される前に、前記増幅装置によって増倍されるように構成されたディスプレイ。
【請求項17】
最小限1m2のタイルサイズを有する、請求項16に記載のディスプレイ。
【請求項18】
前記蛍光体材料の層は異なる色の蛍光体材料の複数の条片を含み、各蛍光体条片は一つまたはそれ以上の電子増倍管チャネルと整列する、請求項16または17に記載のディスプレイ。
【請求項19】
請求項16に記載のディスプレイを含むヘッドマウントディスプレイ。
【請求項20】
前記増幅装置を貫通して延び、光の通過を可能にするスルーホールをさらに含む、請求項19に記載のヘッドマウントディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−524077(P2006−524077A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506079(P2006−506079)
【出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001439
【国際公開番号】WO2004/086964
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(505367062)カウンシル フォー ザ セントラル ラボラトリー オブ ザ リサーチ カウンシルズ (4)
【Fターム(参考)】