説明

天井内装材の取付構造

【課題】天井パネルにおける補強部材から近い位置を利用してスペーサ部材を取り付ける。
【解決手段】本発明は、車両における天井内装材の取付構造であって、天井側ボディを構成する天井パネル20と、天井パネル20の車室内側に対向して配置された天井内装材10と、インナパネル22と天井内装材10の端末部11との間に配置され、天井内装材10の端末部11が車室外側に変位することを規制するスペーサ部材70とを備え、インナパネル22に、天井パネル20を補強するリィンフォースメントパネル30の端末部31が接合されており、スペーサ部材70の一端側71に、スペーサ部材70を天井パネル20に固定する弾性係合部73が設けられ、スペーサ部材70の他端側72に、弾性係合部73よりもリィンフォースメントパネル30の近くに配置されてスペーサ部材70が弾性係合部73を中心として回転することを規制する十字ピン74が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井内装材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井内装材の取付構造として、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。このものは、天井内装材の端末部と天井パネルの端末部との間にスペーサ部材を配置したものである。スペーサ部材は、天井パネルの端末部に形成されたフランジ部に取り付けられている。天井内装材の端末部に対して、車室内側から力が加わると、天井内装材の端末部が上方に持ち上がろうとするものの、同端末部がスペーサ部材に当接することにより同端末部の上方への持ち上がりが規制されている。同様な取付構造として、下記特許文献2に記載のものが知られている。このものは、天井内装材の端末部とピラーガーニッシュの上部との間に隙間が形成されることを規制したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−205993号公報
【特許文献2】特開2003−291743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、天井パネルの端末部には、リンフォースメントパネルやリィンフォースメントパネル(reinforcement panel)などの名称で呼ばれる補強部材が接合されている場合がある。この場合、天井パネルの端末部において補強部材との接合部付近には、スペーサ部材を固定するために必要となるスペースを十分に確保することができない。したがって、スペーサ部材を、天井パネルの端末部において補強部材から遠い位置に取り付けるか、補強部材を跨ぐような形態で取り付ける必要がある。すなわち、天井パネルの端末部において補強部材から近い位置を利用してスペーサ部材を取り付けることは困難である。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、天井パネルにおける補強部材から近い位置を利用してスペーサ部材を取り付け可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両における天井内装材の取付構造であって、天井側ボディを構成する天井パネルと、天井パネルの車室内側に対向して配置された天井内装材と、天井パネルの端末部と天井内装材の端末部との間に配置され、天井パネルの端末部に固定されることにより、天井内装材の端末部が車室外側に変位することを規制するスペーサ部材とを備え、天井パネルの端末部に、同天井パネルを補強する補強部材の端末部が接合されており、スペーサ部材の一端側に、同スペーサ部材を天井パネルに固定する固定部が設けられ、スペーサ部材の他端側に、固定部よりも補強部材の近くに配置されてスペーサ部材が固定部を中心として回転することを規制する回り止め部が設けられている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
例えばスペーサ部材の両端側に固定部を設けた場合には、補強部材から遠い位置で両固定部を固定するか、補強部材を跨ぐような形態でスペーサ部材を配置して両固定部を固定する必要がある。その点、上記構成によると、スペーサ部材の一端側に固定部を設け、同他端側に回り止め部を設けたから、天井パネルの端末部における補強部材から近い位置を利用して回り止め部を取り付けることができる。すなわち、固定部よりも回り止め部のほうが簡素な構成で済むため、スペーサ部材を固定するために必要となるスペースを十分に確保できなくても、天井パネルの端末部における補強部材から近い位置で回り止め部を取り付けることが可能になる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
天井パネルの端末部に、その一部を叩き出すことでクリップ座が形成されており、同端末部における補強部材の下方であって同端末部の下縁よりも上方に、係止孔が貫通して形成されており、固定部は、クリップ座に固定される弾性係合部である一方、回り止め部は、係止孔に差し込まれる係止ピンである構成としてもよい。
【0009】
天井パネルの端末部における補強部材の下方であって同端末部の下縁よりも上方の領域は、補強部材から遠い領域と比べて狭くなっているため、叩き出しなど複雑な加工ができず、弾性係合部を固定するためのクリップ座を形成することができない場合が多い。一方、係止孔を形成する場合には、クリップ座のように複雑な加工が不要であり、係止ピンを差し込み可能な孔として形成するだけでよいため、狭い領域でも容易に加工することができる。このように、係止孔については補強部材の下方であって同端末部の下縁よりも上方の領域であっても形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天井パネルにおける補強部材から近い位置を利用してスペーサ部材を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態におけるスペーサ部材が天井パネルの端末部に取り付けられた状態を示した斜視図
【図2】図1におけるスペース部材の取付状態を拡大して示した図
【図3】図2におけるA−A線断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図3の図面を参照しながら説明する。車両における天井内装材10は、天井側ボディを構成する天井パネル20の車室内側に対向して配置されている。天井パネル20の車両内側面には、図1に示すように、リィンフォースメントパネル(本発明の「補強部材」に相当する)30が車幅方向に延びる形態で設けられている。リィンフォースメントパネル30は、天井パネル20、ルーフサイドレールのインナパネル22に対して溶接などの固定手段で取り付けられており、フロントウィンドウ40と天井パネル20との境界付近に設置されている。リィンフォースメントパネル30には、サンバイザー(図示せず)やルームミラー(図示せず)などが固定されている。
【0013】
リィンフォースメントパネル30の車幅方向における端末部31は、図3に示すように、天井パネル20の端末部21を構成するルーフサイドレールのインナパネル22に溶接などの固定手段によって接合されている。このインナパネル22におけるリィンフォースメントパネル30との接合部は、天井内装材10と平行をなしてほぼ上下方向に延びる立壁状に形成されている。このインナパネル22の下端には、車幅方向外側に膨出する形態をなす膨出部23が下方に延出されている。膨出部23の下端部は、アウタパネル50の下端部と接合されて二枚重ね状に形成されたフランジ部24とされており、このフランジ部24に対してオープニングトリム60が下方から嵌め込まれている。
【0014】
オープニングトリム60は可撓性を有するゴム材からなり、フランジ部24に嵌め込まれる嵌合凹部61と、フランジ部24の車室外側に配置された中空状のウェザストリップ部62と、嵌合凹部61の下端部から車室内側に延びる押さえ片63とを備えて構成されている。ウェザストリップ部62は、車両用ドアを構成するドアフレーム(図示せず)と接触可能とされており、車室外部から内部に水や埃が進入することを規制している。押さえ片63は、天井内装材10の端末部11における車室内側面に接触しており、天井内装材10の端末部11とフランジ部24との間に形成される隙間を塞ぐ役割を果たしている。
【0015】
天井内装材10は、基材12の車室内側面に表皮材13が貼り付けられた構成とされている。基材12は、ポリプロピレン等の合成樹脂材料、無機材料または木質系材料と合成樹脂材料を混合したものなどによって構成されている。一方、表皮材13は、非通気性のシート材などによって構成されている。天井内装材10の端末部11とルーフサイドレールのインナパネル22との間には、必要に応じてカーテンシールドエアバッグ(図示せず)が装着可能とされている。しかしながら、カーテンシールドエアバッグを装着しない場合には、天井内装材10の端末部11とインナパネル22との間に、大きな隙間が形成されてしまうため、天井内装材10の端末部11が車室内側から上方に押し込まれると、端末部11が撓み変形しながら持ち上がり、端末部11とオープニングトリム60の押さえ片63との間に隙間が形成されてしまう場合がある。この対策として、端末部11の持ち上がりを規制すべくスペーサ部材70を設けている。
【0016】
スペーサ部材70は、図2に示すように、車両前後方向に延びる形態をなしており、その一端側71に弾性係合部73が設けられ、その他端側72に十字ピン(本発明の「係止ピン」の一例)74が設けられた構成とされている。十字ピン74は、弾性係合部73よりもリィンフォースメントパネル30に近い位置に配設されている。スペーサ部材70における十字ピン74の下方には、天井内装材10の端末部11に対する当接部76が下方に延出して形成されている。この当接部76の下端部は、図3に示すように、天井内装材10の端末部11の車室内側面に沿って屈曲されている。この屈曲部分に対して天井内装材10の端末部11の車室内側面が当接可能とされている。これにより、天井内装材10の端末部11の持ち上がりが規制されている。なお、スペーサ部材70は、合成樹脂製とされている。
【0017】
弾性係合部73は、図2に示すように、弾性撓み可能な一対の取付爪75を備えて構成され、ルーフサイドレールのインナパネル22に設けられたクリップ座25に固定されている。クリップ座25は、インナパネル22においてリィンフォースメントパネル30よりも車両前側の領域に配置されている。以下の説明において、インナパネル22においてリィンフォースメントパネル30の車両前後側の領域を幅広部29という。クリップ座25は、幅広部29を車室内側に叩き出すことによって座面を形成し、この座面に係合孔26を貫通して形成したものである。なお、クリップ座25を形成するには、叩き出しが必要となるため、インナパネル22におけるリィンフォースメントパネル30との接合部よりも下方であってインナパネル22の下端よりも上方の領域(以下「狭小部28」という)にクリップ座25を設けることはできない。
【0018】
一方、十字ピン74は、ルーフサイドレールのインナパネル22に設けられた係止孔27に差し込まれることで、弾性係合部73を中心としたスペーサ部材70の回転を規制している。この係止孔27は、詳細には、狭小部28に配置されている。狭小部28は、インナパネル22とリィンフォースメントパネル30との接合部に近接しているため、叩き出しなど複雑な加工を行うことはできないものの、貫通孔を形成するなど簡易な加工であれば十分に可能である。したがって、本実施形態では、狭小部28を利用してスペーサ部材70を取り付けることが可能となっている。
【0019】
ところで、スペーサ部材70の一端側71のみに弾性係合部73を設けている理由は、スペーサ部材70を小型化し、小型化に伴って材料費を低減させてコストを低減させるためである。しかしながら、スペーサ部材70を1つの弾性係合部73で固定すると、この弾性係合部73を中心としてスペーサ部材70が回転してしまう。そこで、スペーサ部材70の回り止めとして十字ピン74を設けている。すなわち、十字ピン74に求められる機能はスペーサ部材70の回り止めだけであり、スペーサ部材70を狭小部28に固定する機能は不要であるため、弾性係合部73よりも簡易な十字ピン74として構成することができる。したがって、十字ピン74の構成の簡素化に伴って、スペーサ部材70の小型化に寄与できる。
【0020】
また、リィンフォースメントパネル30を跨ぐようにして両幅広部29に一対の弾性係合部73が配置されてなるスペーサ部材を用いる場合と比較しても、本実施形態ではリィンフォースメントパネル30を跨ぐ必要がなく、狭小部28を有効に利用してスペーサ部材70を取り付けることができるため、スペーサ部材70を短尺化することができ、スペーサ部材70の小型化が可能である。
【0021】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてスペーサ部材70の取付作業について簡単に説明する。スペーサ部材70の取付に際しては、十字ピン74を係止孔27に挿入しておき、弾性係合部73の両取付爪75を係合孔26に押し込む。すると、両取付爪75は、係合孔26の孔縁に摺接して互いに接近する側に弾性変位し、所定の嵌合位置に至ると、弾性復帰して係合孔26の孔縁部に対して車室外側から係合する。これにより、図2に示すように、スペーサ部材70がルーフサイドレールのインナパネル22に固定される。さらに、このインナパネル22に対する固定は1箇所であるものの、十字ピン74が係止孔27に嵌合しているため、スペーサ部材70が弾性係合部73を中心として回転することが規制される。
【0022】
さらに、図3に示すように、天井内装材10が装着された状態では、天井内装材10の端末部11の車室外側面に当接部76が当接可能とされているため、天井内装材10の端末部11の持ち上がりを規制することができる。
【0023】
以上のように本実施形態では、ルーフサイドレールのインナパネル22に対する固定を1つの弾性係合部73で行い、スペーサ部材70の回り止めを1つの十字ピン74で行うようにしたから、十字ピン74が差し込まれる係止孔27を狭小部28に設けることが可能となり、狭小部28を利用したスペーサ部材70の取り付けが可能である。また、スペーサ部材に2つの弾性係合部73を設ける場合よりも、両弾性係合部73のいずれか一方をなくして回り止め用の十字ピン74を設けた場合の方が、スペーサ部材70の構成を簡素化することができる。したがって、スペーサ部材70の小型化が可能となり、スペーサ部材70のコスト低減が可能となる。また、リィンフォースメントパネル30を跨ぐようにしてスペーサ部材を形成する場合よりも、本実施形態のスペーサ部材70の方が短尺化されており、コスト低減に対しても有利である。
【0024】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では弾性係合部73がリィンフォースメントパネル30の車両前側の幅広部29に配置されているものの、本発明によると、弾性係合部73がリィンフォースメントパネル30の車両後側の幅広部29に配置されているものも含まれる。
(2)上記実施形態では十字ピン74が狭小部28に配置されているものの、本発明によると、十字ピン74が幅広部29に配置されているものも含まれる。この場合であっても、スペーサ部材がリィンフォースメントパネル30を跨ぐ形態で配置される構成は除かれるものとし、弾性係合部73と十字ピン74が同じ幅広部29に配置されるものが含まれるものとする。
【0025】
(3)上記実施形態では固定部として弾性係合部73を例示しているものの、本発明によると、固定部としてボルトなどを用いて固定してもよいし、あるいは別体のクリップなどを用いて固定してもよい。
(4)上記実施形態では係止ピンとして十字ピン74を例示しているものの、本発明によると、係止ピンを丸ピンとして構成してもよい。
【符号の説明】
【0026】
10…天井内装材
11…端末部
20…天井パネル
21…端末部
25…クリップ座
27…係止孔
28…狭小部
30…リィンフォースメントパネル(補強部材)
31…端末部
70…スペーサ部材
71…一端側
72…他端側
73…弾性係合部(固定部)
74…十字ピン(回り止め部、係止ピン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における天井内装材の取付構造であって、
天井側ボディを構成する天井パネルと、
前記天井パネルの車室内側に対向して配置された天井内装材と、
前記天井パネルの端末部と前記天井内装材の端末部との間に配置され、前記天井パネルの端末部に固定されることにより、前記天井内装材の端末部が車室外側に変位することを規制するスペーサ部材とを備え、
前記天井パネルの端末部に、同天井パネルを補強する補強部材の端末部が接合されており、
前記スペーサ部材の一端側に、同スペーサ部材を前記天井パネルに固定する固定部が設けられ、前記スペーサ部材の他端側に、前記固定部よりも前記補強部材の近くに配置されて前記スペーサ部材が前記固定部を中心として回転することを規制する回り止め部が設けられていることを特徴とする天井内装材の取付構造。
【請求項2】
前記天井パネルの端末部に、その一部を叩き出すことでクリップ座が形成されており、同端末部における前記補強部材の下方であって同端末部の下縁よりも上方に、係止孔が貫通して形成されており、
前記固定部は、前記クリップ座に固定される弾性係合部である一方、前記回り止め部は、前記係止孔に差し込まれる係止ピンであることを特徴とする請求項1に記載の天井内装材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−178203(P2011−178203A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41947(P2010−41947)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】