説明

天板付き家具

【課題】容易且つ安全に取り付けることができるパネルを提供すること。
【解決手段】天板2端縁の下方に設けられたブラケット13に形成された、上下および幅方向両側の内壁部を有する係合孔15に、パネル4から突設する係合片11を、係合孔15の上部との間に所定の空間を設けて係合させ、該空間に、係合孔15における両側の内壁部間に形成された幅方向に延びる枢軸17に枢支される軸受部18cと、軸受部18cから延設された当接部18aとを備える抜け止め部材18を、当接部18aが係合孔15から待避する待避位置から、少なくとも係合片11の上面11cに当接させる抜け止め位置まで軸受部18cを介して枢軸17回りに回動させることによって、パネル4を、ブラケット13より脱落不能に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板端縁の下方に設けられたブラケットの係合孔に、パネルから突設する係合部を係合させることで、デスクトップパネル等のパネルを取付けるようにした天板付き家具に関する。
【背景技術】
【0002】
テーブルや机のような天板付き家具は、オフィスにおいて使用される場合、通常、人数に応じて複数配置されることが一般的である。そのようなレイアウトをとる場合、使用者の集中力を高めるなどの意図で、天板の端縁に、上下広幅のパネルを支持することがある。このようなパネルは、天板の反使用端縁、あるいは側端縁に支持され、他の天板を使用している人からの視線を遮ることができるようになっている。
【0003】
こうしたパネルの取り付けにあっては、脚体から上方を向くように立設された取付具にパネルを支持するという構造が主である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、近年では、天板の薄型化や脚体の軽量化への訴求に伴い、脚体への取り付けではなく、天板下面からブラケットを垂設し、このブラケットに、パネルを固着するという構造が採られることが多くなってきている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0005】
特に、特許文献3にて開示されている取付構造は、パネルをブラケットへ取り付けるにあたり、バネで上方へ付勢されたスライダによりパネル側の爪部を弾性挟持するという構造であるため、ボルトでの固定の必要が無い。これにより、パネルの一端部を押さえながら作業を行うなどの手間が省かれ、パネルのサイズによっては一人でも取り付け作業が容易に行えるという点で、優れた効果を発揮するものである。
【0006】
【特許文献1】特開2001−186951号公報(第2頁、第7図)
【特許文献2】特開2004−136005号公報(第3頁、第3図)
【特許文献3】特開2008−119261号公報(第7頁、第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3にあっては、天板から垂設された金属製のブラケット内に、上下広幅である別体のスライダを挿入するという構造を採っているため、部材構成が複雑化していた。特に、スライダのパネル側への脱落防止手段を設ける場合には、部材構成がさらに複雑化していた。
【0008】
また、バネでの付勢方向が上方であるため、必然的に解除手段の移動方向も上下方向となるが、このため、解除用のボタンがブラケットの上方へ突出していた。この構造では、パネルの取り外しを行い易い反面、重いものがボタンに当たると、意図せずパネルが脱落する虞もあった。
【0009】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、容易且つ安全に取り付けることができるパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の天板付き家具は、
天板端縁の下方に設けられたブラケットに形成された、上下および幅方向両側の内壁部を有する係合孔に、パネルから突設する係合片を、前記係合孔の上部との間に所定の空間を設けて係合させ、該空間に、前記係合孔における両側の内壁部間に形成された幅方向に延びる枢軸に枢支される軸受部と、該軸受部から延設された当接部とを備える抜け止め部材を、前記当接部が前記係合孔から待避する待避位置から、少なくとも前記係合片の上面に当接させる抜け止め位置まで前記軸受部を介して前記枢軸回りに回動させることによって、前記パネルを、前記ブラケットより脱落不能に固定したことを特徴としている。
この特徴によれば、抜け止め部材を回動させるだけでパネルのブラケットへの取付が完了するので、パネルの取付作業が容易である。また、抜け止め部材は係合孔に支持されており、パネルの取付状態にあっては抜け止め部材の当接部が係合孔内にあって外方に露呈しないので、意図せずに抜け止め部材に触れて係合が外れてしまう虞を回避することができる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の天板付き家具は、請求項1に記載の天板付き家具であって、
前記ブラケットの係合孔は、前記パネルの取付側と対抗する側に開口部を有しており、前記枢軸を、前記係合孔の両側の内壁部における前記開口近傍寄りにおいて一対に突設させ、前記軸受部が該一対の突設した枢軸に前記開口部側から回動可能に嵌合させたことを特徴としている。
この特徴によれば、抜け止め部材を、パネル取付側と対抗する側の開口部よりブラケットに軸受部を介して嵌合させることができるので、パネルの取付の邪魔になることが無く、作業性に優れる。
【0012】
本発明の請求項3に記載の天板付き家具は、請求項2に記載の天板付き家具であって、
前記軸受部は一部切り欠かれた円弧形状をなし、前記当接部の両側面に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、軸受部は円弧形状の一部切り欠かれた部分から容易に一対の枢軸に嵌合及び取り外しができ、しかも円弧形状であるので嵌合後の抜け止め部材の回動運動に適している。
【0013】
本発明の請求項4に記載の天板付き家具は、請求項2または3に記載の天板付き家具であって、
前記抜け止め部材を回動操作する操作部が前記当接部と一体に形成され、前記操作部は、前記抜け止め位置において、前記ブラケットの前記パネルの取付側と対抗する側の面と略面一となるように位置していることを特徴としている。
この特徴によれば、ブラケットのパネルの取付側と対抗する側の面と略面一となるように位置している操作部を、抜け止め位置から意図せず回動してしまうことがない。
【0014】
本発明の請求項5に記載の天板付き家具は、請求項1ないし4のいずれかに記載の天板付き家具であって、
前記係合片は、前記パネル側から斜下方に傾斜する傾斜部と、該傾斜部の下端より下方に延設され前記係合孔に係合する爪部とからなり、前記当接部は前記傾斜部と前記係合孔の上部下面に当接する円弧状面を有した扇形部で形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、当接部が扇形部で形成できるので製作が容易であり、傾斜部と円弧状面との当接度合いを変化させることでパネルの抜け止めのための圧接力を適宜変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例1における天板付き家具としての机の全体像を示す斜視図である。図2は、机の側面図である。図3は、机の一端側を示す正面図である。図4は、机の一端側を示す平面図である。図5(a)は、パネルに設けられた係合部材の正面図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。図6(a)は、ブラケットの正面図であり、(b)は、(a)のB−B断面図である。図7(a)は、抜け止め部材の側面図であり、(b)は、同じく背面図である。図8は、抜け止め部材の回動状況を示す一部断面図である。
【0017】
図1に示されるように、本実施例の天板付き家具としての机1は、使用者から見て左右方向に幅広の矩形状の木製の天板2と、天板2を支持する脚体3と、天板2の左右幅と略同じ幅であって、天板2の非使用側の側縁に後述のように取付けられたパネル4と、から主として構成されている。机1は、複数の机1若しくは図示しない他の家具と組合せたいわゆるワークステーションとしての形態を採って使用され、あるいは机1単体で使用され得る。以下の説明で用いる上下左右、前後、及び内外の方向は、机1に向かう使用者を基準とした方向である。
【0018】
図1ないし4に示されるように、脚体3は、脚部としての天板2の左右端に離間して一対に配置される脚部材5及びそれぞれの脚部材5の上面に配置される金属製の支持アーム6、そして左右両支持アーム6に連結される連結杆7から主として成る。
【0019】
脚体3を構成する脚部材5は、木製の板部材であって、天板2の前後方向幅と略同じ長さの幅寸を有し、内側面の前後側が、それぞれ前後端部に向けて漸次先細のテーパ面と成る前後対称の形状となっている。
【0020】
天板2は、木製の板部材であって、下面の前後側が、それぞれ前後端部に向けて漸次先細のテーパ面と成る前後対称の形状となっており、前記した脚部材5と併せた統一感を有している。
【0021】
パネル4は、天板2よりも上方側を仕切板若しくはデスクトップパネルとして利用出来るとともに、天板2よりも下方側を幕板として利用出来るようになっている。
【0022】
また、天板2の下面のパネル4側には、断面視略コ字状の受け部材8が左右方向に取付けられており、例えばパソコンや照明器具用の配線ケーブル等を配置できるようになっている。
【0023】
パネル4の天板2側への取付面における左右両端部それぞれの近傍に係合部材10が固着され、係合部材10には係合片11,12が突設されている。これら係合片11,12が、天板2下面における反使用端側の左右両端部それぞれの近傍に固着されたブラケット13の係合孔に係合することで、パネル4が天板2に対し取り付けられている。
【0024】
次に、パネル4の取付構造について詳細に説明する。
【0025】
先ず、図5(a)、(b)に示されるように、係合部材10には、上下2箇所において、天板2側に向って延びる係合片11,12が突設され、上方の係合片11は、パネル4の取付面側から斜下方に傾斜する上面11cを備えた傾斜部11aと、傾斜部11aの下端より連続して下方に延設される爪部11bとから成る。下方の係合片12も、前述した上方の係合片11と同様に、上面12cを備えた傾斜部12aと、爪部12bとから成る。
【0026】
図6(a)、(b)及び図8に示されるように、短辺の水平部13aと長辺の鉛直部13bとが略直交する側面視略L字状のブラケット13が、その鉛直部13bが天板2の反使用端縁よりも後述するパネル4側に若干突出する位置で、水平部13aの上面が天板2下面に対して固定に取付けられている。
【0027】
ブラケット13は、アルミ製部材であって、水平部13aに形成された挿通孔に下方から挿通されたネジNにより天板2の下面に固着される(図8参照)。天板2下面より下方に延びる鉛直部13bには、上下方向に3箇所、パネル4の取付側に開口する係合孔14,15,16が形成されている。
【0028】
それぞれの係合孔14,15,16は、より詳しくは、パネル4の取付側及びこの取付側に対抗する側に貫通して開口しており、上下側の内壁及び左右側の内壁を有するとともに、パネル側において、下側の内壁から所定高さ上方に延び、且つ左右の内壁に連続する上向き鉤状の係合壁が設けられている。
【0029】
更に、上下方向に3箇所形成された係合孔14,15,16のうち、中央高さ位置の係合孔15について詳述すると、係合孔15は、パネル4の取付側の開口部15a及びこの取付側に対抗する側に貫通して開口部15bを有しており、係合孔15の左右内壁15e,15eの下部には、一対のテーパ面15g,15gが、下方に向けて漸次互いに狭まるように傾斜して形成されている。また、係合孔15の左右内壁15e,15eにおける前記取付側に対抗する側、すなわち開口部15b側に、互いに向けて突出する一対の枢軸17,17が略同軸に設けられている。
【0030】
図7(a)、(b)及び図8に示されるように、この枢軸17に、左右両面に一部切り欠かれた略円弧形状、すなわち略C字形状の軸受部18c,18cと、軸受部18c,18cから延設された当接部としての扇形部18aを備える抜け止め部材18が枢支されるようになっている。軸受部18c,18cは、扇形部18aと対抗する側に開口する略C字形状に形成されている。
【0031】
抜け止め部材18の扇形部18aの外周面は、抜け止め部材18が枢支される枢軸17を略中心として略直角に拡がる円弧状面18dに形成されており、扇形部18aに一体に形成された操作部18bを備える。更に、枢軸17の周面における開口部15a側の中央よりも若干上部に、凸形部17aが形成されている。
【0032】
図7(a)、(b)に示されるように、抜け止め部材18は、各々の軸受部18cを枢軸17に嵌合させることで、枢軸17回りに所定角度回動可能に取り付けられる。
【0033】
更に、軸受部18cにおける内周部の周方向中央よりも若干上部に、前記した枢軸17の凸形部17aに凹凸嵌合する凹形部18gが形成されている。
【0034】
抜け止め部材18の取り付けは、抜け止め部材18を天板2下方の手前側から奥側に向けてブラケット13にアプローチし、抜け止め部材18の軸受部18cを、係合孔15におけるパネル4取付側と対抗する側の開口部15bから係合孔15内の枢軸17に嵌合する。
【0035】
このようにすることで、抜け止め部材18を、パネル取付側と対抗する側の開口部15bよりブラケット13に軸受部18cを介して嵌合させることができるので、パネルの取付の邪魔になることが無く、作業性に優れる。
【0036】
図8の点線部で示されるように、枢軸17に嵌合した抜け止め部材18は、操作部18bを予め上方に回動操作しておくことで、扇形部18aがパネル取付側と対抗する側を向き係合孔15内に比較的広い空間を確保できる位置、すなわち抜け止め部材18の待避位置に配置される。
【0037】
次に、図8に示されるように、パネル4のブラケット13への取り付けについて説明すると、パネル4の天板2への取付面にネジNで取り付けられた係合部材10の係合片11,12を、それぞれブラケット13の係合孔15,16に係合させる。より具体的には、上方の係合片11を、上下3箇所形成された中央部の係合孔15に係合するとともに、下方の係合片12を、下部の係合孔16に係合する。
【0038】
尚、左右方向に所定間隔で設けられる、係合部材10の数量及びブラケット13の数量は、本実施例のようにそれぞれ左右両端側の2箇所に限られず、パネルの左右幅や重量に応じて、例えば中央側に1箇所のみ設けてもよいし、所定間隔で3箇所以上設けてもよい。
【0039】
更に尚、上下方向に設けられる、係合片の数量及び係合孔の数量は、本実施例のように係合片が2箇所で係合孔が3箇所に限られず、それぞれ適宜設定した数量であってよい。また、枢軸17及び抜け止め部材18は、適宜設定された複数箇所の係合孔のうち、いずれか1箇所若しくは所定箇所の係合孔に取付けられていてもよいし、または全ての係合孔に取付けられていても構わない。
【0040】
係合片11の係合について詳述すると、先ず係合片11を構成する爪部11b及び傾斜部11aを、パネル4側の開口部15aから係合孔15内部に挿入してパネル4を下方に下ろし、パネル4の自重により、爪部11bを、係合孔15内部の下部上面15dから延びる上向き鉤状の係合壁15fに係合させる(図8の矢印参照)。このとき係合片11は、爪部11b及び傾斜部11aの両側面が係合孔15に形成されたテーパ面15g,15gと当接しながら係合孔15内に進入することで、係合孔15内で位置決めされることになる。
【0041】
上下2箇所の係合片11,12が設けられるピッチと上下3箇所形成された係合孔14,15,16のピッチは、略同寸法であり、パネル4の高さを調整しながらいずれの係合片11,12も略同じタイミングでいずれかの係合孔に係合させる。
【0042】
このとき、中央部の係合孔15では、抜け止め部材18が前記した待避位置に配置され、係合孔15内に比較的広い空間が確保されているため、係合片11を係合孔15内部に係合し易い。
【0043】
次に、図8の実線部で示されるように、抜け止め部材18の操作部18bを下方に回動操作することで、扇形部18aを係合孔15内において漸次パネル4側に向けて、抜け止め部材18を待避位置から抜け止め位置に配置する。抜け止め部材18の抜け止め位置では、扇形部18aの円弧状面18dの一端18e側が、係合孔15の上部下面15cに当接するとともに、円弧状面18dの他端18f側が、係合片11の傾斜部11aの上面11cに当接するようになっている。
【0044】
更に、この抜け止め部材18の抜け止め位置において、軸受部18cの凹形部18gが枢軸17の凸形部17aに凹凸嵌合するようになっているため、操作者が、抜け止め部材18を抜け止め位置に所定に配置したことを把握できるとともに、抜け止め位置に配置された抜け止め部材18を、容易に待避位置側に逆回動してしまうことがない。
【0045】
抜け止め部材18の回動操作による、扇形部18aの円弧状面18dと係合片11の傾斜部11aの上面11cとの当接の態様について、具体的に説明すると、円弧状面18dの回動径は、枢軸17中心から傾斜部11aの上面11cまでの離間寸法よりも若干大寸に形成されている。抜け止め部材18の回動操作により、先ず円弧状面18dの一端18e側が傾斜部11aの上面11cに当接し、以降、抜け止め部材18は、円弧状面18dが順次傾斜部11aの上面11cを圧接しながら回動する。
【0046】
そして、抜け止め部材18の円弧状面18dの他端18f側が、傾斜部11aの上面11cに当接すると略同時に、円弧状面18dの一端18e側が、係合孔15の上部下面15cに当接する抜け止め位置に達し回動操作が終了する。抜け止め部材18は、抜け止め位置において、係合孔15の上部下面15cと傾斜部11aの上面11cとの間で、回動が規制される。
【0047】
このとき、抜け止め部材18の待避位置においては上方を向いていた操作部18bの一側面が、抜け止め位置において、略鉛直方向を向きブラケット23の前面と略面一、より具体的にはブラケット23の前面よりも若干外方に位置している。
【0048】
この抜け止め部材18の抜け止め位置においては、係合片11が係合孔15内での移動が規制され、係合壁15fに係合した状態を維持している。具体的には、係合片11をより係合し易くする目的で、係合孔15の内部空間を係合片11に対し所定に大きく形成しており、抜け止め部材18を回動する前段階では、係合片11が安定しておらず、パネル4が所定量動いてしまう虞があるが、抜け止め部材18の抜け止め位置においては、抜け止め部材18の円弧状面18dが、傾斜部11aの上面11cに対し略直交方向に圧接するため、結果として係合片11を係合壁15fに対し押圧することになり、係合片11の位置が安定してパネル4が動いてしまうことがない。
【0049】
また、扇形部18aと対抗する側に開口する略C字形状に形成された軸受部18c,18cは、扇形部18a側には閉塞しているため、係合片11を押圧して当接する抜け止め部材18は、係合片11に作用する反力により軸受部18c,18cの閉塞側が枢軸17に密接することになり、枢軸17から外れてしまう虞がない。
【0050】
このように、抜け止め部材18を回動させるだけでパネル4のブラケット13への取付が完了するので、パネル4の取付作業が容易である。また、抜け止め部材18は係合孔15に支持されており、パネル4の取付状態にあっては抜け止め部材18の当接部としての扇形部18aが、係合孔15内部にあって外方に露呈しないので、意図せずに抜け止め部材18に触れて係合が外れてしまう虞を回避することができる。
【0051】
また、軸受部18cは一部切り欠かれた円弧形状をなし、扇形部18aの両側面に設けられていることで、軸受部18cは円弧形状の一部切り欠かれた部分から容易に一対の枢軸17に嵌合及び取り外しができ、しかも円弧形状であるので嵌合後の抜け止め部材18の回動運動に適している。
【0052】
図8の実線部で示されるように、抜け止め部材18の操作部18bは、前記した抜け止め部材18の抜け止め位置において、ブラケット13の前面、すなわちブラケット13のパネル4の取付側と対抗する側の面と略面一となるように位置している操作部18bを、抜け止め位置から意図せず回動してしまうことがない。
【0053】
更に、本実施例では、抜け止め部材の当接部として扇形部18aで形成できるので製作が容易であり、傾斜部11aの上面11cと円弧状面18dとの当接度合いを変化させることで、パネル4の抜け止めのための圧接力を適宜変えることができる。
【0054】
尚、特に図示しないが、上下2箇所設けられた係合片11,12を、上下3箇所形成された係合孔14,15,16のうち、上部及び中央部の係合孔14,15にそれぞれ係合することもでき、このようにすることで、パネル4の取り付け高さを上下2段階に調節することができる。また、パネル4の取り付け高さを上下いずれの高さとしても、上下いずれかの係合片11,12が、中央部の係合孔15に係合することになるため、取付けたパネル4を抜け止め部材18により安定させることができる。
【実施例2】
【0055】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明すると、図9(a)は、実施例2におけるブラケットの正面図であり、(b)は、(a)のC−C断面図である。図10(a)は、抜け止め部材の側面図であり、(b)は、同じく背面図である。図11は、抜け止め部材の回動状況を示す一部断面図である。なお、上記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。
【0056】
図9(a)、(b)に示されるように、ブラケット23は、上下方向に3箇所、係合孔24,25,26が形成されている。上部の係合孔24は、パネル4の取付面側、及び該取付面側に連通し上方側に向けて開口する開口部24aを有する。係合孔24の左右内壁24e,24eの下部には、一対のテーパ面24g,24gが、下方に向けて漸次互いに狭まるように傾斜して形成されている。
【0057】
開口部24aは、ブラケット23の水平部23aにおける天板2下面に取り付ける上面よりも一段低い高さ位置において開口している。
【0058】
また、中央部の係合孔25には、上述した実施例1における枢軸17と同形状の一対の枢軸27,27が、左右内壁25e,25eにおける開口部25b側に、互いに向けて突出して略同軸に設けられている。更に、枢軸27の周面における開口部25a側の中央よりも若干上部に、凸形部27aが形成されている。
【0059】
図10(a)、(b)に示されるように、抜け止め部材28は、鋭角に拡がるように形成された当接部としての扇形部28aと、扇形部18aと対抗する側に開口する略C字形状に形成された軸受部28c,28cとを備えており、扇形部28aの円弧状面28dは、後述する抜け止め部材28の抜け止め位置において、係合片の傾斜部の上面のみに当接するようになっている。
【0060】
尚、扇形部の拡がり度合いは、本実施例のように扇形部28aが鋭角に拡がっていてもよいし、若しくは上述した実施例1のように扇形部18が略直角に拡がっていてもよく、あるいは扇形部が鈍角に拡がるものであっても構わない。
【0061】
図11に示されるように、本実施例では、上方の係合片11を、上下3箇所形成された上部の係合孔24に係合するとともに、下方の係合片12を、中央部の係合孔25に係合する。
【0062】
係合片11の係合について説明すると、先ず係合片11を構成する爪部11b及び傾斜部11aを、パネル4側及び上方側に開口した開口部24aから係合孔24内部に挿入してパネル4を下方に下ろし、パネル4の自重により、爪部11bを、係合孔24の上向き鉤状の係合壁24fに係合させる。このとき係合片11は、爪部11b及び傾斜部11aの両側面が係合孔24に形成されたテーパ面24g,24gと当接しながら係合孔24内に進入することで、係合孔24内で位置決めされることになる。
【0063】
このように、上部の係合孔24が、パネル4の取付面側、及び該取付面側に連通し上方側に向けて開口する開口部24aを有しているため、係合片11を外上方から開口部24aを介して係合孔24内に挿入し易い。
【0064】
また、上部の係合孔24の開口部24aが、ブラケット23の水平部23aにおける天板2下面に取り付ける上面よりも一段低い高さ位置において開口しているため、開口部24aと天板2下面との間に間隙が形成されることになり、係合片11を外上方から開口部24aに向けて進入させ易い。
【0065】
上記した係合片11の係合孔24への係合と略同じタイミングで、下方の係合片12を、抜け止め部材28が予め待避位置(図11点線部参照)に待避している中央部の係合孔25に係合させる。
【0066】
次に、図11の実線部で示されるように、抜け止め部材28の操作部28bを下方に回動操作することで、扇形部28aを係合孔25内において漸次パネル4側に向けて、抜け止め部材28を待避位置から抜け止め位置に配置する。抜け止め部材28の抜け止め位置では、扇形部28aの円弧状面28dが、係合片12の傾斜部12aの上面12cに当接するようになっている。
【0067】
更に、この抜け止め部材28の抜け止め位置において、軸受部28cの凹形部28gが枢軸27の凸形部27aに凹凸嵌合するようになっているため、操作者が、抜け止め部材28を抜け止め位置に所定に配置したことを把握できるとともに、抜け止め位置に配置された抜け止め部材28を、容易に待避位置側に逆回動してしまうことがない。
【0068】
抜け止め部材28の回動操作による、扇形部28aの円弧状面28dと係合片12の傾斜部12aの上面12cとの当接の態様について、具体的に説明すると、円弧状面28dの回動径は、枢軸27中心から傾斜部12aの上面12cまでの離間寸法よりも若干大寸に形成されている。抜け止め部材28の回動操作により、先ず円弧状面28dの一端28e側が傾斜部12aの上面12cに当接し、以降、抜け止め部材28は、円弧状面28dが順次傾斜部12aの上面12cを圧接しながら回動する。
【0069】
そして、円弧状面28dが傾斜部11aの上面11cに当接した状態で、抜け止め部材28の待避位置において上方を向いていた操作部28bの一側面が、略鉛直方向を向くと略同時に、抜け止め部材28の抜け止め位置に達し回動操作が終了する。
【0070】
このとき、抜け止め部材18の待避位置においては上方を向いていた操作部18bの一側面が、抜け止め位置において、略鉛直方向を向きブラケット23の前面と略面一、より具体的にはブラケット23の前面よりも若干内方に位置している。
【0071】
この抜け止め部材28の抜け止め位置においては、係合片12が係合孔25内での移動が規制され、係合壁25fに係合した状態を維持している。具体的には、係合片12をより係合し易くする目的で、係合孔25の内部空間を係合片12に対し所定に大きく形成しており、抜け止め部材28を回動する前段階では、係合片12が安定しておらず、パネル4が所定量動いてしまう虞があるが、抜け止め部材28の抜け止め位置においては、抜け止め部材28の円弧状面28dが、傾斜部12aの上面12cに対し略直交方向に圧接するため、結果として係合片12を係合壁25fに対し押圧することになり、係合片12の位置が安定してパネル4が動いてしまうことがない。
【0072】
また、扇形部28aと対抗する側に開口する略C字形状に形成された軸受部28c,28cは、扇形部28a側には閉塞しているため、係合片12を押圧して当接する抜け止め部材28は、係合片12に作用する反力により軸受部28c,28cの閉塞側が枢軸27に密接することになり、枢軸27から外れてしまう虞がない。
【0073】
このように、抜け止め部材28を回動させるだけでパネル4のブラケット23への取付が完了するので、パネル4の取付作業が容易である。また、抜け止め部材28は係合孔25に支持されており、パネル4の取付状態にあっては抜け止め部材28の当接部としての扇形部28aが、係合孔25内部にあって外方に露呈しないので、意図せずに抜け止め部材28に触れて係合が外れてしまう虞を回避することができる。
【0074】
また、軸受部28cは一部切り欠かれた円弧形状をなし、扇形部28aの両側面に設けられていることで、軸受部28cは円弧形状の一部切り欠かれた部分から容易に一対の枢軸27に嵌合及び取り外しができ、しかも円弧形状であるので嵌合後の抜け止め部材28の回動運動に適している。
【0075】
図8の実線部で示されるように、抜け止め部材28の操作部28bは、前記した抜け止め部材28の抜け止め位置において、ブラケット23の前面、すなわちブラケット23のパネル4の取付側と対抗する側の面と略面一となるように位置している操作部28bを、抜け止め位置から意図せず回動してしまうことがない。
【0076】
更に、本実施例では、抜け止め部材の当接部として扇形部28aで形成できるので製作が容易であり、傾斜部12aの上面12cと円弧状面28dとの当接度合いを変化させることで、パネル4の抜け止めのための圧接力を適宜変えることができる。
【0077】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0078】
例えば、上記実施例では、ブラケットの係合孔は、パネルの取付側と対抗する側に開口部を有し、抜け止め部材をこの開口部側から回動可能に嵌合させているが、例えば、ブラケットの係合孔は、前記したパネルの取付側と対抗する側が閉塞しており、抜け止め部材を、パネルの取付側から嵌合させるとともに、左右側から回動操作できるようにしてもよい。
【0079】
また、例えば上記実施例では、抜け止め部材の軸受部は一部切り欠かれた円弧形状を成しているが、例えば軸受部は、周面が閉じられ且つ軸方向に伸縮可能な筒状部であって、収縮した状態で枢軸に同軸に配置した後、伸張して枢軸に嵌合するものであってもよい。
【0080】
また、例えば上記実施例では、抜け止め部材の操作部は、抜け止め部材の抜け止め位置において、ブラケットのパネルの取付側と対抗する側の面と略面一となるように位置しているが、例えば操作部は、抜け止め部材の抜け止め位置において、係合孔の外部に位置していてもよいし、係合孔の内部に位置するものであってもよい。
【0081】
また、例えば上記実施例では、抜け止め部材における当接部として、係合片の傾斜部の上面に当接する円弧状面を有する扇形部が設けられているが、当接部の形状は、例えば曲率が周方向に適宜変化する弧状面を有していてもよいし、また例えば複数組合せた平面を有していてもよい。
【0082】
更に、例えば上記実施例では、脚体として板状の脚部材5、支持アーム6、及び連結杆7が構成されているが、脚体の構成部材や材質は、本実施例に限られず、例えば、天板の角部から下方に立設された柱状の脚体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施例1における天板付き家具としての机の全体像を示す斜視図である。
【図2】机の側面図である。
【図3】机の一端側を示す正面図である。
【図4】机の一端側を示す平面図である。
【図5】(a)は、パネルに設けられた係合部材の正面図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。
【図6】(a)は、ブラケットの正面図であり、(b)は、(a)のB−B断面図である。
【図7】(a)は、抜け止め部材の側面図であり、(b)は、同じく背面図である。
【図8】抜け止め部材の回動状況を示す一部断面図である。
【図9】(a)は、実施例2におけるブラケットの正面図であり、(b)は、(a)のC−C断面図である。
【図10】(a)は、抜け止め部材の側面図であり、(b)は、同じく背面図である。
【図11】抜け止め部材の回動状況を示す一部断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 机(天板付き家具)
2 天板
3 脚体
4 パネル
5 脚部材
6 支持アーム
7 連結杆
10 係合部材
11,12 係合片
11a,12a 傾斜部
11b,12b 爪部
11c,12c 上面
13 ブラケット
14,15,16 係合孔
15a 開口部(パネルの取付側)
15b 開口部(パネルの取付側と対抗する側)
15c 上部下面
17 枢軸
18 抜け止め部材
18a 扇形部(当接部)
18b 操作部
18c 軸受部
18d 円弧状面
23 ブラケット
24,25,26 係合孔
24a 開口部
27 枢軸
28a 扇形部(当接部)
28b 操作部
28c 軸受部
28d 円弧状面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板端縁の下方に設けられたブラケットに形成された、上下および幅方向両側の内壁部を有する係合孔に、パネルから突設する係合片を、前記係合孔の上部との間に所定の空間を設けて係合させ、該空間に、前記係合孔における両側の内壁部間に形成された幅方向に延びる枢軸に枢支される軸受部と、該軸受部から延設された当接部とを備える抜け止め部材を、前記当接部が前記係合孔から待避する待避位置から、少なくとも前記係合片の上面に当接させる抜け止め位置まで前記軸受部を介して前記枢軸回りに回動させることによって、前記パネルを、前記ブラケットより脱落不能に固定したことを特徴とする天板付き家具。
【請求項2】
前記ブラケットの係合孔は、前記パネルの取付側と対抗する側に開口部を有しており、前記枢軸を、前記係合孔の両側の内壁部における前記開口近傍寄りにおいて一対に突設させ、前記軸受部が該一対の突設した枢軸に前記開口部側から回動可能に嵌合させたことを特徴とする請求項1に記載の天板付き家具。
【請求項3】
前記軸受部は一部切り欠かれた円弧形状をなし、前記当接部の両側面に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の天板付き家具。
【請求項4】
前記抜け止め部材を回動操作する操作部が前記当接部と一体に形成され、前記操作部は、前記抜け止め位置において、前記ブラケットの前記パネルの取付側と対抗する側の面と略面一となるように位置していること特徴とする請求項2または3に記載の天板付き家具。
【請求項5】
前記係合片は、前記パネル側から斜下方に傾斜する傾斜部と、該傾斜部の下端より下方に延設され前記係合孔に係合する爪部とからなり、前記当接部は前記傾斜部と前記係合孔の上部下面に当接する円弧状面を有した扇形部で形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の天板付き家具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−104538(P2010−104538A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279194(P2008−279194)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】