説明

太陽光発電システム

【課題】低日射量状態を検知したとき、最大電力点への追従制御の精度を上げて太陽電池電圧の振動を抑制する。
【解決手段】制御回路10は、インバータ出力電圧検出部6とインバータ出力電流検出部7とにより検出された出力電圧および出力電流の積による出力電力から太陽電池1の最大電力を検知したとき、そのときの太陽電池電圧を太陽電池電圧検出部5から読み込んで保持し、保持した太陽電池電圧が所定数になる毎に、その中から最大値の太陽電池電圧を選択し、太陽電池の電力が低下する低日射量状態を検知したときに、選択した最大値の太陽電池電圧を目標太陽電池電圧とし、太陽電池1の太陽電池電圧がその目標太陽電池電圧とほぼ一致するようにインバータ回路3を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を電源とする太陽光発電システム、特に低日射量における太陽電池の電力を制御する太陽光発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、太陽電池を用いた発電システムの開発が進んでおり、太陽電池から生じる直流電力を効率よく交流負荷や既存の交流電力系統に与えるための研究が広く行われている。太陽電池は、入射される日射量をパラメータとした場合、日射量の増大に従って電力が高くなる傾向を有しており、また、その太陽電池の動作点により出力電力が大幅に変動する特性を有している。
【0003】
このような特性を有する太陽電池から最大電力を効率よく取り出すために、山登り法といわれる最大電力点追従制御方法が提案されている。これは、図10に示すように、山形状の太陽電池電圧―太陽電池電力特性を利用したもので、太陽電池の電力が最大となる最大電力点MPPを有している。先ず、太陽電池の動作点がM1の位置にあった場合、一定の変化幅で太陽電池の電圧を上昇させていくと、その電力はMPPの方向に増加して行く。一方、太陽電池の動作点がMPPを越えM2の位置になった場合、太陽光発電システムでは、太陽電池の電力の減少を検出するので、今度は太陽電池の電圧を減少させ、電力が増加するように制御を行う。これにより、太陽電池の電力は、再びMPPの方向に向かって増加し、再度MPPを越えると減少し始める。そこで、再び電力の減少を検知すると、再び太陽電池の電圧を所定の変化幅で増加させる方向へ変化させる。以上の動作を繰り返し行うことにより、太陽電池の動作点をMPP近傍で往復させ、太陽電池の電力を最大電力点MPPに常に追従させている。日射量大のときの太陽電池電圧は、図11(a)に示すようにMPPに追従した状態となりほぼ安定している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−97721号公報(第2−3頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の最大電力追従制御方法では、太陽電池とインバータ回路の間に、比較的大容量の電圧平滑用のコンデンサが接続されているため、太陽電池側から見たインバータ回路の電流制限作用による抵抗成分と、そのコンデンサの静電容量間で構成されるCR回路により、いわゆる一次遅れ現象が生じる。低日射量時は太陽電池から見た、インバータ回路側の出力抵抗が大きいため、一次遅れ現象の影響が日中等の最大日射量時と比較して大きくなる。また、図10中の日射量小に示すように、日射量大の状態(日射100%とする)の太陽電池電圧−太陽電池電力特性に対して、日射量小の状態(例えば最大日射量の10%)の特性は広範囲の電圧値(動作点M3)にわたって、ほぼ平坦な特性となっている。
【0006】
これら一次遅れ現象と太陽電池電圧―太陽電池電力特性の影響により、最大電力点MPPへの追従精度が低下してしまうことが生じていた。検出精度が低下する低日射量状態でも、目標太陽電池電圧をその都度演算してMPPに追従させようとする制御を行っているため、太陽電池電圧の過補償の状態が発生し、このため、図11(b)に示すように、太陽電池電圧の振動が大きくなってMPPから大きく逸脱する傾向にあり、結果として最大電力点MPPへの追従制度が低下し、電力の取り出し効率が低下するという課題があった。また、太陽電池電圧の大きな振動により、インバータ回路の動作が不安定になるという課題もあった。
【0007】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、低日射量状態を検知したとき、最大電力点への追従制御の精度を上げて太陽電池電圧の振動を抑制するとともに、インバータ回路の動作を安定化させることのできる太陽光発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る太陽光発電システムは、太陽電池より発生する直流電力を交流電力に変換する電力変換器と、太陽電池の電圧を検出する太陽電池電圧検出部と、電力変換器の出力電圧を検出する出力電圧検出部と、電力変換器の出力電流を検出する出力電流検出部と、太陽電池電圧検出部、出力電圧検出部および出力電流検出部のそれぞれの検出結果に基づいて目標太陽電池電圧を算出する目標太陽電池電圧算出部と、太陽電池電圧が目標太陽電池電圧とほぼ一致するように電力変換器の出力電流を制御し、太陽電池の電力を最大電力に推移させる電力制御部と、出力電圧検出部と出力電流検出部とにより検出された出力電圧および出力電流の積による出力電力から太陽電池の最大電力を検知したとき、そのときの太陽電池電圧を太陽電池電圧検出部から読み込んで保持し、保持した太陽電池電圧が所定数になる毎に、その中から最大値の太陽電池電圧を選択する最大太陽電池電圧判別部とを備え、目標太陽電池電圧算出部は、太陽電池の電力が低下する低日射量状態を検知したときに、最大太陽電池電圧判別部により選択された最大値の太陽電池電圧を目標太陽電池電圧として電力制御部に設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、出力電圧検出部と出力電流検出部とにより検出された電力変換器の出力電圧および出力電流の積による出力電力から太陽電池の最大電力を検知したとき、そのときの太陽電池電圧を太陽電池電圧検出部から読み込んで保持し、保持した太陽電池電圧が所定数になる毎に、その中から最大値の太陽電池電圧を選択し、太陽電池の電力が低下する低日射量状態を検知したときに、選択した最大値の太陽電池電圧を目標太陽電池電圧とし、これを太陽電池の最大電力追従制御に用いるようにしたので、低日射量時における太陽電池電圧の大きな振動を収束させることが可能になり、このため、太陽電池の電力取り出し効率を向上させるとともに、電力変換部であるインバータ回路の安定した動作を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る太陽光発電システムの概略構成を示す回路図、図2は実施の形態1に係る太陽光発電システムの制御回路の構成を示すブロック図である。
実施の形態1の太陽光発電システムは、例えば商用電力系統4に連係されており、主要部として、複数の太陽電池モジュールが組み合わされてなる太陽電池1、電力変換器であるインバータ回路3、インバータ回路3を制御する制御回路10などが備えられている。インバータ回路3の入力側には、太陽電池1に発生する電圧を平滑化するコンデンサ2および太陽電池1の電圧(以下、「太陽電池電圧VPV」という)を検出する太陽電池電圧検出部5が設けられ、インバータ回路3の出力側には、インバータ出力電圧VOUT を検出するインバータ出力電圧検出部6およびインバータ出力電流IOUT を検出するインバータ出力電流検出部7が設けられている。前述した太陽電池電圧VPV、インバータ出力電圧VOUT およびインバータ出力電流IOUT は、時間t1(数十ms程度)毎に制御回路10により読み込まれている。
【0011】
この制御回路10は、各検出部5、6、7によって検出された太陽電池電圧VPV、インバータ出力電圧VOUT およびインバータ出力電流IOUT に基づいて、インバータ回路3の出力電圧が商用電力系統4の系統電圧と系統周波数に同期するように制御し、かつ、太陽電池1の出力電力がその都度最大となるように常時最大電力点MPP(図10参照)を追従する制御を行っている。以下、図2を用いて制御回路の構成を説明する。
【0012】
例えば、インバータ出力電圧VOUT とインバータ出力電流IOUT を乗算してインバータ出力電力POUT を算出する乗算器11と、単位太陽電池電圧あたりのインバータ出力電力POUT の変化量dPOUT /dVPVを算出する電力変化量算出部12と、目標太陽電池電圧VPVref を算出する目標太陽電池電圧算出部13と、太陽電池電圧VPVと目標太陽電池電圧VPVref との偏差を求める加算器14と、その偏差値をPID制御して目標インバータ出力電流IOUTrefを生成し、かつ、インバータ出力電流IOUT がその目標インバータ出力電流IOUTrefになるようにインバータ回路3のスイッチング素子(図示せず)をPWM制御するPID制御部15(電力制御部)と、最大太陽電池電圧判別部16および記憶部17とを有している。
【0013】
前述した目標太陽電池電圧算出部13は、時間t2(数百ms程度)毎にインバータ出力電力POUT を読み込んで、予め設定された閾値Cより高いかどうかを判定し、インバータ出力電力POUT が閾値Cより大きいときは、高日射量状態と判断して制御モードをMode=1(山登りモード)にセットし、かつ、そのときの変化量dPOUT /dVPVに基づいて目標太陽電池電圧VPVref を算出する。また、インバータ出力電力POUT が閾値Cより小さいときは、低日射量状態と判断して制御モードをMode=0(低日射モード)にセットし、所定時間経過後に後述する最大太陽電池電圧VPVmax を目標太陽電池電圧VPVref として加算器14に設定する。Mode=0のときの制御は、インバータ出力電力POUT が閾値Cより大きくなったとき、又は前記の所定時間より短い時間を経過したときに解除され、再びMode=1による制御に入る。目標太陽電池電圧VPVref は、変化量dPOUT /dVPVがゼロより大きいとき、前回の目標太陽電池電圧VPVref(k-1)に所定値Dを加算して得られた電圧値であり、変化量dPOUT /dVPVがゼロより小さいときは、前回の目標太陽電池電圧VPVref(k-1)から所定値Dを減算して得られた電圧値である。
【0014】
太陽電池電圧判別部16は、Mode=1のときに変化量dPOUT /dVPVの微分値の符号が反転しているかどうかを判定し、その微分値の符号が反転しているときは、そのときの太陽電池電圧VPVが最大電力点MPPを与える電圧値と判断して、記憶部17に予め設定された5つのエリアに順次に書き込み、その5つのエリア全てに太陽電池電圧VPVを書き込んだときは、その中から最大値の太陽電池電圧VPVを選択して最大太陽電池電圧VPVmax とし目標太陽電池電圧算出部13に送出する。記憶部17に書き込まれる太陽電池電圧VPVは、例えば図5(b)に示すように、インバータ出力電力POUT が極大となる点をa〜gとすると、そのときの太陽電池電圧VPVが同図(a)に示すようにa’〜g’となる。また、インバータ出力電力POUT が最大電力点MPPを通過するとき、変化量dPOUT /dVPVの符号は反転し、この符号が反転したときの太陽電池電圧VPVが最大電力点MPPを与える電圧値と見なされて記憶部17に書き込まれる。
【0015】
次に、図3および図4を用いて実施の形態1の動作を説明する。図3は実施の形態1に係る太陽光発電システムの目標太陽電池電圧算出部の動作を示すフローチャート、図4は最大太陽電池電圧判別部の動作を示すフローチャートである。
制御回路10がt1(数十ms程度)毎に太陽電池電圧VPV、インバータ出力電圧VOUT およびインバータ出力電流IOUT を読み込むと、その都度、制御回路10の乗算器11は、インバータ出力電圧VOUT とインバータ出力電流IOUT とからインバータ出力電力POUT を算出し、電力変化量算出部12は、太陽電池電圧VPVとインバータ出力電力POUT とから単位太陽電池電圧あたりのインバータ出力電力POUT の変化量dPOUT /dVPVを算出して、目標太陽電池電圧算出部13と最大太陽電池電圧判別部16とにそれぞれ送出する。また、最大太陽電池電圧設定部16は、図4に示すように、Modeが「1」かどうかを判定し(S20)、Modeが「1」のときは、電力変化量算出部12により算出された変化量dPOUT /dVPVの微分値の符号が反転しているかどうかを判定する(S21)。
【0016】
最大太陽電池電圧判別部16は、その微分値の符号が反転していると判断したときは、そのときの太陽電池電圧VPVが最大電力点MPPを与える電圧値と判断して、その太陽電池電圧VPVを記憶部17に書き込む。この太陽電池電圧VPVを書き込む際に、記憶部17に設けられた5つのエリア全てに太陽電池電圧VPVを書き込んでいた場合は、最も古い太陽電池電圧VPVをクリアにして、新しい太陽電池電圧VPVを保存するようにしている(S22)。そして、記憶部17への書き込みが5つになる毎に、その中から最大値の太陽電池電圧VPVを選択して最大太陽電池電圧VPVmax とし(S23)、目標太陽電池電圧算出部13に送出する。
【0017】
一方、目標太陽電池電圧算出部13は、図3に示すように、t2(数百ms程度)毎に実行する。まず、Modeが「1」かどうかを判定し(S1)、Modeが「0」のときはS9に進むが、Modeが「1」のときは、入力されたインバータ出力電力POUT が閾値Cより高いかどうかを判定する(S2)。インバータ出力電力POUT が閾値Cより低いときは低日射量状態と判断してS3に進むが、インバータ出力電力POUT が閾値Cより高いときは、高日射量状態と判断してタイマの時間tSUN を「H」にリセットし(S4)、再びModeを「1」にセットする(S12)。そして、実行開始時に入力された変化量dPOUT /dVPVを読み込んで「0」より大きいかどうかを判定する(S13)。変化量dPOUT /dVPVが「0」より大きいときは、太陽電池電圧VPVが最大電力点MPPの左側に位置していると判断して、前回の目標太陽電池電圧VPVref(k-1)に所定値Dを加算し、その値を目標太陽電池電圧VPVref として加算器14に設定する(S14)。また、変化量dPOUT /dVPVが「0」より小さいときは、太陽電池電圧VPVが最大電力点MPPの右側に位置していると判断して、前回の目標太陽電池電圧VPVref(k-1)から所定値Dを減算し、その値を目標太陽電池電圧VPVref として加算器14に設定する(S15)。この目標太陽電池電圧VPVref を時間t2毎に繰り返し設定することにより、太陽電池電圧VPVは、ほぼ最大電力点MPP付近となる。
【0018】
また、目標太陽電池電圧算出部13は、S2において、インバータ出力電力POUT が閾値Cより低いと判断したとき(低日射量状態)、先にリセットした時間tSUN から「1」を減算し(S3)、その時間tSUN が「0」になったかどうかを判定する(S5)。時間tSUN が「0」でないときは、S12に進んで高日射量状態と同じ動作を繰り返す。これは、天候が低日射量状態に変わっても高日射状態に戻る可能性があるためである。時間tSUN が「0」になるまで低日射量状態が続いた場合は、タイマの時間tSUN を「H」よりも短い「L」にセットし(S6)、Modeを「0」にセットする(S7)。この時、最大太陽電池電圧判別部16によって選択された最大太陽電池電圧VPVmax を目標太陽電池電圧VPVref とし(S8)、加算器14に設定する。
【0019】
また、目標太陽電池電圧算出部13は、時間t2が経過すると、前記と同様にModeが「1」かどうかを判定する(S1)。この時点では、Modeが「0」であるため、S9においてインバータ出力電力POUT が閾値Cより高いかどうかを判定し、インバータ出力電力POUT が閾値Cより高いときは、天候が低日射量状態から高日射量状態に変わったと判断してS4に進むが、インバータ出力電力POUT が閾値Cより低いときは、S6でセットした時間tSUN から「1」を減算し(S10)、その時間tSUN が「0」になったかどうかを判定する(S11)。時間tSUN が「0」になったときはS12に進むが、時間tSUN が「0」でないときはMode「0」を保持し(S7)、最大太陽電池電圧判別部16によって選択された最大太陽電池電圧VPVmax を目標太陽電池電圧VPVref とし(S8)、加算器14に設定する。Mode=0(低日射量状態)における最大電力点追従制御をt2毎に行っているうちに、S9においてインバータ出力電力POUT が閾値Cより高いと判断したときは、タイマの時間tSUN を「H」にリセットしてからModeを「1」にセットし(S4、S12)、また、S11において時間tSUN が「0」になったことを確認したときは、Modeを「1」にセットし(S12)、高日射量時の最大電力点追従のための目標太陽電池電圧VPVref の算出に入る。
【0020】
低日射量状態(Mode=0)では、ある程度以上の太陽電池1の電力が得られないことがあり、その場合、最大電力点MPPの探索と追従が困難であるため、最大太陽電池電圧判別部16によって選択された最大太陽電池電圧VPVmax を目標太陽電池電圧VPVref としてほぼ一定にしている。これにより、太陽電池電圧VPVの震動が抑制されて収束方向へ向かい、ある程度の効率を維持することができる。また、S9においてインバータ出力電力POUT が閾値Cより高いと判断したとき、あるいはS11において時間tSUN が「0」になったことを確認したときは、Modeを「1」にセットして目標太陽電池電圧VPVref の算出に入るようにしているのは、日射条件が時々刻々と変動することから、同一電圧での長時間の動作点固定は、最大電力点MPPからのずれが大きくなりうる可能性がある。この場合、一旦、Mode=1(高日射状態)に移行し、再度、最大電力点MPPを与える最大太陽電池電圧VPVmax を得るようにしている。
【0021】
以上のように実施の形態1によれば、Mode=1(山登りモード)からMode=0(低日射モード)へ移行した際、最大太陽電池電圧VPVmax を目標太陽電池電圧VPVref として設定するようにしたので、PID制御部15を介したインバータ回路3の制御により太陽電池電圧VPVの振動は収束する。最大太陽電池電圧VPVmax はコンデンサ2を介したインバータ出力電力POUT を基に算出しているため、理想の最大電力点MPPを与える太陽電池電圧VPVとはズレが生じるものの、図6に示すように最大電力点追従が困難な低日射量時でも太陽電池電圧VPVの振動を収束させることが可能になり、このため、電力取り出し効率が改善され、インバータ回路3の安定した動作を確保することができる。
【0022】
なお、実施の形態1では、Mode=0(低日射モード)のとき最大太陽電池電圧VPVmax を目標太陽電池電圧VPVref として設定するようにしたが、最大太陽電池電圧VPVmax に上限値又は下限値を設けて、検出誤差等から太陽電池電圧VPVが最大電力点MPPから大きく逸脱しないようにしても良い。
【0023】
また、電力変化量算出部12により算出された変化量dPOUT /dVPVの符号が反転したとき、そのときの太陽電池電圧VPVが太陽電池1の最大電力となる電圧値と判断して、その太陽電池電圧VPVが予め設定された上限値以下かどうかを判定し、上限値以下の太陽電池電圧VPVを記憶部17に書き込むようにしても良い。これは、検出誤差等から最大太陽電池電圧VPVmax が最大電力点MPPから大きく逸脱しないようにするためである。
【0024】
実施の形態2.
実施の形態1は、高日射量時(Mode=1)に選択された最大太陽電池電圧VPVmax を目標太陽電池電圧VPVref とし、これを低日射量状態のときに最大電力点追従制御に用いて、太陽電池電圧VPVを振動させることなく太陽電池1の最大電力点MPPに接近させるようにしたものであるが(図6参照)、実施の形態2では、最大太陽電池電圧VPVmax を選択する毎に、その電圧VPVmax を値に応じて補正をするようにしたもので、制御回路10の最大太陽電池電圧判別部16に、最大太陽電池電圧VPVmax を補正するための補正値D、上限値Vupper および下限値Vlower がそれぞれ設定されている。これ以外については実施の形態1と同様に、ある程度の日射量が得られる日中は山登りモード(Mode=1)で最大電力点MPPの追従制御が行われている(図3参照)。また、最大電力点追従制御と同時に低日射量状態の検知が行われており、低日射量状態が所定時間(tsun =H)継続されたことを検知した場合は、低日射モード(Mode=0)へ移行し、そして、山登りモードへの移行判定を随時行っている。
【0025】
以下、図7および図8を用いて最大太陽電池電圧VPVmax の補正に関わる動作を説明する。図7は実施の形態2に係る太陽光発電システムの最大太陽電池電圧判別部の動作を示すフローチャート、図8は実施の形態2での最大電力点追従制御における太陽電池電圧VPVの波形図である。
最大太陽電池電圧判別部16は、図7に示すように、t1(数十ms程度)毎にModeが「1」かどうかを判定し(S20)、Modeが「0」のとき、これ以降の動作を行うことなく終了するが、Modeが「1」のときは、そのときに電力変化量算出部12により算出された変化量dPOUT /dVPVの微分値を読み込んで、その微分値の符号が反転しているかどうかを判定する(S21)。その微分値の符号が反転していないときは動作を終了するが、微分値の符号が反転しているときは、そのときの太陽電池電圧VPVが最大電力点MPPを与える電圧値と判断して、その太陽電池電圧VPVを記憶部17に書き込む。この太陽電池電圧VPVを書き込む際に、記憶部17に設けられた5つのエリア全てに太陽電池電圧VPVを書き込んでいた場合は、最も古い太陽電池電圧VPVをクリアにして、新しい太陽電池電圧VPVを保存するようにしている(S22)。そして、記憶部17への書き込みが5つになる毎に、その中から最大値の太陽電池電圧VPVを選択して最大太陽電池電圧VPVmax’ とする(S23)。
【0026】
そして、その最大太陽電池電圧VPVmax’ に予め設定された補正値Dを加算し(S24)、その値VPVmax’+D が上限値Vupper より低いかどうかを判定する(S25)。VPVmax’+D が上限値Vupper より低いときは、下限値Vlower よりも高いかどうかを判定する(S27)。S25においてVPVmax’+D が上限値Vupper より高いと判断したときは、その上限値Vupper を最大太陽電池電圧VPVmax とし(S26)、目標太陽電池電圧算出部13に送出する。また、S27においてVPVmax’+ Dが下限値Vlower よりも低いと判断したときは、その下限値Vlower を最大太陽電池電圧VPVmax とし(S28)、目標太陽電池電圧算出部13に送出する。また、VPVmax’+ Dが上限値Vupper より低く(S25)、かつ、下限値Vlower よりも高いとき(S27)、つまり、上限値Vupper と下限値Vlower の間にあるときは、S24で算出したVPVmax’+D を最大太陽電池電圧VPVmax とし(S29)、目標太陽電池電圧算出部13に送出する。
【0027】
前記の最大太陽電池電圧VPVmax は、実施の形態1と同様に、低日射量状態が所定時間(tsun =H)継続されてMode=0に移行した際に、目標太陽電池電圧算出部13により目標太陽電池電圧VPVref として加算器14に設定される。これ以降の動作については、前述した実施の形態1と同じであるため割愛する。
【0028】
以上のように実施の形態2によれば、Mode=1(山登りモード)からMode=0(低日射モード)へ移行した際、山登りモード時に算出された補正の最大太陽電池電圧VPVmax を目標太陽電池電圧VPVref として設定するようにしたので、図8に示すように太陽電池電圧VPVの振動を収束させて、ほぼ太陽電池1の最大電力点MPP上となり、このため、低日射量時の電力取り出し効率が改善され、インバータ回路3の安定した動作を確保できる。
【0029】
なお、実施の形態2では、記憶部17に書き込まれた5つの太陽電池電圧VPVから最大太陽電池電圧VPVmax’ を選択した際に、一定の補正値Dを加算するようにしたが、補正値Dを乗算器11によって算出されるインバータ出力電力POUT に比例して変更するようにインバータ出力電力POUT の関数としても良い。
【0030】
実施の形態3.
実施の形態3は、図2で説明した制御回路10の最大太陽電池電圧判別部16が異なるだけであるため、最大太陽電池電圧判別部16についてのみ図9に示すフローチャートに基づいて説明をする。
実施の形態3における制御回路10の最大太陽電池電圧判別部16は、t1(数十ms程度)毎にModeが「1」かどうかを判定し(S30)、Modeが「0」のとき、これ以降の動作を行うことなく終了するが、Modeが「1」のときは、そのときに電力変化量算出部12によって算出された変化量dPOUT /dVPVを読み込んで、変化量dPOUT /dVPVの絶対値が所定値Eより小さいかどうかを判定する(S31)。絶対値が所定値Eより大きいときはS32に進むことなく動作を終了するが、絶対値が所定値Eより小さいときは、そのときの太陽電池電圧VPVが最大電力点MPPを与える電圧値とみなして、上限値Vu-bound より小さいかどうかを判定する(S32)。この上限値Vu-bound は、ノイズや日射急変等の外乱により、S31の判断だけでは太陽電池電圧VPVとして真の最大電力点MPPを与える太陽電池動作点電圧と異なる値がデータとして記憶部17に書き込まれる可能性を回避するために、最大電力点MPPを与えるとみなした太陽電池電圧VPVの上限を規定するものである。
【0031】
S32において、太陽電池電圧VPVが上限値Vu-bound より大きいと判断したときはS33に進むことなく動作を終了するが、太陽電池電圧VPVが上限値Vu-bound より小さいと判断したときは、記憶部17に書き込む。太陽電池電圧VPVを書き込む際に、記憶部17に設けられた5つのエリア全てに太陽電池電圧VPVを書き込んだ場合、最も古い太陽電池電圧VPVをクリアにして、新しい太陽電池電圧VPVを保存するようにしている(S22)。そして、記憶部17への書き込みが5つになる毎に、その中から例えば2番目に大きい太陽電池電圧VPVを選択し(S34)、選択した太陽電池電圧VPVに補正値を加算し(S35)、その加算値VPVmax’ を最大太陽電池電圧VPVmax として目標太陽電池電圧算出部13に送出する。
【0032】
以上のように実施の形態3によれば、Mode=1(山登りモード)からMode=0(低日射モード)へ移行した際、山登りモード時に算出された補正の最大太陽電池電圧VPVmax を目標太陽電池電圧VPVref として設定するようにしたので、図8に示すように太陽電池電圧VPVの振動を収束させて、ほぼ太陽電池1の最大電力点MPP上となり、このため、低日射量時の電力取り出し効率が改善され、インバータ回路3の安定した動作を確保できる。
【0033】
なお、実施の形態3では、太陽電池電圧VPVを記憶部17から選択する際、5つの太陽電池電圧VPVの中から2番目に大きい太陽電池電圧VPVを選択するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば3番目に大きい太陽電池電圧VPVを選択して補正値を加算するようにしても良い。また、選択した太陽電池電圧VPVに補正値を加算するようにしたが、補正値で減算するようにしても良い。
【0034】
また、補正した太陽電池電圧VPVが予め設定された上限値より大きいとき、上限値を最大太陽電池電圧VPVmax として用いるようにしても良いし、また、補正した太陽電池電圧VPVが予め設定された下限値を下回ったとき、下限値を最大太陽電池電圧VPVmax として用いるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1に係る太陽光発電システムの概略構成を示す回路図である。
【図2】実施の形態1に係る太陽光発電システムの制御回路の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る太陽光発電システムの目標太陽電池電圧算出部の動作を示すフローチャートである。
【図4】最大太陽電池電圧判別部の動作を示すフローチャートである。
【図5】山登りモードにおける太陽電池電圧VPVとインバータ出力電力POUT の相関を示す波形図である。
【図6】実施の形態1での最大電力点追従制御における太陽電池電圧VPVの波形図である。
【図7】実施の形態2に係る太陽光発電システムの最大太陽電池電圧判別部の動作を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態2での最大電力点追従制御における太陽電池電圧VPVの波形図である。
【図9】実施の形態3に係る太陽光発電システムの最大太陽電池電圧判別部の動作を示すフローチャートである。
【図10】太陽電池電圧と太陽電池電力の相関を示す図である。
【図11】従来の最大電力点追従制御における太陽電池電圧の波形図である。
【符号の説明】
【0036】
1 太陽電池、2 コンデンサ、3 インバータ回路、4 商用電力系統、5 太陽電池電圧検出部、6 インバータ出力電圧検出部、7 インバータ出力電流検出部、10 制御回路、11 乗算器、12 電力変化量算出部、13 目標太陽電池電圧算出部、14 加算器、15 PID制御部、16 最大太陽電池電圧判別部、17 記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池より発生する直流電力を交流電力に変換する電力変換器と、
太陽電池の電圧を検出する太陽電池電圧検出部と、
前記電力変換器の出力電圧を検出する出力電圧検出部と、
前記電力変換器の出力電流を検出する出力電流検出部と、
前記太陽電池電圧検出部、前記出力電圧検出部および前記出力電流検出部のそれぞれの検出結果に基づいて目標太陽電池電圧を算出する目標太陽電池電圧算出部と、
前記太陽電池電圧が目標太陽電池電圧とほぼ一致するように前記電力変換器の出力電流を制御し、太陽電池の電力を最大電力に推移させる電力制御部と、
前記出力電圧検出部と前記出力電流検出部とにより検出された出力電圧および出力電流の積による出力電力から太陽電池の最大電力を検知したとき、そのときの太陽電池電圧を前記太陽電池電圧検出部から読み込んで保持し、保持した最新の所定数の太陽電池電圧の中から最大値の太陽電池電圧を選択する最大太陽電池電圧判別部とを備え、
前記目標太陽電池電圧算出部は、太陽電池の電力が低下する低日射量状態を検知したときに、前記最大太陽電池電圧判別部により選択された最大値の太陽電池電圧を目標太陽電池電圧として前記電力制御部に設定することを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
前記目標太陽電池電圧算出部は、出力電力が予め設定された閾値より低いときに低日射量状態と判断することを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
前記目標太陽電池電圧算出部は、最大値の太陽電池電圧を目標太陽電池電圧としたときから少なくとも所定時間経過するとその目標太陽電池電圧を一旦クリアにし、再び、最大太陽電池電圧判別部により最大値の太陽電池電圧が選択されたときは、これを新たな目標太陽電池電圧として設定し直すことを特徴とする請求項1又は2記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
前記出力電圧検出部と前記出力電流検出部とにより検出された出力電圧および出力電流の積による出力電力を、前記太陽電池電圧検出部からの太陽電池電圧で微分して電力変化量を算出する電力変化量算出部を備え、
前記最大太陽電池電圧判別部は、その電力変化量算出部により算出された電力変化量の符号が反転したとき、そのときの太陽電池電圧が太陽電池の最大電力となる電圧値と判断してその太陽電池電圧を保持することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の太陽光発電システム。
【請求項5】
前記最大太陽電池電圧判別部は、前記電力変化量算出部により算出された電力変化量の符号が反転したとき、そのときの太陽電池電圧が太陽電池の最大電力となる電圧値と判断して、その太陽電池電圧が予め設定された上限値以下かどうかを判定し、上限値以下の太陽電池電圧を保持することを特徴とする請求項4記載の太陽光発電システム。
【請求項6】
前記最大太陽電池電圧判別部は、最大値の太陽電池電圧が予め設定された上限値より大きいとき、上限値を最大値の太陽電池電圧とすることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の太陽光発電システム。
【請求項7】
前記最大太陽電池電圧判別部は、最大値の太陽電池電圧が予め設定された下限値を下回るとき、下限値を最大値の太陽電池電圧とすることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の太陽光発電システム。
【請求項8】
前記最大太陽電池電圧判別部は、最大値の太陽電池電圧を予め設定された補正値により補正し、かつ、その補正した太陽電池電圧が予め設定された上限値を超えているかどうかを判定し、補正した太陽電池電圧が上限値を超えているときはその上限値を最大値の太陽電池電圧とし、また、補正した太陽電池電圧が上限値より小さいときは予め設定された下限値より大きいかどうかを判定し、補正した太陽電池電圧が下限値より小さいときはその下限値を最大値の太陽電池電圧とすることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の太陽光発電システム。
【請求項9】
太陽電池より発生する直流電力を交流電力に変換する電力変換器と、
太陽電池の電圧を検出する太陽電池電圧検出部と、
前記電力変換器の出力電圧を検出する出力電圧検出部と、
前記電力変換器の出力電流を検出する出力電流検出部と、
前記太陽電池電圧検出部、前記出力電圧検出部および前記出力電流検出部のそれぞれの検出結果に基づいて目標太陽電池電圧を算出する目標太陽電池電圧算出部と、
前記太陽電池電圧が目標太陽電池電圧とほぼ一致するように前記電力変換器の出力電流を制御し、太陽電池の電力を最大電力に推移させる電力制御部と、
前記出力電圧検出部と前記出力電流検出部とにより検出された出力電圧および出力電流の積による出力電力から太陽電池の最大電力を検知したとき、そのときの太陽電池電圧を前記太陽電池電圧検出部から読み込んで保持し、保持した太陽電池電圧が所定数になる毎に、その中で電圧値の大きい方から所定番目の太陽電池電圧を最大値として選択する最大太陽電池電圧判別部とを備え、
前記目標太陽電池電圧算出部は、太陽電池の電力が低下する低日射量状態を検知したときに、前記最大太陽電池電圧判別部により選択された太陽電池電圧を目標太陽電池電圧として前記電力制御部に設定することを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項10】
前記目標太陽電池電圧算出部は、出力電力が予め設定された閾値より低いときに低日射量状態と判断することを特徴とする請求項9記載の太陽光発電システム。
【請求項11】
前記目標太陽電池電圧算出部は、最大値とする太陽電池電圧を目標太陽電池電圧としたときから少なくとも所定時間経過するとその目標太陽電池電圧を一旦クリアにし、再び、最大太陽電池電圧判別部により最大値とする太陽電池電圧が選択されたときは、これを新たな目標太陽電池電圧として設定し直すことを特徴とする請求項9又は10記載の太陽光発電システム。
【請求項12】
前記出力電圧検出部と前記出力電流検出部とにより検出された出力電圧および出力電流の積による出力電力を、前記太陽電池電圧検出部からの太陽電池電圧で微分して電力変化量を算出する電力変化量算出部を備え、
前記最大太陽電池電圧判別部は、その電力変化量算出部により算出された電力変化量の絶対値が所定値より小さいとき、そのときの太陽電池電圧が太陽電池の最大電力となる電圧値と判断してその太陽電池電圧を保持することを特徴とする請求項9乃至11の何れかに記載の太陽光発電システム。
【請求項13】
前記最大太陽電池電圧判別部は、電力変化量の絶対値と所定値との比較から太陽電池電圧が太陽電池の最大電力となる電圧値と判断した際、その太陽電池電圧が上限値より小さいかどうかを判定し、上限値より小さいときはその太陽電池電圧を保持することを特徴とする請求項12記載の太陽光発電システム。
【請求項14】
前記最大太陽電池電圧判別部は、選択した太陽電池電圧を予め設定された補正値により補正して最大値の太陽電池電圧とすることを特徴とする請求項9乃至13の何れかに記載の太陽光発電システム。
【請求項15】
前記最大太陽電池電圧判別部は、補正した太陽電池電圧が予め設定された上限値より大きいとき、上限値を最大値の太陽電池電圧とすることを特徴とする請求項14記載の太陽光発電システム。
【請求項16】
前記最大太陽電池電圧判別部は、補正した太陽電池電圧が予め設定された下限値を下回るとき、下限値を最大値の太陽電池電圧とすることを特徴とする請求項14記載の太陽光発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−226870(P2008−226870A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58291(P2007−58291)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】