説明

太陽光集中高温炉ガス製造装置

【課題】太陽光集約装置では高効率の実用的な高温生成が困難であった。
【解決手段】太陽光をレーザー光に変換しこれを集約することにより水素生成ができる高温炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光レーザーエネルギー集中によるガス製造高温炉に関する
【特許文献1】特開2003−012569号公報、2002−255501号公報
【非特許文献1】レーザー学会Vol.32pp.48−53模擬太陽光励起のD型断面大口径マルチモードNdファイバーレーザー
【背景技術】
【0002】
従来の太陽高温炉は太陽光を多数の平板ミラーで反射し収束し太陽エネルギーを集めたり、小型曲面ミラーやフレネルレンズ等で収束した光で媒体を熱し,この媒体を集めることにより太陽エネルギーを集積する方式がとられていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら従来技術によれば、このときの実用的な太陽光の集光率は60%程度で、集光できる面積範囲は限定される。よって太陽集光により発生できる熱量は限界があり数百度程度の温度に制限される。そのためこれを用いたエネルギー変換効率は30%程度であり結局利用率は15%程度で低い。
【0004】
この原因は太陽光のインコヒーレント性により収束に限度があるため収束点にエネルギーが集中しないからである。また集光面積が限定されるのも同様の理由による。
【0005】
小型集光方式における熱媒体でエネルギーを集める場合も、集光性や熱損失により100m平方レベルの範囲である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明は、太陽励起レーザーを特徴とするコヒーレント光に太陽光をエネルギー変換する。この効率は極めて高くかつこのようなレーザー光は極小点に集約できるため独立性の高い高温部を形成できる。
【0007】
太陽励起レーザー光はコヒーレント性により通常の太陽光に比して長距離輸送が可能であるので1〜10km四方の広面積の太陽光を効率よく集めることができる。この結果この高温炉は温度が1000℃以上に達することができるため硫酸/ヨウ素サイクルによる水素生成や水蒸気の直接熱分解による水素生成が可能となる。このような水素ガス生成を特徴とするメタンやアンモニア生成装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、広大な面積の太陽光集光を可能とし1000℃級の実用的な大きさの高温炉を形成できる。この炉では水や硫酸を熱分解することができ、高温であるため太陽光エネルギーを高効率利用できる。これにより高効率で水素生成やメタンやアンモニア合成が再生可能エネルギーを用いて可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に示されるように,本発明は太陽光をレーザー励起に用い、太陽光エネルギーを高効率でコヒーレントレーザー光エネルギーに変換する。レーザー本体(1)に100〜4000太陽強度級(100〜4000SUN)の光収束強度をフレネルレンズ(2)を用い収束する。
【0010】
図2のようにこのレーザーを連結し、これにより発生するレーザー光を伝搬重畳する。図1のレーザーが連結管により連結し総数は10〜100000個ありこれはレーザーの本体(1)、太陽収束フレネルレンズ(2)、連結管(3)、及びそれにより連結したレーザー連結体とからなる。
【0011】
図3はレーザー連結体とそのレーザー連結体に接続した高温炉を示す。10〜10000本のレーザー連結体(8)からのそれぞれのレーザー光をレーザー集光高温炉(6)に集光するレーザー光収束部(7)よりなる。
【0012】
本発明により太陽光利用効率は向上し、広大な領域の太陽光を極小領域に集めることができこの結果、高温を生成する。
【0013】
当然このレーザーは太陽の動きにあわせて回転する軸回転機構が敷設されている。
【0014】
図4において高温熱炉を示す。10〜10000本のレーザー光は炉壁より熱絶縁支持された高温高圧部内部を照射する。この高温熱炉は熱絶縁隔壁(9)に囲まれた高温高圧部(16)よりなり、レーザー光は熱絶縁支持部(13)に設置された入射口より(16)の内部を照射する。この内部はレーザー光の高吸収物体でおおわれておりレーザー光を吸収する。この周辺は真空度の高い低気圧熱絶縁部(14)になっており熱散逸を防ぐ。高温高圧部に入射したレーザー光は直接または間接に水ジェット(10)を加熱し水素と酸素に熱分離する。この分解や分離を促すための補助ガス(12)や補助電極(15)を用いる場合もある。これら分解分離したガスはそれぞれの所定の分解ガス出口(11)より排出される。
【0015】
この時の化学反応は
O→H+ (1/2)O
【0016】
図5に硫酸分解−ヨウ素サイクルへの本方式の適応を示す。太陽光励起レーザーは分岐されレーザー光硫酸分解槽(17)に入射する。こごで熱分解により硫酸を水、二酸化硫黄、酸素に分解し、分解ガス還流パイプ(18)を通じて反応槽(19)に送る。反応槽では分解されたブンゼンからのヨウ素と水供給パイプ(20)より水とヨウ素の供給をうけ、これらを酸素と硫酸及びブンゼンに変換をする。このブンゼン分解より発生する水素を用い、アンモニアやメタンに合成部(29)で合成する。
【0017】
また図5における化学反応は
2HO+I+SO→2HI+HSO
2HI→H+ I
SO→ SO+HO+(1/2)O
となる。これはいわゆるS−Iサイクルである。これを利用すれば、直接熱分解に比べより低温での水素生成が可能である。
【0018】
両者とも最終的には水から水素を生成する。
【実施形態の効果】
【0019】
この実施形態によれば、太陽光は1km四方の領域の所定箇所で生成したレーザー光をすべて集約できる。太陽光のピーク時でのエネルギーはこのような領域では10Wにも達しレーザーの総合計パワーは高効率変換によりこの1/2に達する。この出力を集約して図3における炉内部に集めることにより1000℃をこす高温が達成できる。この出力規模はピーク時の電力換算で30万kWになり中型発電所の出力に相当する。
【他の実施形態】
【0020】
図1の実施形態では、方形シート型太陽励起レーザーであったがアクティブミラー型やディスク型、ジグザグスラブ型、ロッド型、ファイバー型やそれらの集合体や複合体でも同様である。このとき太陽光はこの形状に合わせて収束照射される。高反射率空胴内に太陽光を収束入射し、その内部におかれたレーザー媒体を照射励起する場合もある。
【0021】
この一形態であるファイバー型では連結管が不要である。また図5の実施形態では硫酸方式だけでなく臭化化合物を用いる場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0022】
水素は燃料電池自動車において石油にかわるエネルギー媒体になる。本方式では高温が達成可能であるので水素生成は高効率である。本発明では元のエネルギーは太陽エネルギーであるので安価である。このような水素はアンモニアやメタン、メタン等に変換することにより長距離輸送できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の太陽励起レーザー装置レーザー本体部を示す。
【図2】本発明の太陽励起レーザー装置レーザー連結部を示す。
【図3】本発明の太陽励起レーザー装置全体及びレーザー照射高温炉装置を示す。
【図4】本発明の太陽励起レーザー高温炉直接水素生成装置を示す
【図5】本発明の太陽励起レーザー高温炉SIサイクル方式水素生成装置を示す。
【符号の説明】
【0024】
(1) レーザー本体
(2) 太陽光集光フレネルレンズ
(3) レーザー光連結管
(4) 太陽光反射板/冷却板
(5) 散乱光反射集光補助ミラー
(6) レーザー集光高温炉
(7) レーザー光集光部
(8) レーザー連結体
(9) 熟隔離炉壁
(10) 水ジェット
(11) 分解ガス出口
(12) 補助ガス供給口
(13) 熱絶縁支持部
(14) 低圧熱絶縁部
(15) 分解補助電源
(16) 高温高圧部
(17) レーザー光硫酸分解槽
(18) 分解ガス還流パイプ HO+SO+(1/2)O
(19) 反応槽
(20) I+HO 供給パイプ
(21) 酸素排出パイプ
(22) 分離槽
(23) 硫酸還流パイプ
(24) 水供給パイプ
(25) ヨウ化水素分解槽
(26) 水素排出パイプ
(27) ヨウ素還流パイプ
(28) 吸収促進微粉末/反応促進微粉末供給器
(29) アンモニア合成部
(30) アンモニア排出パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光励起レーザーを特徴とするコヒーレントレーザー光集中による高温炉装置。
【請求項2】
前記高温炉を用いた水素生成とそれによるメタンガスやアンモニアガスの生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−319291(P2006−319291A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167433(P2005−167433)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(591114803)財団法人レーザー技術総合研究所 (36)
【Fターム(参考)】