説明

太陽光集光装置

【課題】 この発明は、焦点距離を短縮して小型化しうる太陽光集光装置の改良に関する。
【解決手段】一方の面の断面が略放物線形状からなり、該一方の面と対峙する他方の面の断面が直線または周辺部のみ略放物線形状から離れる方向に膨らんだ曲線からなる透明の物質で形成された透明体の前記一方の面に反射面形成層を設けて反射面とし、前記他方の面を太陽光の入射面とした集光器を設け、該入射面から入射した太陽光を上記反射面で反射させ、該反射光を前記入射面から屈折して外へ出射させることで、出射光の焦点距離を短縮してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、焦点距離を短縮して小型化しうる太陽光集光装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の反射板式太陽光集光装置は、特表平11−502602号に示すように略放物線断面の反射板15で太陽光を集光し、その焦点より後方に受光器20を配した構造(図8参照)が知られている。
しかし、受光面が太陽電池のように略平面形状である場合は、太陽入射光の進行方向に向かって反射面は受光面の後方に配置できないだけでなく、受光面の受光効率上さらに前方に配置しなければならない。
従って、反射板の大きさと、焦点距離の幾何学的関係から略焦点位置に配置された受光面までの距離が反射板の大きさの半分程度と比較的大きくなり、装置の厚さが直接集光式の太陽電池に比べて大きくなる、という問題があった。
これを防ぐには反射板の大きさを小さくし、小型のユニットを複数配置する方法が考えられるが、反射板の大きさを1m以下にしたとしても、受光器の高さが50cm程度は必要となり、これをさらに小さくするには小型の太陽電池セルを多数結線する必要が生じ、手間がかかり複雑化するため効率的でない。
一方、焦点距離を短くするためには、反射面に曲率の大きい略放物線断面を用いざるを得ず、一体に連続する略放物線断面の反射板ではその深さも長くなり大型化する。
因みに、前記のような焦点距離が反射板の直径の1/2程度の場合には、反射板の深さは焦点距離の1/2程度となり、反射板の大きさが1m程度の場合には、その深さは20cm以上となる。
これを短くするためには、図9に示すように反射板15を多数に分割し単位板16を略平面状に配置すればよい(特願2007−319010号参照)。
この場合、単位板16には光軸L10に近い部分と遠い部分の間に段差部17ができ、光軸から遠く光軸に対して法線の傾斜角の大きい反射面周辺部ほど段差部17は大きくなり、反射面から焦点に向かつて反射する反射光は前記法線の傾斜角の2倍傾斜するため、前記段差部17により一部がさえぎられてしまうという現象が生じる。
【特許文献1】特表平11−502602号
【特許文献1】特願2007−319010号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は上記実情に鑑みてなされたもので、その主たる課題は、反射面の大きさに対して焦点距離を短く設定することができる構造が簡単な太陽光集光装置を提供することにある。
また、この発明では、反射光の集光率の大きい平坦な分割略放物線断面の反射面を有する太陽光集光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
一方の面の断面が略放物線形状からなり、該一方の面と対峙する他方の面の断面が直線または周辺部のみ略放物線形状から離れる方向に膨らんだ曲線からなる透明体の前記一方の面に反射面を一体に設け、前記他方の面を太陽光の入射面とした集光器を設け、
入射面から入射した太陽光を上記反射面で反射させ、該反射光を前記入射面から屈折して外へ出射させることで、出射光の焦点距離を短縮してなることを特徴とする。
また、請求項2の発明では、
前記反射面が、略放物線形状の断面を複数に分割した単位面からなり、両端に配置された単位面の外端部間を結ぶ入射面の断面を直線状とし、
前記略放物線形状の断面で最下位となる単位面を除く各単位面を光軸と平行な面からなる段差部を介して前記最下位の単位面と並ぶように下方に変位して連結してなることを特徴とする。
更に、請求項3の発明では、
前記太陽光の入射面を平面とし、反射面の傾斜角を光軸から離れるに従って反射面の断面の略放物線形状の傾斜角より小さくしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明では、反射面で反射した太陽光が透明体の入射面から出射する際に透明な入射面によつて屈折するため、屈折のない場合に比べて大幅に焦点距離を短縮化でき、受光器を含めた集光装置の厚みないし高さを低減することができる。
これに伴い、太陽光集光装置の設置スペースやコストを節減できるだけでなく、反射面の形状精度が透明な物質により保持されて補強され、受光面への集光品質が安定し、地震や台風等の影響も少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この発明は、透明体の一面を入射面とし他面に反射面を設けて、入射した太陽光を反射させ、その反射光を更に入射面で屈曲させることで、焦点距離の短縮化または集光の効率化を実現した。
【実施例1】
【0007】
以下に、この発明の太陽光集光装置の好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。
太陽光集光装置が有する集光器1は、図1および図2に示すように、 一方の面2’の断面が略放物線形状からなり、該一方の面2’と対峙する他方の面3’の断面がほぼ直線形状からなる無垢の透明の物質で形成された透明体の前記一方の面2’に沿って反射面形成層4を設けて反射面5とし、前記他方の面3’を太陽光の入射面3とした構成からなっている。
【0008】
反射面形成層4は、透明体の一方の面2’に反射材料を接合ないしコーティングするものでもよい。
また、本実施例では入射面3をほぼ直線状としたが、周辺部のみ略放物線形状から離れる方向に膨らんだ曲線としてもよい(図示省略)。
【0009】
集光器1では、太陽光が平坦な入射面3から入射し、この入射光L1が略放物線断面の反射面5で反射され、この反射光L2を前記入射面3から出射(放射)させる。
この反射光L2は、光軸部L0を除いて反射面5の傾斜角θ1とそれに等しい角度θ2の和、すなわちθ1の2倍で傾斜するが、出射光L3は光の入射面3に対して更に屈曲傾斜して放出される。
【0010】
すなわち、反射光L2が屈折なしで到達する焦点P1よりも反射面5側に近接する方に偏って屈折(θ3)して焦点P2に到達する。
前記平坦な入射面3から焦点P2までの距離h2は、透明体の屈折率によって異なる。
【0011】
透明体がガラスやプラスチックなどの通常のレンズ材料からなる場合、屈折率は約1.7程度となり、反射だけでその後に屈折しない従来構造の距離h1に比べて約40%ほど短縮させた距離h2とすることができる。
従って、焦点の近傍に配置する受光器(図示せず)の距離も40%ほど短くなるので小型化できる。
【0012】
図1に示すように、上記反射面5が一連の略放物線断面からなる反射面で形成される場合には、透明体は凸レンズ状となり所定の厚みが必要となり、集光器1はそれに応じた形状、重量となる。
【0013】
ここで、焦点距離を短縮する必要のない場合には、同じ集光効果を得るために反射面5の傾斜角を光軸から離れるに従って反射面の断面の略放物線形状の傾斜角より小さくすることができる。
同じ面積の反射面5の場合には、反射面5の深さ、即ち透明体の厚さは従来の半分程度で済む。
そのため、例えば集光器1の長さ(または直径)が1m程度の場合には深さ乃至厚さは10cm程度で済む。
【0014】
上記実施例1では、反射面5の断面が連続した単一の略放物線形状からなり、入射面3が平坦面の場合を説明したが、この場合には反射面の周辺で反射光と屈折面の傾斜が大きくなるほど屈折の影響も大きくなる。
【0015】
焦点を光軸近傍の反射光と同じにするためには、周辺部の入射面を反射面の角度に近づけてふちを盛り上げるか、入射面を平面のままとし、反射面の周辺部を略放物線の傾斜角より小さくすればよい。
後者の場合には、反射面5の深さが浅くなった分、透明材料の厚さも薄くでき、材料費低減や軽量化の効果がある。
前者の場合には、反射面5の深さは変わらないが、入射面の縁を盛り上げる代わりに中央部を凹ませてもよく、後者と同様、透明材料の厚さを薄くすることができる。
【実施例2】
【0016】
図3と図4または図7に示す太陽光集光装置の集光器1は、図9の従来例2に準じた構成として、反射面5を複数の単位面6で形成し、各単位面6の断面形状が分割された略放物線を直線に配置しなおして多面体とした形状からなっている。
【0017】
この場合、各単位面6の断面の線分は均一な長さとしてもよいが、実施例2の集光器1では、各単位面6の断面の線分の長さD1、D2、D3・・を、反射面5の中央から端部側に向かって徐々に短くなるよう配置してあり、各単位面6の焦点における光束の断面積が、ほぼ受光器の受光面に等しくなるように設定することで、受光面の受光効率を向上させることができる。
その他の構成は前記実施例1と同様なので説明を省略する。
【実施例3】
【0018】
次に、図5および図6に示す実施例3の集光器1は、前記実施例2の反射面5と同様に両端に配置された単位面6の外端部間を結ぶ入射面3の断面を直線状としているが、厚さを薄肉状にしている。
【0019】
即ち、反射面5を構成する単位面6の最下位の単位面(説明の便宜上6’とする)を除く各単位面6を光軸と平行な面からなる段差部7を介して前記最下位の単位面6’とほぼ並ぶように下方位置に変位して連結してなり、略平盤状に配置している。
そして、前記段差部7の上端は入射面3より僅かな長さだけ離れた位置に設定することで、透明体の厚さを可及的に薄く且つ軽量化することができる。
【0020】
また同じ焦点距離であっても、図の右半分に比較のために示した屈折のない従来の反射板15を用いる場合に比べて、段差部7に当たって反射面として使用できないエリア(従来例の場合をE1、実施例3の場合をE2とする)を短縮化でき、反射光の集光効率を大幅に改善できることがわかる。
【0021】
図6では、受光器10の受光面11を平面とした場合を例示したが、この発明では受光面の形状は特に限定されない。
例えば、図7に示したように受光器10が円筒形状であって、受光面11が湾曲面となるものであっても、同様の効果を奏することができる。
【0022】
集光器1の反射面は、前述のように、球面状や断面円弧状であってもよいし、あるいは多面体であってもよい。
更に、単位面は、中央を円形とし、反射面の端部に向かって徐々に拡径する同心の環状体を多数隙間無く組み合わせて構成してもよい(図示せず)。
【0023】
また、反射面は、略球面に限らず、断面の略放物線をそのまま奥行き方向に延長した略断面円弧形状の半円筒形状であってもよい(図7参照)。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】太陽光集光装置の実施例1の集光器の断面を示す模式図である。
【図2】図1の集光器の焦点距離の短縮化を説明する図である。
【図3】実施例2の集光器の断面を示す模式図である。
【図4】図3の集光器の斜視図である。
【図5】左半分に実施例3の集光器の断面を示し、右半分に従来の反射板の断面を示した説明図である。
【図6】実施例3の集光器と受光器を示す斜視図である。
【図7】受光器の異なる実施例を示す斜視図である。
【図8】集光器が反射板からなる従来例1の断面図である。
【図9】反射板が分割された単位面からなる従来例2の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 集光器
2’ 透明体の一方の面
3 入射面
3’ 透明体の他方の面
4 反射面形成層
5 反射面
6 単位面
7 段差部
10 受光器
11 受光面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面の断面が略放物線形状からなり、該一方の面と対峙する他方の面の断面が直線または周辺部のみ略放物線形状から離れる方向に膨らんだ曲線からなる透明体の前記一方の面に反射面を一体に設け、前記他方の面を太陽光の入射面とした集光器を設け、
入射面から入射した太陽光を上記反射面で反射させ、該反射光を前記入射面から屈折して外へ出射させることで、出射光の焦点距離を短縮してなることを特徴とする太陽光集光装置。
【請求項2】
反射面が、略放物線形状の断面を複数に分割した単位面からなり、両端に配置された単位面の外端部間を結ぶ入射面の断面を直線状とし、
前記略放物線形状の断面で最下位となる単位面を除く各単位面を光軸と平行な面からなる段差部を介して前記最下位の単位面と並ぶように下方に変位して連結してなることを特徴とする請求項1に記載の太陽光集光装置。
【請求項3】
太陽光の入射面を平面とし、反射面の傾斜角を光軸から離れるに従って反射面の断面の略放物線形状の傾斜角より小さくしたことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽光集光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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