説明

太陽電池、太陽電池の製造方法

【課題】変換効率の高い太陽電池を提供する。
【解決手段】基板と、前記基板上に形成された下部電極層と、前記下部電極層上に形成された半導体層と、前記半導体層上に形成され、前記下部電極層と電気的に接続される上部電極層と、前記上部電極層上に形成された前記上部電極層よりも電気抵抗率が低い材料で構成された補助配線と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、使用される半導体によって様々な種類の構成が提案されている。近年では、製造工程が簡単で、高い変換効率が期待できるCIGS型の太陽電池が注目されている。CIGS型の太陽電池は、例えば、基板上に形成された第1電極膜と、第1電極膜上に形成された化合物半導体(銅−インジウム−ガリウム−セレン化合物)層を含む薄膜と、当該薄膜上に形成された第2電極膜と、で構成されている。そして、薄膜の一部が除去された溝内に第2電極膜が形成されており、第1電極膜と第2電極膜とが電気的に接続されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−319686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した太陽電池では、複数の小型セルを直列に接続することにより、モジュール化して起電力を高めている。ところが、このモジュール化に伴い、電流経路が増加(直列抵抗の増加)するため、導電経路を流れる電流が損失してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる太陽電池は、基板と、前記基板上に形成された下部電極層と、前記下部電極層上に形成された半導体層と、前記半導体層上に形成され、前記下部電極層と電気的に接続される上部電極層と、前記上部電極層上に形成された前記上部電極層よりも電気抵抗率が低い材料で構成された補助配線と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、上部電極層上に導電性を有する補助配線が設けられる。補助配線は、上部電極層よりも電気抵抗率が低い材料で構成された導電配線である。このように、例えば、上部電極層の電気抵抗率が比較的高い場合であっても、電気抵抗率の低い材料で構成された補助配線を組み合わせて形成することにより、集電効果を高めることができるとともに、下部電極層と上部電極層との直列抵抗を下げることができる。これにより、変換効率を向上させることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる太陽電池の前記補助配線は、導電性ナノ材料で形成されたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、微細な補助配線により、下部電極層と上部電極層との直列抵抗を下げることができる。これにより、変換効率を向上させることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる太陽電池では、前記補助配線は、前記上部電極層上に受光空間を有するように形成されたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、上部電極層上には受光空間を有しつつ、補助配線が形成される。この場合、例えば、上部電極層上に、格子状、或いはライン状に補助配線を形成すればよい。これにより、受光面積を確保しつつ、下部電極層と上部電極層との直列抵抗を下げることができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる太陽電池の前記補助配線は、導電性金属ナノワイヤーで形成されたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、上部電極層上には、拡大視においてワイヤー配線が重なり合って結合された補助配線が形成される。これにより、ワイヤー配線の結合間には、隙間が形成される。すなわち、上部電極層上には、受光空間が形成される。従って、受光効率を確保しつつ、下部電極層と上部電極層との直列抵抗を下げることができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる太陽電池の前記補助配線は、数珠状に結合した導電性ナノ粒子で形成されたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、上部電極層上には、拡大視においてナノ粒子が数珠状に結合された補助配線が形成される。これにより、ナノ粒子間には、隙間が形成される。すなわち、上部電極層上には、受光空間が形成される。従って、受光効率を確保しつつ、下部電極層と上部電極層との直列抵抗を下げることができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかる太陽電池の前記補助配線は、第1補助配線と、第2補助配線と、で構成され、前記第1補助配線は、導電性金属ナノ材料または数珠状に結合した導電性ナノ粒子によって網状またはライン状に形成され、前記第2補助配線は、導電性ナノ材料によって格子状、網状またはライン状に形成されたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、網状またはライン状に形成された第1補助配線と、格子状、網状またはライン状に形成された第2補助配線とが形成される。通常、太陽電池では、上部電極層表面から受光するため、上部電極層受光面積を確保する必要がある。一方、上部電極層と下部電極層との抵抗を下げる必要がある。このため、上部電極層上に配線等を設ける場合には、受光面積の確保に対しては、できるだけ幅が狭い配線が必要となる。さらに、低抵抗化を実現するためには、幅の狭い配線に対して断面積を大きく、すなわち、配線の厚みを厚くする必要がある。このように、高アスペクト比を有する配線が必要となるが、現実的に加工形成することは困難である。そこで、本発明では、微細配線を形成することにより、上記課題を解決することができる。すなわち、第1補助配線が、網状またはライン状に形成されるとともに、第2補助配線が、格子状、網状またはライン状に形成されることにより、上部電極層における受光面積を確保することができる。また、第1補助配線及び第2補助配線の組み合わせにより補助配線全体としての配線厚を確保し、下部電極層と上部電極層との直列抵抗を下げることができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例にかかる太陽電池では、前記下部電極層と前記上部電極層とが電気的に接続される部分に窪部が設けられ、前記窪部に前記補助配線が設けられたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、窪部にも補助配線が形成されるため、上部電極層と下部電極層との電気的接続性を良好にすることができる。
【0020】
[適用例8]上記適用例にかかる太陽電池の前記窪部は、前記補助配線によって埋め込まれたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、上部電極層と下部電極層との接続強度を向上させ、さらに、下部電極層と上部電極層との直列抵抗を下げることができる。
【0022】
[適用例9]本適用例にかかる太陽電池の製造方法は、基板上に下部電極層を形成する下部電極層形成工程と、前記下部電極層上に半導体層を形成する半導体層形成工程と、前記半導体層上に上部電極層を形成する上部電極層形成工程と、前記上部電極層上に、前記上部電極層よりも電気抵抗率が低い材料で構成された補助配線を形成する補助配線形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、上部電極層上に導電性を有する補助配線が設けられる。補助配線は、上部電極層よりも電気抵抗率が低い材料で構成された導電配線である。このように、例えば、上部電極層の電気抵抗率が比較的高い場合であっても、電気抵抗率の低い材料で構成された補助配線を組み合わせて形成することにより、集電効果を高めることができるとともに、下部電極層と上部電極層との直列抵抗を下げることができる。これにより、変換効率を向上させることができる。
【0024】
[適用例10]上記適用例にかかる太陽電池の製造方法の前記補助配線形成工程では、前記上部電極層上に、前記補助配線となる補助配線材料を含む液体材料を塗布し、塗布された前記液体材料を固化して前記補助配線を形成することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、印刷法やインクジェット法等を用いることにより、容易に補助配線を形成することができる。
【0026】
[適用例11]上記適用例にかかる太陽電池の製造方法の前記補助配線形成工程では、前記上部電極層上に受光空間を有するように前記補助配線を形成することを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、上部電極層上には受光空間を有しつつ、補助配線が形成される。この場合、例えば、上部電極層上に、格子状、或いはライン状に補助配線を形成すればよい。これにより、受光効率を確保しつつ、下部電極層と上部電極層との直列抵抗を下げることができる。
【0028】
[適用例12]上記適用例にかかる太陽電池の製造方法の前記補助配線形成工程は、前記上部電極層上に第1補助配線を形成する第1補助配線形成工程と、前記上部電極層上及び前記第1補助配線上に第2補助配線を形成する第2補助配線形成工程と、を含み、前記第1補助配線形成工程では、前記第1補助配線となる導電性金属ナノワイヤーまたは導電性ナノ材料を含む液体材料を前記上部電極層上に塗布し、塗布された前記液体材料を固化して網状またはライン状の前記第1補助配線を形成し、前記第2補助配線形成工程では、前記補助配線となる導電性金属ナノワイヤーまたは導電性ナノ材料を含む液体材料を前記第1補助配線上に塗布し、塗布された前記液体材料を固化して格子状、網状またはライン状の前記第2補助配線を形成することを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、第1補助配線が、網状またはライン状に形成されるとともに、第2補助配線が、格子状、網状またはライン状に形成されることにより、上部電極層における受光面積を確保することができる。また、第1補助配線及び第2補助配線の組み合わせにより補助配線全体としての配線厚が稼げるため、下部電極層と上部電極層との直列抵抗を下げることができる。
【0030】
[適用例13]上記適用例にかかる太陽電池の製造方法の前記補助配線形成工程では、前記下部電極層と前記上部電極層とが電気的に接続する部分に形成された窪部に、前記補助配線を形成することを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、窪部にも補助配線が形成されるため、上部電極層と下部電極層との電気的接続性を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態にかかる太陽電池の構成を示し、(a)は断面図、(b),(c)は一部拡大した平面図。
【図2】第1実施形態にかかる太陽電池を一部拡大した平面図。
【図3】第1実施形態にかかる太陽電池の製造方法を示す工程図。
【図4】第1実施形態にかかる太陽電池の製造方法を示す工程図。
【図5】第2実施形態にかかる太陽電池の構成を示し、(a)は断面図、(b)は一部拡大した平面図。
【図6】第2実施形態にかかる太陽電池の製造方法を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1実施形態]
以下、本発明を具体化した第1実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮小を異ならせて図示している。
【0034】
(太陽電池の構成)
まず、太陽電池の構成について説明する。なお、本実施形態では、CIGS型の太陽電池の構成について説明する。図1は、本実施形態にかかる太陽電池の構成を示し、同図(a)は断面図であり、同図(b),(c)は一部拡大した平面図である。
【0035】
図1(a)に示すように、太陽電池1は、基板10と、基板10上に形成された下地層11と、下地層11上に形成された下部電極層12と、下部電極層12上に形成された半導体層13と、半導体層13上に形成された上部電極層14と、上部電極層14上に形成された補助配線15を含む複数のセル40の集合体で構成されている。
【0036】
下部電極層12は、第1分割溝31によってセル40単位で分割され、隣接するセル40間を跨ぐように形成されている。半導体層13は、第2分割溝32によってセル40単位で分割され、上部電極層14及び補助配線15は、第3分割溝33によってセル40単位で分割されている。そして、下部電極層12と上部電極層14とが、第2分割溝32を介して接続されている。これにより、各セル40の上部電極層14が、隣接する他のセル40の下部電極層12と接続されることによって、各セル40が直列接続される。このように、直列接続されたセル40の数を適宜設定することにより、太陽電池1における所望の電圧を任意に設計変更することが可能となる。
【0037】
基板10は、少なくとも下部電極層12側の表面が絶縁性を有した基板である。具体的には、例えば、ガラス(青板ガラス等)基板、ステンレス基板、ポリイミド基板、カーボン基板等を用いることができる。
【0038】
下地層11は、基板10上に形成された絶縁性を有する層であり、例えば、SiO2(酸化珪素)を主成分とする絶縁層やフッ化鉄層を設けることができる。当該下地層11は、絶縁性を有するとともに、基板10と基板10上に形成された下部電極層12との密着性を確保する機能も有している。なお、基板10自体に上記特性を有している場合には、下地層11を省略することができる。
【0039】
下部電極層12は、下地層11上に形成された導電性を有する層であり、例えば、モリブデン(Mo)を用いることができる。
【0040】
半導体層13は、第1半導体層13aと第2半導体層13bとで構成されている。第1半導体層13aは、下部電極層12上に形成され、銅(Cu)・インジウム(In)・ガリウム(Ga)・セレン(Se)を含むp型半導体層(CIGS半導体層)である。
【0041】
第2半導体層13bは、第1半導体層13a上に形成され、硫化カドミウム(CdS)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化インジウム(InS)等のn型半導体層である。
【0042】
上部電極層14は、第2半導体層13b上に形成された透明性を有する電極層であり、例えば、ZnOAl等の透明電極体(TCO:Transparent Conducting Oxides)、AZO等である。
【0043】
補助配線15は、上部電極層14上に形成された導電性を有する配線膜であり、上部電極層14よりも電気抵抗率が低い材料で形成されている。集電効果を高めるとともに、下部電極層12と上部電極層14との直列抵抗を低減させるためである。さらに、補助配線15を微細配線化するため導電性ナノ材料によって形成される。また、上部電極層14から半導体層13への光の透過率を確保するため、すなわち、上部電極層14における受光面積を確保するため、上部電極層14上に受光空間44を有するように補助配線15が形成されている。本実施形態では、例えば、図1(b)に示すように、上部電極層14上に受光空間44を有するように格子状の補助配線15aが形成されている。また、図1(c)に示すように、上部電極層14上に受光空間44を有するようにライン状の補助配線15bであってもよい。上記に示した補助配線15a,15bは、例えば、銀、銀−パラジウム合金、銀−ニッケル合金、銀−銅合金等の導電性ナノ材料を用いて形成されている。
【0044】
また、他の例としては、銀、或いはチタン等の導電性金属ナノワイヤーを用いて補助配線15cを形成することもできる。図2(d)に示すように、微細ワイヤー同士が重なり合って結合され、上部電極層14上に導電パスが形成される。また、導電パス間には受光空間44が形成され、これにより、上部電極層14における受光面積を確保することができる。さらに、図2(e)に示すように、銀、チタン、あるいは銀−パラジウム合金等の導電性ナノ粒子を数珠状に結合した補助配線15dであってもよい。ナノ粒子同士が結合されることにより、上部電極層14上に導電パスが形成される。また、導電パス間には受光空間44が形成され、これにより、上部電極層14における受光面積を確保することができる。なお、図2(d)の補助配線15cおよび、図2(e)の補助配線15dは図面に示されたようにすべてが接続された網状の補助配線であることが望ましいが、一部が分断された状態の網状や分断されたライン状の補助配線であっても上部電極層14を経由した導電パスが形成されているので、これらの補助配線により集電効果を高めることができる。また図2(d)の補助配線15cおよび、図2(e)の補助配線15dは図1(b)のような格子状や図1(c)のライン状に形成することもできる。
【0045】
上記説明した補助配線15は、上部電極層14上の平坦部44aに加え、上部電極層14と下部電極層12とが接合される接合部分に形成された上部電極層14上の窪部44bにも形成される。下部電極層12と上部電極層14との直列抵抗を、さらに、低減させるためである。この場合、窪部44bを全て埋めるように補助配線15を形成することが好ましい。下部電極層12と上部電極層14との直列抵抗の低減に加え、下部電極層12と上部電極層14との接続性を向上させるためである。本実施形態では、補助配線15の表面が平坦面となるように、上部電極層14の平坦部44a及び窪部44b内に補助配線15が形成されている。
【0046】
上記のように構成されたCIGS型の太陽電池1に、太陽光等の光が入射されると、半導体層13内で電子(−)と正孔(+)の対が発生し、電子(−)と正孔(+)は、p型半導体層(第1半導体層13a)とn型半導体層(第2半導体層13b)との接合面で、電子(−)がn型半導体層に集まり、正孔(+)がp型半導体層に集まる。その結果、n型半導体層とp型半導体層との間に起電力が発生する。この状態で、下部電極層12と上部電極層14に外部導電線を接続することにより、電流を外部に取り出すことができる。このとき、上部電極層14上には、導電性を有する補助配線15が設けられているため、集電効果を高めることができる。そして、補助配線15は、下部電極層12と上部電極層14とが接合される部分にも形成されているので、下部電極層12と上部電極層14との直列抵抗を下げ、変換効率を高めることができる。
【0047】
(太陽電池の製造方法)
次に、太陽電池の製造方法について説明する。なお、本実施形態では、CIGS型の太陽電池の製造方法について説明する。図3及び図4は、本実施形態にかかる太陽電池の製造方法を示す工程図である。
【0048】
図3(a)の下地層形成工程では、ステンレスの基板10の一方面にフッ化鉄からなる下地層11を形成する。当該下地層11は、熱処理によって、ステンレスの基板10とフッ素ガスを反応させることにより形成することができる。なお、基板10自体に上記下地層効果を有している場合には、下地層形成工程を省略することができる。
【0049】
図3(b)の下部電極層形成工程では、下地層11上に下部電極層12を形成する。具体的には、スパッタ法によって下部電極層12となるモリブデン(Mo)層を形成する。
【0050】
図3(c)の第1分割工程では、下部電極層12の一部をレーザー光照射等によって除去し、下部電極層12を厚み方向に分割する。レーザー光照射等によって下部電極層12が除去された部分には、第1分割溝31が形成される。
【0051】
図3(d)の半導体層形成工程のうちの第1半導体層形成工程では、まず、下部電極層12上および第1分割溝31内に、銅(Cu)、インジウム(In)およびガリウム(Ga)をスパッタ法等で付着させ、プリカーサーを形成する。そして、当該プリカーサーをセレン化水素雰囲気で加熱(セレン化)して、第1半導体層13aとなるp型半導体層(CIGS)を形成する。
【0052】
図3(e)の半導体層形成工程のうちの第2半導体層形成工程では、第1半導体層13a上にCdS、ZnOやInS等により第2半導体層13bとなるn型半導体層を形成する。第2半導体層13bは、スパッタ法等によって形成することができる。このようにして、第1半導体層13aと第2半導体層13bとからなる半導体層13が形成される。
【0053】
図4(f)の第2分割工程では、レーザー光照射や金属針等により、半導体層13の一部を除去し、半導体層13を厚み方向に分割する。レーザー光照射等によって半導体層13が除去された部分には、第2分割溝32が形成される。
【0054】
図4(g)の上部電極層形成工程では、半導体層13上及び第2分割溝32に上部電極層14を形成する。例えば、上部電極層14となるZnOAl等の透明電極(TCO)をスパッタ法等で形成する。ここで、上部電極層14には、半導体層13上に形成された部分の平坦部44aと、第2分割溝32に形成された部分の窪部44bが形成される。
【0055】
図4(h)の補助配線形成工程では、上部電極層14上に、上部電極層14よりも電気抵抗率が低い補助配線15を形成する。また、上部電極層14の平坦部44a及び窪部44bに補助配線15を形成する。具体的には、補助配線15となる導電性ナノ材料を含む液体材料を、印刷法やインクジェット法等を用いて、窪部44bを含む上部電極層14上に塗布し、塗布された液体材料を焼成処理して固化し、補助配線15を形成する。導電性ナノ材料としては、例えば、銀、銀−パラジウム合金、銀−ニッケル合金、銀−銅合金のナノ粒子を含む材料を用いることができる。これにより、平坦な表面を有する補助配線15が形成される。
【0056】
また、補助配線形成工程では、図1(b),(c)および図2(d),(e)に示したように、上部電極層14上に受光空間44を有するように、格子状、あるいはライン状の補助配線15を形成する。なお、図2(d),(e)に示したように、導電性金属ナノワイヤーや導電性ナノ粒子が数珠状に結合したナノ材料を用いて、補助配線15を形成することもできる。
【0057】
図4(i)の第3分割工程では、レーザー光照射や金属針等により、積層された補助配線15、上部電極層14及び半導体層13の一部を除去し、これらの部材を厚み方向に分割する。レーザー光照射等によって補助配線15、上部電極層14及び半導体層13が除去された部分には、第3分割溝33が形成され、一のセル40が形成される。
【0058】
上記の工程を経ることにより、複数のセル40が直列接続されたCIGS型の太陽電池1が形成される。
【0059】
従って、上記の第1実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0060】
(1)上部電極層14上に、上部電極層14よりも電気抵抗率が低い補助配線15を形成することにより、上部電極層14側への集電効率を高めることができるとともに、下部電極層12と上部電極層14との直列抵抗を下げ、変換効率を向上させることができる。
【0061】
(2)上部電極層14上に受光空間44を有すように、例えば、ライン状、網状或いは格子状の補助配線15を形成した。これにより、受光効率を確保することができる。
【0062】
[第2実施形態]
以下、本発明を具体化した第2実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮小を異ならせて図示している。
【0063】
(太陽電池の構成)
まず、太陽電池の構成について説明する。なお、本実施形態では、CIGS型の太陽電池の構成について説明する。図5は、本実施形態にかかる太陽電池の構成を示し、同図(a)は断面図であり、(b)は一部拡大した平面図である。
【0064】
図5(a)に示すように、太陽電池1aは、基板10と、基板10上に形成された下地層11と、下地層11上に形成された下部電極層12と、下部電極層12上に形成された半導体層13と、半導体層13上に形成された上部電極層14と、上部電極層14上に形成された第1補助配線16aと、第2補助配線16bを含む複数のセル40の集合体で構成されている。
【0065】
下部電極層12は、第1分割溝31によってセル40単位で分割され、隣接するセル40間を跨ぐように形成されている。半導体層13は、第2分割溝32によってセル40単位で分割され、上部電極層14及び第1、第2補助配線16a,16bは、第3分割溝33によってセル40単位で分割されている。そして、下部電極層12と上部電極層14とが、第2分割溝32を介して接続されている。これにより、各セル40の上部電極層14が、隣接する他のセル40の下部電極層12と接続されることによって、各セル40が直列接続される。このように、直列接続されたセル40の数を適宜設定することにより、太陽電池1aにおける所望の電圧を任意に設計変更することが可能となる。
【0066】
基板10は、少なくとも下部電極層12側の表面が絶縁性を有した基板である。具体的には、例えば、ガラス(青板ガラス等)基板、ステンレス基板、ポリイミド基板、カーボン基板等を用いることができる。
【0067】
下地層11は、基板10上に形成された絶縁性を有する層であり、例えば、SiO2(酸化珪素)を主成分とする絶縁層やフッ化鉄層を設けることができる。当該下地層11は、絶縁性を有するとともに、基板10と基板10上に形成された下部電極層12との密着性を確保する機能も有している。なお、基板10自体に上記特性を有している場合には、下地層11を省略することができる。
【0068】
下部電極層12は、下地層11上に形成された導電性を有する層であり、例えば、モリブデン(Mo)を用いることができる。
【0069】
半導体層13は、第1半導体層13aと第2半導体層13bとで構成されている。第1半導体層13aは、下部電極層12上に形成され、銅(Cu)・インジウム(In)・ガリウム(Ga)・セレン(Se)を含むp型半導体層(CIGS半導体層)である。
【0070】
第2半導体層13bは、第1半導体層13a上に形成され、硫化カドミウム(CdS)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化インジウム(InS)等のn型半導体層である。
【0071】
上部電極層14は、第2半導体層13b上に形成された透明性を有する電極層であり、例えば、ZnOAl等の透明電極体(TCO:Transparent Conducting Oxides)、AZO等である。
【0072】
第1補助配線16aは、上部電極層14上に形成された導電性を有する網状或いはライン状の配線膜あり、上部電極層14よりも電気抵抗率が低い材料で形成されている。具体的には、導電性ナノ材料、例えば、銀、或いはチタン等の導電性金属ナノワイヤーや、銀、チタン、あるいは銀−パラジウム合金等の導電性ナノ粒子を数珠状に結合したナノ材料等で形成される。このように、導電性金属ナノワイヤー等を用いることにより、図5(b)に示すように、上部電極層14上に導電パスが形成される。
【0073】
第2補助配線16bは、上部電極層14上及び第1補助配線16a上に形成された導電性を有する配線膜であり、上部電極層14よりも電気抵抗率が低い材料で形成されている。具体的には、導電性ナノ材料、例えば、銀、銀−パラジウム合金、銀−ニッケル合金、銀−銅合金等の導電性ナノ材料等で形成される。そして、例えば、図5(b)に示すように、上部電極層14上に受光空間44を有するように格子状、網状或いはライン状の第2補助配線16bが形成される。このとき、図5(b)に示すように、第1補助配線16aのすべてが第2補助配線16bに接続されて、電気抵抗率の低い材料で構成された導電パスを形成することが望ましいが、接続されていない第1補助配線16aがあっても上部電極層14を経由して電気的には第2補助配線16bと導通されているので、第1補助配線16aと第2補助配線16bにより集電効果を高めることができる。また、第1補助配線16aと第2補助配線16bにより形成される導電パス間には受光空間44が形成され、これにより、上部電極層14上における受光面積を確保することができる。
【0074】
上記説明した第1、第2補助配線16a,16bは、上部電極層14上の平坦部44aに加え、上部電極層14と下部電極層12とが接合される接合部分に形成された上部電極層14上の窪部44bにも形成される。下部電極層12と上部電極層14との直列抵抗を、さらに、低減させるためである。この場合、窪部44bを全て埋めるように第2補助配線16bを形成することが好ましい。下部電極層12と上部電極層14との直列抵抗の低減に加え、下部電極層12と上部電極層14との接続性を向上させるためである。本実施形態では、第2補助配線16bの表面が平坦面となるように、上部電極層14の平坦部44a及び窪部44b内に第2補助配線16bが形成されている。
【0075】
上記のように構成されたCIGS型の太陽電池1aに、太陽光等の光が入射されると、半導体層13内で電子(−)と正孔(+)の対が発生し、電子(−)と正孔(+)は、p型半導体層(第1半導体層13a)とn型半導体層(第2半導体層13b)との接合面で、電子(−)がn型半導体層に集まり、正孔(+)がp型半導体層に集まる。その結果、n型半導体層とp型半導体層との間に起電力が発生する。この状態で、下部電極層12と上部電極層14に外部導電線を接続することにより、電流を外部に取り出すことができる。このとき、上部電極層14上には、第1、第2補助配線16a,16bが設けられているため、集電効果を高めることができる。そして、第1、第2補助配線16a,16bは、下部電極層12と上部電極層14とが接合される部分にも形成されており、上部電極層14における受光面積を確保することができるとともに、第1補助配線16aと第2補助配線16bとの組み合わせにより全体としての配線厚を確保し、下部電極層12と上部電極層14との直列抵抗を下げることができる。これにより、太陽電池1aの変換効率を高めることができる。
【0076】
(太陽電池の製造方法)
次に、太陽電池の製造方法について説明する。なお、本実施形態では、CIGS型の太陽電池の製造方法について説明する。図6は、本実施形態にかかる太陽電池の製造方法を示す工程図である。なお、本実施形態にかかる太陽電池の製造方法の下地層形成工程、下部電極層形成工程、第1分割工程、半導体層形成工程、第2分割工程及び上部電極層形成工程は、第1実施形態における図3、4(a)〜(g)と同様なので、説明を省略し、上部電極層形成工程以降の工程について説明する。
【0077】
図6(a)の第1補助配線形成工程では、上部電極層14上に、上部電極層14よりも電気抵抗率が低い第1補助配線16aを形成する。また、上部電極層14の平坦部44a及び窪部44bに第1補助配線16aを形成する。具体的には、第1補助配線16aとなる導電性金属ナノワイヤーや導電性ナノ粒子が数珠状に結合したナノ材料を含む液体材料を、印刷法やインクジェット法等を用いて、窪部44bを含む上部電極層14上に塗布し、塗布された液体材料を焼成処理して固化する。これにより、第1補助配線16aが形成される。
【0078】
図6(b)の第2補助配線形成工程では、上部電極層14上及び第1補助配線16a上に、上部電極層14よりも電気抵抗率が低い第2補助配線16bを形成する。また、上部電極層14の平坦部44a及び窪部44bに第2補助配線16bを形成する。具体的には、第2補助配線16bとなる導電性ナノ材料を含む液体材料を、印刷法やインクジェット法等を用いて、窪部44bを含む上部電極層14上及び第1補助配線16a上に塗布し、塗布された液体材料を焼成処理して固化することにより、第2補助配線16bを形成する。さらに、第2補助配線形成工程では、図5(b)に示すように、上部電極層14上に受光空間44を有するように、格子状、網状あるいはライン状の第2補助配線16bを形成する。このように、第1補助配線16aと第2補助配線16bを形成することにより、上部電極層14上には、電気抵抗率が低い材料で形成された導電パスが形成される。また、導電パス間には、ナノワイヤー等が形成されない受光空間44が形成される。
【0079】
図6(c)の第3分割工程では、レーザー光照射や金属針等により、積層された第1補助配線16a、第2補助配線16b、上部電極層14及び半導体層13の一部を除去し、これらの部材を厚み方向に分割する。レーザー光照射等によって第1補助配線16a、第2補助配線16b、上部電極層14及び半導体層13が除去された部分には、第3分割溝33が形成され、一のセル40が形成される。
【0080】
上記の工程を経ることより、複数のセル40が直列接続されたCIGS型の太陽電池1aが形成される。
【0081】
従って、上記の第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加え、以下に示す効果がある。
【0082】
上部電極層14上に、導電性金属ナノワイヤーや導電性ナノ粒子が数珠状に結合したナノ材料で形成された第1補助配線16aと、格子状、網状或いはライン状に形成された第2補助配線16bとを形成した。このように微細配線であっても、第1補助配線16aと第2補助配線16bとを組み合わせて形成することにより、配線量を稼げるため、容易に下部電極層12と上部電極層14との直列抵抗を下げることができる。また、微細の第2補助配線16bを格子状、網状或いはライン状に形成することにより、上部電極層14に受光空間44が形成されるので、受光効率を確保することができる。
【0083】
なお、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0084】
(変形例1)第2実施形態では、第1補助配線16aを窪部44bにも形成したが、平坦部44aのみに形成し、窪部44bの形成を省略してもよい。このようにしても、第1補助配線16a上に形成された第2補助配線16bによって導電性が確保されるため、下部電極層12と上部電極層14との抵抗を下げることができる。
【0085】
(変形例2)上記実施形態では、上部電極層14側から光を受光するCIGS型の太陽電池1,1aの構成等について説明したが、上部電極層14側からに加え、基板10側からも受光可能なCIGS型の太陽電池1,1aであってもよい。なお、この場合において、基板10は、透明性を有する基板を用いる。例えば、ガラス基板、PET、有機系透明基板等である。透明性を有する基板を用いることにより、基板10面からの受光を可能とすることができる。また、下部電極層12は、透明性を有する電極層とし、例えば、ZnOAl等の透明電極(TCO:Transparent Conducting Oxides)層とする。透明性を有する電極層を形成することにより、基板10側からの入射した光を半導体層13に向けて透過させるためである。このような構成であっても、上記同様の効果を得ることができる。
【0086】
(変形例3)上記実施形態では、補助配線15、第1、第2補助配線16a,16bをCIGS型の太陽電池に適用して説明したが、これに限定されない。例えば、CIS(銅−インジウム−セレン化合物)型太陽電池や薄膜シリコン型の太陽電池の構造に適用してもよい。このようにしても、電極層間の抵抗を下げることができる。
【符号の説明】
【0087】
1,1a…太陽電池、10…基板、11…下地層、12…下部電極層、13…半導体層、13a…第1半導体層、13b…第2半導体層、14…上部電極層、15,15a,15b,15c,15d…補助配線、16a…第1補助配線、16b…第2補助配線、31…第1分割溝、32…第2分割溝、33…第3分割溝、40…セル、44…受光空間、44a…平坦部、44b…窪部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された下部電極層と、
前記下部電極層上に形成された半導体層と、
前記半導体層上に形成され、前記下部電極層と電気的に接続される上部電極層と、
前記上部電極層上に形成された前記上部電極層よりも電気抵抗率が低い材料で構成された補助配線と、を備えたことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池において、
前記補助配線は、導電性ナノ材料で形成されたことを特徴とする太陽電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載の太陽電池において、
前記補助配線は、前記上部電極層上に受光空間を有するように形成されたことを特徴とする太陽電池。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池において、
前記補助配線は、導電性金属ナノワイヤーで形成されたことを特徴とする太陽電池。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池において、
前記補助配線は、数珠状に結合した導電性ナノ粒子で形成されたことを特徴とする太陽電池。
【請求項6】
請求項1に記載の太陽電池において、
前記補助配線は、第1補助配線と、第2補助配線と、で構成され、
前記第1補助配線は、導電性金属ナノワイヤーまたは数珠状に結合した導電性ナノ粒子によって網状またはライン状に形成され、
前記第2補助配線は、導電性ナノ材料によって格子状、網状またはライン状に形成されたことを特徴とする太陽電池。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の太陽電池において、
前記下部電極層と前記上部電極層とが電気的に接続される部分に窪部が設けられ、
前記窪部に前記補助配線が設けられたことを特徴とする太陽電池。
【請求項8】
請求項7に記載の太陽電池において、
前記窪部は、前記補助配線によって埋め込まれたことを特徴とする太陽電池。
【請求項9】
基板上に下部電極層を形成する下部電極層形成工程と、
前記下部電極層上に半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記半導体層上に上部電極層を形成する上部電極層形成工程と、
前記上部電極層上に、前記上部電極層よりも電気抵抗率が低い材料で構成された補助配線を形成する補助配線形成工程と、を含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の太陽電池の製造方法において、
前記補助配線形成工程では、前記上部電極層上に、前記補助配線となる補助配線材料を含む液体材料を塗布し、塗布された前記液体材料を固化して前記補助配線を形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の太陽電池の製造方法において、
前記補助配線形成工程では、前記上部電極層上に受光空間を有するように前記補助配線を形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載の太陽電池の製造方法において、
前記補助配線形成工程は、
前記上部電極層上に第1補助配線を形成する第1補助配線形成工程と、
前記上部電極層上及び前記第1補助配線上に第2補助配線を形成する第2補助配線形成工程と、を含み、
前記第1補助配線形成工程では、前記第1補助配線となる導電性金属ナノワイヤーまたは導電性ナノ材料を含む液体材料を前記上部電極層上に塗布し、塗布された前記液体材料を固化して網状またはライン状の前記第1補助配線を形成し、
前記第2補助配線形成工程では、前記補助配線となる導電性金属ナノワイヤーまたは導電性ナノ材料を含む液体材料を前記第1補助配線上に塗布し、塗布された前記液体材料を固化して格子状、網状またはライン状の前記第2補助配線を形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか一項に記載の太陽電池の製造方法において、
前記補助配線形成工程では、前記下部電極層と前記上部電極層とが電気的に接続する部分に形成された窪部に、前記補助配線を形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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