説明

太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽電池の製造方法

【課題】半導体基板に形成された貫通孔の内壁面におけるパッシベーション効果を向上した太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
i型非晶質シリコン層14とp型非晶質シリコン層15とは、n型単結晶シリコン基板11が有する貫通孔内に入り込み、i型非晶質シリコン層12とn型非晶質シリコン層13とは、n型単結晶シリコン基板11が有する貫通孔内に入り込む。貫通孔の内壁面は、i型非晶質シリコン層14とi型非晶質シリコン層12とによって覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板に貫通孔が形成された太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、クリーンで無尽蔵に供給される太陽光を直接電気に変換することができるため、新しいエネルギー源として期待されている。
【0003】
一般的に、太陽電池1枚当りの出力は数W程度である。従って、家屋やビル等の電源として太陽電池を用いる場合には、複数の太陽電池を接続することにより出力を高めた太陽電池モジュールが用いられる。配列方向に従って配列された太陽電池どうしは、配線材によって互いに電気的に接続される。
【0004】
近年、太陽電池どうしの接続を容易にするために、p側電極及びn側電極の両方を太陽電池の裏面側に設ける手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような太陽電池は、半導体基板の主面に垂直な方向に延びる貫通孔を有する。太陽電池の受光面側の電極で収集された光生成キャリアは、貫通孔に設けられた導電体により太陽電池の裏面側に導かれる。
【特許文献1】特開昭64−82570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、通常の結晶系太陽電池に比べ高い光電変換効率を有する太陽電池として、HIT(Heterojunction with Intrinsic Thin layer)構造の太陽電池が知られている。HIT太陽電池は、n型の結晶系シリコン基板の受光面上にp型の非晶質シリコン層を有するとともに、裏面上にn型の非晶質シリコン層を有する。n型の結晶系シリコン基板とp型の非晶質シリコン層とによって構成されるpn接合領域、及びn型の結晶系シリコン基板とn型の非晶質シリコン層とによって構成されるBSF接合領域には、実質的に真性のi型の非晶質シリコン層が介挿される。これにより、それぞれの接合界面における特性を向上させることができるため、高い光電変換効率が得られる。
【0006】
このようなHIT太陽電池の構造を、上述の特許文献1に記載された太陽電池の構造に適用する場合、以下のような問題があった。
【0007】
特許文献1に記載の太陽電池では、貫通孔の内壁面における光生成キャリアの再結合を抑制すること、及び貫通孔内に設けられた導電体と裏面側の電極とを絶縁することを目的として、SiN膜を貫通孔内に形成する。このようなSiN膜は、熱CVD法による400℃程度の高温処理を通して形成されることにより、パッシベーション効果を発揮する。
【0008】
一方、HIT太陽電池では、半導体基板の熱ダメージを抑制するために、製造工程の全てを200℃程度以下で行うことが実現されている。しかしながら、200℃程度で形成されるSiN膜は、絶縁特性は発揮するものの、良好なパッシベーション効果は発揮しない。その結果、貫通孔の内壁面における光生成キャリアの再結合を充分に抑制することができず、HIT太陽電池の光電変換効率が低下するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、半導体基板に形成された貫通孔の内壁面におけるパッシベーション効果を向上した太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明の一の特徴は、太陽電池に係り、受光面と、受光面の反対に設けられた裏面と、受光面から裏面まで貫通する貫通孔とを有する半導体基板と、受光面上に形成された第1受光面側非晶質半導体層と、第1受光面側非晶質半導体層上に形成された第2受光面側非晶質半導体層と、裏面上に形成された第1裏面側非晶質半導体層と、第1裏面側非晶質半導体層上に形成された第2裏面側非晶質半導体層と、貫通孔内に設けられ、絶縁層によって第1裏面側非晶質半導体層及び第2裏面側非晶質半導体層と絶縁された導電体とを備え、第1受光面側非晶質半導体層と第1裏面側非晶質半導体層とは、i型の導電型を有しており、第1受光面側非晶質半導体層と第2受光面側非晶質半導体層とは、貫通孔内に入り込み、第1裏面側非晶質半導体層と第2裏面側非晶質半導体層とは、貫通孔内に入り込んでおり、貫通孔の内壁面は、第1受光面側非晶質半導体層と第1裏面側非晶質半導体層とによって覆われていることが好ましい。
【0011】
本発明の一の特徴において、第2裏面側非晶質半導体層は、半導体基板と同じ導電型を有しており、第1裏面側非晶質半導体層によって覆われる貫通孔の内壁面の面積は、第1受光面側非晶質半導体層によって覆われる貫通孔の内壁面の面積よりも大きいことが好ましい。
【0012】
本発明の一の特徴において、第2裏面側非晶質半導体層上に形成された裏面側透明導電膜を備え、裏面側透明導電膜は、第2裏面側非晶質半導体層と絶縁層との間に入り込んでいることが好ましい。
【0013】
本発明の一の特徴は、太陽電池モジュールに係り、配列方向に沿って配列された複数の太陽電池と、複数の太陽電池を互いに電気的に接続する配線材とを備える太陽電池モジュールであって、複数の太陽電池に含まれる一の太陽電池は、受光面と、受光面の反対に設けられた裏面と、受光面から裏面まで貫通する貫通孔とを有する半導体基板と、受光面上に形成された第1受光面側非晶質半導体層と、第1受光面側非晶質半導体層上に形成された第2受光面側非晶質半導体層と、裏面上に形成された第1裏面側非晶質半導体層と、第1裏面側非晶質半導体層上に形成された第2裏面側非晶質半導体層と、貫通孔内に設けられた導電体とを有し、第1受光面側非晶質半導体層と第1裏面側非晶質半導体層とは、i型の導電型を有しており、第1受光面側非晶質半導体層と第2受光面側非晶質半導体層とは、貫通孔内に入り込み、第1裏面側非晶質半導体層と第2裏面側非晶質半導体層とは、貫通孔内に入り込み、導電体は、第1裏面側非晶質半導体層及び第2裏面側非晶質半導体層と絶縁層によって絶縁されており、配線材は、裏面上において、導電体に電気的に接続されていることを要旨とする。
【0014】
本発明の一の特徴は、太陽電池モジュールの製造方法に係り、受光面と、前記受光面の反対に設けられた裏面とを有する半導体基板に、受光面から裏面まで貫通する貫通孔を形成する工程Aと、裏面上に第1裏面側非晶質半導体層と第2裏面側非晶質半導体層とを順に形成する工程Bと、受光面上に第1受光面側非晶質半導体層と第2受光面側非晶質半導体層とを順に形成する工程Cと、貫通孔内に導電体を設ける工程Dとを備え、第1受光面側非晶質半導体層と第1裏面側非晶質半導体層とは、i型の導電型を有しており、工程Cにおいて、導電体と、第1裏面側非晶質半導体層及び第2裏面側非晶質半導体層とを絶縁層によって絶縁させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、半導体基板に形成された貫通孔の内壁面におけるパッシベーション効果を向上させた太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽電池の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、図面を用いて、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0017】
(太陽電池モジュールの概略構成)
本発明の実施形態に係る太陽電池モジュール100の概略構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る太陽電池モジュール100の構成を示す側面図である。図1に示すように、本実施形態に係る太陽電池モジュール100は、複数の太陽電池1と、受光面側保護材2と、裏面側保護材3と、封止材4と、配線材5とを備える。太陽電池モジュール100は、受光面側保護材2と裏面側保護材3との間に、複数の太陽電池1を封止材4によって封止する。
【0018】
複数の太陽電池1は、配列方向に沿って配列される。複数の太陽電池1は、配線材5によって互いに接続される。太陽電池1は、太陽光が入射する受光面(図面中の上)と、受光面の反対側に設けられた裏面(図面中の下)とを有する。受光面と裏面とは、太陽電池1の主面である。太陽電池1の構成については後述する。
【0019】
配線材5は、一の太陽電池1の裏面上にのみ配設される。従って、太陽電池モジュール100は、いわゆるバックコンタクト型の太陽電池モジュールである。これにより、一の太陽電池1と他の太陽電池1とは、電気的に接続される。配線材5としては、薄板状、線状或いは縒り線状に成形された銅等の導電材を用いることができる。なお、配線材5の表面に軟導電体(共晶半田など)がメッキされていてもよい。
【0020】
受光面側保護材2は、封止材4の受光面側に配置され、太陽電池モジュール100の表面を保護する。受光面側保護材2としては、透光性及び遮水性を有するガラス、透光性プラスチック等を用いることができる。
【0021】
裏面側保護材3は、封止材4の裏面側に配置され、太陽電池モジュール100の背面を保護する。裏面側保護材3としては、PET(Polyethylene Terephthalate)等の樹脂フィルム、Al箔を樹脂フィルムでサンドイッチした構造を有する積層フィルム等を用いることができる。
【0022】
封止材4は、受光面側保護材2と裏面側保護材3との間において、複数の太陽電池1を封止する。封止材4としては、EVA、EEA、PVB、シリコン、ウレタン、アクリル、エポキシ等の透光性を有する樹脂を用いることができる。
【0023】
なお、以上のような構成を有する太陽電池モジュール100の外周には、Alフレーム(不図示)を取り付けることができる。
【0024】
(太陽電池の構成)
次に、太陽電池1の構成について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、太陽電池1を受光面側から見た平面図である。図3は、太陽電池1を裏面から見た平面図である。
【0025】
太陽電池1は、図2に示すように、光電変換部10と、受光面側集電電極24と、導電体20とを備える。
【0026】
光電変換部10は、光が入射する受光面と、受光面の反対側に設けられた裏面とを有する。光電変換部10は、受光面に光が入射することにより光生成キャリアを生成する。光生成キャリアとは、太陽光が光電変換部10に吸収されることにより生成される正孔と電子をいう。
【0027】
本実施形態に係る光電変換部10は、単結晶シリコン基板と非晶質シリコン層との間に実質的に真性な非晶質シリコン層を挟み込んだ構造、いわゆるHIT構造を有する。光電変換部10の詳細な構成については後述する。
【0028】
受光面側集電電極24は、光電変換部10によって生成された光生成キャリアを収集する電極である。受光面側集電電極24は、図2に示すように、光電変換部10の受光面上の略全域に渡って複数本形成される。受光面側集電電極24は、例えば、熱硬化型の導電性ペーストを用いて印刷法等により形成することができる。なお、受光面側集電電極24の本数及び形状は、光電変換部10の大きさなどを考慮して設定される。
【0029】
導電体20は、光電変換部10の受光面上において、受光面側集電電極24と電気的に接続される。受光面側集電電極24によって光電変換部10から収集された光生成キャリアは、導電体20によって収集される。導電体20は、光電変換部10が有する半導体基板の受光面から裏面まで貫通する貫通孔内(図2において不図示、図4参照)に設けられる。従って、導電体20によって収集された光生成キャリアは、光電変換部10の裏面側に運ばれる。なお、本実施形態では、配列方向に沿って点在する導電体20の列を並べて設けているが、導電体20の数は、導電体20に接続される受光面側集電電極24の本数や、使用する導電性材料の比抵抗などを考慮して設定される。導電体20は、受光面側集電電極24と同様の導電性材料により形成される。
【0030】
太陽電池1は、図3に示すように、受光面側バスバー電極25及び裏面側集電電極30を備える。
【0031】
受光面側バスバー電極25は、光電変換部10の裏面上において、導電体20から光生成キャリアを収集する電極である。受光面側バスバー電極25は、図3に示すように、配列方向に沿ってライン状に形成される。受光面側バスバー電極25は、受光面側集電電極24と同様の材料を用いて形成することができる。
【0032】
受光面側バスバー電極25上には、図3に示すように、配列方向に沿って配線材5が配設される。配線材5の一端は、隣接する他の太陽電池1の裏面側集電電極30と電気的に接続される。これにより、太陽電池1どうしは電気的に直列に接続される。
【0033】
裏面側集電電極30は、受光面側バスバー電極25が収集する光生成キャリアとは異なる極性の光生成キャリアを、光電変換部10から収集する。裏面側集電電極30は、光電変換部10の裏面のうち受光面側バスバー電極25が形成される領域以外の領域に形成される。ただし、本発明は、光電変換部10の裏面上に形成される集電電極の形状等を限定するものではない。
【0034】
ここで、導電体20及び受光面側バスバー電極25と、裏面側集電電極30とは、互いに異なる極性の光生成キャリアを光電変換部10から収集する。従って、裏面側集電電極30と、導電体20及び受光面側バスバー電極25とは、互いに電気的に絶縁されている。
【0035】
(光電変換部の構成)
次に、太陽電池1の光電変換部10の詳細な構成について図4を参照しながら説明する。図4は、図2のA−A切断面における拡大断面図である。
【0036】
光電変換部10は、n型単結晶シリコン基板11、i型非晶質シリコン層12、n型非晶質シリコン層13、i型非晶質シリコン層14、p型非晶質シリコン層15、裏面側透明導電膜16、絶縁層17及び受光面側透明導電膜18を備える。
【0037】
n型単結晶シリコン基板11は、受光面と、受光面の反対に設けられた裏面と、受光面から裏面まで貫通する貫通孔とを有する。図4に示すように、貫通孔内には、導電体20が設けられる。また、n型単結晶シリコン基板11の受光面及び裏面には、微細テクスチャが形成される。
【0038】
i型非晶質シリコン層12は、n型単結晶シリコン基板11の裏面上に形成される。i型非晶質シリコン層12は、極めて薄い厚みを有し、実質的に真性である。
【0039】
n型非晶質半導体層13は、CVD法によりi型非晶質シリコン層12の裏面上に形成される。i型非晶質シリコン層12とn型非晶質半導体層13とにより、いわゆるBSF構造が形成される。
【0040】
i型非晶質シリコン層14は、n型単結晶シリコン基板11の受光面上に形成される。i型非晶質シリコン層14は、極めて薄い厚みを有し、実質的に真性である。貫通孔の内壁面は、i型非晶質シリコン層12とi型非晶質シリコン層14とによって覆われる。
【0041】
p型非晶質シリコン層15は、CVD法によりi型非晶質シリコン層14の受光面上に形成される。p型非晶質シリコン層15とn型単結晶シリコン基板11とによって半導体pn接合が形成される。
【0042】
裏面側透明導電膜16は、n型非晶質半導体層13の裏面上にスパッタ法或いは蒸着法等のPVD法により形成される。裏面側透明導電膜16としては、導電性を有するIn,Zn,Sn,Ti,W等の酸化物を用いることができる。
【0043】
ここで、本実施形態において、裏面側透明導電膜16は、n型単結晶シリコン基板11の裏面のうち貫通孔の周囲以外の領域に形成される。
【0044】
絶縁層17は、n型単結晶シリコン基板11が有する貫通孔内に設けられた導電体及び後述する受光面側透明導電膜18を、シリコン基板11、i型非晶質シリコン層12、n型非晶質半導体層13及び裏面側透明導電膜16から絶縁する。従って、図4に示すように、絶縁層17の一部は、裏面側透明導電膜16の裏面上に形成される。
【0045】
受光面側透明導電膜18は、p型非晶質シリコン層15の受光面上にスパッタ法或いは蒸着法等のPVD法により形成される。受光面側透明導電膜18は、裏面側透明導電膜16と同一材料であってもよい。
【0046】
ここで、本実施形態において、i型非晶質シリコン層12とn型非晶質半導体層13とは、貫通孔内に入り込んでいる。即ち、i型非晶質シリコン層12とn型非晶質半導体層13とは、n型単結晶シリコン基板11の裏面上から貫通孔の内壁面上に跨って形成される。同様に、i型非晶質シリコン層14とp型非晶質シリコン層15とは、貫通孔内に入り込んでいる。即ち、i型非晶質シリコン層14とp型非晶質シリコン層15とは、n型単結晶シリコン基板11の受光面上から貫通孔の内壁面上に跨って形成される。
【0047】
また、i型非晶質シリコン層12とn型非晶質半導体層13とは、貫通孔内において、貫通孔の内壁面(n型単結晶シリコン基板11)とi型非晶質シリコン層14との間に形成される。また、i型非晶質シリコン層12とn型非晶質半導体層13とは、貫通孔の内壁面のうち受光面側まで形成される。従って、図4に示すように、i型非晶質シリコン層12によって覆われる貫通孔の内壁面の面積は、i型非晶質シリコン層14によって覆われる貫通孔の内壁面の面積よりも大きい。
【0048】
(太陽電池の製造方法)
本実施形態に係る太陽電池1の製造方法について図4を参照しながら説明する。
【0049】
(1)貫通孔の形成
n型単結晶シリコンのインゴットからn型単結晶シリコン薄板を切り出す。n型単結晶シリコン薄板の受光面と裏面とを貫通する貫通孔を形成することによりn型単結晶シリコン基板11を作製する。
【0050】
貫通孔の形成には、フッ硝酸、アルカリ溶液を用いたウェットエッチング法、Cl,CF,BCl等のガスを用いたドライエッチング法、レーザアブレーション加工、或いはドリルやサンドブラスト等を用いた機械的加工を適用することができる。
【0051】
レーザアブレーション加工は、シリコン基板上へのレジストパターン形成が不要であるため、好適に用いることができる。レーザアブレーション加工には、例えば、Nd:YAGレーザ等のレーザを用いることができる。
【0052】
(2)洗浄処理・テクスチャ処理
次に、基板表面の不要な金属、有機物を取り除くために、n型単結晶シリコン基板11の受光面、裏面及び貫通孔の内壁面を酸又はアルカリ溶液で洗浄する。続いて、アルカリ水溶液により異方性エッチング加工することにより、n型単結晶シリコン基板11の表面を微細テクスチャ処理する。
【0053】
(3)p層及びn層の形成
n型単結晶シリコン基板11の裏面上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いることにより、i型非晶質シリコン層12とn型非晶質半導体層13とを順に形成する。この場合、本実施形態では、貫通孔にマスクをしないため、i型非晶質シリコン層12とn型非晶質半導体層13とは、貫通孔内に入り込む。
【0054】
続いて、n型単結晶シリコン基板11の受光面上に、CVD法を用いることにより、i型非晶質シリコン層14とp型非晶質シリコン層15とを順に形成する。この場合、本実施形態では、貫通孔にマスクをしないため、i型非晶質シリコン層14とp型非晶質シリコン層15とは、貫通孔内に入り込む。
【0055】
(4)透明導電膜の形成
透明導電膜の製膜方法としては、一般的に、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD(Physical Vapor Deposition)が用いられる。
【0056】
まず、貫通孔の裏面側開口部にマスクを施し、n型非晶質半導体層13の裏面側のうち貫通孔を除いた領域に裏面側透明導電膜16を形成する。
【0057】
次に、貫通孔の裏面側開口部の周囲にマスクを施し、CVD法により、貫通孔内に絶縁層17を形成する。絶縁層17としては、SiO、SiNなどを使用することができる。従って、裏面側透明導電膜16は、貫通孔周辺において、絶縁層17とn型非晶質半導体層13とに挟まれる。
【0058】
次に、受光面側透明導電膜18をp型非晶質シリコン層15の受光面上に形成する。絶縁層17が貫通孔内に形成されているため、貫通孔にマスクをすることなく受光面側透明導電膜18を形成すればよい。
【0059】
(5)導電体の形成
受光面側透明導電膜18上に受光面側集電電極24をスクリーン印刷等により形成する。裏面側透明導電膜16上にスクリーン印刷等により裏面側集電電極30を形成する。貫通孔内に導電体20を充填する。受光面側集電電極24、裏面側集電電極30及び導電体20は、例えば、熱硬化型の導電性ペーストを用いて形成することができる。
【0060】
受光面側集電電極24を形成する工程又は裏面側集電電極30を形成する工程の一方と導電体20を形成する工程とは、同時に行なうことができる。なお、導電体20を形成する工程後に、受光面側集電電極24及び裏面側集電電極30を形成する、或いはこの逆というように複数の段階に分けてもよい。
【0061】
絶縁層17上に、受光面側バスバー電極25を形成する。また、裏面側透明導電膜16の裏面上に裏面側集電電極30を形成する。裏面側集電電極30は、スクリーン印刷法を用いて形成することができるが、これに限らず、蒸着法やスパッタ法を用いてもよい。
【0062】
(作用・効果)
本実施形態に係る太陽電池1では、i型非晶質シリコン層14とp型非晶質シリコン層15とは、n型単結晶シリコン基板11が有する貫通孔内に入り込み、i型非晶質シリコン層12とn型非晶質シリコン層13とは、n型単結晶シリコン基板11が有する貫通孔内に入り込む。貫通孔の内壁面は、i型非晶質シリコン層14とi型非晶質シリコン層12とによって覆われている。
【0063】
このように、本実施形態に係る太陽電池1では、貫通孔の内壁面は、i型非晶質半導体層によって覆われる。ここで、i型非晶質半導体層は、層中に水素を含有しているため、単結晶半導体基板に対する高いパッシベート性能を有する。従って、i型非晶質半導体層は、絶縁層としての機能とパッシベーション層としての機能とを併せ持つ。その結果、貫通孔の内壁面における光生成キャリアの再結合が抑制されるため、太陽電池1の変換効率を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態に係る太陽電池1はHIT構造を有するため、n型単結晶シリコン基板11に予め貫通孔を空けておくことにより、貫通孔の内壁面にi型非晶質シリコン層を簡便に形成することができる。
【0065】
また、裏面側に形成されたn型非晶質シリコン層13は、n型半導体基板11と同じ導電型を有する。裏面側に形成されたi型非晶質シリコン層12によって覆われる貫通孔の内壁面の面積は、受光面側に形成されたi型非晶質シリコン層14によって覆われる貫通孔の内壁面の面積よりも大きい。従って、より良好なBSF効果を発揮することができる。これにより、太陽電池1の変換効率はさらに向上する。
【0066】
また、裏面側透明導電膜16を絶縁層17より先に形成するため、裏面側透明導電膜16は絶縁層17の下に形成される。そのため、裏面側透明導電膜16を、n型単結晶シリコン基板11の裏面側略全面に形成することができる。これにより、光電変換部10からの集電効率は向上する。
【0067】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものではない。
【0068】
例えば、上述した実施形態では、n型単結晶シリコン基板の受光面にp型非晶質シリコン層を備え、基板の裏面にn型非晶質シリコン層を備えた太陽電池について説明したが、これに限らず、p型単結晶シリコン基板の受光面にn型非晶質シリコン層を備え、基板の裏面にp型非晶質シリコン層を備えた太陽電池であってもよい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明に係る太陽電池について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施することができるものである。
【0070】
(実施例)
n型単結晶シリコン基板に波長532nmのLD励起ロッド型Nd:YAGレーザを用いて複数の貫通孔を形成した。
【0071】
次にn型単結晶シリコン基板11の裏面上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法においてマスクを用いずに、i型非晶質シリコン層とn型非晶質半導体層とITO膜とを順に形成した。この際、貫通孔の内壁面におけるドーパント(P)の濃度は、1.0×1018cm−3であった。
【0072】
続いて、n型単結晶シリコン基板の受光面に、CVD法においてマスクを用いずに、i型非晶質シリコン層とp型非晶質シリコン層とITO膜とを順に形成した。貫通孔の内壁面におけるドーパント(B)の濃度は、1.0×1018cm−3であった。
【0073】
このようにして実施例に係るHIT構造の太陽電池を作製した。
【0074】
(比較例)
貫通孔を形成せずに、上記実施例と同様にしてHIT構造の太陽電池を作製した。その後、YAGレーザを用いて貫通孔を形成した。
【0075】
続いて、各非晶質シリコン層に悪影響を及ぼさない200℃以下の温度において、SiN膜を貫通孔の内壁面に形成した。
【0076】
(セル特性の比較)
【表1】

【0077】
同表に示す通り、実施例に係る太陽電池の変換効率は、比較例よりも高い値であった。
【0078】
このような結果になったのは、実施例に係る太陽電池では、貫通孔の内壁面上にi型非晶質半導体層を形成することにより良好なパッシベーション効果が得られたためである。
【0079】
一方、比較例では、SiN膜を200℃以下で形成したため、良好なパッシベーション効果が得られなかったためである。
【0080】
以上の結果から、貫通孔の内壁面をi型非晶質半導体層で覆うことにより、太陽電池の変換効率が向上することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態に係る太陽電池モジュール100の側断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る太陽電池1を受光面側から見た平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る太陽電池1を裏面側から見た平面図である。
【図4】図2のA−A切断面における拡大断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1…太陽電池
2…受光面側保護材
3…裏面側保護材
4…封止材
5…配線材
10…光電変換部
11…n型単結晶シリコン基板
12…i型非晶質シリコン層
13…n型非晶質シリコン層
14…i型非晶質シリコン層
15…p型非晶質シリコン層
16…裏面側透明導電膜
17…絶縁層
18…受光面側透明導電膜
20…導電体
24…受光面側集電電極
25…受光面側バスバー電極
30…裏面側集電電極
100…太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面と、前記受光面の反対に設けられた裏面と、前記受光面から前記裏面まで貫通する貫通孔とを有する半導体基板と、
前記受光面上に形成された第1受光面側非晶質半導体層と、
前記第1受光面側非晶質半導体層上に形成された第2受光面側非晶質半導体層と、
前記裏面上に形成された第1裏面側非晶質半導体層と、
前記第1裏面側非晶質半導体層上に形成された第2裏面側非晶質半導体層と、
前記貫通孔内に設けられ、絶縁層によって前記第1裏面側非晶質半導体層及び前記第2裏面側非晶質半導体層と絶縁された導電体と
を備え、
前記第1受光面側非晶質半導体層と前記第1裏面側非晶質半導体層とは、i型の導電型を有しており、
前記第1受光面側非晶質半導体層と前記第2受光面側非晶質半導体層とは、前記貫通孔内に入り込み、
前記第1裏面側非晶質半導体層と前記第2裏面側非晶質半導体層とは、前記貫通孔内に入り込んでおり、
前記貫通孔の内壁面は、前記第1受光面側非晶質半導体層と前記第1裏面側非晶質半導体層とによって覆われている
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記第2裏面側非晶質半導体層は、前記半導体基板と同じ導電型を有しており、
前記第1裏面側非晶質半導体層によって覆われる前記貫通孔の内壁面の面積は、前記第1受光面側非晶質半導体層によって覆われる前記貫通孔の内壁面の面積よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第2裏面側非晶質半導体層上に形成された裏面側透明導電膜を備え、
前記裏面側透明導電膜は、前記第2裏面側非晶質半導体層と前記絶縁層との間に入り込んでいる
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
配列方向に沿って配列された複数の太陽電池と、前記複数の太陽電池を互いに電気的に接続する配線材とを備える太陽電池モジュールであって、
前記複数の太陽電池に含まれる一の太陽電池は、
受光面と、前記受光面の反対に設けられた裏面と、前記受光面から前記裏面まで貫通する貫通孔とを有する半導体基板と、
前記受光面上に形成された第1受光面側非晶質半導体層と、
前記第1受光面側非晶質半導体層上に形成された第2受光面側非晶質半導体層と、
前記裏面上に形成された第1裏面側非晶質半導体層と、
前記第1裏面側非晶質半導体層上に形成された第2裏面側非晶質半導体層と、
前記貫通孔内に設けられた導電体と
を有し、
前記第1受光面側非晶質半導体層と前記第1裏面側非晶質半導体層とは、i型の導電型を有しており、
前記第1受光面側非晶質半導体層と前記第2受光面側非晶質半導体層とは、前記貫通孔内に入り込み、
前記第1裏面側非晶質半導体層と前記第2裏面側非晶質半導体層とは、前記貫通孔内に入り込み、
前記導電体は、前記第1裏面側非晶質半導体層及び前記第2裏面側非晶質半導体層と絶縁層によって絶縁されており、
前記配線材は、前記裏面上において、前記導電体に電気的に接続されている
ことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項5】
受光面と、前記受光面の反対に設けられた裏面とを有する半導体基板に、前記受光面から前記裏面まで貫通する貫通孔を形成する工程Aと、
前記裏面上に第1裏面側非晶質半導体層と第2裏面側非晶質半導体層とを順に形成する工程Bと、
前記受光面上に第1受光面側非晶質半導体層と第2受光面側非晶質半導体層とを順に形成する工程Cと、
前記貫通孔内に導電体を設ける工程Dと
を備え、
前記第1受光面側非晶質半導体層と前記第1裏面側非晶質半導体層とは、i型の導電型を有しており、
前記工程Cにおいて、
前記導電体と、前記第1裏面側非晶質半導体層及び前記第2裏面側非晶質半導体層とを絶縁層によって絶縁させる
ことを特徴とする太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−88203(P2009−88203A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255420(P2007−255420)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【復代理人】
【識別番号】100117064
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 市太郎
【Fターム(参考)】