説明

太陽電池に全面裏面電界および銀バスバーを付与するための方法

背面接点銀バスバーを太陽電池のアルミニウム裏面電界(BSF)に付与するための方法が提供される。当該方法は、前面および裏面を有する太陽電池基板を準備する工程と;この太陽電池基板の裏面の上に全面アルミニウム裏打ち層を印刷する工程と;印刷されたアルミニウム裏打ち層を乾燥して、全面アルミニウム層を得る工程と;銀バスバーが所望される領域の全面アルミニウム層の上に剥離ペーストを印刷し乾燥する工程と;太陽電池基板の前面の上に前面接点銀ペーストを印刷し乾燥して、前面グリッド電極を生成する工程と;太陽電池の前面および裏面を同時焼成し冷却する工程であって、焼成の間に当該剥離ペーストは、アルミニウム層の中の過剰のアルミニウム粉末を濡らし、そして、太陽電池の冷却の間にこの剥離ペーストは、収縮し、固化し、過剰のアルミニウム粉末とともに剥離して、空いた領域を有する全面アルミニウムBSFを残す工程と;BSFの空いた領域に背面接点銀ペーストを印刷し、乾燥し、焼成して、銀バスバーを得る工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2010年2月12日出願の米国仮特許出願第61/304,030号の利益を主張する。この米国仮特許出願の開示は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。
【0002】
本発明は、背面接点銀バスバーを太陽電池の全面アルミニウム裏面電界(BSF)に付与するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
太陽電池は、光起電力効果を使用して太陽のエネルギーを電気へと変換するデバイスである。太陽光発電は持続可能で非汚染性であるので、太陽光発電は魅力的なエネルギー源である。従って、低い材料コストおよび製造原価を維持しつつ、効率が高められた太陽電池を開発することに、現在、非常に多くの研究が費やされている。非常に簡単に言えば、太陽光の中の光子がソーラーパネルにぶつかると、光子は、シリコンなどの半導性物質によって吸収される。電子はその原子からたたき出されて解き放たれ、電子は、ソーラーパネルの電気伝導性部分を通り抜け、電気を生成することができる。
【0004】
最も一般的な太陽電池は、シリコン、より具体的には、n型の拡散層をp型のシリコン基板上に付与し、これらを2つの電気接点層または電極で結合することによる、シリコンから作製されるp−n接合に基づく太陽電池である。太陽電池による太陽光の反射を最小にするために、窒化シリコンなどの反射防止コーティングがn型の拡散層に付与され、太陽電池へと導かれる光の量が増やされる。銀ペーストを使用して、例えば、格子状の金属接点が、前面電極としての役割を果たすように反射防止層の上にスクリーン印刷されてもよい。光が入射するところであるセルの正面または前面の上のこの電気接点層は、典型的には、完全な層というよりは、「フィンガーライン」および「バスバー」から構成される格子パターンで存在する。なぜなら、金属グリッド材料は、光に対して透明ではないからである。最後に、例えば、裏面の銀または銀/アルミニウムペーストを裏面の配線領域に付与し、次いでアルミニウムペーストを背面の残りの領域に付与することにより、後面接点がこの基板に付与される。次に、このデバイスは、金属ペーストを金属電極へと転化するために、高温で焼成される。典型的な太陽電池およびその製作方法の記載は、例えば特許文献1に見出されうる。
【0005】
太陽電池の裏面を構築するための従来の方法は、乾燥した背面接点銀バスバーを印刷すること、次いで、背面の残部を覆うために乾燥アルミニウムを印刷することを含む。全面アルミニウムの裏面電界(背面障壁)(BSF)は、太陽電池の性能を改善するために、望ましい。しかしながら、基板の背面全体を覆うためにアルミニウムを印刷し乾燥し、次いで、乾燥したアルミニウムの上に銀の背面接点を印刷し乾燥することは実現可能ではない。なぜなら、同時焼成の際に銀の膜および下のアルミニウムの支持層の剥離が観察されるからである。さらに、アルミニウムを印刷し、乾燥し、焼成すること、次いで銀のバスバーを印刷し、乾燥し、焼成することを含む方法も、銀とアルミニウムとの間の接着の欠如のため、実現可能ではない。従って、銀および乾燥したアルミニウムが同時焼成される方法が望ましいであろう。
【0006】
不純物ゲッターとしての役割を果たしかつ部分的な表面パッシベーションを提供しつつ、裏面電界を形成するため、および低−高接合(low high junction)を作製するために、アルミニウムBSFは、シリコン系の太陽電池の大量生産においては最も経済的なプロセスである。しかしながら、アルミニウムの比較的低いはんだ付け性は、全面BSFを形成することに対しては障害である。加えて、アルミニウムは、ガラス系によって緩く結合され、従って金属を接続する接触子を印刷するためのしっかりとした土台を生成しない。アルミニウムBSFを付与するための改善された方法は望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 713 093号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらおよび他の目的は、本発明によれば、背面接点銀バスバーを太陽電池のアルミニウム裏面電界(BSF)に付与するための方法であって、
(a)前面および裏面を有する太陽電池基板を準備する工程と;
(b)この太陽電池基板の裏面の上に全面アルミニウム裏打ち層を印刷する工程と;
(c)この印刷されたアルミニウム裏打ち層を乾燥して、全面アルミニウム層を得る工程と;
(d)銀バスバーが所望される領域の全面アルミニウム層の上に剥離ペーストを印刷し乾燥する工程と;
(e)この太陽電池基板の前面の上に前面接点銀ペーストを印刷し乾燥して、前面グリッド電極を生成する工程と;
(f)この太陽電池の前面および裏面を同時焼成し冷却する工程であって、焼成の間に当該剥離ペーストは、当該アルミニウム層の中の過剰のアルミニウム粉末を濡らし、そして、太陽電池の冷却の間に剥離ペーストは、収縮し、固化し、過剰のアルミニウム粉末とともに剥離して、空いた領域を有する全面アルミニウムBSFを残す工程と;
(g)このBSFの空いた領域に背面接点銀ペーストを印刷し、乾燥し、焼成して、銀バスバーを得る工程と
を含む方法によって成し遂げられる。
【0009】
本発明の別の態様によれば、太陽電池は、
(a)前面および裏面を有する太陽電池基板を準備する工程と;
(b)この太陽電池基板の裏面の上に全面アルミニウム裏打ち層を印刷する工程と;
(c)この印刷されたアルミニウム裏打ち層を乾燥して、全面アルミニウム層を得る工程と;
(d)銀バスバーが所望される領域の全面アルミニウム層の上に剥離ペーストを印刷し乾燥する工程と;
(e)この太陽電池基板の前面の上に前面接点銀ペーストを印刷し乾燥して、前面グリッド電極を生成する工程と;
(f)この太陽電池の前面および裏面を同時焼成し冷却する工程であって、焼成の間に当該剥離ペーストは、全面アルミニウム層の中の過剰のアルミニウム粉末を濡らし、そして、太陽電池の冷却の間に剥離ペーストは、収縮し、固化し、過剰のアルミニウム粉末とともに剥離して、空いた領域を有する全面アルミニウムBSFを残す工程と;
(g)このBSFの空いた領域に背面接点銀ペーストを印刷し、乾燥し、焼成して、銀バスバーを得る工程と
によって形成される。
【0010】
上記の要旨および以下の[発明を実施するための形態]は、添付の図面と併せて読むと、よりよく理解されるであろう。本発明を説明する目的のために、図面には、現在のところ好ましい実施形態が示されている。しかしながら、本発明は、示されたまさにその配置および手段に限定されるわけではないということを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】部分的な裏面電界(BSF)を有する太陽電池の概略図である。
【図2】全面裏面電界(BSF)を有する太陽電池の概略図である。
【図3】本発明の1つの実施形態に係る、剥離ペーストが全面アルミニウム層に付与された、太陽電池基板の写真である。
【図4】本発明の1つの実施形態に係る、焼成後のアルミニウムBSFの剥離した領域の写真である。
【図5】本発明の別の実施形態に係る、アルミニウムBSF上の銀バスバーの写真である。
【図6】本発明の1つの実施形態に係る太陽電池の低温再焼成の前後での、Jscのグラフである。
【図7】本発明の別の実施形態に係る太陽電池の低温再焼成の前後での、Vocのグラフである。
【図8】本発明のさらなる実施形態に係る太陽電池の低温再焼成の前後での、FFのグラフである。
【図9】本発明の1つの実施形態に係る太陽電池の低温再焼成の前後での、効率のグラフである。
【図10】本発明の1つの実施形態に係る太陽電池のアルミニウムおよび剥離部分の下のBSFのSEM写真である。
【図11】本発明の1つの実施形態に係る太陽電池の剥離部分の下のBSFのSEM写真である。
【図12】本発明の1つの実施形態に係る太陽電池についての接着 対 距離のグラフである。
【図13】本発明の1つの実施形態に係る全面BSFおよび比較例に係る部分的BSFの6×6ウェーハについてのVocのグラフである。
【図14】本発明の1つの実施形態に係る全面BSFおよび比較例に係る部分的BSFの5×5ウェーハについてのVocのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願明細書で使用する場合、特定の場合について特段の記載がない限り、すべての百分率(%)は重量%である。さらに、特段の記載がない限り、本願明細書中に記載されるすべての粒子サイズまたは粒子直径はレーザー回折によって測定されるd50粒子直径である。当業者には十分に理解されるように、d50直径は、個々の粒子の半分(重量による)はその特定された直径よりも小さいというそのサイズを表す。
【0013】
本願は、背面接点銀バスバーを太陽電池の全面アルミニウム裏面電界(BSF)に付与するための方法に関する。以下により詳細に記載されるとおり、当該方法は、最初に、太陽電池基板の裏面に全面アルミニウム裏打ち層を印刷し乾燥して全面アルミニウム層を形成し、次いで銀バスバーが所望される領域の全面アルミニウム層に剥離ペースト(このあとより詳細に記載される)を付与することを含む。前面接点銀ペーストがこの太陽電池基板の前面に付与され、このセルの両側は同時焼成され、次いで冷却される。焼成の間に、この剥離ペーストは、全面アルミニウム層の中の過剰のアルミニウム粉末を濡らし、そして、同時焼成された太陽電池の冷却の間に、このペーストは、収縮し、固化し、過剰のアルミニウム粉末とともに剥離して、空いた領域を有する全面アルミニウムBSFを残す。換言すれば、固体のアルミニウム−シリコン共晶層の上に銀背面接点ペーストを付与するための溝が作製される。最後に、背面接点銀ペーストがBSFのこの空いた領域に、または溝に付与されて、銀バスバーが得られる。
【0014】
この新規な技術思想および設計によって、セルの性能は、より高い開回路電圧に起因して改善される。さらに、セルは、基板への、低温焼成背面接点銀バスバーの良好な接着およびはんだ付け性のため、その信頼性を維持する。この方法に従って製造される太陽電池は、望ましい全面BSFも有する。BSFは、太陽電池の裏面における電子−正孔再結合を減少させるように機能し、これによりセル効率が上昇する。従って、全面BSFは太陽電池の効率を改善する。
【0015】
図1および図2は、部分的BSFを有する太陽電池(図1)と全面BSFを有するセル(図2)との間の比較を概略的に示す。各図において、シリコン基板2は、前面銀フィンガー4および銀背面接点6を有する。図1の太陽電池は部分的BSF 8を有するのに対し、図2の太陽電池は全面BSF 10を有する。
【0016】
本発明の方法の工程は、これより、より詳細に記載される。
【0017】
全面アルミニウム裏層の付与
当該方法の第1の工程では、全面アルミニウム裏打ち層が太陽電池基板の裏面に付与される。好ましくは、基板は、n型拡散層をp型シリコン基板上に付与することにより作製されるシリコン基板である。適切な基板は、単結晶性または多結晶性であってもよく、当該技術分野で周知である。
【0018】
太陽電池基板への付与に適切なアルミニウムペーストは当該技術分野で周知であり、記載することを要しない。アルミニウムペーストは、例えばスクリーン印刷によって、基板の裏面全体に付与され、約150℃〜200℃で乾燥され、全面アルミニウム裏層が得られる。このような印刷・乾燥工程は当該技術分野で周知である。
【0019】
剥離ペーストおよび前面接点銀の付与
その後、剥離ペーストが、銀バスバーが所望される領域の全面アルミニウム層に付与される。剥離ペーストは金属ベースの組成物であり、これはこのあとより詳細に記載される。このペーストは公知の方法、例えばスクリーン印刷によって付与され、次いで約150℃〜200℃で乾燥される。剥離ペーストが全面アルミニウム層に付与された太陽電池基板の写真が図3に示される。
【0020】
次に、前面接点銀ペーストがこの太陽電池基板の前面に付与される。前面接点銀ペーストは当該技術分野で周知であり、市販の銀ペーストが、太陽電池の前面への付与に適切であろう。前面接点銀ペーストの付与に先立って、窒化シリコン、酸化チタン、または酸化シリコンなどの反射防止層を、この基板の前面に最初に付与することも本発明の範囲に含まれる。この銀ペーストは、公知の方法、例えばスクリーン印刷によって付与されて、次いで約150℃〜200℃で乾燥されてもよい。
【0021】
同時焼成および冷却
前面接点ペーストを印刷し乾燥した後、ウェーハは、金属化(メタライゼーション)工程および接点形成工程にかけられる。具体的には、アルミニウム層、剥離ペースト、および前面接点銀ペーストが付与された太陽電池は、ここで、前面および裏面が同時焼成されるように焼成される。好ましくは、太陽電池は、工業的に標準的な太陽電池加工の温度設定を使用して、赤外ランプで加熱される炉の中で同時焼成される。例えば、BTU 6ゾーン式赤外ランプ加熱炉が使用されてもよい。適切な温度およびベルト速度の設定は、日常的な実験によって決定されてもよいが、好ましくは約700〜800℃、より好ましくは約750〜800℃のピーク温度を伴う。例示的な温度プロファイルとしては、400、400、550、700、800および920℃のゾーン設定、ならびに5000mm/分のベルト速度が挙げられる。その後、太陽電池は、例えば約60〜80℃/秒で室温まで急速に冷却される。
【0022】
急速プロセス焼成(当該技術分野で「スパイク焼成」としても公知)の間、アルミニウム−シリコン共晶が575〜600℃付近で形成される。より高い温度で、剥離ペーストは、融解し始め、アルミニウム裏打ち層の中の過剰のアルミニウム粉末を濡らし始める。急速冷却の間、この剥離ペーストは、収縮し、固化し、過剰のアルミニウム粉末とともに剥離して、BSF層の中に空いた領域を有する全面アルミニウムBSFを残す。換言すれば、この固体アルミニウム−シリコン共晶層は露出され、背面接点銀バスバーが接着するための基部としての役割を果たすことになろう。BSF上の剥離した(空いた)領域を説明する焼成および剥離後の太陽電池の写真が、図4に示されている。
【0023】
背面接点銀ペーストの付与
最後に、背面接点銀ペーストが、例えばスクリーン印刷によって、BSFの空いた領域に付与され、次いで約150〜200℃で乾燥され、低温(約550℃未満、例えば約500℃)で数秒間焼成され、その結果、背面接点銀ペーストは焼結され、固体のアルミニウム−シリコン共晶表面に接着し、バスバーを形成する。適切な背面接点銀ペーストは、このあとより詳細に記載されるペーストなどの、低温(約550℃未満)焼成物質である。銀バスバーがアルミニウムBSFに付与されている太陽電池の写真が図5に示されている。
【0024】
剥離ペースト
剥離ペーストは全面アルミニウム層の上に印刷され乾燥され、この剥離ペーストは、アルミニウム層の中のアルミニウム粉末と同時焼成し、融解してアルミニウム−シリコン共晶の形成後にアルミニウム層の中のアルミニウム粉末を濡らし、次いで過剰のアルミニウム粉末と一緒に剥離して共晶層を露出させるように設計される。従来の銀ペーストのように、このペーストは、当該組成物の総重量に基づき10〜30重量%を構成する溶媒および結合剤の有機系、および当該組成物の総重量に基づき70〜90重量%を構成する無機系を含有する。この無機系は、ガラス系(全体で3〜20重量%)および粉末系(全体で30〜80重量%)の2つの部を含む。この粉末系、ガラス系、および有機系は、当該剥離ペースト組成物の3つの必須の構成要素を構成する。当該剥離ペースト組成物の中の各構成要素は、これよりより詳細に記載される。
【0025】
粉末系
粉末系は、以下の粉末、
(a)0.1〜5.0ミクロン(0.1〜5.0μm)の粒子サイズを有する銀粉末;
(b)0.1〜5.0ミクロン(0.1〜5.0μm)の粒子サイズを有する金属粉末;および/または
(c)0.1〜5.0ミクロン(0.1〜5.0μm)の粒子サイズを有する金属酸化物(複数可)、
のうちの1以上を含有し、そして、この金属酸化物はアルミニウム粉末と結合し、焼成の間に収縮する。
【0026】
好ましい粉末系としては、銀フレーク、および銅またはスズと組み合わされた銀が挙げられる。この粉末系の役割は、アルミニウム層に付与されたときにアルミニウム粉末と結合し、焼成の間に収縮することである。
【0027】
上記金属粒子または金属酸化物粒子が、約0.1〜5.0ミクロン(0.1〜5.0μm)の粒子サイズを有する限り、上記金属粒子または金属酸化物粒子は、粉末またはフレークの形態で当該組成物の中に含まれてもよい。この粉末系は、好ましくは、当該剥離ペースト組成物の総重量に基づき約30〜80重量%、より好ましくは約50〜80重量%の量で当該剥離ペースト組成物の中に存在する。
【0028】
ガラス系
ガラス系は、ガラスフリット(ガラス粒子)を含み、当該剥離ペースト組成物において無機結合剤として機能する。ガラスが当該ペースト組成物に所望の特性を与える限り、特定のタイプのガラスが特に重要というわけではない。好ましいガラスとしてはホウケイ酸鉛およびホウケイ酸ビスマスが挙げられるが、ホウケイ酸亜鉛などの他の無鉛ガラスも適切であろう。このガラス粒子は、好ましくは約0.1〜約4.5ミクロン(約0.1〜約4.5μm)の粒子サイズ、および300〜800℃、より好ましくは約300〜350℃のTgを有し、好ましくは当該ペースト組成物の総重量に基づき約3〜約20重量%、より好ましくは約3〜約10重量%の量で当該ペースト組成物の中に含有される。
【0029】
有機系
有機系は溶媒および結合剤を含む。特定の溶媒および結合剤が特に重要というわけではなく、当該技術分野で公知の溶媒および結合剤であってもよいし、またはこのタイプの応用のために開発されるべき溶媒および結合剤であってもよい。例えば、好ましい有機ビヒクルは、セルロース樹脂および溶媒、例えばテルピネオールなどの溶媒中のエチルセルロースなど、を含有する。この有機ビヒクルは、好ましくは、当該ペースト組成物の総重量に基づき約10〜約30重量%の量で当該電気伝導性のペースト組成物の中に存在する。
【0030】
剥離ペースト組成物の中に添加剤を含めることも本発明の範囲に含まれる。例えば、増粘剤(粘着性付与剤)、安定剤、分散剤、粘度調整剤など、化合物を単独または組み合わせて含むことが望ましい場合がある。このような成分は当該技術分野で周知である。このような成分が含まれる場合、このような成分の量は、所望される剥離ペーストの特性に応じて、日常的な実験によって決定されてもよい。
【0031】
当該剥離ペースト組成物は、当該技術分野で公知のまたは開発されるべきペースト組成物を調製するためのいずれの方法によって調製されてもよく、調製方法は特に重要ではない。例えば、当該ペーストの構成要素は、分散した均一なペーストを作製するために、混合機を用いるなどして混合され、次いで例えば三本ロール練り機に通されてもよい。従来の銀ペーストが当該方法において有効に機能する限りは、従来の銀ペーストを剥離ペーストとして利用することも本発明の範囲に含まれる。
【0032】
背面接点ペースト
本発明は、BSF上の剥離領域に付与されてもよい低温背面接点ペーストにも関する。このペーストは、剥離領域の上に印刷され、乾燥され、約550℃未満で、例えば約500℃で低温焼成されてもよい。この背面接点ペーストは、背面接点端子および表面のはんだ付け性を提供する。重要なことは、この背面接点ペーストが約550℃未満で焼成可能である必要があることである。
【0033】
このペーストは、当該ペーストの約10〜30重量%を構成する有機系(溶媒および結合剤を含む)、および当該ペーストの約70〜90重量%を構成する無機系(ガラス系および粉末系を含む)を含有する。
【0034】
粉末系
この粉末系は、当該技術分野で公知の従来の粉末系であり、以下の粉末:
(a)50〜80重量%の量の、0.1〜5.0ミクロン(0.1〜5.0μm)の粒子サイズを有する銀粉末;および
(b)0〜2.0重量%の量の、0.5〜3.0ミクロン(0.5〜3.0μm)の粒子サイズを有する金属酸化物
を含有する。当該粉末系は、好ましくは、十分なはんだ付け性を与えるために、大部分は銀を含有する。好ましい粉末は、銀、または酸化銅と組み合わせられた銀を含有する。
【0035】
上記金属粒子または金属酸化物粒子が、約0.1〜5.0ミクロン(0.1〜5.0μm)の粒子サイズを有する限り、上記金属粒子または金属酸化物粒子は、粉末またはフレークの形態で当該組成物の中に含まれてもよい。
【0036】
ガラス系
ガラス系は、ガラスフリット(ガラス粒子)を含み、当該剥離ペースト組成物において無機結合剤として機能する。ガラスが当該ペースト組成物に所望の特性を与える限り、特定のタイプのガラスが特に重要というわけではない。好ましいガラスとしてはホウケイ酸鉛およびホウケイ酸ビスマスが挙げられるが、ホウケイ酸亜鉛などの他の無鉛ガラスも適切であろう。このガラス粒子は、好ましくは約0.1〜約4.5ミクロン(約1.0〜約4.5μm)の粒子サイズ、および250〜600℃、より好ましくは約250〜350℃のTgを有し、好ましくは当該ペースト組成物の総重量に基づき約3〜約20重量%の量で当該ペースト組成物の中に含有される。この比較的低いTgは、得られた組成物に適切な低温焼結特性を与えるために非常に重要である。
【0037】
有機系
当該有機系は当該技術分野で公知の従来の有機系であり、溶媒および結合剤を含む。特定の溶媒および結合剤が特に重要というわけではなく、当該技術分野で公知の溶媒および結合剤であってもよいし、またはこのタイプの応用のために開発されるべき溶媒および結合剤であってもよい。例えば、好ましい有機ビヒクルは、セルロース樹脂および溶媒、例えばテルピネオールなどの溶媒中のエチルセルロースなど、を含有する。この有機ビヒクルは、好ましくは、当該電気伝導性のペースト組成物の総重量に基づき約10〜約30重量%の量で当該電気伝導性のペースト組成物の中に存在する。
【0038】
背面接点ペースト組成物の中に添加剤を含めることも本発明の範囲に含まれる。例えば、増粘剤(粘着性付与剤)、安定剤、分散剤、粘度調整剤など、化合物を単独または組み合わせて含むことが望ましい場合がある。このような成分は当該技術分野で周知である。このような成分が含まれる場合、このような成分の量は、所望される剥離ペーストの特性に応じて、日常的な実験によって決定されてもよい。
【0039】
当該背面接点ペースト組成物は、当該技術分野で公知のまたは開発されるべきペースト組成物を調製するためのいずれの方法によって調製されてもよく、調製方法は特に重要ではない。例えば、当該ペーストの構成要素は、分散した均一なペーストを作製するために、混合機を用いるなどして混合され、次いで例えば三本ロール練り機に通されてもよい。
【0040】
太陽電池産業では、セルの性能を向上させるために全面裏面電界を有する太陽電池は非常に望ましく、このようなBSFは、太陽電池の1ワットあたりのコストを低下させるための、シリコン系太陽電池の進化の一部分である。本発明に係る剥離ペースト組成物は、裏面電界の形成後にほぼすべての過剰のアルミニウム粉末を除去し、低焼成温度の背面接点銀バスバーを付与するための固体基部を得て、太陽電池の性能を押し上げることにおいて有効である。背面接点ペーストの付与後の低温再焼成は、太陽電池の電気性能に著しい影響を及ぼさず、本発明に係る背面接点銀ペーストは、低温で良好に焼結し、良好なはんだ付け性を有し、基板への十分な接着を与える。従って、本発明の方法および銀ペーストを利用することは、ソーラー産業がグリッドパリティにより近づくための助けとなるであろう。
【0041】
本発明の実施形態は、これより、以下の、限定を意図しない実施例と併せて記載される。
【実施例】
【0042】
太陽電池の調製および分析
従来の銀ペーストの成分である、70%の銀、8%のガラス、および22%のビヒクルを合わせることにより剥離ペースト組成物を調製した。4つの同一の太陽電池を以下のとおりに調製した:55Ω/D(sc)の面積抵抗を有する金属化の準備が整っているP型の単結晶性の(sc)ソーラーウェーハの裏面に、アルミニウムペースト(RuXing 8252X)を印刷し、150℃で乾燥した。背面接点バスバーが望まれる乾燥したアルミニウムの上に剥離ペースト組成物を印刷し、次いでボックスオーブン(box oven)中、150℃で5分間乾燥した。市販の銀ペースト(CL80−9271、Heraeus Incorporated、ペンシルベニア州、ウエスト・コンショホッケン(W.Conshohocken)、から市販されている)をこのウェーハの前面に付与し、ボックスオーブン中、150℃で5分間乾燥した。得られたセルを図3に示す。次いでこのセルを、赤外ランプ加熱される6ゾーンのBTU炉の中で、400℃、400℃、550℃、700℃、800℃、および920℃のゾーン設定で5000mm/分のベルト速度を用いた同時焼成による金属化および接点形成にかけた。次いでこのセルを、60〜80℃/秒の速度で急速冷却した。過剰のアルミニウムが剥離された後の得られたセルを図4に示す。
【0043】
得られた太陽電池を、I−Vテスターを使用して試験した。既知の強度の太陽光を模擬するためにI−Vテスターの中のXeアーク灯を使用し、この太陽電池の前面を照射してI−V曲線を生成させた。この曲線を使用して、電気性能比較を与えるこの測定方法に共通の種々のパラメータを決定した。このパラメータには、短絡電流密度(Jsc)、開回路電圧(Voc)、曲線因子、エネルギー変換効率(効率)、最大電力(Pmax)、直列抵抗(Rse)、およびシャント抵抗(並列抵抗)(Rsh)が含まれる。データを表1にまとめる。
【0044】
【表1】

【0045】
70%の銀、4%の低Tgガラス、および26%のビヒクルを含有する背面接点銀ペーストを、剥離領域の上に付与し、次いで150〜200℃で乾燥し、低温(550℃)で焼成した。この低温焼成背面接点銀ペーストは焼結し、固体のアルミニウム−シリコン共晶の表面に銀バスバーとして接着した。図5に示すように、焼結した銀の膜が、アルミニウム−シリコン共晶の表面の上に直接形成された。第2の低温焼成の後、これらの太陽電池の電気性能を、上記のようにして再度測定した。上記セルについての電気性能データを下記の表2にまとめる。低温再焼成の後にも、ほとんど何の分解も観察されなかったということが理解できる。低温再焼成の前後でのJsc、Voc、曲線因子(FF)、および効率のグラフを図6〜9に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
焼成後、BSFの品質を調べるために、裏面電界の断面のSEM写真を撮影した。図10〜11に示すように、アルミニウム層(BSF)が、アルミニウムの下および剥離領域の下に連続的に形成された。過剰のアルミニウム層は、剥離ペーストによってほとんど完全に除去され、はんだ付けおよび接合の目的のための背面接点銀層を付与するという次の加工工程のための固体のきれいな表面を与えた。図10は、Alの下および剥離領域の下に形成されている連続的なAl BSF層を示し、他方、図11は、より高い拡大倍率で、剥離領域の下のBSFを示す。
【0048】
セルの接着を評価するために、はんだコーティングされた銅ワイヤー(2mm幅、200μm厚)を裏面銀の上にはんだ付けし、はんだ接合部を生成した。フラックスをこの接合部に与え、ワイヤーを300℃で裏面の銀にはんだ付けした。はんだごてを使用してはんだを加熱し、裏面の銀の上へとはんだを流した。6インチ(約15.2cm)の太陽電池の1つの端部から4インチ(約10.2cm)のリードがぶら下がるように、この銅ワイヤーを長さ約10インチ(約25.4cm)に切断した。この銅鉛ワイヤーをフォースゲージに取り付け、セルを、フォースゲージから一定速度で遠ざかる台の上に固定した。瞬間の力を記録するためにコンピューターをフォースゲージに取り付けた。接合部に対して180°の角度でワイヤーを引くことにより、接着を測定した。複数のデータ点を集めた。得られた接着プロファイルを図12に示す。
【0049】
比較の太陽電池の調製および分析
背面接点銀を印刷して乾燥し、裏面アルミニウムを印刷して乾燥し、前面接点銀を印刷して乾燥することにより、6インチ×6インチ(約15.2cm×約15.2cm)の多結晶ウェーハ上および5インチ×5インチ(約12.7cm×約12.7cm)の単結晶ウェーハ上に従来の太陽電池を調製した。すべての付与した銀およびアルミニウムペーストは市販のペーストであり、すべての乾燥は、150℃で5分間実施した。本発明に係る太陽電池を、上記のようにして同一のウェーハ上に調製した。これら比較のセルおよび本発明のセルの電気性能を上記のようにして測定し、Vocについての結果を、図13および14にグラフによって示す。6インチ×6インチ(約15.2cm×約15.2cm)の多結晶ウェーハ上の本発明のセルにおいてVocの4.5mVのゲイン、および5インチ×5インチ(約12.7cm×約12.7cm)の単結晶ウェーハ上の本発明のセルにおいて6.5mVのゲインがあったことが理解できる。これらの結果は、全面BSFを有する太陽電池から得られる優れた結果を実証する。
【0050】
上記の実施形態の広範な独創的な技術思想から逸脱せずに、上記の実施形態に変更を加えることができるであろうということは、当業者なら分かるであろう。それゆえ、本発明は開示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の趣旨および範囲の中の改変にも及ぶということが意図されているということを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面接点銀バスバーを太陽電池のアルミニウム裏面電界(BSF)に付与するための方法であって、
(a)前面および裏面を有する太陽電池基板を準備する工程と;
(b)前記太陽電池基板の前記裏面の上に全面アルミニウム裏打ち層を印刷する工程と;
(c)印刷された前記アルミニウム裏打ち層を乾燥して、全面アルミニウム層を得る工程と;
(d)銀バスバーが所望される領域の前記全面アルミニウム層の上に剥離ペーストを印刷し乾燥する工程と;
(e)前記太陽電池基板の前記前面の上に前面接点銀ペーストを印刷し乾燥して、前面グリッド電極を生成する工程と;
(f)前記太陽電池の前記前面および裏面を同時焼成し冷却する工程であって、焼成の間に前記剥離ペーストは、前記アルミニウム層の中の過剰のアルミニウム粉末を濡らし、そして、前記太陽電池の冷却の間、前記剥離ペーストは、収縮し、固化し、前記過剰のアルミニウム粉末とともに剥離して、空いた領域を有する全面アルミニウムBSFを残す工程と;
(g)前記BSFの前記空いた領域に背面接点銀ペーストを印刷し、乾燥し、焼成して、前記銀バスバーを得る工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記太陽電池基板は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(f)の前記同時焼成は、少なくとも約700〜800℃のピーク温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(f)の前記冷却は約60〜80℃/秒の速度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(g)の前記焼成は約500℃で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記剥離ペーストは、
(a)前記ペーストの30〜80重量%の量で、かつ約0.1〜5.0ミクロン(0.1〜5.0μm)の粒子サイズを有する粉末系;
(b)前記ペーストの3〜20重量%の量で、かつ約0.1〜4.5ミクロン(0.1〜4.5μm)の粒子サイズおよび300〜800℃のTgを有するガラス系;ならびに
(c)前記ペーストの10〜30重量%の量の有機系
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記粉末系は、銀粉末、銅粉末、および金属酸化物粉末からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含み、前記金属酸化物粉末は、前記アルミニウム粉末と結合し、焼成の間に収縮する金属酸化物粉末である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記背面接点銀ペーストは約550℃未満で焼成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記剥離ペーストは、
(a)銀粒子、銅粒子、および金属酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも1つのタイプの粒子であって、前記粒子は0.1〜5.0ミクロン(0.1〜5.0μm)の粒子サイズを有する、粒子;
(b)0.1〜4.5ミクロン(0.1〜4.5μm)の粒子サイズおよび300〜800℃のTgを有するガラスフリット;ならびに
(c)有機ビヒクル
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法によって形成される太陽電池。
【請求項11】
工程(f)の前記同時焼成は少なくとも約700〜800℃のピーク温度で実施される、請求項10に記載の太陽電池。
【請求項12】
工程(f)の前記冷却は約60〜80℃/秒の速度で実施される、請求項10に記載の太陽電池。
【請求項13】
工程(g)の前記焼成は約500℃で実施される、請求項10に記載の太陽電池。
【請求項14】
前記剥離ペーストは、
(a)前記ペーストの30〜80重量%の量で、かつ約0.1〜5.0ミクロン(0.1〜5.0μm)の粒子サイズを有する粉末系;
(b)前記ペーストの3〜20重量%の量で、かつ約0.1〜4.5ミクロン(0.1〜4.5μm)の粒子サイズおよび300〜800℃のTgを有するガラス系;ならびに
(c)前記ペーストの10〜30重量%の量の有機系
を含む、請求項10に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記背面接点銀ペーストは約550℃未満で焼成される、請求項10に記載の太陽電池。
【請求項16】
前記剥離ペーストは、
(a)銀粒子、銅粒子、および金属酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも1つのタイプの粒子であって、前記粒子は0.1〜5.0ミクロン(0.1〜5.0μm)の粒子サイズを有する、粒子;
(b)0.1〜4.5ミクロン(0.1〜4.5μm)の粒子サイズおよび300〜800℃のTgを有するガラスフリット;ならびに
(c)有機ビヒクル
を含む、請求項10に記載の太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−520015(P2013−520015A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553025(P2012−553025)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2011/024503
【国際公開番号】WO2011/100531
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512127176)ヘレウス プレシャス メタルズ ノース アメリカ コンショホーケン エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】