説明

太陽電池セルの測定装置、及び測定方法

【課題】電池用電極材に対して、簡便に評価を行うことができる厚さ測定装置、及び厚さ測定方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様にかかる測定装置は、太陽電池のセル21の電極の抵抗分布を測定する測定装置であって、セル21との間にエアギャップを形成するため、セル21にエアを噴出する測定ヘッド31と、測定ヘッド31に設けられたコイル41と、コイル41に接続された発振器50と、測定ヘッド31とセル21との相対位置を変化させる可動部13と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルの測定装置、及び測定方法に関し、特に詳しくは太陽電池セルの電極の抵抗分布を測定する測定装置、及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、複数のセルをインターコネクタによって直列に接続することで構成されている。特許文献1には、太陽電池モジュールの接地状態を測定する方法、及び装置が開示されている。
【0003】
ところで、太陽電池の主流であるシリコン結晶系太陽電池は、p型のシリコン基板によって形成されている。そして、p型基板の裏面にアルミペーストをスクリーン印刷して、焼き固めている。これにより、シリコン基板裏面に導電面が形成されるとともに、アルミニウムがシリコンに拡散してp+層が形成される。導電面は、+電極として電流を取り出すための電極となる。P+層は、電極とともに、光電子を跳ね返すポテンシャル(バックサーフェイスフィールド)を作り出すために形成される。
【0004】
さらに、焼き固められたアルミペーストには、隣接するセルを接続するために、インターコネクタのタブ線が接続される。アルミペーストには、タブ線を半田付けできないため、半田付けする箇所に銀ペーストを焼き付ける。通常、銀ペーストを印刷して、その上にアルミペーストのパターンを印刷する。そして、これらを焼成することで、銀ペーストとアルミペーストが確実に接続され、導電面を低抵抗化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−231012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アルミと銀の接触が不完全である場合や、両ペーストの相性が悪い場合や、印刷位置ずれが生じている場合には、接合部の電気抵抗が劣化してしまう。さらに、銀ペーストを乗り越える段差部分で、クラックが生じて、抵抗が劣化してしまうことがある。特に、本件出願の発明者がアルミと銀との接合部において、抵抗を測定すると、アルミが銀を乗り越える方向で、抵抗が他の箇所よりも劣化していることが分かった。このような抵抗の劣化箇所を評価するためには、導電面の抵抗分布を測定することが望まれる。すなわち、抵抗分布を測定することで、太陽電池セルの製造工程や材料を評価することができる。そして、抵抗分布を評価することで、太陽電池セルの高品質に資することができる。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、太陽電池セルの電極の抵抗分布を測定することができる測定装置、及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る測定装置は、太陽電池のセルの電極の抵抗分布を測定する測定装置であって、前記セルとの間にエアギャップを形成するため、前記セルにエアを噴出するヘッドと、前記ヘッドに設けられたコイルと、前記コイルに接続された発振器と、前記コイルと前記セルとの相対位置を変化させる位置変化手段と、を備えるものである。このようにすることで、セルに形成された電極の抵抗分布を測定することができる。
【0009】
上記の測定装置において、前記発振器と前記コイルを接続したときの発振周波数に応じて、前記抵抗分布を測定してもよい。発振器の発振周波数を測定することで、抵抗分布を容易に測定することができるようになる。
【0010】
上記の測定装置において、前記ヘッドには、前記コイルが巻き付けられた芯材が設けられ、一端が開放した静電シールドが、前記コイルと前記セルとの間に配置されるよう前記芯材の周囲に取り付けられていてもよい。これにより、コイルに生じる浮遊容量を低減することができ、精度良く測定を行うことができる。
【0011】
上記の測定装置において、前記発振器への接続を前記コイルから前記静電シールドへと切り替えるスイッチをさらに備えていてもよい。これにより、様々な測定を行うことができる。
【0012】
上記の測定装置において、中心線と、外部被覆と、前記中心線と前記外部被覆との間に設けられた内部被覆と、を備えたトライアキシャルケーブルによって、前記コイルと前記発振器が接続され、前記中心線が前記コイルの一端と前記発振器の出力とを接続し、前記外部被覆が前記コイルの他端と接続し、前記内部被覆が前記発振器の出力とドライバを介して接続されていてもよい。これにより、寄生容量の発生を抑制することができ、より正確な測定が可能になる。
【0013】
上記の測定装置において、前記セルの前記電極が露出した状態で、測定が行われていてもよい。これにより、正確な測定が可能になる。
【0014】
本発明の一態様に係る測定装置は、太陽電池のセルの電極の抵抗分布を測定する測定方法であって、前記セルとの間にエアギャップを形成するため、ヘッドから前記セルにエアを噴出するステップと、発振器によって、前記ヘッドに設けられたコイルに交流磁界を発生させるステップと、前記ヘッドと前記セルを電極面に沿って相対移動させて、前記発振器の発振周波数を求めるステップと、を備えるものである。このようにすることで、セルに形成された電極の抵抗分布を測定することができる。
【0015】
上記の測定方法において、前記ヘッドには、前記コイルが巻き付けられた芯材が設けられ、一端が開放した静電シールドが、前記コイルと前記セルとの間に配置されるよう前記芯材の周囲に取り付けられていてもよい。これにより、コイルに生じる浮遊容量を低減することができ、精度良く測定を行うことができる。
【0016】
上記の測定方法において、中心線と、外部被覆と、前記中心線と前記外部被覆との間に設けられた内部被覆と、を備えたトライアキシャルケーブルによって、前記コイルと前記発振器が接続され、前記中心線が前記コイルの一端と前記発振器の出力とを接続し、前記外部被覆が前記コイルの他端と接続し、前記内部被覆が前記発振器の出力とドライバを介して接続されていてもよい。これにより、寄生容量の発生を抑制することができ、より正確な測定が可能になる。
【0017】
上記の測定方法において、前記セルの前記電極が露出した状態で、測定が行われていてもよい。これにより、正確な測定が可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、太陽電池セルの電極の抵抗分布を測定することができる測定装置、及び測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】太陽電池モジュールの構成に模式的に示す断面図である。
【図2】本実施の形態にかかる測定装置の全体構成を模式的に示す図である。
【図3】測定装置の測定アームの構成を模式的に示す図である。
【図4】測定装置の測定ヘッドを模式的に示す側面図である。
【図5】測定装置の測定ヘッドを模式的に示す下面図である。
【図6】測定装置の測定手法を説明するための図である。
【図7】測定装置の測定回路の一例を模式的に示す側面図である。
【図8】測定装置において、抵抗分布を測定する手法を説明するための図である。
【図9】測定装置の測定回路の変形例を示す図である。
【図10】抵抗分布の測定結果を示す2次元マップである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0021】
本実施の形態にかかる測定装置は、コイルを有するヘッドを用いて、太陽電池のセルの裏面の抵抗分布を測定するものである。さらに、測定装置は、太陽電池のモジュールの反り量を測定することができる。まず、モジュールの反り量の測定原理について説明する。本実施の形態では、本件の出願人が出願した、特願2011−103492号と同様の原理を用いて、反り量を測定している。
【0022】
図1は、太陽電池モジュール20の構成を簡略化して示す断面図である。ここでは、多結晶等の結晶系シリコンのセル21を用いた太陽電池モジュール20が示されている。太陽電池モジュール20は、基板22と、セル21と、裏面材23とが積層された構成となっており、セル21が基板22と裏面材23の間に挟まれている。また、基板22とセル21との間とに充填材24が配置され、セル21と裏面材23の間に充填材25が配置されている。基板22は、例えば、透光性のガラス基板であり、裏面材23は、アルミ箔を挟持した耐候性を有するフッ素系樹脂などである。充填材24は、基板22と略同じ屈折率を有するエチレンビニルアセテート(EVA)等によって形成されている。充填材25も充填材24と同様のEVAである。充填材24、25によって、セル21が基板22と裏面材23に貼り合わせられている。より具体的には、EVAを均一に加熱させて、架橋することで、セル21が基板22と裏面材23とにラミネートされる。基板22、裏面材23が、セル21を保護する保護材となる。
【0023】
セル21には、表面電極21aと裏面電極21bが形成されている。セル21の両面に金属ペーストをスクリーン印刷方法などによりそれぞれ印刷し、焼成することによって、表面電極21aと裏面電極21bを形成することができる。表面電極21aの材料には、例えばアルミニウムが用いられ、裏面電極21bの材料には、アルミニウム、あるいは銀が用いられる。従って、表面電極21aと裏面電極21bは反磁性を有する導電面となる。表面電極21aは、インターコネクタ(図示せず)を介して隣接するセルの裏面電極21bと接続される。これにより、複数のセル21が直列接続される。例えば、1つのセル21の発電量が0.5V×8A=4Wとした場合、6×8のマトリクス状にセル21を配置すると、1モジュール当たりの発電量は、24V×8A=192Wとなる。
【0024】
なお、セル21が6インチであるとすると、6×8の太陽電池モジュール20は、約1.3m×1.0mの大きさとなる。本実施の形態に係る反り測定装置は、基板22側から導体面までの距離を測定することで、太陽電池モジュール20の反りを測定する。例えば、モジュール化後において、基板22の表面からセル21の導体面の距離を測定することによって、EVAの厚さ分布、すなわち、反り量を測定することができる。
【0025】
(全体構成)
測定装置の全体構成に付いて図2を用いて説明する。図2は、測定装置の全体構成を模式的に示す斜視図である。図2に示すように、測定装置は、ステージ11とカバー12と可動部13とクランプ14と恒温槽16と制御装置17と測定アーム30とを備えている。ステージ11上には、測定対象である太陽電池モジュール20が載置される。カバー12はステージ11に対して開閉可能に設けられている。太陽電池モジュール20に対して測定を行う際は、カバー12が閉じられる。一方、太陽電池モジュール20を取り出す、又は設置する際には、カバー12が開けられる。ステージ11上に、太陽電池モジュール20が載置されている。
【0026】
太陽電池モジュール20は、クランプ14に把持される。すなわち、クランプ14は、太陽電池モジュール20の一端を把持する。クランプ14は、可動部13に、スライド可能に取り付けられている。クランプ14は、可動部13に対して、Y方向に移動する。また、可動部13は、ステージ11にスライド可能に取り付けられている。可動部13は、ステージ11上をX方向に移動する。クランプ14をY方向、可動部13をX方向に駆動することで、太陽電池モジュール20がXY方向に自在に移動する。なお、コンピュータ等である制御装置17によってクランプ14と可動部13を制御して、太陽電池モジュール20の移動を自動制御にしてもよい。これにより、太陽電池モジュール20の全面測定を自動で行うことができる。
【0027】
さらに、ステージ11には、測定アーム30が取り付けられている。測定アーム30は、ステージ11の奥側(−Y側)の端から、ステージ11の中央まで延設している。測定アーム30の先端部分は、太陽電池モジュール20の上に配置される。すなわち、測定アーム30に先端に設けられた測定ヘッドの直下に太陽電池モジュール20が配置される。測定ヘッドが太陽電池モジュール20に対して測定を行う。そして、クランプ14と可動部13によって太陽電池モジュール20をXY方向に移動することで、測定ヘッドと太陽電池モジュール20の相対位置が変化する。太陽電池モジュール20の任意の位置を測定することができる。測定ヘッドと太陽電池モジュール20を徐々にずらしていくことで、太陽電池モジュール20の全面を測定することができる。
【0028】
さらに、ステージ11の端部には、恒温槽16が取り付けられている。恒温槽16は、測定アーム30の近傍に配置されている。恒温槽16の内部には、測定を行うための発振器が収納されている。後述するように、発振器の発振周波数に応じて、反り量を測定する。ここでは、温度変化による発振周波数の温度変動が問題となるため、恒温槽16は、発振器等を所定の温度に保っている。例えば、恒温槽16は、46℃でほぼ一定になるように温度調整している。例えば、恒温槽16は、発振器を収納する真鍮などの金属製の箱を有している。さらに、金属製の箱の周りが発泡スチロールなどの断熱材で覆われている。制御装置17は、恒温槽16を一定の温度で保つように温調する。さらには、制御装置17は、パーソナルコンピュータ等の演算処理装置ではあり。発振器の発振周波数を記憶して、太陽電池モジュール20内のセル21の反り分布を測定する。
【0029】
(測定アーム)
次に、測定アーム30の構成に付いて、図3を用いて説明する。図3は、測定アーム30の構成を模式的に示す側面図である。測定部となる測定アーム30は、測定ヘッド31、板バネ32、ベース33、先端アーム34、ベースアーム35、高さ調整機構38、差動トランス60を備えている。
【0030】
ステージ11の端には、ベース33が立設されている。ベース33には、ベースアーム35が取り付けられている。すなわち、ベース33は、ベースアーム35を支持している。ベースアーム35は、ベース33からY方向に延びている。ベースアーム35よりも先端側には、Y方向に延びる先端アーム34が配置されている。そして、先端アーム34とベースアーム35は、一対の板バネ32によって連結されている。すなわち、ベースアーム35は、板バネ32を介して、先端アーム34を支持している。
【0031】
一対の板バネ32は、上下に離間して配置されている。そして、板バネ32は、先端アーム34の上面と下面に取り付けられている。一対の板バネ32は、板バネ式平行リンク機構を構成している。これにより、測定ヘッド31が略一定の力で太陽電池モジュール20に押し付けられる。板バネ32が撓むことで、先端アーム34が、ベースアーム35に対して、上下に変位する。先端アーム34の先端には、測定ヘッド31が取り付けられている。板バネ32は、先端アーム34と測定ヘッド31の重量等に応じて撓んでいる。もちろん、板バネ式平行リンクに限らず、太陽電池モジュール20の表面高さに応じて測定ヘッド31を上下に変位させる構造であればよい。
【0032】
測定ヘッド31には、測定を行うための回路が設けられている。また、測定ヘッド31には、噴出口が設けられている。噴出口からは、太陽電池モジュール20に対してエアが噴出する。エアが太陽電池モジュール20の表面に沿って流れることによって、測定ヘッド31と太陽電池モジュール20の表面との間に、エアギャップ(隙間)が形成される。エアギャップは、エア圧力によって変化する。また、エア圧力を一定の状態とし、太陽電池モジュール20の表面高さが変化すると、エアギャップが一定になるように、測定ヘッド31が上下する。太陽電池モジュール20の表面高さやエアギャップ長に応じて、板バネ32の撓み量が変化する。例えば、エアを停止した状態で、板バネ32の撓み量が小さくなる。エアの圧力を高くして、エアギャップが大きくなると、板バネ32の撓み量が大きくなる。一対の板バネ32は、平行板バネリンク機構を構成している。エア圧力を一定にすると、板バネ32が下方向(−Z方向)に向かって、略一定の弾性力を発生する。この弾性力によって測定ヘッド31が太陽電池モジュール20に押し付けられ、エアギャップが一定となる。一定のエアギャップを安定して得ることができる。さらに、エア圧力を調整することで、所望のエアギャップ長を得ることができる。従って、適当なエアギャップを保った状態で、測定ヘッド31をエア浮上させることができる。なお、測定ヘッド31の詳細な構成については、後述する。
【0033】
ベースアーム35には、高さ調整機構38が取り付けられている。高さ調整機構38は、例えば、マイクロメータであり、ベースアーム35を上下方向(Z方向)に送り出すことができる。あるいは、高さ調整機構38としてリニアガイド機構とモータを用い、ベースアーム35を自動送りするようにしてもよい。ベース33に対して、ベースアーム35がZ方向に移動する。高さ調整機構38によって、測定ヘッド31と太陽電池モジュール20との距離が変化する。太陽電池モジュール20に応じて高さを調整することで、様々な厚さの太陽電池モジュール20を評価することができる。なお、高さ調整機構38の取り付け位置は、ベースアーム35に限られるものではない。例えば、先端アーム34や測定ヘッド31に高さ調整機構38を取り付けても良い。
【0034】
ベースアーム35には、エアによる浮上量を測定する差動トランス60の主要部分が設けられている。具体的には、ベースアーム35には、1次コイル63と2次コイル62が取り付けられている。1次コイル63の上下両側には2次コイル62が配置されている。2次コイル62は、1次コイル63を挟んで、対称に配置されている。また、先端アーム34には、樹脂サポート39が設けられている。樹脂サポート39は、差動トランス60のコア61を支持している。コア61は、先端アーム34と連動する。高周波用差動トランスを実現するため、コア61には、例えば、フェライトコアが用いられる。コア61は、1次コイル63の内部に配置されている。同様に、コア61は、2次コイル62の内部に配置されている。コア61が基準となる高さにある場合、1次コイル63の上下両側に設けられた2次コイル62に対して、コア61が対称に配置される。
【0035】
1次コイル63には、励磁用のケーブル66が接続されている。なお、後述するようにケーブル66には、後述する発振器の高周波電圧がバッファアンプを介して供給されている。2次コイル62には、検出用のケーブル67が接続されている。ケーブル66、及びケーブル67は、例えば、同軸ケーブルである。ケーブル66を介して、交流電圧を供給することで、1次コイル63が励磁される。先端アーム34がベースアーム35に対して上下すると、2次コイル62に対して、コア61が上下する。コア61が基準となる高さにある場合、上下の2次コイル62に誘起される交流電圧(誘起電圧)は等しくなる。よって、差動電圧が0となる。コア61が基準高さから上下にずれると、2次コイル63に対するコア61の位置が対称でなくなる。よって、上下の2次コイル62の誘起電圧に差が生じ、その差に応じた交流電圧(差動電圧)が現れる。ケーブル67を介して差動電圧を検出することで、コア61の高さ変化を測定することができる。すなわち、ベースアーム35に対する先端アーム34の位置変化を測定することができる。先端アーム34の位置変化は、制御装置17に入力される。
【0036】
差動トランス60によって、エアによる浮上量を測定することができる。例えば、エアの圧力が変化すると、測定ヘッド31と太陽電池モジュール20との間のエアギャップが変化する。よって、ベースアーム35に対する測定ヘッド31及び測定ヘッド31を支持する先端アーム34の位置が上下に変化する。すなわち、先端アーム34を支持する板バネ32の撓み量が変化する。従って、2次コイル62に対するコア61の位置が、上下に変化する。コア61の位置変化を2次コイル62の差動電圧によって測定する。このようにすることで、エア圧力とエアによる浮上量の関係を求めることができる。
【0037】
例えば、エアの噴出を停止させて、太陽電池モジュール20と測定ヘッド31を接触させた状態として、差動トランス60での測定を行う。さらに、所定の圧力のエアを噴出させてエア浮上させた状態で、差動トランス60で測定を行う。この2つの測定値を比較することで、あるエア圧力におけるエア浮上量を測定することができる。このエア浮上量が、太陽電池モジュール20と測定ヘッド31とのエアギャップ長となる。さらには、エア圧力を徐々に変えていくことで、エア圧力と、エア浮上量との関係を求めることができる。差動トランス60では、先端アーム34側のコア61と、ベースアーム35側のコイルが接触していない。すなわち、差動トランス60は、測定対象に非接触で測定することができる非接触式のセンサである。非接触式のセンサを用いることで、エアギャップに対する影響を抑制することができる。すなわち、非接触式センサである差動トランス60を用いているため、差動トランス側から、板バネ32に力が加わらない。板バネ32を柔らかくすることができ、動作をしなやかにすることができる。よって、エアギャップを一定に保つことができる。もちろん、差動トランス60以外のセンサで、ベースアーム35に対する測定ヘッド31の上下位置を測定しても良い。
【0038】
さらに、測定対象の太陽電池モジュール20をステージ11上に載置した場合、高さ調整機構38で測定ヘッド31を下げていく。測定ヘッド31が太陽電池モジュール20の表面に対して十分離れた状態では、エア浮上していない。そして、測定ヘッド31を下げていき、測定ヘッド31が太陽電池モジュール20に対してある距離まで近づくと、エア浮上する。すると、ベースアーム35に対する測定ヘッド31の高さが変化する。従って、差動トランス60によって、エア浮上する高さを確認することができる。なお、モータ等で高さを自動制御する場合、接点などで、エア浮上する高さを検知しても良い。例えば、先端アーム34やベースアーム35に接点などを設ける。こうすることで、エア浮上したことを検知することができる。そして、エア浮上を検知した時点から、所定量だけ測定ヘッド31を下降させる。こうすることで、板バネ32の平行リンクによるエアギャップへの圧力を一定にし、エアギャップ長を正確に制御することができる。
【0039】
測定ヘッド31が、太陽電池モジュール20に対する測定を行う。測定ヘッド31の直下の位置で、太陽電池モジュール20に対する測定を行うことができる。その位置での測定が終了したら、太陽電池モジュール20を所定量だけ、XY方向に変位させる。すなわち、図2で示したように、太陽電池モジュール20をXY方向に移動する。そして、移動後の位置で、同様に測定を行う。これを繰り返すことで、太陽電池モジュール20の全体に対して測定を行うことができる。
【0040】
(測定ヘッド)
次に、測定ヘッド31の構成について、図4と図5を用いて説明する。図4は、測定ヘッド31の構成を模式的に示す側面図であり、図5は底面から見た構成を模式的に示す図である。
【0041】
測定ヘッド31は、本体部(図示を省略)の凸部40とコイル41と噴出口42と容量電極43と芯材44を有している。測定ヘッド31の本体部は例えば、PEEK材などの樹脂材料によって形成されている。本体部は、例えば、8mm×8mmの矩形状を有しており、Z方向に20mmの長さを有している。さらに、本体部は、下側に突出した突出部40を有している。凸部40は、例えば、直径4mmの円形になっている。
凸部40の下側中央には、芯材44が設けられている。芯材44は、例えば、略直方体の部材であり、フェライト等の強磁性体によって形成されている。そして、芯材44の周囲に、コイル41が巻き付けられている。従って、芯材44はコイル41のフェライトコアとなる。芯材44は、例えば、0.3mm×0.3mmの角柱状となっている。
【0042】
さらに、芯材44の下側には、容量電極43が設けられている。容量電極43は、芯材44の大きさに応じた角穴を有する平板から構成され、一端が開放されている。芯材44が容量電極43の角穴に挿入され、容量電極43と遊嵌する。芯材44は、容量電極43を挿入する角穴まで切り欠かれた切欠部43aを有している。切欠部43aを除いた容量電極43の外形は、芯材44の中心を中心とする円形になっている。換言すると、容量電極43は、平面視においてC字型のリング形状になっている。容量電極43の外形は、直径1mm程度になっている。芯材44の大きさが0.3mm□となっているため、中空部分は略0.4mm□となっている。そして、芯材44の下端部分が容量電極43の角穴に挿入される。
さらに、凸部40の下側には、カバーガラス46が接着されている。なお、図5では、説明の明確化のため、カバーガラス46を省略して図示している。カバーガラス46は、容量電極43、及び芯材44を覆うように、凸部40の下側全体に設けられている。これにより、容量電極43が、セル21に接触して、汚染されるのを防ぐことができる。カバーガラス46は例えば、0.03mmの厚さとなっている。
【0043】
容量電極43の下面は平面になっており、カバーガラス46を介して太陽電池モジュール20と対向する。容量電極43と太陽電池モジュール20とで容量(キャパシタ)が形成される。容量電極43は、導電体によって形成され、例えば、加工の容易な真鍮などを用いることができる。
【0044】
さらに、測定ヘッド31には、エアの噴出口42が設けられている。凸部40、及びカバーガラス46に設けられた貫通孔がエアの噴出口42となる。噴出口42は、容量電極43の外側を通っている。ここでは、4つの噴出口42が凸部40に設けられている。噴出口42のそれぞれは、直径0.25mmの円形である。複数の噴出口を円周方向に沿ってほぼ等間隔に配置している。なお、噴出口42は、途中で直径が変化している。例えば、下側の直径を0.25mmとし、上側の直径を1mmとすることができる。また、直径が細い領域を測定ヘッド31の下端から1mmとすることができる。カバーガラス46、及び凸部40に設けられた噴出口42には、エアが供給される。
従って、噴出口42から下方にエア(空気)が噴出される。すなわち、図4の矢印方向にエアが噴出される。このエアは、太陽電池モジュール20の表面に沿って、外側に流れていく。これにより、測定ヘッド31の下端と、太陽電池モジュール20との間に、エアギャップが形成される。すなわち、測定ヘッド31が太陽電池モジュール20の上でエア浮上する。例えば、エアギャップが10μmとなるような、圧力でエアを噴出する。なお、噴出口42から噴出する気体は、エア(空気)に限らず、窒素などの他の気体であってもよい。
【0045】
芯材44の外周には、コイル41が巻き付けられている。例えば、コイルは150ターンで芯材44の周囲に巻かれている。芯材44の下端は、コイル41よりも下側に突出している。そして、芯材44のコイル41よりも下側に突出した部分に、容量電極43が取り付けられる。後述するように、コイル41には、発振器からの高周波電圧が供給されている。よって、コイル41は、交流磁界を生成する。コイル41に電流が流れると、コイル41の中心ではZ方向に磁力線が発生する。すなわち、XY面における測定ヘッド31の中心では、太陽電池モジュール20に向かっていく方向、又はその反対方向に磁力線が発生する。
【0046】
コイル41と、太陽電池モジュール20との間には、静電シールドとなる容量電極43が配置されている。コイル41によって発生したz方向の磁力線は、容量電極43の中空部分、及び切欠部43aを通過する。
【0047】
次に、測定ヘッド31の回路構成に付いて図6を用いて説明する。図6は、測定ヘッド31の回路構成を示す回路図である。図6では、基板22が上側で裏面材23が下側になるように、太陽電池モジュール20を配置している。測定ヘッド31には、上述のように、コイル41と容量電極43が設けられている。さらに、コイル41の一端は、スイッチ47に接続され、他端はグランドに接続されている。また、容量電極43もスイッチ47に接続されている。容量電極43と対向する表面電極21aはグランドに接続されていてもよい。容量電極43とセルの表面電極21aとが容量(キャパシタ)を形成する。すなわち、表面電極21aが容量を構成する他方の容量電極となる。
【0048】
スイッチ47は、導電線であるケーブル51を介して、発振器50に接続されている。すなわち、発振器50で生成される高周波電圧は、ケーブル51を介して、スイッチ47に供給される。スイッチ47は、発振器50の出力先を切り替える。すなわち、スイッチ47は、発振器50の接続先をコイル41から容量電極43、又は容量電極43からコイル41に切り替える。スイッチ47によって、コイル41、及び容量電極43の一方に、発振器50からの高周波電圧が印加される。コイル41を発振器50に接続している状態では、容量電極43をグランドに接続する。反り測定時には、発振器50を常時コイル41に接続する。なお、コイル41の一端、及びセル21の導電面は接地されていてもよい。セル21の導電面は十分大きな面積を有しており、浮遊容量だけで交流的に十分接地されている場合は、セル21の導電面を接地しなくてもよい。
【0049】
次に、具体的な測定回路の構成に付いて図7を用いて説明する。図7は、測定回路の一例を示す回路図である。発振器50は、LC発振回路であり、具体的には、コルピッツ型発振回路である。発振器50は、コイル52、コンデンサ53、抵抗54等を有している。発振器50の出力とグランドの間には、2つのコンデンサ53が直列に接続されている。また、コイル52は、2つのコンデンサ53と並列に接続されている。発振周波数を求めるため、発振器50の出力側では、バッファ用のトランジスタが周波数カウンタに接続される。また、トランジスタ55には、例えば、正確に制御された5Vの電源電圧が供給され、発振周波数の安定化を図っている。
【0050】
また、発振器50の出力端子は、ケーブル51を介してスイッチ47と接続されている。発振器50のコイル52は、グランドとケーブル51間に接続される。なお、コイル41の一端はスイッチ47を介して、発振器50の出力端子と接続され、他端はケーブル51である同軸ケーブルの被覆線を介して、グランドに接続されている。よって、発振器50のコイル52と測定ヘッド31のコイル41とは並列に接続されている。
【0051】
また、発振器50の周波数カウンタへの出力は、分岐されて、バッファアンプ56、及び同期検波回路57に接続される。バッファアンプ56の出力は、ケーブル66を介して、差動トランス60に接続される。バッファアンプ56は、発振器50の出力をバッファリングして、差動トランス60に出力する。従って、発振器50からの高周波によって、差動トランス60の1次コイル63が励磁される。さらに、発振器50の周波数カウンタへの出力は、同期検波回路57に供給される。また、同期検波回路57には、ケーブル67を介して、差動トランス60の2次コイル62からの差動電圧が入力される。同期検波回路57は、この2つの信号について同期検波を行う。これにより、測定ヘッド31の位置変位、すなわち、高さを測定することができる。同期検波回路57が測定した位置変位が位置出力となって、制御PCに入力される。このように、発振器50の出力を差動トランス60に用いることで、高周波の干渉による影響を防ぐことができる。すなわち、コイル41への出力と差動トランス60への出力を別個とした場合、これらが干渉してしまうおそれがある。しかしながら、コイル41への出力と差動トランス60への出力を共用することで、干渉による影響を防ぐことができる。よって、厚さを正確に測定することができる。
【0052】
発振器50のインダクタンスをLosc、キャパシタンスをCoscとする。ここでは、Losc=3.99μH、Cosc=110pFとしている。ケーブル51は、同軸ケーブルである。ケーブル51のインダクタンスLcableを、キャパシタンスをCcableとする。なお、Ccable=17.25pFである。
【0053】
測定回路全体の合成インダクタンスをL、測定ヘッド31のコイル41のインダクタンスをLgapとする。Lgapはエアギャップによって変化する。スイッチ47が発振器50をコイル41に接続したときの、合成インダクタンスLは以下の式(1)で表される。
1/L=1/Losc+1/(Lcable+Lgap)・・・(1)
【0054】
また、スイッチ47が発振器50を容量電極43に接続したときの、合成インダクタンスLは以下の(2)式で表される。
1/L=1/Losc+1/Lcable ・・・(2)
【0055】
容量電極43とセル21の導電面との容量をCgapとする。Cgapは、例えば、太陽電池モジュール20の状態によって変化する。スイッチ47をコイル41に接続したときの合成容量Cは式(3)のようになる。
=Cosc+Ccable ・・・(3)
【0056】
スイッチ47を容量電極43に接続したときの合成容量Cは式(4)のようになる。
=Cosc+Ccable+Cgap ・・・(4)
【0057】
ここで、発振周波数fは以下の式(5)で表される。
f=1/(2π(LC)1/2)・・・(5)
【0058】
従って、式(5)にC、Lを代入すると、発振器50がコイル41に接続された時の発振周波数fが得られる。このように、コイル41のインダクタンスLgapに応じて発振周波数が変化する。換言すると、発振周波数に応じて、表面電極21aまでの距離、すなわち、充填材24の厚さが変化する。
【0059】
コイル41のインダクタンスLgapは、上記の通り、充填材24の厚さに依存する。発振器50とコイル41が接続された状態で、発振器50の周波数カウンタで発振周波数fを求める。これにより、太陽電池モジュール20内セル21の反り量を測定することができる。そして、測定ヘッド31と太陽電池モジュール20の相対位置を変化させながら、発振周波数を検出することで、反り分布を測定することができる。
【0060】
(抵抗分布測定)
次に、セル21の抵抗分布を測定する方法について、図8を用いて説明する。図8は、抵抗分布を測定する際の構成を模式的に示す図である。ここでは、セル21単体の抵抗分布を測定する例について、説明する。抵抗分布を測定する場合、モジュール化する前の段階のセル21をステージ11に載置する。ここでは、容量電極43を発振器50に接続せずに、静電シールド43bとして使用している。
【0061】
図8に示すように、セル21は、p型シリコンからなるシリコン基板21cを有している。さらに、シリコン基板21cの裏面側には、アルミ層21dと、銀層21eが形成されている。アルミ層21dと銀層21eが裏面電極21bを構成する。具体的は、銀層21e、及びアルミ層21dを順番にスクリーン印刷して、焼成する。これにより、裏面電極21bが形成される。アルミ層21dは、銀層21eの一部と重複するように、銀層21eの端部を覆っている。モジュール化工程では、銀層21eがインターコネクタのバスライン(図示せず)に半田付けされることになる。換言すると、銀層21eは、はんだ付けされる箇所に印刷される。このようなセル21をモジュール化することで、複数のセル21がインターコネクタを介して、直列に接続される。なお、図8では、表面電極21aについては、省略して図示している。ここでは、シリコン基板21cの裏面が上方、すなわち、裏面電極21bが、測定ヘッド31を向くように配置されている。測定時には、裏面電極21bをグランドに接続してもよい。
【0062】
測定ヘッド31は、エア浮上によってセル21の裏面からエアギャップを隔てて配置されている。コイル41の中心近傍で発生した磁力線(図8の点線)は裏面電極21bの反磁性によって減少する。そして、磁力線が減らされる度合いは、裏面電極21bの導電率に応じて変化する。換言すると、エアギャップが一定である場合、裏面電極21bの導電率に応じて、発振器50の発振周波数が変化する。従って、発振器50の発振周波数を測定することで、裏面電極21bの導電率を測定することができる。そして、測定ヘッド31と、セル21とを相対移動させながら、発振周波数を測定する。こうすることで、裏面電極21bの抵抗分布を測定することができる。なお、コイル41の中心から大きく離れた磁力線(図8の実線矢印)は、裏面電極21bの反磁性で減らされることはない。
なお、発振器50とコイル41を接続するケーブル51は、同軸ケーブルであり、中心導体がコイル41の一端に接続され、外部被覆がグランド、及びコイル41の他端に接続されている。
【0063】
このように、裏面電極21bが露出した状態で、裏面電極21bと測定ヘッド31とを対向配置する。そして、測定ヘッド31を走査した時の発振器50の発振周波数を検出する。こうすることで、裏面電極21bの抵抗分布を測定することができる。もちろん、表面電極21aと測定ヘッド31とを対向配置した状態で、同様の測定を行うことで、表面電極21aについても抵抗分布を測定することも可能である。
【0064】
例えば、Losc=3.99μH、Cosc=110pFとした時、発振器50単体で約7.6MHzの発振周波数となる。スイッチ47によって、コイル41を発振器50に接続した時、ケーブル51の容量Ccable(25pFほど)、コイル41のインダクタンスが並列に入る。コイル41のインダクタンスは裏面電極21bの導電率によって変化する。エアギャップが一定であるとすると、裏面電極21bの導電率によって発振周波数が変化する。発振周波数は、7MHz近辺で0.1Hzの変化を測定できるカウンタで読んでいる。測定ヘッド31のインダクタンスは、約61μHとしている。発振周波数1Hzの変化は、ヘッドインダクタンスが0.0003μHの変化に相当する。これは、裏面電極21bの抵抗値が約10μΩ・cm□変化した結果に対応する。よって、測定系の分解能は、シート抵抗にして、μΩ・cm□オーダとなる。
【0065】
0.3mm□の小型の芯材44を用いているため、高い空間分解能での測定が可能となる。さらに、よりシリコン基板21cのエッジ近傍まで測定を行うことができるようになる。すなわち、基板端部の近傍に測定ヘッド31を移動させた場合でも、芯材44の直下には、裏面電極21bが配置される。一方、大型の測定ヘッド31を用いた場合、シリコン基板21cのエッジ近傍に測定ヘッド31が移動すると、芯材44の一部の直下には、裏面電極21bが配置されなくなる。この場合、発振周波数に変化が生じてしまう。従って、測定ヘッド31を小型化することで、基板端部の近傍を正確に測定することができる。
【0066】
さらに、静電シールド43bをコイル41とセル21の間に配置している。これにより、浮遊容量が生じるのを防ぐことができる。すなわち、測定中には、コイル41とセル21の裏面電極21bが近接して配置される。コイル41には高周波電圧が供給されているため、コイル41の表面電位が0とはならず、浮遊容量が発生する。従って、測定対象の裏面電極21bの導電率やセル21とコイル41の距離等によって、浮遊容量が変化する。換言すると、コイル41の周囲にある金属に応じて、発振周波数が変化してしまう。例えば、セル21上の測定位置によって、コイル41の裏面電極21bに対する対称性が崩れてしまう。すなわち、セル21の端部を測定する場合、コイル41の一方には、裏面電極21bが存在しなくなってしまう。このため、測定位置によって、測定結果である発振周波数が変化してしまうおそれがある。なお、静電シールド43bを、グランドに接続してもよい。
【0067】
そこで、本実施形態では、静電シールド43bをコイル41とセル21との間に配置している。こうすることで、浮遊容量による測定誤差を低減することができ、精度よく測定することができる。さらに、容量電極43は、中空部分の一端を開放した平面形状としている。これにより、コイル41で発生する磁気がカットされるのを防ぐことができる。すなわち、容量電極43の一端を開放しているため、十分の数の磁力線を裏面電極21bに向かわせることができる。従って、抵抗分布測定に必要な磁場を容易に生成することができる。
【0068】
(変形例)
次に、測定回路の変形例について図9を用いて説明する。なお、上記の説明と同様の内容については、適宜説明を省略する。図9に示す測定回路では、ハートレー型の発振回路を発振器50として用いている。発振器50においては、電界効果型トランジスタ(FET)55と、コイル52と、抵抗54と、2つのコンデンサ53とが設けられている。トランジスタ55のドレインは電源に接続され、ソースはコイル52の中間タップに接続され、ゲートは抵抗54、及び1つのコンデンサ53に接続されている。さらに、トランジスタ55のゲートとグランドの間には、2つのコンデンサ53が直列接続されている。
【0069】
コイル52と1つのコンデンサ53が並列に接続されている。並列接続されたコイル52とコンデンサ53の間が発振器50の出力となっており、ドライバ58とドライバ158の入力側に接続されている。ドライバ158の出力は、図7と同様に、周波数カウンタ、及び差動トランスに接続されている。これにより、発振周波数をカウントすることができる。ドライバ58は増幅率が1倍の電圧バッファである。
【0070】
さらに、発振器50の出力は、スイッチ47a、47bを介して、ケーブル51、151がそれぞれ接続されている。ケーブル51とケーブル151はトライアキシャルケーブルである。従って、ケーブル51は、それぞれ、中心導体51aと、中心導体51aを覆う中間被覆51bと、中間被覆51bを覆う外部被覆51cとを備えている。同様に、ケーブル151は、それぞれ、中心導体151aと、中心導体151aを覆う中間被覆151bと、中間被覆151bを覆う外部被覆151cとを備えている。外部被覆51c、151cは接地されている。
【0071】
従って、中心導体51aは、スイッチ47aを介して、発振器50のコイルと接続される。中間被覆51bはドライバ58の出力と接続されている。スイッチ47aは、中心導体51aの接続をコイルから中間被覆51bに切り替える。すなわち、スイッチ47aを制御することで、中心導体51aと中間被覆51bを導通させることができる。中心導体151aは、スイッチ47bを介して、コイルと接続されている。中間被覆151bはドライバ58の出力と接続されている。スイッチ47bは、中心導体151aの接続をコイルから中間被覆151bに切り替える。すなわち、スイッチ47bを制御することで、中心導体151aと中間被覆151bを導通させることができる。
【0072】
例えば、測定ヘッド31をコイル41によるインダクタンスセンサとして利用する場合、スイッチ47aは、中心導体51aと発振器50のコイルを接続させ、スイッチ47bは、中心導体151aと中間被覆151bを接続させる。これにより、発振器50のコイルが、測定ヘッド31のコイル41と、中心導体51aを介して接続される。この状態では、容量電極43が中間被覆151bに接続される。一方、測定ヘッド31を容量電極43によるキャパシンタンスセンサとして利用する場合、スイッチ47aは、中心導体51aと中間被覆51bを接続させ、スイッチ47bは、中心導体151aと発振器50のコイルを接続させる。
【0073】
中間被覆51b、151bは、ドライバ58によってドライブされている。ここで、中心導体51aが発振器50の出力とコイル41の一端を接続し、外部被覆51cがコイル41の他端とグランドを接続している。さらに、発振器50の出力を分岐して、ドライバ58を介して、中間被覆51bに接続している。すなわち、分岐された発振器50の出力の一方がスイッチ47a、47bを介して中心導体51a、151aに接続され、他方がドライバ58の入力に接続されている。ドライバ58は増幅率が1倍の電圧バッファである。従って、中間被覆51b、151bは、発振器50の高周波電圧と同振幅かつ同位相で駆動される。こうすることで、測定ヘッド31をインダクタンスセンサとして使用する時に、中心導体51aと中間被覆51bに発生する静電容量をほぼ0にすることができる。すなわち、ケーブル51が発振によって充放電されないため、静電容量の発生を抑制することができる。よって、正確に測定することができる。同様に、測定ヘッド31をキャパシタンスセンサとして用いるときに、中心導体151aと中間被覆151bに発生する静電容量をほぼ0にすることができる。すなわち、ケーブル151が発振によって充放電されないため、静電容量の発生を抑制することができる。なお、キャパシタンスセンサとして用いることで、特願2010−273538号に示したようにLiイオン電池の電池用電極材の導電率を測定することができる。よって、様々な測定を行うことができる。また、Liイオン電池をサンプルとした場合、インダクタンスセンサによって、電池用電極材の厚みを測定することもできる。
【0074】
なお、上記の説明では、太陽電池モジュール20、又はセル21を移動することで、測定位置を変えたが、測定ヘッド31を移動することで測定位置を変えても良い。さらには、太陽電池モジュール20、又はセル21と、測定ヘッド31との両方を移動して、測定位置を変えても良い。
【0075】
(測定結果)
次に、図9に示す測定回路で測定した測定結果を図10に示す。図10には、異なる大きさの測定ヘッド31を用いて、測定を行った測定結果が示されている。図10の左側には、直径6mmの円形の測定ヘッド31で測定した2次元マップが示され、右側には、0.3mm□の測定ヘッド31で測定した2次元マップが示されている。発振周波数、すなわち、抵抗が階調によって示されている。
【0076】
直径6mmの円形の測定ヘッド31を用いた場合、空間分解能は低いものの、シート抵抗値の変化に対しては敏感である。一方、0.3mmのコアを持つ測定ヘッド31を用いた場合、抵抗値の変化に対しては鈍感であるが、空間分解能は高い。セル21の裏面において、銀層21eとアルミ層21dの接触が悪い部分が存在していることを示している。すなわち、銀層21eとアルミ層21dとの接触抵抗の劣化が見られる。セルを分解して、別プローブにより測定することで、最も抵抗の高い部分は、約10mΩ・cm程の抵抗であることが分かった。さらに、別プローブにより、実抵抗を測定して、その測定値を用いてキャリブレーションを行ってもよい。なお、この測定では、セル21を真空チャックにより固定した状態で測定を行っている。
【符号の説明】
【0077】
11 ステージ
12 カバー
13 可動部
14 クランプ
15 吸着口
16 恒温槽
17 制御装置
20 太陽電池モジュール
21 セル
22 基板
23 裏面材
24 充填材
25 充填材
26 導体面
30 測定アーム
31 測定ヘッド
32 板バネ
33 ベース
34 ベースアーム
35 先端アーム
40 凸部
41 コイル
42 噴出口
43 容量電極
43a 切欠部
43b 静電シールド
44 芯材
46 カバーガラス
47 スイッチ
50 発振器
51 ケーブル
51a 中心導体
51b 中間被覆
51c 外部被覆
52 コイル
53 コンデンサ
54 抵抗
55 トランジスタ
56 バッファアンプ
57 同期検波回路
58 ドライバ
60 差動トランス
61 コア
62 2次コイル
63 1次コイル
151 ケーブル
151a 中心導体
151b 中間被覆
151c 外部被覆
158 ドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池のセルの電極の抵抗分布を測定する測定装置であって、
前記セルとの間にギャップを形成するため、前記セルに気体を噴出するヘッドと、
前記ヘッドに設けられたコイルと、
前記コイルに接続された発振器と、
前記コイルと前記セルとの相対位置を変化させる位置変化手段と、を備える測定装置。
【請求項2】
前記発振器と前記コイルを接続したときの発振周波数に応じて、前記抵抗分布を測定する請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記ヘッドには、前記コイルが巻き付けられた芯材が設けられ、
一端が開放した静電シールドが、前記コイルと前記セルとの間に配置されるよう前記芯材の周囲に取り付けられている請求項1、又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記発振器への接続を前記コイルから前記静電シールドへと切り替えるスイッチをさらに備えた請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
中心線と、外部被覆と、前記中心線と前記外部被覆との間に設けられた内部被覆と、を備えたトライアキシャルケーブルによって、前記コイルと前記発振器が接続され、
前記中心線が前記コイルの一端と前記発振器の出力とを接続し、
前記外部被覆が前記コイルの他端と接続し、
前記内部被覆が前記発振器の出力とドライバを介して接続されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記セルの前記電極が露出した状態で、測定が行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
太陽電池のセルの電極の抵抗分布を測定する測定方法であって、
前記セルとの間にギャップを形成するため、ヘッドから前記セルに気体を噴出するステップと、
発振器によって、前記ヘッドに設けられたコイルに交流磁界を発生させるステップと、
前記ヘッドと前記セルを電極面に沿って相対移動させて、前記発振器の発振周波数を求めるステップと、を備える測定方法。
【請求項8】
前記ヘッドには、前記コイルが巻き付けられた芯材が設けられ、
一端が開放した静電シールドが、前記コイルと前記セルとの間に配置されるよう前記芯材の周囲に取り付けられている請求項7に記載の測定方法。
【請求項9】
中心線と、外部被覆と、前記中心線と前記外部被覆との間に設けられた内部被覆と、を備えたトライアキシャルケーブルによって、前記コイルと前記発振器が接続され、
前記中心線が前記コイルの一端と前記発振器の出力とを接続し、
前記外部被覆が前記コイルの他端と接続し、
前記内部被覆が前記発振器の出力とドライバを介して接続されている請求項7、又は8に記載の測定方法。
【請求項10】
前記セルの前記電極が露出した状態で、測定が行われることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−108809(P2013−108809A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253134(P2011−253134)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】