説明

太陽電池モジュールの固定構造、太陽電池モジュール用のフレーム及び固定部材

【課題】気温等が変化しても不具合が発生することなく太陽電池モジュールを固定することが可能な太陽電池モジュールの固定構造、太陽電池モジュール用のフレーム及び固定部材を提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール10を支持部材2へ固定する固定部材20の軸部22に対して固定部21aとは反対側に嵌合された太陽電池モジュール10の第一フレーム12の当接部12eと、固定部21a側から空隙24bを通って軸部22とを係止ビス4で締結可能とし、固定部21a側に嵌合された第一フレーム12の当接部12eが内突部24の外側端部24aに当接することで嵌入を規制した上で当接部12eと軸部22との間に所定量の隙間を形成すると共に、軸部22の両側に嵌合された第一フレーム12の対向する上側面12a同士の間に所定量の隙間を形成可能とした太陽電池モジュールの固定構造、並びに、太陽電池モジュール用のフレーム及び固定部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルの辺縁をフレームで支持した太陽電池モジュールを、固定部材を用いて屋根や壁面等の所定の支持部材へ固定するための太陽電池モジュールの固定構造と、その太陽電池モジュール用のフレーム及び固定部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、先の特許出願において、板状の太陽電池パネルの辺縁をフレームで支持した太陽電池モジュールを屋根上等に設置する場合、太陽電池モジュールの枠体に対してその直角方向側面側から嵌合可能とすると共にフレームに沿ってスライド可能な固定部材を介して太陽電池モジュールを屋根上等へ設置することができるようにしたものを提案している(特許文献1及び特許文献2)。これにより、予め取付架台等を太陽電池モジュールのピッチに合わせて取付けておく必要が無く、太陽電池モジュールを一端側(例えば、軒側)から順次屋根上に設置することができ、設置にかかる手間を簡略化してコストを低減させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の太陽電池モジュールの固定構造では、隣接した太陽電池モジュールのフレーム同士が直接接触するように固定しているので、気温等の変化によって太陽電池モジュールが熱膨張した場合、膨張する太陽電池モジュール同士が互いに押しあって、太陽電池モジュールが変形したり破損したりする虞があった。また、太陽電池モジュールを傾斜した屋根上や壁面等に固定するようにした場合、フレーム同士が接触した部分を介して上側の太陽電池モジュールの荷重が下側の太陽電池モジュールへと伝達され、最も下側の太陽電池モジュールを固定する固定部材に対して過大な荷重が作用することとなり、固定部材が変形したり支持部材から外れたりする虞があった。
【0004】
そこで、本発明は上記の実情に鑑み、気温等が変化しても不具合が発生することなく太陽電池モジュールを固定することが可能な太陽電池モジュールの固定構造、太陽電池モジュール用のフレーム及び固定部材の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明に係る太陽電池モジュールの固定構造は、「板状の太陽電池パネルと、該太陽電池パネルの辺縁を支持するフレームとを備えた太陽電池モジュールを、横方向中央に対して偏芯した位置で所定の支持部材に固定するための固定部を有したベース部と、該ベース部における上面の横方向中央に対して前記固定部とは反対側の位置から上方へ延出する軸部と、該軸部の上端から両側へ前記ベース部の上面と略平行に延びる天部とを備えた固定部材を用いて、該固定部材における前記軸部の両側の前記ベース部と前記天部との間に前記フレームを横方向から嵌合させることで所定の支持部材へ前記太陽電池モジュールを固定する太陽電池モジュールの固定構造であって、前記フレームは、前記太陽電池パネルの辺縁を挿入支持すると共に該太陽電池パネルが挿入される側とは反対側に上下方向へ延びる上側面を有した挿入支持部と、該挿入支持部の下側に配置され、前記太陽電池パネルが挿入される側とは反対側に開口し前記固定部材の前記天部が挿入可能とされた接合部と、該接合部の下側で前記挿入支持部の前記上側面よりも前記太陽電池パネルの面に沿った方向の内側に配置され、前記固定部材の前記軸部に対して面で当接可能な当接部とを備え、且つ、前記固定部材は、前記天部と前記ベース部との間で前記軸部に対して前記固定部と同じ側に配置され前記ベース部と前記天部との間よりも狭い空隙を形成し前記軸部と略平行な軸線上に沿った外側端部を有する内突部を更に備え、前記固定部材における前記軸部に対して前記固定部とは反対側に嵌合された前記フレームの前記当接部と、前記軸部に対して前記固定部とは同じ側から前記内突部の前記空隙を通って前記軸部とを所定の締結部材で締結可能とし、前記固定部材における前記軸部に対して前記固定部と同じ側に嵌合された前記フレームの前記当接部が前記内突部の前記外側端部に当接することで前記フレームの嵌入を規制した上で前記当接部と前記軸部との間に所定量の隙間を形成すると共に、前記固定部材における前記軸部の両側に嵌合された前記フレーム同士の対向する前記上側面同士の間に所定量の間隙を形成可能とした」ことを特徴とする。
【0006】
ここで、「所定の支持部材」としては、「垂木」、「野地板」、「屋根の構造部材」、「屋根瓦やスレート、波板等の屋根材」、「壁材」、「胴縁」、「壁の構造部材」、「所定場所に設置された架台」、等を例示することができる。また、「締結部材」としては、「ビス」、「ボルト」、「リベット」、等を例示することができる。
【0007】
ところで、特許文献1や特許文献2に示された従来の太陽電池モジュールの固定構造では、固定部材における支持部材へ固定するための固定部を、傾斜した屋根の棟側を向くように固定しており、太陽電池モジュールにおける軒側のフレームは、軒側に固定された固定部材によって下側へ移動するのを支持することができるが、棟側のフレームについては、フレームの係合突部と固定部材の被係合突部との係合によってのみ支持するようにしているので、軒側のフレームよりも弱い支持強度となっていた。
【0008】
そこで、棟側のフレームに対して固定部材の軸部を通して棟側からビス等をねじ込むことで、棟側のフレームと固定部材とをビス等で締結して支持強度を高めるようにすることが考えられるが、この場合、軸部の両側にフレームが当接するようになっているので、軸部からビス等の頭部が突出していると、固定部材に対するフレームの嵌入量が少なくなり、軒側のフレームに対する支持強度が低下する虞がある。また、ビス等の頭部が突出しないように軸部に段付き穴や皿穴等の座ぐり加工を行う必要があり、固定部材の製造コストが高くなる問題があると共に、ビス等の頭部が軸部から突出しないように座ぐり穴にきちんと収容させる必要があり、作業に慎重を要して作業コストが増加する問題がある。
【0009】
また、従来では、太陽電池モジュールからアースを取る場合、アース線の先端の圧着端子を所定のビスを用いてフレームに取付けることでアースを取るようにしており、固定部材による固定作業とは別の作業となり、手間のかかるものとなっていた。なお、棟側のフレームと固定部材の軸部とをビス等により締結する際に、アース線の圧着端子を同時に取付けるようにすることが考えられるが、この場合、蓋然的にアース線や圧着端子が軸部よりも突出することとなり、上述した問題が発生することとなる。
【0010】
本発明によると、固定部材の軸部の両側に嵌合された太陽電池モジュールのフレーム同士が、所定量の間隙を形成した状態で夫々のフレーム(太陽電池モジュール)を所定の支持部材へ固定するようにしているので、気温等の変化により太陽電池モジュール(フレーム)が熱膨張しても、その膨張を間隙で吸収してフレーム同士が当接するのを防止することができ、熱膨張により太陽電池モジュールが変形したり破損したりするのを防止することができる。なお、フレーム同士の間隙の所定量としては、太陽電池モジュールやフレーム等の材質によって適宜設定すれば良く、例えば、0.5mm〜5mmの間とすることが望ましく、0.5mmよりも狭いと熱膨張を吸収しきれない虞があり、また、5mmよりも広いとフレーム同士の間隔が空き過ぎて見栄えが悪くなったり間隙を通して太陽電池モジュールの下側へ異物等が侵入し易くなったり虞があるためである。
【0011】
また、固定部材の軸部の両側に嵌合された太陽電池モジュールのフレーム同士の間に所定量の間隙を形成するようにしているので、太陽電池モジュールを屋根等の傾斜した場所や壁面等に複数設置した場合、上側の太陽電池モジュールの荷重が直接下側の太陽電池モジュールへかかるのを防止することができ、下側の太陽電池モジュールのフレームを支持する固定部材に対して過大な荷重が作用するのを防止することができ、その過荷重により固定部材が変形したり破損したり、或いは、支持部材から外れたりするのを防止することができると共に、太陽電池モジュールの固定強度を向上させて太陽電池モジュールの設置に対する信頼性や安全性を高めることができる。
【0012】
更に、固定部材における軸部に対して固定部とは反対側に嵌合されたフレームの当接部と軸部とをビス等の締結部材によって締結可能とすると共に、その締結可能な部分における軸部の固定部側にフレームの当接部との間で所定量の隙間を形成するようにしているので、頭部が軸部から突出してもその頭部を隙間内に収容することができ、頭部が軸部から突出するような締結部材を用いて当接部(フレーム)と軸部とを締結固定することができる。従って、固定部材における軸部に対して固定部とは反対側に嵌合されたフレームの当接部と軸部とを締結部材で締結することで、固定部材によるフレームの支持強度を向上させることができる。また、軸部における締結部材で締結する部分に座ぐり加工を施す必要が無いので、固定部材の製造コストが増加するのを抑制することができると共に、締結部材による締結の作業性を簡略化して作業コストを低減させることができる。
【0013】
また、上述したように、軸部と固定部側のフレームの当接部との間に所定量の隙間を形成するようにしているので、その隙間内にアース線の端子も収容することが可能となり、フレームの当接部と軸部とを締結部材で締結する際に、アース線の端子も一緒に取付けることができ、アース線の取付作業を簡略化することができると共に、隙間を通してアース線を外部へ良好に引き出すことができる。
【0014】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの固定構造は、上記の構成に加えて、「前記固定部材は、前記ベース部が横長の箱状に形成されている」ことを特徴とする。
【0015】
これにより、固定部材におけるベース部の剛性をより高めることができるので、台風や強風、大雨や積雪等によって太陽電池モジュールに大きな荷重が作用しても、固定部材が変形したり破損したりするのを防止することができ、所定の支持部材に対して太陽電池モジュールをより強固に固定することができる。なお、箱状のベース部材に所定の補強リブを備えるようにしても良く、これにより、ベース部材の剛性を更に高めることができる。
【0016】
また、固定部材のベース部を箱状としているので、フレームが載置される上面を、従来の固定部材よりも長くすることができ、支持部材に取付けられた固定部材に対して、太陽電池モジュールのフレームが載せ易くなり、作業性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る太陽電池モジュール用のフレームは、「太陽電池モジュールにおける太陽電池パネルの辺縁を支持し、横方向中央に対して偏芯した位置で所定の支持部材に固定するための固定部を有したベース部と、該ベース部における上面の横方向中央に対して前記固定部とは反対側の位置から上方へ延出する軸部と、該軸部の上端から両側へ前記ベース部の上面と略平行に延びる天部と、該天部と前記ベース部との間で前記軸部に対して前記固定部と同じ側に配置され前記ベース部と前記天部との間よりも狭い空隙を形成し前記軸部と略平行な軸線上に沿った外側端部を有する内突部とを備えた固定部材における前記軸部の両側の前記ベース部と前記天部との間に横方向から嵌合可能とされた太陽電池モジュール用のフレームであって、前記太陽電池パネルの辺縁を挿入支持すると共に該太陽電池パネルが挿入される側とは反対側に上下方向へ延びる上側面を有した挿入支持部と、該挿入支持部の下側に配置され、前記太陽電池パネルが挿入される側とは反対側に開口し前記固定部材の前記天部が挿入可能とされた接合部と、該接合部の下側で前記挿入支持部の前記上側面よりも前記太陽電池パネルの面に沿った方向の内側に配置され、前記固定部材の前記軸部に対して面で当接可能とされると共に前記内突部の前記外側端部に前記空隙の一部を閉鎖するように当接可能とされた当接部とを具備する」ことを特徴とする。
【0018】
本発明によると、太陽電池パネルの辺縁を支持する挿入支持部の下側に固定部材の天部が挿入される接合部を備えているので、接合部よりも下側が固定部材の天部とベース部との間に嵌合されるようになっており、固定部材に嵌合固定された状態では、フレームの上面に固定部材の天部が露出することは無く、設置された太陽電池パネルの上面をすっきりした見栄えの良いものとすることができる。また、本発明のフレームによると、上述した太陽電池モジュールの固定構造に用いるフレームを確実に具現化することができ、上述と同様の作用効果を奏することができる。
【0019】
本発明に係る太陽電池モジュール用の固定部材は、「板状の太陽電池パネルの辺縁をフレームで支持した太陽電池モジュールを所定の支持部材に固定するための太陽電池モジュール用の固定部材であって、横長の箱状で横方向中央に対して偏芯した位置で所定の支持部材に固定するための固定部を有したベース部と、該ベース部における上面の横方向中央に対して前記固定部とは反対側の位置から上方へ延出する軸部と、該軸部の上端から両側へ前記ベース部の上面と略平行に延びる天部と、該天部と前記ベース部との間で前記軸部に対して前記固定部と同じ側に配置され前記ベース部と前記天部との間よりも狭い空隙を形成し前記軸部と略平行な軸線上に沿った外側端部を有した内突部とを具備し、前記軸部の両側の前記ベース部と前記天部との間に前記太陽電池モジュールの前記フレームが横方向から嵌合可能とすると共に、前記内突部の前記外側端部によって前記ベース部と前記天部との間に嵌合された前記フレームの嵌入を規制可能とした」ことを特徴とする。
【0020】
本発明によると、固定部材における軸部の両側に横方向から太陽電池モジュールのフレームを嵌合させることができると共に、軸部に対して固定部と同じ側に嵌合されたフレームは内突部により嵌入が規制されるようになっており、軸部に対して固定部と同じ側では軸部とフレームとの間に所定量の隙間を形成することができるので、太陽電池モジュールのフレームによっては隣接した太陽電池モジュールのフレーム同士が直接当接するのを防止することができ、上述と同様の作用効果を奏することができると共に、ベース部と天部との間に嵌合可能なフレームを有した太陽電池モジュールであれば、所定の支持部材に固定することができ、従来の太陽電池モジュールにも対応することができる。
【0021】
また、上述したように、軸部に対して固定部と同じ側では軸部とフレームとの間に所定量の隙間を形成することができるので、その隙間にビス等の締結部材の頭部が収容されるように、軸部に対して固定部とは反対側に嵌合されたフレームと軸部とを締結部材で締結させるようにすることができ、固定部材によるフレームの支持強度を高めたり、締結部材を介してアース線を取付けたりすることができる。更に、ベース部を横長の箱状としているので、フレームが載置される上面が長くなり、固定部材に対して太陽電池モジュールのフレームを載せ易くすることができ、作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明によれば、気温等が変化しても不具合が発生することなく太陽電池モジュールを固定することが可能な太陽電池モジュールの固定構造、太陽電池モジュール用のフレーム及び固定部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態である太陽電池モジュールの固定構造、太陽電池モジュール用のフレーム及び固定部材を適用した太陽光発電システムの全体斜視図である。
【図2】図1の太陽光発電システムを概略で示す平面図である。
【図3】図1の太陽光発電システムを部分的に示す側面断面図である。
【図4】図1の太陽光発電システムの要部を拡大して示す側面断面図である。
【図5】図1の太陽光発電システムを主要部材毎に分解して概略で示す分解斜視図である。
【図6】(A)は図1の太陽光発電システムに用いた化粧カバーの端面図であり、(B)は図1の太陽光発電システムに用いた本発明の一実施形態である太陽電池モジュール用のフレームの端面図であり、(C)は図1の太陽光発電システムに用いた本発明の一実施形態である太陽電池モジュール用の固定部材の端面図であり、(D)は(C)の固定部材の斜視図である。
【図7】図1の太陽光発電システムにおける太陽電池モジュールの固定方法を示す説明図である。
【図8】(A)は図1の太陽光発電システムにおける化粧カバー同士の接続を示す説明図であり、(B)は図1の太陽光発電システムにおける太陽電池モジュールの端部同士の接続を示す説明図である。
【図9】図1の太陽光発電システムにおける固定部材でのアース線の接続を示す説明図である。
【図10】図1の太陽光発電システムにおける側面キャップの取付けを示す説明図である。
【図11】図1の太陽光発電システムにおけるスペーサ部材の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態である太陽電池モジュールの固定構造、太陽電池モジュール用のフレーム及び固定部材について、図1乃至図11に基いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態である太陽電池モジュールの固定構造、太陽電池モジュール用のフレーム及び固定部材を適用した太陽光発電システムの全体斜視図であり、図2は、図1の太陽光発電システムを概略で示す平面図である。図3は、図1の太陽光発電システムを部分的に示す側面断面図であり、図4は、図1の太陽光発電システムの要部を拡大して示す側面断面図である。図5は、図1の太陽光発電システムを主要部材毎に分解して概略で示す分解斜視図である。また、図6(A)は図1の太陽光発電システムに用いた化粧カバーの端面図であり、(B)は図1の太陽光発電システムに用いた本発明の一実施形態である太陽電池モジュール用のフレームの端面図であり、(C)は図1の太陽光発電システムに用いた本発明の一実施形態である太陽電池モジュール用の固定部材の端面図であり、(D)は(C)の固定部材の斜視図である。
【0025】
また、図7は、図1の太陽光発電システムにおける太陽電池モジュールの固定方法を示す説明図である。図8(A)は図1の太陽光発電システムにおける化粧カバー同士の接続を示す説明図であり、(B)は図1の太陽光発電システムにおける太陽電池モジュールの端部同士の接続を示す説明図である。更に、図9は図1の太陽光発電システムにおける固定部材でのアース線の接続を示す説明図であり、図10は図1の太陽光発電システムにおける側面キャップの取付けを示す説明図である。図11は、図1の太陽光発電システムにおけるスペーサ部材の一例を示す図である。
【0026】
本実施形態の太陽光発電システム1は、複数の太陽電池モジュール10と、太陽電池モジュール10を屋根材等の所定の支持部材2に固定する固定部材20と、最も軒側に配置された太陽電池モジュール10の軒側端面を覆う化粧カバー30と、化粧カバー30同士や太陽電池モジュール10同士を連結する連結部材40と、化粧カバー30と太陽電池モジュール10との側面の繋ぎ目を被覆する軒側側面キャップ50と、太陽電池モジュール10同士の側面の繋ぎ目を被覆する中間側面キャップ55とを主に備えている。
【0027】
なお、図4等に示すように、太陽光発電システム1は、固定部材20と支持部材2との間には、ゴムやシリコン等からなる板状の防水部材60を備えている。この防水部材60は、図示は省略するが、両面に粘着層を有し、一方の粘着層によって予め固定部材20の裏面に貼り付けられていると共に、他方の粘着層には離型紙が貼り付けられている。また、本例では、太陽光発電システム1を支持する所定の支持部材2として、スレート上に設置した例を示しているが、屋根瓦、波板やトタン等のその他の屋根材上に設置しても良いし、野地板や屋根上等に配置された長尺状の桟部材や架台、壁面等に設置しても良い。
【0028】
この太陽光発電システム1における太陽電池モジュール10は、板状で外形が矩形状の太陽電池パネル11と、太陽電池パネル11の対向する二つの辺縁(本例では、長い方の辺縁)を支持する第一フレーム12と、第一フレーム12に対して略直交する方向へ延びた太陽電池パネル11の対向する二つの辺縁(本例では、短い方の辺縁)を支持する第二フレーム13と、太陽電池パネル11の裏面に固定された基板ボックス14と、基板ボックス14から延出し発電された電気等が通り先端に接続コネクタ15を有した配線ケーブル16と、を備えている。
【0029】
太陽電池モジュール10における第一フレーム12は、図6(B)等に示すように、太陽電池パネル11の辺縁を挿入支持すると共に太陽電池パネル11が挿入される側とは反対側に上下方向へ延びる上側面12aを有した挿入支持部12bと、挿入支持部12bの下側に配置され、太陽電池パネル11が挿入される側とは反対側に開口する接合部12cと、接合部12cの下側に配置され挿入支持部12bの上側面12aよりも太陽電池パネル11の面に沿った方向の内側寄りに配置された上下方向へ延びる下側面12d及び下側面12dに形成された開口部12fを有する箱状の当接部12eと、当接部12e内の下側面12dとは反対側の側面から開口部12fへ向けて横方向へ延び先端に係合突部12gを有した係合片12hと、を備えている。この係合突部12gは、基端側が係合片12hから上方へ突出し、先端へ向うに従って下方へ細くなっている。
【0030】
また、第一フレーム12には、略C字形状の三つのねじ溝部12iが夫々所定位置に備えられていると共に、当接部12eにおける開口部12fの上側の下側面12dには、V字状の溝12jを備えている。この第一フレーム12は、同一断面形状の連続した長尺部材とされており、アルミ等の金属製の押出型材とされている。従って、第一フレーム12の外側側面は、接合部12cと開口部12fの二つの開口が上下に並んだ状態となっていると共に、接合部12cを挟んで上側面12aと下側面12dとが段違いになっている。なお、上側面12aと接合部12cとの境には、傾斜した面取部12kが形成されており、後述する固定部材20の天部23を接合部12c内へ挿入し易くしている。
【0031】
また、太陽電池モジュール10における第二フレーム13は、詳細な図示は省略するが、第一フレーム12と同様に、上部に太陽電池パネル11の辺縁を挿入支持する挿入支持部を備えていると共に、挿入支持部における太陽電池パネル11が挿入される側とは反対側の上下方向へ延びる側面が、第二フレーム13の高さ全体に亘って延びている。この第二フレーム13は、同一断面形状で第一フレーム12と略同じ高さの連続した長尺部材とされており、アルミ等の金属製の押出型材とされている。従って、第二フレーム13の外側側面は、開口や突起等のない平坦面となっている。
【0032】
本例の太陽電池モジュール10は、図示するように、太陽電池パネル11の長辺の辺縁が第一フレーム12に支持されていると共に、太陽電池パネル11の短辺の辺縁が第二フレーム13に支持されており、第二フレーム13の長手方向両端部の外側側面によって第一フレーム12の長手方向端部を覆うと共に、所定のビスにより第一フレーム12と第二フレーム13とが互いに固定されている。なお、太陽電池パネル11の辺縁と第一フレーム12や第二フレーム13の挿入支持部12bとの間には、防水性を有した緩衝材17が充填されている(図4等を参照)。
【0033】
本例の太陽光発電システム1における固定部材20は、横長で箱状のベース部21と、ベース部21における上面の横方向中央に対して一方側の所定位置から上方へ延出する軸部22と、軸部22の上端から両側へベース部21の上面と略平行に延びる天部23と、天部23とベース部21との間で軸部22に対してベース部21の横方向中央側に配置され軸部22と略平行な軸線上に沿った内突部24と、内突部24とは軸部22を挟んで反対側の天部23とベース部21との間の上下方向略中央で軸部22からベース部21の上面と略平行に延びる被係合片25と、を備えている。
【0034】
この固定部材20のベース部21には、横方向中央に対して偏芯し軸部22とは反対側の位置に支持部材2へ固定するための固定部21aを備えている。この固定部21aは、ベース部21の下面に開口し固定部材20を取付けるための固定ビス3のねじ部のみが通過可能とされた固定孔21bと、固定孔21bと同軸上でベース部21の上面を貫通し固定ビス3等が通過可能とされた挿通孔21cとから構成されている。この固定部21aの挿通孔21c及び固定孔21bは、平面視で天部23にかからない位置に配置されており、固定ビス3を固定孔21bへ良好に挿通させることができるようになっていると共に、挿通孔21cの方が固定孔21bよりも大径とされており、電動工具等の先端やソケットが挿通孔21cを通って固定ビス3を固定孔21bまで確実にねじ込むことができるようになっている。なお、本例では、固定部21aが固定部材20の長手方向に対して三つ備えられている(図6(D)を参照)。
【0035】
また、ベース部21は、固定部21aよりも軸部22寄りの内部に上下方向へ延びる二つの縦リブ21dと、縦リブ21d同士を繋ぐ横リブ21eとを備えており、二つの縦リブ21dと横リブ21eとで略H字状に形成されていると共に、固定部21aから遠ざかった縦リブ21dが軸部22の直下に配置されている。これら縦リブ21dと横リブ21eによってベース部21の剛性が高められている。また、ベース部21は、二つの縦リブ21dに挟まれた間の底部に形成された所定幅のスリット21fと、軸部22に対して固定部21aとは反対側の上面の端部付近に形成された矩形状の凹部21gとを更に備えている。
【0036】
固定部材20の軸部22は、第一フレーム12の下面から接合部12cまでの高さと略同じ高さとされており、天部23と被係合片25との間に位置に横方向へ貫通する係止孔22aを有している。また、天部23は、第一フレーム12の接合部12c内へ挿入可能とされ、先端の下隅が斜めに面取りされており、接合部12c内へ挿入し易くなっている。更に、天部23は、平面視でベース部21から外側へ延びださない長さとなっている。
【0037】
本例の固定部材20の内突部24は、軸部22に対してベース部21の固定部21aと同じ側に軸部22から所定量離反すると共に軸部22と略平行に延びるように配置され、固定部21aを向いた外側端部24aが軸部22と略平行な軸線上に沿って形成されている。この内突部24の外側端部24aと軸部22との間の寸法は、後述する係止ビス4の頭部を充分に収容可能な寸法とされている。また、内突部24は、図示するように、横方向に貫通する空隙24bを有しており、空隙24bの上下方向の間隔は、蓋然的に、ベース部21と天部23との間よりも狭くなっていると共に、空隙24bから軸部22の係止孔22aが臨むようになっている。更に、内突部24は、空隙24bによって上下に分離した形態となっており、本例では上側の方が短く形成されている。
【0038】
固定部材20の被係合片25は、第一フレーム12の係合片12hと対応した位置に配置され、先端に、基端側が被係合片25から下方へ突出し、先端へ向うに従って上方へ細くなる被係合突部25aを備えており、第一フレーム12の係合突部12gと係合可能とされている。本例の固定部材20は、同一断面形状で連続した長尺状でアルミ等の金属製の押出型材を所定長さ(例えば、第一フレーム12の長さに対して1/6〜1/20の長さ)に切断すると共に、固定部21aとしての固定孔21bと挿通孔21c、及び係止孔22aを穿設したものである。
【0039】
本例の太陽光発電システム1における化粧カバー30は、第一フレーム12や第二フレーム13と略同じ高さとされると共に、第一フレーム12と略同じ長さとされ、一方の上端部から他方の下端部まで略円弧状に連続して延びる化粧面部30aと、化粧面部30aの一方の上端部から下方へ垂下する上側面30bと、上側面30bの下側に配置され一方の側面側へ開口する接合部30cと、接合部30cの下側に配置され上側面よりも他方側寄りに配置された上下方向へ延びる下側面30d及び下側面30dに形成された開口部30eを有する箱状の当接部30fと、当接部30f内の他方側の側面から開口部30eへ向って横方向へ延び先端に係合突部30gを有した係合片30hと、当接部30fの他方側の側面から横方向へ延出し化粧面部30aの下端付近と繋がる支持片部30iと、を備えている(図6(A)を参照)。この係合突部30gは、基端側が係合片30hから上方へ突出し、先端へ向うに従って下方へ細くなっている。
【0040】
また、化粧カバー30には、当接部30fにおける開口部30eの上側の下側面30dに形成されたV字状の溝30jと、当接部30fの下面に下方へ突出する突部30kと、を備えている。この突部30kは、固定部材20の凹部21g内に挿入可能とされている。また、化粧カバー30には、略C字形状の三つのねじ溝部30lが夫々所定位置に備えられている。この化粧カバー30もまた、同一断面形状で連続した長尺部材とされており、アルミ等の金属製の押出型材とされている。
【0041】
本例の太陽光発電システム1における連結部材40は、図8に示すように、隣接配置された化粧カバー30の端部同士を連結するのに用いられる第一連結部材40Aと、隣接配置された太陽電池モジュール10における棟側の第一フレーム12の端部同士を連結するのに用いられる第二連結部材40Bと、に分けることができる。なお、第一連結部材40Aと第二連結部材40Bにおいて構成が同一の部分については同一の符号を付して説明する。また、本例では、化粧カバー30の端部同士には第一連結部材40Aを、第一フレーム12の端部同士には第二連結部材40Bを用いた例を示しているが、化粧カバー30の端部同士に第二連結部材40Bを、第一フレーム12の端部同士に第一連結部材40Aを用いても良く状況に応じて適宜選択することができる。
【0042】
本例の連結部材40(第一連結部材40A,第二連結部材40B)は、図8に示すように、太陽電池モジュール10における第一フレーム12や化粧カバー40の接合部12c,30c内へ挿入される板状の上片部41と、上片部41と対向するように配置され第一フレーム12や化粧カバー30の底部と当接可能な板状の下片部42と、上片部41と下片部42の同じ側の端辺同士を接続する板状の接続片部43とを備えており、断面が略コ字状に形成されている。また、連結部材40は、上片部41の長手方向両端に、接続片部43側へ向うに従って下片部42側へ延びるように鉤爪状に形成された抜止部44を備えている。この抜止部44が、第一フレーム12や化粧カバー40の接合部12c,30cの底面に食込むことで、連結部材40が抜けるのを防止することができる。
【0043】
また、連結部材40は、上片部41の接続片部43側とは反対側の端辺における長手方向略中央にV字状の切欠き部45を備えており、この切欠き部45によって連結部材40における長手方向の中央位置が判るようになっていると共に、切欠き部45の先端の幅が太陽電池モジュール10同士や化粧カバー30同士の間隔の幅と略同じ2mm〜5mmとされている。なお、本例の連結部材40は、ステンレス等の金属板材を、屈曲成形することで形成されており、抜止部45は、上片部41の長手方向端辺側の所定位置を切欠いた上で、接続片部43側を向いた端部を斜めに屈曲することで鉤爪状に形成されている。
【0044】
ところで、連結部材40における第二連結部材40Bは、図8(B)に示すように、下片部42における接続片部43とは反対側の端辺から連続するように、下方へ下片部42と合わせてU字状に屈曲し太陽電池モジュール10から延びる配線ケーブル16を挿入保持可能なケーブル保持部46と、ケーブル保持部46の先端辺にケーブル保持部46から配線ケーブル16が抜けるのを防止すると共にケーブル保持部46へ配線ケーブル16を挿入保持させ易くする上方へ円弧状に屈曲した反し部47とを更に備えている。
【0045】
次に、本例の太陽光発電システム1の施工方法について説明する。本例では、図1等に示すように、太陽電池モジュール10の長辺が、屋根の傾斜方向に対して直角方向に延びるように複数の太陽電池モジュール10を格子状に配置すると共に、太陽電池モジュール10や化粧カバー30の一辺を二つの固定部材20で支持部材2へ固定するようにした例である。なお、本例では、図2に示すように、太陽電池モジュール10や化粧カバー30同士の間に、屋根の傾斜方向に対して直角方向では隙間S1(2mm〜5mm、本例では約3mm)が、屋根の傾斜方向では隙間S2(0.5mm〜5mm、本例では約1mm)が、夫々形成されるように支持部材2上に設置されており、これにより、太陽電池モジュール10や化粧カバー30等が、気温等の変化によって熱膨張しても互いに接触しないようになっていると共に、屋根の傾斜方向では上側の太陽電池モジュール10の荷重が下側へ伝達されないようになっている。
【0046】
まず、最も軒側に配置される化粧カバー30を固定する固定部材20を取付けるために、支持部材2に対して固定部材20の取付け位置を示す屋根の傾斜方向と、傾斜方向に対して直角方向とに夫々延びたケガキ線を入れる。傾斜方向に延びたケガキ線は、太陽電池モジュール10や化粧カバー30等の一辺を二つの固定部材20で固定した場合に、支持部材2を支える垂木等の複数の構造部材に対し、固定部材20による固定範囲内に位置する一つの構造部材の中心と略一致するように入れる。また、傾斜方向に対して直角方向へ延びるケガキ線は、固定部材20が支持部材2としての屋根材(スレート)間の段差に掛からないような位置に入れる。
【0047】
そして、固定部材20の軸部22に対して固定部21a側とは反対側の天部23と化粧カバー30の接合部30cとが、固定部材20の被係合片25の被係合突部25aと化粧カバー30の係合片30hの係合突部30gとが、更に、固定部材20の凹部21gと化粧カバー40の突部30kとが、夫々挿入したり係合したりするように、化粧カバー40に対してその長手方向から端部から所定数(本例では二つ)の固定部材20をスライド嵌合させる。なお、本例では、化粧カバー30に突部30kが形成されており、この突部30kによって、化粧カバー30の側面側(長手方向に対して直角方向側)から固定部材20を嵌合させることができないようになっている。
【0048】
一つの化粧カバー30に複数の固定部材20を嵌合させた状態で、固定部材20の裏側の防水部材60に貼り付けられた離型紙を剥した上で、固定部材20を化粧カバー30の長手方向へ適宜スライドさせて、支持部材2上のケガキ線に各固定部材20を合わせ、防水部材60の粘着層を介して固定部材20を支持部材2へ貼り付ける。続いて、支持部材2に貼り付けられた化粧カバー30の長手方向(屋根の傾斜方向に対して直角方向)へ隣接し、化粧カバー30同士の間に所定量(例えば、2mm〜5mm)の隙間S1が形成されるように次の化粧カバー30を支持する固定部材20を支持部材2上に貼り付ける。なお、隙間S1の形成には、連結部材40におけるV字状の切欠き部45の先端の幅を目安に、隙間S1を形成するようにしても良いし、隙間S1と同じ厚さのスペーサを化粧カバー30同士の間に噛ませて、隙間S1を形成するようにしても良い。
【0049】
そして、複数の化粧カバー30を支持部材2上に列設配置したら、その状態で、固定部材20の固定部21aを通して支持部材2、更には、垂木等の構造部材へ固定ビス3をねじ込み、固定部材20を支持部材2へ取付ける。これにより、固定部材20を介して化粧カバー30が支持部材2に固定される。固定部材20により化粧カバー30を固定したら、図8(A)に示すように、隣接する化粧カバー30の端部同士を、第一連結部材40Aによって連結する。これにより、化粧カバー30同士のズレを無くすことができ、見栄えを良くすることができる。
【0050】
また、複数の化粧カバー30のうち少なくとも両端に配置された化粧カバー30に対して、固定部材20の係止孔22aを通して化粧カバー30の当接部30fへ係止ビス4をねじ込み、固定部材20と化粧カバー30とを係止ビス4により締結固定する(図4を参照)。これにより、化粧カバー30が固定部材20に対して長手方向へスライドするのを防止することができる。なお、図示は省略するが、支持部材2へ取付けられた固定部材20に対し、その両端部と棟側側面の下部外周の三辺に防水部材60を覆うように所定のコーキング材を塗付けるようにしており、これにより、支持部材2と固定部材20との間から固定ビス3を伝って雨水等が浸入するのを防止することができると共に、コーキング材によって雨水等を固定部材20の両側へ誘導して軒側へ良好に排出させることができる。
【0051】
続いて、支持部材2上へ化粧カバー30を固定したら、太陽電池モジュール10における一方(棟側)の第一フレーム12に対して、複数(本例では二つ)の固定部材20を嵌合させる。具体的には、固定部材20における軸部22に対して固定部21aとは反対側の天部23とベース部21との間に、第一フレーム12の当接部12eが嵌合するように、固定部材20を、第一フレーム12の長手方向に対して直角方向で太陽電池パネル11の面に沿った外側から嵌合(図7(D)を参照)、或いは、第一フレームの長手方向端部からその長手方向にに沿ってスライド嵌合させる。
【0052】
この嵌合により、固定部材20のベース部21の上面に第一フレーム12の下面が載置されると共に、固定部材20の天部23が第一フレーム12の接合部12c内に挿入され、また、第一フレーム12の当接部12eが固定部材20の軸部22と当接し、更に、第一フレーム12の係合突部12gと固定部材20の被係合突部25aとが互いに係合した状態となる(図7(E)を参照)。
【0053】
そして、太陽電池モジュール10における棟側の第一フレーム12に固定部材20を嵌合させたら、上述と同様に固定部材20の裏側の離型紙を剥した上で、一つの化粧カバー30を支持部材2へ固定している二つの固定部材20のベース部21上面に、軒側の第一フレーム12を載置する(図7(A)を参照)。なお、図示するように、ベース部21を横長の箱状としているので、ベース部21の上面に第一フレーム12が載せ易くなっている。そして、固定部材20のベース部21上に第一フレーム12を載置した状態で、太陽電池モジュール10を軒側へスライドさせ(図7(B)を参照)、第一フレーム12の接合部12c内へ固定部材20における固定部21a側の天部23を挿入させると共に、第一フレーム12における当接部12eの下側面12dを固定部材20における内突部24の外側端部24aと当接させる(図7(C)を参照)。
【0054】
これにより、太陽電池モジュール10における軒側の第一フレーム12は、固定部材20のベース部21により下方への移動が規制されると共に、天部23によって上方への移動が規制され、更に、内突部24によって太陽電池パネル11の面に沿った外側方向(軒側方向)への移動が規制された状態となっている。また、第一フレーム12の当接部12e固定部材20の内突部24と当接することで、軸部22と当接部12eとの間に隙間が形成されるようになっており、その隙間内に係止ビス4の頭部が収容された状態となっている。また、図示するように、化粧カバー30と第一フレーム12との間には、所定量(本例では、約1mm)の間隙としての隙間S2が形成されるようになっており、気温等の変化によって熱膨張しても互いに接触しないようになっていると共に、屋根の傾斜方向に対して上側に配置され太陽電池モジュール10の荷重が下側の化粧カバー30や太陽電池モジュール10等に伝達されないようになっている。
【0055】
続いて、太陽電池モジュール10の棟側の第一フレーム12を支持部材2側へ降下させ(図7(E)を参照)、棟側の第一フレーム12に嵌合された固定部材20を支持部材2上へ載置する。この際に、化粧カバー30の時と同様に、固定部材20を第一フレーム12の長手方向へ適宜スライドさせて、垂木等の構造部材と一致したケガキ線に合わせ、固定部材20を裏面の防水部材60の粘着層により支持部材2へ貼り付けて、一段目の太陽電池モジュール10の一つを配置する。そして、上述と同様に、傾斜方向に対して直角方向へ隣接するように次の太陽電池モジュール10を配置すると共に、化粧カバー30の時と同様に、各太陽電池モジュール10同士の間に所定量の隙間S1が形成されるように一段目の各太陽電池モジュール10を順次配置したら、固定ビス3を用いて各固定部材20を支持部材2へ取付固定する。この時、固定部材20の固定部21aは、平面視で太陽電池モジュール10及び固定部材20の天部23よりも外側に位置しており、上側から固定ビス3で固定部材20を容易に固定することができるようになっている。
【0056】
その後、各太陽電池モジュール10における棟側の第一フレーム12の端部同士を、図8(B)に示すように、第二連結部材40Bを用いて夫々連結する。これにより、太陽電池モジュール10の端部同士のズレを無くして見栄えを良くすることができると共に、第二連結部材40Bを介して太陽電池モジュール10同士を電気的に接続(アース接続)することができるようになっている。また、固定部材20によって支持部材2へ固定されたこれら一段目の太陽電池モジュール10のうち少なくとも両端に配置された太陽電池モジュール10に対して、固定部材20の係止孔22aを通して太陽電池モジュール10における棟側の第一フレーム12の当接部12eへ係止ビス4をねじ込み、固定部材20と太陽電池モジュール10とを係止ビス4により締結固定する(図4及び図7(F)4を参照)。これにより、第一フレーム12は、固定部材20のベース部21によって下方への移動が規制されると共に、天部23によって上方への移動が規制され、また、軸部22によって太陽電池パネル11の面に沿った内側(棟側)への移動が規制されると共に、被係合突部25aによって太陽電池パネル11の面に沿った外側(軒側)への移動が規制され、更に、係止ビス4によって太陽電池パネル11の面に沿った外側(軒側)への移動を防止することができると共に太陽電池モジュール10が屋根の傾斜方向に対して直角方向へスライドするのを防止することができるようになっている。
【0057】
なお、図示は省略するが、化粧カバー30の時と同様に、太陽電池モジュール10を固定する固定部材20に対しても、その両端部と棟側側面の下部外周の三辺に防水部材60を覆うように所定のコーキング材を塗付けている。また、詳細な図示は省略するが、太陽電池モジュール10を固定する前に、各太陽電池モジュール10から延びる配線ケーブル16同士を所定の順に接続すると共に、その配線ケーブル16を第二接続部材40Bのケーブル保持部46に適宜保持させる。更に、太陽電池モジュール10に対してアース線5を接続する場合は、図9に示すように、係止ビス4をねじ込む際に、アース線5の先端の圧着端子5aを一緒に留め付けるようにすることでアース線5を接続することができる。
【0058】
このようにして、一段目の太陽電池モジュール10を固定したら、上述した作業を繰返して、二段目、三段目の太陽電池モジュール10を順次固定し、全ての太陽電池モジュール10を固定し終えたら、図10に示すように、屋根の傾斜方向に対して直角方向両外側の化粧カバー30及び太陽電池モジュール10の側面に、夫々軒側側面キャップ50と中間側面キャップ55を所定のビス6で固定して側面側に露出した化粧カバー30や第一フレーム12の端部を被覆し、太陽光発電システム1の設置が完了することとなる。
【0059】
なお、上記の実施形態では、支持部材2上に直接固定部材20を載置して固定するものを示したが、これに限定するものではなく、図示は省略するが、厚さが2mm〜20mmの板状のスペーサ部材を介して固定部材20を取付けるようにしても良く、屋根材等の支持部材2の上面の状態や、固定部材20を固定する位置等によって適宜厚さのスペーサ部材を使用することで、各固定部材20を略同一面状に固定することができ、太陽電池モジュール10の面が揃った見栄えの良い太陽光発電システム1を構築することができる。
【0060】
また、図11に示すようなスペーサ部材70を用いても良い。このスペーサ部材70は、箱状の本体71と、本体71の内部で横方向の中央に上下方向へ延びる補強リブ72と、上面に固定部材20のスリット21fと嵌合可能なT字状の連結部73と、固定部材20の挿通孔21cと対応し上下方向へ貫通する挿通孔74とを備えている。このスペーサ部材70は、連結部73を固定部材20のスリット21fに挿入することで、固定部材20の下部に連結することができ、固定部材20をより高く嵩上げすることができる。
【0061】
このように、本実施形態によると、固定部材20の軸部22の両側に嵌合された太陽電池モジュール10の第一フレーム12同士が、所定量の隙間S2を形成した状態で固定するようにしているので、気温等の変化により太陽電池モジュール10が熱膨張しても、その膨張を隙間S2で吸収して第一フレーム12同士が当接するのを防止することができ、熱膨張により太陽電池モジュール10が変形したり破損したりするのを防止することができる。また、第一フレーム12同士の間に隙間S1を形成するようにしているので、上側の太陽電池モジュール10の荷重が直接下側の太陽電池モジュール10へかかるのを防止することができ、最も下側の太陽電池モジュール10の第一フレーム12を支持する固定部材20に対して過大な荷重が作用するのを防止することができ、その過荷重により固定部材20が変形したり破損したり、或いは、支持部材2から外れたりするのを防止することができると共に、太陽電池モジュール20の固定強度を向上させて太陽電池モジュール10の設置に対する信頼性や安全性を高めることができる。
【0062】
また、固定部材10における軸部22に対して固定部21aとは反対側に嵌合された第一フレーム12の当接部12eと軸部22とを係止ビス4によって締結可能としているので、軸部22に対して固定部21aとは反対側に嵌合された第一フレーム12に対する支持強度を向上させることができる。また、固定部材10における軸部22の固定部21a側に第一フレーム12の当接部12eとの間で所定量の隙間を形成するようにしているので、係止ビス4の頭部が軸部22から突出してもその頭部を隙間内に収容することができ、頭部が軸部22から突出するような係止ビス4を用いて第一フレーム12と軸部22とを締結固定することができると共に、軸部22における係止孔22aに座ぐり加工を施す必要が無いので、固定部材20の製造コストが増加するのを抑制することができると共に、係止ビス4による締結の作業性を簡略化して作業コストを低減させることができる。
【0063】
更に、上述したように、軸部22と固定部21a側の第一フレーム12の当接部12eとの間に所定量の隙間を形成するようにしているので、その隙間内にアース線5の圧着端子5aも収容することが可能となり、第一フレーム12の当接部12eと軸部22とを係止ビス4で締結する際に、アース線5の端子も一緒に取付けることができ、アース線5の取付作業を簡略化することができると共に、隙間を通してアース線5を外部へ良好に引き出すことができる。
【0064】
また、固定部材20のベース部21を、横長の箱状としているので、固定部材20におけるベース部21の剛性をより高めることができ、台風や強風、大雨や積雪等によって太陽電池モジュール10に大きな荷重が作用しても、固定部材20が変形したり破損したりするのを防止することが可能となり、所定の支持部材2に対して太陽電池モジュール10をより強固に固定することができると共に、第一フレーム12が載置されるベース部21の上面が長くなり、固定部材20に対して太陽電池モジュール10の第一フレーム12を載せ易くすることができ、作業性を向上させることができる。
【0065】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0066】
すなわち、上記の実施形態では、屋根上に設置される太陽光発電システム1に用いたものを示したが、これに限定するものではなく、壁面や地上面等に設置される太陽光発電システムに用いても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 太陽光発電システム
2 支持部材
10 太陽電池モジュール
11 太陽電池パネル
12 第一フレーム
12a 上側面
12b 挿入支持部
12c 接合部
12d 下側面
12e 当接部
20 固定部材
21 ベース部
21a 固定部
22 軸部
22a 係止孔
23 天部
24 内突部
24a 外側端部
24b 空隙
S2 隙間(間隙)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2007−165499号公報
【特許文献2】特開2008−303660号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の太陽電池パネルと、該太陽電池パネルの辺縁を支持するフレームとを備えた太陽電池モジュールを、横方向中央に対して偏芯した位置で所定の支持部材に固定するための固定部を有したベース部と、該ベース部における上面の横方向中央に対して前記固定部とは反対側の位置から上方へ延出する軸部と、該軸部の上端から両側へ前記ベース部の上面と略平行に延びる天部とを備えた固定部材を用いて、該固定部材における前記軸部の両側の前記ベース部と前記天部との間に前記フレームを横方向から嵌合させることで所定の支持部材へ前記太陽電池モジュールを固定する太陽電池モジュールの固定構造であって、
前記フレームは、前記太陽電池パネルの辺縁を挿入支持すると共に該太陽電池パネルが挿入される側とは反対側に上下方向へ延びる上側面を有した挿入支持部と、該挿入支持部の下側に配置され、前記太陽電池パネルが挿入される側とは反対側に開口し前記固定部材の前記天部が挿入可能とされた接合部と、該接合部の下側で前記挿入支持部の前記上側面よりも前記太陽電池パネルの面に沿った方向の内側に配置され、前記固定部材の前記軸部に対して面で当接可能な当接部とを備え、且つ、
前記固定部材は、前記天部と前記ベース部との間で前記軸部に対して前記固定部と同じ側に配置され前記ベース部と前記天部との間よりも狭い空隙を形成し前記軸部と略平行な軸線上に沿った外側端部を有する内突部を更に備え、
前記固定部材における前記軸部に対して前記固定部とは反対側に嵌合された前記フレームの前記当接部と、前記軸部に対して前記固定部とは同じ側から前記内突部の前記空隙を通って前記軸部とを所定の締結部材で締結可能とし、前記固定部材における前記軸部に対して前記固定部と同じ側に嵌合された前記フレームの前記当接部が前記内突部の前記外側端部に当接することで前記フレームの嵌入を規制した上で前記当接部と前記軸部との間に所定量の隙間を形成すると共に、前記固定部材における前記軸部の両側に嵌合された前記フレーム同士の対向する前記上側面同士の間に所定量の間隙を形成可能としたことを特徴とする太陽電池モジュールの固定構造。
【請求項2】
前記固定部材は、前記ベース部が横長の箱状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュールの固定構造。
【請求項3】
太陽電池モジュールにおける太陽電池パネルの辺縁を支持し、横方向中央に対して偏芯した位置で所定の支持部材に固定するための固定部を有したベース部と、該ベース部における上面の横方向中央に対して前記固定部とは反対側の位置から上方へ延出する軸部と、該軸部の上端から両側へ前記ベース部の上面と略平行に延びる天部と、該天部と前記ベース部との間で前記軸部に対して前記固定部と同じ側に配置され前記ベース部と前記天部との間よりも狭い空隙を形成し前記軸部と略平行な軸線上に沿った外側端部を有する内突部とを備えた固定部材における前記軸部の両側の前記ベース部と前記天部との間に横方向から嵌合可能とされた太陽電池モジュール用のフレームであって、
前記太陽電池パネルの辺縁を挿入支持すると共に該太陽電池パネルが挿入される側とは反対側に上下方向へ延びる上側面を有した挿入支持部と、
該挿入支持部の下側に配置され、前記太陽電池パネルが挿入される側とは反対側に開口し前記固定部材の前記天部が挿入可能とされた接合部と、
該接合部の下側で前記挿入支持部の前記上側面よりも前記太陽電池パネルの面に沿った方向の内側に配置され、前記固定部材の前記軸部に対して面で当接可能とされると共に前記内突部の前記外側端部に前記空隙の一部を閉鎖するように当接可能とされた当接部と
を具備することを特徴とする太陽電池モジュール用のフレーム。
【請求項4】
板状の太陽電池パネルの辺縁をフレームで支持した太陽電池モジュールを所定の支持部材に固定するための太陽電池モジュール用の固定部材であって、
横長の箱状で横方向中央に対して偏芯した位置で所定の支持部材に固定するための固定部を有したベース部と、
該ベース部における上面の横方向中央に対して前記固定部とは反対側の位置から上方へ延出する軸部と、
該軸部の上端から両側へ前記ベース部の上面と略平行に延びる天部と、
該天部と前記ベース部との間で前記軸部に対して前記固定部と同じ側に配置され前記ベース部と前記天部との間よりも狭い空隙を形成し前記軸部と略平行な軸線上に沿った外側端部を有した内突部と
を具備し、
前記軸部の両側の前記ベース部と前記天部との間に前記太陽電池モジュールの前記フレームが横方向から嵌合可能とすると共に、前記内突部の前記外側端部によって前記ベース部と前記天部との間に嵌合された前記フレームの嵌入を規制可能としたことを特徴とする太陽電池モジュール用の固定部材。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−261180(P2010−261180A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111741(P2009−111741)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【特許番号】特許第4365450号(P4365450)
【特許公報発行日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(391013162)株式会社屋根技術研究所 (38)
【Fターム(参考)】