説明

太陽電池用バックシート及び太陽電池モジュール

【課題】接着層に隣接する層との密着性に優れた接着層を有する太陽電池用バックシート、及びそれを用いた太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】ポリエステル支持体と、
前記ポリエステル支持体の一方の面に水系塗布液により塗布形成され、ポリオレフィン系バインダーおよび0.1質量%〜0.4質量%の界面活性剤を含有する接着層と、
を有する太陽電池用バックシートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用バックシート及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、発電時に二酸化炭素の排出がなく環境負荷が小さい発電方式であり、近年急速に普及が進んでいる。
【0003】
太陽電池モジュールは、通常、太陽光が入射する側のオモテ面ガラスと、太陽光が入射する側とは反対側(裏面側)に配置される、いわゆるバックシートとの間に、太陽電池セルが挟まれた構造を有しており、オモテ面ガラスと太陽電池セルとの間、及び太陽電池セルとバックシートとの間は、それぞれEVA(エチレン−ビニルアセテート)樹脂などの封止材で封止されている。
【0004】
バックシートは、太陽電池モジュールの裏面からの水分の浸入を防止する働きを有するもので、従来はガラス等が用いられていたが、近年では、コストの観点から樹脂に代表されるポリマーが用いられるようになってきている。そして、バックシートは、単なるポリマーシートではなく、封止材等の隣接層と強固に接着する接着性能を有することも求められている。
この点について、バックシートの最表層に接着層を設けることが知られている。例えば、ポリエステル支持体上に硬膜剤を塗設したり、熱接着層を設ける技術が開示されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−152013号公報
【特許文献2】特開2010−109240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術は、接着層に含まれる界面活性剤の含有量が1質量%以上と多く、隣接層との密着性が不十分であった。また、前記特許文献2に記載の接着層は、有機溶剤を溶媒とした塗布液により塗布形成されたものであり、対環境性が考慮されていない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、下記目的を達成することを本発明の課題とする。すなわち、
本発明は、接着層に隣接する層との密着性に優れた接着層を有する太陽電池用バックシート、及びそれを用いた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
既述のように、前記特許文献1に記載の技術は、接着層に含まれる界面活性剤の含有量が1質量%以上と多く、隣接層との密着性が不十分であった。層を面状良く塗布形成するには、塗布液の表面張力を50dyne/cm(=50mN/m)以下まで下げる必要がある。そのためには、一般に、界面活性剤を多くすることが考えられ、そうすることによって、面状良く塗布することはできるが、塗布形成された接着層と隣接層との密着性を低下させた。しかしながら、塗布性を損ねない程度に少なくすることで、接着層を面状良く塗布することができると共に、隣接層との密着性を向上することができることがわかった。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> ポリエステル支持体と、
前記ポリエステル支持体の一方の面に水系塗布液により塗布形成され、ポリオレフィン系バインダーおよび層の全質量に対して0.1質量%〜0.4質量%の界面活性剤を含有する接着層と、
を有する太陽電池用バックシートである。
【0009】
<2> 前記接着層が、前記接着層の全体積に対して0体積%を超え60体積%以下の白色顔料を含有している前記<1>に記載の太陽電池用バックシートである。
【0010】
<3> 前記ポリエステル支持体が、85℃、相対湿度85%の雰囲気で2000時間保存する湿熱処理前の破断強度に対する前記湿熱処理後の破断強度の割合が0.5以上であるポリエチレンテレフタレートフィルムである前記<1>または前記<2>に記載の太陽電池用バックシートである。
【0011】
<4> 前記白色顔料は、表面がAlおよびSiOで被覆された二酸化チタンである前記<2>または前記<3>に記載の太陽電池用バックシートである。
【0012】
<5> 前記ポリエステル支持体の、前記接着層が形成されている面とは反対面に塗布形成され、シリコーン系樹脂および前記フッ素系樹脂の少なくとも一方を含有するウラ面塗布層を少なくとも1層有し、
前記ウラ面塗布層が2層以上であるときは、前記ウラ面塗布層の少なくとも1層が前記シリコーン系樹脂および前記フッ素系樹脂を含有する層であるか、または、前記ウラ面塗布層が前記シリコーン系樹脂を含有する第1の層と前記フッ素系樹脂を含有する第2の層とを少なくとも積層した重層である前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシートである。
【0013】
<6> 太陽光が入射する透明性のフロント基板と、
前記フロント基板の上に設けられ、太陽電池素子及び前記太陽電池素子を封止する封止材を有するセル構造部分と、
前記セル構造部分の前記フロント基板が位置する側と反対側に設けられ、前記封止材と隣接して配置された、前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシートと、
を備えた太陽電池モジュールである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接着層に隣接する層との密着性に優れた接着層を有する太陽電池用バックシート、及びそれを用いた太陽電池モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<太陽電池用バックシート>
本発明の太陽電池用バックシートは、ポリエステル支持体と、前記ポリエステル支持体の一方の面に水系塗布液により塗布形成され、ポリオレフィン系バインダーおよび0.1質量%〜0.4質量%の界面活性剤を含有する接着層と、を有して構成される。
太陽電池用バックシートは、さらに、例えば、耐候層などの機能層を有していてもよい。
本発明においては、本発明の太陽電池用バックシートを上記構成とすることで、接着層と隣接する層(隣接層)との密着性に優れる。たとえば、隣接層が、EVA封止材である場合、EVA封止材との密着性に優れる。
なお、太陽電池用バックシートを、単に「バックシート」と称することもある。また、本明細書において、「接着層の隣接層」または単に「隣接層」と称するときは、バックシートの接着層に隣接する層のうち、ポリエステル支持体側とは反対側に隣接し得る層であって、バックシートを構成しない他の部材(例えば、EVA封止材等)を指すものとする。
以下、本発明のバックシートを構成するポリエステル支持体および接着層について、詳細に説明する。
【0016】
〔ポリエステル支持体〕
本発明の太陽電池用バックシートは、ポリエステル支持体(以下、単に「支持体」とも称する)を有する。
バックシートに用い得る支持体は、ポリエステルであれば特に制限されず、例えば、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルが挙げられる。
かかるポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどを挙げることができる。このうち、力学的物性やコストのバランスの点で、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートがより好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0017】
前記ポリエステルは、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。更に、前記ポリエステルに他の種類の樹脂、例えばポリイミド等を少量ブレンドしたものであってもよい。
【0018】
ポリエステルを重合する際には、カルボキシ基含量を所定の範囲以下に抑える観点から、Sb系、Ge系、Ti系の化合物を触媒として用いることが好ましく、中でも特にTi系化合物が好ましい。Ti系化合物を用いる場合、Ti系化合物を1ppm以上30ppm以下、より好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で触媒として用いることにより重合する態様が好ましい。Ti系化合物の割合が前記範囲内であると、末端カルボキシル基含量を後述の範囲に調整することが可能であり、ポリマーの耐加水分解性を低く保つことができる。
【0019】
Ti系化合物を用いたポリエステルの合成には、例えば、特公平8−301198号公報、特許第2543624号、特許第3335683号、特許第3717380号、特許第3897756号、特許第3962226号、特許第3979866号、特許第3996871号、特許第4000867号、特許第4053837号、特許第4127119号、特許第4134710号、特許第4159154号、特許第4269704号、特許第4313538号等に記載の方法を適用できる。
【0020】
ポリエステル中のカルボキシ基含量は50当量/t以下が好ましく、より好ましくは35当量/t以下である。カルボキシ基含量が50当量/t以下であると、耐加水分解性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。カルボキシ基含量の下限は、支持体と隣接する層(例えば、接着層)と、支持体との間の接着性を保持する点で、2当量/tが望ましい。
なお、「当量/t」とは、1トンあたりのモル当量を表す。
ポリエステル中のカルボキシ基含量は、重合触媒種、製膜条件(製膜温度や時間)により調整することが可能である。
【0021】
ポリエステルは、重合後に固相重合されていることが好ましい。これにより、好ましいカルボキシ基含量を達成することができる。固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、送り出す方法)でもよいし、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。具体的には、固相重合には、特許第2621563号、特許第3121876号、特許第3136774号、特許第3603585号、特許第3616522号、特許第3617340号、特許第3680523号、特許第3717392号、特許第4167159号等に記載の方法を適用することができる。
【0022】
固相重合の温度は、170℃以上240℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以上230℃以下であり、さらに好ましくは190℃以上220℃以下である。また、固相重合時間は、5時間以上100時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以上75時間以下であり、さらに好ましくは15時間以上50時間以下である。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0023】
ポリエステル支持体は、例えば、上記のポリエステルをフィルム状に溶融押出を行なった後、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後Tg〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるように延伸した2軸延伸フィルムであることが好ましい。
さらに、必要に応じて180〜230℃で1〜60秒間の熱処理を行なったものでもよい。
【0024】
支持体の厚みは、25μm〜300μm程度が好ましい。厚みは、25μm以上であると力学強度が良好であり、300μm以下であるとコスト的に有利である。
特にポリエステル支持体は、厚みが増すに伴なって耐加水分解性が悪化し、長期使用に耐えない傾向にあり、本発明においては、厚みが120μm〜300μmであって、かつポリエステル中のカルボキシ基含量が2当量/t〜35当量/tであることが好ましく、この場合に、より湿熱耐久性の向上効果が奏される。ポリエステル支持体のポリエステル中のカルボキシ基含量は、支持体と塗布層との密着に寄与するため、湿熱耐久性と密着力を総合的に考慮すると10当量/t以上であることがより好ましい。
【0025】
−破断強度−
さらに、ポリエステル支持体は、85℃、相対湿度85%(85%RH)の雰囲気で2000時間保存する湿熱処理前の破断強度に対する前記湿熱処理後の破断強度の割合が0.5以上であるポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。以下、「85℃、相対湿度85%(85%RH)の雰囲気で2000時間保存する湿熱処理」を「特定湿熱処理」ともいう。
ここで、破断強度とは、支持体を、支持体の長さ方向に引っ張ったときに、支持体が破断するまでの伸びをいうが、より詳細には、幅10mm、長さ200mmの平板状の支持体を、支持体の長さ方向に、20mm/分の力で引っ張ったときに、支持体が破断するまでの伸びをいう。
【0026】
常温常湿度(例えば、20℃、30%RH)では、十分な強度や柔軟性を有する支持体であっても、支持体を85℃、85%RHの湿熱雰囲気下におくと、ポリエステルである支持体は、通常、劣化し、脆くなり、強度や柔軟性が低下し易い。すなわち、特定湿熱処理の湿熱条件は、通常の太陽電池バックシートの使用環境からすると、相当過酷な条件であり、バックシートとしての長期信頼性を評価するための加速条件である。
【0027】
接着層を支える支持体が、上記破断強度を有することで、特定湿熱処理をした後も、破断強度が低下し難い耐久性を有する。
このように、本発明の太陽電池用バックシートは、湿熱処理1の如き湿熱環境下でも耐久性を有する支持体と、アンカー効果を有する接着層とを有するため、接着層と封止材との密着性を高めることができると考えられる。
ポリエステル支持体の破断強度にかかる上記物性を式で表すと、下記式(1)のように示される。
【0028】
【数1】

【0029】
便宜上、「85℃、相対湿度85%の雰囲気で2000時間保存する湿熱処理前の破断強度に対する前記湿熱処理後の破断強度の割合」を、下記式(2)のように表現する。
【0030】
【数2】

【0031】
破断強度保持率は、0.5〜1.0であることがより好ましい。
ここで、破断強度保持率が0.5であるとは、特定湿熱処理をした後の支持体が、特定湿熱処理前の支持体の伸びの半分の長さまでしか伸びないことを意味する。また、破断強度保持率が1.0であるとは、特定湿熱処理をした後でも、支持体が、特定湿熱処理をする前の支持体と同じ長さであること、つまり、特定湿熱処理後でも長さが変わらないことを意味する。
破断強度保持率を、0.5以上とすることで、特定湿熱処理の湿熱環境下でも、ポリエステル支持体が耐久性を有し、接着層との間の密着性を保つ支持体とすることができる。
破断強度保持率は、さらには、0.8〜1.0であることが好ましい。
【0032】
〔接着層〕
本発明のバックシートが有する接着層は、ポリエステル支持体の一方の面に水系塗布液により塗布形成され、少なくとも、ポリオレフィン系バインダーおよび0.1質量%〜0.4質量%の界面活性剤を含有して構成される。すなわち、接着層は、ポリオレフィン系バインダーと特定量の界面活性剤とを少なくとも含む水系塗布液を用いて、ポリエステル支持体の一方の面に塗布形成された塗布層(塗膜)から得られた層である。水系とは、塗布液の溶媒の50質量%以上が水であることをいう。接着層の形成方法の詳細は後述する。
接着層は、さらに、白色顔料などの顔料を含有していてもよいし、必要に応じて、さらに添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。
【0033】
−界面活性剤−
接着層に含まれる界面活性剤は、接着層の全質量に対して、0.1質量%〜0.4質量%であれば、特に制限されず、公知の界面活性剤を使用することができる。
例えば、アルキルアンモニウムハロゲン化塩等のチオン系界面活性剤、アルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸カリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエチレンオキシエーテル等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。そのほかに、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等の界面活性剤を用いてもよい。
中でも、隣接層との密着の観点から、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
界面活性剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
なお、「界面活性剤」には、白色顔料等の粒子を分散させるいわゆる分散剤も包含するものである。本明細書では、界面活性剤のうち、顔料を特に分散させる用途の界面活性剤を顔料分散剤とも称する。したがって、接着層中の界面活性剤の量(0.1質量%〜0.4質量%)には、接着層中の顔料分散剤の量を含めた全界面活性剤の量が、0.1質量%〜0.4質量%である。
【0035】
界面活性剤の接着層中の含有量が、接着層の全質量に対して0.4質量%を超えると、ポリエステル支持体上に接着層を水系塗布液により塗布形成するときに、塗膜の凝集力が低下し、接着性を有することができない。界面活性剤の接着層中の含有量が、接着層の全質量に対して0.1質量%未満であると、接着層を形成するための塗布液の、ポリエステル支持体に対する濡れ性を付与することができない。
接着層中の界面活性剤の含有量は、接着層の全質量に対して0.2質量%〜0.3質量%であることが好ましい。
【0036】
−ポリオレフィン系バインダー−
接着層は、ポリオレフィン系バインダーを含有する。
接着層が、上記界面活性剤の含有量の下、ポリオレフィン系バインダーを含有することで、接着層は、隣接層との密着性に優れる。
接着層が含み得るポリオレフィン系バインダーは、特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンの如き単重合体でもよいし、ポリエチレン・ポリプロピレン共重合体のごとき共重合体でもよい。さらに、共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、グラフト共重合体であってもよい。
【0037】
好ましいポリオレフィン系バインダーの例としては、アローベースSE−1010、SE−1013N〔以上、ユニチカ社製〕、ケミパールS−120、S−75N〔以上、三井化学社製〕、ハイテックS−3148、S−3121〔以上、東邦化学工業社製〕などを挙げることができる。
ポリオレフィン系バインダーは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
ポリオレフィン系バインダーの接着層中における含有量は、0.05g/m〜10g/mの範囲とする。中でも、1g/m〜7g/mの範囲が好ましい。バインダーの含有量は、0.05g/m未満であると所望とする接着力が得られず、10g/mを超えると良好な面状が得られない。
【0039】
−白色顔料−
接着層は、白色顔料の少なくとも一種を含有していてもよい。
接着層が白色顔料を含有することで、接着層を、太陽光の反射層としても機能させることができる。
白色顔料としては、例えば、シリカ、酸化マグネシウム、酸化錫、二酸化チタン(TiO)等が挙げられる。中でも、反射効率の観点から、二酸化チタンが好ましい。
【0040】
白色顔料の粒径は、体積平均粒径で10nm〜700nm程度が好ましく、より好ましくは20nm〜400nm程度である。粒径がこの範囲内であると、太陽光の反射性に優れ、接着層の隣接層及び支持体との密着性を損ないにくい。白色顔料の粒径は、ハネウェル社製、マイクロトラックFRAにより測定される値である。
白色顔料の形状には、特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のいずれのものを用いることができる。
【0041】
−表面処理−
白色顔料として、二酸化チタン(TiO)粒子を用いる場合、光触媒活性を抑制するため、二酸化チタンは、ルチル型が好ましく、このルチル型二酸化チタン粒子の表面にAl(バインダーとの親和性向上のため)およびSiO(光触媒活性抑制のため)を被覆する表面処理をしている事が好ましい。被覆量としては、二酸化チタン粒子の全質量に対して、5質量%〜25質量%であることが好ましい。更に、バインダーとの濡れ性を向上させるために、ポリオール系有機物などをさらに付与する表面処理をすることで、顔料分散剤の量を減らせることができ、より好ましい。
【0042】
白色顔料は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
白色顔料の接着層中の含有量は、接着層の全体積に対する体積濃度であるPVC(pigment volume concentration、〔体積%〕)で、0体積%を超え60体積%であることが好ましい。白色顔料のPVCが、60体積%以下であることで、接着層中に含まれる白色顔料の割合が多くても、接着層の膜脆性を比較的高く保持できる。
さらに、白色顔料のPVCは、10体積%〜60体積%であることがより好ましく、20体積%〜50体積%であることが特に好ましい。
【0044】
(添加剤)
本発明における接着層には、必要に応じて、更に、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の公知のマット剤、その他、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加してもよい。
【0045】
−接着層の密着性−
バックシートの接着層は、バックシートを太陽電池部材と強固に接着するための層である。太陽電池部材は、バックシートの接着層と隣接することによりバックシートに固着される。太陽電池部材は、特に制限されず、例えば、電池本体の太陽電池素子(以下、発電素子ともいう)を封止する封止材などが挙げられる。また、太陽電池素子を封止する封止材は、柔軟性および耐候性の観点から、エチレン−ビニルアセテート(EVA;エチレン−酢酸ビニル共重合体)系封止材が好ましく用いられる。
接着層の隣接層がEVA封止材であるとき、接着層と隣接層との剥離強度は30N/10mm以上であることが好ましい。
【0046】
なお、接着層とEVA封止材との剥離強度は、テンシロン(Universal Testing Instrument社製、RTF−1310)を用い、剥離角度180度、剥離速度30mm/分の条件で測定される値をいう。
【0047】
(接着層の形成方法)
接着層は、ポリオレフィン系バインダー及び、塗布液中の全固形分質量に対して、0.1質量%〜0.4質量%の界面活性剤を少なくとも含む水系塗布液(接着層形成用塗布液)を、ポリエステル支持体の一方の面に塗布することにより形成される。
【0048】
塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の塗布法を利用することができる。
塗布液の調製に用いる塗布溶媒は、溶媒全質量に対して50質量%以上の水を用いればよく、さらに、アルコール、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0049】
接着層は、強度を向上する観点から、接着層中のバインダーが架橋構造を有していることが好ましい。架橋構造を有するバインダーを含有する接着層とするには、前記接着層形成用塗布液に、さらに架橋剤を含有すればよい。架橋剤を含有する接着層形成用塗布液をポリエステル支持体に塗布し、乾燥することにより、架橋構造を有するバインダーを含有する接着層を形成することができる。
【0050】
−架橋剤−
接着層のバインダーを架橋させるのに好適な架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。中でも、湿熱経時後の接着性を確保する観点から、オキサゾリン系架橋剤が特に好ましい。従って、接着層中のバインダーは、オキサゾリン系架橋剤による架橋構造を有していることが好ましい。
【0051】
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく用いられる。
また、オキサゾリン基を有する化合物として、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS−500、同WS−700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等も利用できる。
【0052】
塗布液(接着層形成用塗布液)中における架橋剤の含有量としては、塗布液中のバインダーの全質量に対して、5質量%〜50質量%が好ましく、中でもより好ましくは20質量%〜40質量%である。架橋剤の含有量は、5質量%以上であると、良好な架橋効果が得られ、接着層の強度や接着性を保持することができ、50質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保つことができる。
【0053】
接着層の厚みには、特に制限はないが、通常は0.05〜10μmが好ましく、より好ましくは3〜8μmの範囲である。接着層の厚みは、0.05μm以上であると必要な易接着性を好適に得ることができ、10μm以下であると面状がより良好になる。
【0054】
なお、接着層は、1層のみであっても2層以上であってもよいが、接着層を太陽光を反射する機能を併せ持つ層とする場合は、2以上の接着層のうち、反射層として機能する接着層は、支持体側を下側としたとき、最上層に位置するように形成することが好ましい。反射層として機能する接着層を、最上層に位置させずに、接着層を積層する場合は、反射層として機能する接着層の上層は、反射層として機能する接着層の効果を低減させないために、透明であることが必要である。
【0055】
(下塗り層)
本発明の太陽電池用バックシートには、支持体と接着層との間に下塗り層を設けてもよい。下塗り層の厚みは、厚み2μm以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.02μm〜2μmであり、更に好ましくは0.05μm〜1μmである。厚みが2μm以下であると、面状を良好に保つことができる。また、厚みが0.02μm以上であることにより、必要な接着性を確保しやすい。
【0056】
下塗り層は、バインダーを含有することができる。バインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。また、下塗り層には、バインダー以外に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤、アニオン系やノニオン系等の界面活性剤、シリカ等のフィラーなどを添加してもよい。
【0057】
下塗り層を塗布するための方法や用いる塗布液は、水系であることが好ましく、接着層を形成するための水系塗布液と同様に溶媒を選択すればよい。
塗布方法としては、例えばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
また、塗布は、2軸延伸した後の支持体に塗布してもよいし、1軸延伸後の支持体に塗布した後に初めの延伸と異なる方向に延伸する方法でもよい。さらに、延伸前の支持体に塗布した後に2方向に延伸してもよい。
【0058】
(着色層)
本発明の太陽電池用バックシートには、着色層を有していてもよい。
本発明における着色層は、顔料と、バインダーとを含有して構成することができ、さらに各種添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。
【0059】
着色層の第1の機能は、入射光のうち太陽電池セルを通過して発電に使用されずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げることにある。既述の接着層に白色顔料を含有しない場合等に、別途、太陽光を反射させる層を設けたい場合に、着色層を設ければよい。
着色層の第2の機能は、太陽電池モジュールを太陽光が入射する側(オモテ面側)から見た場合の外観の装飾性を向上することにある。一般に太陽電池モジュールをオモテ面側から見ると、太陽電池セルの周囲にバックシートが見えており、バックシートに着色層を設けることにより装飾性を向上させて見栄えを改善することができる。
【0060】
−顔料−
顔料としては、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料を、適宜選択して含有することができる。
【0061】
着色層中には、顔料を2.5g/m〜8.5g/mの範囲で含有することが好ましい。顔料の着色層中における含量が2.5g/m以上であると、着色が得られ易く、反射率や装飾性を発現し易い。また、顔料の着色層中における含量が8.5g/m以下であることで、着色層の面状が悪化しにくく、膜強度も低下しにくい。
中でも、顔料のより好ましい含量は、4.0g/m〜7.5g/mの範囲である。
【0062】
顔料の平均粒径としては、体積平均粒径で0.03μm〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15μm〜0.5μm程度である。平均粒径が前記範囲内であると、光の反射効率が高い。平均粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0063】
−バインダー−
バインダーは、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられ、耐久性の観点からは、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。
バインダーの含有量は、着色層中の顔料全質量に対して、15質量%〜200質量%の範囲が好ましく、17質量%〜100質量%の範囲がより好ましい。バインダーの含有量は、15質量%以上であると、着色層の強度が充分に得られ、また200質量%以下であると、反射率や装飾性を良好に保つことができる。
【0064】
−添加剤−
バインダー及び顔料以外に、界面活性剤、フィラー(無機微粒子)等の添加剤を着色層に添加してもよい。
界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤を添加する場合、その添加量は0.1〜15mg/mが好ましく、より好ましくは5.0〜12mg/mである。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、15mg/m以下であると、接着を良好に行なうことができる。
【0065】
本発明における着色層には、上記の顔料とは別に、更に、シリカ等のフィラーなどを添加してもよい。フィラーを添加する場合、その添加量は、着色層中のバインダーに対して、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィラーの添加量が20質量%以下であると、顔料の比率低下を抑えつつ必要な反射率や装飾性を得ることができる。
【0066】
(着色層の形成方法)
着色層の形成は、顔料を含有するポリマーシートを支持体に貼合する方法、支持体形成時に着色層を共押出しする方法、着色層形成用塗布液を塗布することによる方法等により行なえる。具体的には、ポリエステル支持体の表面に直に、あるいは厚み2μm以下の下塗り層を介して、貼合、共押出し、塗布等することにより着色層を形成することができる。形成された着色層は、支持体の表面に直に接した状態であっても、あるいは下塗り層を介して積層した状態であってもよい。
上記のうち、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましい。
【0067】
塗布による場合、塗布方法としては、例えば、グラビアコーター、バーコーターなどの公知の塗布方法を利用することができる。
着色層形成用の塗布液は、塗布溶媒として水を用いた水系でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒を用いた溶剤系でもよいが、中でも、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0068】
着色層中のバインダーは架橋構造を有していてもよい。架橋構造を有するバインダーを含有する着色層は、例えば、架橋剤を含有する着色層形成用塗布液を用いて支持体等に塗布することで形成することができる。前記架橋剤としては、前記架橋剤としては、接着層のバインダーを架橋させるのに好適な架橋剤として列挙した架橋剤を好適に用いることができる。
架橋剤の添加量としては、着色層形成用塗布液中のバインダー全質量に対して、5質量%〜50質量%が好ましく、より好ましくは10質量%〜40質量%である。架橋剤の添加量は、5質量%以上であると、着色層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、50質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保てる。
【0069】
(ウラ面塗布層)
本発明のバックシートは、ポリエステル支持体の接着層が形成されている面とは反対面に塗布形成され、シリコーン系樹脂および前記フッ素系樹脂の少なくとも一方を含有するウラ面塗布層を少なくとも1層有し、ウラ面塗布層が2層以上であるときは、ウラ面塗布層の少なくとも1層がシリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂を含有する層であるか、または、ウラ面塗布層がシリコーン系樹脂を含有する第1の層と、フッ素系樹脂を含有する第2の層とを少なくとも積層した重層であることが好ましい。
本明細書において、ポリエステル支持体の表面のうち、接着層が形成されている面をオモテ面、オモテ面とは反対の面をウラ面と称する。
ウラ面塗布層が、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂の少なくとも一方を含有していることで、ウラ面塗布層は耐候性に優れ、耐候層として機能する。
【0070】
ここで、本発明のバックシートは、ポリエステル支持体のオモテ面には、記述の接着層が水系塗布液により塗布形成されており、ウラ面に、シリコーン系樹脂および前記フッ素系樹脂の少なくとも一方を含有するウラ面塗布層を少なくとも1層有していることが好ましい。また、当該ウラ面塗布層は、塗布形成により得られたものであることが好ましい。
さらに、ポリエステル支持体のウラ面に形成されたウラ面塗布層が、2層以上の多層構造である場合には、次のA)、B)、2つの態様であることが好ましい。
【0071】
A)ウラ面塗布層の少なくとも1層がシリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂を含有する層である態様である。
すなわち、例えば、ウラ面塗布層が、a1層、b1層の2層で構成されている場合は、a1層〜b1層のうち、少なくとも1層が、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂の両方の樹脂を含有する層である態様である。シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂の両方の樹脂を含有する層は、2層以上あってもよい。
【0072】
B)ウラ面塗布層が、シリコーン系樹脂を含有する第1の層と、フッ素系樹脂を含有する第2の層とを少なくとも積層した重層である態様である。
すなわち、例えば、ウラ面塗布層が、a1層、b1層の2層で構成されている場合は、a2層〜b2層のうち、一方の層は、シリコーン系樹脂を含有する層であり、他方の層はフッ素系樹脂を含有する態様である。残りの1層は、シリコーン系樹脂を含む層であってもよいし、フッ素系樹脂を含む層であってもよいし、シリコーン系樹脂及びフッ素系樹脂の両方の樹脂を含有する層であってもよい。
【0073】
次に、ウラ面塗布層に含まれるシリコーン系樹脂、およびフッ素系樹脂について説明する。
−フッ素系樹脂−
フッ素系樹脂としては、−(CFX−CX)−で表される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。なお、前記繰り返し単位において、X、X、及びXは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表す。
【0074】
フッ素系樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと表すことがある。)、ポリフッ化ビニル(以下、PVFと表すことがある。)、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと表すことがある。)、ポリ塩化3フッ化エチレン(以下、PCTFEと表すことがある。)、ポリテトラフルオロプロピレン(以下、HFPと表すことがある。)などが挙げられる。
【0075】
フッ素系樹脂は、一種のモノマーを単独重合したホモポリマーでもよいし、2種以上のモノマーを共重合したものでもよい。共重合したポリマーの例として、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロプロピレンとを共重合したコポリマー(P(TFE/HFP)と略記する。)、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとを共重合したコポリマー(P(TFE/VDF)と略記する。)等を挙げることができる。
【0076】
さらに、−(CFX−CX)−の構造部分を有するフッ素系モノマーとそれ以外のモノマーとを共重合したポリマーでもよい。その例として、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(P(TFE/E)と略記する。)、テトラフルオロエチレンとプロピレンとの共重合体(P(TFE/P)と略記する。)、テトラフルオロエチレンとビニルエーテルとの共重合体(P(TFE/VE)と略記する。)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロビニルエーテルとの共重合体(P(TFE/FVE)と略記する。)、クロロトリフルオロエチレンとビニルエーテルとの共重合体(P(CTFE/VE)と略記する。)、クロロトリフルオロエチレンとパーフルオロビニルエーテルとの共重合体(P(CTFE/FVE)と略記する。)等を挙げることができる。
【0077】
フッ素系樹脂は、有機溶剤に溶解して用いられるものでもよいし、ポリマー粒子として水に分散させて用いられるものでもよい。環境負荷が少ない点で後者が好ましい。フッ素系樹脂の水分散物については、例えば特開2003−231722号公報、特開2002−20409号公報、特開平9−194538号公報等に記載されている。
【0078】
フッ素系樹脂は、上市されている市販品を用いてもよく、該市販品の例として、AGCコーテック(株)製のオブリガートSW0011Fなどを挙げることができる。
【0079】
−シリコーン系樹脂−
シリコーン系樹脂としては、例えば、シリコーンとアクリルの複合ポリマー、シリコーンとポリエステルの複合ポリマー等が挙げられる。シリコーン系樹脂として、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、シリコーンとアクリルとの複合ポリマーの具体例として、DIC(株)製のセラネートWSA1060、同WSA1070等、旭化成ケミカルズ(株)製のH7620、H7630、H7650等、などを挙げることができる。
【0080】
−他の樹脂−
ウラ面塗布層は、フッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂以外の他の樹脂を含有していてもよい。他の樹脂を併用する場合、ウラ面塗布層中(ウラ面塗布層が2層以上あるときは、各層中)の他の樹脂の含有量は、ウラ面塗布層中(ウラ面塗布層が2層以上あるときは、各層中)のフッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂全質量の50質量%以下の範囲で併用することが好ましい。他の樹脂の量が50質量%以下であることで、ウラ面塗布層は、耐候層として良好な耐候性を発揮することができる。
【0081】
ウラ面塗布層形成用の塗布液は、フッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂の少なくとも一方を含む水系塗布液とすることが好ましい。ウラ面塗布層形成用の塗布液に用いる溶媒は、接着層形成用の塗布液に用い得る溶媒と同様に選択すればよい。また、塗布液のポリエステル支持体に対する塗布方法も、接着層形成と同様である。
【0082】
フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂、あるいはフッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂のウラ面塗布層形成用の塗布液中における濃度は、塗布液の全質量に対して、6質量%以上25質量%以下であることが好ましく、より好ましくは8質量%以上20質量%以下である。フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂、あるいはフッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂の含有量が上記範囲であることで、優れた耐候性を発現することができる。
また、形成されたウラ面塗布層中におけるフッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂、あるいはフッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂の塗布量は、1.0〜8.5g/mが好ましく、より好ましくは2.0〜7.5g/m以下である。フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂、あるいはフッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂の含有量が、上記範囲であることで、強度の良好な層が得られ、耐候性能を高く保持することができる。
【0083】
〔バックシートの製造〕
本発明の太陽電池用バックシートは、支持体の上に、既述の接着層を形成することができる方法であればいずれの方法により作製されてもよい。本発明においては、支持体上に、接着層形成用塗布液を塗布する工程(塗布工程)を設けて作製する方法により好適に作製することができる。さらに、バックシートがさらに下塗り層、着色層等を有する場合には、前記塗布工程は、例えば、支持体上に、支持体側から順に、下塗り層形成用塗布液、着色層形成用塗布液、及び接着層形成用塗布液を塗布する工程とすることができる。
【0084】
<太陽電池モジュール>
本発明の太陽電池用バックシートは、太陽電池モジュールを構成する部材として好ましく用いることができる。
例えば、太陽電池モジュールは、太陽光が入射する透明性のフロント基板と、フロント基板の上に設けられ、太陽電池素子及び太陽電池素子を封止する封止材を有するセル構造部分と、セル構造部分のフロント基板が位置する側と反対側に設けられ、封止材と隣接して配置された、本発明の太陽電池用バックシートと、を備えて構成することができる。
【0085】
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
【0086】
透明性の基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0087】
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」および「部」は質量基準である。
【0089】
〔実施例1〕
<支持体の作製>
−ポリエステルの合成−
高純度テレフタル酸〔三井化学社製〕100kgとエチレングリコール〔日本触媒社製〕45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×10Paに保持されたエステル化反応槽に、4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行なった。その後、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合反応槽に移送した。
【0090】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に、エチレングリコールを、得られるポリマーに対して0.3質量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して、コバルト元素換算値及びマンガン元素換算値で、それぞれ30ppm、15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、チタンアルコキシド化合物の2質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して、チタン元素換算値で5ppmとなるように添加した。その5分後、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して、リン元素換算値で5ppmとなるように添加した。その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし、常圧に戻し、重縮合反応を停止した。そして、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリマーのペレット(直径約3mm、長さ約7mm)を作製した。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
【0091】
但し、前記チタンアルコキシド化合物には、特開2005−340616号公報の段落番号[0083]の実施例1で合成しているチタンアルコキシド化合物(Ti含有量=4.44質量%)を用いた。
【0092】
−固相重合−
重合したポリエチレンテレフタレートのペレットについて、下記方法(バッチ法)で固相重合を実施した。
ペレットを耐真空容器に投入した後、容器内を真空(40Pa)にし、撹拌しながら、220℃で30時間保持して固相重合した。
【0093】
−ベース形成−
以上のようにして固相重合した後のペレットを、280℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ2.5mmの未延伸ベースを作成PETした。その後、90℃で縦方向に3倍に延伸し、更に120℃で横方向に3.3倍に二軸延伸し、195℃で4分間加熱した。こうして、厚み250μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体(PET支持体1)を得た。PET支持体のカルボキシ基含量は、14当量/tであった。
【0094】
なお、支持体中のカルボキシ基含量は、以下のようにして算出した。
支持体0.1gの質量w〔g〕を測定し、これを5mLのベンジルアルコールの入った丸底フラスコに入れて、栓をした状態で、温度205℃で24時間保持した。その後、内容物を15mLのクロロホルムに添加した。この液に少量のフェノールレッド指示薬を加えたものを、濃度0.01Nの水酸化カリウムのベンジルアルコール溶液で滴定した。滴定に要した水酸化カリウム溶液の量をx〔mL〕として、次の式で支持体中のカルボキシ基量含量(COOH基量)を求めた。
カルボキシ基含量(当量/t)=0.01×x/w
なお以下、「当量/t」を「eq./t」とも記載する。
【0095】
<接着層(EVA易接着層)の形成>
得られたPET支持体1の片面(オモテ面)に、コロナ処理(コロナ放電処理)を施した上、下記の組成の第1接着層形成用塗布液及び第2接着層形成用塗布液をこの順で塗布し、2層の接着層を形成した。
第1接着層および第2接着層の形成方法の詳細は次のとおりである。
【0096】
〔第1接着層の形成〕
PET支持体1の一方の面に、下記条件でコロナ処理を施した。
・電極と誘電体ロ−ルギャップクリアランス:1.6mm
・処理周波数:9.6kHz
・処理速度:20m/分
・処理強度:0.375kV・A・分/m
【0097】
PET支持体1のコロナ処理を施した面に、下記第1接着層形成用塗布液を固形分塗布量が0.12g/mとなるよう塗布して、175℃で2分間乾燥して第1接着層を形成した。
【0098】
−第1接着層形成用塗布液−
・アクリル系バインダー(B−1)・・・・・・・・・・・・・・・・25.7部
〔AS563A、ダイセルファインケム社製、濃度28%〕
・ポリオレフィン系バインダー(B−3)・・・・・・・・・・・・・35.7部
〔アローベース SE−1013N、ユニチカ社製、濃度20.2%〕
・PMMA微粒子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10.0部
〔MP−1000、綜研化学社製、濃度5%〕
・カルボジイミド架橋剤(C−1)・・・・・・・・・・・・・・・・24.5部
(カルボジライト V−02−L2、日清紡ケミカル社製、濃度10%)
・オキサゾリン硬膜剤(C−2)・・・・・・・・・・・・・・・・・15.0部
(エポクロス WS700、日本触媒社製、濃度5%)
・ノニオン系界面活性剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業社製、濃度1%)
・蒸留水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・874.1部
【0099】
〔第2接着層の形成〕
PET支持体1の第1接着層の上に、下記組成の第2接着層形成用塗布液を固形分で15.1g/m塗布して、175℃で2分間乾燥し、PVCが47%(体積基準)EVA易接着性の第2接着層を形成した。
なおこの第2接着層のPVC〔体積%〕は、二酸化チタン(ルチル型)の比重を4.0、その他の有機物の比重を1.0として下記式にて計算した。
PVC=〔二酸化チタン質量/4〕/〔(二酸化チタン質量/4)+(有機物質量/1)〕×100
【0100】
−第2接着層形成用塗布液−
下記組成の成分を混合して、第2接着層形成用塗布液を調製した。
【0101】
・下記二酸化チタン分散液1・・・・・・・・・・・・・・・・539.9部
・ポリオレフィン系バインダー(B−2)・・・・・・・・・・295.4部
〔アローベースSE−1010、ユニチカ社製、濃度20%〕
・ノニオン系界面活性剤(S−3)・・・・・・・・・・・・・・25.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業社製、濃度1%)
・オキサゾリン系架橋剤(C−2)・・・・・・・・・・・・・・30.1部
〔エポクロスWS−700、日本触媒社製、濃度25%〕
・蒸留水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・109.6部
【0102】
−二酸化チタン分散液1−
ダイノミル分散機を用いて、二酸化チタンの平均粒径が0.42μmになるよう分散して、二酸化チタン分散液1を調製した。二酸化チタン分散液1は、固形分濃度が53%となるように調整した
なお、二酸化チタンの平均粒径は、ハネウェル社製、マイクロトラックFRAを用いて測定した。
【0103】
・二酸化チタン・・・・・・・・・・・・・・・・・522.3部
〔タイペークCR−95、石原産業社製、二酸化チタン粉表面が、SiO、Al、及びポリオール系有機物により表面処理された粉体〕
・PVA水溶液・・・・・・・・・・・・・・・・・261.2部
〔PVA−105、クレハ社製、濃度10%〕
・顔料分散剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6.3部
(デモールEP、花王社製、濃度25%)
・蒸留水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・210.2部
【0104】
<ウラ面塗布層(耐候層)の形成>
PET支持体1の2層のEVA易接着層が形成された面(オモテ面)とは反対の面(ウラ面)に、次に示す第1耐候層形成用塗布液と、第2耐候層形成用塗布液とを塗布して、2層構成の耐候層を形成した。
【0105】
〔第1耐候層の形成〕
まず、PET支持体1のウラ面に、下記条件でコロナ処理を施した。
・電極と誘電体ロ−ルギャップクリアランス:1.6mm
・処理周波数:9.6kHz
・処理速度:20m/分
・処理強度:0.375kV・A・分/m
【0106】
つぎに、PET支持体1のウラ面のコロナ処理を施した面に、下記第1耐候層形成塗布液を固形分量で16.1g/m塗布して、175℃で2分間乾燥して、第1耐候層を形成した。
【0107】
−第1耐候層形成用塗布液−
下記の成分を混合し、第1耐候層形成用塗布液を調製した。
【0108】
・シリコーン系樹脂・・・・・・・・・・・・・・・・・347.9部
〔セラネートSAD−049、DIC社製、濃度40%〕
・前記二酸化チタン分散液1・・・・・・・・・・・・・417.2部
・カルボジイミド架橋剤・・・・・・・・・・・・・・・・64.9部
〔カルボジライト V−02−L2、日清紡ケミカル(株)製、濃度20%〕
・オキサゾリン架橋剤・・・・・・・・・・・・・・・・・20.9部
〔エポクロス WS700、日本触媒(株)、濃度25%〕
・ノニオン系界面活性剤・・・・・・・・・・・・・・・・24.6部
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業社製、濃度1%〕
・蒸留水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・124.5部
【0109】
〔第2耐候層の形成〕
PET支持体1の第1耐候層の上に、下記組成の第2耐候層形成用塗布液を固形分で15.g/m塗布して、175℃で2分間乾燥し、第2耐候層を形成した。
【0110】
−第2接着層形成用塗布液−
・フッ素系樹脂・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・258.0部
〔オブリガートPWD100、AGCコーテック社製、濃度36.1%〕
・コロイダルシリカ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.7部
〔スノーテックスUP、日産化学社製、濃度20%〕
・シランカップリング剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90.9部
〔TSL8340、モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアル社製、濃度1%〕
・すべり剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・138.4部
〔ケミパールW950、三井化学社製、濃度5%〕
・ノニオン系界面活性剤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・69.5部
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業社製、濃度1%〕
・蒸留水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・381.2部
【0111】
以上により、PET支持体1のオモテ面に、上からEVA易接着性の第2接着層、同じくEVA易接着性の第1接着層を設け、その反対面であるウラ面に、PET支持体1側から第1耐候層、第2耐候層を設けた両面各2層構成のバックシート(バックシート1)を作成した。
【0112】
<バックシートの評価>
〔EVAと接着層との密着性評価〕
バックシートの密着性はバックシートの接着層とEVA封止材とを接着した後の剥離応力の測定により評価した。剥離応力の測定方法の詳細は次のとおりである。
縦25mm、横75mm、厚さ5mmの強化ガラスと縦25mm、横75mmの封止材シート〔三井化学ファブロ(株)製EVAシート、SC50B〕、縦25mm、横250mmのバックシートを重ね合わせて、モジュール作成の時と同じ条件で3者を接着した。
ただし、試料はEVA易接着性の第2接着層と封止材とが接着されるように配置した。
また、バックシートと強化ガラス、封止材は3辺が重なるように配置して接着した。
【0113】
続いて、試料にカミソリを用いて、バックシートの表面に10mm間隔で平行な2本のキズをつけた。キズはガラスの横の辺と平行で、長さは50mmである。また、キズはカミソリの先端が強化ガラス表面に達する深さとした。
更に、バックシートのガラスと接着されていない部分(長さ175mm)も幅が10mmの切り込みを入れて、バックシートが3つの長方形に裁断された形態にした。
【0114】
この試料のバックシートの幅10mmの部分を封止材から剥離する時の剥離強度を、テンシロン(Universal Testing Instrument社製RTF−1310)を用いて測定した。剥離は180度剥離で、剥離速度は30mm/分である。
測定されたS−Sカーブの安定したところの剥離応力を、EVAとの剥離力として測定した。密着力の優劣は、下記基準により評価し、剥離応力が30N/10mm以上であるもの(すなわち、△、○、及び◎)を密着良好とした。
【0115】
−評価基準−
◎:剥離応力が50N/10mm以上
○:剥離応力が40N/10mm以上50N/10mm未満
△:剥離応力が30N/10mm以上40N/10mm未満
×:剥離応力が30N/10mm未満
【0116】
〔実施例2、実施例3、及び比較例1〜比較例3〕
実施例1の二酸化チタン分散液1の作成において、顔料分散剤の量を2.1部、8.4部、10.4部、12.5部、0部に変更し、増減分を蒸留水で置換えた以外は実施例1と同様の方法で二酸化チタン分散液2、3、および二酸化チタン分散液101〜103の調製を試みた。しかし、比較例3については顔料分散剤を用いなかったため(顔料分散剤の量が0部)、二酸化チタンの分散が進まず、二酸化チタン分散液103を作成することができず、バックシート103の完成に至らなかった。
つぎに、実施例1のバックシート1の作成において、二酸化チタン分散液1の使用に代えて、調製した二酸化チタン分散液2、3、101及び102を用いたほかは実施例1と同様にして、実施例2、実施例3、比較例1、及び比較例2のバックシート2、3、101、及び、102を作成した。
【0117】
〔比較例4〕
実施例1の二酸化チタン分散液1の作成において、顔料分散剤の量を1.0部に変更し、増減分を蒸留水で置換えたほかは実施例1と同様にして二酸化チタン分散液104を調製した。
次いで、実施例1のバックシート1の作成において、二酸化チタン分散液1の使用に代えて、調製した二酸化チタン分散液104を用い、さらに、第2接着層形成用塗布液の調製において、界面活性剤を用いなかった以外は実施例1と同様の方法で比較例4のバックシート104の作成を試みた。
しかし、比較例4の第2接着層は白色顔料の分散安定性が悪く、経時で凝集が進んだため、EVA封止材に対する密着性評価をするに至らなかった。
【0118】
〔実施例4〕
実施例1の二酸化チタン分散液1の調製において、顔料分散剤をS−2に変更した以外は実施例1と同様の方法で、実施例4の二酸化チタン分散液4を調製した。
つぎに、実施例1のバックシート1の作成において、二酸化チタン分散液1の使用に代えて、調製した二酸化チタン分散液4を用いたほかは実施例1と同様にして、実施例4のバックシート4を作成した。
【0119】
〔実施例5〕
実施例1の第2接着層形成用塗布液の調製において、界面活性剤を前記S−3(24.9部)及び下記S−4(1.8部)の併用にし、増減分を蒸留水で置換えた以外は実施例1と同様の方法で、第2接着層形成用塗布液を調製し、実施例5のバックシート5を作成した。
S−4は、アニオン系界面活性剤〔ラピゾール A−90、日本油脂(株)製、濃度2%〕である。
【0120】
〔実施例6〕
実施例1の第2接着層形成用塗布液の調製において、ポリオレフィン系バインダーを、下記B−3(292.5部)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、第2接着層形成用塗布液を調製し、実施例6のバックシート6を作成した。
なお、B−3は、ポリオレフィン系バインダー〔アローベース SE−1013N、ユニチカ(株)製、濃度20.2%〕である。
【0121】
〔実施例7〕
実施例1の第2接着層形成用塗布液の調製において、界面活性剤の量を0部に変更し、減少分を蒸留水で置換えた以外は実施例1と同様の方法で、第2接着層形成用塗布液を調製し、実施例7のバックシート7を作成した。
【0122】
〔実施例8〕
実施例1の第2接着層の形成において、第2接着層のPVCを20体積%に変更した以外は実施例1と同様の方法で、実施例8のバックシート8を作成した。
【0123】
〔実施例9〕
実施例1の第2接着層の形成において、第2接着層のPVCを60体積%に変更した以外は実施例1と同様の方法で、実施例9のバックシート9を作成した。
【0124】
〔実施例10〕
実施例1の二酸化チタン分散液1の調製において、二酸化チタンの種類をタイペークR780−2(石原産業社製)〔二酸化チタン粉表面が、SiO、Al、及びポリオール系有機物により表面処理された粉体〕に変更した以外は、二酸化チタン分散液10を調製し、二酸化チタン分散液1に代えて二酸化チタン分散液10を用いた他は実施例1と同様の方法で、実施例10のバックシート10を作成した。
【0125】
<支持体1の破断強度測定>
実施例1〜実施例10、及び比較例1〜比較例4で用いたPET支持体1の破断強度を測定した。
既述の式(2)より、破断強度保持率(特定湿熱処理後の支持体の破断強度/特定湿熱処理前の支持体の破断強度)を算出した。破断強度保持率の算出にあたっては、支持体の破断強度を次のようにして測定した。
【0126】
PET支持体1を2枚用意し、それぞれ幅10mm×長さ200mmに裁断した。2枚のうち1枚について85℃、85%RHの雰囲気下で、2000時間保存(特定湿熱処理)した。
特定湿熱処理を施したPET支持体1、および、特定湿熱処理1を施していないPET支持体1(特定湿熱処理前の支持体に相当)について、10cmのクリップ間に各支持体を挟み、各支持体の長さ方向両端部に、長さ方向に10mm/分の力を加えて引っ張り、破断強度を測定した。
上記測定から、PET支持体1の破断強度保持率が、0.8以上であることを確かめた。
【0127】
<二酸化チタン(TiO)分散液の分散安定性評価>
実施例1〜実施例10および比較例1〜比較例4で調製した(または調製を試みた)に酸化チタン分散液の分散安定性評価は、二酸化チタン(TiO)分散液を調製した直後の粒径と、分散液調製から1週間後の粒径とを測定し、経時による変化から、下記評価基準に基づき評価した。
−評価基準−
○:経時後も二酸化チタン粒子が分散し、粒径の上昇無く単分散な粒子径であった。
×:経時後は二酸化チタン粒子が凝集し、粒径が大きくなった。
【0128】
【表1】

【0129】
前記表1中のS−1〜S−4、B−1〜B−3、C−1、および、C−2の詳細は次のとおりである。
【0130】
−顔料分散剤−
S−1:デモールEP
〔花王社製;特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、濃度25%〕
S−2:カオーセラ2000
〔花王社製;セラミックス用水系高分子分散剤、濃度40%〕
【0131】
−界面活性剤−
S−3:ナロアクティーCL−95
〔三洋化成工業社製;アルキルエーテル系界面活性剤、濃度100%〕
S−4:ラピゾールA−90
〔日本油脂社製;アニオン系界面活性剤、濃度90%〕
【0132】
−バインダー−
B−1:EM48D
〔ダイセルファインケム社製;アクリル系バインダー(ラテックス)、固形分28%〕
B−2:アローベースSE−1010
〔ユニチカ社製;ポリオレフィン系バインダー(ラテックス)、固形分20%〕
B−3:アローベースSE−1013N
〔ユニチカ社製;ポリオレフィン系バインダー(ラテックス)、固形分20.2%〕
【0133】
−架橋剤−
C−1:カルボジライトV−02−L2
〔日清紡社製;多価カルボジイミド、固形分40%〕
C−2:エポクロスWS700
〔日本触媒社製;オキサゾリン系架橋剤、固形分25%〕
【0134】
上記表1からわかるように、実施例の太陽電池用バックシートは、EVA封止材と接着層との密着性に優れている。
また、実施例1で用いた白色顔料CR−95は、実施例10で用いた白色顔料のR780−2よりも嵩密度の高い二酸化チタンであるため、二酸化チタン粒子とバインダーとの相性が良く密着性能が向上し、接着層の膜強度が向上することにより、実施例10よりも優れていることがわかった。
【0135】
〔実施例11〜実施例20〕
<太陽電池発電モジュールの作製>
上記のようにして作製したバックシート1〜10を用い、特開2009−158952号公報の図1に示す構造になるように透明充填剤(封止材)に貼り合わせ、太陽電池発電モジュール1〜10を作製した。このとき、バックシートの第2接着性層が、太陽電池素子を包埋する透明充填剤に接するように貼り付けた。
【0136】
実施例11〜20の太陽電池発電モジュール1〜10は、接着層に隣接する層との密着性に優れた接着層を有する実施例1〜10のバックシート1〜10を用いて構成されているため、発電性能を長期に亘って安定的に得ることができた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル支持体と、
前記ポリエステル支持体の一方の面に水系塗布液により塗布形成され、ポリオレフィン系バインダーおよび層の全質量に対して0.1質量%〜0.4質量%の界面活性剤を含有する接着層と、
を有する太陽電池用バックシート。
【請求項2】
前記接着層が、前記接着層の全体積に対して0体積%を超え60体積%以下の白色顔料を含有している請求項1に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項3】
前記ポリエステル支持体が、85℃、相対湿度85%の雰囲気で2000時間保存する湿熱処理前の破断強度に対する前記湿熱処理後の破断強度の割合が0.5以上であるポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項1または請求項2に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項4】
前記白色顔料は、表面がAlおよびSiOで被覆された二酸化チタンである請求項2または請求項3に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項5】
前記ポリエステル支持体の、前記接着層が形成されている面とは反対面に塗布形成され、シリコーン系樹脂および前記フッ素系樹脂の少なくとも一方を含有するウラ面塗布層を少なくとも1層有し、
前記ウラ面塗布層が2層以上であるときは、前記ウラ面塗布層の少なくとも1層が前記シリコーン系樹脂および前記フッ素系樹脂を含有する層であるか、または、前記ウラ面塗布層が前記シリコーン系樹脂を含有する第1の層と前記フッ素系樹脂を含有する第2の層とを少なくとも積層した重層である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項6】
太陽光が入射する透明性のフロント基板と、
前記フロント基板の上に設けられ、太陽電池素子及び前記太陽電池素子を封止する封止材を有するセル構造部分と、
前記セル構造部分の前記フロント基板が位置する側と反対側に設けられ、前記封止材と隣接して配置された、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシートと、
を備えた太陽電池モジュール。


【公開番号】特開2013−21273(P2013−21273A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155829(P2011−155829)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】