説明

太陽電池用封止膜、及び太陽電池

【課題】高温高湿度の環境において優れた透明性を長期間に亘り維持することができる太陽電池用封止膜を提供する。
【解決手段】エチレン−不飽和エステル共重合体、架橋剤、及び下記式(I)
【化1】


(式中、Rは炭素原子数3〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R及びRは同一又は異なって水素原子又はメチル基である)で示されるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む太陽電池用封止膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−不飽和エステル共重合体を主成分とする太陽電池用封止膜に関し、特に透明性及び耐湿熱性に優れる太陽電池用封止膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や環境汚染の防止等の面から、太陽光を電気エネルギーに直接、変換する太陽電池が広く使用され、さらなる開発が進められている。
【0003】
太陽電池は、一般的に、受光面側透明保護部材と裏面側保護部材(バックカバー)との間に受光面側封止膜及び裏面側封止膜により、発電素子を封止した構成とされている。従来の太陽電池は、高い電気出力を得るために、複数の発電素子を接続し、太陽電池モジュールとして用いられている。したがって、発電素子間の絶縁性を確保するために、絶縁性のある封止膜が用いられる。
【0004】
上記太陽電池においては、太陽電池に入射した光をできるだけ効率よく太陽電池用セル内に取り込めるようにすることが発電効率の向上の点から強く望まれている。したがって、受光面側封止膜は、できるだけ高い透明性を有し、入射した太陽光を吸収したり、反射したりすることが無く、太陽光のほとんどを透過させるものが望ましい。
【0005】
透明性の観点から、太陽電池用封止膜としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)などのエチレン−不飽和エステル共重合体からなるフィルムが用いられている。このエチレン−不飽和エステル共重合体の他に、有機過酸化物などの架橋剤を用いて架橋密度を向上させることにより、封止膜の強度や耐久性を向上させることができる。
【0006】
また、特許文献1では、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレンオキシ基含有化合物を用いることにより、封止膜の透明性を向上できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−053379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、太陽電池を夏期などの高温高湿度の環境下で長期間に亘り使用すると、封止膜が白濁や黄変するなど変色して、太陽光の透過率の低下や外観不良を招く場合があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、高温高湿度の環境において優れた透明性を長期間に亘り維持することができる太陽電池用封止膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エチレン−不飽和エステル共重合体、架橋剤、及び下記式(I)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rは炭素原子数3〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R及びRは同一又は異なって水素原子又はメチル基である)で示されるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む太陽電池用封止膜により上記課題を解決する。
【0013】
以下に、本発明の太陽電池用封止膜の好ましい形態を列記する。
【0014】
(1)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量が、前記エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、0.05〜1.0質量部である。
【0015】
(2)前記架橋剤の含有量が、前記エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、1.0〜2.0質量部である。
【0016】
(3)トリアリルイソシアヌレートなどの架橋助剤をさらに含むのが好ましい。
【0017】
(4)架橋助剤の含有量が、前記エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、1.5〜2.5質量部である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の太陽電池用封止膜は、特定の構造を有するアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含むことにより、高温高湿度の環境下であっても優れた透明性を維持することができ、耐湿熱性に優れる。したがって、このような封止膜を用いた太陽電池は、長期間に亘って優れた発電性能及び外観特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】太陽電池の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の太陽電池用封止膜は、基本成分として、エチレン−不飽和エステル共重合体、架橋剤、及び特定の構造を有するアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む。アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを用いることにより、エチレン−不飽和エステル共重合体に熱や水分の影響により切断され難い結合を付与することができ、封止膜の耐湿熱性を向上させることができる。したがって、太陽電池用封止膜は、高温高湿度の過酷な環境下に長期間に亘り使用されても、白濁や黄変など変色することなく、優れた透明性を維持することが可能となる。
【0021】
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、具体的には、下記式(I)
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、Rは炭素原子数3〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R及びRは同一又は異なって水素原子又はメチル基である)で示される。
【0024】
式(I)のRは、炭素原子数3〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。具体的には、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、及びn−デシレン基などが挙げられる。
【0025】
なかでも、Rは、炭素原子数4〜6の直鎖状のアルキレン基が特に好ましい。これらのアルキレン基によれば、湿熱環境下放置時において光線透過率の低下防止を図ることができる。
【0026】
封止膜におけるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量は、エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、好ましくは0.05〜1.0質量部、より好ましくは0.05〜0.6質量部、特に好ましくは0.1〜0.5質量部である。アルキレングルコールジ(メタ)アクリレートの含有量が、0.05質量部未満であると十分な効果が得られない恐れがあり、1.0質量部を超えるとブリードアウト(添加剤の滲み出し)により、ポリマーと分離することによる表面接着阻害が生じる恐れがある。
【0027】
本発明の封止膜は、架橋剤を含む。封止膜における架橋剤の含有量は、エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、1.0〜2.0質量部、特に1.0〜1.5質量部であるのが好ましい。このような量で架橋剤を含むことにより、封止膜の耐湿熱性をさらに向上させることができる。
【0028】
架橋剤としては、有機過酸化物を用いるのが好ましい。有機過酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも使用することができる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上、特に80〜120℃のものが好ましい。
【0029】
有機過酸化物としては、エチレン−不飽和エステル共重合体との相溶性の観点から、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン;3−ジ−tert−ブチルパーオキサイド;tert−ジクミルパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン;2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン;ジクミルパーオキサイド;tert−ブチルクミルパーオキサイド;α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン;n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン;2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン;1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;tert−ブチルパーオキシベンゾエート;ベンゾイルパーオキサイド、等が好ましく挙げられる。これらは、一種単独で用いられてもよく、二種以上を混合して用いられてもよい。
【0030】
有機過酸化物のなかでも、優れた耐湿熱性を有する太陽電池用封止膜が得られることから、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサンを用いるのが特に好ましい。
【0031】
封止膜における架橋剤の含有量は、エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、好ましくは1.0〜2.0質量部、より好ましくは1.0〜1.5質量部である。このような量で架橋剤を使用することにより、エチレン−不飽和エステル共重合体に熱や水分の影響により切断され難い結合を十分に付与することができ、封止膜の耐湿熱性を向上させることができる。
【0032】
本発明の封止膜は、架橋助剤をさらに含むのが好ましい。架橋助剤を使用することにより、エチレン−不飽和エステル共重合体の架橋密度を向上させ、封止膜の耐湿熱性を向上させることができる。
【0033】
架橋助剤(官能基としてラジカル重合性基を有する化合物)としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等を挙げることができる。なかでも、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましく、特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0034】
封止膜における架橋助剤の含有量は、エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、1.5〜2.5質量部、特に1.5〜2.0質量部であるのが好ましい。架橋助剤の含有量が2.5質量部を超えると得られる封止膜の接着性が低下する恐れがある。封止膜の接着性が低下すると、太陽電池内部に空気などが浸入して封止膜の耐湿熱性が低下する恐れがある。
【0035】
本発明の太陽電池用封止膜は、有機樹脂として、エチレン−不飽和エステル共重合体を含む。エチレン−不飽和エステル共重合体の不飽和エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル等が挙げられる。この中でも透明性に優れる封止膜が得られることから、酢酸ビニルが好ましい。
【0036】
エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量は、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、好ましくは20〜35質量部、より好ましくは20〜30質量部、特に好ましくは24〜28質量部である。EVAの酢酸ビニル含有量を前記範囲内とすることにより、高温高湿度の環境において封止膜が白濁するのを抑制することができる。
【0037】
封止膜は、シランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。シランカップリング剤を使用することにより、優れた接着力を有する太陽電池用封止膜を形成することが可能となる。シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。なかでも、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましく挙げられる。
【0038】
前記シランカップリング剤の含有量は、エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、0.1〜0.7質量部、特に0.3〜0.65質量部であることが好ましい。
【0039】
封止膜は、膜の種々の物性(機械的強度、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整のため、必要に応じて、可塑剤、又はエポキシ基含有化合物などの各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0040】
前記可塑剤としては、特に限定されるものではないが、一般に多塩基酸のエステル、多価アルコールのエステルが使用される。その例としては、ジオクチルフタレート、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ブチルセバケート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネートを挙げることができる。可塑剤は一種用いてもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。可塑剤の含有量は、エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して5質量部以下の範囲が好ましい。
【0041】
前記エポキシ含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(エチレンオキシ)グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0042】
エポキシ基含有化合物は、エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対してそれぞれ一般に0.5〜5.0質量部、特に1.0〜4.0質量部含まれていることが好ましい。
【0043】
さらに、封止膜は、紫外線吸収剤、光安定剤および老化防止剤を含んでいてもよい。
【0044】
封止膜が紫外線吸収剤を含むことにより、照射された光などの影響によってエチレン−不飽和エステル共重合体が劣化し、黄変するのを抑制することができる。前記紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく挙げられる。なお、上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の配合量は、エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0045】
封止膜が光安定剤を含むことによっても、照射された光などの影響によってエチレン−不飽和エステル共重合体が劣化し、太陽電池用封止膜が黄変するのを抑制することができる。前記光安定剤としてはヒンダードアミン系と呼ばれる光安定剤を用いることが好ましく、例えば、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63LA−63p、LA−67、LA−68(いずれも(株)ADEKA製)、Tinuvin744、Tinuvin 770、Tinuvin 765、Tinuvin144、Tinuvin 622LD、CHIMASSORB 944LD(いずれもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製)、UV−3034(B.F.グッドリッチ社製)等を挙げることができる。なお、上記光安定剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は、エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0046】
老化防止剤としては、例えばN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等が挙げられる。
【0047】
本発明の封止膜を作製するには、公知の方法に準じて行えばよい。例えば、通常の押出成形、又はカレンダ成形(カレンダリング)等により成形してシート状物を得る方法により製造することができる。また、前記組成物を溶剤に溶解させ、この溶液を適当な塗布機(コーター)で適当な支持体上に塗布、乾燥して塗膜を形成することによりシート状物を得ることもできる。尚、製膜時の加熱温度は、架橋剤が反応しない或いはほとんど反応しない温度とすることが好ましい。例えば、50〜90℃、特に40〜80℃とするのが好ましい。その後に、加熱加圧など常法に従って太陽電池用封止膜を封止のために架橋硬化させればよい。
【0048】
太陽電池用封止膜の厚さは、特に制限されないが、50μm〜2mmの範囲であればよい。
【0049】
本発明の太陽電池用封止膜は、優れた透明性及び耐湿熱性を有する。したがって、夏場など、太陽電池の表面温度が70℃以上となり、周囲の湿度も80%RH以上となるような高温高湿度環境下であっても、本発明の太陽電池用封止膜は、白濁や黄変の発生が高く抑制され、優れた透明性を維持することができ、太陽電池が高い発電性能を発揮することが可能となる。したがって、このような太陽電池用封止膜を用いた太陽電池は、外部から入射した光の透過率が高く、効率よく発電素子に集光することができ、高い出力電圧を長期間に亘り発揮することが可能となる。
【0050】
本発明による太陽電池用封止膜を用いた太陽電池の構造は、特に制限されないが、表面側透明保護部材と裏面側保護部材との間に、前記太陽電池用封止膜を介して発電素子が封止された構造などが挙げられる。なお、本発明において、発電素子に対して受光面側を「表面側」と称し、太陽電池セルの受光面とは反対面側を「裏面側」と称する。
【0051】
前記太陽電池において、発電素子を十分に封止するには、図1に示すように表面側透明保護部材11、表面側封止膜13A、発電素子14、裏面側封止膜13B及び裏面側保護部材12を積層し、加熱加圧など常法に従って、封止膜を架橋硬化させればよい。
【0052】
前記加熱加圧するには、例えば、前記積層体を、真空ラミネーターで温度135〜180℃、さらに140〜180℃、特に155〜180℃、脱気時間0.1〜5分、プレス圧力0.1〜1.5kg/cm2、プレス時間5〜15分で加熱圧着すればよい。この加熱加圧時に、表面側封止膜13Aおよび裏面側封止膜13Bに含まれるエチレン−不飽和エステル共重合体を架橋させることにより、表面側封止膜13Aおよび裏面側封止膜13Bを介して、表面側透明保護部材11、裏面側透明部材12、および発電素子14を一体化させて、発電素子14を封止することができる。
【0053】
なお、本発明の太陽電池用封止膜は、図1に示したような単結晶又は多結晶のシリコン結晶系の太陽電池セルを用いた太陽電池だけでなく、薄膜シリコン系、薄膜アモルファスシリコン系太陽電池、セレン化銅インジウム(CIS)系太陽電池等の薄膜太陽電池の封止膜にも使用することもできる。この場合は、例えば、ガラス基板、ポリイミド基板、フッ素樹脂系透明基板等の表面側透明保護部材の表面上に化学気相蒸着法等により形成された薄膜太陽電池素子層上に、本発明の太陽電池用封止膜、裏面側保護部材を積層し、接着一体化させた構造や、裏面側保護部材の表面上に形成された太陽電池素子上に、本発明の太陽電池用封止膜、表面側透明保護部材を積層し、接着一体化させた構造が挙げられる。
【0054】
本発明の太陽電池に使用される表面側透明保護部材は、通常、珪酸塩ガラスなどのガラス基板であるのがよい。ガラス基板の厚さは、0.1〜10mmが一般的であり、0.3〜5mmが好ましい。ガラス基板は、一般に、化学的に、或いは熱的に強化させたものであってもよい。
【0055】
また、裏面側保護部材は、PETなどのプラスチックフィルムが好ましく用いられる。また、耐熱性、耐湿熱性を考慮してフッ化ポリエチレンフィルムやプラスチックフィルム表面に銀からなる蒸着膜を形成したもの、特にフッ化ポリエチレンフィルム/Al/フッ化ポリエチレンフィルムをこの順で積層させたフィルムでも良い。
【0056】
なお、本発明の太陽電池(薄膜太陽電池を含む)は、上述した通り、表面側及び/又は裏面側に用いられる封止膜に特徴を有する。したがって、表面側透明保護部材、裏面側保護部材、および太陽電池用セルなどの前記封止膜以外の部材については、従来公知の太陽電池と同様の構成を有していればよく、特に制限されない。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により説明する。本発明は、以下の実施例により制限されるものではない。
【0058】
(実施例1)
下記に示す配合で各材料をロールミルに供給して70℃で混練し、得られた組成物を70℃でカレンダ成形し、放冷後、太陽電池用封止膜(厚さ0.6mm)を得た。
【0059】
封止膜の組成:
EVA(EVA100質量部に対する酢酸ビニル含有量26質量部)100質量部、
架橋剤(2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン)1.2質量部、
架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート)1.5質量部、及び
添加剤1(1,4−ブタンジオールジメタクリレート)0.1質量部。
【0060】
(実施例2及び3)
実施例2及び3では、1,4−ブタンジオールジメタクリレートの配合量をそれぞれ0.3質量部及び0.5質量部と変更した以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止膜を作製した。
【0061】
(実施例4及び5)
実施例4及び5では、添加剤1に代えて、添加剤2(1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート)をそれぞれ0.1質量部及び0.5質量部用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止膜を作製した。
【0062】
(実施例6及び7)
実施例6及び7では、添加剤1に代えて、添加剤3(1,9−ノナンジオールジメタクリレート)をそれぞれ0.1質量部及び0.5質量部用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止膜を作製した。
【0063】
(実施例8及び9)
実施例8及び9では、添加剤1に代えて、添加剤4(1,10−デカンジオールジメタクリレート)をそれぞれ0.1質量部及び0.5質量部用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止膜を作製した。
【0064】
(実施例10及び11)
実施例10及び11では、添加剤1に代えて、添加剤5(1,9−ノナンジオールジアクリレート)をそれぞれ0.1質量部及び0.5質量部用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止膜を作製した。
【0065】
(比較例1)
比較例1では、添加剤1を用いなかった以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止膜を作製した。
【0066】
(比較例2)
比較例2では、添加剤1を用いず、さらに架橋剤の配合量を2.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止膜を作製した。
【0067】
(比較例3)
比較例3では、添加剤1及び架橋助剤を用いず、さらに架橋剤の配合量を0.7質量部とした以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止膜を作製した。
【0068】
(比較例4)
比較例4では、添加剤1を用いず、さらに架橋剤の配合量を0.7質量部とし、架橋助剤の配合量を1.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止膜を作製した。
【0069】
(比較例5)
比較例5では、添加剤1を用いず、さらに架橋剤の配合量を0.7質量部とし、架橋助剤の配合量を2.0質量部とした以外は、実施例1と同様にして太陽電池用封止膜を作製した。
【0070】
(評価)
1.光線透過率
太陽電池用封止膜を2枚のガラス基材(厚さ3.0mm)で挟み、得られた積層体を真空ラミネーターで、真空下、100℃で10分間圧着した後、155℃のオーブン中で45分間圧着することにより、太陽電池用封止膜を架橋硬化させた。その後、積層体を温度85℃、湿度85%RH環境下に1000時間放置した。
【0071】
放置前と放置後の積層体の厚み方向の光線透過スペクトルを分光光度計(日立製作所株式会社製 U−4000)を用いて、波長範囲300〜1200nmの光線透過率を3箇所測定し、その平均値を算出した。結果を表1及び2に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
表1及び2に示すように、本発明による太陽電池用封止膜では、高温高湿度環境下であっても長期間に亘って、白濁や黄変せずに高い光線透過率(透明性)を維持できることが分かる。
【符号の説明】
【0075】
11 受光面側透明保護部材、
12 裏面側保護材、
13A 受光面側封止膜、
13B 裏面側封止膜、
14 発電素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−不飽和エステル共重合体、架橋剤、及び下記式(I)
【化1】


(式中、Rは炭素原子数3〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R及びRは同一又は異なって水素原子又はメチル基である)で示されるアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む太陽電池用封止膜。
【請求項2】
前記アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量が、前記エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、0.05〜1.0質量部である請求項1に記載の太陽電池用封止膜。
【請求項3】
前記架橋剤の含有量が、前記エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、1.0〜2.0質量部である請求項1又は2に記載の太陽電池用封止膜。
【請求項4】
架橋助剤をさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池用封止膜。
【請求項5】
前記架橋助剤が、トリアリルイソシアヌレートである請求項4に記載の太陽電池用封止膜。
【請求項6】
前記架橋助剤の含有量が、前記エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、1.5〜2.5質量部である請求項4又は5に記載の太陽電池用封止膜。
【請求項7】
前記エチレン−不飽和エステル共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池用封止膜。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池用封止膜を用いた太陽電池。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−111515(P2011−111515A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268308(P2009−268308)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】