説明

太陽電池用表面保護材及びそれを用いて作製された太陽電池モジュール

【課題】基材の一方の面に無機薄膜層を有し水蒸気透過率が0.1[g/m2・日]未満である防湿フィルムを有する高防湿性太陽電池用表面保護材において、長期に防湿性が劣化しない優れた表面保護材を提供する。
【解決手段】基材の一方の面に無機薄膜層を有し水蒸気透過率が0.1[g/m2・日]未満である防湿フィルムを有する太陽電池用表面保護材であって、前記防湿フィルムの無機薄膜層側に耐候性フィルムを有し、かつ前記防湿フィルムの無機薄膜層と反対側に、直接あるいは接着層を介して融点が130℃以上180℃以下である背面フィルムを有することを特徴とする太陽電池用表面保護材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機薄膜層を含む防湿フィルムを有する高防湿性太陽電池用表面保護材において、長期に防湿性が劣下しない優れた太陽電池用表面保護材及びこの太陽電池用表面保護材を用いた高耐久性の太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や環境汚染の防止等の面から、太陽光を直接電気エネルギーに変換する太陽電池が注目され、開発が進められている。太陽電池は受光面側の上部保護材と上部保護材との間にエチレン−酢酸ビニル共重合体やポリエチレン、ポリプロピレンフィルムなどの封止材により太陽電池用セルを封止した構成からなり、通常、上部保護材、封止材 、発電素子(太陽電池素子)、封止材及び下部保護材をこの順で積層し、加熱溶融させることにより接着一体化することで製造される。
太陽電池の上部保護材、下部保護材(以下、これらを「表面保護材」ということがある)としては、紫外線に対する耐久性、湿気ないし水の透過による太陽電池素子の劣化、内部の導線や電極の発錆を防止するための防湿性に優れることが極めて重要な要件となる。
このような要求を満たすために、太陽電池用表面保護材としては、例えば暴露面側から、耐候性フィルム、暴露面側に無機薄膜の蒸着面を有する防湿フィルム、及び封止材などの密着性や耐部分放電特性を有するフィルムを含む構成体として積層されたものが提案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1の実施例では、二軸延伸ポリエステルフィルムを基材とする防湿フィルムの両側にポリウレタン系接着剤層を設け、その両側に耐候性ポリエステルフィルムを積層し得られた太陽電池用表面保護材が開示されている。
また、特許文献2の実施例では、同じく二軸延伸ポリエステルフィルムを基材とする防湿フィルムに二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いてポリフッ化ビニル(PVF)フィルムを貼り合わせた太陽電池用表面保護材が開示されている。
また、特許文献3では、裏面に耐候性を有する耐候性樹脂層を備え、前記耐候性樹脂層と、一方の表面に金属酸化物の蒸着膜を有する第1蒸着樹脂層と、中間樹脂層と、一方の表面に金属酸化物の蒸着膜を有する第2蒸着樹脂層と、がドライラミネート加工により積層された太陽電池モジュール用裏面保護シートであって、前記第1蒸着樹脂層及び前記第2蒸着樹脂層の蒸着膜が前記中間樹脂層側に配置されることを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シートが開示されている。
更に、特許文献4では、裏面に耐候性を有する耐候性樹脂層を備える太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法であって、前記耐候性樹脂層と、一方の表面に金属酸化物の蒸着膜を有する蒸着樹脂層を少なくとも3層と、を順次ドライラミネート加工により積層し、前記蒸着樹脂層は、それぞれ40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が0.03〜0.5g/m2・日であることを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−188072
【特許文献2】特開2009−49252
【特許文献3】特開2010−272761
【特許文献4】特開2010−272762
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表面保護材を太陽電池に組み込む際には、表面保護材を他の部材と積層し、例えば温度130℃から180℃、時間10分から40分の条件で、真空ラミネーションにより接着一体化させる。このラミネーション温度は従来の表面保護材の上記特許文献に開示されるような加速試験と比べてはるかに高温度であり、表面保護材に対して重大なダメージを与えるものである。特に高防湿性能が必要とされる化合物系発電素子太陽電池モジュールやフレキシブル性が要求されるガラスを用いない太陽電池モジュールの太陽電池用保護材としての使用においては、この真空ラミネーションプロセスの影響も考慮し加速試験後の防湿性能劣化を防止することが要求される。
【0006】
しかしながら、上記の何れの特許文献も水蒸気透過率が0.1[g/m2・日]未満の高防湿フィルムを使用した表面保護材が真空ラミネーション工程を経て他の部材と積層一体化されることによる防湿性能の劣化を想定しておらず、温度130℃から180℃、時間10分から40分といった高温条件を経た後も防湿性能が長期に渡って維持される太陽電池用表面保護材について開示するものではなかった。
【0007】
特許文献1の実施例には、太陽電池用表面保護材として、85℃、85%湿度、1000hrs試験のみを行い、その後の防湿性を評価した結果が示されているが、試験後の水蒸気透過率としては1〜2[g/m2・日]のものが開示されているに過ぎず、また、特許文献2には、太陽電池用表面保護材としてプレッシャークッカーテスト(PCT:高温高圧による過酷環境試験、105℃、92時間)のみを行い、その後の防湿性を評価した結果、試験後の水蒸気透過率が0.5[g/m2・日]のものが開示されているに過ぎない。
また、特許文献3、4では、ドライラミネート加工により作成された太陽電池用表面保護材としての初期の防湿性を評価した結果が示されているが、当該太陽電池用表面保護材は、温度130℃から180℃、時間10分から40分といった高温条件を経た後にも、十分な防湿性能を有するものではなかった。
【0008】
すなわち、本発明の課題は、基材の一方の面に無機薄膜層を有する水蒸気透過率が0.1[g/m2・日]未満の高防湿フィルムを使用する高防湿性太陽電池用表面保護材において、真空ラミネーション等の高温処理を経た後も、長期に防湿性が劣化しない優れた表面保護材を提供すること、また、当該太陽電池用表面保護材を用いた耐久性に優れる太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、太陽電池用表面保護材の構成を、無機薄膜層を有する水蒸気透過率が0.1[g/m2・日]未満の高防湿フィルムの無機薄膜層側に耐候性フィルムを有し、かつ該高防湿フィルムの無機薄膜層と反対側(以下、「背面」ということがある)に特定の融点を有するフィルム(以下、防湿フィルムの背面に貼合されるフィルムを「背面フィルム」ということがある)を配置した構成とすることにより、長期の優れた防湿性及び層間強度を同時に満足でき、防湿性能の耐久化が実現されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)基材の一方の面に無機薄膜層を有し水蒸気透過率が0.1[g/m2・日]未満である防湿フィルムを有する太陽電池用表面保護材であって、前記防湿フィルムの無機薄膜層側に耐候性フィルムを有し、かつ前記防湿フィルムの無機薄膜層と反対側に、直接あるいは接着層を介して融点が130℃以上180℃以下である背面フィルムを有することを特徴とする太陽電池用表面保護材、
(2)前記防湿フィルムの水蒸気透過率が0.05[g/m2・日]以下である上記(1)に記載の太陽電池用表面保護材、
(3)前記防湿フィルムの水蒸気透過率が0.01[g/m2・日]以下である上記(1)に記載の太陽電池用表面保護材、
【0011】
(4)前記背面フィルムが、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリフッ化ビニル及びポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種の樹脂を主成分として含む上記(1)〜(3)のいずれかに記載の太陽電池用表面保護材、
(5)前記背面フィルムの厚みが25μm以上300μm以下である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の太陽電池用表面保護材、
(6)前記基材がポリエステル系樹脂フィルムである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の太陽電池用表面保護材、
(7)前記防湿フィルムと前記背面フィルムの間に接着層を有する上記(1)〜(6)のいずれかに記載の太陽電池用表面保護材、
(8)前記防湿フィルムの無機薄膜層と反対側に前記背面フィルム及びプラスチックフィルムをこの順に有する上記(1)〜(7)のいずれかに記載の太陽電池用表面保護材、
(9)更に封止材を積層して有する上記(1)〜(8)のいずれかに記載の太陽電池用表面保護材、
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載の太陽電池用表面保護材を用いて作製された太陽電池モジュール、
に存する。
なお、本発明において、「○以上△以下」を「○〜△」と表すことがある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材の一方の面に無機薄膜層を有する水蒸気透過率が0.1[g/m2・日]未満の高防湿フィルムを有する高防湿性太陽電池用表面保護材において、真空ラミネーション等の高温処理を経た後も、長期に防湿性が劣化しない優れた表面保護材を提供すること、また、当該太陽電池用表面保護材を用いた耐久性に優れる太陽電池モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
通常、太陽電池用表面保護材はドライラミネーションによる積層工程を経て作成される。ドライラミネーションでは、耐候性フィルムに溶剤を用いて希釈した接着剤を所定の厚みに塗布し100℃から140℃の範囲での乾燥により溶剤を蒸発させ耐候性フィルム上に接着層を形成した後、防湿フィルムの無機薄膜面を接着剤側に向けて貼合する。その後、防湿フィルムの背面に上記と同様に溶剤を用いて希釈した接着剤を所定の厚みに塗布し100℃から140℃の範囲での乾燥により溶剤を蒸発させ防湿フィルム上に接着層を形成した後、更にフィルムを貼合し、所定の温度での養生を経て表面保護材を作成する。養生は、通常、30℃から80℃の範囲で1日から1週間行なわれる。本積層工程において、熱や貼合の張力が各フィルムに作用し表面保護材には残留歪が蓄積される。
【0014】
次いで、表面保護材は太陽電池素子や封止材と共に真空ラミネーションにより加熱溶融され一体化させ太陽電池に組み込まれる。この真空ラミネーションプロセスは130℃から180℃の範囲で行なわれる。
上記の積層工程において蓄積された残留歪は、太陽電池の高温高湿環境下での保存において各積層界面への応力となって作用する。特に背面フィルムに残留歪が蓄積した場合、高温高湿環境下で無機薄膜層に対して背面からの応力が作用し、無機薄膜層に重大な劣下を生じる。
特に本出願が対象とする水蒸気過率が0.1[g/m2・日]未満の高い防湿性をもった防湿フィルムの場合、背面フィルムからの応力による防湿性能の劣下は著しい。これは背面フィルムからの応力が無機薄膜層内部、ならびに防湿フィルム基材、アンカーコート層、及び無機薄膜層それぞれの層間に対して重大な影響を与え、これにより損なわれる防湿性能の劣化度は、初期防湿性能が高いほど大きくなるからである。
【0015】
以上より、本発明者らは真空ラミネーション工程において背面フィルム内の残留歪を緩和させることが高温高湿環境下における防湿フィルムの無機薄膜層に作用する応力を低下させ、防湿性能の劣下抑制を実現することを見出すに至った。
【0016】
<表面保護材>
本発明における太陽電池用表面保護材は、基材の一方の面に無機薄膜層を有する水蒸気透過率が0.1[g/m2・日]未満の高防湿フィルムを有する太陽電池用表面保護材であって、前記防湿フィルムの無機薄膜層側に耐候性フィルムを有し、かつ前記防湿フィルムの無機薄膜層の背面に、直接あるいは接着剤からなる接着層を介して、130℃以上180℃以下の融点を有する背面フィルムを有するものである。
【0017】
以下、各構成層について説明する。
(耐候性フィルム)
本発明の太陽電池用表面保護材には、耐加水分解性や耐光性を備え、長期の耐久性を付与するために、防湿フィルムの無機薄膜層側に耐候性フィルムが積層される。なお、防湿フィルムが基材の両面に無機薄膜層を有する場合には、防湿フィルムの暴露面側に耐候性フィルムを積層する。
前記耐候性フィルムは、耐候性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びポリビニルフルオライド(PVF)等のフッ素樹脂フィルム、或いは、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂に紫外線吸収剤を混合した樹脂組成物を製膜したものが好ましく用いられる。
【0018】
長期耐久性の観点からは、上記樹脂としては、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)がより好ましく用いられる。
真空ラミネーション時や高温高湿時の温度・湿度変化においてもその特性変化が小さいことが好ましいことから、ポリエチレンナフタレートなどの低収縮性耐候基材が好ましい。また、収縮率が大きいポリエチレンテレフタレートフィルムやフッ素系フィルムの場合は、事前の熱処理による低収縮化等が行われたフィルムを使用することが好ましい。
【0019】
長期耐候性とフィルム収縮率のいずれも考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂等に紫外線吸収剤を混合した樹脂組成物を製膜して得られたフィルムや、ポリエステル樹脂等の樹脂組成物を製膜して得られたフィルムに紫外線吸収剤を含有する層を設けたフィルムが好ましく用いられる。
また、太陽電池保護材への使用を考えると可撓性に富み、耐熱性、防湿性、紫外線耐久性に優れる性能を有する耐候性フィルムであることが望ましく、フッ素系フィルムや紫外線吸収剤を含有する耐加水分解性ポリエステルフィルムや耐加水分解性ポリエステルフィルムに紫外線吸収剤を含有する層を設けたフィルムが好ましく用いられる。
【0020】
使用する紫外線吸収剤としては、種々の市販品が適用でき、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2'−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5− クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4、4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'、4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニル置換ベンゾトリアゾール化合物であって、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2− ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。またトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノールなどを挙げることができる。サリチル酸エステル系としては、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどを挙げることができる。
【0021】
該紫外線吸収剤の添加量は、耐候性フィルム中、通常、0.01〜2.0質量%程度であり、0.05〜0.5質量%添加することが好ましい。
上記の紫外線吸収剤以外に耐候性を付与する耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定化剤が好適に用いられる。ヒンダードアミン系光安定化剤は、紫外線吸収剤のようには紫外線を吸収しないが、紫外線吸収剤と併用することによって著しい相乗効果を示す。
【0022】
ヒンダードアミン系光安定化剤としては、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ}]、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパレート、2−(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などを挙げることができる。該ヒンダードアミン系光安定化剤の添加量は、耐候性フィルム中、通常、0.01〜0.5質量%程度であり、0.05〜0.3質量%添加することが好ましい。
【0023】
前記耐候性フィルムの厚さは、一般に20〜200μm程度であり、フィルムの取り扱いやすさとコストの点から20〜100μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。
【0024】
(防湿フィルム)
本発明の太陽電池用表面保護材における防湿フィルムとは、防湿性を有するフィルムであって、基材の少なくとも一方の面に無機酸化物等からなる無機薄膜層を少なくとも1層有するフィルムである。
この無機薄膜層により、湿気の透過による太陽電池の内面側を保護することができる。また、無機薄膜層が高い透明性を有する場合は、上部保護材として用いた際、発電効率の向上を達成できる。
【0025】
上記無機薄膜層を有する基材としては、樹脂フィルムが好ましく、その材料としては、通常の太陽電池材料に使用しうる樹脂であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体などのポリオレフィン、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、生分解性樹脂などが挙げられる。これらの中では、熱可塑性樹脂が好ましく、フィルム物性、コストなどの点から、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンがより好ましい。中でも、フィルム物性の点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルが特に好ましい。また、基材がポリエチレンテレフタレートフィルムのように収縮率が大きいフィルムの場合には、残留歪が大きくなるため、本発明による効果がより顕著となる。
【0026】
また、上記基材は、公知の添加剤、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、耐候安定剤等の安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等を含有することができる。紫外線吸収剤及び耐候安定剤としては、耐候性フィルムの説明において挙げたものが使用できる。
上記基材としての樹脂フィルムは、上記の原料を用いて成形してなるものであるが、基材として用いる際は、未延伸であってもよいし延伸したものであってもよい。
また、1種以上のプラスチックフィルムが積層されたものであってもよい。
【0027】
かかる基材は、従来公知の方法により製造することができ、例えば、原料樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押出して、急冷することにより実質的に無定型で配向していない未延伸フィルムを製造することができる。また、多層ダイを用いることにより、1種の樹脂からなる単層フィルム、1種の樹脂からなる多層フィルム、多種の樹脂からなる多層フィルム等を製造することができる。
【0028】
この未延伸フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、フィルムの流れ(縦軸)方向又はフィルムの流れ方向とそれに直角な(横軸)方向に延伸することにより、一軸方向又は二軸方向に延伸したフィルムを製造することができる。延伸倍率は任意に設定できるが、150℃における熱収縮率が、0.01〜5%であることが好ましく、更には0.01〜2%であることがより好ましい。中でもフィルム物性の点から、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートの共押出二軸延伸フィルムやポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンナフタレートと他のプラスチックの共押出二軸延伸フィルムが好ましい。
【0029】
なお、上記基材には、無機薄膜との密着性向上のため、アンカーコート剤を塗布することによりアンカーコート層を設けることが好ましい。アンカーコート剤としては、溶剤性又は水性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、変性ビニル樹脂、ビニルアルコール樹脂等のアルコール性水酸基含有樹脂、ビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、メチレン基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコーン樹脂等が挙げられる。これらは単独、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。また、アンカーコート層は必要に応じ、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤等の安定剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等を含有することができる。紫外線吸収剤及び耐候安定剤としては、前述の耐候性フィルムの説明において挙げたものが使用できる。該紫外線吸収剤及び/または耐候安定剤が前記した樹脂と共重合したポリマータイプのものも使用することもできる。
【0030】
アンカーコート層の形成方法としては、公知のコーティング方法が適宜採択される。例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、スプレイを用いたコーティング方法等の方法がいずれも使用できる。また、基材を樹脂液に浸漬して行ってもよい。塗布後は、80〜200℃程度の温度での熱風乾燥、熱ロール乾燥などの加熱乾燥や、赤外線乾燥などの公知の乾燥方法を用いて溶媒を蒸発させることができる。また、耐水性、耐久性を高めるために、電子線照射による架橋処理を行う事もできる。また、アンカーコート層の形成は、基材の製造ラインの途中で行う方法(インライン)でも、基材製造後に行う(オフライン)方法でも良い。
アンカーコート層の厚みは無機薄膜層との密着性の観点から、10〜200nmであることが好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。
【0031】
上記無機薄膜層の形成方法としては、蒸着法、コーティング法などの方法がいずれも使用できるが、ガスバリア性の高い均一な薄膜が得られるという点で蒸着法が好ましい。この蒸着法には、物理気相蒸着(PVD)、あるいは化学気相蒸着(CVD)などの方法が含まれる。物理気相蒸着法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどが挙げられ、化学気相蒸着法としては、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。
【0032】
無機薄膜層を構成する無機物質としては、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、水素化炭素等、あるいはこれらの酸化物、炭化物、窒化物またはそれらの混合物が挙げられるが、好ましくは酸化珪素、酸化アルミニウム、水素化炭素を主体としたダイアモンドライクカーボンである。特に、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化アルミニウムは、高いガスバリア性が安定に維持できる点で好ましい。
【0033】
上記無機薄膜層の厚さは、安定な防湿性能の発現の点から、10〜1000nmであることが好ましく、40〜1000nmであることがより好ましく、40〜800nmが更に好ましく、50〜600nmが特に好ましい。無機薄膜層は単層であっても多層であってもよい。
また、上記基材フィルムの厚さは、一般に5〜100μm程度であり、生産性や取り扱いやすさの点から8〜50μmが好ましく、12〜25μmが更に好ましい。従って、上記防湿フィルムの厚さは、一般に5〜100μm程度であり、生産性や取り扱いやすさの点から8〜50μmが好ましく、12〜25μmが更に好ましい。
高い防湿性をもった防湿フィルムにおいては、背面フィルムからの応力による防湿性能の劣化が著しいため、本発明における防湿性維持の効果が顕著に表れる。したがって、本発明において、上記防湿フィルムは水蒸気透過率が0.1[g/m2・日]未満であり、好ましくは0.05[g/m2・日]以下であり、より好ましくは、0.03[g/m2・日]以下、特に好ましくは0.01[g/m2・日]以下である。
【0034】
(背面フィルム)
本発明における背面フィルムは、前記防湿フィルムの背面側に、直接あるいは接着層を介して設けられ、好ましくは接着層を介して防湿フィルムと貼合されるフィルムであり、背面フィルム内の残留歪を軽減し、高温高湿時における無機薄膜層背面側から掛かる収縮による応力を低減するものである。よって、具体的には、真空ラミネーション時の温度付近に融点をもつフィルム、すなわち、融点130℃以上180℃以下のフィルムを用いるものとし、該背面フィルムと防湿フィルムとの間に上記範囲に融点を有さない他のフィルムを有さないのが好ましい。
上記観点から、前記融点の下限値は130℃であり、140℃であることが好ましく、150℃であることがより好ましい。また、前記融点の上限値は180℃であり、175℃であることが好ましく、170℃であることがより好ましい。
【0035】
前記融点が上記の温度範囲内の背面フィルムを用いることで、真空ラミネーション時の温度で、それまでの工程で加えられた力の履歴や熱履歴によって生じたフィルム内の分子・結晶配向を緩和させ残留歪を低減させることができる。
【0036】
真空ラミネーション工程において背面フィルムは加圧に対して容易に流動し、均一な厚みの膜が維持でき難いが、本発明においては、融点が130℃以上の背面フィルムを用いることで当該背面フィルムの流動を抑え、厚みを維持することができる。尚、前記融点が80℃未満であると、厚みによらず、太陽電池モジュールは発電時の発熱や太陽光の輻射熱などで、その温度が85〜90℃程度まで昇温する為、背面フィルムは軟化し動作中に本来の太陽電池素子を保護する機能が失われる。
【0037】
なお、前記融点は、実施例に記載の方法により測定された値である。
以上より、背面フィルムとしては、その融点が真空ラミネーション温度付近にあることが好ましく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、酪酢酸セルロース(CAB)等の樹脂組成物を製膜したものが好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。更に紫外線吸収剤や着色剤を混合した樹脂組成物を成膜したものでもよい。
【0038】
前記背面フィルムは、太陽電池表面保護材への使用を考えると、可撓性に富み、紫外線耐久性、加湿耐久性に優れることが望ましく、主にポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリフッ化ビニル(PVF)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)のいずれか1つ又は複数の樹脂を主成分として含むものが好ましく、これらの樹脂を50重量%以上含有するものであることが好ましい。ここで、「主成分」とは、本発明の効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨であり、具体的な含有率を制限するものではないが、一般に各フィルム層の構成成分全体を100質量部とした場合、50質量部以上であり、好ましくは65質量部以上、さらに好ましくは80質量部以上であって100質量部以下の範囲を占める成分を意味する。
【0039】
なお、上記紫外線吸収剤としては、前述の耐候性フィルムに含有される紫外線吸収剤と同様のものが使用できる。また、着色剤としては、酸化チタン、炭酸カルシウムなどが使用できる。上記樹脂は前記列挙した樹脂の1種を単独で用いることもできるが2種以上組合せて使用することもできる。
背面フィルムは、前記融点範囲内であれば、前記融点範囲内の成分のみからなるものであっても、該成分を50質量%以上含むものであってもよい。
背面フィルムの厚さはフィルムの取り扱いやすさの点から25μm以上、より好ましくは50μm以上、保護材の部分放電確保の観点から更に厚いことが望まれ、さらに好ましくは90μm以上である。
【0040】
従来、防湿フィルムの背面側に配されるフィルムの総厚みは上述の通り、表面保護材の部分放電圧を確保するため厚くすることが望まれる。しかし、厚くするほど表面保護材の製造工程で蓄積される残留歪も大きくなり、防湿性能が大きく劣化することから制限されていた。本発明においては、上述の通り、真空ラミネーション時の温度付近に融点をもつフィルムを背面フィルムとすることにより90μm以上の厚みを有する背面フィルムであっても、防湿性能の劣化を抑え、表面保護材として使用することできる。また、背面フィルムの全体の厚さは経済性から好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。
【0041】
(プラスチックフィルム)
本発明の太陽電池用表面保護材は、表面保護材の耐電圧性能向上や取り扱い性を向上させる目的で、前記防湿フィルムの無機薄膜層と反対側に前記背面フィルムを介して更にプラスチックフィルムを有することができる。上記プラスチックフィルムとしては、前記背面フィルムと同様のものを用いてもよいが、それ以外のものを使用することもでき、封止材との密着性や反射率の観点から、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましく用いられる。
【0042】
また、本発明においては、太陽電池用表面保護材全体の弾性率・剛性を上げるために、上記プラスチックフィルムとして、前述の耐候性フィルムとして例示したポリエステル系フィルムや、フッ素系フィルムを積層して用いることができる。
【0043】
上記プラスチックフィルムは、防湿性劣化への影響が少ないこと,封止材への密着層として強度を確保する等の点から、その厚みが好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上である。また、表面保護材の製造工程で蓄積される残留歪をより小さくするために100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
【0044】
(表面保護材)
表面保護材は、前述したように、耐候性フィルム、防湿フィルム及び、融点130℃以上180℃以下の背面フィルム特定の背面フィルムを有するものであれば特に制限はなく、プラスチックフィルム等他の層を更に有していてもよい。該背面フィルムは、融点が前記範囲であることが必要であり、表面保護材がこのような背面フィルムを有することにより、高温高湿環境下における当該無機薄膜層に背面から掛かる収縮による応力を低減し、真空ラミネーション等の熱処理を経た後も長期に渡り防湿性能を保持することが可能となる。
表面保護材の層間強度を確保する観点から、耐候性フィルムと防湿フィルム、防湿フィルムと背面フィルムあるいはこれと必要により設けられるプラスチックフィルムとはそれぞれ、接着剤からなる接着層を介して積層されたものであることが好ましい。
特に、防湿フィルムと前記背面フィルムとを、接着層を介して貼り合わせてなることが好ましい。
接着剤としては、ポリウレタン系接着剤が好ましく用いられ、接着剤の主剤として具体的には、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオールあるいはポリエステルポリオールを含む組成物などが挙げられるが、熱安定性、湿度安定性などの観点から、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリウレタンポリオールのうち少なくとも1つを含むものがより好ましい。
【0045】
更に、本発明の太陽電池用表面保護材は、後述の封止材を積層してなる封止材・表面保護材一体型であってもよい。予め封止材を積層することにより、真空ラミネーション工程における下部保護シート(裏面保護シート)、封止材、太陽電池素子、封止材、上部保護シート(前面保護シート)それぞれを個々に積層する作業を低減でき、太陽電池モジュール製造の効率化を図ることができる。
【0046】
本発明の太陽電池用表面保護材には、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、諸物性(柔軟性、耐熱性、透明性、接着性など)や成形加工性あるいは経済性などをさらに向上させる目的で、例えば、各種エラストマー(オレフィン系、スチレン系など)、カルボキシル基、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基、シラノール基などの極性基で変性された樹脂および粘着付与樹脂などを含有することができる。背面フィルムは、前記融点範囲を満たす限りにおいて、上記樹脂を含むことができる。
【0047】
該粘着付与樹脂としては、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン− インデン樹脂、ロジ系樹脂、またはそれらの水素添加誘導体などが挙げられる。具体的には、石油樹脂としては、シクロペンタジエンまたはその二量体からの脂環式石油樹脂やC9成分からの芳香族石油樹脂があり、テルペン樹脂としてはβ−ピネンからのテルペン樹脂やテルペン−フェノール樹脂が、また、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトール等で変性したエステル化ロジン樹脂などを例示することができる。また、該粘着付与樹脂は主に分子量により種々の軟化温度を有するものが得られるが、軟化温度が100〜150℃、好ましくは120〜140℃の脂環式石油樹脂の水素添加誘導体が特に好ましく、通常、表面保護材を構成する各フィルムを形成する樹脂組成物を100質量%とした場合、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0048】
また、太陽電池用表面保護材には、必要に応じて、前述した紫外線吸収剤や耐候安定剤等の他、種々の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、シランカップリング剤、酸化防止剤、光拡散剤、造核剤、顔料(例えば白色顔料)、難燃剤、変色防止剤などが挙げられる。本発明においては、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤から選ばれる少なくとも一種の添加剤が添加されていることが好ましい。また、高度の耐熱性を要求される場合は架橋剤および/または架橋助剤を配合してもよい。
【0049】
シランカップリング剤の例としては、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基のような不飽和基、アミノ基、エポキシ基などとともに、アルコキシ基のような加水分解可能な基を有する化合物を挙げることができる。シランカップリング剤の具体例としては、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを例示することができる。本発明においては、接着性が良好であり、黄変などの変色が少ないこと等からγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。該シランカップリング剤の添加量は、表面保護材を構成する各フィルム中、通常、0.1〜5質量%程度であり、0.2〜3質量%添加することが好ましい。また、シランカップリング剤と同様に、有機チタネート化合物などのカップリング剤も使用できる。
【0050】
酸化防止剤としては、種々の市販品が適用でき、モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系、硫黄系、ホスファイト系など各種タイプのものを挙げることができる。モノフェノール系としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどを挙げることができる。ビスフェノール系としては、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔{1,1−ジメチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル}2,4,9,10−テトラオキサスピロ〕5,5−ウンデカンなどを挙げることができる。
【0051】
高分子フェノール系としては、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ビドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−{メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキスフェニル)プロピオネート}メタン、ビス{(3,3′−ビス−4′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グルコールエステル、1,3,5−トリス(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トリフェノール(ビタミンE)などを挙げることができる。
硫黄系としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオプロピオネートなどを挙げることができる。
【0052】
ホスファイト系としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(モノおよび/またはジ)フェニルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナスレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどを挙げることができる。
【0053】
本発明においては、酸化防止剤の効果、熱安定性、経済性等からフェノール系およびホスファイト系の酸化防止剤が好ましく用いられ、両者を組み合わせて用いることがさらに好ましい。該酸化防止剤の添加量は、太陽電池用表面保護材を構成する各フィルム中、通常、0.1〜1質量%程度であり、0.2〜0.5質量%添加することが好ましい。
【0054】
本発明に用いられる太陽電池用表面保護材を構成する各フィルムの製膜方法としては、公知の方法、例えば単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどの溶融混合設備を有し、Tダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法等を採用することができ、特に限定されるものではない。本発明においては、ハンドリング性や生産性等の面からTダイを用いる押出キャスト法が好適に用いられる。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、用いる樹脂組成物の流動特性や製膜性等によって適宜調整されるが、概ね130〜350℃、好ましくは、250〜300℃である。各種添加剤は、予め樹脂とともにドライブレンドしてからホッパーに供給しても良いし、予め全ての材料を溶融混合してペレットを作製してから供給しても良いし、添加剤のみを予め樹脂に濃縮したマスターバッチを作製し供給してもかまわない。
【0055】
このようにして得られる水蒸気透過率が0.1[g/m2・日]未満の高防湿フィルムを使用した本発明の太陽電池用表面保護材は、熱処理前の太陽電池用表面保護材(積層防湿フィルム)の防湿性能である初期防湿性能が水蒸気透過率で好ましくは0.1[g/m2・日]以下であり、より好ましくは、0.05[g/m2・日]以下である。本発明の太陽電池用表面保護材は、優れた防湿性能を要求される電子デバイスの表面保護材等として使用されることが可能であり、初期防湿性能に優れる積層防湿フィルムを用いることで、より顕著に本発明の効果を示すことができ好ましい。また、その防湿性能は、120℃、湿度100パーセント、32時間のプレッシャークッカー試験後の劣化度が、積層防湿フィルムの初期水蒸気透過率に対し20以下であることが好ましく、より好ましくは、15以下である。
【0056】
さらに、接着剤としてポリウレタン系接着剤を使用する場合には、高温高湿下で接着剤が熱分解すると、カルボン酸や水酸基が生成し、これらの官能基が無機薄膜層と化学結合を形成し、無機薄膜層の劣化を引き起こすと考えられる。そこでポリウレタン系接着剤の主剤に含まれるポリオールとしては、熱分解しやすいポリエステルポリオールより、耐熱性に優れたポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリウレタンポリオールなどが好ましい。
尚、本発明において、上記プレッシャークッカー試験後の防湿性(水蒸気透過率)の劣化度は、初期水蒸気透過率(a)とプレッシャークッカー試験後の水蒸気透過率(b)において、[(b−a)/a]で表される。
【0057】
本発明の太陽電池用表面保護材の初期防湿性能とは、部材が真空ラミート条件などの高温度の熱履歴を受ける前の防湿性能をいい、熱による防湿性能低下が起こる前の値を意味する。よって、製造直後から熱処理前までの経時的な変化を含むものである、例えば、130〜180℃で10分〜40分行われる熱ラミネーション処理等の熱処理が行われていない状態での防湿性能の値を意味する。なお、初期水蒸気透過率についても、「初期」の意味は上記と同じである。
防湿性能は、JIS Z0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208「防湿包装材量の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じ評価することができる。
【0058】
また、本発明の表面保護材の層間強度は、120℃、湿度100%、32時間のプレッシャークッカー試験後の値が4N/15mm以上となることが好ましい。上記層間強度は、より好ましくは7.0mm以上、更に好ましくは7.3mm以上であり、7.5N/15mm以上であることが更に好ましく、さらには8N/15mm以上であることがより好ましい。特に、太陽電池モジュールを製造するための高温高湿処理した後でも、好ましくは4N/15mm以上、より好ましくは7.0mm以上、更に好ましくは7.3mm以上であり、7.5N/15mm以上であることが特に好ましい。
なお、層間強度は、実施例に記載の方法により測定された値である。
【0059】
(表面保護材の製法)
本発明の太陽電池用表面保護材は、その製法は特に限定されないが、例えば、上述の製膜された各フィルムをポリウレタン系接着剤を用いて、100〜140℃の温度で接着剤を乾燥させ、0〜80℃の温度下、ドライラミネートにより貼り合わせて製造することができる。この場合、接着剤を十分飽和架橋度に到達させる観点から、得られた積層体は30〜80℃の温度で、1〜7日間養生を行うことが好ましい。こうして得られる本発明の表面保護材は、ドライラミネート工程を経ても、防湿性および層間強度が劣化しない柔軟性と防湿性に優れたものとなる。
【0060】
また、本発明の太陽電池用表面保護材は、耐候性や防湿性の他、耐部分放電特性を有することが好ましい。具体的には、表面保護材が絶縁破壊に至るまでの耐電圧を測定する耐部分放電試験において、太陽電池保護材として700〜1000Vの耐電圧を有することが好ましい。
表面保護材の厚みは、特に限定されるものではないが、通常、100〜400μm程度であり、好ましくは100〜300μm程度であり、より好ましくは140〜300μm程度あり、更に好ましくは180〜260μm程度であり、シート状で用いられる。
【0061】
表面保護材が上記耐電圧特性を達成するためには、要求される耐電圧によるが、通常表面保護材の厚みが180〜230μmであることが好ましい。そのために、各層それぞれの厚みは任意であるが、例えば、比較的高価な耐候性フィルム、防湿フィルムはそれぞれ10〜50μm、接着剤は4〜10μm、背面フィルムは50〜100μm、プラスチックフィルムは50〜150μmとする構成が挙げられ、また防湿フィルムの生産性とドライラミネーション工程の生産性の観点から、それぞれ耐候性フィルム、防湿フィルムは12〜30μm、接着剤は4〜8μm、背面フィルムは50〜100μm、プラスチックフィルムは70〜120μmとする構成が挙げられる。
【0062】
<太陽電池モジュール、太陽電池の製造方法>
本発明の表面保護材は、そのまま、あるいはガラス板等と貼り合わせて太陽電池用表面保護部材として用いることができる。本発明の表面保護材を用いて本発明の太陽電池モジュール及び/又は太陽電池を製造するには、公知の方法により、作成すれば良い。
【0063】
本発明の表面保護材を太陽電池用上部保護材、下部保護材等の表面保護部材の層構成に使用し、太陽電池素子を封止材とともに固定することにより太陽電池モジュールを製作することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができる。例えば、上部保護材(本発明の表面保護材)/封止材(封止樹脂層)/太陽電池素子/封止材(封止樹脂層)/下部保護材の構成のもの、上部保護材/封止材(封止樹脂層)/太陽電池素子/封止材(封止樹脂層)/下部保護材(本発明の表面保護材)の構成のもの、下部保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子上に封止材と上部保護材(本発明の表面保護材)を形成させるような構成のもの、上部保護材(本発明の表面保護材)の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系護材上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作製したものの上に封止材と下部保護材を形成させるような構成のものなどを挙げることができる。上記上部保護材として本発明の表面保護材の外側にガラス板を貼り合わせることは任意である。なお、前述の封止材・表面保護材一体型の表面保護材を用いる場合は、上記の封止材は用いなくてもよい場合がある。
【0064】
太陽電池素子としては、例えば、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルルなどのIII−V族やII−VI族化合物半導体型、色素増感型、有機薄膜型等が挙げられる。
【0065】
本発明の表面保護材を用いて作製された太陽電池モジュールを構成する各部材については、特に限定されるものではないが、封止材としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体を挙げることができる。本発明の表面保護部材以外の上部保護部材及び下部保護材としては、金属等の無機材料や各種熱可塑性樹脂フィルムなどの単層もしくは多層のシートであり、例えば、錫、アルミ、ステンレスなどの金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの単層もしくは多層の保護材を挙げることができる。上部および/又は下部の保護材の表面には、封止材や他の部材との接着性を向上させるためにプライマー処理やコロナ処理など公知の表面処理を施すことができる。
【0066】
本発明の表面保護材を用いて作製された太陽電池モジュールを既述した上部保護材(本発明の表面保護材)/封止材/太陽電池素子/封止材/下部保護材のような構成のものを例として説明する。太陽光受光側から順に、本発明の表面保護材、封止樹脂層、太陽電池素子、封止樹脂層、下部保護材が積層されてなり、さらに、下部保護材の下面にジャンクションボックス(太陽電池素子から発電した電気を外部へ取り出すための配線を接続する端子ボックス)が接着されてなる。太陽電池素子は、発電電流を外部へ電導するために配線により連結されている。配線は、バックシートに設けられた貫通孔を通じて外部へ取り出され、ジャンクションボックスに接続されている。
【0067】
太陽電池モジュールの製造方法としては、公知の製造方法が適用でき、特に限定されるものではないが、一般的には、上部保護材、封止材、太陽電池素子、封止材、下部保護材の順に積層する工程と、それらを真空吸引し加熱圧着する工程を有する。また、バッチ式の製造設備やロール・ツー・ロール式の製造設備なども適用することができる。具体的には上部保護材、封止材、太陽電池素子、封止材、下部保護材を、常法に従って、真空ラミネーターで、好ましくは130〜180℃、より好ましくは130〜150℃、脱気時間2〜15分、プレス圧力0.5〜1atm 、プレス時間が好ましくは8〜45分、より好ましくは10〜40分で加熱加圧圧着することにより容易に製造することができる。
【0068】
本発明の表面保護材を用いて作製された太陽電池モジュールは、適用される太陽電池のタイプとモジュール形状により、モバイル機器に代表される小型太陽電池、屋根や屋上に設置される大型太陽電池など屋内、屋外に関わらず各種用途に適用することができる。
【実施例】
【0069】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例及び比較例により本発明は制限を受けるものではない。なお、種々の物性の測定および評価は次のようにして行った。
【0070】
(物性測定)
(1)背面フィルムの結晶融解ピーク温度(融点、Tm)
ティー・エイ・インスツルメント(株)製の示差走査熱量計Q20を用いて、JISK7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、融解ピークを確認,200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解ピーク温度の中で最大ピークを(Tm)(℃)融点とした。なお,ポリエステルなど融点が200℃を超え融解ピークが観測されない場合は,昇温上限温度を300℃とし,その後同様な測定を行なった。
【0071】
(2)プレッシャークッカー試験
トミー精工社製プレッシャークッカー試験LSK-500を用い、120℃、湿度100パーセント、32時間の試験条件で実施した。
【0072】
(3)防湿フィルム及び表面保護材の防湿性能
防湿フィルムの防湿性能は、防湿フィルム作成後、一週間40℃保管後の時点における水蒸気透過率として、以下の手法で測定した。また、表面保護材については、各構成フィルムを貼合し、養生した後の表面保護材の測定値を初期水蒸気透過率とし、当該養生後に、ガラス,封止材,表面保護材(防湿フィルムの背面側が封止材側)を積層し、150℃で30分の条件での熱処理を行い、次にプレッシャークッカー試験を行った後の表面保護材の水蒸気透過率をプレッシャークッカー試験後の防湿性の値とした。
具体的には、JIS Z 0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z 0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に順じ、次の手法で評価した。
透湿面積10.0cm×10.0cm角の各試料を2枚用い、吸湿剤として無水塩化カルシウム約20gを入れ四辺を封じた袋を作製し、その袋を温度40℃相対湿度90%の恒温恒湿装置に入れ、72時間以上の間隔でおよそ200日目まで質量測定し、4日目以降の経過時間と袋質量との回帰直線の傾きから水蒸気透過率(g/m2・日)を算出した。水蒸気透過率劣化度は、[(プレッシャークッカー試験後の水蒸気透過率−初期水蒸気透過率)/初期水蒸気透過率]により算出した。
【0073】
(4)表面保護材の層間強度測定
上述のとおり、養生後の表面保護材に150℃で30分の条件での熱処理を行い、プレッシャークッカー試験後に、測定幅15mmの短冊状に切り出し、引っ張り試験機ORIENTIC製STA−1150を用いて300mm/minで耐候性フィルムと防湿フィルムの層間ラミネート強度(N/15mm)を測定した。
【0074】
(構成フィルム)
<耐候性フィルム>
A−1:アルケマ社製ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系フィルムKynar 302−PGM−TR(厚み:30μm)を使用した。
【0075】
<防湿フィルム>
防湿フィルムB−1
基材フィルムとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、「Q51C12」)を用い、そのコロナ処理面に、下記のコート液を塗布乾燥して厚さ0.1μmのコート層を形成した。
次いで、真空蒸着装置を使用して1.33×10-3Pa(1×10-5Torr)の真空下でSiOを加熱蒸発させ、コート層上に厚さ50nmのSiOx(x=1.5)無機薄膜層を有する防湿フィルムB−1を得た。作成した防湿フィルムB−1の防湿性能は0.01[g/m2・日]であった。
【0076】
コート液
日本合成(株)製「ゴーセノール」(ケン化度:97.0〜98.8mol%、重合度:2400)のポリビニルアルコール220gをイオン交換水2810gに加え加温溶解した水溶液に、20℃で攪拌しながら35%塩酸645gを加えた。次いで、10℃でブチルアルデヒド3.6gを攪拌しながら添加し、5分後に、アセトアルデヒド143gを攪拌しながら滴下し、樹脂微粒子を析出させた。次いで、60℃で2時間保持した後、液を冷却し、炭酸水素ナトリウムで中和し、水洗、乾燥し、ポリビニルアセトアセタール粉末(アセタール化度75mol%)を得た。
また、架橋剤としてイソシアネート樹脂(住友バイエルウレタン(株)製「スミジュールN−3200」)を用い、水酸基に対するイソシアネート基の当量比が1:2になるように混合した。
【0077】
防湿フィルムB−2
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにシリカを蒸着した三菱樹脂製テックバリアLXを使用した。また上述の方法で測定した防湿性は0.2[g/m2・日]であった。
【0078】
<接着剤と接着剤塗液>
接着剤塗液
ポリウレタンポリオール成分を含む主剤としてロックペイント株式会社製HD1013を使用し、脂肪族系のヘキサメチレンジイソシアナート成分を含む硬化剤としてロックペイント株式会社製H62を使用し、質量比で10:1となるように混合し、固形分濃度が30質量%となるように酢酸エチルで希釈して接着剤塗液を調製した。
【0079】
<背面フィルム>
下記背面フィルムC−1〜C−11を作成し、両面に常法に従って、コロナ放電処理を施してコロナ処理面を形成した。
【0080】
背面フィルムC−1及びC−2
アイソタクチックポリプロピレンに、白色化剤としての酸化チタン(8質量%)と紫外線吸収剤としての超微粒子酸化チタン(粒子径、0.01〜0.06μm、3質量%)とを添加し、十分に混練してポリプロピレン樹脂組成物を調製し、次いで、該ポリプロピレン樹脂組成物を押出機で押し出して、厚さ50μmの無延伸ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム(C−1)、及び厚さ90μmの無延伸ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム(C−2)をそれぞれ製造した。
【0081】
背面フィルムC−3
アルケマ社製ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系フィルム(Kynar 302−PGM−TR、厚み30μm)をC−3として使用した。
背面フィルムC−4
三菱樹脂(株)製ポリ乳酸(PLA)樹脂フィルム(エコロージュS、厚み25μm)をC−4として使用した。
【0082】
背面フィルムC−5、C−6、C−7
三菱樹脂(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ダイアホイルT−100)厚み50μm(C−5)、厚み100μm(C−6)、及び厚み188μm(C−7)をそれぞれ使用した。
背面フィルムC−8
耐加水分解性ポリエステルフィルムとして、三菱樹脂(株)製耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(P100、厚み50μm)をC−8として使用した。
【0083】
背面フィルムC−9
三菱樹脂(株)製ポリアミド(PA)6フィルム(サントニールSNR、厚み25μm)をC−9として使用した。
背面フィルムC−10
旭硝子(株)製エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)(アフレックス50N 1250NT、厚み50μm)をC−10として使用した。
【0084】
背面フィルムC−11
帝人デュポン(株)製、二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(Q51C25、厚み25μm)をC−11として使用した。
以上、C−1〜C−11の構成、厚み及び融点の値を表1にまとめて示す。
<プラスチックフィルム>
プラスチックフィルムとして、三菱樹脂(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ダイアホイルT−100)厚み100μmを使用した。
<封止材>
EVA封止材として福斯特(株)製、商品名:FIRSTEVA F806(厚み:500μm)を使用した。
【0085】
実施例1
耐候性フィルムA−1に接着剤塗液1を固形分6g/m2となるよう塗布乾燥し、防湿フィルムB−1の無機薄膜層を接着剤面に向けて張力約80N/mドライラミネートによって貼合した。
その後無機薄膜層と反対側に接着剤塗液1を固形分6g/m2となるよう塗布乾燥し、背面フィルムC−1のコロナ処理面を貼合後、40℃×5日間養生し、厚み104μmの表面保護材D−1を作成した。ガラス、封止材、表面保護材D−1の順(封止材側が背面フィルム)に積層し150℃、15分の条件で真空ラミネートを行い、その後プレッシャークッカー試験を実施し、層間強度、防湿性を測定した。結果を表2に示す。
【0086】
実施例2
実施例1の背面フィルムC−1をC−2としたこと以外は実施例1と同様にして厚み144μmの表面保護材D−2を作成し、真空ラミネート後、プレッシャークッカー試験を実施し、層間強度、防湿性を測定した。結果を表2に示す。
【0087】
実施例3
実施例1の背面フィルムC−1をC−3としたこと以外は実施例1と同様にして厚み84μmの表面保護材D−3を作成し、真空ラミネート後、プレッシャークッカー試験を実施し、層間強度、防湿性を測定した。結果を表2に示す。
【0088】
実施例4
実施例1の背面フィルムC−1をC−4としたこと以外は実施例1と同様にして厚み79μmの表面保護材D−4を作成し、真空ラミネート後、プレッシャークッカー試験を実施し、層間強度、防湿性を測定した。結果を表2に示す。
【0089】
実施例5
三菱樹脂(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ダイアホイルT−100)厚み100μmの一方の面に接着剤塗液1を固形分6g/m2となるよう塗布乾燥し、背面フィルムC−2の一方のコロナ処理面を接着剤面に向けてドライラミネートによって貼合した。
耐候性フィルムA−1に接着剤塗液1を固形分6g/m2となるよう塗布乾燥し、防湿フィルムB−1の無機薄膜層を接着剤面に向けて張力約80N/mドライラミネートによって貼合した。
次に該無機薄膜層と反対側に接着剤塗液1を固形分6g/m2となるよう塗布乾燥し、背面フィルムC−2の他方のコロナ処理面を貼合後、40℃×5日間養生し、厚み250μmの表面保護材D−5(耐候性フィルムA−1/防湿フィルムB−1/背面フィルムC−2/PETフィルム)を作成した。ガラス、封止材、表面保護材D−5の順(封止材側がPETフィルム)に積層し150℃、15分の条件で真空ラミネートを行い、その後プレッシャークッカー試験を実施し、層間強度、防湿性を測定した。結果を表2に示す。
【0090】
比較例1
実施例1の背面フィルムC−1をC−5としたこと以外は実施例1と同様に厚み104μmの表面保護材D−6を作成し、真空ラミネート後、プレッシャークッカー試験を実施し、層間強度、防湿性を測定した。結果を表2に示す。
【0091】
比較例2
実施例1の背面フィルムC−1をC−6としたこと以外は実施例1と同様に厚み154μmの表面保護材D−7を作成し、真空ラミネート後、プレッシャークッカー試験を実施し、層間強度、防湿性を測定した。結果を表2に示す。
【0092】
比較例3
実施例1の背面フィルムC−1をC−7としたこと以外は実施例1と同様に厚み242μmの表面保護材D−8を作成し、真空ラミネート後、プレッシャークッカー試験を実施し、層間強度、防湿性を測定した。結果を表2に示す。
【0093】
比較例4
実施例1の背面フィルムC−1をC−8としたこと以外は実施例1と同様に厚み104μmの表面保護材D−9を作成し、真空ラミネート後、プレッシャークッカー試験を実施し、層間強度、防湿性を測定した。結果を表2に示す。
【0094】
比較例5
実施例1の背面フィルムC−1をC−9としたこと以外は実施例1と同様に厚み79μmの表面保護材D−10を作成し、真空ラミネート後、プレッシャークッカー試験を実施し、層間強度、防湿性を測定した。結果を表2に示す。
【0095】
比較例6
実施例1の背面フィルムC−1をC−10としたこと以外は実施例1と同様に厚み104μmの表面保護材D−11を作成し、真空ラミネート後、プレッシャークッカー試験を実施し、層間強度、防湿性を測定した。結果を表2に示す。
【0096】
比較例7
実施例1の背面フィルムC−1をC−11としたこと以外は実施例1と同様に厚み79μmの表面保護材D−12を作成し、真空ラミネート後、プレッシャークッカー試験を実施し、層間強度、防湿性を測定した。結果を表2に示す。
【0097】
参考例1
実施例1の防湿フィルムB−1をB−2としたこと以外は実施例1と同様にして厚み104μmの表面保護材D−13を作成し、真空ラミネート後、プレッシャークッカー試験を実施し、層間強度、防湿性を測定した。結果を表2に示す。
【0098】
参考例2
比較例2の防湿フィルムB−1をB−2としたこと以外は比較例2と同様にして厚み154μmの表面保護材D−14作成し、真空ラミネート後、プレッシャークッカー試験を実施し、層間強度、防湿性を測定した。結果を表2に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
このように、基材の一方の面に無機薄膜層を有する水蒸気透過率が0.1[g/m2・日]未満の高防湿フィルムを有する高防湿性太陽電池用表面保護材であって、前記防湿フィルムの無機薄膜層側と反対側に融点が特定範囲内である背面フィルムを有する実施例1〜5の表面保護材は、真空ラミネーション工程における熱処理がなされた後も防湿性能が長期に保持されるものであることがプレッシャークッカー試験による評価から明らかとなった。また、実施例1〜5の表面保護材は、当該熱処理がなされても十分な層間強度を長期に有するものであることが分かった。特に、背面フィルムに加え、プラスチックフィルムを有する実施例5については、高熱処理後の防湿性能もより保持されるものであった。同様に、防湿フィルムの背面側に融点が上記特定範囲外であるフィルムを配した比較例1〜7については、真空ラミネーション工程における熱処理後の長期防湿性能が著しく低下することが明らかとなった。なお、初期の防湿性能が低い参考例1及び2は防湿性能の劣化度が小さく、実施例との比較から初期防湿性能が高いほど防湿性能の劣化度が大きくなることを示したものである。
このように、本発明における高防湿性太陽電池用表面保護材は、特に防湿性能の劣化が生じやすい高防湿性フィルムにおける防湿性維持の効果を顕著に有していることが明らかとなった。したがって、これを太陽電池用モジュールに用いることにより、太陽電池セルへの湿気の到達や表面保護材自体の劣化を顕著に抑えることができることから太陽電池モジュールの耐久性を顕著に向上させることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に無機薄膜層を有し水蒸気透過率が0.1[g/m2・日]未満である防湿フィルムを有する太陽電池用表面保護材であって、
前記防湿フィルムの無機薄膜層側に耐候性フィルムを有し、かつ
前記防湿フィルムの無機薄膜層と反対側に、直接あるいは接着層を介して融点が130℃以上180℃以下である背面フィルムを有する
ことを特徴とする太陽電池用表面保護材。
【請求項2】
前記防湿フィルムの水蒸気透過率が0.05[g/m2・日]以下である請求項1に記載の太陽電池用表面保護材。
【請求項3】
前記防湿フィルムの水蒸気透過率が0.01[g/m2・日]以下である請求項1に記載の太陽電池用表面保護材。
【請求項4】
前記背面フィルムが、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリフッ化ビニル及びポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種の樹脂を主成分として含む請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用表面保護材。
【請求項5】
前記背面フィルムの厚みが25μm以上300μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用表面保護材。
【請求項6】
前記基材がポリエステル系樹脂フィルムである請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池用表面保護材。
【請求項7】
前記防湿フィルムと前記背面フィルムの間に接着層を有する請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池用表面保護材。
【請求項8】
前記防湿フィルムの無機薄膜層と反対側に前記背面フィルム及びプラスチックフィルムをこの順に有する請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池用表面保護材。
【請求項9】
更に封止材を積層して有する請求項1〜8のいずれかに記載の太陽電池用表面保護材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の太陽電池用表面保護材を用いて作製された太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2012−176608(P2012−176608A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−16966(P2012−16966)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】