説明

太陽電池

【課題】太陽電池の提供。
【解決手段】高効率の太陽電池は、表面プラズモン又はポーラロン機構を通じて光を吸収する、太陽電池の感光層中の主要な光吸収要素として金属ナノ粒子又はナノ構造を使用することにより得ることができる。該太陽電池は、n−ドープされた電荷輸送層とp−ドープされた電荷輸送層の間に、ナノ粒子又はナノ構造を含む感光層を少なくとも1つ含み、・前記ナノ粒子又はナノ構造は、前記感光層における主要な光吸収要素であり、
・前記ナノ粒子又はナノ構造は、金属伝導性を有し、かつ、表面プラズモン又はポーラロン機構を通じて近赤外線、可視光線及び/又は紫外線を吸収し、
・前記ナノ粒子又はナノ構造は、その寸法の少なくとも1つが、0.1ないし500nmのサイズを有する
ことを特徴とする。
電子パラメーター及びサイズパラメーターの組み合わせを利用することによって、太陽光スペクトル内のあらゆる波長(約2500ないし300nm)における強い光吸収を得ることができ、全範囲の太陽光スペクトルが使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全太陽光スペクトル、近赤外線ないし紫外線から電力を発生することができる新規太陽電池の設計に関する。該装置は、各々吸収された太陽光子を電流に変換することにおいて、高い効率を有する。それは、n−i−p又はp−i−nのi−層、マルチスタック太陽電池配置(例:本発明の3光変換素子電池を示す図1参照。)の内側に主要な光吸収要素としてナノ粒子又はナノ構造を利用することによって、このような目的を達成する。
【背景技術】
【0002】
最新技術
太陽光を電力に変換するための既知の方法は、大規模で、経済的な利用を可能にするためには、まだ改善の必要がある。効率不足は、今日、世界の電力の大半を生産するために使用される化石燃料から再生可能な太陽エネルギーへの切り替えを遅らせている。今日、利用可能な主要な種類の太陽電池に関する簡単な議論は、http://www.eere.energy.gov/solar/solar cell structure.htmlで見ることができる。
【0003】
以下の一連の問題は太陽電池の変換効率に影響を及ぼす:
・光電素子は、太陽がエネルギーを放射するところの全ての波長に対して敏感ではない(不十分なスペクトル範囲)。
・光電素子が敏感であるところの波長においてでさえ、光電セルの表面上に入射する太陽光子の全てが、それによって吸収されない(不十分な吸収断面積)。
・吸収された光子の全てが、物理的に分離された電子正孔対の形成をもたらさない(不適当な電子遷移)。
・全ての電子及び全ての正孔が同じ方向に移動しないため、より低い正味電流がもたらされる(ランダム電子移動(random electronic walk))。
・外部回路に到達する前及び使用する前に、電子及び正孔のいくつかは、再結合するか、又は、導電媒質中で欠陥又はトラップによってブロックされる(競争過程)。
【0004】
重要な工程は、一般に、主要な感光層(通常、i−層と呼ばれる。)における光の吸収及び電荷の分離である。欧州特許出願公開第729190号明細書は、i−層が、n−及びp−ドープされたシリコンフィルム層の間に、モノシランからのシリコン微結晶をプラズマ蒸着することによって形成されるところの電池を記載する。
【0005】
国際公開第98/04006号パンフレットは、様々な吸収スペクトルを利用するために、太陽電池における様々なサイズのSi−、Ge−又はCdTe−クラスターの使用を開示している。同様に、英国特許出願公開第2341002号明細書は、太陽電池におけるZn−フタロシアニン発色団のスペクトル感受性を改善するための、とりわけ、5nmのサイズの金属クラスターの使用を提案している。
【0006】
欧州特許出願公開第1180802号明細書は、表面プラズモンを可能にする感光要素として、配向させた半導体球を使用した太陽電池を記載している。励起プラズモンは、pn接合形成電界の外側にあるが、ここで、該電界は減少するので、電池全体の設計は困難である。
【0007】
露国特許第2222846号明細書は、n−p電池設計のn−型半導体層内の電荷分離及び輸送を改善するために、表面プラズモンを有するナノ粒子を使用した太陽電池を記載
している。
【0008】
ナノ粒子又はナノ構造は、巨視的な同様の物質よりも、様々な方法において可視光線と相互作用することが知られている。特に、金属ナノ構造は、表面プラズモン又はポーラロン共鳴吸収を示し、それは、物質の電子物性及び粒子又は構造サイズに依存するところの波長における非常に高い吸収断面積に現れる(例えば、Electrochim.Acta 2001,46,1967−1971参照)。Tian et al.,J.Am.Chem.Soc.2005,127,7632−7637は、ドナー溶液と接触する光電陽極(photoanode)として、TiO2中に50nm未満のサイズの金粒子を使用した太陽電池を記載している。
【非特許文献1】http://www.eere.energy.gov/solar/solar cell structure.html。
【特許文献1】欧州特許出願公開第729190号明細書。
【特許文献2】国際公開第98/04006号パンフレット。
【特許文献3】英国特許出願公開第2341002号明細書。
【特許文献4】欧州特許出願公開第1180802号明細書。
【特許文献5】露国特許第2222846号明細書。
【非特許文献2】Electrochim.Acta 2001,46,1967−1971。
【非特許文献3】Tian et al.,J.Am.Chem.Soc.2005,127,7632−7637。
【発明の開示】
【0009】
高効率の太陽電池は、太陽電池の感光層中に、主要な光吸収要素として、表面プラズモン又はポーラロン機構を通じて光を吸収する金属ナノ粒子又はナノ構造を使用することにより得ることができることが今や発見された。よって、本発明は、ナノ粒子又はナノ構造を含む感光層を少なくとも1つ含み、かつ、更に、各感光層当り、前記感光層の各々の側に置かれた、少なくとも1つの、n−ドープされた電荷輸送層及び少なくとも1つの、p−ドープされた電荷輸送層を含む太陽電池であって、
・前記ナノ粒子又はナノ構造は、前記感光層における主要な光吸収要素であり、
・前記ナノ粒子又はナノ構造は、金属伝導性を有し、かつ、表面プラズモン又はポーラロン機構を通じて近赤外線、可視光線及び/又は紫外線を吸収し、
・前記ナノ粒子又はナノ構造は、その寸法の少なくとも1つが、0.1ないし500nmのサイズを有し、
・前記ナノ粒子又はナノ構造の少なくとも50質量%、好ましい態様においては70質量%より多く、特に90質量%より多くが、全ての層(感光層、n−ドープされた電荷輸送層、p−ドープされた電荷輸送層)の内、前記感光層に含まれる
ことを特徴とする太陽電池に関する。
【0010】
電子パラメーター及びサイズパラメーターの組み合わせを利用することによって、太陽光スペクトル内のあらゆる波長(約2500ないし300nmの間ならどこでも)における強い光吸収を得ることができる。それ故、好適な表面プラズモン又はポーラロン共鳴吸収を示す、ナノ粒子又はナノ構造、特に、異なる組成及び/又はサイズを有するこのような粒子又は構造の組み合わせを使用することによって、あらゆる範囲の太陽光スペクトルを使用することができる。
【0011】
太陽電池は、太陽光スペクトルの実質的に全ての光、とりわけ、例えば、1800nmないし300nmの照射エネルギーの50%以上、好ましくは70%以上、特に90%以上を吸収し得る。太陽電池は、好ましくは、1ないし100の主要な感光層を含む。主要な感光層中のナノ粒子又はナノ構造は、通常、その寸法の少なくとも1つが、0.1ない
し500nmのサイズを有する。
【0012】
光子がこのようなナノ粒子又はナノ構造によって吸収される場合、それは、非常に小さな粒子又は構造の表面において、又は、該表面の非常に近くに電子正孔対をつくる。ナノ粒子又はナノ構造が、正電荷又は負電荷が比較的容易に移動し得るところのマトリックス、とりわけ、導体又は半導体中に組み込まれるならば、このような電子及び正孔は、周囲のマトリックス中に容易に輸送され、装置の光変換効率を最大化し得る。
【0013】
周囲の媒質への電荷担体のこのような輸送は、感光性ナノ粒子又はナノ構造に隣接した、n−ドープされた導体層又は半導体層及びp−ドープされた導体層又は半導体層(通常、n−i−p/p−i−n設計において見られるような)の存在により得られる電界によって、電子を一方向に、正孔を逆方向に移動及び誘導させられ得る。それ故、ランダム移動による電荷輸送に関連した電荷再結合及び電荷消失による効率の損失は最小化され、装置の光交換効率は最大化され得る。
【0014】
このような電荷輸送層を通じて、電荷担体は、最終的に、好適に置かれた電極及び外部回路へ移動させられ、実質的な仕事をし得る。全般的に、このような装置の使用によって、開回路電圧、短回路光電流、低照度開回路電圧及びリーク電流は、全て最適化され得る。
【0015】
特定のサイズ及び組成を有する粒子が、表面プラズモン又はポーラロン共鳴機構を通じて、一般に近赤外線、可視光線及び/又は紫外線を吸収することができること、及び、このような光起電流は、表面プラズモン又はポーラロン機構を通じて近赤外線、可視光線又は紫外線を吸収するナノ粒子又はナノ構造によりつくられた少なくとも1つの主要な感光層を、各主要な感光層当り、前記主要な感光層の各々の側に置かれた、少なくとも1つの、n−ドープされた電荷輸送層及び少なくとも1つの、p−ドープされた電荷輸送層と接触させることにより観察され得ることことが発見された。
【0016】
感光層中の主要な光吸収要素としてのナノ粒子又はナノ構造は、通常、各波長において、感光層によって、又は、より好ましくは全セルによって吸収される放射線の50%より多くを吸収する。感光層中の主要な光吸収要素としてのナノ粒子又はナノ構造は、通常、感光層によって、又は、より好ましくは全セルによって吸収される、400ないし800nm、特に300ないし2500nmの範囲の全放射線の50%より多く、好ましくは80%より多く、特に90%より多くを吸収する。本発明の太陽電池は、通常、有機染料又は顔料を含まない。一般に、本発明のナノ粒子又はナノ構造は、感光層の大部分(例えば、図3に示すように)又はほとんど又は全て(例えば、図2及び更に下記の図4参照)を構成する。
【0017】
ナノ粒子は、実際は、有機又は無機の、適切な電気的性質を有する物質のいずれかであり得る。好ましくは、ナノ粒子は、金属等の無機物質、又は、金属元素1つ以上と第III主族ないし第IV主族の元素1つ以上の組み合わせからつくられる。一般に使用されるドーピング技術は、該物質の電子性質を調節し、正電荷又は負電荷の局部的な過剰をつくるために使用され得る。本発明の範囲内に含まれるのは、各粒子が、異なる電子性質を有する2種類以上の材料によって形成されるところの、コア−シェル構造、多層チューブ又はプレート等の複合粒子構造である(例えば、国際公開第2004/077453号パンフレット参照)。好ましい態様において、感光層中のナノ粒子又はナノ構造は、貴金属(例えば、Ag、Au、Cu、Pt、Pd;特に、Cu、Ag、Au)、非化学量論的酸化物等の伝導性の酸化物(例えば、Sn、In、As、Sb、Zn、W、Nb、Ga及びVの酸化物、それらの組み合わせ、及び/又はそれらのドープされた類似体)、青銅(例えば、W、Nb、V等のドープされた酸化物)、窒化物、硫化物、セレン化物、ホウ化物、
ケイ化物又は金属元素1つ以上と第III主族ないし第IV主族の元素1つ以上との組み合わせから選択された物質からつくられる。
【0018】
これに関して特に有用な性質を有することを示す物質は、Cu、Ag及びAu等の金属、金属酸化物(非化学量論的なものも)、例えば、W、Zn、Sn、In等の遷移金属の酸化物等、並びに、対応する窒化物、硫化物、セレン化物、ホウ化物及びケイ化物を含むが、これらに制限されない。また、好ましいものは、少なくとも50原子−%のCu、Ag、Auを含む、金属と銅、銀及び/又は金の合金、又は、Cu/Ag、Cu/Au、Ag/Au、Cu/Ag/Au系の合金である。
【0019】
本発明のナノ粒子は、例えば、球体、棒、立方体、円柱、フレーク又はプレートであり得る。ナノ構造は、均一フィルム構造、‘‘山谷’’構造、カスプ構造、ドーム構造及びディンプル構造、及び、量子閉じ込め効果をもたらすあらゆる他の粗構造を含む。
【0020】
このような性質を示す粒子又は構造は、通常、その寸法の少なくとも1つ、好ましくは全てが、0.1ないし500nmのサイズ;より好ましくは0.1ないし200nmのサイズ、特に約1ないし80nmのサイズを有する。各々の特定の物質において、異なるサイズの粒子は異なる光吸収スペクトルを有する。
【0021】
それ故、本発明は、特に、上記で言及した導体又は半導体金属又は金属化合物のナノ粒子又はナノ構造を含む主要な感光層を少なくとも1つ含む太陽電池に関する。ナノ粒子又はナノ構造物質のバルク伝導率は、通常、100Ωcmより低い、好ましくは1Ωcmより低い、より好ましくは0.1Ωcmより低い、特に0.01Ωcmより低い、操作温度における特定の抵抗(抵抗率)が、感光層中に含まれる本発明のナノ粒子又はナノ構造の少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%によって実現される程度の伝導率であり得る。一般に、本発明のナノ粒子又はナノ構造物質の電気伝導率は、温度と共に減少する。本発明の太陽電池の操作温度は、一般に、約−50ないし約+150℃、特に約−20ないし約100℃の範囲内、とりわけ周囲温度内である。
【0022】
本発明は、低い外形寸法の要素が、各機能を有する薄層においてのみ必要とされるので、フレキシブル太陽電池として適切である。それ故、本発明は、更に、層がポリマーフィルム基材上に位置し、特に、少なくとも1つ、好ましくは1つを除く全て又は全てのカバー層(前面及び/又は背面要素)及び、存在するならば、中間層が、厚さ約5ないし150μmの透明なポリマーフィルムであり、及び/又は、少なくとも1つの電極が有機伝導物質を含むところのフレキシブル太陽電池に関する。本発明はまた、電荷輸送層を非晶質又は半非晶質シリコンでつくり、そしてそれを、米国特許第4663828号明細書及び米国特許第4663829号明細書に開示されるように軟質プラスチック基材上に蒸発させ得ることによるフレキシブル太陽電池を可能にする。
【0023】
主要な感光層内に、同じ物質及びサイズのナノ粒子又はナノ構造、同じ物質の異なるサイズのナノ粒子又はナノ構造の組み合わせ、又は、異なる物質の同じ又は異なるサイズのナノ粒子又はナノ構造の組み合わせのみを使用することもできる。多層、上記組成の1つに相当する各層は、様々な波長の光を捕獲及び変換するために、又は、各波長の全ての利用可能な光子が捕獲及び変換されることを確実にするために、使用され得る。とりわけ、このような多層の各々は、n−i−p又はp−i−n構造の主要な感光層iを構成し得、その多く、1ないし100は、図1に概略的に示すように、連続して一緒に積み重ねられ得る。
【0024】
主要な感光層は、連続的であり得(例えば、図2参照)、TiO2又は非ドープSi等の半導体又は導体マトリックス中に分散されたナノ粒子又はナノ構造を示し得るか(例え
ば、図3参照)、又は、隣接したn−ドープされた層及びp−ドープされた層を完全に分離し得ない孤立したナノ粒子又はナノ構造を示し得る(例えば、図4参照)。
【0025】
このような太陽電池はまた、各主要な感光層当り、前記感光層の反対側に置かれた、少なくとも1つの、n−ドープされた電荷輸送層及び少なくとも1つの、p−ドープされた電荷輸送層を含む。このような電荷輸送層の組成及びサイズは、既に、技術的に非常に確立されている。このような電荷輸送層は、通常、セル前面から更に離れて捕獲及び転換する光の波長に対しては透明であるが、第二の感光要素としても作用し得る;このように、本発明のナノ粒子又はナノ構造を含む層は理解されるべきであり、同様の場合において、主要な感光層として思い出される。電荷輸送層の材料は、有機物、無機物又はハイブリッドであり得る。とりわけ、1つの好ましい態様において、電荷輸送層は、様々にドープされた非晶質、半非晶質又は微結晶又は結晶(ウェハ)シリコンからつくられる。
【0026】
本発明の太陽電池において使用されるp−型半導体層の有用な例は、p−型の非晶質シリコン、非晶質シリコンカーバイド、微結晶シリコン、微結晶シリコンカーバイド又は炭素含有微結晶シリコンの薄いフィルム、様々な炭素含有量を有する非晶質シリコンカーバイドの多層フィルム及び非晶質シリコンと非晶質炭素の多層フィルムを含む。p−型の微結晶シリコン、微結晶シリコンカーバイド又は炭素含有微結晶シリコンの薄いフィルムがより好ましい。
【0027】
本発明において、電荷輸送機能からの光吸収機能の分離は、更に、電荷輸送要素を構成するために、例えば、適切にn−又はp−ドープされたTiO2、ZnO2及びSnO2を含むワイドギャップ半導体を使用することを可能にし得る。こでまで、それらは、光吸収性が乏しいため、有用ではなかった;実際、In−ドープされたSnO2(別名:ITO)が、一般的な電子構成要素の製造において、完全に透明な電荷輸送物質として広く使用されている。
【0028】
効果的に使用可能な、本発明の太陽電池において使用されるn−型半導体層の例は、薄いn−型の微結晶シリコンフィルム、薄い炭素含有微結晶シリコンフィルム、薄い微結晶シリコンカーバイドフィルム、薄い非晶質シリコンフィルム、薄い非晶質シリコンカーバイドフィルム及び薄い非晶質シリコンゲルマニウムフィルムを含む。n−型結晶Siウェハもまた使用可能である。
【0029】
p−型半導体層の形成方法においては、PVD、プラズマCVD、PECVD又は光アシストCVDが使用され得る。このような方法の原料としては、シラン、ジシラン又はトリシランが、シリコン化合物として使用される。更に、P−型伝導率を付与するためのドーパントとしては、ジボラン、トリメチルホウ素、三フッ化ホウ素等が好ましい。更に、炭素含有化合物として、メタン又はエタン等の飽和炭化水素、エチレン又はアセチレン等の不飽和炭化水素又はモノメチルシラン又はジメチルシラン等のアルキルシランが使用される。このような混合ガスは、所望により、ヘリウム又はアルゴン等の不活性ガス及び/又は水素で希釈され得る。
【0030】
n−型半導体層は、ホスフィン又はアルシン等の、元素周期表の第V族の元素(即ち、第V主族、窒素族とも呼ばれる。)を含む化合物、及び水素元素と、分子中にシリコンを含む化合物、分子中にゲルマニウムを含む化合物、例えば、ゲルマン又はシリルゲルマン、炭化水素ガス等から、対象とする半導体に基づき要望通りに選択された原料とを混合し、プラズマCVD又は光アシストCVDを適用することすることによって形成され得る。更に、ヘリウム又はアルゴン等の不活性ガスを用いた供給ガスの希釈も可能である。
【0031】
p−型及びn−型半導体層の形成条件としては、フィルム厚は、通常、2ないし100
nmの範囲内であり、蒸着温度は、通常、50ないし400℃の範囲内であり、形成圧力は、通常、0.01ないし5トールの範囲内である。RFプラズマCVDによる形成においては、RF出力は、都合よくは、0.01mW/cm2ないし10W/cm2の範囲内であるべきである。
【0032】
上記供給ガスにおいて有用な化合物は、以下の通りである:
モノシラン、ジシラン及びトリシラン等の水素化シリコンを含む分子中にシリコンを含む化合物;モノメチルシラン、ジメチルシラン及びトリメチルシラン、テトラメチルシラン、エチルシラン及びジエチルシラン等の、アルキル基で置換された水素化シリコン;ビニルシラン基、ジビニルシラン基、トリビニルシラン基、ビニル−ジシラン基、ジビニルジシラン基、プロペニルシラン基及びエテニルシラン基等の根本的に重合可能な不飽和炭化水素基を1つ以上含む水素化シリコン;及び、これらの水素化シリコンの水素原子をフッ素原子で部分的に又は完全に置換することによって得られるフッ素化シリコン。
炭化水素ガスの有用な特定の例は、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン及びアセチレンを含む。
【0033】
n−型及びp−型半導体層の両方において、特に、それらの電荷輸送特性を改善するために、露国特許第2222846号明細書に記載されるような少量において、導体又は半導体ナノ粒子もまた添加され得る。
【0034】
本発明の太陽電池構造対象物全体の概略図を図1に示す。ここで、主要な感光層1、2及び3は、n−ドープされた層A、C及びE、及び、p−ドープされた層B、D及びFに応じて、同じであるか又は異なり得る。該装置は、更なる層、例えば、感光層に対してn−又はp−ドープされた導体層の各々の反対側の電極層、別の光変換素子の間の絶縁層、又は、半導体電荷輸送層と主要な感光層又は電極の間の中間層を含み得る。用語‘‘電極’’は、特定の電極より、更に光衝突側から、捕獲及び変換されるべき光を通過させることを可能とするために通常選択される半透明電極又は金属電極を意味する。効果的に使用可能な、半透明電極のための物質の例は、金属酸化物、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛及びそれらの組み合わせ、半透明金属等を含む。金属電極は、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、プラチナ及びそれらの合金、また、これらと他の元素、例えばニッケル及び鉄からつくられ得る。
【0035】
主要な感光層は、連続的であり得(例えば、図2参照)、TiO2又は非ドープSi等の半導体又は導体マトリックス中に分散されたナノ粒子又はナノ構造を示し得るか(例えば、図3参照)、又は、隣接したn−ドープされた層及びp−ドープされた層を完全に分離し得ない孤立したナノ粒子又はナノ構造を示し得る(例えば、図4参照)。
【0036】
最新技術手法に従って、少なくとも1つの、n−ドープされた電荷輸送層、(主要な)感光層及び少なくとも1つの、p−ドープされた電荷輸送層からなる各一組ごとに、絶縁体又は導体層が置かれ得る(図1参照:所望の中間層)。前面要素、例えば、反射防止又はスクラッチ防止層、及び、背面要素、例えば、背面反射層又はダンプ電極もまた、最新技術に従って使用され得る。同様に、基材が、太陽電池を使用条件下においてその形状を維持させるのに十分な厚さ及び外形を有する限りは、あらゆる種類の適切な基材が使用され得る。有用な基材物質は、ガラス又は石英シート、セラミックシート、例えばアルミナ、窒化ホウ素又はシリコンシート、金属シート及び金属被覆セラミック又はポリマーシート、及び、以下のポリマー等のポリマーシート又はフィルムを含む:
1.モノオレフィン及びジオレフィンのポリマー、例えばポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテ−1−エン、ポリ−4−メチルペンテ−1−エン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリイソプレン又はポリブタジエン、並びにシクロオレフィン、例えばシクロペンテン又はノルボルネンのポリマー、ポリエチレン(所望により架橋され得る)、例えば
高密度ポリエチレン(HDPE)、高密度及び高分子量ポリエチレン(HDPE−HMW)、高密度及び超高分子量ポリエチレン(HDPE−UHMW)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、(VLDPE)及び(ULDPE)である。
【0037】
ポリオレフィン、すなわち前段落において例示したモノオレフィンのポリマー、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンは、異なる方法によりそしてとりわけ以下の方法により調製され得る:
a)ラジカル重合(通常は高圧下及び高温において)。
b)通常、周期表のIVb、Vb、VIb又はVIII群の金属の一つ又はそれ以上を含む触媒を使用した触媒重合。これらの金属は通常、一つ又はそれ以上の配位子、典型的にはπ−又はσ−配位し得るオキシド、ハロゲン化物、アルコレート、エステル、エーテル、アミン、アルキル、アルケニル及び/又はアリールを有する。これらの金属錯体は遊離形態であるか、又は基材に、典型的には活性化塩化マグネシウム、チタン(III)クロリド、アルミナ又は酸化ケイ素に固定され得る。これらの触媒は、重合媒体中に可溶又は不溶であり得る。該触媒は重合においてそのまま使用され得るか、又は他の活性化剤、典型的には金属アルキル、金属ヒドリド、金属アルキルハライド、金属アルキルオキシド又は金属アルキルオキサンであって、該金属が周期表のIa、IIa及び/又はIIIa群の元素であるものが使用され得る。活性化剤は、他のエステル、エーテル、アミン又はシリルエーテル基で都合良く変性され得る。これらの触媒系は通常、フィリップス(Phillips)、スタンダード・オイル・インディアナ(Standard Oil Indiana)、チグラー(Ziegler)(−ナッタ(Natta))、TNZ(デュポン社)、メタロセン又はシングルサイト触媒(SSC)と命名される。
【0038】
2.1)で言及されたポリマーの混合物、例えばポリプロピレンとポリイソブチレンの混合物、ポリプロピレンとポリエチレン(例えば、PP/HDPE、PP/LDPE)の混合物、及び異なる型のポリエチレンの混合物(例えば、LDPE/HDPE)。
【0039】
3.モノオレフィン及びジオレフィンの互いの又は他のビニルモノマーとのコポリマー、例えばエチレン/プロピレンコポリマー、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びその低密度ポリエチレン(LDPE)との混合物、プロピレン/ブテ−1−エンコポリマー、プロピレン/イソブチレンコポリマー、エチレン/ブテ−1−エンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、エチレン/メチルペンテンコポリマー、エチレン/ヘプテンコポリマー、エチレン/オクテンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキサンコポリマー、エチレン/シクロオレフィンコポリマー(例えば、エチレン/ノルボルネン様COC)、1−オレフィンが現場で生成されるエチレン/1−オレフィンコポリマー;プロピレン/ブタジエンコポリマー、イソブチレン/イソプレンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキセンコポリマー、エチレン/アルキルアクリレートコポリマー、エチレン/アルキルメタクリレートコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー又はエチレン/アクリル酸コポリマー及びそれらの塩(アイオノマー)並びにエチレンとプロピレン及びへキサジエン、ジシクロペンタジエン又はエチリデン−ノルボルネンのようなジエンとのターポリマー;及びそのようなコポリマーの互いの及び1)で上述したポリマーとの混合物、例えばポリプロピレン/エチレン−プロピレンコポリマー、LDPE/エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、LDPE/エチレン−アクリル酸コポリマー(EAA)、LLDPE/EVA、LLDPE/EAA及び交互又はランダムポリアルキレン/一酸化炭素コポリマー及びそれらの他のポリマー、例えばポリアミドとの混合物。
【0040】
4.スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの全ての異性体、とりわけp−ビニルトルエン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、及びビニルアントラセンの全ての異性体、及びそれらの混合物を含む芳香族ビニルモ
ノマーから誘導された芳香族ホモポリマー及びコポリマー。ホモポリマー及びコポリマーはシンジオタクチック、アイソタクチック、ヘミ−アイソタクチック又はアタクチックを含むいずれの立体構造をも有し;アタクチックポリマーが好ましい。ステレオブロックポリマーがまた含まれる。
【0041】
5.エチレン、プロピレン、ジエン、ニトリル、酸、マレイン酸無水物、マレイミド、酢酸ビニル及び塩化ビニル又はそのアクリル誘導体及びそれらの混合物から選択される上述された芳香族ビニルモノマー及びコモノマーを含むコポリマー、例えば、スチレン/ブタジエン、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/エチレン(共重合体)、スチレン/アルキルメタクリレート、スチレン/ブタジエン/アルキルアクリレート、スチレン/ブタジエン/アルキルメタクリレート、スチレン/マレイン酸無水物、スチレン/アクリロニトリル/メチルアクリレート;スチレンコポリマー及び他のポリマー、例えばポリアクリレート、ジエンポリマー又はエチレン/プロピレン/ジエンターポリマーの高耐衝撃性の混合物;及びスチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレン、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン又はスチレン/エチレン/プロピレン/スチレンのようなスチレンのブロックコポリマー。
【0042】
6.4.)で言及されたポリマーの水素化から誘導された水素化芳香族ポリマー、とりわけアタクチックポリスチレンを水素化することにより調製されるポリシクロヘキシルエチレン(PCHE)を含み、しばしばポリビニルシクロヘキサン(PVCH)として言及される。
【0043】
6a.5.)で言及されたポリマーの水素化から誘導された水素化芳香族ポリマー。
【0044】
ホモポリマー及びコポリマーはシンジオタクチック、アイソタクチック、ヘミ−アイソタクチック又はアタクチックを含むいずれの立体構造をも有し;アタクチックポリマーが好ましい。ステレオブロックポリマーがまた含まれる。
【0045】
7.スチレン又はα−メチルスチレンのような芳香族ビニルモノマーのグラフトコポリマー、例えばポリブタジエンにスチレン、ポリブタジエン−スチレン又はポリブタジエン−アクリロニトリルコポリマーにスチレン;ポリブタジエンにスチレン及びアクリロニトリル(又はメタクリロニトリル);ポリブタジエンにスチレン、アクリロニトリル及びメチルメタクリレート;ポリブタジエンにスチレン及びマレイン酸無水物;ポリブタジエンにスチレン、アクリロニトリル及びマレイン酸無水物又はマレイミド;ポリブタジエンにスチレン及びマレイミド;ポリブタジエンにスチレン及びアルキルアクリレート又はメタクリレート;エチレン/プロピレン/ジエンターポリマーにスチレン及びアクリロニトリル;ポリアルキルアクリレート又はポリアルキルメタクリレートにスチレン及びアクリロニトリル;アクリレート/ブタジエンコポリマーにスチレン及びアクリロニトリル、並びにそれらの6)に列挙されたコポリマーとの混合物、例えばABS、MBS、ASA又はAESポリマーとして既知であるコポリマー混合物。
【0046】
8.ポリクロロプレン、塩化ゴム、イソブチレン−イソプレンの塩化及び臭化コポリマー(ハロブチルゴム)、塩化又はスルホ塩化ポリエチレン、エチレン及び塩化エチレンのコポリマー、エピクロロヒドリンホモ−及びコポリマー、とりわけハロゲン含有ビニル化合物のポリマー、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン並びに塩化ビニル/塩化ビニリデン、塩化ビニル/酢酸ビニル又は塩化ビニリデン/酢酸ビニルコポリマーのようなそれらのコポリマーのようなハロゲン含有ポリマー。
【0047】
9.α,β−不飽和酸から誘導されたポリマー及びポリアクリレート及びポリメタクリ
レートのようなその誘導体;ブチルアクリレートで耐衝撃改善されたポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド及びポリアクリロニトリル。
【0048】
10.9)で言及されたモノマーの互いの又は他の不飽和モノマーとのコポリマー、例えばアクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、アクリロニトリル/アルキルアクリレートコポリマー、アクリロニトリル/アルコキシアルキルアクリレート又はアクリロニトリル/ビニルハライドコポリマー又はアクリロニトリル/アルキルメタクリレート/ブタジエンターポリマー。
【0049】
11.不飽和アルコール及びアミンから誘導されたポリマー又はそれらのアシル誘導体又はアセタール、例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルステアレート、ポリビニルベンゾエート、ポリビニルマレエート、ポリビニルブチラール、ポリアリルフタレート又はポリアリルメラミン;並びに上の1)で言及されたオレフィンとそれらのコポリマー。
【0050】
12.ポリアルキレングリコール、ボリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド又はビスグリシジルエーテルとそれらのコポリマーのような環状エーテルのホモポリマー及びコポリマー。
【0051】
13.ポリオキシメチレンのようなポリアセタール及びコモノマーとしてエチレンオキシドを含むポリオキシメチレン;熱可塑性ポリウレタン、アクリレートまたはMBSで変性されたポリアセタール。
【0052】
14.ポリフェニレンオキシド及びスルフィド、及びポリフェニレンオキシドとスチレンポリマー又はポリアミドとの混合物。
【0053】
15.一方はヒドロキシル末端化されたポリエーテル、ポリエステル及びポリブタジエンと、他方は脂肪族又は芳香族のポリイソシアナートから誘導されたポリウレタン、並びにそれらの前駆体。
【0054】
16.ジアミシとジカルボン酸から及び/又はアミノカルボン酸又は対応するラクタムから誘導されたポリアミド及びコポリアミド、例えばポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド6/6、6/10、6/9、6/12、4/6、12/12、ポリアミド11、ポリアミド12、m−キシレンジアミン及びアジピン酸から開始した芳香族ポリアミド;へキサメチレンジアミン及びイソフタル酸及び/又はテレフタル酸から及び変性剤としてのエラストマーを用いて又は用いずに調製されたポリアミド、例えばポリ−2,4,4−トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド又はポリ−m−フェニレンイソフタルアミド:及び上述されたポリアミドとポリオレフィン、オレフィンコポリマー、アイオノマー又は化学的に結合されたか又はグラフトされたエラストマーとのブロックコポリマー;又は例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコールのようなポリエーテルとのブロックコポリマー;並びにEPDM又はABSで変性されたポリアミド又はコポリアミド;及び加工の間に縮合されたポリアミド(RIMポリアミド系)。
【0055】
17.ポリ尿素、ポリイミド、ボリアミド−イミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリヒダントイン及びポリベンズイミダゾール。
【0056】
18.ジカルボン酸とジオールから及び/又はヒドロキシカルボン酸又は対応するラクトンから誘導されたポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチロールシクロヘキサンテレフタレート、ポリアルキ
レンナフタレート(PAN)及びポリヒドロキシベンゾエート、並びにヒドロキシル末端ポリエーテルから誘導されたブロックポリエーテルエステル;及びまたポリカーボネート又はMBSで変性されたポリエステル。
【0057】
19.ポリカーボネート及びポリエステルカーボネート。
【0058】
20.ポリケトン。
【0059】
21.ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルケトン。
【0060】
22.フェノール/ホルムアルデヒド樹脂、尿素/ホルムアルデヒド樹脂及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂のような、1方ではアルデヒドから、他方ではフェノール、尿素及びメラミンから誘導された架橋ポリマー。
【0061】
23.前述のポリマーのブレンド(ポリブレンド)、例えばPP/EPDM、ポリアミド/EPDM又はABS、PVC/EVA、PVC/ABS、PVC/MBS、PC/ABS、PBTP/ABS、PC/ASA、PC/PBT、PVC/CPE、PVC/アクリレート、POM/熱可塑性PUR、PC/熱可塑性PUR、POM/アクリレート、POM/MBS、PPO/HIPS、PPO/PA6.6及びコポリマー、PA/HDPE、PA/PP、PA/PPO、PBT/PC/ABS又はPBT/PET/PC。
【0062】
目的のために特に有用なポリマーフィルム物質は、ポリエチレンスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレン(PEN)ポリアミド及びポリイミドを含む。
【0063】
適切な場合において、電極それ自体は、基材として機能し得る。最終的に、太陽電池の全ての要素は、回収した電気エネルギーを利用するために、最新技術に従って外部電子回路に接続され得る。
【0064】
太陽電池の製造は、一般に、i−層として使用されるシリコンフィルムを本発明の感光層に置き換え、技術的に既知の方法(例えば、欧州特許出願公開第729190号明細書又は欧州特許出願公開第831536号明細書に記載の方法及び材料参照。)に従って行われ得る。本発明のナノ構造を含む主要な感光層は、蒸着、PVD、CVD、プラズマ強化CVD、スプッタリング、沈殿、スピンコーティング、ドロップコーティング等の当該技術において既知の技術に従って得ることができる。使用される技術は、最終結果のための決定因子ではない;ナノ粒子又はナノ構造が最終的な装置に存在することが重要であり、様々な製品への中間段階はもっぱら重要ではない。
【0065】
本発明の一つの態様を以下の実施例に記載する。
【実施例】
【0066】
三角形の銀金属ナノプレートレットを、V.Bastys et al.,Advanced Functional Materials 2006,16,766−773に記載された方法に従って製造した;キセノンランプを、光源として使用し、所望の光配放射線(photodirecting radiation)を選択するために最大透過率540nm、半値全幅77nmの帯域通過フィルターを使用した。照射は、反応媒体の色が藍色になるまで行い、抽出したアリコートのスペクトルは、図5のスペクトルに対応する。このようにして製造されたナノプレートレットは、約10nmの厚さを有した。
【0067】
銀ナノプレートレットを、水、エタノール及びアセトン中で遠心分離及び再分散の連続サイクルによって、過剰量の試薬を流し去った。対象表面の約半分を覆うために十分なナノプレートレットを含むエタノール分散液を、チョクラルスキー(CZ)(100)n−型 1−Ω・cm 500−μm−厚の研磨されたシリコンウェハ(0.5% 希フッ化水素酸中で予めエッチングしたc−Siウェハ)上にドロップコーティングした。Agナノプレートレットのコーティング後、溶媒を蒸発させて除去した。
【0068】
その後、Ag−ナノプレートレット−コーティングn−型c−Siウェハに、Centurioni et al.,Transactions on Electron Devices 2004,51,1818−1824に記載される方法に従い、PECVDによって、太陽電池の他の成分層を上下重ね合わせることにより本発明の実施例1を得た。1×1cmの太陽電池を、Ag/ITO/pa−Si:H/ナノプレートレット/n
c−Si/n+μc−Si/Alを使用してつくった。p a−Si:Hとn c−Siの間にいかなる緩衝層もない他の種類の電池を、同様の方法を使用して得、対照サンプル(比較例1)として試験した。c−Si基材はテクスチャ化されていない。
【0069】
サンプル全てのプラズマ周波数は、13.56MHzであった。Ag前面グリッド及びAl背面コンタクトを蒸発させた。インジウムスズ酸化物(ITO)フィルムを、250℃、超高純度Ar雰囲気下 0.021ミリバールにおいて、出力0.5W/cm2でのRF(13.56MHz)マグネトロンスプッタリングによって蒸着させた。p−層の電気特性は以下の通りである(コーニングガラス上に蒸着させた場合):暗伝導率 2×10-3S/cm及び活性化エネルギー 0.25eV。接触抵抗を減少させ、かつ光生成担体のための裏面電界(BSF)を形成するために、50−nm n+ mc−Si層を、装置の表面近辺上に、低温にて、PECVDにより蒸着させた。a−Si:H層の厚さは7nmである。照射下における太陽電池電流密度−電圧(J−V)特性を、100mW/cm AM1.5G放射照度において測定した。
【0070】
光電子測定の結果を表1にまとめる。
【表1】

上記表において、
oc=開回路電圧。
sc=短回路電流。
FF=充填率。
η=光電効率(全太陽光スペクトルにわたる)。
QEλ=λnmにおける外部量子効率(照射光子当りの測定された電流)。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明の太陽電池構造対象物全体の概略図を示す。
【図2】図2は、主要な感光層におけるナノ粒子又はナノ構造の一つの態様を示す。
【図3】図3は、主要な感光層におけるナノ粒子又はナノ構造の他の態様を示す。
【図4】図4は、主要な感光層におけるナノ粒子又はナノ構造の更なる態様を示す。
【図5】図5は、実施例において抽出したアリコートのスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子又はナノ構造を含む感光層を少なくとも1つ含み、かつ、更に、各感光層当り、前記感光層の各々の側に置かれた、少なくとも1つの、n−ドープされた電荷輸送層及び少なくとも1つの、p−ドープされた電荷輸送層を含む太陽電池であって、
前記ナノ粒子又はナノ構造は、前記感光層における主要な光吸収要素であり、
前記ナノ粒子又はナノ構造は、金属伝導性を示し、かつ、表面プラズモン又はポーラロン機構を通じて近赤外線、可視光線及び/又は紫外線を吸収し、
前記ナノ粒子又はナノ構造は、その寸法の少なくとも1つが、0.1ないし500nmのサイズを有し、
全ての層からの前記ナノ粒子又はナノ構造の少なくとも50質量%が、前記感光層に含まれることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
感光層が、1800nmないし300nmの太陽光スペクトルにわたり、光量の50%より多く、好ましくは、実質的に全ての光を吸収する、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
1ないし100の感光層を含む、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
少なくとも1つの感光層のナノ粒子又はナノ構造は、その寸法の少なくとも1つ、好ましくは全てが、0.1ないし200nm、特に1ないし80nmのサイズを有する、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
少なくとも1つの主要な感光層のナノ粒子又はナノ構造が、貴金属;金属伝導性の酸化物;青銅;金属窒化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属ホウ化物、金属ケイ化物;金属元素1つ以上と第III主族ないし第IV主族の元素1つ以上との化合物又は合金からつくられる、特に、銅、銀、金又は対応する合金からつくられる、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
異なる平均寸法及び/又は異なる組成のナノ粒子又はナノ構造を2種以上含む、請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項7】
ポリマーフィルム基材をベースとするフレキシブル電池である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項8】
少なくとも60質量%のナノ粒子又はナノ構造が、100Ωcm未満の抵抗率を有する、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項9】
p−ドープされた電荷輸送層が、p−型の非晶質シリコン、非晶質シリコンカーバイド、微結晶シリコン、微結晶シリコンカーバイド又は炭素含有微結晶シリコン、様々な炭素含有量を有する非晶質シリコンカーバイドの多層フィルム及び非晶質シリコンと非晶質炭素の多層フィルムから選択された物質を含み;及び/又は、n−ドープされた電荷輸送層が、n−型の微結晶シリコン、結晶シリコン、炭素含有微結晶シリコン、微結晶シリコンカーバイド、非晶質シリコン、非晶質シリコンカーバイド及び非晶質シリコンゲルマニウムから選択された物質を含み、及び/又は電荷輸送層がワイドバンドギャップ半導体から選択される、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項10】
太陽電池の製造方法であって、該方法は、金属伝導性を示し、表面プラズモン又はポーラロン機構を通じて近赤外線、可視光線及び/又は紫外線を吸収し、かつその寸法の少なくとも1つが0.1ないし500nmのサイズを有するナノ粒子又はナノ構造、特に、異なる平均寸法及び/又は異なる組成を有する2種以上のものから選択されたナノ粒子又は
ナノ構造を、n−ドープされた電荷輸送層及びp−ドープされた電荷輸送層(ここで、前記電荷輸送層は、前記ナノ粒子又はナノ構造をほとんど又は全く含まない。)の間に位置する感光層において濃縮する工程を含む方法。
【請求項11】
太陽電池において、1800nmないし300nmの太陽光スペクトルの光量の50%より多くを吸収するための、異なる平均寸法及び/又は異なる組成を有する2種以上のナノ粒子又はナノ構造の使用であって、該ナノ粒子又はナノ構造は、金属伝導性を示すこと、表面プラズモン又はポーラロン機構を通じて近赤外線、可視光線及び/又は紫外線を吸収すること、及び、その寸法の少なくとも1つが、0.1ないし500nmのサイズ範囲を有することを特徴とするところの使用。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−533857(P2009−533857A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504718(P2009−504718)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053454
【国際公開番号】WO2007/118815
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】