媒体循環設備の流動層炉
【課題】流動層炉内部の流動媒体の温度を均一化することによって流動媒体の熱を効果的に利用できるようにした流動層炉を提供する。
【解決手段】媒体流下管9により流動層炉3の一側に供給した流動媒体が他側のダクト5に向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る媒体停滞部に、媒体流下管9に近い側の一端と遠い側の他端とが開口15,16して流動層炉3の底部をトンネル状に覆う媒体誘導路17を仕切板18により形成する。
【解決手段】媒体流下管9により流動層炉3の一側に供給した流動媒体が他側のダクト5に向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る媒体停滞部に、媒体流下管9に近い側の一端と遠い側の他端とが開口15,16して流動層炉3の底部をトンネル状に覆う媒体誘導路17を仕切板18により形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物や廃棄物の固形化燃料(RDF、RPF)、或いは石炭等の燃料を燃焼炉により燃焼させ、生成する高温の流動媒体を外部の流動層炉に外部循環して流動媒体の熱を効果的に利用できるようにした媒体循環設備の流動層炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より燃焼炉の流動媒体を外部の流動層炉に外部循環させる媒体循環設備としては、循環流動層ボイラが提案されている(例えば、特許文献1参照)。図8は、特許文献1の循環流動層ボイラの構成を示したもので、燃焼炉1と、該燃焼炉1内での燃焼により発生した排ガスを導いて該排ガス中に含まれる粒子(流動媒体)を捕集するための媒体分離装置2(サイクロン)と、該媒体分離装置2で補集した粒子を導入して熱交換するボイラ装置3Aとしての流動層炉3と、該流動層炉3の内部において前記流動媒体と熱交換を行う蒸気伝熱管4と、流動層炉3内の流動媒体を前記燃焼炉1に戻すダクト5とを備えている。
【0003】
燃焼炉1は、水冷の炉壁により形成されており、燃焼炉1の底部には、流動用空気Aを炉内に導入し、砂や灰、または石灰石等からなるベッド材と共に流動化させる流動用空気分散ノズル6が設けられ、流動用空気分散ノズル6上に形成される流動層によって燃料7を燃焼するようにしている。媒体分離装置2は、前記燃焼炉1の上部と接続されており、媒体分離装置2の上部には、流動媒体を分離した後の排ガスを導出する後部伝熱部8が接続されており、また、媒体分離装置2の下部には補集した流動媒体を前記流動層炉3に導く媒体流下管9が接続されている。後部伝熱部8には、排ガスの熱回収を行うための伝熱部が設けられている。
【0004】
流動層炉3の底部には、流動用空気Aを分散板10から上方へ導入して流動層21を形成するためのウィンドボックス11が形成されており、前記流動層炉3の前記媒体流下管9の下部には仕切板12aにより流動媒体の未燃分を積極的に燃焼させる燃焼室12が形成されており、該燃焼室12の側部には燃焼によって温度が高められた流動媒体を導入して蒸気伝熱管4により熱回収を行うようにした熱交換室13が形成されている。前記燃焼室12で流動媒体中の未燃分を燃焼させた際の排ガスは、上部に設けた腐食性ガスダクト14から燃焼炉1に導くようにしている。
【0005】
上記図8の循環流動層ボイラにおいては、燃焼炉1内で流動用空気Aと燃料7を、砂や灰、または石灰石等からなるベッド材と共に流動化させながら燃焼させ、水冷の炉壁により不図示の発電用蒸気タービン等に供給する蒸気を発生させる。一方、燃焼炉1内の燃焼により発生した排ガスによって吹き上げられた粒子(流動媒体)は媒体分離装置2で補集され、媒体流下管9により流動層炉3へ導入される。そして、流動層炉3に導入された流動媒体は、流動用空気Aによりバブリングされ、流動層21により蒸気伝熱管4との熱交換により蒸気を加熱することにより抜熱された後、ダクト5を介して燃焼炉1の底部に戻されて循環する。
【0006】
また、前記図8の如く蒸気伝熱管4を備えたボイラ装置3Aからなる流動層炉3に代えて、図13に示す如く、原料供給口19と生成ガス取出口20とを備えたガス化装置3Bからなる流動層炉3も提案されている。この流動層炉3では、原料供給口19からガス化装置3B内部に石炭、バイオマス等の原料を供給すると共に、分散板10から前記原料の分解を促進するための例えば蒸気B等の分解促進ガスを供給して流動層21を形成し、高温の流動媒体との接触により原料のガス化を行い、生成したガス化ガスを生成ガス取出口20から外部に導出して、種々の燃焼用燃料、水素燃料電池発電用燃料、ガス合成システムの原料ガス等として利用される。尚、図13のガス化装置3Bの場合には、ガス化燃料のガス化時に生じたチャーが燃焼炉1に循環して燃焼することにより熱源となるため、燃焼炉1には起動時のみ起動用燃料7’(都市ガス、灯油等)のみを供給すればよい。
【特許文献1】特開2003−207115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記図8に示した循環流動層ボイラは、媒体分離装置2で分離した流動媒体を媒体流下管9によりボイラ装置3Aである流動層炉3の長手方向一側(図8では右側)に供給し、該流動層炉3に供給した流動媒体を流動層21のバブリングにより流動させながら流動層炉3の他側(図8では左側)の1つのダクト5に導く間において、熱交換室13の蒸気伝熱管4によって流動媒体から熱回収する構成を有しており、前記媒体流下管9から流動層炉3内に供給された流動媒体が1つのダクト5に向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る媒体停滞部を生じる問題がある。
【0008】
例えば、図9、図10は、平面形状が長方形を有している流動層炉3の長手方向一側に媒体流下管9が配置され、流動層炉3の長手方向他側の側壁面3aにダクト5が配置された場合を示したものであるが、この構成においては、媒体流下管9から流動層炉3に供給された流動媒体は、流動用空気Aにより流動しながらダクト5に向かって移動する際に、媒体流下管9とダクト5を結ぶ最短距離に沿って直線的に移動しようとする傾向を示す。このため、図10にハッチングを付して示したように、平面的に見て流動層炉3の長手方向に対してダクト5と反対側の部位には、流動媒体の横方向(水平方向)への移動が滞った状態になる媒体停滞部Xが生じる。
【0009】
また、図11、図12は、平面形状が長方形を有する流動層炉3の長手方向一側に媒体流下管9が配置され、流動層炉3の長手方向他側の端部壁面3bにダクト5が配置された場合を示したものであるが、この構成においては、媒体流下管9から流動層炉3に供給された流動媒体は、流動用空気Aにより流動しながらダクト5に向かって移動する際に、媒体流下管9とダクト5を結ぶ最短距離である流動層炉3の幅方向中心を直線的に移動しようとする傾向を示す。このため、図12にハッチングを付して示したように、平面的に見て流動層炉3の幅方向両側に、流動媒体の水平方向への移動が滞った状態になる媒体停滞部Xが生じる。
【0010】
本発明者らは、観察し易いように着色砂を混合した砂を用意し、前記図9、図10に示した従来装置と、図11、図12に示した従来装置において、媒体流下管9から前記砂を流動層炉3に供給し、流動層21を形成して砂がダクト5に供給される状態にして、流動層21の形成状態とダクト5への砂の流れの状態を観察する実験を実施した。その結果、従来装置においては図10及び図12に示した如く、砂の水平方向への移動が滞った状態になる媒体停滞部Xが発生することが明らかに観察された。
【0011】
上記したように、流動層炉3の内部に、流動媒体の水平方向への移動が滞る媒体停滞部Xが生じると、該媒体停滞部Xの流動媒体はウィンドボックス11からの流動用空気A(図8参照)に晒される時間が長くなって冷却が進むために流動層炉3内部の流動媒体に大きな温度差が生じることになる。また、前記媒体停滞部Xによって未燃分の燃焼も不均一に行われることになるため燃焼効率も低下する。従って、流動層炉3内の流動層21の温度が不均一且つ低下することになるために、ボイラ装置3Aの蒸気伝熱管4による熱交換効率が低下し、よって蒸気伝熱管4による蒸気の取り出し温度が低下するという問題がある。
【0012】
また、図13に示したように、ガス化する原料を供給するための原料供給口19と生成ガス取出口20を備え、且つ分散板10から蒸気B等を供給して流動層21を形成することにより原料のガス化を行うようにしたガス化装置3Bによる流動層炉3においても、前記図10及び図12と同様に、流動媒体の水平方向への移動が滞った状態になる媒体停滞部Xの問題が生じ、この媒体停滞部Xのためにガス化装置3B内部でのガス化反応が不均一になり、ガス化効率が悪化するという問題がある。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決しようとしてなしたもので、流動層炉内の流動媒体の流動が停滞するのを防止して流動層炉内部の温度を均一化するようにした媒体循環設備の流動層炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、請求項1に記載の如く、燃焼炉の排ガスを媒体分離装置に導いて流動媒体を分離し、分離した流動媒体を媒体流下管により流動層炉の一側に供給して流動媒体による流動層を形成し、流動層炉内の流動媒体を該流動層炉の他側に設けたダクトにより前記燃焼炉に戻すようにしている媒体循環設備の前記流動層炉であって、前記媒体流下管により流動層炉の一側に供給した流動媒体が他側のダクトに向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る媒体停滞部に、媒体流下管に近い側の一端と遠い側の他端とが開口して流動層炉の底部をトンネル状に覆う媒体誘導路を仕切板により形成したことを特徴とする媒体循環設備の流動層炉、に係るものである。
【0015】
また、前記流動層炉が、流動媒体により蒸気伝熱管を加熱するボイラ装置であることを特徴とする請求項1記載の媒体循環設備の流動層炉、に係るものである。
【0016】
また、前記流動層炉が、原料供給口と生成ガス取出口とを備え流動媒体により原料のガス化を行うガス化装置であることを特徴とする請求項1記載の媒体循環設備の流動層炉、に係るものである。
【0017】
また、前記媒体誘導路を形成する仕切板は、上板が媒体流下管に近い側の一端の高さに対して遠い側の他端の高さを高くしてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の媒体循環設備の流動層炉、に係るものである。
【0018】
また、前記媒体誘導路を形成する仕切板は、上板が幅方向一側を流動層炉内部に向けて下り勾配に形成した傾斜板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の媒体循環設備の流動層炉、に係るものである。
【0019】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0020】
上記した如く、媒体流下管から流動層炉内の一側に供給された流動媒体が他側のダクトに向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る状態になる媒体停滞部に、媒体流下管に近い側の一端と遠い側の他端とが開口して流動層炉の底部をトンネル状に覆う媒体誘導路を仕切板により形成しているので、この媒体誘導路の内部は流動用空気によって流動媒体の流動が促進され、よって、媒体流下管から供給された流動媒体は、媒体誘導路の一端側の開口から他端側の開口に向けて積極的に送られるようになり、これにより、流動層炉内に流動媒体の水平方向移動の媒体停滞部が生じる問題を解消できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の媒体循環設備の流動層炉によれば、流動層炉内に生じる流動媒体の水平方向移動が滞る媒体停滞部に、仕切板による媒体誘導路を形成して流動媒体の流動を促進させるようにしたので、流動層炉内に流動媒体の水平方向移動の媒体停滞部が生じる問題を防止して、流動層炉内の流動層の温度を略均一に保持できる効果がある。
【0022】
従って、前記流動層炉が蒸気伝熱管を備えたボイラ装置の場合には、流動層炉内部に流動媒体を略均一に流動させて未燃分を燃焼できるので、流動層炉内部の温度を略均一且つ高温に保持して、蒸気伝熱管による蒸気の取り出し温度を効果的に高められる効果がある。
【0023】
また、前記流動層炉が原料供給口と生成ガス取出口とを備えたガス化装置の場合には、流動層炉内の流動層の温度が略均一に保持されることにより、原料のガス化反応が促進されてガス化効率が向上する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1〜図3は、前記図8〜図10のボイラ装置3Aとしての流動層炉3に適用した本発明の形態例を示したものであり、図中図8〜図10と同一のものには同じ符号を付して説明を省略し、本発明の特徴部分についてのみ詳細に説明する。
【0026】
図1〜図3では、前記図10に示したように、媒体流下管9によって流動層炉3内の一側に供給された流動媒体が他側のダクト5に向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る状態になる媒体停滞部Xに、媒体流下管9に近い側の一端の開口15と遠い側の他端の開口16とを有して流動層炉3の底部をトンネル状に覆うようにした上板18aと側板18bとからなる仕切板18により媒体誘導路17を形成している。
【0027】
図2では前記媒体誘導路17は矩形断面を有しており、該媒体誘導路17の高さは、流動層炉3の底部に対して所要の間隔を隔てて設けられている媒体流下管9の下端の位置よりも低く形成している。
【0028】
蒸気伝熱管4は、前記流動層炉3の平面の略全面に行き渡るように配置しており、図2では蒸気伝熱管4は1段のみ設けているが、任意の段数で設けることができる。
【0029】
前記仕切板18の上板18aは、図2に二点鎖線で示すように、幅方向一側を流動層炉3内部に向けて下り勾配になるように傾けて形成した傾斜板18a’とすることができ、この傾斜板18a’の構成によれば、流動媒体が仕切板18上に貯留(堆積)するのを防止することができる。
【0030】
また、前記媒体誘導路17を形成する仕切板18は、図4に示す如く、上板18aが媒体流下管9に近い側の一端(開口15側)の高さに対して遠い側の他端(開口16側)の高さが高くなるように長手方向に傾斜した上板18a”によって形成することができる。
【0031】
次に、上記図1〜図4に示す形態の作用を説明する。
【0032】
図10に示したように、流動層炉3内の一側に設けた媒体流下管9によって供給した流動媒体が他側に設けたダクト5に向かって流動する途中において、流動媒体の水平方向移動が滞った状態となる媒体停滞部Xに対して、図1〜図3に示すように、媒体流下管9に近い側の一端と遠い側の他端とが開口15,16して流動層炉3の底部をトンネル状に覆う媒体誘導路17を仕切板18によって形成したので、ウィンドボックス11からの流動用空気Aによる流動媒体の流動は、媒体誘導路17外部よりも媒体誘導路17の内部の方が促進されることになる。また、媒体流下管9からは流動媒体が次々に押し出されており、従って流動媒体は媒体誘導路17の一端側の開口15から媒体誘導路17内に押し込まれるように作用するが、媒体誘導路17の内部は流動が促進されていて流動媒体が移動し易いために、流動媒体は他端側の開口16に向けて容易に移動されるようになる。従って、これにより、流動層炉3の内部に流動媒体の水平方向移動の媒体停滞部Xが生じる問題は解消され、流動媒体は流動層炉3内部を略均一に流動するようになる。
【0033】
本発明者らが、前記従来装置と同様に着色砂を混合した砂を用いて、図1〜図3の装置において流動層の形成状態とダクト5への砂の流れの状態を観察する実験を実施したところ、砂は媒体誘導路17の内部を通して効果的に流動するようになり、これによって、流動層炉3の内部に流動媒体の水平方向移動の媒体停滞部Xが生じる問題を効果的に解消することができた。
【0034】
また、このとき、図4に示したように、前記媒体誘導路17を形成する仕切板18の上板18aを、媒体流下管9に近い側の一端の開口15の高さに対して遠い側の他端の開口16の高さが高くなるように長手方向に傾斜した上板18a”で形成すると、一端側の開口15から他端側の開口16に向けて流動媒体が流動する移動効果が更に高められるようになる。
【0035】
また、前記仕切板18の上板18aを、図2に二点鎖線で示すように、幅方向一側を流動層炉3内部に向けて下り勾配になるように形成した傾斜板18a’とすると、仕切板18上に流動媒体が貯留(堆積)する問題を防止することができる。
【0036】
上記したように、流動層炉3の内部に媒体誘導路17を設けて、流動層炉3内部に流動媒体の水平方向移動の媒体停滞部Xが生じる問題を防止したので、流動媒体が流動層炉3内部を略均一に流動するようになり、よって流動層炉内の流動層の温度が略均一に保持され、且つ未燃分の燃焼も均一に行われるようになるので、ボイラ装置3Aによる流動層炉3では、蒸気伝熱管4による熱交換効率を向上し、蒸気伝熱管4による蒸気の取り出し温度を効果的に高めることができる。
【0037】
図5は、前記図11、図12の流動層炉3に適用した本発明の他の形態例を示したものであり、図中図8〜図10と同一のものには同じ符号を付して説明を省略し、本発明の特徴部分についてのみ詳細に説明する。
【0038】
図5の形態では、前記図12に示したように、媒体流下管9によって流動層炉3内の一側に供給された流動媒体が他側のダクト5に向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る状態になる流動層炉3の幅方向両側の媒体停滞部Xに対して、媒体流下管9に近い側の一端の開口15と遠い側の他端の開口16とを有して流動層炉3の底部をトンネル状に覆う媒体誘導路17を仕切板18によって形成している。
【0039】
図5の形態においても、前記仕切板18の上板18aは図2に二点鎖線で示すように、幅方向一側を流動層炉3内部に向けて下り勾配に形成した傾斜板18a’としてもよく、また、前記媒体誘導路17を形成する仕切板18の上板18aは、図4に示したように、媒体流下管9に近い側の一端の開口15の高さに対して遠い側の他端の開口16の高さが高くなるように長手方向に傾斜した上板18a”としてもよい。
【0040】
図5の形態によれば、前記図1〜図3の形態の場合と同様に、媒体誘導路17により流動層炉3内部の幅方向両側に流動媒体の水平方向移動の媒体停滞部X(図12参照)が生じる問題を効果的に解消することができる。
【0041】
本発明者らが、前記従来装置と同様に着色砂を混合した砂を用いて、図5の装置において流動層の形成状態とダクト5への砂の流れの状態を観察する実験を実施したところ、砂は両側の媒体誘導路17の内部を通して効果的に流動するようになり、これによって、流動層炉3の内部に流動媒体の水平方向移動の媒体停滞部Xが生じる問題を防止することができた。
【0042】
上記したように、図5の形態においても、流動媒体が流動層炉3内部に略均一に流動するようになり、蒸気伝熱管4による熱交換効率を向上することができるので、ボイラ装置3Aによる蒸気伝熱管4における蒸気の取り出し温度を効果的に高めることができる。
【0043】
図6、図7は、前記図13に示したガス化装置3Bによる流動層炉3に適用した本発明の他の形態例を示したものである。図6、図7のガス化装置3Bによる流動層炉3は、石炭、バイオマス等の原料を供給するための媒体流下管9に近い側に設けた原料供給管19と、ガス化ガスを取り出すようにダクト5に近い側に設けたガス取出管20とを備えており、ガス化装置3B下部の分散板10からは例えば原料の分解を促進するための蒸気B等の分解促進ガスを供給して流動層21を形成するようにしている。
【0044】
図6、図7の形態では、前記図10に示したように、媒体流下管9によって流動層炉3内の一側に供給された流動媒体が他側のダクト5に向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る状態になる流動層炉3の幅方向両側の媒体停滞部Xに、媒体流下管9に近い側の一端の開口15と遠い側の他端の開口16とを有して流動層炉3の底部をトンネル状に覆う媒体誘導路17を仕切板18によって形成している。
【0045】
また、この時、前記図12に示したように、流動層炉3の形態によって幅方向両側に媒体停滞部Xが生じる場合には、図5と同様に幅方向両側の媒体停滞部Xに対して仕切板18により媒体誘導路17を形成することができる。
【0046】
図6、図7の形態によれば、前記媒体誘導路17によって流動層炉3内部に流動媒体が略均一に流動するようになるので、原料供給口19からガス化装置3B内部に供給された石炭、バイオマス等の原料は、蒸気B等の分解促進ガスと共に流動層21にて均一に加熱されることにより分解させられ、生成したガス化ガスは生成ガス取出口20から外部に導出されて、使用目的場所に供給される。この時、前記媒体誘導路17の設置によってガス化装置3B内の流動層21の温度が略均一に保持されるので、原料のガス化反応を促進させてガス化効率を向上させることができる。
【0047】
尚、本発明の媒体循環設備の流動層炉は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、前記媒体誘導路は、流動層炉内部に生じる可能性がある媒体停滞部に対して、媒体流下管に近い側の一端の開口と遠い側の他端の開口とを有して流動媒体を移動させたい方向に沿って設けるようにすればよく、従って媒体誘導路の長さ、形状には限定されないこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明を実施する形態の一例であるボイラ装置としての流動層炉の切断平面図である。
【図2】図1のII−II方向断面図である。
【図3】図1のIII−III方向断面図である。
【図4】図3の仕切板の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明を実施する他の形態例である流動層炉の切断平面図である。
【図6】本発明を実施する形態の一例であるガス化装置としての流動層炉の切断平面図である。
【図7】図6のVII−VII方向断面図である。
【図8】従来の循環流動層ボイラの全体略側面図である。
【図9】従来の流動層炉の一例を示す斜視図である。
【図10】図7の流動層炉の切断平面図である。
【図11】従来の流動層炉の他の例を示す斜視図である。
【図12】図9の流動層炉の切断平面図である。
【図13】従来の流動層炉の他の例を示したもので、原料供給口と生成ガス取出口とを有するガス化装置の場合の斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 燃焼炉
2 媒体分離装置
3 流動層炉
3A ボイラ装置
3B ガス化装置
4 蒸気伝熱管
5 ダクト
9 媒体流下管
15,16 開口
17 媒体誘導路
18 仕切板
18a’ 上板
18a” 上板
19 原料供給口
20 生成ガス取出口
X 媒体停滞部
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物や廃棄物の固形化燃料(RDF、RPF)、或いは石炭等の燃料を燃焼炉により燃焼させ、生成する高温の流動媒体を外部の流動層炉に外部循環して流動媒体の熱を効果的に利用できるようにした媒体循環設備の流動層炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より燃焼炉の流動媒体を外部の流動層炉に外部循環させる媒体循環設備としては、循環流動層ボイラが提案されている(例えば、特許文献1参照)。図8は、特許文献1の循環流動層ボイラの構成を示したもので、燃焼炉1と、該燃焼炉1内での燃焼により発生した排ガスを導いて該排ガス中に含まれる粒子(流動媒体)を捕集するための媒体分離装置2(サイクロン)と、該媒体分離装置2で補集した粒子を導入して熱交換するボイラ装置3Aとしての流動層炉3と、該流動層炉3の内部において前記流動媒体と熱交換を行う蒸気伝熱管4と、流動層炉3内の流動媒体を前記燃焼炉1に戻すダクト5とを備えている。
【0003】
燃焼炉1は、水冷の炉壁により形成されており、燃焼炉1の底部には、流動用空気Aを炉内に導入し、砂や灰、または石灰石等からなるベッド材と共に流動化させる流動用空気分散ノズル6が設けられ、流動用空気分散ノズル6上に形成される流動層によって燃料7を燃焼するようにしている。媒体分離装置2は、前記燃焼炉1の上部と接続されており、媒体分離装置2の上部には、流動媒体を分離した後の排ガスを導出する後部伝熱部8が接続されており、また、媒体分離装置2の下部には補集した流動媒体を前記流動層炉3に導く媒体流下管9が接続されている。後部伝熱部8には、排ガスの熱回収を行うための伝熱部が設けられている。
【0004】
流動層炉3の底部には、流動用空気Aを分散板10から上方へ導入して流動層21を形成するためのウィンドボックス11が形成されており、前記流動層炉3の前記媒体流下管9の下部には仕切板12aにより流動媒体の未燃分を積極的に燃焼させる燃焼室12が形成されており、該燃焼室12の側部には燃焼によって温度が高められた流動媒体を導入して蒸気伝熱管4により熱回収を行うようにした熱交換室13が形成されている。前記燃焼室12で流動媒体中の未燃分を燃焼させた際の排ガスは、上部に設けた腐食性ガスダクト14から燃焼炉1に導くようにしている。
【0005】
上記図8の循環流動層ボイラにおいては、燃焼炉1内で流動用空気Aと燃料7を、砂や灰、または石灰石等からなるベッド材と共に流動化させながら燃焼させ、水冷の炉壁により不図示の発電用蒸気タービン等に供給する蒸気を発生させる。一方、燃焼炉1内の燃焼により発生した排ガスによって吹き上げられた粒子(流動媒体)は媒体分離装置2で補集され、媒体流下管9により流動層炉3へ導入される。そして、流動層炉3に導入された流動媒体は、流動用空気Aによりバブリングされ、流動層21により蒸気伝熱管4との熱交換により蒸気を加熱することにより抜熱された後、ダクト5を介して燃焼炉1の底部に戻されて循環する。
【0006】
また、前記図8の如く蒸気伝熱管4を備えたボイラ装置3Aからなる流動層炉3に代えて、図13に示す如く、原料供給口19と生成ガス取出口20とを備えたガス化装置3Bからなる流動層炉3も提案されている。この流動層炉3では、原料供給口19からガス化装置3B内部に石炭、バイオマス等の原料を供給すると共に、分散板10から前記原料の分解を促進するための例えば蒸気B等の分解促進ガスを供給して流動層21を形成し、高温の流動媒体との接触により原料のガス化を行い、生成したガス化ガスを生成ガス取出口20から外部に導出して、種々の燃焼用燃料、水素燃料電池発電用燃料、ガス合成システムの原料ガス等として利用される。尚、図13のガス化装置3Bの場合には、ガス化燃料のガス化時に生じたチャーが燃焼炉1に循環して燃焼することにより熱源となるため、燃焼炉1には起動時のみ起動用燃料7’(都市ガス、灯油等)のみを供給すればよい。
【特許文献1】特開2003−207115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記図8に示した循環流動層ボイラは、媒体分離装置2で分離した流動媒体を媒体流下管9によりボイラ装置3Aである流動層炉3の長手方向一側(図8では右側)に供給し、該流動層炉3に供給した流動媒体を流動層21のバブリングにより流動させながら流動層炉3の他側(図8では左側)の1つのダクト5に導く間において、熱交換室13の蒸気伝熱管4によって流動媒体から熱回収する構成を有しており、前記媒体流下管9から流動層炉3内に供給された流動媒体が1つのダクト5に向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る媒体停滞部を生じる問題がある。
【0008】
例えば、図9、図10は、平面形状が長方形を有している流動層炉3の長手方向一側に媒体流下管9が配置され、流動層炉3の長手方向他側の側壁面3aにダクト5が配置された場合を示したものであるが、この構成においては、媒体流下管9から流動層炉3に供給された流動媒体は、流動用空気Aにより流動しながらダクト5に向かって移動する際に、媒体流下管9とダクト5を結ぶ最短距離に沿って直線的に移動しようとする傾向を示す。このため、図10にハッチングを付して示したように、平面的に見て流動層炉3の長手方向に対してダクト5と反対側の部位には、流動媒体の横方向(水平方向)への移動が滞った状態になる媒体停滞部Xが生じる。
【0009】
また、図11、図12は、平面形状が長方形を有する流動層炉3の長手方向一側に媒体流下管9が配置され、流動層炉3の長手方向他側の端部壁面3bにダクト5が配置された場合を示したものであるが、この構成においては、媒体流下管9から流動層炉3に供給された流動媒体は、流動用空気Aにより流動しながらダクト5に向かって移動する際に、媒体流下管9とダクト5を結ぶ最短距離である流動層炉3の幅方向中心を直線的に移動しようとする傾向を示す。このため、図12にハッチングを付して示したように、平面的に見て流動層炉3の幅方向両側に、流動媒体の水平方向への移動が滞った状態になる媒体停滞部Xが生じる。
【0010】
本発明者らは、観察し易いように着色砂を混合した砂を用意し、前記図9、図10に示した従来装置と、図11、図12に示した従来装置において、媒体流下管9から前記砂を流動層炉3に供給し、流動層21を形成して砂がダクト5に供給される状態にして、流動層21の形成状態とダクト5への砂の流れの状態を観察する実験を実施した。その結果、従来装置においては図10及び図12に示した如く、砂の水平方向への移動が滞った状態になる媒体停滞部Xが発生することが明らかに観察された。
【0011】
上記したように、流動層炉3の内部に、流動媒体の水平方向への移動が滞る媒体停滞部Xが生じると、該媒体停滞部Xの流動媒体はウィンドボックス11からの流動用空気A(図8参照)に晒される時間が長くなって冷却が進むために流動層炉3内部の流動媒体に大きな温度差が生じることになる。また、前記媒体停滞部Xによって未燃分の燃焼も不均一に行われることになるため燃焼効率も低下する。従って、流動層炉3内の流動層21の温度が不均一且つ低下することになるために、ボイラ装置3Aの蒸気伝熱管4による熱交換効率が低下し、よって蒸気伝熱管4による蒸気の取り出し温度が低下するという問題がある。
【0012】
また、図13に示したように、ガス化する原料を供給するための原料供給口19と生成ガス取出口20を備え、且つ分散板10から蒸気B等を供給して流動層21を形成することにより原料のガス化を行うようにしたガス化装置3Bによる流動層炉3においても、前記図10及び図12と同様に、流動媒体の水平方向への移動が滞った状態になる媒体停滞部Xの問題が生じ、この媒体停滞部Xのためにガス化装置3B内部でのガス化反応が不均一になり、ガス化効率が悪化するという問題がある。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決しようとしてなしたもので、流動層炉内の流動媒体の流動が停滞するのを防止して流動層炉内部の温度を均一化するようにした媒体循環設備の流動層炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、請求項1に記載の如く、燃焼炉の排ガスを媒体分離装置に導いて流動媒体を分離し、分離した流動媒体を媒体流下管により流動層炉の一側に供給して流動媒体による流動層を形成し、流動層炉内の流動媒体を該流動層炉の他側に設けたダクトにより前記燃焼炉に戻すようにしている媒体循環設備の前記流動層炉であって、前記媒体流下管により流動層炉の一側に供給した流動媒体が他側のダクトに向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る媒体停滞部に、媒体流下管に近い側の一端と遠い側の他端とが開口して流動層炉の底部をトンネル状に覆う媒体誘導路を仕切板により形成したことを特徴とする媒体循環設備の流動層炉、に係るものである。
【0015】
また、前記流動層炉が、流動媒体により蒸気伝熱管を加熱するボイラ装置であることを特徴とする請求項1記載の媒体循環設備の流動層炉、に係るものである。
【0016】
また、前記流動層炉が、原料供給口と生成ガス取出口とを備え流動媒体により原料のガス化を行うガス化装置であることを特徴とする請求項1記載の媒体循環設備の流動層炉、に係るものである。
【0017】
また、前記媒体誘導路を形成する仕切板は、上板が媒体流下管に近い側の一端の高さに対して遠い側の他端の高さを高くしてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の媒体循環設備の流動層炉、に係るものである。
【0018】
また、前記媒体誘導路を形成する仕切板は、上板が幅方向一側を流動層炉内部に向けて下り勾配に形成した傾斜板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の媒体循環設備の流動層炉、に係るものである。
【0019】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0020】
上記した如く、媒体流下管から流動層炉内の一側に供給された流動媒体が他側のダクトに向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る状態になる媒体停滞部に、媒体流下管に近い側の一端と遠い側の他端とが開口して流動層炉の底部をトンネル状に覆う媒体誘導路を仕切板により形成しているので、この媒体誘導路の内部は流動用空気によって流動媒体の流動が促進され、よって、媒体流下管から供給された流動媒体は、媒体誘導路の一端側の開口から他端側の開口に向けて積極的に送られるようになり、これにより、流動層炉内に流動媒体の水平方向移動の媒体停滞部が生じる問題を解消できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の媒体循環設備の流動層炉によれば、流動層炉内に生じる流動媒体の水平方向移動が滞る媒体停滞部に、仕切板による媒体誘導路を形成して流動媒体の流動を促進させるようにしたので、流動層炉内に流動媒体の水平方向移動の媒体停滞部が生じる問題を防止して、流動層炉内の流動層の温度を略均一に保持できる効果がある。
【0022】
従って、前記流動層炉が蒸気伝熱管を備えたボイラ装置の場合には、流動層炉内部に流動媒体を略均一に流動させて未燃分を燃焼できるので、流動層炉内部の温度を略均一且つ高温に保持して、蒸気伝熱管による蒸気の取り出し温度を効果的に高められる効果がある。
【0023】
また、前記流動層炉が原料供給口と生成ガス取出口とを備えたガス化装置の場合には、流動層炉内の流動層の温度が略均一に保持されることにより、原料のガス化反応が促進されてガス化効率が向上する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1〜図3は、前記図8〜図10のボイラ装置3Aとしての流動層炉3に適用した本発明の形態例を示したものであり、図中図8〜図10と同一のものには同じ符号を付して説明を省略し、本発明の特徴部分についてのみ詳細に説明する。
【0026】
図1〜図3では、前記図10に示したように、媒体流下管9によって流動層炉3内の一側に供給された流動媒体が他側のダクト5に向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る状態になる媒体停滞部Xに、媒体流下管9に近い側の一端の開口15と遠い側の他端の開口16とを有して流動層炉3の底部をトンネル状に覆うようにした上板18aと側板18bとからなる仕切板18により媒体誘導路17を形成している。
【0027】
図2では前記媒体誘導路17は矩形断面を有しており、該媒体誘導路17の高さは、流動層炉3の底部に対して所要の間隔を隔てて設けられている媒体流下管9の下端の位置よりも低く形成している。
【0028】
蒸気伝熱管4は、前記流動層炉3の平面の略全面に行き渡るように配置しており、図2では蒸気伝熱管4は1段のみ設けているが、任意の段数で設けることができる。
【0029】
前記仕切板18の上板18aは、図2に二点鎖線で示すように、幅方向一側を流動層炉3内部に向けて下り勾配になるように傾けて形成した傾斜板18a’とすることができ、この傾斜板18a’の構成によれば、流動媒体が仕切板18上に貯留(堆積)するのを防止することができる。
【0030】
また、前記媒体誘導路17を形成する仕切板18は、図4に示す如く、上板18aが媒体流下管9に近い側の一端(開口15側)の高さに対して遠い側の他端(開口16側)の高さが高くなるように長手方向に傾斜した上板18a”によって形成することができる。
【0031】
次に、上記図1〜図4に示す形態の作用を説明する。
【0032】
図10に示したように、流動層炉3内の一側に設けた媒体流下管9によって供給した流動媒体が他側に設けたダクト5に向かって流動する途中において、流動媒体の水平方向移動が滞った状態となる媒体停滞部Xに対して、図1〜図3に示すように、媒体流下管9に近い側の一端と遠い側の他端とが開口15,16して流動層炉3の底部をトンネル状に覆う媒体誘導路17を仕切板18によって形成したので、ウィンドボックス11からの流動用空気Aによる流動媒体の流動は、媒体誘導路17外部よりも媒体誘導路17の内部の方が促進されることになる。また、媒体流下管9からは流動媒体が次々に押し出されており、従って流動媒体は媒体誘導路17の一端側の開口15から媒体誘導路17内に押し込まれるように作用するが、媒体誘導路17の内部は流動が促進されていて流動媒体が移動し易いために、流動媒体は他端側の開口16に向けて容易に移動されるようになる。従って、これにより、流動層炉3の内部に流動媒体の水平方向移動の媒体停滞部Xが生じる問題は解消され、流動媒体は流動層炉3内部を略均一に流動するようになる。
【0033】
本発明者らが、前記従来装置と同様に着色砂を混合した砂を用いて、図1〜図3の装置において流動層の形成状態とダクト5への砂の流れの状態を観察する実験を実施したところ、砂は媒体誘導路17の内部を通して効果的に流動するようになり、これによって、流動層炉3の内部に流動媒体の水平方向移動の媒体停滞部Xが生じる問題を効果的に解消することができた。
【0034】
また、このとき、図4に示したように、前記媒体誘導路17を形成する仕切板18の上板18aを、媒体流下管9に近い側の一端の開口15の高さに対して遠い側の他端の開口16の高さが高くなるように長手方向に傾斜した上板18a”で形成すると、一端側の開口15から他端側の開口16に向けて流動媒体が流動する移動効果が更に高められるようになる。
【0035】
また、前記仕切板18の上板18aを、図2に二点鎖線で示すように、幅方向一側を流動層炉3内部に向けて下り勾配になるように形成した傾斜板18a’とすると、仕切板18上に流動媒体が貯留(堆積)する問題を防止することができる。
【0036】
上記したように、流動層炉3の内部に媒体誘導路17を設けて、流動層炉3内部に流動媒体の水平方向移動の媒体停滞部Xが生じる問題を防止したので、流動媒体が流動層炉3内部を略均一に流動するようになり、よって流動層炉内の流動層の温度が略均一に保持され、且つ未燃分の燃焼も均一に行われるようになるので、ボイラ装置3Aによる流動層炉3では、蒸気伝熱管4による熱交換効率を向上し、蒸気伝熱管4による蒸気の取り出し温度を効果的に高めることができる。
【0037】
図5は、前記図11、図12の流動層炉3に適用した本発明の他の形態例を示したものであり、図中図8〜図10と同一のものには同じ符号を付して説明を省略し、本発明の特徴部分についてのみ詳細に説明する。
【0038】
図5の形態では、前記図12に示したように、媒体流下管9によって流動層炉3内の一側に供給された流動媒体が他側のダクト5に向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る状態になる流動層炉3の幅方向両側の媒体停滞部Xに対して、媒体流下管9に近い側の一端の開口15と遠い側の他端の開口16とを有して流動層炉3の底部をトンネル状に覆う媒体誘導路17を仕切板18によって形成している。
【0039】
図5の形態においても、前記仕切板18の上板18aは図2に二点鎖線で示すように、幅方向一側を流動層炉3内部に向けて下り勾配に形成した傾斜板18a’としてもよく、また、前記媒体誘導路17を形成する仕切板18の上板18aは、図4に示したように、媒体流下管9に近い側の一端の開口15の高さに対して遠い側の他端の開口16の高さが高くなるように長手方向に傾斜した上板18a”としてもよい。
【0040】
図5の形態によれば、前記図1〜図3の形態の場合と同様に、媒体誘導路17により流動層炉3内部の幅方向両側に流動媒体の水平方向移動の媒体停滞部X(図12参照)が生じる問題を効果的に解消することができる。
【0041】
本発明者らが、前記従来装置と同様に着色砂を混合した砂を用いて、図5の装置において流動層の形成状態とダクト5への砂の流れの状態を観察する実験を実施したところ、砂は両側の媒体誘導路17の内部を通して効果的に流動するようになり、これによって、流動層炉3の内部に流動媒体の水平方向移動の媒体停滞部Xが生じる問題を防止することができた。
【0042】
上記したように、図5の形態においても、流動媒体が流動層炉3内部に略均一に流動するようになり、蒸気伝熱管4による熱交換効率を向上することができるので、ボイラ装置3Aによる蒸気伝熱管4における蒸気の取り出し温度を効果的に高めることができる。
【0043】
図6、図7は、前記図13に示したガス化装置3Bによる流動層炉3に適用した本発明の他の形態例を示したものである。図6、図7のガス化装置3Bによる流動層炉3は、石炭、バイオマス等の原料を供給するための媒体流下管9に近い側に設けた原料供給管19と、ガス化ガスを取り出すようにダクト5に近い側に設けたガス取出管20とを備えており、ガス化装置3B下部の分散板10からは例えば原料の分解を促進するための蒸気B等の分解促進ガスを供給して流動層21を形成するようにしている。
【0044】
図6、図7の形態では、前記図10に示したように、媒体流下管9によって流動層炉3内の一側に供給された流動媒体が他側のダクト5に向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る状態になる流動層炉3の幅方向両側の媒体停滞部Xに、媒体流下管9に近い側の一端の開口15と遠い側の他端の開口16とを有して流動層炉3の底部をトンネル状に覆う媒体誘導路17を仕切板18によって形成している。
【0045】
また、この時、前記図12に示したように、流動層炉3の形態によって幅方向両側に媒体停滞部Xが生じる場合には、図5と同様に幅方向両側の媒体停滞部Xに対して仕切板18により媒体誘導路17を形成することができる。
【0046】
図6、図7の形態によれば、前記媒体誘導路17によって流動層炉3内部に流動媒体が略均一に流動するようになるので、原料供給口19からガス化装置3B内部に供給された石炭、バイオマス等の原料は、蒸気B等の分解促進ガスと共に流動層21にて均一に加熱されることにより分解させられ、生成したガス化ガスは生成ガス取出口20から外部に導出されて、使用目的場所に供給される。この時、前記媒体誘導路17の設置によってガス化装置3B内の流動層21の温度が略均一に保持されるので、原料のガス化反応を促進させてガス化効率を向上させることができる。
【0047】
尚、本発明の媒体循環設備の流動層炉は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、前記媒体誘導路は、流動層炉内部に生じる可能性がある媒体停滞部に対して、媒体流下管に近い側の一端の開口と遠い側の他端の開口とを有して流動媒体を移動させたい方向に沿って設けるようにすればよく、従って媒体誘導路の長さ、形状には限定されないこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明を実施する形態の一例であるボイラ装置としての流動層炉の切断平面図である。
【図2】図1のII−II方向断面図である。
【図3】図1のIII−III方向断面図である。
【図4】図3の仕切板の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明を実施する他の形態例である流動層炉の切断平面図である。
【図6】本発明を実施する形態の一例であるガス化装置としての流動層炉の切断平面図である。
【図7】図6のVII−VII方向断面図である。
【図8】従来の循環流動層ボイラの全体略側面図である。
【図9】従来の流動層炉の一例を示す斜視図である。
【図10】図7の流動層炉の切断平面図である。
【図11】従来の流動層炉の他の例を示す斜視図である。
【図12】図9の流動層炉の切断平面図である。
【図13】従来の流動層炉の他の例を示したもので、原料供給口と生成ガス取出口とを有するガス化装置の場合の斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 燃焼炉
2 媒体分離装置
3 流動層炉
3A ボイラ装置
3B ガス化装置
4 蒸気伝熱管
5 ダクト
9 媒体流下管
15,16 開口
17 媒体誘導路
18 仕切板
18a’ 上板
18a” 上板
19 原料供給口
20 生成ガス取出口
X 媒体停滞部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉の排ガスを媒体分離装置に導いて流動媒体を分離し、分離した流動媒体を媒体流下管により流動層炉の一側に供給して流動媒体による流動層を形成し、流動層炉内の流動媒体を該流動層炉の他側に設けたダクトにより前記燃焼炉に戻すようにしている媒体循環設備の前記流動層炉であって、前記媒体流下管により流動層炉の一側に供給した流動媒体が他側のダクトに向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る媒体停滞部に、媒体流下管に近い側の一端と遠い側の他端とが開口して流動層炉の底部をトンネル状に覆う媒体誘導路を仕切板により形成したことを特徴とする媒体循環設備の流動層炉。
【請求項2】
前記流動層炉が、流動媒体により蒸気伝熱管を加熱するボイラ装置であることを特徴とする請求項1記載の媒体循環設備の流動層炉。
【請求項3】
前記流動層炉が、原料供給口と生成ガス取出口とを備え流動媒体により原料のガス化を行うガス化装置であることを特徴とする請求項1記載の媒体循環設備の流動層炉。
【請求項4】
前記媒体誘導路を形成する仕切板は、上板が媒体流下管に近い側の一端の高さに対して遠い側の他端の高さを高くしてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の媒体循環設備の流動層炉。
【請求項5】
前記媒体誘導路を形成する仕切板は、上板が幅方向一側を流動層炉内部に向けて下り勾配に形成した傾斜板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の媒体循環設備の流動層炉。
【請求項1】
燃焼炉の排ガスを媒体分離装置に導いて流動媒体を分離し、分離した流動媒体を媒体流下管により流動層炉の一側に供給して流動媒体による流動層を形成し、流動層炉内の流動媒体を該流動層炉の他側に設けたダクトにより前記燃焼炉に戻すようにしている媒体循環設備の前記流動層炉であって、前記媒体流下管により流動層炉の一側に供給した流動媒体が他側のダクトに向かう途中において流動媒体の水平方向移動が滞る媒体停滞部に、媒体流下管に近い側の一端と遠い側の他端とが開口して流動層炉の底部をトンネル状に覆う媒体誘導路を仕切板により形成したことを特徴とする媒体循環設備の流動層炉。
【請求項2】
前記流動層炉が、流動媒体により蒸気伝熱管を加熱するボイラ装置であることを特徴とする請求項1記載の媒体循環設備の流動層炉。
【請求項3】
前記流動層炉が、原料供給口と生成ガス取出口とを備え流動媒体により原料のガス化を行うガス化装置であることを特徴とする請求項1記載の媒体循環設備の流動層炉。
【請求項4】
前記媒体誘導路を形成する仕切板は、上板が媒体流下管に近い側の一端の高さに対して遠い側の他端の高さを高くしてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の媒体循環設備の流動層炉。
【請求項5】
前記媒体誘導路を形成する仕切板は、上板が幅方向一側を流動層炉内部に向けて下り勾配に形成した傾斜板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の媒体循環設備の流動層炉。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−127297(P2007−127297A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318136(P2005−318136)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]