説明

媒体搬送装置、スキャナ装置、記録装置

【課題】媒体サポートが開いた状態(媒体送り出し時)には媒体搬送経路に対する相対的な位置が厳格に定まりながらも、媒体サポートが閉じた状態では媒体サポート周囲の構成要素と調和が取れ、美観を確保することのできる媒体搬送装置を提供する
【解決手段】原稿を支持する原稿サポート20は、両端の回動軸20aが上部筐体1aに形成された軸受部1dにおいて、回動軸線方向に所定の遊びを設けた状態で軸支されている。原稿サポート20が開姿勢をとるとき(原稿送り出し時)、媒体搬送経路を構成する原稿先端支持部に形成された規制部2a、2aによって原稿サポート20に形成された被規制部20cが両側から挟まれ、位置が規制される。原稿サポート20が閉姿勢をとるとき、即ち装置外観を構成する際には、被規制部20cが規制部2a、2aによって両側から挟まれた状態が解除され、原稿サポート20aは収容凹部1eによってその位置が規定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を搬送する媒体搬送装置、およびこれを備えたスキャナ装置並びに記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置或いは液体噴射装置の一例としてインクジェットプリンターがある。近年、インクジェットプリンターは、プリンター機能に加えてスキャナ機能を備えた所謂複合機が主流となりつつある。複合機は、1台で原稿の読み取りと、用紙への記録を実行することができ、利便性が良いとともに設置スペースの節約にもなる。
【0003】
そしてスキャナには原稿の自動送り装置(ADF(Auto Document Feeder)とも呼ばれる)が設けられ、複数枚の原稿の自動送りと読み込みとを行える様に構成される場合がある。その様な原稿自動送り装置の構成としては、特許文献1に示される様に原稿トレイ(原稿サポート)から原稿を送り出し、ローラーによってU字反転させた後に原稿を読み取り位置に搬送し、そして排出トレイに向けて排出する構成が採られたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−28546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子機器においは機能に加えてデザイン性が重要視される傾向が強く、自動原稿送り装置においても装置の外観に美観が求められる。この様な観点において、或いは、装置非使用時の省スペース性や輸送容易性などの観点から、原稿搬送経路の入口に設けられた原稿サポートを開閉可能に設け、開いた状態において原稿を支持し、閉じた状態において装置外観の一部を形成する様に構成される場合がある。
【0006】
ここで、原稿サポートは開いた状態、即ち原稿を支持する状態において、原稿給送位置を規定することとなるから、原稿搬送経路に対する相対的な位置は厳格に定まっていることが望ましい。しかしながら、原稿サポートの位置を原稿搬送経路に対してのみ厳格に定めてしまうと、原稿サポートが閉じて装置外観を形成する際に、原稿サポート周囲の構成要素(装置外観を形成する)と原稿サポートとの相対的な位置関係が製造誤差や組立ばらつきによって不適切となり、外観上好ましくない状態を招く可能性もある。
【0007】
そこで本発明はこの様な状況に鑑み成されたものであり、その目的は、媒体サポートが開いた状態、即ち媒体送り出し時には媒体搬送経路に対する相対的な位置が厳格に定まりながらも、媒体サポートが閉じた状態では媒体サポート周囲の構成要素と調和が取れ、美観を確保することのできる媒体搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為の、本発明の第1の態様に係る媒体搬送装置は、媒体を搬送する媒体搬送経路の入口に、給送される媒体を支持する媒体サポートを備え、前記媒体サポートは、回動することにより媒体を支持可能な開姿勢と、装置の外観を構成する閉姿勢と、を切り換え可能に設けられ、前記媒体サポートの回動軸は、回動軸線方向に所定の遊びを設けた状態で軸支され、前記媒体サポートが前記開姿勢をとるとき、前記媒体サポートに形成された被規制部が、前記媒体搬送経路を構成する経路構成部材に形成された規制部によって前記回動軸線方向の位置が規制され、前記媒体サポートが前記閉姿勢をとるとき、前記規制部による前記被規制部の規制状態が解除される構成を備えることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、媒体サポートの回動軸が、回動軸線方向に所定の遊びを設けた状態で軸支された上で、媒体サポートが開姿勢をとるとき、即ち媒体送り出し時には媒体搬送経路を構成する構成部材によって前記回動軸線方向の動きが規制されることとなるので、媒体搬送経路に対する媒体サポートの相対的な位置が厳格に定まり、良好な給送結果を得ることができる。
【0010】
そして媒体サポートが閉姿勢をとるとき、即ち装置外観を構成する際には前記規制が解除されるので、媒体サポートは装置外観を構成する他の部材によってその位置が規制されることが可能となり、これにより装置の美観を確保することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記媒体サポートが、当該媒体サポートの閉姿勢側に設けられた収容凹部に入り込むことにより、当該媒体サポートの前記閉姿勢における前記回転軸線方向の位置が定まることを特徴とする。
本態様によれば、上記第1の態様の作用効果により、前記収容凹部内において前記媒体サポートの位置が偏ることがなく、装置の美観を確保することができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様において、前記媒体サポートに、給送される媒体のエッジをガイドするエッジガイドが設けられていることを特徴とする。
【0013】
前記媒体サポートには、給送される媒体のエッジをガイドするエッジガイドが設けられているので、仮に媒体搬送経路に対する媒体サポートの位置がずれてしまうと、良好な搬送結果を得ることができないが、上記の通り媒体サポートは開姿勢において経路構成部材によって厳格に位置が定まるので、適切な搬送結果を得ることができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1から第3の態様において、媒体を搬送する媒体搬送経路の外に媒体を排出する媒体排出手段と、前記媒体排出手段によって排出された媒体を受ける媒体受け手段と、を備え、前記媒体受け手段は、媒体を支持する第1媒体受け面を形成する第1媒体受け部材と、前記第1媒体受け部材より媒体排出方向下流側に設けられるとともに、媒体を支持する第2媒体受け面を形成する第2媒体受け部材と、を備えて構成され、前記第1媒体受け部材は、前記第1媒体受け面が前記第2媒体受け面と接続して装置外観面を形成する第1状態と、前記第1媒体受け面が前記第2媒体受け面との間に段差を形成する第2状態と、を切り換え可能に設けられ、前記第1媒体受け部材が前記第1状態にあるとともに前記媒体サポートが前記閉姿勢にあるとき、前記媒体サポートに形成された前記被規制部が、前記第1媒体支持部材と係合して当該第1媒体支持部材を前記第1状態に拘束することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、先ず前記第1媒体受け部材は、前記第1媒体受け面が前記第2媒体受け面と接続して装置外観面を形成する第1状態と、前記第1媒体受け面が前記第2媒体受け面との間に段差を形成する第2状態と、を切り換え可能に設けられていることから、前記第2状態では前記段差によって排出された媒体が媒体受け面に密着することを防止でき、媒体を容易に取り出すことができる。そして前記第1状態では、前記第1媒体受け面が前記第2媒体受け面と接続して装置外観面を形成するので、優れた装置美観を得ることが可能となる。
【0016】
次に、前記媒体サポートは、閉姿勢において前記被規制部が前記第1状態にある前記第1媒体支持部材と係合して当該第1媒体支持部材を前記第1状態に拘束するので、前記第1媒体支持部材が容易に第2状態に切り換わることを防止できるとともに、媒体サポートに形成された前記被規制部を利用して前記第1媒体支持部材を拘束するので、装置のコストアップを防止できる。
【0017】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記媒体サポートと前記第1媒体受け部材とがリンク部材を介して係合し、前記媒体サポートが閉じる方向に回動すると前記第1媒体受け部材が前記第1状態に切り換わり、前記媒体サポートが開く方向に回動すると前記第1媒体受け部材が前記第2状態に切り換わる構成を備えることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、前記第1媒体受け部材が、給送される媒体を支持する媒体サポートの動作に連係して状態切り換えを行うので、各々を単独で操作する必要がなく、装置の操作性を向上させることができる。
【0019】
本発明の第6の態様は、媒体の面を読み取る読み取り手段と、媒体を前記読み取り手段による読み取り位置へと搬送する、第1から第5の態様のいずれかに係る媒体搬送装置を備えたスキャナ装置である。更に本発明の第7の態様は、媒体に記録を行う記録部と、前記記録部の上部に設けられた、第6の態様に係るスキャナ装置とを備えた記録装置である。これらの態様によれば、スキャナ装置、或いは記録装置において、上述した第1から第5の態様と同様な作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る自動原稿搬送装置の斜視図(原稿サポートの閉状態/第1原稿受け部の第1状態)。
【図2】本発明に係る自動原稿搬送装置の斜視図(原稿サポートの開状態/第1原稿受け部の第2状態)。
【図3】本発明に係る自動原稿搬送装置の側断面図(読み取り位置側)。
【図4】本発明に係る自動原稿搬送装置の側断面図(排紙側:原稿サポートの閉状態/第1原稿受け部の第1状態)。
【図5】本発明に係る自動原稿搬送装置の側断面図(排紙側:原稿サポートの開状態/第1原稿受け部の第2状態)。
【図6】原稿サポートと第1原稿受け部の係合部位の断面図。
【図7】原稿サポートと第1原稿受け部の係合部位の断面図。
【図8】原稿サポートと第1原稿受け部の係合部位の断面図。
【図9】原稿サポートと第1原稿受け部の係合部位の断面図。
【図10】本発明に係る自動原稿搬送装置の一部平面図。
【図11】被規制部と規制部の斜視図。
【図12】本発明の他の実施形態に係る自動原稿搬送装置の斜視図(原稿サポートの閉状態/原稿受け部の第1状態)。
【図13】本発明の他の実施形態に係る自動原稿搬送装置の斜視図(原稿サポートの開状態/原稿受け部の第2状態)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、以下説明する実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることを前提として、以下本発明の一実施形態を説明するものとする。
【0022】
図1及び図2は本発明に係る媒体搬送装置としての自動原稿搬送装置(ADF(Auto
Document Feeder))1の斜視図であり、図1は媒体サポートとしての原稿サポート20が閉状態にあり且つ第1媒体受け部材としての第1原稿受け部24が第1状態にある様子を、図2は原稿サポート20が開状態にあり且つ第1原稿受け部24が第2状態にある様子を、それぞれ示している。また図3〜図5は自動原稿搬送装置1の媒体搬送経路の側断面図であり、図3は読み取り位置Y1側を、図4及び図5は原稿排紙側を、それぞれ示している。
【0023】
また図6〜図9は原稿サポート20と第1原稿受け部24との係合部位の断面図であり、図6、図8は原稿サポート20が閉状態にあり且つ第1原稿受け部24が第1状態にある様子を、図7、図9は原稿サポート20が開状態にあり且つ第1原稿受け部24が第2状態にある様子を、それぞれ示している。尚、図6及び図7と、図8及び図9は、原稿幅方向(図6〜図9において紙面表裏方向)における切断位置が僅かに異なっている。更に、図10は自動原稿搬送装置1の一部平面図、図11は被規制部20c及び規制部2aの斜視図である。
【0024】
以下、図1〜図5を参照しながら自動原稿搬送装置1の外観構成及び媒体搬送経路上の構成について概説する。自動原稿搬送装置1は、全体図示を省略するインクジェットプリンターの、最も上部に設けられる。図3において符号40は用紙に記録を行う記録部を、符号30は記録部40の上部に設けられるスキャナユニットを示しており、自動原稿搬送装置1は当該スキャナユニット30の上部に設けられる。
【0025】
図1及び図2に示す様に自動原稿搬送装置1は上部筐体1aと下部筐体1bとで装置の基体が構成されており、上部筐体1aには原稿サポート20が回動可能に設けられ、また第1原稿受け部24が揺動可能に設けられている。また更に、第2原稿受け部26が固定的に設けられている。そしてこれら原稿サポート20、第1原稿受け部24、第2原稿受け部26、のこれらによって自動原稿搬送装置1の上部外観が構成される。尚、第1原稿受け部24と第2原稿受け部26は、一体となって排出される原稿を受ける原稿受け手段23を構成する。
【0026】
原稿サポート20は、その内側に図2に示す様に原稿幅方向に移動可能なエッジガイド17、18を備えており、またその内部に延長サポート22をスライド自在に備えている。原稿サポート20が開いた状態では、図2に示す様に延長サポート22を原稿サポート20から引き出すことで、原稿を支持する支持面が延長されて長尺な原稿を支持できる様になっている。
【0027】
続いて媒体としての原稿が搬送される媒体搬送経路の構成について詳説する。尚、図3において符号Pは、自動原稿搬送装置1内を搬送される原稿の通過軌跡を示している。図3において符号2は原稿先端支持部を示しており、この原稿先端支持部2によってセットされた原稿先端が支持される。
【0028】
原稿先端支持部2の先端側には図示を省略するモーターによって駆動される給送ローラー3が、図示を省略する昇降機構によって原稿先端支持部2に積載された複数枚の原稿に対し接離動作することができる様に設けられており、給送ローラー3が複数枚の原稿のうち最上位のものに接した状態で回転することにより、当該最上位の原稿が下流側に送り出される。
【0029】
給送ローラー3の下流側には、図示を省略するモーターによって正転方向に駆動される分離ローラー5と、この分離ローラー5との間で原稿をニップする分離パッド4とが対向配置されており、送り出される原稿が給送ローラー3と分離パッド4との間でニップされることにより、送り出される原稿と、次位以降の原稿とが分離される様になっている。
【0030】
給送ローラー3より下流側に設けられた符号6で示すローラーは図示を省略するモーターによって駆動される中間送りローラーを示し、符号7で示すローラーは中間送りローラー6に接して従動回転する従動ローラーである。
【0031】
これら中間送りローラー6と従動ローラー7から下流側は、原稿を湾曲反転して搬送する湾曲搬送経路(湾曲反転経路)が形成されている。尚、符号16はこの湾曲反転経路の一部を形成して原稿を下流側へ案内する可動フラップを示している。湾曲反転経路の内側にはガイドローラー8が自由回転可能に設けられ、その更に下流側には図示を省略するモーターによって駆動される駆動ローラーとしての、大径の反転ローラー10が設けられている。反転ローラー10には従動ローラー11が接しており、原稿がこれら反転ローラー10と従動ローラー11とでニップされた状態で反転ローラー10が回転することにより、更に下流側へと搬送される。
【0032】
反転ローラー10と従動ローラー11の下流側では、原稿はスキャナユニット30を構成する原稿台ガラス31の上面に到達する。符号Y1はスキャナユニット30による原稿読み取り位置を示しており、この読み取り位置Y1に、読み取り手段としての読み取りセンサーを備えたセンサーキャリッジ33が停止した状態に置かれる。
【0033】
即ち、このセンサーキャリッジ33は、自動原稿搬送装置1を利用しない読み取り時には主走査方向(図3の左右方向)に移動することで原稿台ガラス31に載置された原稿をスキャニングするが、自動原稿搬送装置1を利用した読み取り時には、読み取り位置Y1に停止し、原稿側が動くことでスキャニングが行われる。
【0034】
読み取り位置Y1の下流側には、図示を省略するモーターによって駆動される排出駆動ローラー13と、これに接して従動回転する従動ローラー14と、によって構成される原稿排出手段が設けられており、読み取りの終了した原稿はこれらローラーによって媒体搬送経路外の原稿受け手段13に向けて排出される。
【0035】
以上が自動原稿搬送装置1の大略構成であり、以下では原稿サポート20及び原稿受け手段13について詳説する
排出された原稿を受ける原稿受け手段13は、第1原稿受け面24aを形成する第1原稿受け部24と、第1原稿受け部材より原稿排出方向下流側に設けられるとともに、原稿を支持する第2原稿受け面26aを形成する第2原稿受け部26と、を備えて構成されている。
【0036】
第1原稿受け部24は、第1原稿受け面24aが第2原稿受け面26aと接続して面一で滑らかな装置外観面を形成する第1状態(図1、図4、図6、図8)と、第1原稿受け面24aの下流側端部が第2原稿受け面26aの上流側端部との間に段差を形成する第2状態(図2、図5、図7、図9)と、を切り換え可能に設けられている。尚、本明細書において第1原稿受け面24aと第2原稿受け面26aとが「接続する」とは、第2状態との比較において2つの面の間に形成される段差が相対的に小さいことを意味するものであり、必ずしも厳密に面一になることを意味するものではなく、多少の段差が形成される態様をも含むものである。
【0037】
第1原稿受け部24は、揺動軸24b(図8、図9参照)を中心にして揺動可能に設けられており、揺動することによって上記第1状態と第2状態とを切り換える様になっている。
【0038】
尚、第1原稿受け部24が第1状態にあるとき、図4に示す様に原稿排出口(図5において符号15で示す)が第1原稿受け部24によって塞がれた状態にある。そして第1原稿受け部24が第2状態になることで、図5に示す様に原稿排出口15が開放される様になっている。
【0039】
一方、給送前の原稿を支持する原稿サポート20は、両端の回動軸20aが上部筐体1aに形成された軸受部1dに軸支されることにより回動可能に支持されており(図10)、回動することによって原稿を支持可能な開姿勢(図2、図5、図7、図9)と、装置の外観を構成する閉姿勢(図1、図4、図6、図8)と、を切り換え可能となっている。
【0040】
原稿サポート20は、閉姿勢においては例えば図1に示す様にその上面が第1原稿受け面24aと接続し、面一で滑らかな装置外観面が形成される。尚、図4〜図9においては原稿サポート20の回動軸20aは位置的に図に表れない為、回動中心を示す位置として点によって示している。
【0041】
以上の原稿サポート20と第1原稿受け部24とは、リンク部材28(図6〜図9)を介して係合することにより連動して動作する様に構成されており、より具体的には原稿サポート20が閉状態にあるときは第1原稿受け部24は第1状態をとり、この状態から原稿サポート20を開くことによって第1原稿受け部24が第1状態から第2状態に切り換わる様になっている。
【0042】
リンク部材28は、原稿サポート20の回動軸20aからややずれた位置に設けられた揺動軸28aを介して原稿サポート20に設けられており、そして原稿サポート20の回動動作に伴い、その先端側が下部筐体1bに設けられたガイド斜面1cに乗り上げる(或いは下る)ことでその位置と姿勢を変化させる様になっている。尚、本実施形態ではリンク部材28は原稿サポート20の幅方向両側に設けられているが、幅方向のいずれか一方側にのみ設けても良い。
【0043】
このリンク部材28の先端側にはカム溝28bが形成されており、このカム溝28b内に、第1原稿受け部24において回動軸24bから離れた位置に形成されたボス24d(カムフォロワとして機能)が遊挿された状態となっている。従って原稿サポート20の回動動作に伴ってリンク部材28の位置及び姿勢が変化すると、、カム溝28b内でボス24dが動き、これに伴い第1原稿受け部24が揺動軸24bを中心に揺動し、当該第1原稿受け部24が第1状態(図6)と第2状態(図7)とを切り換える。
【0044】
尚、リンク部材28においてカム溝28bが設けられた位置とは別の位置には、図8及び図9に示す様に被拘束部28cが形成されており、この被拘束部28cが、第1原稿受け部24に形成された規制面24cに沿って移動できる様になっている。
【0045】
そして第1原稿受け部24が第1状態をとるとき(図8)、被拘束部28cに規制面24cが乗り上がった状態となることで、第1原稿受け部24は第1状態から第2状態に容易に切り換わらない様に拘束された状態となる。加えて、本実施形態では第1原稿受け部24の上流側端部24fが、原稿サポート20の基端側端部に形成された被規制部20cに乗り上がった状態となることによっても(図4)、第1原稿受け部24の第1状態が維持される。
【0046】
そして第1原稿受け部24が第2状態をとるとき(図9)、被拘束部28cの下側に第1原稿受け部24に形成された拘束部24eが入り込み、且つ、リンク部材28が上部筐体1aに形成された拘束部1fによって上方への移動ができない様に拘束された状態となる。この様に被拘束部28c、拘束部24e、拘束部1f、のこれらによって構成される拘束手段によって、第1原稿受け部24は第2状態から第1状態に容易に切り換わらない様に拘束された状態となる。
【0047】
以上説明した様に、第1原稿受け部24は、第1原稿受け面24aが第2原稿受け面26aと接続して段差の無い滑らかな装置外観面を形成する第1状態(図1、図4、図6、図8)と、第1原稿受け面24aの下流側端部が第2原稿受け面26aの上流側端部との間に段差を形成する第2状態(図2、図5、図7、図9)と、を切り換え可能に設けられている。
【0048】
従って第2状態では第1原稿受け面24aと第2原稿受け面26aとの間に形成される段差(図5において符号hで示す)によって排出された原稿が各原稿受け面に密着することを防止でき、原稿を容易に取り出すことができる。そして第1状態では、第1原稿受け面24aが第2原稿受け面26aと接続して段差の無い滑らかな(面一な)装置外観面が形成されるので、優れた装置美観を得ることが可能となる。
【0049】
尚、本実施形態において第1原稿受け部24の姿勢を変化させるリンク部材28のカム溝28bは、原稿サポート20が開いた状態からこれを閉じる方向に回動させる際、その途中までは第1原稿受け部24の姿勢を殆ど変化させず、そして原稿サポート20が完全に閉じる直前に第1原稿受け部24を第1状態(図1)に変化させるように形成されている。
【0050】
また、本実施形態では第1原稿受け部24が第1状態にあるとき、原稿排出口15が第1原稿受け部24によって塞がれた状態となるので、第1原稿受け部24が第1状態にあるときに装置の美観をより一層向上させることができる。
【0051】
そしてまた、本実施形態では原稿サポート20と第1原稿受け部24とがリンク部材28を介して係合し、原稿サポート20が閉じる方向に回動すると第1原稿受け部24が前記第2状態から前記第1状態に切り換わり、原稿サポート20が開く方向に回動すると第1原稿受け部24が前記第2状態に切り換わるので、装置の操作性を向上させることができる。
【0052】
ところで、給送前の原稿を支持する原稿サポート20は、図10を参照しながら説明した様に両端の回動軸20aが上部筐体1aに形成された軸受部1dに軸支されることにより回動可能に支持されているが、回動軸20aは、軸受部1dにおいて回動軸線方向(図10の上下方向)に所定の遊びを設けた状態で軸支されている。
【0053】
一方、原稿サポート20には基端側端部の中程に、図11に示す様に舌片状の被規制部20cが形成されており、この被規制部20cが、原稿サポート20が開姿勢をとるとき、即ち原稿送り出し時には、媒体搬送経路を構成する原稿先端支持部2に形成された規制部2a、2aによって両側から挟まれ、動きが規制される様になっている。
【0054】
即ち、原稿サポート20は、開姿勢においては回動軸20aの回動軸線方向(原稿幅方向)の位置が媒体搬送経路に対して厳格に定まることとなり、これにより給送される原稿は原稿幅方向の位置が狂うことなく、良好な給送結果を得ることができる。
【0055】
特に、原稿サポート20はエッジガイド17、18を備えているので、仮に媒体搬送経路に対する原稿サポート20の位置がずれてしまうと、良好な搬送結果を得ることができない。しかし、上記の通り原稿サポート20は開姿勢において原稿幅方向の位置が厳格に定まるので、適切な搬送結果(ひいては、適切な原稿読み取り結果)を得ることができる。
【0056】
そして原稿サポート20が閉姿勢をとるとき、即ち装置外観を構成する際には、被規制部20cが規制部2a、2aによって両側から挟まれた状態が解除される。即ち、原稿サポート20は回動軸20aの回動軸線方向に或る程度動くことができる様な状態となり、そしてこの状態で、図10に示すように上部筐体1aにおいて原稿サポート20の閉姿勢側に形成された収容凹部1eに収容された状態となる。
【0057】
つまり、原稿サポート20aは閉姿勢においては収容凹部1eによってその位置が規定されることとなるので、収容凹部1e内において原稿サポート20の位置が偏ることがなく、即ち原稿サポート20の外周20dと収容凹部1eの内周との間の隙間が左右(図10の上側と下側)でばらつかない為、装置の美観を確保することができる。
【0058】
続いて、図12及び図13を参照しながら本発明の他の実施形態について説明する。ここで、図12及び図13は本発明の他の実施形態に係る自動原稿搬送装置1’の斜視図であり、図12は原稿サポート20’が閉状態にあり且つ原稿受け部24’が第2状態にある様子を、図13は原稿サポート20’が開状態にあり且つ原稿受け部24’が第2状態にある様子を、それぞれ示している。
【0059】
原稿受け手段23’を構成する原稿受け部24’は、既に説明した第1原稿受け部24と同様に、原稿排出口15(図5)を塞ぐ第1状態と、原稿排出口15を開放する第2状態と、を切り換え可能に設けられている。また、原稿サポート20’も、既に説明した原稿サポート20と同様に、回動することによって原稿を支持可能な開姿勢(図13)と、装置外観を構成する閉姿勢(図12)と、を切り換え可能となっている。尚、図13において符号2’は原稿先端支持部を示し、符号17’、18’はエッジガイドを示している。
【0060】
本実施形態において原稿受け部24’が第1状態をとるとき、当該原稿受け部24’の下方には突起30、30が位置している。そして原稿受け部24’が図12の第1状態から図13の第2状態に切り換わると、原稿受け部24’に形成されたスリット穴24e、24eから、突起30、30が原稿受け面上に突出する様になっている。尚、突起30a、30aは、原稿排出時に原稿先端が引っ掛からない様に、上流側が傾斜面で形成されている。
【0061】
以上の構成により、原稿受け部24’が第2状態をとるときは、突起30、30によって排出された原稿が浮き上がり、これを容易に取り出すことが可能となる。また、原稿受け部24’が第1状態をとるときは、突起30、30は原稿受け部24’の下側に位置し、外部の露呈しない状態となるので(図12)、装置の美観を損ねることもない。
【0062】
以上説明した実施形態は一例であり、これに限られないことは言うまでもない。例えば、以上説明した実施形態では、本発明の媒体搬送装置をスキャナ装置に設けられる自動原稿送り装置に対して適用したが、これに限られず、被記録媒体に記録を行う記録装置において被記録媒体を搬送する搬送装置に対して適用することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 自動原稿搬送装置、2 原稿先端支持部、3 給送ローラー、4 分離パッド、5 分離ローラー、6 中間送りローラー、7、8 従動ローラー、10 反転ローラー、11 従動ローラー、13 排出駆動ローラー、14 排出従動ローラー、15 原稿排出口、16 可動フラップ、17、18 エッジガイド、20 原稿サポート、22 延長サポート、23 原稿受け手段、24 第1原稿受け部、24a 第1原稿受け面、26 第2原稿受け部、26a 第2原稿受け面、28 リンク部材、30 スキャナユニット、31 原稿台ガラス、33 センサーキャリッジ、40 記録部、P 原稿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する媒体搬送経路の入口に、給送される媒体を支持する媒体サポートを備え、
前記媒体サポートは、回動することにより媒体を支持可能な開姿勢と、装置の外観を構成する閉姿勢と、を切り換え可能に設けられ、
前記媒体サポートの回動軸は、回動軸線方向に所定の遊びを設けた状態で軸支され、
前記媒体サポートが前記開姿勢をとるとき、前記媒体サポートに形成された被規制部が、前記媒体搬送経路を構成する経路構成部材に形成された規制部によって前記回動軸線方向の位置が規制され、
前記媒体サポートが前記閉姿勢をとるとき、前記規制部による前記被規制部の規制状態が解除される構成を備える、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、前記媒体サポートが、当該媒体サポートの閉姿勢側に設けられた収容凹部に入り込むことにより、当該媒体サポートの前記閉姿勢における前記回転軸線方向の位置が定まる、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の媒体搬送装置において、前記媒体サポートに、給送される媒体のエッジをガイドするエッジガイドが設けられている、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の媒体搬送装置において、媒体を搬送する媒体搬送経路の外に媒体を排出する媒体排出手段と、
前記媒体排出手段によって排出された媒体を受ける媒体受け手段と、を備え、
前記媒体受け手段は、媒体を支持する第1媒体受け面を形成する第1媒体受け部材と、
前記第1媒体受け部材より媒体排出方向下流側に設けられるとともに、媒体を支持する第2媒体受け面を形成する第2媒体受け部材と、を備えて構成され、
前記第1媒体受け部材は、前記第1媒体受け面が前記第2媒体受け面と接続して装置外観面を形成する第1状態と、前記第1媒体受け面が前記第2媒体受け面との間に段差を形成する第2状態と、を切り換え可能に設けられ、
前記第1媒体受け部材が前記第1状態にあるとともに前記媒体サポートが前記閉姿勢にあるとき、前記媒体サポートに形成された前記被規制部が、前記第1媒体支持部材と係合して当該第1媒体支持部材を前記第1状態に拘束する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の媒体搬送装置において、前記媒体サポートと前記第1媒体受け部材とがリンク部材を介して係合し、前記媒体サポートが閉じる方向に回動すると前記第1媒体受け部材が前記第1状態に切り換わり、前記媒体サポートが開く方向に回動すると前記第1媒体受け部材が前記第2状態に切り換わる構成を備える、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項6】
媒体の面を読み取る読み取り手段と、
媒体を前記読み取り手段による読み取り位置へと搬送する、請求項1から5のいずれか1項に記載の媒体搬送装置と、
を備えたスキャナ装置。
【請求項7】
媒体に記録を行う記録部と、
前記記録部の上部に設けられた、請求項6に記載のスキャナ装置と、
を備えた記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−197168(P2012−197168A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64012(P2011−64012)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】