説明

媒体照合装置

【課題】媒体を撮像する際、外部からの光の影響や媒体の反り等により、媒体の一部が局部的に反射して不適なイメージ画像となることがある。この場合、真偽判定に使用している領域が光により阻害されて真偽判定の誤りを誘起するのを未然に防止する。
【解決手段】媒体から読み取った画像データからヒストグラムを作成し、そのヒストグラムの分布形状から正しく置かれてないと判断した場合、媒体を正しく置き直す案内を実行して、常に媒体が正しく置かれることを確保して媒体の真偽判別を正確に行うことができ、真偽判定を誤る可能性を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転免許証などの媒体の真偽を照合する媒体照合装置に関し、さらに詳しくは媒体が照射位置に正しく置かれたか否かを照合開始前に実行する媒体照合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の媒体照合装置は光源から媒体に向けて光を照射させ、その照射された光が媒体の表面より反射し、反射した媒体の全表面からの光学的なイメージ画像を撮像し、この撮像したイメージ画像データと予め撮像しておいた本物の媒体のイメージ画像データとを比較することにより照合している。
【0003】
このような媒体照合装置の一例として、近年、波長帯域を異ならせた複数の光を切り替えて媒体に照射するという特有の技術を用いて照合精度を高めるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
この場合は、免許証等の照合対象となる媒体の画像を複数の波長を用いて撮像し、撮像後に予め撮像しておいた本物の媒体のイメージ画像データと比較することにより、撮像した媒体を精度よく真偽判定するというものである。
【特許文献1】特開2002−42204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、媒体の画像を取得する照射位置に設置された媒体を上方から抑え付ける蓋を使用しない撮像構成においては、外部からの光の影響や媒体自体の反り等により反射方向が不安定な向きとなり、撮像した媒体のイメージ画像データの一部が過剰に明るくなる場合がある。この場合、真偽判定に使用しているイメージ画像データの特定領域が非常に明るくなり、真偽判定を誤る原因になる。
【0005】
また、媒体が照射位置に正しく置かれていることを前提としているため、媒体の全表面のイメージ画像データは、置き方の違いや反り具合により撮像した際の画像データが異なり、この誤差を含んだイメージ画像データと、予め撮像しておいた本物の媒体のイメージ画像データとを比較してしまうと、真偽判定の誤りを発生させてしまう。
【0006】
さらに、特許文献1に開示されているように、複数の波長で撮像したイメージ画像データを用いたとしても、常に媒体が正しく置かれていることを前提としているため、正しく置かれていない場合には真偽判定の誤りが多くなる。
【0007】
そこでこの発明は、媒体の画像情報の取得に際して、媒体の反り等に伴って画像の取得が阻害されないようにした媒体照合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、媒体を設置する設置台と、該設置台に設置された媒体に光を照射する光源と、前記光源からの光を前記媒体に照射させて前記媒体表面の画像を読み取る撮像手段と、前記撮像手段により読み取った画像情報と予め撮像して記憶されている登録画像情報とを比較して前記媒体の真偽を照合する制御部と、該照合の結果を出力する出力手段とを備えた媒体照合装置であって、前記制御部は、前記光源から光が照射された媒体の全表面を前記撮像手段を用いて読み取り、読み取った媒体の全表面の画像情報に基づいて該媒体が前記設置台に正しく置かれているか否かを判定する判定手段を設け、前記判定手段の判定結果に応じた出力情報を前記出力手段により出力させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、媒体の照合に際して、媒体からの光の反射に異常がある場合に、媒体が正しく置かれていないので照合開始不可である旨等を案内して、媒体を置き直させることができる。このため、媒体の照合開始時には常に媒体が適正な姿勢にあることを確認してから読取開始させる照合開始条件を確保でき、真偽判定の誤りを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の媒体照合装置の一実施例の構成を図面について説明する。
【実施例】
【0011】
図面はこの発明の媒体照合装置として設けられる媒体のイメージ画像読取装置を示し、この媒体のイメージ画像読取装置は、例えば消費者金融などの契約システムに採用される無人契約端末のような自動契約装置に備えられる。そして、自動契約時にイメージ画像読取装置によって、免許証、書類等の媒体のイメージ画像データを読み取って照合する。
【0012】
図1はイメージ画像読取装置の概略構成図であり、図2はイメージ画像読取装置を用いて正しく置かれた媒体読取状態を示す概略説明図であり、図3はイメージ画像読取装置を用いて不安定に置かれた媒体読取状態を示す概略説明図である。
【0013】
前記イメージ画像読取装置は、光を照射する光源11と、シート状の媒体を平面的に置く設置台12と、媒体の全表面から反射された光を読み取る画像取得用の撮像カメラ(CCD)13と、媒体の置き方や置き直しを画面上に表示案内する表示器81(図8参照)と、これらの画像取得機器を制御管理する制御部61(図6参照)とを備えている。そして、前記撮像カメラ13が読み取った媒体のイメージ画像データを、予め基準データとして登録させている登録済みのイメージ画像データと照合させて真偽判定する。
【0014】
ところで、このイメージ画像読取装置では、媒体の読取段階で設置台12に置かれた媒体の設置姿勢の適否をチェックし、媒体が正しく置かれていることを確認してから真偽判別動作に移行する設置姿勢確認機能を持たせている。これにより、媒体の設置条件を満たしてから媒体の照合動作に移ることになるので安定した照合性能を確保できる。
【0015】
例えば、図2に示すように、シート状の媒体が設置台12の平面的な設置面に平面対応して正しく設置されている場合は、光源11から、ある傾斜角度で照射された照射光22は、設置台12に設置された免許証等の媒体21の上面を均一に照射する。照射された媒体21から反射した反射光のうち正反射光23は、撮像カメラ13と対応しない方向に向かうので、正反射光23は撮像カメラ13に取得されない。一方、散乱光24は撮像カメラ13に取得される。よって、媒体21が正しく設置台12に設置されていれば、適正なイメージ画像データを取得できる。
【0016】
一方、図3に示すように、媒体31が正しく設置されていない場合の一例として媒体31が反って変形していると、光源11から照射された照射光32が媒体31によって反射した際の反射光のうち、正反射光33はその一部が変形した媒体31の曲面の向きによって正常な方向に反射せず、散乱光34と共に撮像カメラ13の取得方向に反射する場合がある。このような場合に撮像した媒体31のイメージ画像データの一部が過剰に明るくなってしまう場合がある。このために真偽判定に使用しているイメージ画像データの特定領域のデータが無効になり、真偽判定を誤る原因になる。
【0017】
よって、媒体が正しく置かれていることを確認する必要がある。この場合、読み取ったイメージ画像データを分析すれば、媒体が正しく置かれているか否かを確認することができる。図4は適正なイメージ画像データのヒストグラムを示す図表であり、図5は不適正な媒体のイメージ画像データのヒストグラムを示す図表である。
【0018】
まず、図4に示すように、媒体が設置台に正しく置かれた状態で読み取ったイメージ画像データは、散乱光の集まりからなる単一の散乱光ピーク41を表すヒストグラムが得られる。該ヒストグラムは撮像カメラ13が読み取った媒体の全表面の画像情報から光量の分布形状を求めることができる。該ヒストグラムを作成することにより、明るさの度数分布状態、バラツキ状態などが分かる。そして、単一の散乱光ピーク41であることから媒体表面から均一な明るさが得られており、正常なイメージ画像を読み取っていると分析できる。
【0019】
これに対し、図5は媒体が設置台に不安定に置かれた状態で取得したイメージ画像データであり、散乱光ピーク51と、もう1つ別の小さな正反射光ピーク52との2つのピーク51,52を表したヒストグラムが得られる。この場合、正反射光の集まりからなる正反射光ピーク52がヒストグラムの明るい領域側に検出されることで、媒体に反りが生じているか、あるいは媒体が折れ曲がっていたり、向きが異なっていたりするなど媒体の設置された姿勢が不適であることが分かり、誤ったイメージ画像を読み取っていると分析できる。
【0020】
このように、撮像カメラ13が媒体から読み取ったイメージ画像データのヒストグラムを制御部61(図6参照)で分析し、媒体が不適な姿勢に置かれている場合に生じる正反射光の有無をヒストグラムから判定すればよい。このヒストグラムの分析結果から正反射光をヒストグラムの明るい領域側に検出した場合は媒体が正しく置かれていないと判定できる。
【0021】
図6はイメージ画像読取装置の制御回路ブロック図である。制御部61は、制御情報入力系に撮像カメラ13と入力部62が接続され、また制御情報出力系に光源11と表示器81と照合情報記憶部63と判定部64が接続されている。
【0022】
前記入力部62は、例えば表示器81の画面上にタッチ入力可能に表示される確認ボタンや取り消しボタンとして備えられる。
表示器81は、媒体を設置台12の決められた位置に置かせる置き方案内を液晶画面上に表示させる(図8参照)。また、媒体の反りなどを直させて置き直しさせる置き直し案内を同画面上に切替えて表示させる(図9参照)。
【0023】
照合情報記憶部63は、撮像カメラ13が読み取った媒体のイメージ画像データと基準のイメージ画像データとを比較照合させるために、該基準のイメージ画像データを記憶している。
【0024】
判定部64は、撮像カメラ13が読み取った媒体のイメージ画像データのヒストグラムと、照合情報記憶部63に予め記憶させておいた基準のイメージ画像データのヒストグラムとを比較照合させて、媒体が設置台12に正しく置かれている姿勢で読み取ったイメージ画像データか否かを判定する。
【0025】
そして、前記判定部64の判定結果に基づいて制御部61は、媒体が設置台12に正しく置かれている姿勢で読み取ったイメージ画像データと確認すれば、媒体の真偽判別を行う照合開始条件を満したと判定して、その真偽判別の照合動作を開始する。これに対し、媒体が正しく置かれていない姿勢で読み取ったイメージ画像データと判定すれば、前記媒体を正しく置き直すことを表示器81に表示案内する。
【0026】
次に、イメージ画像読取装置の処理動作を図7のフローチャートと図8及び図9の表示説明図を参照して説明する。
まず、媒体21が正しく置かれた場合の処理動作について説明する。
表示器81には操作者(顧客)に対し、図8に示すように、媒体21を決められた位置に置くように媒体の置き方案内画面81Aを表示している(ステップS71)。この表示案内に従い、操作者は媒体21を設置台12の決められた位置に正しく置くことになる(ステップS72)。その後、確認入力案内画面に従って操作者が「確認」ボタン(入力部62)をタッチ入力すると(ステップS73)、図2に示すように、媒体21の全表面より反射した媒体イメージ画像の散乱光24を撮像カメラ13が読み取る(ステップS74)。
【0027】
この場合、媒体21が正しく置かれているので、正反射光23は、散乱光24より充分明るさが弱まっている。そして、読み取った画像データの明るさ分布を制御部61が分析してヒストグラム化し、その明るさ分布のピーク数とピーク位置を割り出す(ステップS75)。制御部61はピーク数とピーク位置を割り出し、散乱光ピーク41のみの場合、媒体が正しく置かれているものと判断する(ステップS76)。これにより、制御部61は媒体の照合開始条件を満したと判定して媒体の照合動作に移行し、明暗の比較等、ヒストグラムとは異なる方法で媒体の真偽判定を行う(ステップS77)。
【0028】
次に、媒体21が正しく置かれなかった場合の処理動作について説明する。
表示器81には操作者(顧客)に対し、図8に示すように、媒体21を所定の位置に置くように媒体の置き方案内画面81Aを表示している(ステップS71)。この表示案内を参照して操作者は媒体を設置台12に置く。この際、操作者が表示案内に従わず、媒体を設置台12の決められた位置に正しく置かない場合、あるいは媒体31が弓なりや波形に反って変形している場合、さらには折れ曲がっている場合などの不適な姿勢で置かれた場合は(ステップS72)、その後、確認入力案内画面に従って操作者が「確認」ボタンをタッチ入力すると(ステップS73)、図3に示すように、媒体31より反射した媒体イメージ画像の散乱光34と正反射光33との双方を撮像カメラ13が読み取る(ステップS74)。
【0029】
この場合、媒体31が正しく置かれていないので、正反射光33は散乱光34より充分明るさが弱まっていない。そして、読み取ったイメージ画像データの明るさ分布状態を制御部61が分析してヒストグラム化し、その明るさ分布のピーク数とピーク位置を割り出す(ステップS75)。制御部61はピーク数とピーク位置を判断し、散乱光ピーク51のほかに正反射光ピーク52がヒストグラムの明るい領域側に存在すれば、媒体が正しく置かれていないものと判断する(ステップS76)。
【0030】
その後、制御部61は操作者に対し、図9に示すように、表示器81に媒体の反り等を直させて媒体を決められた位置に正しく置き直す媒体の置き直し案内画面81Bを表示する(ステップS78)。この媒体の置き直し案内画面81Bの表示案内に従って、操作者が媒体21を設置台12に正しく置き直すと(ステップS79)、先に述べたステップS73以降の正しく置かれた媒体の処理と同じ処理手順に移行し、制御部61は媒体が正しく置かれているものと判断して上述した媒体の照合動作を開始して、媒体の真偽判定を実行する。
【0031】
この実施例では、媒体31が正しく置かれていない場合に、操作者への案内手段として、媒体31の置き直しを例にとって示したが、表示による出力でなく、音声、或いは係員の誘導処理によっても実現できる。
【0032】
上述のように、媒体を真偽判定する直前に、媒体が正しく置かれたか否かを事前に判断できるため、不具合があれば直ちに操作者に媒体を正しく置き直させるように案内できる。また、常に媒体を正しく置かせてから読み取るようにした設置姿勢確認機能を有しているので媒体の真偽判別を正確に実施することができる。
【0033】
この発明の構成と、上述の一実施例の構成との対応において、
この発明の撮像手段は、実施例の撮像カメラ13に対応し、
以下同様に、
出力手段は、表示器81に対応し、
登録画像情報は、照合情報記憶部63に対応し、
判定手段は、判定部64に対応するも、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】イメージ画像読取装置の概略構成図。
【図2】イメージ画像読取装置を用いて正しく置かれた適正な媒体の読取状態を示す概略説明図。
【図3】イメージ画像読取装置を用いて不安定に置かれた媒体の読取状態を示す概略説明図。
【図4】適正なイメージ画像データのヒストグラムを示す図表。
【図5】不適正なイメージ画像データのヒストグラムを示す図表。
【図6】イメージ画像読取装置の制御回路ブロック図。
【図7】イメージ画像読取装置の処理動作を示すフローチャート。
【図8】媒体の置き方案内画面を示す表示説明図。
【図9】媒体の置き直し案内画面を示す表示説明図。
【符号の説明】
【0035】
11…光源
12…設置台
13…撮像カメラ
21,31…媒体
22,32…照射光
23,33…正反射光
24,34…散乱光
41,51…散乱光ピーク
52…正反射光ピーク
81…表示器
81A…媒体の置き方案内画面
81B…媒体の置き直し案内画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を設置する設置台と、
該設置台に設置された媒体に光を照射する光源と、
前記光源からの光を前記媒体に照射させて前記媒体表面の画像を読み取る撮像手段と、
前記撮像手段により読み取った画像情報と予め撮像して記憶されている登録画像情報とを比較して前記媒体の真偽を照合する制御部と、
該照合の結果を出力する出力手段と、
を備えた媒体照合装置であって、
前記制御部は、
前記光源から光が照射された媒体の全表面を前記撮像手段を用いて読み取り、読み取った媒体の全表面の画像情報に基づいて該媒体が前記設置台に正しく置かれているか否かを判定する判定手段を設け、
前記判定手段の判定結果に応じた出力情報を前記出力手段により出力させる
媒体照合装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記撮像手段が読み取った媒体の全表面の画像情報から光量の分布形状を表すヒストグラムを作成し、媒体が不適な姿勢の向きに置かれている場合に発生する正反射光を該ヒストグラムから検出すれば、媒体が正しく置かれていないと判定する
請求項1に記載の媒体照合装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記撮像手段が読み取った媒体の全表面の画像情報から光量の分布形状を表すヒストグラムを作成し、該ヒストグラムには散乱光の集まりからなる散乱光ピークの他に、ヒストグラムの明るい領域側に正反射光の集まりからなる正反射光ピークができている場合に不適な姿勢と判定する
請求項1または2に記載の媒体照合装置。
【請求項4】
前記撮像手段が読み取った媒体の全表面の画像情報から媒体が正しく置かれているか否かを前記判定手段により判定し、媒体が正しく置かれていないと判定した場合、前記媒体を前記出力手段により正しく置き直すことを案内し、前記媒体が正しく置かれていると判定した場合、媒体の照合開始条件を満したと判定して前記制御部が媒体の照合動作を開始する
請求項1、2または3に記載の媒体照合装置。
【請求項5】
前記正しく置かれている媒体から前記撮像手段が読み取ったイメージ画像データと、予め撮像して記憶されている本物の媒体のイメージ画像データとを比較することに基づいて、前記正しく置かれている媒体の真偽を照合する
請求項1〜4の何れか1つに記載の媒体照合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−310624(P2008−310624A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158419(P2007−158419)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】