説明

孔内循環型パッカー装置

【課題】孔内への注入圧を補正せずに検知する孔内循環型パッカー装置。
【解決手段】注入材を供給する供給外管と、この供給外管の内部に配置した戻り内管と、供給外管の外周に取り付けたパッカーとより構成する。パッカ―にはエアチューブを取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔内循環型パッカー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から地盤への注入に際し、注入部分の上方でパッカを膨張させて地盤改良を行う装置や工法が開発されている。
この工法は、ロッドの先端に設けたパッカを膨張させることで所定の深度に密閉空間を形成した後、吐出口から注入材を地盤に注入するものである。
これらの従来の注入は地上部で圧力調整した注入材を注入個所に単路で注入するものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した従来のパッカー装置にあっては、注入材の圧力の管理について次のような問題点がある。
<1> 注入時の圧力管理を地上の孔口で行っていた。そのために地中先端の注入位置での圧力はあくまで補正による想定であり、実際の圧力は分かっていない。
<2> 補正に際して地下水位や配管の内部抵抗による圧力ロスや注入区間の圧力を、常数を決めて処理していた。しかし配管材も多様になり、調べるとパッカ―1本ごとにパッカ―常数が異なるなど、不確定な要素が多数存在した。
<3> 地上の孔口での圧力によって推定しているので、注入材料が水からセメントミルクに代わっても同じ圧力を採用していた。そのために比重差による誤差の補正はなされていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような課題を解決するために、本発明の孔内循環型パッカー装置は、注入材を供給する供給外管と、この供給外管の内部に配置した戻り内管と、供給外管の外周に取り付けたパッカーラバーとより構成し、パッカーラバーにはエアチューブを取り付けた、孔内循環型パッカー装置を特徴とするものである。
また上記の装置において、供給外管の孔内側の先端に、圧力感知部を取り付けて構成したことを特徴とするものである。
また上記の装置の圧力感知部として、光センサーを採用したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の孔内循環型パッカー装置は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 注入個所まで複路で注入材を送り込み循環させる構成なので、装置の閉塞を生じることがない。
<2> 注入材の注入圧の測定に際して、不確定な補正を行わず、直接注入個所の圧力を検知できるので、最適な圧力管理を行うことができる。
<3> 孔内の圧力を直接測定できるため、地下水位、湧水圧、管内ロスなどの補正に頼る必要がない。
<4> 注入個所の上下を閉塞して注入を行うダブルパッカ―に限らず、外管の先端だけにパッカ―を取り付けた注入装置にも採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の孔内循環型パッカー装置の実施例の説明図。
【図2】孔内でパッカーラバーを膨張させた状態の説明図。
【図3】他の実施例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0008】
<1>二重管。
二重管は、注入材を供給する供給外管1と、この供給外管1の内部に配置した戻り用内管2とより構成する。
供給外管1の内部に戻り用内管2を配置した二重管であるから、両者の間の隙間が注入材を供給する供給路となる。
供給外管1と戻り用内管2との間の供給路へ注入材を供給するためにスイベル部を設ける必要があるが、各種のスイベルの構造は公知で市販されているから、それらの中から最適なものを採用する。
【0009】
<2>パッカ―ラバー。
供給外管1の外周には、供給外管1を取り巻く状態で筒状の袋体をパッカーラバー3として取り付ける。
このパッカーラバー3には、その内部に圧縮空気を供給するエアチューブ31を取り付ける。
このエアチューブ31を介して地上から圧縮空気、あるいは水を供給すると、パッカーラバー3が膨張して、供給外管1の外周と周囲の壁面との間の隙間を遮断する。
【0010】
<3>圧力感知部。
供給外管1の孔内側の先端には圧力感知部を設ける。
圧力検知センサー4を採用した場合には、供給外管1の内面あるいは外面に沿ってセンサー用チューブ41を配置する。
このチューブを介して圧力検知センサー4の信号を外部に取り出す。
上記のように本発明では圧力検知センサー4は供給外管1の孔内側の先端に位置しているから、供給外管1から孔内へ供給する注入材の圧力を、なんらの補正をすることなく直接検知することができる。
この圧力検知センサー4として光センサーを採用することができる。
光の偏心から圧力の変化を検知する光センサーは公知であって市販されているから、それらの中から最適なものを選択して採用する。
【0011】
<4>注入方法。
注入予定位置に削孔したら、本発明の供給外管1を孔内に挿入する。
そして供給外管1の先端付近に位置するパッカーラバー3にエアチューブ31を介して圧縮空気、あるいは水を供給して膨張させる。
その後、供給外管1と戻り用内管2の間に形成した供給路に注入材を加圧状態で供給する。
供給外管1の孔底側の先端には圧力検知センサー4が位置しているから、供給外管1から吐出した注入材の圧力を直接検知でき、補正する必要がない。
【0012】
<5> 戻り用内管の作用。
注入時には注入材の地盤への入り方により圧力は大きく変動する。
その変動を少なくするために、戻り用内管2を設けてある。
この戻り用内管2の地上部にバルブを設ける。
そのバルブの開閉度を調節することで、注入個所5における注入材の圧力を所定の圧力に維持することができる。
【0013】
<6>他の実施例。(図3)
以上の構成は、パッカーラバー3を1か所に設けた構造について説明した。
しかしこのパッカーラバー3を2個所に設けた構造についても採用することができる。
そのために、図3に示すように2個所のパッカーラバー3の間において、供給外管1から圧力検知センサー4を外部に露出させる。
供給外管1には、やはり2個所のパッカーラバー3の間に、吐出口を開口する。
そして供給外管1の外部の注入個所5に向けて注入すると、その圧力はそのまま圧力検知センサー4において検知することができる。
この構造でも、戻り用内管2の地上部にバルブを設け、そのバルブの開閉度を調節することで、注入個所5における注入材の圧力を所定の圧力に維持することができる。
【符号の説明】
【0014】
1:供給外管
2:戻り用内管
3:パッカ―ラバー
31:エアチューブ
4:圧力検知センサー
41:センサー用チューブ
5:注入個所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入材を供給する供給外管と、
この供給外管の内部に配置した戻り内管と、
供給外管の外周に取り付けたパッカーラバーとより構成し、
パッカーラバーにはエアチューブを取り付けた、
孔内循環型パッカー装置。
【請求項2】
請求項1の孔内循環型パッカー装置において、
供給外管の孔内側の先端に、圧力感知部を取り付けて構成した、
孔内循環型パッカー装置。
【請求項3】
請求項1記載の圧力感知部として、
光センサーを採用したことを特徴とする、
孔内循環型パッカー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−21337(P2012−21337A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160768(P2010−160768)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000194756)成和リニューアルワークス株式会社 (32)
【Fターム(参考)】